02/05/17 第6回社会保障審議会議事録 第6回社会保障審議会 ○日時  平成14年5月17日(金)14:04〜16:10 ○場所  厚生労働省 省議室(9階) ○出席者 貝塚啓明 会長      〈委員:五十音順、敬称略〉      阿藤 誠、糸氏英吉、京極高宣、小宮英美、清家 篤、高久史麿、      中村博彦、長谷川眞理子、樋口恵子、廣松 毅、堀 勝洋、若杉敬明      〈臨時委員:五十音順、敬称略〉      村上忠行、矢野弘典      〈事務局〉      石本宏昭政策統括官(社会保障担当)、中村秀一審議官(医療保険、医政担      当)、河 幹夫参事官(社会保障担当)、大谷泰夫医政局総務課長、      榮畑 潤年金局年金課長、 坂本純一年金局数理課長、      高原正之統計情報部企画課長、皆川尚史雇用均等・児童家庭局総務課長、      森山幹夫社会・援護局総務課長、仁木 壯障害保健福祉部企画課長、      小林和弘老健局総務課長、西村 淳政策企画官 ○議事内容 1.開会  西村政策企画官  ご出席予定の方でまだお見えになっていらっしゃらない方もおられますけれども、定 刻を過ぎておりますので、ただいまから第6回社会保障審議会を始めさせていただきま す。  本日は、浅野委員、稲上委員、岩尾委員、岩田委員、翁委員、奥田委員、鴨下委員、 木委員、高秀委員、永井委員、西尾委員、星野委員、宮島委員、山本委員、渡辺委員 がご欠席でございます。  また、本日は、臨時委員の村上委員、矢野委員にもご出席いただいております。  それでは以後の進行は貝塚会長にお願いいたします。  貝塚会長  それでは、まだ見えられていない委員もおりますが、時間が少し過ぎましたので、始 めさせていただきます。  本日は皆様お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。  まず、本日の議事についてお諮りいたします。  本日は、1月に行った前回の審議会以降、社会保障に関係する報告等が何点かござい まして、本日も午前中に年金関係について年金部会が、少子化問題については少子化社 会を考える懇談会が行われておりますので、これらを中心に事務局から報告していただ くことにしております。  まず、議題1として、「新人口推計の厚生年金・国民年金への影響について」及び「 社会保障の給付と負担の見通し−平成12年10月推計改訂版−」について  議題2として「少子化問題について」  議題3として、3月28日の医療部会でまとめられた医療部会報告書「医療提供体制 に関する意見」について、順次審議したいと思います。 2.「新人口推計の厚生年金・国民年金への影響について」及び「社会保障の給付と負 担の見通し −平成12年10月推計改訂版−」について  貝塚会長  それでは、早速議事に移りたいと思います。  議題1の「新人口推計の厚生年金・国民年金への影響」及び「社会保障の給付と負担 の見通し−平成12年10月推計改訂版−」について、事務局から資料のご説明をお願いし ます。  坂本年金局数理課長  年金局の数理課長でございます。お手元の資料1「新人口推計の厚生年金・国民年金 への財政影響について」に基づいてご報告させていただきます。  まず、この試算の位置づけでございます。1ページの1ですが、本年1月の新人口推 計、これは国立社会保障・人口問題研究所が公表したものですが、これが公表されまし て、出生率の低下、平均寿命の伸びなど、年金制度の基礎となる人口の将来見通しに大 きな変化があることが示されたところでございます。このために、次期制度改正の検討 を進めるに当たり、この新人口推計の年金財政への影響を明らかにすることを目的とし て平成11年の財政再計算を元に、平成12年度末の被保険者数等の実績を初期データとし て将来推計人口を前回の人口推計ベースから新人口推計ベースに機械的に置き換えて試 算を行ったものです。人口推計を取り替えて計算してその影響を見ようとしたものです 。  したがいまして、次の2.試算の前提としては、まず、将来推計人口は、国立社会保 障・人口問題研究所が公表しました平成14年の将来推計人口に基づいております。この 平成14年の将来推計人口の内容について、2つの大きな特色がございます。まず、出生 率ですが、グラフに示されておりますように、今回、出生率の前提として2000年以降の 出生率の変化が仮定されたわけですが、高位推計で最終的に1.63、中位推計で1.39まで 戻り、低位推計では1.10まで低下していくという前提が設けられたところです。この高 位推計の1.63ですが、前回、平成9年に公表されました将来推計人口の中位推計とほぼ 同じ値となっています。前回、平成9年の中位推計では1.61まで戻るという前提でござ いました。したがいまして、前回の中位推計と、今回の高位推計についての出生率の前 提がほぼ同じであるということが言えようかと思います。  もう1つは寿命です。これは大変喜ばしいことですが、2050年における平均寿命が、 男子が80.95歳と、前回の推計の前提よりも1.5歳伸びるという前提になっています。ま た、女子の場合は89.22歳と前回よりも3歳弱伸びるという前提になっているところで す。出生率が低下して、寿命が伸びるという特色を持った推計になっているわけでござ います。  また、試算のその他の前提としては、前回の平成11年の財政再計算と基本的に同じも のを用いております。例えば、経済的要素は、賃金上昇率は2.5%、物価上昇率は1.5% 、運用利回りは4%という前提を用いて算定したところでございます。ただし、2007年ま では現下の非常に低い物価上昇率あるいは賃金上昇率等を踏まえて、平成11年の財政再 計算の前提よりもそれぞれ1.5ポイントずつ下方に移動させた値で算定しております。即 ち、2007年までは、賃金上昇率は1%、物価上昇率は0%、運用利回りは2.5%という前提 で算定しております。  一番下の国庫負担については、国庫負担割合を1/2とする場合にも機械的な試算を行っ ておりますが、平成16年10月から国庫負担率を1/2に引き上げるという前提で計算してお ります。  2ページは、3.試算の結果及び留意点の(1)に試算結果を掲げています。この表 は上の段が基礎年金に対する国庫負担割合が1/3のケース、下の段は国庫負担割合が1/2 のケースを掲げております。  まず、厚生年金ですが、負担割合が1/3の場合、平成11年財政再計算ベースでは平成37 年(2025年)以降の最終保険料率が21.6%と見込まれたところです。これが、今回の機械 的な試算によりますと、高位推計では22.8%に、中位推計では24.8%、低位推計では27. 5%という最終保険料になるという見通しになります。前回、平成11年の財政再計算にお ける保険料の水準を100とした場合には、高位推計のものは106、中位推計では115、低位 推計では127という指数で表されるところです。 国民年金については、保険料月額を平 成11年度価格で表示していますが、平成11年の財政再計算ベースでは最終保険料が25,20 0円と見込まれたところですが、今回、機械的な試算を行いますと、高位推計は27,100円 、中位推計は29,600円、低位推計は33,000円となると見込まれたところです。  そして、平成11年財政再計算でおける最終保険料の大きさを100とした場合には、高位 推計、中位推計、低位推計、それぞれ、108、117、131という指数で表される最終保険料 額となっているところです。  下の段は国庫負担割合が1/2のケースについて記載させていただいたものです。厚生年 金では平成11年財政再計算においては19.8%と見込まれておりましたものが、高位推計 、中位推計、低位推計ではそれぞれ20.6%、22.4%、24.8%と見込まれまして、平成11 年財政再計算ベースを100とした場合にはそれぞれ、104、113、125という指数になると 見込まれたところです。  国民年金も同様に、平成11年の財政再計算ベースでは18,500円と見込まれたものが、 高位推計では19,900円、中位推計では21,600円、低位推計では24,000円と見込まれると ころで、それぞれの指数は平成11年財政再計算ベースを100に対して、108、117、130と なっているところです。  表の下の注2にありますように、現在の保険料率は厚生年金で13.58%という水準にな っています。これは総報酬ベースでして、現在はまだ標準報酬で実施されていますので 、その値が17.35となっていますが、来年4月から総報酬ベースで実施されますので、13 .58という保険料率に切り換わることになっております。  国民年金の保険料月額は現在のところ13,300円です。  これらの試算結果をまとめたのが(1)〜(3)です。  (1)は、財政影響を最終保険料率でみた場合、平成11年財政再計算ベースと比較して、 高位推計では0.5割、5歩程度の上昇。中位推計では1.5割程度の上昇、低位推計では2.5 割から3割程度の上昇となっています。  (2)この主な要因は、高位推計は寿命の伸びの影響によるものであるということがいえ ようかと思います。これは1ページの図で見ていただきましたように、高位推計の出生 率は前回の財政再計算のベースになった人口推計と同じ程度のものです。したがいまし て、その差は今回の寿命の伸び、つまり死亡率の改善分にあるということがいえようか と思います。  中位推計では、寿命の伸びの影響が0.5割程度、少子化の影響が1割程度ということが いえようかと思います。それから、低位推計では、寿命の伸びの影響が0.5割程度、少子 化の影響が2割〜2.5割程度となっているところです。  (3)具体的な影響としては、当面は寿命の伸びに伴うものがじわじわと生じてきて、少 子化の影響は概ね平成32年(2020年)以降、これは現在生まれる子どもが成人に達する頃 以降、長期の将来に向けて生じるものです。 (2)これらの試算結果を踏まえてこれから検討を進めていく場合の留意点として、3 つの点をまとめています。  (1) 今回の新人口推計における少子高齢化は、欧米主要国と比較しても著しい程度で 一層進行するものである、ということがいえようかと思います。将来の日本の社会経済 全体に大きな影響を及ぼすものですので、従来にも増した本格的な少子化対策を推進す ることが求められているということです。厚生労働大臣の下で「少子化社会を考える懇 談会」を発足させているところです。  (2) 今回の年金制度の改革においては、この新人口推計をどう受け止めるかについて 、今後の少子化対策の検討を見つつ、国民に開かれた形で幅広い観点に立った十分な検 討が必要である。  (3) その際、雇用政策と相俟って高齢者や女性など支え手を増やす方策を検討するこ とが重要である。  次の3ページは、主要先進国の65歳以上人口の割合、あるいは合計特殊出生率の過去 の実績及び将来見通しをグラフにしたものを掲げています。  