02/05/31 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会 平成14年5月31日議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所   平成14年5月31日(金) 10:00〜   厚生労働省専用第21会議室 2.出席委員(11名)五十音順   風 祭   元、 金 井   淳、◎河 村 信 夫、 小 嶋 茂 雄、   首 藤 紘 一、 菅 谷   忍、 谷川原 祐 介、○長 尾   拓、   長谷川 紘 司、 早 川   浩、 藤 上 雅 子 (注) ◎部会長 ○部会長代理 他 参考人2名   欠席委員(6名) 大 野 泰 雄、 堺   秀 人、 南 部 鶴 彦、 矢 崎 義 雄、 柳 川   尭、 村 勢 敏 郎 3.行政機関出席者   鶴 田 康 則(大臣官房審議官)、 池 谷 壮 一(審査管理課長)、   黒 川 達 夫(安全対策課長)、   豊  島   聰(医薬品医療機器審査センター長)、   姫 野 孝 雄(医薬品医療機器審査センター企画調整部長)、   平 山 佳 伸(医薬品医療機器審査センター審査第一部長)、   橋 爪   章(医薬品医療機器審査センター審査第三部長)、他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 それでは定刻になりましたので、医薬品第一部会を開催させていただ きます。本部会委員数17名中、現在9名の先生に御出席いただいております。予定では 11名御出席いただくこととなっておりますが、定足数に達しておりますことを御報告さ せていただきます。  それから本日は議題1の専門委員としまして、国立循環器病センター緊急部長の野々 木先生、それから北里大学医学部麻酔科学教授の外先生にお越しいただいております。 よろしくお願いいたします。それでは部会長、お願いいたします。 ○河村部会長 本日もよろしくお願いいたします。審議に入る前に事務局から資料の確 認と資料作成に関与された委員の報告をお願いいたします。 ○事務局 それでは資料の確認をさせていただきます。本日席上配付させていただきま した資料は議事次第、座席表、医薬品第一部会の名簿、それから資料6としまして「医 薬品第一部会審議品目の薬事分科会における取扱い及び毒薬・劇薬の指定の要否につい て(案)」、資料7としまして本日の審議品目に関連しました専門委員の名簿をお配りし ております。ございますでしょうか。  それから平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づく資料作成に関与された委員 の確認でございますが、本部会に本日の議題の関与委員はいらっしゃいません。以上で ございます。 ○河村部会長 ありがとうございました。それでは審議に入らせていただきます。議題 1について、審査センターの方から審査概要の御説明をお願いいたします。ランジオロ ール、オノアクトという薬でございます。 ○事務局 資料1の塩酸ランジオロールTKS、オノアクト及び注射用オノアクト50、 一般名塩酸ランジオロールについて審査センターより御説明いたします。  本薬は小野薬品工業株式会社でβ1選択性の高い短時間作用型β遮断薬として開発さ れました。本品目は平成9年8月に申請されましたが、審査の過程で第III相二重盲検比 較試験(ト-5)の対象患者の選択基準などの議論がなされたことを踏まえて、緊急治療を 要する対象患者の客観的な選択基準の設定、及び主要評価項目の妥当性の再検討がなさ れた上で、新たな第III相比較臨床試験(ト-10)が実施され、平成12年9月にその成績が 追加提出されました。なお、本薬の開発は国内のみで実施されています。  本薬の審査に関しましては、本日専門委員として御出席いただいております野々木委 員、外委員を始めとしまして、資料7にあります江馬委員、鹿庭委員、岸田委員、釘宮 委員、橋本委員、林(邦)委員、林(眞)委員、福島委員、増原委員、以上11名の専門委員 が指名されました。  次に審査センターにおける審査の概略を御説明いたします。  規格、安定性、毒性、薬理及びADMEについては特に問題ありませんでした。  臨床試験は麻酔中の上室性頻脈性不整脈を対象とした臨床試験のほか、内科系の心房 細動、心房粗動などを対象とした第II相試験2試験が評価資料として提出されました。 このうち麻酔中の上室性頻脈性不整脈を対象とした臨床試験における組入れ症例のほと んどは洞性頻脈でした。洞性頻脈については、麻酔科系第III相比較試験において20%以 上の徐拍化が認められた症例の割合がプラセボ群に比べ有意に高かったことから、本薬 の有効性が示されていると判断いたしました。