検討会、研究会等  審議会議事録  厚生労働省ホームページ
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第13回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会

議事録


厚生労働省医薬局審査管理課化学物質安全対策室


第13回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会議事次第


日時:平成14年6月17日(月) 13:00〜14:50
場所:中央合同庁舎第5号館18階専用第22会議室

議題
 1.開会
 2.議題
  (1)OECD/EDTAスペシャル・セッション
     −試験戦略についての厚生労働省の考え方について
  (2)毒性知見に関する成果について
  (3)その他
 3.その他
 4.閉会

〔出席委員〕
伊東座長
青山委員 阿部委員 岩本委員 押尾委員
酒井委員 紫芝委員 鈴木(勝)委員 鈴木(継)委員
高杉委員 津金委員 寺尾委員 中澤委員
藤原委員 眞柄委員 松尾委員 山崎委員
和田委員

〔招聘者〕
菅野 純、白井 智之

〔事務局〕
宮島医薬局長、松田化学物質安全対策室長、中崎補佐、吉田補佐、川嶋主査

〔オブザーバー〕
農林水産省、経済産業省、環境省、国土交通省、水産庁、海上保安庁


○事務局
 定刻になりましたので、第13回内分泌かく乱化学物質の健康影響に検討会を開催させていただきます。本日は御多忙中のところ、お集まりいただきましてまことにありがとうございます。
 本日は8名の先生方が御欠席ということで、まだ遅れている方がいらっしゃいますが、合計で18名の委員の方々で進めさせていただきます。
 まず、開催に当たりまして、宮島医薬局長からごあいさつ申し上げます。

○宮島医薬局長
 医薬局長の宮島でございます。本日は、委員の先生方には大変お忙しいところ、この検討会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。
 前回の会合では、試験法開発や人の健康影響の解明等に関する重点課題につきましての検討成果と、さらに、今後実施されるべき調査研究並びに行動計画を含む中間報告書の追補を取りまとめいただいたところでございます。
 本日は、中間報告書追補におきます重点課題の一つであります試験スキームに関しまして、近日、OECDの会議が開催されますことを受けまして、厚生労働省といたしましても、本検討会の成果を踏まえて、提案をしていきたいというふうに考えておりますところでございますので、本日、これにつきましての御検討をよろしくお願い申し上げたいと思います。
 また、いわゆる内分泌かく乱化学物質の毒性に関しまして、新たな知見が得られてきておりますことから、本日、御報告いただいた上、御検討いただきたいというふうに思っているところでございます。
 先日、国会の環境委員会におきましても、この化学物質の安全性について大変質疑、議論がなされまして、そういう意味でも国民の皆さんの関心も大変高まってきておるというふうに承知しております。厚生労働省といたしましては、御検討いただいた内容を踏まえまして、国民の健康的な生活を確保するための施策に着実につなげていく所存でございますので、委員の皆様方には、引き続き御協力、御支援のほどよろしく申し上げたいと思います。
 簡単ではございますが、一言ごあいさつさせていただきます。どうもありがとうございました。

○事務局
 ありがとうございました。続きまして、本検討会の委員の交替がありましたので、紹介させていただきます。
 田中勝氏の後任といたしまして、今回から酒井伸一委員に参加いただくことになっております。事前に遅れる旨、連絡をいただいておりますので、お名前だけの紹介とさせていただきます。
 次に、本日の検討会におきましては、試験スキームについてのプレゼンテーション及び毒性知見に関する報告をいただきますが、事前に座長とも相談いたしまして、関係の先生方にも出席をお願いしてございますので、紹介させていただきます。
 菅野純先生でございます。

○菅野先生
 よろしくお願いします。

○事務局
 白井智之先生でございます。

○白井先生
 よろしくお願いします。

○事務局
 どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、事務局のメンバー交代がありましたので、紹介させていただきます。
 松田勉化学物質安全対策室長でございます。

○松田化学物質安全対策室長
 松田でございます。よろしくお願いします。

○事務局
 それでは、座長の伊東先生、よろしくお願いいたします。

○伊東座長
 ただいまから第13回の内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会を開催させていただきます。
 最初に、配布資料の確認をお願い申し上げます。

○事務局
 それでは、配布資料の確認をいたします。まず本日の席次席でございます。そして、本日第13回検討会の議事次第でございます。また、本検討会の委員会及び今日招聘いただいた専門家の先生のリストでございます。
 次に、資料1といたしまして、内分泌かく乱化学物質の拡張試験スキームというものでございます。また、資料1(参考)といたしまして、「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会中間報告書追補別冊より抜粋」という1枚紙でございます。次に資料2でございますが、「内分泌かく乱と胎児・幼児への影響」というものでございます。
 次に、参考資料でございますが、これは英語のものでして、「Task Force on Endocrine Disrupters Testing and Assessment(EDTA)of the Test Guidelines Programme」というOECDのドキュメントでございます。
 以上でございますが、不備等がありましたら挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、このまま進めさせていただきます。

○伊東座長
 ありがとうございました。それでは議事に入りますが、議題1は「OECD/EDTAスペシャル・セッショッン−試験戦略について厚生労働省の考え方について」、これに関しましては、菅野先生から、まずプレゼンテーションをいただきたいと思います。
 その前に、今回のOECD会議開催の経緯などにつきまして、事務局から御説明ください。

○事務局
 それでは、まず事務局の方から簡単な経緯を説明いたします。
 「資料1(参考)」というものがございますので、これをごらんください。資料1(参考)は、内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会中間報告書追補別冊の513ページに書いてある部分の抜粋であります。ここの「世界における最近の取組と国際協力」ということで、3−2としまして、経済協力開発機構におけます取組を簡単に紹介してございますが、ここに「試験法とアセスメントのための専門家会議」、略してEDTAと言っていますけれども、こういう会議がOECDの中にありまして、ここでは加盟各国が協力して、健康影響及び生体影響に関するスクリーニング試験法の開発というものを従来より進めているところでございます。
 この下のところに、「内分泌かく乱化学物質の試験評価戦略会議」というタイトルがございますけれども、2001年3月30日にOECDにおきまして、内分泌かく乱化学物質について統合された国際的なアセスメントのための戦略を開発するということを目的に、この会議が一度非公式に開催されております。この際には、各極の現在の計画等について報告され、国際協力の重要性をはじめ、今後の活動目標、情報の共有、こういった事項につきまして、勧告が会議の結果として出されているところでございます。この勧告の内容について、OECDの場でさらに議論されることになっているという結論であります。これを受けまして、来週でございますが、6月24日と25日に東京におきまして、EDTAの「スペシャル・セッション」と題する会議が開かれることになっております。
 参考資料、英語の資料でございますけれども、こちらの方をごらんください。これが6月24日から開かれる会議の現在の議題案でございます。めくっていただきますと、2ページから4ページにかけまして、議題案が書かれておりますけれども、特に初日のところ、SESSION ON FRAMEWORKS FOR TESTING AND ASSESSMENT というところにおきまして、この試験スキームについて、特にヒューマンヘルスに関する部分についてのディスカッションが行われることになっております。今日、御議論いただく試験スキームにつきましては、昨年の年末に報告書追補としてまとめていただきました中の重点課題の一つに試験スキームの開発というものがございまして、そこで得られたものを少し拡張しまして、厚生労働省としてアイディアをこの会議に提案したいということでございます。この会議にそのアイディアを提案して、国際協力の中で重要な貢献をしていきたいというふうに事務局としても考えているところでございます。
 簡単ではございますが、事務局の方からは、経緯としては以上です。