上のグラフは、1950〜2000年までは実績、2000年以降は将来見通しという形で、主要 先進国の65歳以上人口の割合を示してございます。  太線の部分が我が国の今回の平成14年将来推計人口の中位推計によって算出した65 歳以上人口の割合の将来見通しですが、これがどんどん増加して最終的に他の主要先進 国を抜いて、イタリアと大体同じ水準ということですが、非常に高い65歳以上人口の割 合となっていることが見てとれようかと思います。  下のグラフは、2000年までの合計特殊出生率の実績で、太い黒い実線が我が国の実績 を示しております。ご覧いただいて分かりますように、これはどんどん低下しておりま して、ドイツ、イタリアと並んで一番低いグループに属しているということがいえよう かと思います。  次の4、5ページは、今回の試算では2025年以降の最終保険料率の算定を機械的に行 ったものですが、2025年に至るまでは平成11年の保険料のスケジュールをそのまま踏襲 しているものです。その保険料のスケジュールを記したものです。  これを見ていただく場合の2つの留意点を上の四角に記していますが、1つは、今回 の試算では、最終保険料(率)に到達するまでの間の保険料(率)については、便宜的 に、平成11年財政再計算時の保険料引き上げスケジュールに基づいており下の表のとお りです。しかしながら、具体的な保険料引き上げスケジュール及び内容については、次 期年金制度改正に向けた議論の中でこれから検討が進められていくものです。今回の試 算における保険料の引き上げ方自体が議論の対象になるという性格のものです。  もう一つは、平成15年4月から厚生年金は主として月給のみを対象として保険料の賦課 及び給付額の計算を行う標準報酬制から、月給とボーナスを区別することなく保険料の 賦課及び給付額の計算を行う総報酬制に移行することが前回の改正で定められています 。したがいまして、ここで書かれている保険料率のうち、平成15年度以降のものは、総 報酬ベースのものが今後使われるということです。最後の行に書かれていますように、 標準報酬制による保険料率は制度としては存在しないということに留意する必要があろ うかと思います。以上でございます。  貝塚会長  どうもありがとうございます。それでは引き続き、給付と負担の見通しについて、参 事官お願いいたします。  河参事官  社会保障担当参事官の河でございます。よろしくお願いいたします。資料2に「社会 保障の給付と負担の見通し」について、いま年金局から説明させていただきましたもの も含めて社会保障全体の給付と負担の見通しを出させていただいております。  これは平成12年10月に、11年に行われた年金の財政再計算をコアとしてそのときの状 況等を踏まえまして、医療、介護、福祉等を足して推計したものです。それに四角に書 いてありますように、今回の日本の将来推計人口を踏まえて必要な修正を行ったもので す。  3ページを先に見ていただきますと、いま年金局からご説明ありましたが、今回の給 付と負担の見通しは、[推計の前提]の「(2)人口推計」の部分でございますが、こ の社会保障審議会で1月30日にご議論いただき、公表させていただいた推計人口に置き換 えるというのが今回のポイントです。  ただし、経済前提がその後の状況によって現実になってる姿がございますので、それ を踏まえて2007年度までの経済前提を置き換えたという部分があります。それが(1) に書いてある「経済前提」の部分です。なお、これは医療制度改革の前提とも同じ形に なっております。この2つが平成12年10月推計の変更点ということです。  また、それに加えて、「医療」については医療制度改革、皆様方にご尽力いただきま したが、いま国会に提出されている法案を踏まえて、その部分についての数字を見直し たものとなっております。  以上、人口推計を中心に、2つのポイントが変更されているということをご理解いた だければ有難いと思います。  1ページに戻っていただきますと、1ページは基礎年金の国庫負担割合を1/3としてい るもの、2ページは1/2としているものです。  まず1ページは、平成12年10月推計が、いま申しました人口推計を置き換えてみたら 、どうなったのかということで、これが結果表です。1ページの一番上に書いてある社 会保障給付費は、2025年で176兆円、NI比が31 1/2 になっています。なおNI比です から、一番下の国民所得を見ていただきますと、2025年557兆円となっております。下の かっこ書き、557の下の660というのが、平成12年10月のときの国民所得という前提にな っていたわけですが、これが557兆円ということで、16%ほど減っているのは、先ほどの 経済前提の変更に伴うものです。社会保障給付費もほぼ同じ割合で、またに経済前提の 変更等に伴って減っており、年金については84兆円、医療については60兆円、福祉等に ついては32兆円で、NI比はそれぞれ、15、11、5 1/2ということで、ここの表示の仕方 では、平成12年10月とNI比においては同じ数字になっているところです。  負担の方は、182兆円ということで、NI比 32 1/2 となっています。この部分につい ては、先ほど年金局からご説明申し上げた年金の部分の最後のところの影響が若干出て いるということです。  2ページは、基礎年金の国庫負担割合が平成16年から法律の検討を含めた形で1/2にな った場合どうなるかということで表したものですが、当然のことでありますが、給付費 は全く同じですが、負担の方で、保険料負担が−1ポイント、公費負担が+1ポイント となっているところです。以上でございます。  貝塚会長  どうもありがとうございました。それでは只今の人口推計を中心としたお話と、それ に基づく社会保障の給付と負担の将来推計についてとりあえずの試算がなされている。 これについて皆さんからご自由にご発言ください。ご質問でもご意見でも結構ですので 、どなたからでも。  矢野委員  年金についてですが、今回試算の国庫負担1/3の場合の中位推計による最終保険料率24 .8%という数字は年収の1/4を占める大きな負担でございまして、従来の標準報酬ベース でみますと31.9%になるということですから、年金以外の、医療あるいは介護の負担も 考慮しますと、こうした重い保険料負担をそのまま将来の世代に残すということは、経 済社会の活力を削ぐことになって大変由々しい事態に直面しているというふうに考えて おります。したがいまして、年金制度自体において、人口変動に対応し得るような改革 を行う必要があると思うわけです。その際、今回の制度改正におきましては、人口変動 によって給付の抑制と負担増を繰り返す従来型の見直しではなく、負担を将来世代が容 認し得るレベルに抑制するとともに、世代間の負担と給付のアンバランスを是正すると いう観点に立って給付のあり方や財政、財源のあり方の抜本的な見直しを検討する必要 があるというふうに考えます。  それから、今後の新たな支え手として高齢者や女性が挙げられておりまして、これは このとおりであると思いますが、もっと中長期的な課題として外国人労働者の問題も検 討する必要がある。短時間で結論が出る問題ではございませんけれども、今後の我が国 の経済社会のありよう、将来の国のあり方というような観点から考える必要があると思 います。外国人労働力の問題は単に年金の支え手を増やすということからのみ議論すべ き課題ではなくて、もっと大きな将来の国づくりの課題であると思っておりますが、そ れを中長期的な課題として認識しておく必要があると思います。  以上2点申し上げました。  中村委員  いつも議論になるんですが、少子化がどうしても止められない。しかし本当に、いま の日本を見ていると、そういう部分では閉鎖社会というイメージがあります。それだけ に、もう少し人口問題についてはすべてに開放的というか、明るい施策を是非打ってほ しいと思います。税の問題もそうでしょうし、いま矢野委員がおっしゃったように、外 国人労働者の問題、それは中期的な課題と思いますが、まず外国人の研修制度等、もう 少し人口が流動するように動いてほしいなあと思います。直接関係はないかもしれませ んが、今回の亡命問題にしても、また難民の問題にしても、閉鎖という流れがあり過ぎ るように思います。そういう意味で、早く関係省庁で少子化人口減問題を取りあげてほ しい。厚生労働省だけでなく、関係省庁で周辺部分も含めて課題整理を早急にしてほし い。  清家委員  現在のような、かなり賦課方式の要素が強い年金制度の下では人口構造の変化がダイ レクトに給付と負担の問題に響いてくるわけですが、そういう面で1つ大切なのは、先 ほど矢野委員もちょっとお触れになりましたけれども、人口構造の変化からできるだけ 中立的に制度をもっていくことだと思います。もちろん現在の公的年金の枠組みの中で これを一気に積み立て方式にするというようなことはできないということはそのとおり ですが、しかし、その中でも積み立て要素を増やしていくことはできるわけですね。具 体的には、例えば、保険料引き上げのペースをもっと早くすることによって将来の保険 料率を抑えることもできるわけで、実はいまやっている保険料引き上げの凍結などはこ れに逆行するようなことをやっているわけですが、これは政治的には難しい部分がある のかもしれませんが、現在の公的年金制度の枠の中でできる限り積み立て要素を増やし ていくというようなことが1つ大切かと思います。  もう1つ、少子化対策というのは確かにとても大切で、できるだけ多くの、子どもを 持ちたいという人たちが子どもを産めるような環境をつくることは大切かと思いますが 、しかし、やはり人口構造を抜本的に変えるということはなかなか難しいわけですから 、人口構造はあまり大きくは変えられない外生的な要因だとすれば、変えられるのは年 金制度も含めてですけれども制度の方なわけです。その際、大切なのは、もちろん外国 人労働の問題も検討する必要はありますけれども、その前にまだ十分活用されていない 国内の人的資源、特に働く意志や仕事能力があるにもかかわらず、定年制度等によって そういった活用が妨げられている高齢者であるとか、あるいは女性の就労を促進する。 また雇用が、特に女性の就労等が促進される際に、多様化しているわけですが、雇用形 態が多様化する中で実は公的年金制度のカバレッジから外れてしまうような種類の労働 力が増えているという現状がありますので、できるだけそういう、特に女性の就労等が 増える中で雇用形態が多様化しても公的年金制度が空洞化しないように、その適用を場 合によっては実態に合わせて多少制度を変える必要もあるかもしれませんが、働く人が 基本的に公的年金のカバレッジの中に入ってくるようにしていくことが必要かと思いま す。  貝塚会長  ありがとうございました。矢野委員あるいは中村委員が言われました少子化の話につ いては、後で少子化の懇談会の話が出て参りますので、その機会にご議論いただいても いいと思います。ほかにご意見ございますでしょうか。村上委員どうぞ。  