一方、心房細動、心房粗動については、 全麻酔科系臨床試験を通じて組入れ症例が8症例のみであり、すべての症例において20 %以上の徐拍化又は発作の間歇的停止が認められたものの、最終的な有効性の判断を行 うには症例数が不足しておりました。  そのため心房細動、心房粗動については、内科系臨床試験における有効性評価を参考 といたしました。内科系後期第II相試験において、事後解析ではありますが、発作停止 又は心拍数が1分当たり80回未満になった症例の割合に用量相関性が認められており、 申請用量群においては有効率が50%を超えていることから、心房細動、心房粗動に対す る本薬の徐拍効果は検証されていると判断いたしました。  以上のような検討を行った結果、審査センターは効能・効果を「手術時の下記の頻脈 性不整脈に対する緊急処置:心房細動、心房粗動、洞性頻脈」として承認して差し支え ないと判断し、本医薬品第一部会において審議されることが適当と判断いたしました。 本薬は新有効成分含有医薬品で、再審査期間は6年、原体及び製剤は劇薬に該当し、分 科会へは報告が適当と判断しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ── 説明途中、谷川原委員、藤上委員着席 ── ○河村部会長 ありがとうございました。お聞きのように手術時の緊急薬として使うも のだそうでございます。野々木先生、御追加、御発言いただけますでしょうか。 ○野々木専門委員 国立循環器病センターの野々木と申しますが、専門医の立場から少 しコメントをさせていただきます。この薬物の臨床的な意義ということで少し御追加さ せていただきますと、この薬物は今御紹介のあったように極めて短時間の作用であると いうことと、静脈注射であるということから即効性という二つの利点がありまして、手 術中の緊急時には非常に大きなメリットになるであろうと思われます。今回の臨床治験 は上室性不整脈を対象にしたわけなのですが、組み入れた内容を検討いたしますと洞性 頻脈がほとんどでありました。しかしながら、術中に危険な状況になるのはこの洞性頻 脈ではなく、むしろ心房細動あるいは心房粗動という頻脈発作であり、1分間に150〜 200ぐらいの頻脈になりまして、特に合併症のある虚血性心疾患あるいは心機能が低下 している場合には極めて危険な状況になります。したがいまして、静脈投与により即効 的に徐拍効果を得るということは非常に臨床的意義が大きい薬物であります。それでは 実際に現行の薬物でこれと同等のものがあるかといいますと、β遮断薬の注射薬は存在 するわけなのですが、実は半減期が数時間と非常に長くて、このような緊急時に使用す るには非常に扱いづらい状況であります。したがいまして、この薬物が採用された場合 には非常に臨床的意義が大きいものと思います。  専門委員として専門協議に加わったときの問題点が二つありました。効能・効果に関 しては、今回の治験で心房細動、粗動の症例数が少なかったわけでありますが、同時に 行われておりました内科系の試験でこれらの不整脈に対する効果が十分確認されており ます。したがいまして、現場の状況から考えましても、効能・効果に関しては現在提案 されている上室性不整脈という形でいいだろうというのが専門協議での結果でありま す。  それからもう一つの問題点としましては、緊急時に使用しますので、術中の非常に短 時間の使用に限るべきだろうという協議を行いました。洞性頻脈というのは何らかの原 因があって起こることが想定されます。麻酔の深度が低い、あるいは出血が多いという ような他の原因があり使用を短時間にして、その原因を追及することを使用上の注意、 用法・用量上の注意として明記していただくことを要請いたしました。  この二点が専門協議で主に議論になった点であります。私のコメントは以上です。 ○河村部会長 ありがとうございました。外先生、続いて御発言がございましたらお願 いいたします。 ○外専門委員 今野々木先生に専門協議で話し合われた内容をほとんど語っていただき ましたが、実際に手術時に使う立場である麻酔科医として一言コメントしたいと思いま す。実はこの短時間作用性のβ1遮断薬は欧米では既にもう随分長く使用されておりま す。私たちはそれがなかなか臨床の現場で使えないという状況で非常に困っていたわけ ですが、ここに来てやっとこのオノアクトがこういう場に提出されたということです。 ですから、臨床の場では長く待ちわびた薬の一つであると御理解いただきたいと思いま す。  ではどういう現場で使うかというのは、ここの「効能・効果」のところに書かれてお ります。手術中に脈が速くなる、もちろん脈が速くなるには原因があって、それを取り 除くのに麻酔医としていろいろ原因を探っていくわけですが、その原因に対する治療に もかかわらず頻脈が続く、あるいは頻脈発作が起こるという状況があります。これは心 筋虚血を持つ患者さんだけでなく、やはり心臓の酸素需給バランスからいっても好まし くない状況ですので、なるべく速くそれに対応したい。