○伊東座長
 ありがとうございました。それでは、早速でございますが、菅野先生お願いいたします。

○菅野先生
 では、マイクが入りませんので大きい声でやらせていただきます。
 試験法のスキームは、前回のこの検討会で最初のバージョンを設定した経緯がございますが、本日は6月のOECDの会合に向けて、これまでの進捗状況を踏まえた上で、エクステンディット、すなわち拡張バージョンを提案させていただこうと、そういうことでございます。次、お願いいたします。
(スライド)
 御存じのように、米国ではEPAが代表として内分泌かく乱化学物質問題を扱っておりまして、その中のEDSTACという委員会がレポートを書いたのがちょうど1998年であります。そこでは、Tier1スクリーニング、Tier2テスティングという形でスタートしております。日本の方は厚生労働省のこの検討会及び経済産業省、環境省の各委員会等で同時進行で進んでおります。インターナショナルには、WHOがつい最近、科学的な立場からなるモノグラムのようなものを出しまして、ウェブ上で閲覧できるようになっています。OECDの方が来週に行われる会議に向けての動きになるわけです。WHOは科学的なことを中心にしており、実務的なストラテジーにはタッチしておりません。OECDに関しては、現在のところは試験法の各論のみという形です。次、お願いいたします。
(スライド)
 現在まで調べられた化学物質の内分泌作用は、概してエストロゲン作用、抗アンドロゲン作用であります。甲状腺につきましては、非受容体性の影響を示す物質ということになっております。これは、サイロイドペルオキターゼの阻害とか、トランスサイレチンの競合などといったものであり、甲状腺ホルモンの受容体との相互作用を示すものは、今のところ問題になるような状況ではないという立場だと思います。したがいまして、こちらでは従前どおり、上記2者、すなわち受容体を介する方に関してターゲットを絞ってスキームを展開してきたわけです。次、お願いいたします。
(スライド)
 これは何回もお見せしておりますが、受容体を介する作用がホルモン様作用を持つ化学物質の作用の入り口だとしますと、内分泌かく乱はその受容体を介した有害作用を起こすというふうに定義ができます。これに注目してホルモン受容体を入り口とした作用に対するスクリーニング法とテスティング法を組もうということをやってきたわけです。次、お願いいたします。
(スライド)
 チェックポイントとしては受容体結合のところと、DNA応答配列に受容体が結合し、エフェクトが蛋白合成が開始されることとしてあらわれる点などが考えられ、これらを中心にスクリーニングを組んでまいりました。このスクリーニングに関しては、古典的な知識にもとづいて非常にロバストな試験系が組めるものですから、これはこれでいい。次の問題として有害作用をどう検出するかという問題が浮上してくるわけです。これらを一つのスキームとして再度、発展的にまとめていこうということであります。次、お願いいたします。
(スライド)
 受容体結合については厚生労働省としては、対象物質が数万物質に及ぶことを考えて、In silico のバーチャルスクリーニングというものを採用しました。次、お願いいたします。
(スライド)
 遺伝子が発現する段階は、これは経済産業省とのジョイントでずっとやっているわけですが、Hela 細胞にヒト型のエストロゲン受容体を導入し、なおかつルシフェラーゼという物質ができるようなレポーター遺伝子を導入して、これを96穴プレートベースのロボットシステムに適応するという形でハイスループット化を図ってまいりました。次、お願いします。
(スライド)
 これが前回の検討会で御承認いただいたスクリーニングと詳細試験の厚生労働省版のスキームですが、本日はこれをさらに一歩発展させた形を提案させていただきます。次、お願いいたします。
(スライド)
 国内の現状については、まず環境省は先に物質を限定して、六十何物質に関して深く掘り下げるという立場をとりましたが、厚生労働省は数万種類の化合物を相手とする立場で、スクリーニングとテスティングのスキームをとる形をとりました。ハイスループットスクリーニングのところまでは、経産省と厚労省とでジョイントでやっているわけですが、その先のこの部分が両省独自ということで本日のこの検討会にて御審議いただく次第であります。国外については、まずUSEPAは、1998年のEDSTACレポートで出したスキーム案に関する見直しが現在いろいろなレベルで行われているようです。OECDに関しては、子宮肥大試験、ハーシュバーガー試験、改良407試験のプロトコルを作るところまでいっておりますが、全体的なスキームを作るかどうかというのが来週の東京での会議にて議論されるであろう、そういう状況です。WHO/IPCSは科学的知見から現状の分析に関する書物がWeb出版されたというところであります。次、お願いいたします。
(スライド)
 これはUSEPAの最近の改訂版スキームのハードコピーです。ここに8万7,000物質を計上し、そのうちの農薬とHPV、すなわち大量に生産されるものを切り離しまして、その残に対してTier1、Tier2 というストラテジーを残しつつ、さらにホールドボックスなどを設けた形の、若干複雑な系をつくっております。ここには3DQSARがあります。この段階で、コンピュータの演算が入るというような形になっております。次、お願いいたします。
(スライド)
 これはより以前の段階のEPAのスキームですが、ここにはTier1、Tier2 にどんな試験が使えるかというリストがあります。次、お願いいたします。
(スライド)
 現場で内分泌かく乱の候補物質というものを扱ってきた立場から、厚生労働省なりの拡張スキームというものを考えさせていただきました。前回承認されたスキームにもありましたところのプライオリティリスト、すなわち優先順位をつけた化学物質のリストというのが必要であろうと考えます。In silicoin vitroin vivo のスクリーニングで、リストの中身を徐々に成熟させていって一番優先順位の高いものから詳細試験を行う。この詳細試験というのは、お金も時間もかかる大型の試験にどうしてもなりがちものですから、トッププライオリティのものからこなしていく。ここでの'みそ'は、ホールドボックスを置かないで、とにかくリストをつくるという点です。In silicoin vitroin vivo の試験法に新たなものが加わった場合には、そのリストの成熟過程に寄与するような形で幾らでも付加できる。そういう柔軟性を持たせたというところにあります。詳細試験(ディーテイルドテスティング)が終わったものに関しては、ハザード・アイデンティフィケーション、暴露評価を経て、リスクアセスメントに進み、リスクマネジメントをしなければいけない化学物質についてはそれを行い、そうでないものについてはこの段階で初めてホールド、すなわち更なる検討はこの段階ではしなくてよろしいということでホールドボックスに入れる。そういう形であります。
 このプライオリティリストが目玉になるわけで、この中身をもうちょっと詳しく説明させていただきます。リストは階層に分かれておりまして、縦軸が化学物質の階層で、横軸が行った試験項目です。その中にホルモン活性であればバインディングの強さ、その他諸々の結果を入れます。試験が終わってどんどんデータがたまった化学物質に関して、陽性の、あるいはホルモン活性の強いというデータがとれた化学物質は、その試験が行われる都度リストの下の方に進みます。陰性と出たものは、どんどん上の方に上がっていきます。一番下にたまる化学物質から、詳細試験が必要と思われる化学物質を選びます。このリストを見れば、どこまで何がチェックされ、なおかつ、どこまでデータがあるかということが分かる。さらに、試験を追加しても、そのためのカラムを足していって、それに関するソーティングをもう一回繰り返せば、その都度最新の情報にバージョンアップできる。こういう系を考えました。これを拡張スキームとして提案させていただこうということであります。
 以上です。

○伊東座長
 ありがとうございました。それでは、ただいまの御発表に対しまして、皆様方から御意見がございましたらどうぞ賜りたいと思います。
 まず、松尾委員から言っていただかないと始まらないと思っておりましたので。

○松尾委員
 すみません、いつもでしゃばりまして。In silico の部分をもう少し御説明いただけたらと思います。プライオリティのつけ方ですけれども、どういう手順でされるのか、その辺もうちょっと詳しく。

○菅野先生
 In silico は、今、ドッキングモデルでやっております。ある程度数値も出ます。すなわち予測されるバインディングのラフな数字が出ます。それで勝負することも可能です。実際には20万化合物リストに関して、2回ほどバーチャルスクリーニングをやってみた経験がございますが、そのリストからですと、2,000化合物ぐらい、結合する可能性があるというものがとれます。その中には、当然スクリーニングですので、偽陽性もかなりあると思われます。その中で、構造的に既知のエストロゲン様構造がないものが60近くとれまして、その中の一部は確かに Hela 細胞とかにかけてみますと、反応が出るというところまで確認しております。きちんとした順位は出ないかもしれないのですが、あるレンジをもって、予想される強弱というものは出ますので、それでまずやっておいて、それから次の Helaの方に流していくというふうに考えております。
 In silico の方の改良はさらに進めていきたいというふうに考えています。特に、アゴニストかアンタゴニストかの予測に関しては、今のところうまくいっていませんので、そういうところの詰めなどはまだ残っていると考えております。

○松尾委員
 先ほどEPAのCoMFAというのが出てきます。あれはそのものだけだと余り値打ちがないんですね。Tong さんのやっているのは、4フェーズといいまして、前に2〜3の段階、それでインテリジェンスと称して、その知識ベースで右左により分けていって、最後にCoMFAへ持っていくわけですね。そういうアプローチは非常にいいと思うんです。この Adam&Eve には、そういうアプローチは取り入れられませんか。いきなりどんとかけると確かに答えは出てきます。しかしリライアビリティという点においては、答えは出るけれども、どこまで信じていいのという、その辺に問題が残ると思うんです。そういう改良のお考えはありませんか。