村上委員  まずいくつかの質問をしておきますが、推計人口のところで、婚外子、非嫡出子の問 題についてどういうふうな統計上の扱いがあったのかを聞かせていただきたいのが一点 です。  それから、これはいつも堀委員とは意見がぶつかるのですが、これから20年先は支え 手の人口は変わらないというのは一致しています。しかし、2050年までそれをストレー トに伸ばしてそうだと。ストレートに伸ばした場合、どういうことになるのかを頭には 入れなきゃいかんと思っていますが、それを前提に考えるということはどういうことに なるだろうか。そんなことで当たった試しが歴史の中でひとつもない。50年先を当てた 人はいません。20年先の支え手、支えられ側というのは、子どもは1年1歳しか年をと らないわけですから、ほとんど動きませんが、あとはその間に平均寿命がどう伸びるか ということで変化するだけだろうと思っています。しかし、2050年までには相当の変化 がある。悪い変化もあるかもしれないし、いい変化もあるかもしれない。例えば、少子 化対策がうまくいけばもうちょっと明るい姿になるかもしれない。私はそういう部分は あまり固定的に考えるべきではないし、それでやると間違えると思います。  それから、清家先生の言われたことですが、この前、年金のときにちょっとおかしい んじゃないですか、と言ったのは、高齢化が進展していく2050年のちょっと先に給付の ピークが来るんですが、そこでさえ3年を越える積立金を持つという設計になっていま す。そこは、費用のピークを越えれば1年もあれば十分ではないかというふうに申し上 げました。それがやはり3年以上もつという設計になっているわけで、これは年金部会 の中でやらなければいけないことですが、そういう前提になっていることを頭において おかなければいけない。  それからもう1つは、所与の経済的要素、賃金の問題とかいろんなことがありますが 、物価が2007年までゼロ、デフレから脱却しませんよと。こういう数字でやるというの はどうか。貝塚会長に伺いたいんですが、2007年まで物価がゼロだったら日本社会はど うなるだろうか。私は統計の心配ではなくて、日本社会の方を実は心配しているんです 。これまでの5年を引っ張ってきたということですが、これまでの5年が異常なのか正 常なのかということからほんとは議論しなければいけないのかもしれませんが、2007年 までゼロが続くとすれば日本社会、経済全体はおかしくなってると思わざるを得ないで すね。そうなればほかの分野もいろいろ変わってきすぎてこんな試算自体がおかしな話 になると思っています。  もう1つは、やはりそうかと思ったのは、2ページの、国庫負担割合1/3というのを出 しているんですね。国庫負担1/3のときには法律的には保険料を上げられないとう仕組み になってるんです。それは保険料を上げないケースでやってもらうしかないですね。こ の前の年金改革のときに、いわゆる保険料凍結、我々が求めたわけではないのに、突如 として保険料凍結と。しかし、保険料引き上げと1/2とセットになっている。ところがこ こでこういうことを出すということは、財務省が言われたことかどうか知りませんが、 やる気がないとしか見えない。私は保険料、払うべきものは払いますが、約束を守って くれなければ、とてもじゃないが、我々だって負担もできませんよ、という話になるわ けです。だから、こういう試算をすること自体が、私に言わせれば法律を無視している 。法のシステムを無視して医療制度と同じように先送りして、負担だけこっちに押しつ けてくるのかと思わざるを得ないですね。  それから、こういうデータをつくるときには、誤解のないように。この負担というの は労使で折半が基本ですよね。だから、国民はどれぐらい、経営側がどれぐらいという ふうに親切にすべきであって、パッと見たときに、みんな、自分たちがこんなに負担す るのかと見えるわけですね。だから、そういう出し方も注意して出していかないといけ ない。それが全然出てない。  例えば、資料1の2ページ(1)の(3)の書き方もそうですが、これは今回改定した少 子化の影響というのは、正確に言えば、平成32年以降の長期の将来に向けて生じる、と いうことですが、いままで少子化傾向が続いてきているのは織り込み済みなわけです。 ところが、こういう書き方をすると、少子化の影響というのはこれから出るんだ、いま までも少子化の影響はいろいろあったわけですから、今回の改定された人口推計に基づ く少子化の影響は平成32年以降に出る、というのが正しい書き方だろうと思うんです。 これもやっぱり誤解を与えるんじゃないか。  それから、留意点のところですが、少子化対策の検討を見つつ、ということは、少子 化のところで言うことにして、ここでは言いませんが、雇用政策のところできちっとし ておいていただきたいのは、雇用がなければ社会保障は成り立ちません。社会保障の基 盤は雇用です。ここをきちっとやるということが前提でなければいけない。そして、も う1つは、経済状況が正常化しなければ、いまの状況が続くということではまた成り立 たないと思っています。その2つが基盤であろうと思いますから、そのへんのところは きちっと書いていただきたいと思います。  また、雇用の部分ではチープレーバー化と、清家先生おっしゃったように、社会保障 の外にいる人たちが増えている。少子化の中でほんとは支えていただかなければいけな い人たちが、いまや社会保障の埒外にいる人が増えている。ここは到底成り立つ図式に はならないですよね、将来的には。ここを我々としては、支え手を増やすと言われると 頭に来るんです。働く者の権利として社会保障はあると私は思っていますから、その権 利を保障する。そのことによって結果として支え手も増えてくるんだというかっこうに してもらわないと。支え手を増やすために無理やり保険に入れるんだというのは、私は 順序が逆じゃないかと思っていますから、このへんの書きぶりもきちっと書いていただ きたい。以上、質問と意見を申し上げておきます。  貝塚会長  いまの質問の部分で、婚外子というのはどういうふうになってますか。  河参事官  人口部会でも、またこの場でも若干ご説明させていただいた、1月30日の段階のお話で ございますが、今回の人口推計でいわゆる婚外子、過去大体1%程度だったのが若干上 がって1.7ぐらいだったと思いますけども、上がっているということですが、いずれにい たしましても、人口推計を行うに際しては、過去の婚外子の問題については、ある面で は離死別係数、つまり離婚されたことによってどれくらい影響をするか、あるいは婚姻 外によってどれぐらい影響するかという係数が入っておりまして、その中に織り込まれ ている。今後、あるいは直近の状況等で、さっき申しましたように若干増えている部分 については、今回新しく、ご記憶のある方もいらっしゃるかと思いますが、1組の夫婦 から生まれる子どもの数が、単に晩婚化係数だけではないものがあるということで、k 値というものを置かせていただきましたので、その中に含まれていると。したがって、 それらについて若干増えた部分については人口推計の織り込まれているということです 。  村上委員  k値の問題で、後でいいですから、細かいk値の中身を教えてください。k値という のは、5年前は1でしたね。0.9いくつまでk値も下がってるわけですから、下がったと いうのは晩婚化とかいろいろのもので下げたんだろうと思っていますけども、婚外子が 入っていたというのは審議会段階では出てなかったようですので、あとでk値の中身を 是非教えていただきたい。  河参事官  人口部会、あるいはこの場でもk値についてご説明申し上げました。k値というのは 、新しく見られる兆候の中で晩婚化以外の要因で、ある面では1人の女性から生まれる 子どもの数が結婚ということでの係数の中で見られたものよりも落ちているという部分 、内訳があるわけではございませんで、全体のデータから割り算をしてといいましょう か、推計をして出したのがk値ですので、その内訳がどうなっているということではご ざいません。  村上委員  統計ですから、分解できなければ統計にならないわけですから、ちゃんと分かるよう に分解してほしいと私は言ってるわけです。  阿藤委員  ご承知のように、日本は西欧先進諸国と比べますと、いわゆる同棲ならびに婚外子と いうのは大変少なくて、この30年間同じように少子化は続いているんですけれども、片 や、西欧では同棲、婚外子が大変な勢いで増えている。婚外子率の高い国では年間の出 生の半分、あるいは6割という国もあるという状況です。それに対して日本はそういう 意味では例外的に同棲も増えないし、婚外子も先ほどご紹介ありましたように、まだ年 間出生数の僅かに1.6〜7%という状況です。人口推計の枠組みを組み立てるときに、私 ども長い間、いわゆる結婚の部分と、結婚出生力の部分を2つに分けて推計するという ことをしてきたんですけど、状況が西欧のようになりますと、それはほとんど使えない 、不可能なフレームワークなんですね。ところが、日本の現状ではまだそういうフレー ムワークが成り立つのではないか、それは婚外子の割合が大変少ないからですね。です から、今回の推計でも2つに分けて、それぞれについて動向を考え、それを後で合成し て考えるというフレームを採用しています。しかし、これは将来、もし日本が西欧型に だんだん近づいてくるとそういうフレームそのものが成り立たなくなります。推計の方 式としてはそういうふうに考えております。  村上委員  婚外子の問題というのは少子化のポイントだと思っているものですから、糸氏先生は 覚えていらっしゃるかどうか分かりませんが、日医で少子化問題を検討したときに、私 も委員として入っていたんですが、そこに元文部省事務次官の方がおられまして、少子 化問題の決め手は婚外子、非嫡出子問題をきちっとすること。これがなければ、少子化 問題はどうにもなりませんよと。これだけでうまくいくというわけではない、ほかも合 わせて考えなければいけないけれども、ここをヨーロッパ並みの扱いができなければだ めですよ、と文部省の元事務次官がおっしゃったものですからびっくりしたんですけど も、私もそう思っている。だから、阿藤先生のお話ですけども、0.2%、千人ずつ増えて いるんですね、この10年ぐらい。確かに終戦直後はもっと高かったケースもありますが 、これはいろんな違ったケースがあると思います。私たちが若い女性に聞くと、結婚は したくないけど子どもは欲しい、というのがどんどん増えてるんですよ。そういうこと をきちっと織り込んでおかないと、50年で延ばしていけば相当な数になるわけです。そ こは我々として積極的に少子化対策に続けて考えておく必要がある。制度も変えていか なければならないと思っておりますから、私は何度もこの問題を申し上げているという ことを申し上げておきます。  貝塚会長  経済の先の見通しですが、これは私の個人的な意見ですが、ずっと先まで実質ゼロ成 長だというのはやや悲観的すぎる数値ではないかと思います。