それに一番かなう薬がβ1遮断 薬であったわけですが、なかなかそれが利用できなかった。つまり短時間作用性の薬と して利用できなかったわけです。今回これが出てきたことで、今野々木先生が言われま したように、手術期の患者管理が非常に向上するであろうと思われます。特に心筋虚血 の患者に対する処置ということで、非常に有用な薬物が出たという印象を持っておりま す。しかもそれが我が国で開発されたということで、そういう意味でも価値のある側面 を持っているのではないかと思われます。  ただ私たちの臨床の現場ではこういう薬が出ますと、頻脈だ、即この薬というふうな ことで、安易に短絡して考える問題も生じてくるかもしれません。ただそれは教育の面 で、やはりまず原因を探ってそちらから治療を始める、それでもやむを得ない場合、あ るいはここに書いてありますように緊急処置としてこの薬が使われる。その辺の今後の チェックといいましょうか、監視は必要であろうというふうに思います。やはり安易に この薬に頼ってはいけないだろうと、手術期の使い方としてその側面があると理解して おります。以上です。 ○河村部会長 ありがとうございました。大変詳しく解説していただきましたが、各委 員から御発言、御質問ございますか。緊急薬だそうでございますし、かなり有用性のあ るもののように読み取れますが、今回は内科的疾患の方の適応を申請してこなかったも のですから、「手術時の」という適応になっております。御発言ございますか。 ○長尾部会長代理 5〜15分ということですが、定常状態になるには低い量ですと少し 時間が掛かると思うのです。最初に高用量を1分打ったとしても5分というのは動態的 にはまだ安定しないでしょう。長く使っていいということですか。1回やめたら安定す るまで少し待てということなのでしょうか。使い方ですが…。 ○事務局 審査センターから今の御質問に対して回答させていただきます。まず継続し て投与できる時間というのは「用法・用量」等には特に記載しておりませんで、「使用 上の注意」の「2.重要な基本的注意」の(4)に「緊急治療の必要がなくなった場合は漫 然と持続投与しないこと」という形で、一応目安としては「5〜10分」という時間を書 かせていただいております。こちらに関しては、一応臨床試験の際に持続投与しており ます11分までの時間で有効性を判断しておりまして、ほとんどの症例がそこまでで徐拍 効果が出ているということで、大体の目安としてはいいのではないかということでこの ように書かせていただいております。 ○長尾部会長代理 分かりました。 ○河村部会長 ほかにございますでしょうか。御質問、御討論なければ、承認を可とし て薬事分科会の方へ報告という扱いにさせていただいてよろしゅうございますか。どう もありがとうございました。お二人の先生、お忙しいところどうもありがとうございま した。 ── 野々木専門委員、外専門委員退席 ── ○河村部会長 それでは次の医薬品ボンアルファハイ軟膏20μg/gの方に移らせていた だきます。タカルシトールというそうですが、尋常性乾癬のお薬として申請が出ており ます。審査センターの方から御説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは引き続きまして、議題2、資料2の医薬品ボンアルファハイ軟膏20 μg/gの製造承認の可否等について、審査センターより御説明申し上げます。  本剤は既承認のボンアルファ軟膏2μgにおける有効成分タカルシトールの濃度を10 倍高めた軟膏製剤であり、既承認製剤では十分な効果が得られない難治性の尋常性乾癬を 効能として申請がなされたものでございます。  本剤の専門協議では本日の配付資料7の2ページに示しますように、井上委員、岩ア委 員、大野委員、谷本委員、南光委員、秀委員、米谷委員を専門委員として指名いたしまし た。  本剤の規格及び試験方法、安定性、毒性、薬理、吸収・分布・代謝・排泄に関して提出 された資料の内容については大きな問題はございませんでしたので、臨床試験について述 べさせていただきます。  本剤の有効性に関しては、既承認の低濃度製剤の4週間連続塗布によっても十分効果の 得られない尋常性乾癬患者59例に対して、既承認低濃度製剤を対照とした第III相二重盲 験比較試験が実施されており、4週間の継続塗布後、主要評価項目である皮膚所見の合計 点数において、本剤は低濃度製剤と比較して有意に優れ、副次的評価項目である全般改善 度においても、「かなり軽快」以上の有効率は低濃度製剤で64.4%であるのに対し、本 剤では86.4%、また「著しく軽快」以上の有効率は低濃度製剤で16.9%であるのに対し、 本剤で47.5%と有意に優れていることが示されております。