02/05/23 社会保障審議会 第10回介護給付費分科会議事録        社会保障審議会 第10回介護給付費分科会議事録 1 日時及び場所   平成14年5月23日(木) 14時から16時20分   厚生労働省 省議室 2 出席委員   西尾、青柳、喜多、木下、木村、見坊、笹森、下村、田中(滋)、田中(雅)、中村、   橋本、堀江、矢野、山口、山崎の各委員   三宅、高見澤、花井の各参考人   井形、岡、京極、澄田、樋口、村上、山本の各委員は欠席 3 議題   介護報酬について(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設) ○ 資料1に沿って、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設の報 酬体系の見直し案等について、福本企画官より説明。  (中村委員)  特別養護老人ホームは、約40年間に及ぶ措置制度における行政の指導監査に依存した 体質をこの2年間で変えようとしてきたが、なかなか変わらないのが実態。しかし、社 会の介護ニーズは大きく変わっており、全室個室・ユニットケア、ホテルコスト徴収、 社会福祉施設職員等退職手当共済制度、PFIによる新型ケアハウス等の重要課題が提起 され、これらに対応できるよう改革していかなければならない。  しかしながら、特養の会計処理の仕方一つをとっても、旧型補助制度の継続を前提と した国庫補助金等の取り崩し額という幻の収入がプラスされた中での減価償却制度が未 だに残っており、他施設との単純な数字での競い合いができないこともご理解願いたい 。管理者給与が44万4千円を見ていただいてもおわかりの通り、改革的運営に挑戦しう る人材の給与ではないということでございます。  このような旧制度を超えたかたちで新しい時代的ニーズである生活視点、自立支援介 護サービスをつくらなくてはなりません。新型特養の整備についても補助金が削減され 、資金調達能力や入所者獲得能力が大変重要ポイントになってきており、介護報酬の動 向によって大きく影響を受けることは必定です。  50床特養が圧倒的に多いのと、小規模30床が存在するのも市町村行政が政策的に推進 した結果です。  長年特養ホームは地域貢献、人材育成の拠点施設として貢献しています。  介護保険の本旨である利用者本位の選択を優先し、要介護度のみによる入所制度につ いては生活視点、介護環境を視点にとらえご検討いただきたい。  (山口委員)  規模別報酬については、概況調査の結果では規模の大きさと収支が必ずしもパラレル になっていないので、現時点では不必要である。  退所時指導加算について、老健施設の在宅復帰の機能からすると、「退所後2週間以 内」を「退所前」に見直し、退所前から退所後のケアプラン作成に備えることは高く評 価できる。  在宅復帰のインセンティブが働く報酬の仕組みが必要であり、また、ケアハウス、グ ループホーム等のケア付き住宅の併設を老健施設の一つの責務とし、国は基盤整備の観 点から支援するという考え方も必要ではないか。  老健施設内の医療のあり方について、専門医療が進んでいる中で、医療機関へ紹介し た場合に保険請求できない問題を含めて検討すべき。  多くの老健施設で既に看護・介護職員が加配されていることからすると、こうした3: 1以上の加配を加算で評価することも必要ではないか。概況調査では高い利益率が出て いるが、今後は介護の質の向上のために、さらにスタッフを増員する施設が増えてくる ので、人件費が上がると考えられる。  高齢者自立支援、医学的管理下での介護、リハビリ等の老健施設の本来の役割を踏ま えた介護報酬が望ましいが、要介護老人が増えることによる介護報酬の自然増分につい ては国民の皆様のご理解をいただきたい。  (木下委員)  規模別報酬については、制度が複雑化するので、現行のままでよい。  介護職員3:1の基準を廃止すると、あるべき姿に近づいてきた老人医療が後退する可 能性がある。