いくら何でも内閣府とし てもこういう意見はちょっとと思います。小泉改革がうまく成功すればプラス成長率に 持っていくということは重要なことでして、これはやや悲観的すぎるのではないかとい うのが私の個人的な意見です。  ほかにご意見ございましたら。  人口について、阿藤先生、前の推計と今度の推計で、ある意味で予想されなかったよ うな事態が発生しているとお考えですか。  阿藤委員  2つありまして、出生率の方は、表現が適切かどうか分かりませんが、ある意味で一 種の累積的に事態は悪化してきているというのが正しいんだろうと思うんです。要する に、出生というのは、いまの日本ですとおよそ20歳から37〜8歳までが産む期間だと。そ れが順次高年齢の方に、産むことを先送りというか、先延べする、そういう現象がこの2 5年間ずうっと続いてきました。それがとうとう30歳の峠を越して、30代前半の未婚率が 26%とかになって、再生産年齢からいうとどん詰まり状況にどんどん近づいている。そ ういうことで、人間の再生産年齢期間はそう動かないものですから、いわば、晩婚、晩 産、結婚・出産の先延べということが続いてきて、いよいよここまで来てしまったかと いうような認識を私自身は持っていますが、人口学者の多くはそういう見方だと思いま す。  要するに、30代でどれだけ産み戻せるのかということは、日本に限らず欧米諸国でも 大変議論になり、そのへんが1つのポイントになっています。しかしまあここまで未婚 率なり晩産化が進んでしまうと、従来のような子ども平均2人は大変難しいということ だと思います。  それからもう1つ、今回、寿命が大変伸びたということは、言い換えれば、高年齢の 死亡率が下がって、お年寄りが長く生きられるようになったという、先ほどおめでたい という話がございましたが、この点は死亡率全体についての見通しが少し変わってきて いるのかなあということがあると思います。ある時期、いわば死亡率の転換が起こって 、慢性疾患が中心になったあと、一部の人口学や疫学の先生の間では、それほど寿命と いうのは伸びないものじゃないかと。例えば、限界寿命というのが80歳とか85歳とか、 そういうことを言っていた時代もあるんですね。ところが、多くの先進諸国で、その前 はちょっと停滞していたんですが、70年代半ばぐらいから寿命がまた伸び始めました。 日本の平均寿命は、かつて言われた限界寿命を追い越してしまっている。そして、慢性 疾患の発症年齢がどんどん高年齢化していく、つまり遅くなっていく。これは死亡転換 とか健康転換の第4段階というんですが、そういうことが顕著になってきて、高年齢層 がどんどん生き残っていくという状況が非常にはっきりしてきた。いわばその先頭を行 くのが日本なんですね。つまり、トップランナーなんです。ですから、多くの欧米の学 者がその点、特に日本のデータに注目していまして、日本のデータを使っていろいろ将 来の、いわば人類の将来寿命の見通しということをしているわけですが、私どもそうい うものももちろん取り入れながら、今回、方法を新たにして見直したということでござ いまして、その点で特に女性の平均寿命が大きく伸びた。ですから、男女の差が大変大 きくなったということがあるわけです。  貝塚会長  ほかにご自由に、この問題についてご発言、ご質問ございましたら。  若杉委員  何回も申し上げていることなんですけれども、先ほど会長もおっしゃいましたし、ま た村上さんも触れておられましたが、結局、社会保障とは何かというと、生産性の高い 国でその豊かさ故に社会保障をやるというのが大前提だと思うんですね。例えば、年金 でいえば、労働が生み出した所得と、資本が生み出した所得、そういうものを将来に先 送りして消費をするわけですから、労働の生産性と資本の生産性が高い国でなければ社 会保障はできないわけです。それが日本の場合にはいま非常に低くなっていて、なかな か回復の兆しが見えないということが一番大きな問題、それに少子・高齢化が加わって いるということで、この問題は2つの問題を同時に解決しないといけないわけです。で すから、国として社会保障をやる以上は、豊かな経済ということを自覚して、その自信 でやるわけですから、経済を再生させるということをきちんと宣言して社会保障をやら ないと続きっこないわけです。  この社会保障審議会の仕事は、もちろん社会保障の制度についてやるわけですが、政 府が社会保障制度をやる以上は、経済政策、経済の活性化をきちんとやるということを 要求しないと、あとは社会保障を貧しくするよりほかないわけです。所得を増やすため には、これだけ長生きになったわけですから、もっと長く働かなければいけないという ことも同時にやるわけで、そのためには再教育も必要で、働かないことが老後の楽しみ ではなくて、働くことも老後の楽しみの1つだというような価値観の転換とか、そうい うことも必要ですが、それと同時に経済をきちっと再生させることが重要でして、社会 保障を考える我々としては、そのことだけをやればいいんじゃなくて、社会保障の前提 である経済を立て直すことをきちんと政府に、ここも政府ですけど、政府に要求してい かないといけないと思うんですね。そこが欠落していたら、貧しくなる。いつも申し上 げていることですが、貧しくなるばかりで、悲観的になるばかりだと思います。  貝塚会長  ほかにどうぞご質問を。廣松先生、人口の話について、統計的なご意見等ございまし たら。  廣松委員  今回の推計の具体的な内容及びその解釈に関しては先ほど阿藤先生から詳しご説明を いただきましたので省略いたしますが、先ほど村上委員からの、今回推計という形で50 年先まで延ばしたというご指摘に関して、我々は必ずしも50年先までこのような状況が 実現するということを主張しているわけではありません。延ばすというのは、統計学の 言葉でいえば外挿法と言いますが、それは現時点でのいろんな条件を一定として、今回 の場合、人口を先に延ばすということです。先ほど、その間に当然変化があるのではな いかというお話がありましたが、私個人はどちらかというと、変化をさせるというか、 あるいは、どういう将来の姿を描くかということが将来人口推計の1つ大きなポイント というか、意味ではないかと考えます。  ただ、人口の場合、大変難しいというか、問題となる点は、例えば、2ページの(1 )の(3)で、少子化の影響が表れるのは、平成32年と書いてありますが、30年後のことを 考えるときに、いま行動しないと30年後の人口構成は変えられないというか、動かせな いわけです。ですから、これから少子化の議論があると思いますが、それは私は決して 中期的な話ではなくて、いま我々が具体的にどのような将来を描いてどういう対応を取 るか、どういう対策をとるかというふうに考えるべきではないかと思います。  貝塚会長  たしかに人口政策というのは一番長期的なスパンの政策で、効果は30年後という話で すが、いまやらないと、いま長期なトレンドを変えるきっかけを掴めるかということが 重要なわけです。 ほかにご意見ございますか。  先ほど医療についてもご意見がありましたが、こんなことを高久先生に伺うのは恐縮 なんですが、お医者さんの側から見ておられると、そのへんは予想とはかなり変わった ということでしょうか、例えば10年前と。  高久委員  少子化の一番大きな問題は、結婚の時期が遅くなって、出産も遅くなった。医学的に 見ましても、ある年齢以上になると、妊娠率が非常に低くなります。年齢が高くなれば なるほど体外受精も効率が悪くなる。女性が晩婚化したことが医学的にも一番大きな理 由だと思います。  もう1つ、寿命の問題ですが、日本人と西欧人の非常に違うところは、ヨーロッパ、 アメリカでは心臓病で死ぬ人が一番多い。日本は、もう20年ぐらい前からでしょうか、 がんが1位になりました。がんで死ぬということは年をとって死ぬということですね。 心臓ですと意外とコロッとなくなる。人種的な問題と食べものの問題があると思うので すが、そうすると、日本はまだもう少し寿命は伸びるのではないか。外国との差はまだ 開く可能性があると思います。それがいいか悪いかは別の問題としても、現実にはそう なると思います。  若杉委員  人口のことで、長寿化というふうに皆さんおっしゃるんですが、もう一方で食べもの なんかを考えると、最近非常に人工的な食べものが増えて、意外と早く寿命が短くなる んじゃないかと、そういうことを強くおっしゃる方もいらっしゃるんですが、そのへん はいかがでしょうか。  高久委員  たしかに食べものが西欧化した点はありまして、そういう意味では、例えば、がんの 種類などはずいぶん変わりました。しかし、基本的にはまだそれぼどは変わっていない 。それから厚労省の「健康日本21」運動のように、健康寿命を延ばそうという運動も あります。特に日本人の高齢の方では健康意識がずいぶん普及していまして、そういう 方々はかなり日常生活、食べものにも注意されておられますから、そのまま続く可能性 が高いと思います。  若杉委員  そういう西洋食化ということとは別に、そのあとの問題として、若い人がスナック菓 子とか、非常に人工的な食べものを食べるようになって、それがそういう人たちの寿命 をどんどん縮めるんじゃないかということをまじめにおっしゃる方もいらっしゃるんで す。  高久委員  たしかにいまの大きな問題は、これは世界的な問題なのですが、若い人がいわゆるジ ャンクフードという、ポップコーンなどをやたらに食べて、テレビを見たり、コンピュ ータゲームをしたりしていて、身体を動かさない。それからもう1つ、若い人の喫煙率 が高い。そういうファクターが加わってきますと、いまの状態がずっと続くかどうか、 たしかにおっしゃるとおりかもしれませんが、そこのところは予測できない点がありま す。  貝塚会長  もうあまり時間がありませんが、私からひと言だけ。前から調べていることで、要す るに合計特殊出生率の非常に下がった国はどこかと言いますと、イタリアはもちろん下 がっていますが、スペインも下がっておりまして、日本が下がっております。平たく言 うと、亭主関白の国ほど下がっているというのが私の仮説なんですね。アメリカ、イギ リスはそうではありません。スウェーデンとか北欧諸国は社会保障その他別途理由があ るでしょう。ただ、フランスとかラテン系の国、日本はそういう傾向があるようです。 核家族化が強い国ほど逆にいうと落ちているという感じがあって、そういう観察がある し、実際にある程度そうじゃないかという気がしますので、つまらないことですが、付 け加えさせていただきました。  京極委員  少子化が人口統計でどういう影響があるか分かりませんが、中絶とか、子どもができ ても実際には育てない、そういう率はどうなんでしょうか。その数字はカソリックの国 なんかはかなりそれが影響するようで、前は中絶がだめだったので全部産んでいたから 子どもの数がものすごく増えていたけれども、どうも陰でそういうことがされていると いうことで。  