また、strong又はvery strong のステロイド外用剤を3週間以上塗布しても明らかな改善傾向が認められない尋常性乾 癬患者54例において、本剤の塗布開始2週後より明らかな改善が認められ、12週連続塗 布後での最終全般改善度の「かなり軽快」以上の有効率は88.9%でありました。以上の 結果より、本剤の尋常性乾癬難治例に対する有効性は認められると判断いたしました。  次に本剤の安全性に関してですが、全試験を通して全身性の副作用は認められませんで した。局所性の副作用に関しては安全性評価症例495例中24例に38件発現し、内訳は刺 激感、掻痒、ヒリヒリ感、発赤、腫脹、色素沈着で、症状の程度は軽度又は中等度であり ました。また、血清カルシウム値に関して、1日最大塗布量10gで26週間又は54週間連 続塗布した長期投与試験において、血清補正カルシウムの平均値では投与開始時と比較し 有意な上昇が認められましたが、その変動は基準値の範囲内でありました。なお、第II相 試験以降の個別症例においては、腎機能低下又はサイアザイド系利尿薬や炭酸カルシウム 含有製剤との併用に起因すると思われる、血清カルシウム値の上昇が認められた症例が確 認されております。以上より、1日10gの塗布量制限の下で、相互作用が懸念される薬 物の併用時及び腎機能低下患者において慎重に投与することで、本剤の安全性は確保され ると判断いたしました。  以上のとおり、審査センターでの審査の結果、本剤の尋常性乾癬難治例に対する有用性 は認められ、承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部会で審議することが妥当と判 断いたしました。なお、本剤は新用量医薬品に該当することから、再審査期間は4年、製 剤は劇薬に該当すると判断しており、薬事分科会では報告を予定しております。御審議の ほどよろしくお願い申し上げます。 ○河村部会長 ありがとうございました。既に同じ会社から2μgの製剤が出ていまし て、それが10倍の濃さになった薬ということですが、効能・効果が今度は尋常性乾癬だ けになっていて、ほかの角化症が落ちているという状態でございます。御質問、御討議 ございますか。私が泌尿器科として一番心配したのは、ビタミンD3でございますから カルシウム代謝に関係する、そうすると石ができるのではないかと。どうせこれは治る 薬ではなくてちょっと良くなる、そして長期に使う薬でしょうから、一応可能性として は心配があるのですが、かなり長期間使っていてもその範囲では今のところ心配はない だろうと、腎機能の障害がなければ心配はないだろうということになっているようで、 いいかなと考えております。御意見ございますでしょうか。どうぞ、藤上先生。 ○藤上委員 ちょっと細かいことなのですが、「尋常性乾癬皮疹では薬剤の吸収バリア となる角質層の形成が不十分であり、重症度が高度な時期に皮膚のバリア機能が低下し、 タカルシトールの吸収が増加した可能性がある」というのは、注意喚起しておく必要は ないのかなということ。  もう一つは、PASIのスコアが大きいほどこの薬の使用量が多くなると思うのです が、吸収の増加によって1日の使用量が10gまでとなっているのですけれども、10g以 下であったとしても10gを超えた形になってしまうのではないかということで、高カル シウム血症の副作用の可能性が考えられないかということ。  もう一つは、そのような影響が考えられるような吸収の増加ではないのかと、どちら なのでしょうか。 ○河村部会長 審査センターの方からお答えいただけますか。 ○事務局 審査センターからお答えいたします。まず健常人では全く吸収が検出されて いないのですが、乾癬患者では検出されているということで、やはり乾癬によって皮膚 のバリア機能が阻害され、吸収が促進した可能性が考えられますので、先生の御意見を 踏まえて添付文書上に適切な記載を反映させていただきたいと思います。  もう一方のカルシウムなのですが、確かに先生の御指摘のとおり、かなり重症度の高 い患者さんや最初から血清カルシウム値の高い患者さんでは、本剤によってカルシウム 値の異常が出る可能性は否定できません。ただし、現在の臨床試験結果より取りあえず 10gという塗布制限を付けた状況下で500例近くの患者さんでやったところ、腎機能低 下若しくは併用注意の薬物に起因するというカルシウム異常以外は特にカルシウム値の 上昇は認められていないということです。しかしながら審査センターとしましては、少 なくても腎機能低下患者若しくは重症度の高い患者さんについては、定期的に血清カル シウム値のモニターをする等の対策が必要ではないかと考えております。 ○河村部会長 塗る面積が患者さんによって相当違いますから、ちょっとの人もいれば、 ベターッとできている人もいるので、そういうときに1日の用量を10gまでという制限 が付いているのかなと考えましたが。藤上先生、今の審査センターの御返事でよろしゅ うございますか。ほかにございますか。どうぞ。 ○谷川原委員  既存のボンアルファ軟膏と本薬とをもし取り違えたときのリスクとい うのはどれぐらい考えられるのでしょうか。といいますのは、名前の付け方が非常によ く似て…、今「ボンアルファ軟膏」、「ボンアルファクリーム」というものがありまし て、「ボンアルファハイ軟膏」というのはかなり安易な付け方でして、前の方が同じと いうのは割に取り違えるリスクというのが高いのです。もしこのまま発売されると、そ の可能性というのはかなりあるのではないかと思うのですが、その場合のリスクという のはどれぐらい考えられるのですか。 ○事務局 審査センターよりお答えいたします。販売名に関しましては、同じ有効成分 でありながら濃度が違うだけで効能が全く違うということで、審査センターも販売名を 変えたらどうかということはさんざん提案したのですが、会社の方針としては「ボンア ルファ」というブランド名にこだわりまして、結局最終的には「ハイ」を付けただけと いう結果になりました。  次にリスクですが、取りあえず現在得られている臨床試験の結果から見たところ、腎 機能低下患者や併用注意の薬物を使用している患者さん以外におきましては、特に問題 はないと考えております。 ○河村部会長 こういうものは名称調査会とか何とかというところを一応通るわけです か。 ○事務局 名称調査会は有効成分の国際的な名前を決める場でございまして、販売名は 扱っておりません。 ○河村部会長 そういうことだそうです。むしろ「ハイ」が先に来れば安心なのですが、 それは強制ができないので…。そういう御意見があったということは会社にお伝えいた だけますか。 ○事務局 部会の御意見としてお伝えいたします。 ○河村部会長 素人としては、「ハイ」が先に来ていれば分かりやすいような気がする のですが。ほかに御意見はございますか。よろしゅうございましたら、そこのところを 一応会社に相談していただくこととして薬事分科会へ報告という扱いにさせていただき たいと思います。よろしゅうございますか。ありがとうございました。議題3のチオラ の一部変更承認についてよろしくお願いいたします。 ○事務局 それでは議題3、資料3のチオラ錠100について御説明いたします。本剤は参 天製薬株式会社において開発されたチオプロニンを有効成分とする薬剤で、「慢性肝疾患 における肝機能の改善」、「初期老人性白内障」及び「水銀中毒時の水銀排泄増加」を効 能・効果として市販されております。  シスチン尿症患者における薬物療法としてD-ペニシラミンが知られておりますが、ネ フローゼ症候群や発熱、発疹、血小板減少などの副作用が高頻度に発症することが問題と なりました。1968年に本剤がD-ペニシラミン同様に尿中シスチン排泄量を低下させるこ とが報告され、現在までアメリカ、フランス、ドイツ等で本疾患の治療薬として承認を受 けております。  本邦におけるシスチン尿症患者は約700〜1,500人と推定され、本剤は長らく保険適応 外にて用いられてきました。平成6年7月にシスチン尿症を対象疾患とした希少疾病用医 薬品の指定を受け、シスチン尿症を追加効能とした臨床試験が実施され、承認申請が行わ れました。  それでは審査内容について簡単に御説明いたします。本剤の審査におきまして専門委 員として部会長の河村先生を始め、資料7でお示ししました荒川委員、五十嵐委員、大 野委員、横山委員、吉村委員を指名いたしました。  規格、毒性及び薬理試験に関しては、新たに提出された資料はございません。審査セ ンターは今回申請効能における用量は既承認用量と比較し大幅に増加し、投与期間も長 期に及ぶことから非臨床試験成績から見た本剤の安全性について確認いたしました。ま た申請効能を裏付ける作用と考えられるチオプロニンとシスチンとの交換反応に関する 既存の検討内容について申請資料中でまとめるよう指摘をいたしました。ADMEにつ きましては、健康成人を対象に本剤400mgを単回投与時の成績が提出され、尿中へは投 与量の約50%がほぼ6時間以内に排泄されました。  臨床試験は健康成人を対象に薬物動態及び安全性を検討するための第I相試験、成人シ スチン尿症患者に対する有効性及び安全性を検討するための第II相試験、及び長期投与に おける有効性及び安全性を検討するための第III相試験が実施されております。第II相試験 では主要評価項目である尿中シスチン排泄量は、全10例の観察期と1,600mg投与時での 比較において1,169mg/日から649.33mg/日へと低下を認めております。また第III相試験で は長期投与を完遂した16例における尿中シスチン排泄量が、観察期901mg/日から長期投 与期488.60mg/日へと低下しており、共に統計学的有意差を認めております。また小児へ の用法・用量は国内外の小児における報告に基づいて設定されました。  