○菅野先生
 私の理解する Tong 先生の4段階のフェーズの分け方は、最後のコムファ(CoMFA)のところが、3次元格子にリガンドを配位するところが自動でいかない。手動になる。ケミストの手作業がどうしても入るので、明らかにはまらないものを一々かけていると、スクリーニングがとまってしまうので、その前に、例えば分子量が 1,000 以上とか、入りそうもないものをどんどん落としていって、数を減らしたところで作業するという理解です。他方、Adam&Eve の方は自動化ができています。むしろケミストの勘とかに頼らずに、機械に網羅的にやらせていますので、そういう意味ではバイアスはかからないのかなと思っています。結果を見てから、これは結合するような結果だけれども、「構造式上は怪しい」という考察はしますけれども、それは機械にやらせてみて、それも総当たり的にやらせたあとで、ケミストのアイディアを入れるという立場です。これはちょうど、CoMFAの手順とは逆になっていると思います。どっちがいいんでしょうかという話になると、両方とも大もとは確かにラロキシフェンとか、DESなど5種類の化合物の結合した状態の結晶構造をお手本につくってはいるんですけれども、ドッキングの方は、そこから後の式の立て方が違うものですから、結果がときとして食い違う可能性もあると思います。現在のレベルでは、お互いのデータを最終的に突き合わせるところが大事なのではないかというふうに考えておりますので、Tong 先生の4段階のフェーズをわざわざ真似る必要は今のところはないと考えております。

○松尾委員
 確かに今おっしゃっている部分もありますけれども、そういうスクリーニングをかけませんととんでもない答えが出て、それを信用することになるわけですね。だから、リライアビリティというのは今検証作業で一番問題になっていまして、どこまで信じたらいいんだと、答えはどんどん出てくるんですが。その部分が非常に大事でして、それで順序を決めていく。現に、In silico はグループ4、その辺にいきなり入ってきますので、かなりデータの信頼性というのが重要なんです。私、別のところでQSARの主査をやっていますので、余り否定的なことは言いたくないんですけれども、スコープ・アンド・リミテーションというか、何でもそうですけれども、どこまでものが言えるのかというのをよく理解していただいて、積極的に使っていく。スコープがこんなにありますと言い過ぎますと自らを否定することになりますので、その辺御注意いただきたい。こういうことです。

○菅野先生
 In silico のデータだけで突っ走るということはなく、最低限、Hela 細胞のロボットにはかけるというふうに考えております。そのときに、In silico ではアゴニストであったものが、in vitro ではアタゴニスティックになってみたり、ひっくり返ることもございますので、そこら辺は十分注意して、あくまでも In silico のデータは何十万という化合物のリストが来てもびっくりしないためのスクリーニングというふうに位置づけたいと考えます。次の段階にはin vitro、そして、in vivo がございますので、そこでよほど変なものは落ちるだろうというふうに考えます。

○松尾委員
 一番トップにありますからね。信頼性はすごく重要ではないか。そういうふうに考えて御質問したんですけどね。

○菅野先生
 ごもっともです。特に偽陰性の方がまずいんだと思います。今までのところ、そこそこのものを過剰に引っかけていますので、この様な使い方ができるのではないかというふうに考えています。

○伊東座長
 そのほか何か御意見は。

○紫芝委員
 先ほどのお話の部分はよく理解いたしました。それから、レセプターを主にしておやりになろうというのも、それが非常に微量でセンシティブな系だからということで理解はするんですけれども、例えば、甲状腺類似作用に関して、レセプターを否定していいかというと、必ずしもそうはいかないように思うんです。例えば、昨年のエンドクリノロジーという雑誌にゼラーという人たちがニューログラニンのメッセンジャーRNAがPCBにより増加する、実験にはアロクロールを使っているわけですけれども、サイロミメーティックな甲状腺ホルモン類似の作用があるということを言っております。それはレセプターを介さないと出てこないことになっておりますので、完全には否定できないだろうと思うんです。
 先生のお話の中にはなかったんですが、従来型の Peroxidaseに対する作用というのは、これはアメリカのマックレーンたちが前から言っていることの一つだと思うんですけれども、これは確かに化学物質として、用量の多いところでは作用するものです。例えば、先生もちょっとお触れになりましたように、PTRに対する作用でありますとか、肝臓での薬物代謝を誘導するPCBの作用とか、甲状腺の作用は従来型でもいろいろ複合作用があって、いろいろな生物学的結果になってくる可能性があるので、レセプターを介しない作用であっても、大事なものがまだ複合的には残っているだろうと思うんです。ですから、甲状腺ホルモンに関しては、レセプターがまだ否定できないのではないかということと、従来型の作用の複合作用でいろいろな作用が起こっている可能性があるのではないかということがありますので、甲状腺ホルモンに関することもルールアウトするのではなくて、考慮の対象に入れておいていただきたいと思います。

○菅野先生
 Hela 細胞系に関しましては、ERβの方の開発は続行しています。アンドロゲンの系についてはなかなか難しく、鋭意努力しております。甲状腺系に関してはトランスサイレチンなど、良いスクリーニング法が開発され次第、追加していきたいと考えます。それらにも対応できるように、優先順位リストの構成は拡張可能な形と致しました。

○伊東座長
 どうぞ鈴木先生。

○鈴木(継)委員
 今日のお話と直接関係しないかもしれませんけれども、有害性の同定のところのステップに入っていったときに、エンドポイントを一体どうやって選ぶのか、いかなるセットのエンドポイントを使おうとするのか、その辺のところのお考えを聞かせてほしいんですけれども。

○菅野先生
 現在、開発中というのが正しいところです。私個人のアイディアでよろしいでしょうか。まだ、これとこれというのは私自身の中にはありませんが、恐らくこの様なものが考えられるのではないかという程度のものは考えております。それは広い意味の一世代改良型です。フェノタイプだけを追うのではなくて、あるいはフェノタイプでもかなり細かいところを追いつつ、フィードバック機構が動いたときの動きをモニターするという系を加えたものが必要だと考えております。現状の一世代繁殖試験そのままですと、期間も含めて見る範囲が狭いのですが、それを拡張したもの、例えば二世代に近いようなエンドポイントを加えたり、肛門生殖突起間距離などの新しい項目を加えたりしたものを想定します。繰り返しになりますが、フィードバック機構がどう動くかというところを見ることのできる工夫をすることが必要だと思います。漠然としたものではありますが、エンドポイントを足すというのが今のところの私のアイディアです。

○伊東座長
 鈴木先生は、エンドポイントのフェノタイプとして、どういうふうなものがいいとお考えでございますか。

○鈴木(継)委員
 いい知恵はありません。

○伊東座長
 何かそのほか。

○鈴木(勝)委員
 2つほどあるんです。1つは、紫芝先生の質問に関連することなんですけれども、In silico のスクリーニングで、現状で実用化されているレセプターというのは一体幾つあって、実際に手順として、これをやっていくときに、一つずつやっていくお考えなのか。その辺がどうなのかというのと、関連して、もしこの場合、この試験でネガティブに出たものというのは永久に絶対ネガティブなのか、どういうふうに考えているのか、それをまず最初に。

○菅野先生
 優先順位リストを出ないうちのケミカルは、新しい知見が入り次第、その位置が動くということで、ホールドボックスにもどこにも行っていませんので、リストに居残りの状態です。In silico と申しましたが、実は逃げが打ってありまして、「In silico 等」です。エストロゲンレセプターに関しては、In silico はうまくいきますが、ほかのものは残念ながらまだありません。ですので、文献、あるいは諸先生方のコメントをすべて投入していく必要があると考えます。ですから、In silico でふるい落とすという立場ではむしろありません。見落としていたものを In silico で拾うという立場になります。リスク自体は下手をすると大きくなりますが、それは次の段階でどんどんリストの順番が成熟していって、一番下の作用の強いものを次に回そうという方法です。上の方の弱いもの、あるいはデータのないものは、ホールドボックスに入ったわけではなくて、常にリストの中にあって、それに関してあらたな情報が来次第リストの中の位置を再評価して、これは作用がありそうだと判断されれば、下の方までもってくると、そういう立場でございます。第2点に関しては、逐次、一度陰性だと言われても、そこにはあるわけで、目をくれなくなるわけでは決してない。新たな情報がくれば、それを拾うということになります。

○伊東座長
 そのほか何かございませんか。

○鈴木(勝)委員
 もう一つのところは、継美先生の質問とダブルところなんですけれど、ここで言う詳細試験ですね。そのところで改良型一世代試験プラスアルファを考えておられるということで、もう少し端的に言うと、生殖発生毒性にかかわるようなアドバーシティというのをまず第一に考えるということですか。