皆川雇用均等・児童家庭局総務課長  中絶の件数は、届出医療機関で中絶しているのはいま34万件強で、10代後半と20代で 増えている状況となっています。 3.少子化問題について  貝塚会長  ほかにご質問、ご意見ございませんでしょうか。それでは、議題1についてはこのへ んにして、次は議題2の「少子化問題について」、事務局から資料のご説明をお願いい たします。  河参事官  もうだいぶ議題2のご議論にも入っていただいているような気もいたしますが、2番 目の議題関係の資料をご説明させていただきます。  資料3ですが「少子化社会を考える懇談会」というものを厚生労働大臣の下にこの3 月に設置させていただきました。1の趣旨にありますように今回の人口推計において、 晩婚化に加えて、夫婦の出生力そのものの低下、先ほど申し上げましたk値の問題であ りますが、そのような最近の傾向が見られたことから、少子化が一層進展するという今 回の推計結果になったわけです。  少子化問題は、我が国の経済社会に大きな影響を及ぼす可能性がある。あるいは、国 民一人ひとりの生活観や社会のあり方に大きく関わってくることから、その要因や少子 化社会への対応について、経済、社会保障、雇用、教育など幅広い視野から検討するた め、厚生労働大臣が主宰する有識者による懇談会を開催することになったわけです。  先ほど、中村委員もおっしゃいましたとおり、この範囲は非常に幅広うございまして 、役人的な形式論から言いますと、少子化問題については新しい組織の下では厚生労働 省において検討するように、ということになっておりますので、厚生労働大臣の仕事と して、こういう形になっているわけですが、もちろん、官邸との連絡等も密にしながら 進めていく必要があると、私ども事務方としても認識しているところです。  2の検討内容として、少子化の要因の分析ですが、ちょうど今日、午前中に第2回懇 談会が開かれたところですが、この要因分析についてのご議論を行っていただきました 。  また、少子化の影響の分析、あるいは少子化社会への応答の総合的なあり方の検討も 必要でして、趣旨にあるとおり、経済社会全体のあり方、あるいは後ほど若干ご説明さ せていただきますけども、これまでの少子化対策、エンゼルプランなどございますが、 これをどのように進めていくのか。  次のページに雇用の問題として、労働時間や働き方の多様化、そして、先程来ご議論 の出ているところですが、高齢者や若年者の雇用の問題等、労働分野での対応策、等を ご議論いただくということでお願いし、また、これらの検討を行うに当たって、これま での少子化対策のフォローアップもお願いしているところです。  スケジュールは、3月27日に第1回、そして、今日第2回目が行われたところですが、 毎月1回、あるいは2か月に1回程度開催させていただき、9月頃に中間的なとりまとめ をお願いしたらどうかと、木村尚三郎座長ともご相談させていただいているところです 。その中間まとめの後、また半年程度で報告をおまとめいただくこととしております。 なお、必要なものについては政府の予算に反映させていくというのは当然のことである と思っております。  それから、厚生労働省の中に、事務次官を主査、厚生労働審議官を主査代理として、 関係局長等を副主査あるいは委員とした少子化問題会議という事務局の会議を設けさせ ていただいておりますし、併せて、係長以下の省内若手職員等に20年後の社会を若い人 たちはどんなふうに考えているんだろうかというようなワーキングチームを設置してい ます。なお、この懇談会の事務局は私ども、社会保障担当参事官室で行うことになって おります。  3ページ目はメンバー表です。いろんな分野の方もいらっしゃいますが、例えば、実 際に地域で子育てをやってらっしゃる方等々、割と若い方、幅広くお願いしたという形 になっておりまして21名で構成されています。  もう1つ、関連資料として、少子化問題あるいは少子化社会問題を考えるときに、こ れまで政府がどんなことを考え、あるいはやってきたのかということにつきまして、厚 い資料をお配りしております。どのような資料かのみご報告させていただきます。  今日午前中の第2回懇談会で要因について検討を行ったところですので、その場にご 提出した資料ですが、少子化が進んでいることでいろいろな要因が考えらます。先ほど ご議論があったようなこと等も含めてでございますが、いわば、データ集というものを お配りさせていただきました。私どもが考えるときのポイントになっているデータとし て、8ページに、平均出生児数と平均理想子ども数というものがありまして、理想子ど も数として女性にお聞きした子ども数と、現実に生まれた出生児数の平均には乖離があ る。2.6弱と2.2と、0.3強の乖離があるということで、これは理想を実現するよう努力す る価値はあるのではないかというご議論のもとになっているのが8ページの表です。そ の他、後でご覧いただければ有難いと思いますが、かなり多くのデータをお配りしてお ります。  それから、これまで、政府、厚生労働省を含めて、どんなことをやってきたかをご紹 介を兼ねて資料を配らせていただいておりますが、平成6年12月16日の「今後の子育て支 援のための施策の基本的方向について」ということで4省庁の名前がついていますが、 これがいわゆる「エンゼルプラン」です。政府として少子化の問題とその施策について 公に議論したスタートということかと思います。  そして、平成9年10月、人口問題審議会の「少子化に関する基本的考え方について」を お配りしておりますが、これはこの社会保障審議会の前身の1つであります人口問題審 議会で平成9年10月に出された報告で、かなり詳細な少子化問題に対する考え方が整理れ ておりまして、幅広く議論されていることほとんどが入っているかと思います。要因の 分析、あるいは要因の背景、少子化の影響にどう対応するか、要因にどう対応するか、 ということがかなり細かく議論されておりまして、その中には、目次の最後の方になり ますが、エンゼルプランの推進等もうたわれているところです。こんなご議論もいまか ら5年前にかなり精緻に行われているということです。  次の「夢ある課程づくりや子育てができる社会を築くために」、これは少子化につい て考えようということで官邸に設けられた有識者会議が平成10年12月にまとめられた提 言です。これに基づいて、関係閣僚会議、あるいは国民会議を設置して、政府だけでは ない、幅広い議論をしていこう、こういう対策を考えていこうということが提案されて いるものです。  また「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について」というのは、6大 臣合意とされていますが、平成11年12月19日、これがいわゆる「新エンゼルプラン」で 、冒頭申し上げました平成6年の「エンゼルプラン」をベースに新しいプランを構築した というものです。  そして、先ほどの有識者会議に基づいて設置された国民会議でのご議論等の資料をお 配りされていただいております。内容については時間の関係上省略させていただくこと をお許しいただきたいと思います。  貝塚会長  どうもありがとうございました。それでは第2の議題、既にある程度議論が出ており ますが、少子化社会を考える懇談会のご説明、少子化問題について、どうぞご意見をご 自由に。  京極委員  総理の下での有識者会議でも少子化問題についてもう少し突っ込めたらよかったんで すけど、なかなか難しい問題だということで。ただ私最近考えるのは、社会保障全体を 考えていくときには、子育て支援が、単なる個人の家庭の問題というよりは、社会保障 制度の根幹にも関わりますし、また経済の動向にも大きな影響を与えるわけですので、 社会的支援という観点をもう少し強く打ち出さないといけない。介護については国民的 合意が得られているわけですが、子育て支援はまだはっきり国民の合意が得られていな いという印象を持っております。国がいろいろ努力しても、国民的なところまで下りて ないんじゃないか。  それで、私はほんとにそう信じ込んでいるわけではないけれど、あえて申し上げたい ことは、人口政策で軍国主義の、産めよ増やせよ、というのは日本人はアレルギーにな っているので無理なんですが、平和主義的な産めよ増やせよという人口政策はやっても いいんじゃないか。環境づくりだけではだめなので、意識づくり、子どもを増やそうと いうように意識が変革されないと、子どもは人工中絶になっちゃって闇から闇に放り去 られてしまいますので、軍国主義で日本国が世界制覇するために子どもを増やすという のが悪いのであって、正しい目的のために子どもを育て、増やしていくということは決 して悪いことではないんじゃないか。しかも、適切な手段、例えば、何人も子どもさん を育てた方は、かつては自分の老後を支援してくれる担い手を増やしていたわけですけ ど、いまは社会的に社会保障制度を後年世代が担うわけですから、たくさん子どもを育 てた方は自分ばかりではなくて、よその子どもを産まない人も含めて支援しているわけ で、そういう人たちにもう少しあたたかい社会の手をさしのべられないか。児童年金み たいな考え方に非常に賛成でして、マクロ的な計算をしてみれば、相当お金を出してあ げても社会全体にとってはプラスの線が出てくるんじゃないかと思います。ただ、それ をなんでもかんでも税金でやるということになりますと大変ですし、企業の活性化にも つながらなくちゃいけないので、バランスは考える必要はあると思いますが、そろそろ 発想の転換を考えないといけないと思っておりまして、あえて申し上げました。  堀委員  配られた資料を見ますと、少子化対策は平成6年からやっておられるということなん ですが、いろんな対策、あらゆることは考えられてると思うんですね。実際に平成6年か らはもう7〜8年経っているんですが、こういう対策を講じてどういう効果が上がってい るのか。合計特殊出生率は下がり続けているんですが、対策をやったから、もっと下が るところを止めたとか、客観的、具体的なデータは出にくいと思うんですが、あまり効 果はないというような印象を受けます。今後、いろんな対策を講じてどのぐらい効果が あるのか。効果がないからやるべきではないというわけではないんですが、私の個人的 な考えなんですが、政府のやることだけでは限界があるんじゃないか。というのは、例 えば、家事、育児を女性が主としてやる。これはいろんなデータで出されている。夫は 夜遅くまで働き、妻はそれを待ちながら育児をする。そういう社会慣行、それを前提と した雇用慣行みたいなものが少子化の要因になっているのではないか。単に現金を給付 するというだけでは少子化対策というのは難しいと思うので、女性が働き続けながら子 育てできるというような施策、これはどうも政府だけではなくて、労使が積極的に取り 組むような仕掛けが必要ではないかというふうに私は思っております。  樋口委員  遅れて参りまして申し訳ありません。