本剤の安全性ですが、特に小児における投与量40mg/kg以上の高用量投与の際に散見さ れるネフローゼ症候群の発症を予見する方法として、添付文書中の「重大な副作用」の記 載に「定期的に尿蛋白の検査を行う」と注意喚起を図ることといたしました。  以上の審査を踏まえ、本剤をシスチン尿症への追加効能として承認して差し支えないと の結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は毒薬又は 劇薬には該当せず、再審査期間は10年、薬事分科会には報告を予定しております。よろ しく御審議のほどお願いいたします。 ○河村部会長 以上のようなシスチン尿症に対するお薬でございまして、私は日本人の発 生率は実際はもっと多いと思うのですが、シスチン尿症とシスチン結石症と両方ございま すから、結石症にすると少ない数字が出てくるのかなと思っております。既にシスチン尿 症に対しては泌尿器科の方では長年使われておりまして、それも300や600ではなくても っと大量に使われていまして、外国ではさらに前から使われており、肝機能の障害だけ注 意していればいいという薬でございます。ただちょっと問題になったのは、このデータを 御覧になると分かるのですが、シスチン結石を有している患者にこれを飲ませた場合に余 り減らないのですね。この点はどういう説明になっていましたでしょうか。 ○事務局 審査センターより御説明申し上げます。本臨床試験につきましては、患者選択 の問題あるいは有効性の評価項目についてセンターとしても納得の得られるような回答 を頂いておりません。今回の臨床試験の成績では、部会長がおっしゃられるように結石に 対しては患者群を層別解析したときには排泄量が低下するという結果が得られておりま せん。しかし、海外における臨床試験の成績、参考資料となっています成績、あるいは海 外での使用実績等の結果、その他の資料から有効性は判断できると考えております。 ○河村部会長 私も信用するのは、海外のデータが既にかなりありますので、そちらを見 れば確かにシスチン結石があろうがなかろうが下がるであろうと思っております。ただ会 社側の説明の、シスチン結石がある人にチオラを飲ませることによってそれが溶け出した から尿中に多くなったのだというのは、ちょっとまゆつばものだと思っております。しか し、あれだけ膨大なデータが外国であればいいかなと思っておりますが、いかがでござい ましょうか。御質問、御討論何かございますか。よろしゅうございますか。既にもう歯止 めなく使っておりまして、私などはこれがシスチン尿症に適応がないとは知らなかったの で、専門家として呼ばれて初めて知ったというくらいに使われております。よろしかった ら薬事分科会の方へ報告ということにさせていただきたいと思います。どうもありがとう ございました。それでは議題4の希少疾病用医薬品の指定について、事務局からお願いい たします。 ○事務局 それでは議題4、資料4のエポプロステノールナトリウムについて御説明い たします。本剤はグラクソ・スミスクライン株式会社で開発されましたプロスタグラン ジンI2製剤でありまして、強力な血管拡張作用等を有しまして、肺動脈圧の低下等を もたらし症状の改善に寄与するものと考えられております。  本剤は平成6年に既に「原発性肺高血圧症」について希少疾病用医薬品として指定さ れておりまして、平成11年にその効能で承認されております。今回申請されました効能 ・効果は、「肺動脈性肺高血圧症(ただし原発性肺高血圧症を除く)」ということでござ います。「肺動脈性肺高血圧症」は「原発性肺高血圧症」及び「特定の疾患に伴う肺高 血圧症」が一つのカテゴリーとなったものでございます。今回申請された対象疾病の「肺 動脈性肺高血圧症(ただし原発性肺高血圧症を除く)」は「特定の疾患に伴う肺高血圧症」 に相当すると考えられます。  まず希少疾病用医薬品の指定要件であります対象患者数についてでございますが、資 料4の10ページに推定値が出ている表がございます。この表を見ていただきますと、全 国の疫学調査等から推計した国内での対象患者数は約3,000人以下というふうに推定さ れております。したがいまして、希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと考えておりま す。  次に医療上の必要性でございますが、肺動脈性肺高血圧症は極めて予後が悪い疾病で ございます。現時点におきましては、心肺又は肺移植以外に根治的な治療法はございま せん。また、「特定の疾患に伴う肺高血圧症」に対する効能で承認されている薬剤は現 時点ではございません。したがいまして、対象疾病が重篤であること、それから現時点 で有効な薬剤がないということから医療上の必要性はあるものと認められます。  次に開発の可能性でありますが、海外における「膠原病に伴う肺高血圧症」を対象に した臨床試験におきまして、本剤による血行動態及び運動耐容能の改善が明らかにされ ておりまして、また安全性に特段の問題は認められておりません。