○菅野先生
 そこまで限定しているつもりはなくて、発がん性も含めてもっと広い範囲のものを対象にできるかもしれないと思っています。それはどの程度検出できるかの問題なんですけれども、これは私の意見として申し上げたものです。厚生労働省の2つの研究班で鋭意やっていただいている題目なので、これがこのスキームに係わるアイディアのすべてだと思われるのはまずいのですが、蛋白発現を見たり、遺伝子発現を見たりしながらやっていけるのではないかと考えています。特に発がんに関しても、DESをモデルにとった系をやっておられる先生方もありますので、そして膣の壁の細胞の遺伝子発現がどう変わるかというのも追っておられますので、包括的に進められるものを考えております。

○鈴木(勝)委員
 発がんについて、そういう分子機序の話をされるのは大いに結構だと思うのだけれども、最終的に vivo で確かめなければならないということになると、それを今言うとなると大変規模の試験になってしまうので、どんなふうに考えているのかなと思っているんですけど。

○菅野先生
 プロラクチンで、うまく説明ができた一報告が今井先生を班長とする班の中で発表されていたと思います。そういうモデル系を手がかりに、そこで何が起こるかを見て、パターン化するという現実的手法もとれるのではないかと思います。そうすれば、すべての化合物について横並びでワンパターンの実験を繰り返さなければいけないということにはならないのではないか考えています。

○鈴木(勝)委員
 僕が考えていたのは、発がん性とか、あるいは状況によって変異原性といったようなことが問題になる側面が生殖細胞なんかに出てくるかもしれないんですけれども、そういったことについては、まだ今のところ、やる方法にしても確定的ではないし、その意味で一番リスクとして懸念の高い生殖発生毒性の方にまず大きな重点を置いて、ホールドボックスとはちょっと違うのでしょうけれども、経胎盤発がん、その他等々についても、方法を探るようなことをしながら、先送りにはなるのだけれども、認識はしつつ、当面の仕事は生殖発生毒性的なところに絞った方がよいのではないかというふうに考えているものですから、お聞きしたんです。

○伊東座長
 松尾先生どうぞ。

○松尾委員
 もう一つお伺いしたいんですけれども、いただいた資料の3ページ目に、農薬等、多世代試験などの大型の試験がすでに行われているものについては、リスク評価へ進むと、こうございまして、従来ですと、恐らく今問題になっているかどうか知りませんけれども、低濃度でぽっと山が出てくるというノンリニアなアプローチは、従来のデータではとっていないと思うんです。この低濃度での外挿、それでリスク評価ができるわけですけれども、これはどういうふうにお考えでしょうか。

○菅野先生
 農薬の最近のデータを拝見すると、かなり内分泌作用を意識された改良、あるいは付加情報が提出されております。例えばレポーター試験でホルモン作用を見てあるとか、子宮肥大反応も見てあって、さらに2世代までやってあるような場合、当方のスキームに従ってもう一回In silico に戻ってください、という必要はないだろうということでこの Group 0 の例外事項は用意してあります。何年前に遡らないと、そうなるか、存じ上げないんですけれども、たとえ2世代がやってあっても、全く内分泌作用を意識していないデータが、ぽんと出てきた場合には、スキップできるかどうかというのは分からないです。「もう一回はじめからお願いします」というふうになるかもしれません。しかし農水省の2世代試験に内分泌問題に対応するための附帯条件がついてきていますので、そういうことで十分であると思われるものに関してはスキップしてもよろしいのではないかという意味でございます。

○松尾委員
 要するにリニアに、真っ直ぐに外挿するという、そういうものの考え方でよろしいんですね。

○菅野先生
 そういう判断は、農薬だから、あるいはそうでないからということで区別はするものではないと考えます。リスクアセスメントのレベルでどう扱うかを判断することになると思われます。

○松尾委員
 今まで一番困りますのは、ある条件のところで反応が急にあるわけです。

○菅野先生
 ノンリニアのことが多い、そういうエンドポイントがたくさんとれます。

○松尾委員
 ノンリニアというのは、本検討会は無視すると、無視するというか、言葉は悪いですけれども。

○菅野先生
 ノンリニアな現象は存在するということが前提にある上で、この検討会では、お話を進めていただいていると私は思っているんですけれども。

○松尾委員
 そうすると、今のデータでは十分なリスクアセスメント、定量的なものはできないと思うんです。ちょっとお考えを、非常に大事な部分だと思いますので。

○菅野先生
 そういう点が吟味できるような、ある程度の低濃度の附帯条項がついているものということでよろしいのではないかと思います。そうでなければ、やはりスキップはできないという判断になる場合もあろうというふうに考えております。単に農薬だからということでぽんと飛ぶという意味では決してございません。

○伊東座長
 そのほかよろしゅうございますか。特に低濃度、低用量でのレスポンスについては、まだまだ論議のあるところだろうと思うんですが、よろしゅうございますか。
 あのとき言っておいた方がよかったということを心配しているんですが、というのは、OECDのときには、菅野先生が話されるわけですから、菅野先生にしっかりと注文をつけておかないと。よろしいですか。
 今日、御議論いただいた内容を検討会としてまとめていっていただきたい。そして本日検討していただいた内容は必要なところを修正していただいて、今度のOECDの会で御発表いただくということにしたいと思うんですが、よろしゅうございますか。もう俺は言ったからいいということで。
 寺尾先生、何かないですか、松尾先生ばかり言っておるみたいな感じになりますから。山崎先生どうですか、いいですか。和田先生いいですか。みんなに聞いて、阿部先生いいですか。

○阿部委員
 結構です。

○伊東座長
 今日、御議論いただいた内容を、事務局あるいは菅野先生ともども御検討いただいて、それを御発表させていただくということにしたいと思いますが、よろしゅうございますか。

(「異議なし」と声あり)

○伊東座長
 ありがとうございました。
 それでは、拡張試験スキーム案につきましては、基本的な考え方としては、概ね菅野先生の御発表されたことに、ただいまの御議論を追加して、御配慮いただいて発表していただくということでよろしゅうございますか。
 ありがとうございました。それでは、EDTAへの提案については、今後検討していただくということで。
 次に、議題2の毒性知見について、白井先生から御報告いただきます。