私、今日配っていただきました資料の中で、比 較的新しい平成13年7月6日閣議決定の、これは男女共同参画会議に設けられましたアド ホックな専門調査会ですが、「仕事と子育ての両立支援策に関する専門調査会」の会長 をしてこれを差し出しまして、いろんな意味でお騒がせをした経緯を持っておりますの で、ちょっとご報告させていただきたいと思います。  いま堀委員から8年もやっていて効果が上がったのか、ないのかというお話がございま したけれど、目に見える効果はなかったという認識のもとにこういうご下問があったの だと思います。目に見える効果がなければやめていい政策と、目に見える効果があろう がなかろうが進めなければならない政策とあって、ですから、これは少子化政策という ふうには真正面からは全く言っておりませんで、仕事と子育て両立支援であって、それ こそ会長がおっしゃいました、亭主関白の国で出生率が下がっている。私はそれをほん とに誰かに証明してもらいたいと思うんですけど、なかなか証明は難しいでしょうけれ ど、いくら中絶を厳しく禁止する宗教的バックグラウンドだって、イタリアもスペイン も、ドイツも半分カソリックですよね。それで出生率は一番落ちているわけです。日、 独、伊、スペイン、枢軸国側で全部出生率が下がっている。悪の枢軸でもないと思うけ れど、低出生率の枢軸というのはあるわけです。それは亭主関白、あえていえは、オー ルドボーイズネットワークがものすごく強烈なところにおいて、オルタナティブという か、ダイバーシティとしての女性のあり方とか、ワークライフバランスとか、この頃よ くおっしゃいますけど、そういうものがなかなかなりにくいところで出生率が上がって ない。  私は女性の人権のみならず、男性の家庭生活を営む権利、この間出た国民生活白書な んかを見ても、30代の子育て盛りの男性は結構家庭生活に重きを置いているんですね、 意識の上では。ところが、家庭生活にはタッチできない。30代男性の労働時間は、労働 系の大専門家がいらっしゃいますけれど、この不況の中でも上がり続けて、たしか去年 か一昨年ぐらい、不況のおかげでやっと下がってきたという非常に悲しい状況がござい まして、私はいまおっしゃってくださいましたが、根本的なこと、社会保障審議会は社 会保障制度なのかもしれませんけど、これは皆さんおっしゃるように、社会保障制度と いうのは、雇用対策とか、雇用状況、就労状況と密接に結びついているので、もうちょ っと幅を広げて提言してもいいんじゃないかと心から思っております。  それで、私どもの提言について若干取り扱い方で私不満なのは、激論の結果、激論で もないです、意見は一致したんですけれど、5本の柱のうち、第1に置いているのがま さにワークライフバランスとも言うべき、両立ライフへ職場改革、ということで、これ が第1の柱なんです。いま皆さんおっしゃるようなことが書いてあります。  そして第2番目が、待機児童ゼロ作戦なんです。いまの状況からもはや保育所に予算 を取りきれない、なんていう声が厚生労働省内部からも出てるやに聞いておりますけれ ど、私は子どもにかけるお金はもっともっとかけていいと思いますから、いろんな方法 で保育所を増やしてほしいとは思っておりますけれど、ただ、長時間の保育所だけ増や せばいいとは全く思っておりません。労働時間と保育所の数はある程度トレードオフの 関係にあって、例えば、ついこの間、オランダの40代ぐらいに見える女性の新聞記者が 私のところへ日本の少子化について取材に来たんです。42〜3歳に見えたんですけど、1 歳2〜3か月の子どもがいるというので、悪いけどびっくりしちゃって、そんな小さい子 どもがいるように見えなかったんですね。それでこっちが取材しちゃったんですけど、 おもむろに話し始めて、年はついに聞きませんでしたが、夫も同じ他社の新聞記者で、 週に4日、30時間働く。夫と妻が変わりばんこにいますから、保育所は週に2日利用す ればいいというんです。もう少し大きくなったら全面的に保育所を利用すべきだと思っ ているけれど、3歳児神話とまで言うべきかどうかしれませんが、子どもが1歳代ぐら いのときはもう少しそばにいてやりたいと思うから、国の制度が変わって、いわゆるオ ランダモデルになったおかげで、私は諦めていた子どもを、産む年齢にやっと間に合っ て産むことができた。だから、オランダモデルは結果として少子化対策になってるんで すね、ああいう雇用制度は。ということも実例で見まして、取材に来た人を逆に取材し て面白かったです。だから、私たちは、待機児童ゼロ作戦というのは2番目に位置づけ てるんですね。  3番目に、多様で良質な保育サービス。これは保育所があまりリジットな、9時−5 時の人しか使いにくいような状況は大きく改めなければいけない。  4番目に、必要な地域すべてに放課後児童対策を、5番目に、地域こぞって子育てを 、でありまして、まさに子育て、育児の社会化ということを申し述べておりますので、 なにも1番目から5番目と順位をつけるわけではございませんが、第1に、両立ライフ で職場改革、と位置づけたところ、待機児童ゼロ作戦というのは、応急手当て、カンフ ル注射としては必要なんですが、そればっかりじゃないということ。  それから、別な少子化の理由として、経済的要因、大学の費用があんまりかかりすぎ るということと、それからこれは誰もおっしゃらないんですけど、お金をもらったって 、それから社会保障で年金をくれたりなんかするという、これは私、反対はしませんけ れど、そんなことでは子どもを産みませんよ、女の人。やっぱり子どもを産んだらちゃ んとよい再就職を保障してくれるか。それから、世の中がこんなに楽になってきてるの に、280日お腹の中にいて、そして出産するときのあの大苦痛に対する報酬はないんです 。  私はついこのあいだ、学生が150人ぐらいいる大教室で、あなた方何人兄弟か。親は何 人持ちたいと思っていたか、というのをやって、1人か2人と少なかった人の中で、な ぜだろうという理由を聞いてみて、大多数が、2人持っている人は3人持ったら四大へ やれないからという経済的理由を言いましたけれど、そのうち複数、2人が、1人目を 産んだとき、私があんまりでかかったからと言うから、何キロあったのか聞いたら、400 0グラムと言ってましたけれど、ひどい難産で1人でこりごりしちゃったというのと、2 人兄弟の2人目の方は、やっぱりすごい難産で、産後の肥立ちが悪くて、すごい苦労し たからもうこれ以上子どもは産みたくない。出産の苦痛とかに対して、どういうふうに 手当てするのかということも、ちょっと医療の世界の方やなんかに考えていただきたい と思っているんです。長くなってすみません。  阿藤委員  私が3つほど指摘したかったうちの1つは樋口先生がおっしゃったような、一言でい えば、亭主関白の逆である男女共同参画、別の言葉でもいろいろあるでしょうけれども 、それが1つ大きな基本であり、国際比較で見たときにも、相対的にいえば、男女共同 参画が進んだ社会ほど出生率が高いんじゃないかということです。その場合、雇用の面 での男女の平等ということももちろんなんですけども、家庭あるいは男女間の関係にお いてどこまで平等化できるかということが1つのキーポイントではないかと思っていま す。これはほんとに政府の施策だけで変わるものではない。価値観とか社会観の変化も 必要となるということだと思います。  もう1つは、あまり言われないといいますか、ある意味で当たり前のことなんですけ ども、個人の自立ということをもう少し前面に出す。一種の生き方の哲学みたいなもの かもしれませんが。これは例えば、山田先生がおっしゃっているようなパラサイトシン グルというのはある種、若者の自立が進まないという意味でもあるわけですね。あるい は、男女共同参画でいうところの男性が女性の家事や育児に依存するということも、実 は男性がなかなかそういう面で自立をしてないということにもなるわけで、女性の自立 はいうまでもないわけですが、そういうさまざまな場面でいま自立ということが問われ ている。私はこのことが少子化に大きく関係しているんじゃないかと思っております。  それから、従来、私自身はその2つの点をかなり強調してきたんですが、さすがにこ こまで少子化が進んでくると、3番目のファクター、先ほどからどなたかいろいろおっ しゃってますが、子育ての経済的支援というのはやはり無視できないんじゃないかとい うことです。これは1つのフィロソフィーとして子どもは社会の宝という考え方がどこ かにあるわけで、それはもう少し具体的に表現すれば、例えば、年金制度を維持すると か、そういうことになるんですが、もっと広い意味で、子どもというものがいま、経済 学の言葉を使えば公共財的な、あるいは準公共財的な側面を持ってきているということ はまぎれもない事実なんですね。それに対して、子どもを育てると損をする、というふ うな感覚を持っている若いカップルが増えているとすれば、そういうところをもう少し 経済的に、社会的にサポートしていくということは、こういう状況ではかなり求められ ているのではないか。ですから、形は児童手当、扶養控除、教育費の補助、奨学金、い ろんな形があると思いますけども、子育てに対してもう少し経済的に手厚いサポートが 求められている時期に来ているんじゃないか、とこんなふうに思っています。  京極委員  さっきの話に補足を、誤解を招くといけないので。私は経済的な給付だけすればいい とか、政府だけでやればいいと思っているわけではないので、例えばの例で挙げたんで すが、ちなみに、私どもの大学で、ドイツのベルリン州立のアリスザンモン大学と姉妹 校提携していますけど、その大学は学部の編入も、大学院のマスターも子育て中のお母 さんがより高いグレードを求めて入ってきて、子育て期間中に学士を取ったり修士を取 ったりしている。そのためにはどうしてるかというと、当然、学内に保育所が完備され ていまして、勉強している間お子さんを預かってる。そういうようなシステム、いま厚 生労働省で平成13年度にリストラ対策について、いままではブルーカラーだけの就職 対策をしていたけど、中高年の方も再教育して大学院に入れるとかいうことをやってい ていいことだと思うんですけど、それと同じように子育てする人、特に母親が大変だと 思うので、樋口先生おっしゃったように産むのも大変だけど産んで育てるときは時間が 長くてノイローゼになったりする方があるようで、そういう柔軟な社会的な対応を図っ ていかないといけないんじゃないか。そうすると、文部科学省との連携とか、政府が支 援して、さっき労使の話も出ましたが、民間の役割もそれぞれあるわけで、それぞれや っていただくんですけど、政府としてまだまだ知恵の出し方があるんじゃないかという 気持ちがありまして、申し上げました。  廣松委員  2点だけ。先ほど、政策の効果が見えないというか、あったのかどうかというご質問 がありましたが、今回の推計を行っている途中で、99年から2000年にかけて、合計特殊 出生率がちょっと上がったという発表がありました。たしか99年の1.34が2000年には1.3 6になりました。