また国内におきまし ても、「膠原病に伴う肺高血圧症」を対象とした第II相試験が実施されているところで ございます。したがいまして、本剤の開発の可能性はあると考えられます。  以上のように、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件をすべて満たしていると考えてお りますことから、本剤を希少疾用医薬品として指定することが妥当と判断し、本部会で 御審議いただくことが妥当と判断いたしました。御審議のほどよろしくお願いいたしま す。 ○河村部会長 希少疾病用医薬品として指定することが適当であるかどうかという御審 議をお願いするのですが、御発言ございますか。よろしゅうございますか。では可とい うことで薬事分科会の方へ報告させていただくことにいたしたいと思います。希少疾病 用医薬品はこれだけですね。そうすると報告事項の方へ入らせていただきます。アクト ス錠の製造承認事項一部変更承認の可否についてでございます。報告事項について事務 局から説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは報告事項について、簡単に御説明させていただきます。資料5をお願 いいたします。報告事項の議題1、医薬品アクトス錠15、同30についてでございます。 本品目は武田薬品工業株式会社からの申請で、一般名が塩酸ピオグリタゾンでございま す。既にインスリン抵抗性が推定される2型糖尿病の治療薬として臨床使用されているも のでございまして、こちらの6の「効能・効果」の欄の(1)と(2)は既に承認された内容でご ざいますが、新しく(3)のα-グルコシダーゼ阻害剤についての併用を追加するものでござ います。そのほかに全般的に分かりやすくするために記載整備を行っております。  審査センターでの審査の結果、本申請内容における有効性及び安全性が認められること から、承認して差し支えないと判断したものでございます。なお、再審査期間は初回承認 時における再審査期間の残期間、すなわち平成17年9月21日までとしております。報告 事項はこの1品目のみでございます。 ○河村部会長 糖尿病に対するお薬の追加でございますが、御質問、御意見を承れればと 存じます。どうぞ。 ○谷川原委員 ちょっとお伺いしたいのですが、今のこの「効能・効果」というのはこの 文面から行くと、例えば(3)は食事療法、運動療法に加えてα-グルコシダーゼ阻害剤を使 用する治療で十分な効果が得られない場合に、本薬を適用してもいいというふうに読める のです。しかし、今の御説明では併用療法の効能・効果を認めるというお話もあって、「審 査報告書」の方にも…、これは併用療法という意味なのでしょうか、それともこの薬剤の 適用の条件を書いてあるのでしょうか。「審査報告書」を見ても併用療法の有効性が確認 されたと判断したと書かれておりますし、今の御説明のところでちょっとよく分からなか ったのですが。 ○事務局 審査センターよりお答えいたします。本申請の内容はα-GIとの併用療法で す。確かにこの「効能・効果」の書き方は非常に分かりにくく誤解を与えるかもしれませ んので、もう一度再検討させていただきます。 ○谷川原委員 今までは併用は認められていなかったわけですか。添付文書を見る限り併 用の経験は少ないとは書いてありますが、併用禁忌にはなっていないのですけれども。 ○事務局 禁忌ではございませんけれども、経験がないということで添付文書上では一応 の縛りになっております。 ○谷川原委員 「使用上の注意」ですから、あれも縛りになるのでしょうか。 ○事務局 併用して特に有害事象とかがなければ、「禁忌」に書くことはまずあり得な いと思います。 ○谷川原委員 ではこの書き方であると、α-グルコシダーゼ阻害剤を使って効果がない ときにアクトス単独というのは使えるのですか、使えないのですか。 ○事務局 今回の効能追加では想定していませんが、実際の医療現場では十分そういう 可能性は出てくると思われます。今回の申請内容ではこの併用しか検討していないので すが、実際はα-GIをやめてしまって本剤に切り替えるという方法もありますので、そ れにつきましてはセンターの方から申請者の方に確認いたしましたところ、市販後の臨 床試験におきましてこのα-GIと本剤の併用、それからα-GIをやめて本剤に切り替 えたものを二重盲検で比較しようという計画が現在あるということでございます。 ○谷川原委員 一般的な承認の内容として、一応承認がされた場合は併用禁忌でない限 り併用として使うかどうかというのは、個々の医師の裁量で決められたことだと思うの ですが、これだけの臨床試験をやらないとα-GIとの併用というものが今まで使えなか ったわけですか。 ○事務局 すべての薬品につきまして併用ごとに効能追加が必要かといいますと、そう ではございません。