○白井先生
 名古屋市立大学の白井でございます。今日はこの会で私が主任研究員をやっておりました研究班のデータを紹介せよということで資料を用意してまいりました。
(スライド)
 タイトルは、「内分泌かく乱化学物質と胎児・幼児への影響」ということでございますが、次、お願いします。
(スライド)
 この班は、厚生科学研究費補助金生活安全総合研究事業の一環といたしまして、平成11年から13年の3年間にわたりまして、「内分泌かく乱化学物質の胎児・幼児への影響等に関する研究」という課題のもとに研究をさせていただきました。私が主任を務めましたけれども、佐々木研究所の前川先生、大阪市立大学の福島先生、奈良医大の堤先生、大妻女子大学の池上先生、星薬科大学の鈴木先生、大阪市立大学の舩江先生、京都府立大学の伏木先生の計8名の研究者による研究でございます。次、お願いします。
(スライド)
 この研究を大きく分けますと、3つに分けられるんですけれども、特に2つありまして、1つは、ラットあるいはマウスの胎児期・乳児期暴露によります生殖器あるいは副生殖器の形態的変化と、生まれた後の前立腺、あるいは子宮の発がんに関する修飾作用をビスフェノールAとノニルフェノールで調べようということで、私がラットの雄生生殖器、前川先生がラット子宮、福島先生がマウスの精巣、前立腺、堤先生が甲状腺、肺を担当いたしました。
 もう一つは、マウスを用いまして、脳機能の影響をビスフェノールAで調べるということです。行動異常をはじめとする脳の変化を3人の先生方に担当していただきました。それから池上先生には、いわゆる植物性の女性ホルモン、イソフラボンの影響について研究していただきましたが、今日は時間の都合もありまして、上の2つのポイントにお話を申し上げたいと思います。次、お願いします。
(スライド)
 生殖器の分化、発達ですけれども、もともと生殖器は未分化な性器ということで、未分化性腺、ウオルフ氏管、ミューラー氏管の3つからなっているわけですけれども、それぞれホルモンの働きで卵巣と子宮で形成された正常の雌型、それからウオルフ氏管が分化することによって正常の雄型になるわけですけれども、何らかの原因でそれがうまく未分化性腺が発達しませんと、外見は雌型ですけれども、副生殖器は全く発達しないという状況になります。次のスライドお願いします。
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 未分化性腺のもと、性染色体がもし男性型のXYでありますと、自動的に精巣に変わります。精巣ができることによってテストステロンが産生されてくるわけですけれども、それによってウオルフ氏管が分化し、精巣上体、精管、前立腺、精嚢の形成がなされるわけです。テストステロンの一部は、5αリダクターゼによってデヒドロテストロンに変わりますが、これは外生殖器の男性化を促すと言われております。精巣からは、ミューラー氏管の抑制物質が分泌されますので、自動的に子宮等へ分化するミューラー氏管が消失するということになります。もしXXですと、これは自動的に卵巣に発展し、テストロンがございませんので、ウオルフ氏管は消失する。それからミューラー氏管抑制物質がありませんので、ミューラー氏管がどんどん分化して、卵管、子宮、膣への形成と外生殖器が女性化するということで、性腺の発育等は微妙な性ホルモンの働きでなされているということが言えるかと思います。したがって、もしテストステロンが産生されても、こういうところにレセプターがございませんと、女性化するというようなこともあって、これが生殖器、副生殖器の奇形として知られている一つの疾患でもあります。次のスライドをお願いします。
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 なぜ胎児・幼児を対象にするかということですけれども、今申し上げましたように、いわゆる個体の形成時期でして、内分泌かく乱作用に対する感受性が高いのではないかという一つの仮説。それから今御説明したように、生殖器の形成時期ですので、そういった時期に内分泌のかく乱が起きることがあれば、当然、生殖器の形成に異常が起きるであろうということであります。また、発生時の変化は、成長しても継続することが考えられますので、この胎児・幼児を対象とするという研究班を形成したわけです。その中には、中枢神経系の影響も含む、いわゆる脳の雌化、雄化ということもございますように、脳の発達にも性ホルモンが関与しているということは前々から言われているところであります。次、お願いします。
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 まず、ビスフェノールAの暴露によるF1生殖器の影響でございます。次、お願いします。
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 簡単にビスフェールAは、年間、非常に多く生産されていますけれども、一応2,000 ppm を最高とする2年間のラットの投与、あるいはマウスによる1万ppm の投与でも発がん性は認められていません。次のスライドをお願いします。
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 17βエストロゲン受容に比べますと、約1,000 分の1ぐらいの結合親和性、あるいはヒトMCF7乳がんの細胞に対するエストロゲン受容体の親和性もやはり1,000 分1ぐらいの強さのエストロゲン活性があると言われておりまして、ヒトに対する内分泌かく乱作用が危惧されている物質でございます。次、お願いします。
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 まず第一に、ラットに対しまして、ラットが妊娠、いわゆる交尾を確認した時点から、親ラットに120 mg/kgを最高にして、ビスフェノールAを毎日胃内投与、出産、それから離乳までを投与しまして、その後、ここで出産の影響と子どもに対する影響を経時的に検討しました。この場合には、雄だけしか見ておりません。次、スライドをお願いします。
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 まず、妊娠出産に及ぼす影響といたしまして、ここに投与量が挙がっていますけれども、妊娠数、妊娠期間、異常妊娠、出産数、生存数、着床率、出産率、受胎率、出生率といったものをマーカーにして見ておりますけれども、いずれの項目に関しましても、ビスフェノールAを投与しない群と投与した群の間に差は認めておりません。120 mg/kg という高濃度ですけれども、妊娠に対しても一切影響ありません。妊娠期間もほとんど変わっておりません。次のスライドをお願いします。
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 少し見にくいと思いますけれども、これは精巣上体、精巣の重量ですけれども、絶対重量、相対重量、いずれも群間に差はありません。ただ、ここで少し精巣上体が重くなっておりますけれども、これは生物学的な意義はないというふうに考えております。精子形成に関しましては、ごらんいただきますように、120 mg/kgで精巣内の数が減っているという結果になりました。この場合は、ラットの検索対象は5匹と少ないわけですけれども、ただ、形態異常に関しましては、特に差はございませんでした。次のスライドをお願いします。
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 前立腺の重量ですが、産まれて2日目、7日目、10週目を見ておりますが、絶対重量、相対重量ともに、異常はありませんでした。次、お願いします。
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 精子数が減少したということだったので、もう一度同じような実験を、1つ中間用量を増やしまして、ラット数を9から10に。それから仔どもの群分けも、同じ腹からある群に集中しないように、さらに注意いたしまして行いましたところ、精子数は群間に全く違いが出てきませんでした。これには有意差がついていますけれども、むしろ異常が少ないということで、私たちの研究成果からは精子形成にも異常を来さないと結論づけております。次のスライドお願いします。
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 これは前立腺発がんに対する影響ですけれども、型通り親に投与した後、子どもが5週齢になった時点に前立腺発がん物質でありますDMAB(ジメチルアミノビフェニール)を50 mg/kgで週2回20週間投与しまして、65週齢まで観察しております。120 mg/kg を筆頭に4用量のビスフェノールAで検討しております。次のスライドをお願いします。
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 体重曲線は、各群多少ばらつきがございますけれども、大きな差はございませんでした。次のスライドをお願いします。
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 これは実験終了時の平均臓器重量です。精巣、精巣上体、硬膜筋と球海綿体筋、前立腺とございますが、特にビスフェノールAが胎児期・授乳期に暴露されたからといって、この重量に大きな変化はございませんでした。次のスライドをお願いします。
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 これは前立腺腹葉にあらわれてまいります微小な腺がんでございますが、これを指標にして調べましたところ、次のスライド。
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 ラット数は大体15から19匹でございますが、前がん病変でありますPIN、腺がん、それから精嚢におけます異型過形成を指標に検討いたしましたけれども、ビスフェノールが妊娠中、授乳期に暴露されても、前立腺発がんが亢進されるということは見られませんでした。次、お願いいたします。
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 一方、マウスにおいては、同じような実験系ですけれども、ラットとは違う用量設定で行っております。次のスライドをお願いします。
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 これも妊娠・出産に及ぼす影響は 400 mg/kgの高濃度でも、コントロール群とは大きな差はございません。妊娠期間にも差はなく、出産数、生存数等にも変化はなく、妊娠・出産には全く影響を与えないということが分かりました。
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 これはラットと同じように、精巣、精巣上体、前立腺、腹葉ですけれども、重量、それから精子数、形態異常を指標に表にしてございますけれども、ごらんいただきますように、各群間に差はなく。最高用量の 400 mg/kgを投与いたしましても、何らか変化は出てきておりませんでした。次のスライドをお願いします。
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 次に、雌の子宮に対する影響ということで、ドンリュウラットを用いて前川班員が行った実験です。6 mg/kg を最高濃度として行っておりますが、出産に対しましては、6 mg/kg では何ら変化は出ておりません。産まれてきた仔どもの雌雄差にも影響はありませんでした。次のスライドをお願いします。
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 産まれた10週目にENNGという発がん物質を子宮内に投与して、15週目まで見ておりますけれども、FSHや、性ホルモンの分泌にも差はなくて、ここに一覧がありますが、膣開口、性周期に異常がございません。子宮の分化、発育も病理組織学的に検討いたしておりますが、異常を認めておらず、子宮がんの発生率も全く変わらないということで、この実験条件下では、子宮発がんに異常を来さないということが示されました。次、お願いいたします。
 次に、4−ノニルフェノールの話に移りたいと思います。次、お願いいたします。
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 これもビスフェノールAからノニフェノールに変えただけでございまして、実験のデザインは全く変わっておりません。この場合には、0.1 、10、100 mg/kg を交尾確認から離乳直前まで毎日igしております。仔どもが13週になったとき、すなわち10週齢のときに、仔どもを屠殺いたしまして、いろいろな試験に供しております。次、お願いします。
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 この場合もビスフェノールAと同じように、妊娠期間あるいは分娩日の体重、出生数、出産時の雌雄比を見ておりますが、全く異常は観察されませんでした。次、お願いいたします。
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 同じような繰り返しになりますが、前立腺の各葉の重量、精嚢重量、精巣上体の重量は全く群間に差はなく、最高用量100 ミリで妊娠ラットに投与いたしましても、F1の仔どもには影響が出てこないという結論でございます。次のスライドをお願いいたします
(スライド)
 この場合も精子数からその運動能、形態異常を調べていますが、各群間にそれぞれの指標の値の差は認めておりません。次、お願いいたします。
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 精細管には、いろんなステージがあることは皆さんよく御存じだと思いますが、ステージが1から14まであります。それを大きく4つの段階に分類して、それを顕微鏡下に観察いたしましたが、100 ミリでも精細管のステージングがコントロールと大きく異なるということはございませんでした。次、お願いします。
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 これはまだ終了していないんですが、前立腺発がんに対する感受性がどうなるかということを4−ノニルフェノールの経胎盤の授乳暴露の仔どもに行っております。この場合は、先ほどの発がん物質と違いまして、ヘテロサイクリックアミンでありますPhIPを、これは我々が日常食物から暴露されていると言われているもので、これを100 mg、1週1回10週間投与しました。PhIPに変えた理由は、先ほどのDMABというのは、いろんな場所に発がん性を示しまして、生存率が結構悪くなってしまうからです。最近、私たちの教室では、PhIPによる前立腺発がんが非常に順調に行くということが分かりましたので、PhIPに変えています。これも60週間の長きにわたる実験です。次のスライドをお願いします。