それに関して、たしかこの審議会の席でも中間報告としてご報告したと 思うのですが、部会での評価はミレニアムベイビーの影響であろうということになりま した。2001年の数値はまだ出ておりませんのでその後の動きは分かりませんが、その意 味では単発的な出来事であるという評価です。最初にご説明にあったように、今回の推 計はそのような効果も含めて1.39という水準に落ち着くのではないか、という結論にな ったということです。  2番目は、先ほど京極先生がおっしゃったことに、私は大変賛成です。これからいろ んなライフステージの方が教育を受けるようになる。それに対して現状のサポートシス テム、基盤があまりにもお粗末過ぎると思います。私の直接体験している例として、国 立大学における女生徒用の設備は、極端なことを言うと、トイレから始まってすべてが 極めてお粗末です。その整備をしないと、先ほどの託児所とか、保育所なんていうのは はるかかなたの夢のような気がいたします。  ただそこは両面あって、サポートシステム、基盤の貧弱さが女性の高学歴化やひいて は出生率にどういう影響を与えるかということに関してはプラスの影響を与えるのか、 マイナスの影響を与えるのか、評価は現時点では難しいかと思います。しかし、いずれ にしても、少なくとも今後基盤整備が必要じゃないかと思います。  村上委員  私どもは、人口政策的な形はおかしいと思っていますが、産みたい人が産める。また 安心して育てられる。そういう社会をつくる。そこが基盤でなければいけないと思って いますが、先ほどオランダの話が出ていましたが、オランダは70年代は専業主婦が多か ったんですね。ただ、経済がおかしくなって、専業主婦の人たちが働きに出たため、そ れによって1回出生率は下がったそうです。いまは元に戻っていますが、どうやって戻 したんですかと聞いたら、育てやすい環境をつくったと。預かる設備とかいろんなこと をやった。もともと、後ほど申し上げるような働き方が基本にできているわけですから 、そういう設備をつくることで元に戻ったと。  いろんなところで既にいろんなメニューは出ているんですが、全然出てないメニュー を私は先ほどから強調しているんです。婚外子の問題というのは、日本社会がきちっと クリアしなければ、なかなかうまくいかないだろう。ここは諸外国の例からみても、い ろんな人生観とか生き方が変わってるわけですし、そこを認めるということがなければ いけないだろう。さらに戸籍主義的なものをいつまでも引きずって、女性に子どもを産 んでくれ、というのは、時代に合わなくなってきているだろうという感じを私自身持っ ているということです。  それからさらに先程来出ているように、産み育てやすい環境をどうつくるか。これは 施設だけではありません。労働時間をどう短くするか。さらには多様な働き方をどうつ くっていくか。こういうところを併せて、より育てやすい環境をつくる。もちろん男女 の役割の変化ということも重要であります。そのためにも労働時間を短くするとか、多 様な働き方をつくっていかなければいけないだろうと思いますし、さらに、子どもを産 んで育てていく場合、一番大きな負担は教育費なんですね。教育費をどう考えるか。手 当てで考えるのか、教育費を抑えるのか。そのへんのところを考えておかないと、どう にもならない。教育費問題をどうするか。これは実は親にとっては大変な負担です。  それからもう1つは「リング」を書いた鈴木公司さんという小説家がおっしゃってま したが、将来が明るいか暗いかが大きな要素になる。いまの日本は将来を暗くなるとみ んな思っているんですね。将来が暗いと思うと、そういう暗い社会に子どもを産んで育 てていくということになりにくい。一刻もはやく明るい将来を日本はつくらなければ、 すべてがうまくいかないと思っていますので、申し上げておきます。  矢野委員  人生設計において選択肢を増やす、選ぶ側も選んでもらう側も選択肢を増やすという 努力が必要じゃないかと思うんですね。人生設計をして、いろんなライフステージがあ ると思うんですが、あるときはフルタイムで働いて、あるときは家に戻って、あるいは 在宅勤務をしたり、時間で計られない、結果で報酬を貰うようなこともあり得るでしょ うし、いろいろな選択肢を増やしていく。産業界でまず取り組める課題はそのへんにあ るのだろうと思うんですね。働く側の人たちも家庭の問題も含めていろんなニーズがあ る。そういういろいろな場面に応ずるようないろんな選択肢を用意する。これは社会の 流動性を高めるという点でも意味があるし、企業の経営の面からいってもいろんな種類 の従業員がいるということ、それを前向きに受けとめて、どういうふうに取り組みをす るかというようなことが大事なんじゃないかと思います。 4.医療部会報告書「医療提供体制に関する意見」について  貝塚会長  どうもありがとうございました。第3の議題が残っておりまして、最初お話しました ように、医療部会で医療提供体制に関する意見をまとめられましたので、事務局から資 料のご説明をお願いします。  大谷医政局総務課長  医政局の総務課長でございます。資料4に基づきまして、社会保障審議会医療部会の 意見について概略ご説明申し上げます。  本日、高久先生ご出席いただいておりますが、高久先生に部会長をお務めいただきま して、医療提供体制に関する重要事項についてご審議を賜り、その議論の概要が3月2 8日に報告されております。ポイントのみご説明申し上げます。  まず、1ページですが、昨年9月から8回にわたりましてご審議いただきまして、そ の1.においてですが、我が国の医療については、基本的な考え方としては、世界最高 水準のレベルにきているということですが、2.に書いておりますように、(1)効率化・ 重点化の不足、(2)競争が働きにくいとか、いくつかと問題点もあるところであります。  3.に書いておりますように、今後の方針としては、患者に対する幅広い情報提供が 推進され、患者の選択を尊重した医療提供を通じて、医療機関相互の競争も促進されて いく。それによって、医療の質の向上と効率化を図る。という方向を打ち出しておりま す。  2ページですが、この審議会におきましては、医療全般にわたり概括的な審議も行っ たわけですが、最初のパラグラフの7行目あたりに書かれておりますように、特に経済 財政諮問会議とか、総合規制改革会議で医業に係る株式会社の参入の問題が大きなテー マになりました。これについて、特にご議論いただきました。  それから5に書いておりますが、これはかねてからの懸案でもあり、またいろいろな 会議で指摘のあった広告規制の緩和ということについて集中的にご議論を賜り、ここに ついては具体的な結論を得たところでございます。  「II.個別の検討項目」に参りますと、「1.医療における情報提供の推進」につい ては、情報提供としては、広告だけではなく、広報、院内掲示、公的機関による情報提 供などがございます。そういうあらゆる方法で環境整備を図る必要があるわけです。3 ページにありますように、まず当面、緊急のテーマとして「広告規制の緩和」を図ると いうことで、方法としては、ポジティブリストを維持し、広告できるものを掲げていく という方法ですが、できるかぎり可能なもの、客観的検証可能なものは広告できるよう にする、というふうに改めました。8ページに、別添として書いておりますが、今回、 例えば、専門医であるとか、治療方法、手術件数、分娩件数、平均在院日数、患者数、 医療スタッフ、電子カルテの導入等々、さまざまなものについて広告できるようにしよ うというふうに、今回ご議論で結論をいただいたところでありまして、これについては 、参考までに申しますと、既に4月に告示を改正して、現在ではこういうことについて の広告ができるようになったところでございます。  3ページ以下は、項目だけの説明になりますが、「2.病院病床の機能の明確化・重 点化」、「3.根拠に基づく医療の推進」、「4.医療におけるIT化の推進」、「5 .医療を担う適切な人材の育成・確保」、「6.医療安全対策の総合的推進」、「7. 小児救急等医療対策の推進」、こういったことについてもご議論を賜ったところですが 、関係の検討会、部会もございまして、そういったところで検討いただいたものについ ては、医療部会には別途報告をいただいたという形で進めさせていただきました。  次のポイントは5ページの8以下でありますが、「8.医業経営の近代化・効率化」 ということで、特に営利企業、株式会社の参入について検討いただいたわけであります 。6ページをご覧いただきますと、例えば、参入すべしという意見としては、「・経営 の効率化や医療の質の向上が期待できる。・競争が促進される。」といったメリットの 指摘もありました。しかしながら、後半に相当の反論もございまして、「医療の強い公 共性と株式会社の利益配当という2つの要請の両立は困難ではないか」、「収益性の高 いところに集中して医療費が高騰するのではないか」等、様々な疑問点もあり、部会の 結論としては、慎重な対応が必要であるという反対意見の方が多かったということでご ざいました。  その他、労働者派遣の問題ほかいくつかの論点についてもご議論いただきましたが、 7ページの終わりのところで、当面の諸課題については、「その改革を着実に実施しな さい。しかし、さらに良質かつ効率的な医療提供体制の確保に向けて、早急な検討を行 っていくことが求められる。」という結論でございました。  以上、概略の説明でございます。  貝塚会長  どうもありがとうございました。高久先生、何か補足されることがございましたら、 どうぞ。  高久委員  医療部会は非常に広い分野の方々が委員になっておられまして、各々のお立場からい ろんなご発言がありました。したがいまして、このような形にまとめるのは非常に大変 だったわけです。 特に情報提供のあり方、医業経営の近代化、労働者派遣、この3つ のことに関しましては、委員の間で非常に意見が分かれまして、ここに出ていますこと は、多数の方の意見であって、当然強く反対する意見もありました。  IT化とか、根拠に基づく医療の推進、人材の育成、小児救急対策ということについ ては、皆さんの間で特に意見の相違はありませんで、議論はほとんどこの3つの問題に 集中しました。なんとかまとめることができましたのは、情報提供のあり方でして、情 報提供に関しても、ネガティブリストでいくべきというご意見と、ポジティブリストで いくべきというご意見がありまして、最終的にはポジティブリストでという方のほうが 多かったものですから、そういうことになりました。また、項目に関しましても、もっ と入れるというご意見もありましたが、その点に関しても、なんとか最終ページ別添に ありましたようなことにまとまったわけです。  今回の部会の中で1つの前進と思われますのは、広告規制の中で専門医の広告をする ことができるようになった。具体的にどういう専門医が可能なのかどうかということは これからの問題ですが、一応、別添にあります外形基準を満たす学術団体が認めた専門 医に関しては、病院の外に見える形で広告しても構わない。