この薬物は非常に特殊な例かと思います。その理由といたしまして は、類薬のトリグリタゾンが重篤な肝障害で販売中止になったということで、本剤につ いても同じような可能性が考えられます。また本剤につきましては、因果関係の否定で きない心不全が発生していると、単剤でも安全性…。 ○谷川原委員 心不全は体液貯留から来る薬理作用からいってある意味当然なのです が、肝機能障害に関しては薬理作用が同じだから必ずしも出るかどうかというのは分か らなくて、今現在2万例の市販後調査をやっていると思うのです。私が疑問に思ってい たのはこの併用に限るのか…、この適用の文言から見れば、先ほどおっしゃったように 個々の医師の裁量でもしかしたらアクトス単独投与ということもあり得るのではないか ということなのですが。 ○事務局 それでは事務局から御説明いたします。今回α-グルコシダーゼ阻害剤を併用 するということで併用療法の申請が上がったわけですが、現在の「効能・効果」でござ いますと「インスリン非依存型糖尿病」に「ただし」が付いておりまして、食事療法、 運動療法のみで十分な効果が得られない場合、それからSU剤投与で効果が見られない 場合と、こういう形で縛りがございました。それで今回α-グルコシダーゼ阻害剤の件と いうことで追加になったわけでございます。  それで分かりやすいようにということでちょっと書き直したのですが、これが良くな かったような点がございますので、この「効能・効果」の記載方法については、先ほど センターの方から申し上げましたようにちょっと検討させていただきたいと思います。 ○谷川原委員 その辺りの仕組みはよく分からないのですが、今までの薬剤の承認の与 え方とちょっと意味合いが違うような気がして、なぜこれだけこんなに特殊なのかと、 生命を左右するくらい危険な薬剤というふうには、ほかの類薬と比べてなかなかそうと も思えないのですけれども。ただ余りいろいろガチガチに縛ってしまうと、実際の医療 現場の先生方がかなり使いにくくなるのではないかという気がいたします。従来はイン スリンの抵抗性が認められるか、若しくはSU剤で効かなかったときに使えるというこ とだったのですが、今回はもう少し広くなって、まずα-GIでやって、それで効かなく てもアクトスに入れるというふうに読めたのです。そうすると、従来に比べて随分選択 肢が広くなった、現場の先生方が使いやすくなったのではないかと思ったのですが。た だ、それはα-GIの併用でなければいけないという話になるのですか。 ○事務局 お答えします。先生が今御指摘のとおりの用法、つまりα-GIを使って効果 がなかった場合、次はアクトスの併用だけかといいますとそういうわけではございませ ん。当然α-GIからアクトス単独投与に切り替えるということも、用法として認められ ると考えております。 ○谷川原委員 それも認められるわけですね。分かりました。 ○河村部会長 先生のおっしゃるのは、この添付文書ではそれが認められるかどうか分 かりにくいと。 ○谷川原委員 そう思いました。ただ、この書きぶりだったら認められると思うのです が、「審査報告書」の方に併用療法を認めるというふうに書かれておりますので、あの 「審査報告書」のような内容にされると恐らく現場の先生は使いにくいのではないかな という気がいたしました。添付文書自身の書きぶりは今の方がよろしいのではないかと 思います。 ○事務局 一応単剤で使われる場合は今までの効能で読めると思われるのですが、いか がでしょうか。 ○河村部会長 単剤の方は既にあるからという御意見ですね。そういう認識だそうです。 どうぞ。 ○事務局 事務局から補足させていただきます。先生御指摘のように、特に併用療法に 限ると書いていない限りは、併用療法については医師の専門的な御判断でお使いいただ けるものだと考えております。ただ、本剤の今回の適応追加ということに関して言えば、 上乗せをした効果を評価しましたということでございますので、ただ上乗せをしていて もまた途中でα-GIをやめてしまうとか、そういう選択は当然ございますので、それま で否定しているわけではございません。 ○河村部会長 あの御説明でよろしゅうございますか。ほかに御意見ございますか。で は一応よしとさせていただきます。議題は以上ですが、事務局から何か御連絡ございま したら、どうぞ。 ○事務局 次回の第一部会でございますが、7月5日金曜日、10時からということで予 定してございます。よろしくお願いいたします。 ○河村部会長 場所が決まっておりましたら…。 ○事務局 場所の方はまた後日御連絡させていただきます。 ○河村部会長 今日はおかげさまでちょっと早めでございますが、これで終了させてい ただきます。先生方、お忙しいところどうもありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 佐藤(内線2734) - 1 -