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 一部途中で体重減少などがある。この間にPhIPを投与しているということもあるんですが、各群間に差はなく、今月の28日に実験終了の予定であります。現時点では順調に推移しております。次のスライドをお願いします。
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 それから、甲状腺腫瘍については、4−ノニルフェノールのケースを御紹介したいと思います。この場合、ウイスターラットを用いて、2,000 ppm を最高に餌に混ぜて投与して、その後、産まれた仔どもに甲状腺、あるいは肺を標的とする発がん物質を飲料水で10週間与えております。次のスライドをお願いします。
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 妊娠・出産に対するいろいろな指標には 2,000 ppmの高濃度でも異常は出てきていないということで、私のところでやったデータと一致するというか、裏付けるデータになっております。次のスライドをお願いします。
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 この場合は雄雌両方の仔どもを使っておりますが、雄の場合に包皮開裂時期、分裂時期といいますか、雌では膣開口時期を検討し、2,000 ppm で全く外生殖器の分化に異常はないということが示されました。次、お願いいたします。
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 甲状腺ホルモンを検討しております。これは母親でございまして、直接投与された母親で 2,000 ppm を筆頭にT3、T4、TSHを調べておりますが、これはコントロールと統計学的に有意な差は認めておりません。次のスライドをお願いします。
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 ただ、仔どもの場合、これは26週齢、かなり経ってから測定しています。一定の傾向ではないんですが、T4 が統計学的に上昇して、あるいは雌の方ではむしろ下がっているというような傾向が見られました。雄雌ともT3 あるいはTSHには影響がないということで生物学的意味づけはまだクエスチョナブルであるという状態でございます。次のスライドをお願いします。
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 先ほど申し上げましたように、DHPという発がん物質は多くの臓器に腫瘍をつくります。雄の場合には甲状腺と肺に多数の腫瘍が形成されておりますが、その頻度には腺種を含めて各群に差はありませんでした。この他、食道の腫瘍、あるいは胸腺の悪性リンパ種の発生にも同じことであります。次のスライドお願いします。
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 雌では甲状腺の腫瘍にはがんは一例もなく、雄の方に有意に発生する状況でしたけれども、差はありませんし、肺の腺腫、腺がんの頻度も、雄よりもやや低いんですけれども、各群に差はありませんでした。次、お願いいたします。
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 これはマウスにおける4−ノニルフェノール作用ですけれども、最高 200 mg/kg で、ビスフェノールAと同じような実験系で行っております。
(スライド)
 似たようなデータですので、簡単に申し上げると、妊娠・出産への影響はマウスでも認めておりません。次、お願いいたします。
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 それから雄の方を見ているわけですけれども、この場合にも精巣上体の重量、脳の重量には影響ありません。次、お願いいたします。
(スライド)
 それから精子数、精子運動率、異常形態率には特に変化はみられておりません。ただ 200 mgで形態異常がちょっと多い。これは精子の頭がとれてしまったものがかなり多くを占めていたということなんですけれども、それは多分ビスフェノールAによる影響ではなくて、どうも操作上の問題と考えています。例えばフックがないとか、テールが短いとか、テールが曲がっているとかというようなものの頻度は全く群間に差はないということで、この数字の生物学的意義はむしろ余りないのではないかというふうに結論づけております。次、お願いいたします。
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 子宮発がんに対するノニルフェノールの影響につきましては、現在進行中でございます。最高 100 ミリグラム、これはドンリュウラットを用いていますが、低濃度として 0.1 ミリグラムを投与して、11齢のときにENNGという発がん物質を投与しています。これも今月の20日に終了予定と聞いておりまして、今年中にはデータが出るのではないかと期待しております。次のスライドをお願します。
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 平成13年度の課題としまして、ビスフェノールAとノニルフェノールの多重暴露による影響を検討しました。次のスライドをお願します。
(スライド)
 型通りの実験ですけれども、ビスフェノールAは 0.05 mg/kg とノニルフェノールは 0.1 mg/kg を同時にigし、仔どもが10週齢のときに、屠殺しまして、生殖器への影響を見ております。次のスライドをお願いします。
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 この場合も簡単に申し上げますと、精子数、精子の運動能、形態異常に差はなくて、ビスフェノールAとノニルフェノールが同時に暴露されても、副作用としての生殖器の影響は出てこないということが示されました。この場合に用いた用量が低めを設定しております。
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 雌の場合、これは前川班員が行ったわけですけれども、4か月に仔どもがなったときに、子どもの卵巣を摘出いたしまして、その後に、E2 を2週間投与することで、子宮の反応といいますか、子宮の重量を指標にして、E2 に対するレスポンスが変わるかどうか調べています。ノニルフェノールの 0.1 mg/kg とビスフェノールAを 0.05 mg/kg、それから、高用量の組み合わせとして100 mg/kg と、100 mg/kgをやりましたが、ピンクのバーで示しておりますように、E2 に対する感受性は全く変わらないということが示されました。次、お願いいたします。
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 内分泌かく乱化学物質は、ごらんのようにエストロゲン作用を示すということで、生殖器への影響が危惧されるわけですけれども、一方、甲状腺ホルモン作用、あるいはまた別のルートで中枢神経系の影響は危惧されているわけです。そこで、班員の3人の先生方が行動異常を指標にして研究をしてくれました。次のスライドをお願いします。
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 行動異常を誘発する研究といたしましては、ddy 系の雄マウスを用いて、最高 2 mg/gで飼料に入れて低濃度は 0.002 mg/g ですけれども、型通り離乳まで投与しまして、生後4週以上経ってから実験に供しております。はい。
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 このあたりは、私、全く門外漢でありますけれども、私の理解する範囲でお話ししたいと思います。一般行動は、探索行動、臭いかぎ、攻撃性、それから挙尾、回旋行動、回転運動等をスコアリングするということで強さによって4段階に分けて、それを合計して見ておりますけれども、この妊娠期間、授乳中にビスフェノールに暴露されますと、最低用量の 0.02 mg/g でも一般行動が非常に上がってくるということが示され、用量依存性があることが示されました。次のスライドをお願します。
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 それから報酬効果という依存の測定というのがあるそうでございまして、これは conditioned place preference(条件付け場所嗜好性試験:CPR法)と呼ばれているもので、薬物によって得られる感覚効果と薬物を投与されたときの環境を結びつけるということで、例えば黒のボックスと白のボックスを2つ用意いたしまして、黒のときに薬物を投与する。白のときには、いわゆる偽薬というか、生食を投与するということを毎日繰り返して1週間ラットを教育します。その後、壁を取り払いまして、ラットが黒の方にどれだけいるか、あるいは白の中にいる時間を測りまして、黒の方にいる時間が長いと、これは報酬効果を示しているというふうに理解するそうでございます。次のスライドをお願いします。
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 これはあらかじめビスフェノールAの 0.02、0.5、2 mg/g の飼料で親が飼われていた状態でメタンフェタミンによる誘発報酬効果を見たところ、やはり最低の濃度でも感受性が上がるということが示されました。次のスライドをお願いします。
(スライド)
 これはモルヒネを使った場合ですけれども、この場合は 0.5 mg/g から統計学的な有意差をもって報酬効果が増強されるということが示されました。次のスライドをお願いします。
(スライド)
 このように脳に対する何らかの影響が出たわけですが、さらにその濃度を 0.0003 mg/g に下げて、メタンフェタミンを投与すると、最低用量からも報酬効果に対する増強作用が観察されているわけでございます。次のスライドをお願いします。
(スライド)
 これはコカインでは、グラフ上は視覚的には増えているように見えるんですけれども、統計学的に有意差は観察されませんでした。次、お願いいたします。
(スライド)
 そこで、ビスフェノールAの増強作用というのは、どの時期に投与されると起きるのかを、妊娠期間を3つに分けて行っています。妊娠6日まで、6日から15日まで、15日から分娩までというふうに。この器官形成期であります妊娠中期と申しますか、このときと授乳期に投与した場合のみ、メタンフェタミンによる報酬効果の増強が観察されております。次のスライドをお願いします。
(スライド)
 それからもう一つモルヒネですけれども、この場合はBPAをかなり低い濃度に設定していますが、やはり同じように妊娠中期、器官形成期と授乳期に顕著にあらわれることが分かりました。このように、行動異常というのがビスフェノールAで起こるということが確かなものになったわけですけれども、次のスライドをお願いします。
(スライド)
 これは舩江先生方が調べられたんですけれども、脳内のドーパミン量が減るという結果を出されております。したがって、ドーパミンを経由した作用がこの仔どもがビスフェノールAに暴露されることによって起きるという推論が成り立ってくるわけです。次のスライドをお願いします。
(スライド)
 果たしてビスフェノールAがエトロゲン受容体を介して悪さをしているのか、あるいは別の受容体なりを介しているのか、結構、低濃度で起きてまいりますので、どうも受容体の関与が示唆されるわけですけれども、舩江先生は、ここにエストロゲン受容体とは別のものがあるのではないかということで、次のスライドをお願いします。
(スライド)
 今度はラット60匹から脳のP2画分をとってまいりました。1グラムのものがとれたそうですけれども、ビスフェノールAに対するリガンド結合をトリチウムラベルのBPAで検討いたしましたところ、用量依存性にスペシフィックな結合が見られることが分かりました。次のスライドをお願いします。
(スライド)
 この結合は、例えばβエストラジオールだとか、DESなどの既存のエストロゲン物質によって阻害されないということで、どうもビスフェノールA特有のレセプターがあるのではないかということが分かってまいりました。次のスライドをお願いします。
(スライド)
 そこで、彼はBPAに対するアフィニティーカラムを作成いたしまして、BPA結合蛋白の生成を試みました。そしてSDSのフェーズで流したところ、この2つのバンド、53kDaと 38 kDaの2つのバンドが出てまいりまして、この 53 kDaの蛋白にビスフェノールAの結合があるということが分かってまいりまして、ここに書いてあるんですけれども、多分これがBPARレセプターではないかというふうに結論づけております。スライドにはございませんけれども、脳のいろんな場所をとってきて調べた結果、特異的に多いところはなくて、どの場所にもこれがあるということを報告しております。次のスライドをお願いします。
(スライド)
 以上まとめますと、ラット、マウスにおいて、妊娠期と授乳期にビスフェノールAあるいはノニルフェノールに暴露されても、妊娠・出産、あるいは仔の性比には影響を与えない。それから、ビスフェノールAあるいは4−ノニルフェノールにおいて、子どもの生殖機能あるいは甲状腺機能には異常を来さないことが示されました。お話ししましたように、前立腺発がん、子宮発がん及び甲状腺発がんに対して現時点では影響がないということが分かりました。さらに、仔において雌雄の生殖機能に異常を来さないということを明らかにしております。次のスライドをお願いします。
(スライド)
 お話し申し上げましたように、一般行動異常がビスフェノールAに暴露したマウスで観察されておりまして、また麻薬などの薬物依存性が高まるということが示唆されました。これは中枢にありますドーパミン神経系から、データをお示ししておりませんけれども、かなり不安定な行動をとるということを含めて、セロトニン神経系の機能異常があり、多分不可逆性であると推察しています。
 最後にお示ししましたように、これは妊娠中期と授乳期暴露が重要であることが示されました。その機序としてビスフェノールAの受容体の介在が示唆されているわけであります。データにはないんですけれども、舩江研究員は、このビスフェノールA受容体には、甲状腺ホルモンも結合するということを言っております。
 以上でございます。御清聴ありがとうございました。