3:1介護が4:1になると、患者100人に対して9人減、26%の人員減となるが 、これは医療や介護の安全、質の向上がうたわれている流れに逆らうものではないか。4 :1とすると、夜勤についても患者30人に1人の配置となるが、トイレ誘導、おむつ交換 、徘徊等の対応などの上に、酸素吸入、吸引、点滴等の医療的処置や症状観察を行うに は少なくとも2人は必要である。「基準は最低基準である。」との意見もあるが、現在 でも看護職員について2割以上加配している。  3:1介護を廃止すると5.8%減収となり、概況調査の利益率は4.2%であるから、現行の 職員を雇い続けると赤字になる。老健施設、特養、在宅では対応が困難な重介護で医療 の必要度の高い人に対するサービスについて、介護保険制度の中で担保する必要があり 、それが介護療養型医療施設であると思う。平成13年度介護サービス施設・事業所調査 でも、介護療養型医療施設に介護老人福祉施設よりも要介護度や痴呆度が高い人が入院 しているデータが示されており、同じ数の介護職員でいいということにはならないし、 その上に医療処置や、ターミナルのリハビリを含む入院している人の状態に適したリハ ビリが必要になる。  (喜多委員)  規模別報酬について、概況調査結果で規模別のコスト差が顕著に出ていないのはスタ ート時の条件が違うからであり、スケールメリットは必ず働くはずである。規模別報酬 は被保険者にとって複雑であり、同じ要介護度の人でも利用者負担に差異が出るという 問題があるが、選択肢が増えることは契約社会では当然であるし、保険料の観点からは 、効率的なサービス提供体制が可能となる規模別導入が適切である。ただし、市長会の 中でも意見は半々に分かれている。  全室個室・ユニットケア型特養の居住費については、負担額の合理的な基準が必要。 低所得者対策について、低所得者の定義を明確にすべき。住民税非課税者は全体の3/4 であるし、第3段階に入る住民税本人非課税者と第1、第2段階の者との取扱いが不公平 になることもある。生活保護受給者は第1段階に入っているが、生活保護は3/4を国、 残りを市町村が負担しているのだから、介護保険制度の中で軽減するのではなく、標準 額を負担していただくべき。  介護療養型医療施設の人員配置については、経過措置通りとすべきであり、3:1介護 を廃止することでいろいろと問題があれば、別の制度を新たに構築する必要がある。ま た、医療型と介護型は市民にとっては分かりにくいので、もっと分かりやすい制度にす べき。  施設の優先入所の基準については、要介護度と家族等の状況の考慮が必要ということ は制度施行前から言っている。在宅より施設の方が給付額が大きく、要介護1、2の方 が相当数施設に入所しているが、介護保険制度の公平な運営のためには、家族や本人の 生活状態をどこかでチェックすべきであり、現状では何らかの基準をつくるのが妥当。 あらゆる面で在宅介護を推進するための方策を検討することが大事。  (堀江委員)  規模別報酬については、現段階ではスケールメリットは示されていないので、事務を 複雑化する必要はない。  退所時指導加算の見直しについては、退所時にケアマネジャー等と連携するのは当然 であり、居宅介護支援の報酬のあり方の議論の中で必要があれば加算されてもいいが、 こういった形の加算は役割・機能の面からすると違うのではないか。  全室個室・ユニットケア型特養については、将来的にそのような施設整備を行うこと に異論はないが、現段階で保険制度内での低所得者の負担軽減措置は時期尚早である。 伊勢原市では当初計画通り施設整備を達成しているが、現在188人の入所者に対して150 人が待機しており、施設整備を進めるのが基本。介護保険制度内ではなく、福祉行政の 範囲で経費を支出するのであれば全く異論はない。  介護療養型医療施設の人員配置については、本当に必要なときに必要な廃止等の措置 を講ずればいいので、もう少し継続して、現状を見極めるべき。  入所基準の見直しについては、現行のサービス提供体制に行政・市町村がもっと関与 すべきと考えており、見直し案通りに追加すべき。  (堤老健局長)  新型特養については、個室・ユニットケアの成果が様々な研究により実証されている ので、良いケアを提供する観点から標準的なサービスとして位置づけたいと考えている 。もちろん、現行の施設も多数あり、ソフト面の技術も重要であるから急に切り替える ことは難しいが、ぜいたくケアという位置づけでは絶対にない。かつ、1割負担に加えて 4〜5万円のホテルコストをいただくので、負担は倍近くになる。標準的なケアであるか ら、低所得の方であっても必要があれば入所を妨げることはできず、一定の配慮が必要 となる。むしろ、1〜2万円で十分かという批判を懸念するぐらいであるが、全体の影響 を踏まえてこの程度はぎりぎり配慮し、足りない部分は福祉のレベルで社会福祉法人等 により対応する。  さらに、施設整備の国庫補助金を有効に活用し、より多くの施設を整備することもで きるようになるので、待機者の解消にも資する方向であることをご理解いただきたい。  (堀江委員)  将来にわたって全室個室・ユニットケア型特養の整備が必要ないということではなく 、現段階で介護保険制度の枠内で低所得者の負担軽減措置を行うのは時期尚早ではない かということである。個室・ユニットケアがぜいたくケアであるとは決して思っていな い。  (下村委員)  規模別報酬については、同一サービスに対する同一料金の原則から、現行通りでいい 。  全室個室・ユニットケア型施設について、特養についての方向性は理解するが、そこ までの水準ではない療養型や老健施設についてはどう考えるのか。  介護療養型医療施設の3:1介護について、人員配置基準によるサービスの差は患者に は全く分からず、実態としてもあまり差がないケースもあるので、人員配置基準ごとに 差をつけて報酬を支払うという考え方は基本的に問題があると考えており、また、新し い問題が発生したわけでもないので、区分を少なくするという意味で経過措置通りやめ るべきではないか。  (三宅参考人)  中山間僻地では30人規模の特養が多く、このような小規模施設ではスケールメリット が効かないが、規模別報酬に係る「現行通り」の案においては、小規模特養に対する配 慮は引き続きなされるのか。  (福本企画官)  資料1ページのA案の「現行通り」というのは、小規模特養に対する配慮も含めて現 行通りということである。  (矢野委員)  概況調査結果で規模の違いによるコストの差が現れていないのは、スタート時点での 差や現在の総費用の使われ方などが要因と思われる。介護サービスだけが例外ではなく 、時間とともにスケールメリットが現れてくると思うので、規模別の報酬を設定するこ とが好ましい。離島等の人口の少ない地域に対する配慮は必要。  退所・退院前からの連携については、介護保険制度の本旨である在宅重視を促進する ことであり評価できるが、運用に際しては、連携の内容を明らかにするなど実効性のあ る対応が必要。  全室個室・ユニットケア型特養については、方向性は正しい。居住費の算定方法の考 え方も妥当と思う。ただ、低所得者等のニーズを総合的に見ると、従来型の施設の整備 も進める必要があるのではないか。  一般論として手厚い人員配置をすれば、より良いサービスが受けられることは否定し ないが、介護療養型医療施設の3:1介護については、現在4:1介護が35%あって十分機能 していると思われるので、2年前に決めた経過措置通り打ち切るべき。  運営基準の見直し案については、本当に入所が必要な人に必要なサービスを提供する ことの促進につながるので、評価したい。  (石井計画課長)  全室個室・ユニットケアを特別養護老人ホームで進めるのは、特養が入所者にとって 生活の場であるからである。これに対して介護療養型医療施設や老健施設は、生活の場 ではなく、医療提供施設である。  生活の場で、できるだけ家庭に近い居住環境を実現し、個別ケアを提供することは、 グループホームや先駆的に全室個室・ユニットケアを行っている特養において質のいい サービスとして大きな実績を上げており、介護保険制度の中で特養が提供すべき標準的 なサービスと考えている。