○伊東座長
 ありがとうございました。それでは、ただいまの御発表について、御質問ございましたらどうぞ。

○高杉委員
 ただいまの中枢神経系への影響は大変興味がございまして、将来もっと発展させていただきたいと思いました。このドーパミンが影響を受けるということになりますと、当然、影響を受けて、視床下部−下垂体系が変化している可能性もあるのではないか。そうなりますと、例えばプロラクチンかなにかの変動で生殖腺系も影響を受けるかもしれないというふうに思いました。
 もう一つは、ウイスター系ラットの実験でございますけれども、ウイスター系ラットというのは、非常に都合がいいというか、悪いといいますか、加齢が進みますと無排卵の持続発情になってしまいまして、これを利用しまして、生殖腺系の老化の指標にしているわけです。前の東大教授の川島誠一郎先生が昔おやりになった仕事があるのですけれども、ラットを発情させない程度の low doseのエストロゲンである 0.1 μgのエストラジオール-17βを慢性的に与えていくと、最初はきれいに周期的な発情をして仔どもを産むわけです。ところが、これらの慢性的に低用量のエストロゲンの影響を受けたラットでは老化の持続発情が早くくるようになる。大体コントロールでは、10か月以後にくるのがもっと早く持続発情になって、無排卵になるといういうことをおっしゃっていますので、もう少し長く観察されるとおもしろいんじゃないかと思いました。
 それからもう一つは胎児への影響でございますけれども、これもごく最近の東大の守隆夫先生の研究でございますけれども、ビタミンA(レチノール)はエストロゲンの作用と密接な関係がありまして、生殖腺系に対するエストロゲンの発生毒性はビタミンAがたっぷりあると生殖器官は非常にレジスタントになり、異常が起きにくくなる。しかし、ビタミンAが減少しますと、エストロゲンによる発生毒性が非常に強く出てくるということを発表されていますので、付け加えておきます。
 以上でございます。大変おもしろかったです。

○白井先生
 ありがとうございます。付け加えさせていただきますと、行動異常を見出した鈴木先生は、この仕事を論文発表したいということで、最初はサイエンスに投稿して1次パスはしたんですけれども、結局掲載を拒否されています。1年半ぐらい前に論文を投稿しているんですけれども、未だに日の目を見ない状況です。日本の学会ではいろいろな機会を見て発表なさっていらっしゃるということを伺っています。今後、動物種差などを追求してヒトへの外挿がどのようになるか明らかにしていく必要があると考えます。

○伊東座長
 そのほか。

○青山委員
 大変たくさんの仕事を精力的にこなしていただきまして、非常に興味深く拝聴いたしました。必ずしも白井先生お一人にお伺いするのはお答えにくいかと思うんですが、一連のお仕事で、先生ごとに動物の系統がいろいろ特徴のある系統をお使いでいらっしゃるんですが、何かそれぞれにこういうのにはこの系統がいいというような理由がもしおありでしたら、ぜひ教えていただきたいと思います。

○白井先生
 正確なお答えはしにくいのですけれども、発がんというものを指標にスタートしておりまして、それぞれの研究者が今まで培ってきた系を用いるということが大前提でございましたので、例えば子宮に関しては前川先生が以前より使われている、ドンリュウが一番いいと考えられています。先ほどウイスターのお話が出ましたけれども、ドンリュウはすぐに持続発情になって、ホルモンバランスを崩して子宮がんが出やすいということで、専らあれを用いられておりますので、ドンリュウを選ばれたと思いますし、堤委員も、バックグランドとしての実績を大事にしたいということで、甲状腺等はウイスターを使っていらっしゃいます。私はF344を専ら使っております。したがって班員間で統一がとれていない面があるのは私も重々承知しております。それでよろしいでしょうか。

○青山委員
 全然、私、系統が統一されていなことが問題だとは思っておりません。それからもう一つ、もしお持ちでしたらで結構ですけれども、たまたま今回、生殖影響はどの実験でもネガティブだったように拝見いたしましたが、例えば、エチニルエストラジオールのような強いエストロゲンを入れてお使いになられた系統でやると、きれいに影響が出るよというようなものがもしございましたらお教え願いたいんですが。

○白井先生
 いわゆるポジティブコントールは用いておりませんし、先生がおっしゃったようなバックグランドでの実験をやっておりません。

○伊東座長
 そのほかどなたか御質問ございませんか。
 白井先生、一番最後の行動異常とか、そうふうなことに対する量、あれは普通の我々の生活環境における量から考えるとどうなんですか。

○白井先生
 最後の方にお示ししました 0.003 mg/g の量はいわゆる缶詰等で流出してくる量の 10 倍ぐらいです。ビスフェノールAのヒトへの暴露に比べると、まだあれでも高いのではないかというふうに思っております。

○伊東座長
 あれでも高いというのは。

○白井先生
 0.0003。

○伊東座長
 そうじゃなくて、10 倍ぐらいの量で、あれが起これば大変だということにもなりますからね。マウスのストレインを変えるとか、あるいはレセプターのチェックをきちんとされておる動物の種類をさらに検討をされるとか、こういうふうなことがあるべきではないかというふうに思うんですね。

○白井先生
 はい。それで、レセプターを発見された大阪市大の舩江先生は、引き続きこの研究を発展させたいということで、先日も厚生労働科学研究費補助金を申請なさったところでありますが、行動異常を見出された鈴木先生は、来年からもう少しこの辺をきちんとやりたいと考えておられます。私としては、お二人の先生にもっとこれからどんどんこのあたりのメカニズムと、できれば、ヒトへどういうふうに影響があるかというところまで突き詰めていただきたいというふうに願っております。