このような標準的なサービスの利用に係る低所得者への制度 的な配慮については、介護保険制度の枠内で考える必要がある。  従来型のニーズもあるのではないかとのご指摘があったが、生活の場である特養では 、1人になれる空間としての個室と他の入所者と交流できる空間の両方があることで家 庭に近い居住環境が実現し、これによって良いケアを提供できることが分かってきてい るので、今後整備する特養のあり方としては、全室個室・ユニットケアがふさわしいと 考えている。  (山崎委員)  3施設の機能・あり方を反映した報酬見直しが必要であり、また、在宅サービスへの インセンティブがなかなか湧かないのは、家族の負担感や不公平感が是正されていない からであるが、この辺りも論点としてほしい。  退所前の連携等の評価については、在宅事業者にも共同指導という形で報酬を振り分 けていただければよいのではないか。  介護療養型医療施設の3:1介護については、既に58%が3:1で、さらに加配している施 設の努力もあるし、医療療養型から介護療養型への移行や夜勤体制の問題もあるので、 存続させていただきたい。  診療報酬改定に必ずしも介護報酬を合わせることはないが、院内感染防止、医療安全 管理、褥瘡対策に係る減算については、減算かどうかは別にして、質の向上の観点から 3施設共通に評価してもよいのではないか。  運営基準の見直し案はよろしいが、本当に待機者実数なのかということや待機者の実 態について何か調べることができればよいと思う。  (青柳委員)  保険者の機能と役割について、保険財政の観点だけでなく、利用者に質の良いサービ スをどのように提供するかの視点が欠けていてはいけない。  介護療養型医療施設の3:1介護の存続に納得できないのであれば、特に夜勤の時間帯 に一度介護現場を見ていただきたい。  規模別報酬については、規模別に設定すべきとまでは言ってないが、概況調査ではど こに規模を置くかによって施設の中で大きな収支差が出ているところもあるので、現行 の同一の報酬体系に矛盾があると考えるかどうか。そういった矛盾を解消した上で、な おかつ余り複雑でない報酬設定を考えるべき。  3施設の減価償却費と開設年を見ると、老健施設、特養と比べて介護療養型医療施設 は古く、減価償却費の割合も低い。療養環境が古くなってきているということであるが 、現在の収支差で療養環境をリニューすることができるかが問題。  現在は施設の需給バランスが取れていないので、本来の目的に適わなくても入所せざ るを得ないという3施設間の代替利用が起きているが、今後の方向としては、要介護度 だけで人員配置を考えるのは不適切であり、例えば療養病床については、医学的管理・ 医療処置のニーズを加味した形で人員配置を考える必要がある。  待機者の要介護状態やニーズ等の実態についても、全国調査は必要ないので、データ を用意してほしい。  全室個室・ユニットケア型特養の居住費については4〜5万円で、1割自己負担を加えて 7〜8万円の負担という説明であるが、これ以外に日常生活雑費等の自己負担は全くない のか。全体としてどのぐらいの自己負担が必要になるのか、国民に対して明示すべき。  (高見沢参考人)  特養の全室個室化は、利用者の立場からすると、将来の課題ではなく遅きに失した感 がある。エントランスや食堂を豪華にしたり、ベッドの間をカーテンで仕切ったりして も、4人部屋は雑居であって住まいではなく、最低限プライバシーを守るために同室の 方との交流もなく、排泄の失敗は非常に恥ずかしいし、多様な価値観を持つ団塊の世代 の場合には、人間関係のストレスから日常的ないじめが起こることもあり得る。  ヨーロッパで福祉のレベルが一番ではないドイツでさえも介護保険導入を機に全室個 室に踏み切っており、将来的にと言っていては、もはや国辱問題でさえある。また建物 の耐用年数を考えれば、個室化を前提としないと大きな無駄にもなる。  費用負担については、低所得者については慎重に対応すべきだが、リバース・モーゲ ージなどによって資産を活用することも当然考えられる。