○伊東座長
 阿部先生どうぞ。

○阿部先生
 生殖器でいろいろお調べになったので、前立腺がんも検討することができたと思うんですが、前立腺がんに対しては、むしろプロテクティブに働くのであって、発がんは促進することはないんじゃないかと思います。女性ホルモン作用ということで考えますと、むしろ、乳がんの方が影響があるのではないかという気がします。それから先ほどお話になって、皆さんが注目されている行動異常というのは、やはりホルモン作用というのは種によって非常に違うわけなので、この種ではこうであったけれども、ほかの種はどうかということは、推測することは非常に難しいのではないかというふうに思っておるんですが。

○白井先生
 先生のおっしゃるとおりです。乳腺というのは、私たちの班には入っていなかったんですけれども、乳腺はなかなかくせ者と申しますか、普通の状態では49日齢が一番発がん物質に感受性が高いということですけれども、あらかじめ乳腺をエストロゲンで分化させてしまいますと、今度は発がん性の感受性が落ちてしまったり、発がん物質を投与してからエストロゲンを投与すると腫瘍発生を促進するというふうに、少し解析するのが難しいような臓器ということもあるようでございます。
 それから行動異常は、やはり先生がおっしゃるように、ストレンディファレンスとか、スピーシーズディファレンスはきちんとやっていかないと、人への外挿はとても難しいというふうに私も理解しております。

○伊東座長
 どうぞ。

○紫芝委員
 ビスフェノールAに関するお仕事、大変興味深く拝見いたしました。ビスフェノールAとエストロゲン作用の関係は、私どもの共同研究者の竹下が、ヨーロピアンジャーナル・オブ・エンドクリノロジーに昨年報告をいたしましたけれども、ビスフェノールAはSXR/PXR(steroid xenobiotic receptor/pregnane X receptor)に特異的に結合し、XRE(xenobiotic response element)を介して、CYP3A4のトランスクリプションを起こします。その過程で、SRC−1(steroid receptor coactivator-1)をリクルートする、という結論になっていたと思います。竹下が示したのは、オーファンレセプターの一つであるSXR/PXRにビスフェノールAが比較的特異的に結合するということですが、そういう意味で、今、先生方がビスフェノールAのレセプターとおっしゃっているものが、本当にビスフェノールAに特異的ななのかどうかというのは、かなり積極的に詰めていただければ大変おもしろいんだろうと思います。
 それから、行動とのお話で、もし脳内のドーパミンが減るんでしたよね。減るといたしますと、例えば、PCBを作用させると、脳の中のコリンアセチルトランスフェレーズが減ります。ビスフェノールAもそれと非常に似たような反応をする可能性があると思います。そういうPCBの影響というのは、甲状腺ホルモンによってなくなってしまうというか、アンタゴナイズされるわけなんですけれども、例えば、ビスフェノールAによるドーパミンに対する影響というのは、甲状腺ホルモンではアブロゲートされるとか、そういうふうには働きませんでしょうか。

○白井先生
 そういう研究はしていませんので、先生の御質問にはお答えできないんですけれども、多分ビスフェノールAのレセプターらしいというものを見つけられた舩江先生は、今後、先生がおっしゃったような点も考慮して研究なさるというふうに思います。もし機会がありましたらお話しいただいて、何かサジェスチョンしていただければお喜びになられるのではないかと思いますけれども。

○伊東座長
 そのほか何か。

○押尾委員
 精巣毒性に関して少しお伺いしたいんですけれども、精巣あたりの精子の数の算出の仕方を聞き漏らしたかと思うので、もう一度お伺いしたいんですけれども、全体を per mL で出しておられたんですけれども、あれは per mgの精巣重量当たりにするとどういう形になるのかなということと、それからあと、精子の形態異常が平均すると1.何% ということなんですけれども、僕は動物種とかスケートは違うんですけれども、見ると、もう少し形態異常のものは多いような印象を受けるんですが、ちょっと細かくて恐縮なんですが、算定方法とかその辺についてお伺いしたいと思います。

○白井先生
 値を精巣重量当たりとか、精巣上体重量当たりには換算しておりませんので、ちょっと先生の御質問にはお答えできないのかもしれないのですけれども、そういう計算の仕方の方がより正確だということであれば、我々のデータを見直してみるというふうに思いますけれども。

○押尾委員
 精子の算出方法というのはどういう方法だったのでしょうか。

○白井先生
 あれは精巣なら精巣からとりまして、それをカウンターの中で勘定するというふうに聞きました。

○押尾委員
 ホモジナイズしてやる方法ですか。

○白井先生
 そうです。

○押尾委員
 分かりました。ありがとうございました。

○白井先生
 それから2点目は。

○押尾委員
 あと、精子の形態異常が非常に低値……。

○白井先生
 先ほど図でお示ししましたが、4つのフックがない、テールが曲がっている、あるいは短いといったものを顕微鏡下でカウントするという方法でやっております。

○押尾委員
 分かりました。

○伊東座長
 どうぞ。

○鈴木(継)委員
 大変興味ある報告があったと思うんですけれども、それこそ実験の再現性みたいなものをどうするのかというのがひとつ気になる部分です。それからビヘイビアに関しては、クレストの研究班の中では、サルを使ってビヘイビアを見ていこう、ビスフェノールAとか、あるいはPCBとかというのは進んでおりますので、コンタクトをおとりになれば、少しスピーシーズディファレンスの話に広がるのではないかと、そう思いました。

○白井先生
 ありがとうございます。妊娠とか出産に対する影響、あるいは子どもの生殖器の分化、精子数等に対する影響は簡単に再現性を見ることができますが、今回の実験では、ストレインを変えた他施設間で同じようなデータが出ていますので、ある程度再現性は確認できていると理解しております。しかし、発がんに関しましては、60週という長い期間がかかりますので、これをもう一度やるというのもなかなか大変な作業でして、現時点ではこれをもう一回繰り返すということは全く考えておりませんが、大事な点だと思います。

○伊東座長
 はい、どうぞ。

○山崎委員
 今日の先生のお話、大変詳細に、ビスフェノールAとノニルフェノールの胎児と幼児への影響ということで分かったんですが、このレジュメを拝見して、今日、先生がお話にならなかった部分で、5番のところに、大豆イソフラボンのお話が出ていますね。これを拝見すると、表現は悪いんですが、常識的に分かったようなことがここに書いてあって、ほかの8人の先生方の実験とちょっと先生のおまとめになっている内容とは異質のような気がしたんですが……。

○白井先生
 そのとおりです。

○山崎委員
 それについては、先生はどういうふうにこれを中に入れていこうというふうにお考えになっているのでしょうか。

○白井先生
 ほかのビスフェノールAとかノニルフェノールに関連性がないわけではなく、いわゆる天然のエストロゲン様物質として意義が深く、ビスフェノールAやノニルフェノールを考える場合に重要なデータを提供すると思っております。その意味で彼女の仕事を支援してきたというつもりです。

○伊東座長
 大分時間もきましたので、このあたりで打ち切りたいと思います。今日の御報告につきましては、まだ終了していない研究もありますので、引き続き、その結果が出た時点で改めて機会を持ちたいと考えております。どうもありがとうございました。
 それでは、最後にその他ですが、事務局から御発言ください。

○松田化学物質安全対策室長
 本日は長時間にわたる御審議どうもありがとうございました。今日、議題の1で御審議いただきました試験スキーム案につきましては、先ほどもお話がありますとおり、EDTAの場で提案させていただきまして、有意義な会議になればと思っております。また議題の2につきましても、新たな知見が得られましたら、引き続きこの場で御検討いただきたいというふうに思っております。
 また、遅くなりましたけれども、本検討会の中間報告書追補につきましては、先生方の御尽力を賜りまして、昨年末に公表するに至ったところでございます。改めてお礼申し上げます。今後は、この報告書の行動計画に沿いまして、調査研究や行政的な取組を進めていくことになっております。引き続き、本検討会の委員の先生方をはじめ、その他関係者の方々にも御協力をお願いすることとなりますので、どうぞ末永く今後ともよろしくお願い申し上げます。
 事務局からは以上でございます。

○伊東座長
 ありがとうございました。それでは、各委員の先生方、長時間論議に加わっていただきましてありがとうございました。本日の討論会はこれで終了させていただきます。どうも御協力ありがとうございました。

閉会


 照会先
 厚生労働省医薬局審査管理課化学物質安全対策室
 担当:川嶋
 TEL :03−5253−1111(2424)


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