ただし、居住費の変更につい て、単に施設が都道府県知事への申し出だけですむのは、利用者を無視した一方的な値 上げを招く恐れがある。  (田中(滋)委員)  規模別報酬については、大規模ほど利益率が高いなどのデータに基づかなければ何も 言えず、現在のデータから相対的に判断すれば、規模によらず同一の報酬しか選択でき ない。経済学的には規模の経済性が必ずあるとは言えない。大きくなるほど平均費用の 最低点が低くなる場合に規模の経済性が見出されたと言えるが、そうではない産業もた くさんあり、かつ平均費用の最低点は標準的な操業率とは限らない。営利企業は最低の 費用で操業するが、非営利組織はその保障はない。  これまでしばしば問題となった医療法上の経過措置は質の低い下位10%に係るもので あったが、介護療養型医療施設の3:1介護の人員基準については5割超を占める質の高い 基準を外すということであり、3:1介護の施設で人員が余っているというデータがあれ ば別であるが、納得できない。  特養の全室個室化については、時期尚早ではなく、今から始めなければ時代遅れであ る。  (笹森委員)  全室個室・ユニットケア型特養の居住費について、痴呆性高齢者を介護している家族 の意見を聞くと、在宅介護を続けられなくなり、特養の順番待ちで一旦有料老人ホーム を利用した後、特養に入所するような場合は、個室であれば当然居住費を払うという意 見が多い。居住費を納得できるかどうかは結局は金額次第であるが、痴呆性高齢者にと っての個室・ユニットケアの意義を家族にも納得がいく形で説明していただきたい。  (花井参考人)  退所・退院時の援助の見直し案については賛成。  全室個室・ユニットケアについては、特養だけでなく、老健施設でも一定期間生活す るわけであるから、将来的には個室化を目指すべき。居住費については、現段階ではこ れぐらいの金額は仕方ないが、東京ともっと土地が安い地域で同じ金額でいいかという 問題を検討してほしい。  運営基準の見直し案については、概ね賛成であるが、老健施設についても家族の状況 を加えるべきではないか。優先順位を施設だけで判断するのではなく、公平性の確保の 観点から、外部の関与や優先入所基準の明確化などの工夫ができないか。  (田中(雅)委員)  全室個室・ユニットケア型特養の居住費の料金の調整について、物価が下降気味の現 状において、どうして物価上昇率を勘案するのか。むしろ、賃金を勘案すべきではない か。  運営基準の見直しについて、介護の必要度の判断は誰がどのように行い、客観性、透 明性をどう担保するのか。施設の自主的判断だけでなく、神戸市等のように、行政、ケ アマネジャー、利用者等の参画が必要ではないか。  特養の個室・ユニットケア化が進むと密室化の可能性も高く、施設サービスの介護従 事者については在宅サービスのようにホームヘルパー養成研修修了者という義務づけが ないので、介護サービスの質の担い手の問題が大事であり、倫理規定がしっかりしてい て専門的な知識・技術を有する介護福祉士等の配置を考える必要がある。資格職を採用 すると費用は高くなるが、自立を目指した介護の質を担保するには専門職が必要であり 、国民全体の安心や信頼を得ることにもつながる。  社会福祉法人は介護保険サービス以外にも、介護福祉士やボランティア等の研修や地 域住民への施設の開放等の事業を行っており、収益だけで報酬を議論するのではなく、 こうした役割を評価してほしい。また、今後、個室・ユニットケア化を進めるに当たっ て、質の高い人材を多く配置することも必要になってくる。  (石井計画課長)  新しい運営基準の運用に当たり透明性を高めることは非常に大切であり、都道府県単 位、あるいは市の単位で特別養護老人ホームの事業者の団体が、行政の参画も得て話し 合いを行い、「介護の必要度」や「家族等の状況」を更に具体化した勘案事項を、管内 の特養に共通のものとして決めることが望ましいと考えている。今後、関係団体や自治 体にもそういう方向で働きかけていきたい。  (福本企画官)  居住費の料金の調整について、施設が一旦決めた料金は都道府県知事に届出を行い、 光熱水費の料金が大きく上がった場合などは、居住費も改定することとしている。居住 費の範囲は建物の費用、光熱水費、物件費等であるため、変動する要素としては物価上 昇率を挙げている。  (橋本委員)  規模別報酬については、生活施設はできる限り小さい方がいいというのが世界的な傾 向であるし、収支差の絶対額は規模の大きい施設ほど大きく、小さい施設をつくりにく いので、規模別に報酬を設定すべきと思うが、もう少しデータを集めた上で決定する方 がいい。  全室個室・ユニットケア型特養の居住費については、個室化しなくても居住費を負担 してもらっていいのではないか。施設整備費との二重徴収の問題もあるが、在宅の利用 者と施設の利用者の居住費負担は公平であるべき。介護保険制度をつくるときには、年 金から保険料と利用料を払うことを想定していた。低所得者の定義を明確にした上での 配慮は必要であるが、基本的に居住費は自分で負担するのが当然である。特に寝室につ いて、個室は人間の尊厳を保つケアという意味で絶対に必要。  社会福祉法の改正で社会福祉法人の経費の柔軟な運用が認められたのは社会福祉の再 生産のためであったが、制度転換の一番大きな影響を受けた社会福祉法人は先行き不透 明ということもあって人件費を圧縮して多額の剰余金を残している。残っている財源を 使って、既存施設の個室化や身体拘束を廃止するために優秀な人材の配置に努めるべき 。  (見坊委員)  規模別報酬については、利用者にとってどの程度の規模がいいかの議論が前提である 。東京辺りでは100人規模が経営はやりやすく、50人規模から100人規模への移行が進ん でいるが、利用者にとっては30人ぐらいの小規模施設を市街地の中につくることが大事 。  全体としては、急速な報酬の引き上げは場合によっては制度を後退させることにもな るので、緩やかな改善をお願いしたい。  概況調査によると特養は十分な利益が上がっており、介護報酬の引き下げにも耐えら れると印象づけられているが、40年以上にわたり措置制度で運営されてきたこと、概況 調査の抽出率・有効回答率が高くないこと、地域差や施設の歴史によって実態は全国平 均と異なることなどを踏まえると単純な分析はできない。  特養は、事業収益があまり変わらない中で人件費が圧縮され、介護職員の給与もダウ ンしており、職員の処遇が低下し、利用者にとっても職員が頻繁に変わってなじめない 。常勤職員のリストラと非常勤化が進んでおり、施設数の伸びに比べて常勤職員の数の 伸びは大きく鈍化している。社会福祉法人として、特養の職員の資格制度や身分をしっ かりと固めて処遇を安定させ、サービスの質が向上するように資金を投じていただきた い。  また、個室化・ユニット化の整備、低所得者対策、地域センター機能発揮など、社会 福祉法人としての目的役割達成を考慮して、介護老人福祉施設の報酬については慎重な 検討が必要である。  措置制度については、介護保険の発足で措置制度がなくなったと思っている市町村の 担当者もいるが、虐待や介護放棄などの事件がある中で、措置による救済が残されてい ることをもっと周知してほしい。  (木村委員)  退院・退所時の援助の見直し案については賛成である。現在は施設のケアマネジャー と在宅のケアマネジャーの交流が一方的だったので、今回の見直しによって、退所前か らの在宅状況の把握や在宅復帰のためのケアプラン作成が進むことを期待しており、質 の高い在宅サービスが継続されるような運用と、高い単位数の設定をお願いしたい。  (外口老人保健課長)  第11回は、6月7日(金)の10時からで、議題は、第2ラウンドの3回目として、通所介 護、通所リハビリテーション、痴呆対応型共同生活介護等、第2ラウンドの残りの部分 について審議していただくことを予定している。  (西尾分科会長)  本日はこれをもって閉会とする。 照会先 老健局 老人保健課 企画法令係 TEL 03(5253)1111(内3948 3949)