この問題は長い間、ディス カッションされてきまして、なかなか意見の一致が得られませんで、今回の医療部会に おきましても両論がありましたが、大多数の方が専門医の資格を特定の条件の下で表に 出してもよいということで、まとまったというのが今回の医療部会の1つの成果ではな いかと思っています。  その他のことにつきましては、いろんな意見があって、クリアな結果にはなりません でした。  貝塚会長  糸氏委員、何か付け加えることがありましたらお願いします。  糸氏委員  高久先生、非常に苦労しておまとめになったと思いますが、ご指摘のように1つは、 広告規制の問題ですが、これは我々も隠すという気持ちも毛頭ございません。ただ、医 療のことですから、虚偽の広告によって身体被害、健康被害を生ずる。これを一番恐れ ていたわけです。というのは、いままででも誇大広告とかそういうことでいろいろ問題 があったけれども、行政のそれに対する規制等が全く野放しであった。ですから、これ から、広告規制緩和はいいけれでも、きちっとした良質の広告を、国民が騙されないよ うなものをきちっとやっていただければ、なんでも広告したって一向に差し支えない。 問題として、私たちが心配してるのは、自分の病気について、それではどの専門医にか かったらいいか。例えば、ここにいろいろと、治療方法、手術件数、平均在院日数とか ありますが、果たして国民がこういうのを見て、これだったらここにしようと選択する 判断材料にできるかどうかということも問題ですね。自分の病気に対して最も適切なド クターを選ぶということが可能になるためには、いくら情報の共有といっても、医師と 一般の患者さんとが終局的に全く同じように情報を共有するということはできないわけ で、そこに橋渡しするプライマリーケアというか、かかりつけ医を必ず持っていただい て、効率的に専門医を選べるような1つの道筋、医療の世界にそういうシステムをつく っていくことが非常に大事だろうと思っております。このかかりつけ医によって一番無 駄のない医療を受けられるということ、また我々自身もそのことのために国民にいかに 奉仕していくかという心構えを日本医師会としても考えなければいけないというふうに 考えております。  清家委員  情報開示というのはとても大事なことだと思うんですが、特にここに書かれているよ うな広告の問題も大切ですけれども、もう1つ、第三者評価の問題ですね。別添の広告 の緩和事項を見ますと、日本医療機能評価機構の話とかも出てくるわけですが、特に糸 氏委員言われたように医療サービスの場合には、消費者と供給者の間に基本的な情報の 格差がありますから、専門家の手による情報開示というか、開示された情報の評価をも うちょっと強化するような方向が必要ではないかと思います。  村上委員  この答申の中身をいちいち言い出したらキリがありませんのでそれはやめますが、私 どもから出ている委員に聞きましたら議論が中途半端なまま終わっている。いっぱい議 論すべきことが残ったままになっているというふうに聞いています。ところが、厚生労 働省当局はこれでもう部会をやめます、という話で無理やり打ち切ったようであります が、審議すべき事項が残っているのになぜ打ち切ったのか、今後どうするつもりなのか 、そこだけ聞かせていただきたい。  大谷医政局総務課長  打ち切ったと申しますか、部会の任期が年度一杯ということで、その任期内でご審議 いただいたところでここまでの審議で、特に重点事項については結論をある程度いただ きました。その先の重要事項につきましては、先ほどの7ページの最後に書いてありま すように、関係者の意見を反映しながら早急な検討を行うということで、私ども厚生労 働省の中にいま医療制度改革の推進本部をつくっておりますが、そういった中でも次な るテーマの検討を急いでおりますし、その検討の中で関係者のご意見をいただきながら 検討を進めたいというように考えております。  村上委員  任期一杯で全部辞めるんですね。じゃあ、介護なんかも辞めさせてもらおう。任期が 切れたけど続いてるんですけどね。任期が切れたのでやめるという話じゃないでしょう 。目的とした結論に行くまでやるべきでありまして、それは任期がきました、やめまし た。あとは全部やれます、というのならはじめから審議会なんかやらない方がいいんで すよ。あまり審議会を便宜主義に使われたら、私どもとしては対応しようがない。そこ はやるべきことがある間はやる、というのが審議会のあり方でございまして、任期がき ました、やめます、都合が悪くなればやめます、というならはじめからやらないでくだ さいということを言っておきます。  高久委員  よろしいでしょうか。たしかに問題がたくさんありますので、なんらかの形で続ける 必要はあると思います。ただ、最後の部会のときに申し上げたのですが、もう部会長だ けは勘弁してくれと。  貝塚会長  同じ感想を私も多少、別のところで…。  みんな一応の期限があるんですが、問題は期限を切ったから問題が解決されたか、あ るいは新しい考え方を具体化できるかといったら、それはそうではないので、実際的に は今後とも是非、厚生労働省では幅広く皆さんのご意見を取り入れてやっていただかな いといけない。簡単にいうとそういうふうにやらないと、物事は進まないと思いますの で、その点はある意味で村上委員のおっしゃることはごもっともだと思います。  少し脱線しましたが、小宮委員、どうぞ、なるべく短めに。  小宮委員  遅れて参りまして申し訳ございませんでした。1つは資料に書いてあることに対する 質問と、もう1つはフレームに対する意見です。  質問は、文章を読んでいて、そういう議論があったかということだけお聞きしたいの ですが、株式会社の参入というところの議論で、私は別に株式会社を積極的に参入した 方がいいという論者では全くないんですけれども、医療の公共性と株式配当を両立させ ることは困難ということはよく分かるんですが、例えば、株式会社が入って来なくても 、収益性の高い医療分野に集中して不採算部門の切り捨てや医療費の高騰を招きかねな いという状況はいまでも起こっているんじゃないかという議論はなかったのでしょうか 。別に株式会社の参入がなくても起こってると思うんです。  それともう1つは、一番下の「株式会社の参入が認められているアメリカにおいても 、医業経営は非営利が主体であり、研究と教育に投資せず質の向上に限界がある株式会 社よりも、研究、教育、臨床の3つに取り組む非営利病院の方が、地域における信頼も 得ており、ネットワーク化されている」とありますが、別に株式会社が入ってきても負 けるだろうから何がいけないのか。この2つの項目のような議論があったのかどうかお 聞きしたいというのが1つです。  もう1つは、医療提供体制に関する意見というご報告なので、いまこれを言うのは少 し見当違いかもしれないのですが、患者とか利用者という立場でいつもものを考えてい ますと、提供側がこうしたいという意見があまりにも多く、そういうことはしばしば議 論されるのですが、患者や利用者として、あるいは保険料を払っている立場として、医 療をどういうふうに受けたらいいのかというときに、あまりにも私たちは孤立してると 思います。この前、医療制度改革のときに、総理が三方一両損の改革だったとおっしゃ ったんですけど、私は医療費の支払い手でもあるし、患者でもあって、二役もらってる んだから、私は二両損したのではないのかなと思ったんですね。それについて申せば、 患者がもっといろいろな情報を患者同士で連帯できるというか、患者が利用できる情報 とか、連帯できる仕組みをつくるためのフレームづくり、それを省庁に求めるのはおか しいかもしれませんが、でも、やっぱりみんな働いていて、病気になるのは一時的、あ る時期だけで、それにずっと専念してるわけにはいかないわけですから、誰かそういう ことを考えてくださる方がいたら有難いと思います。患者の立場になったときに私たち はあまりにも孤立していて、お医者さんを信頼して治療を受けていくのが一番いいとは 思いますが、二者だけの間で、すべてのことを判断しようと思っても、お医者さんには ほかの考え方もあるかもしれないませんし、患者の利益に立って相談するとどういうこ とになるのかということを支援してくれるものが何かあってほしいと思います。  もう1つは、保険料の支払い手として、サラリーマンの立場だと保険料が勝手に引か れていくわけですね。引かれていくというのは大変無責任な言い方で、ほんとは支払っ てるんす。保険料を支払っている立場として、自分のところの健保組合にもっとこうし てくれとか、こうしてほしい、これだけまとめてみんなでやるんだから安くしてよとか 、そういうことが一切できない仕組みになっています。安くするかどうかは別としても 、これだけ払うんだから、納得できる仕組みをつくってほしい。いわゆる保険者機能と いうことなのかもしれませんが、保険者というより、支払い手として、医療のあるべき 姿について何かを言っていく機会が私たちにはあまりにもない。現実的にはゼロだと。 自動的にお金が引き落とされていくだけで、いつも議論しているのは提供側の人たちが 考えて、これじゃ安すぎるとか高すぎるとかなんとかってやってるんですけれども、三 方で二両損してる割には私たちは参加感がないなというのが、私がいつも思っているこ とで、これは意見を勝手に言わせていただいただけですが、もう少しそういうもののフ レームづくりに資することをしていただけることがないものかと思います。  大谷医政局総務課長  手短にお答え申し上げます。まず、株式会社の参入論、6ページに書いておりますが 、いまでも収益性の高い分野に集中しているんじゃないかということでありますが、む しろここの論点は、株式会社は経営効率がいいから、医療の世界に入ってきたらいまの 医療費がもっと効率化されて下がるんじゃないかというと考え方もあったわけですが、 実際にはそうではなくて、配当するために収益の高い部門に集中したり、あるいは不採 算のところはしないという影響が出て、結局国民の福祉になるかどうかについて疑問を 呈する意見があったというのが1つです。  それから、アメリカのケースでありますが、アメリカの経験者等の意見をまとめて書 いているわけですが、アメリカは参入を認めてみたものの、決してうまくいったわけで はないと。その経験においてこういうことを書いているので、だから入ってきてもいい じゃないかということにはならないというのがこの考え方であります。  最後、患者の立場でありますが、実は1ページの3.の後半に書いておりますが、患 者の立場ということについても今回若干議論が出ているわけですが、今回情報開示を進 めてできるだけ患者が選べるような情報を提供しようというのも非常に重要なテーマで ありますが、一方で、患者もその場合にはさまざまな情報や手段を得て、自ら健康保持 のために努力し、自覚と責任を持って医療に参加するという切り口も指摘されておった というのが議論の概況でございました。  中村審議官  小宮委員のご意見ですので、お答えということではありませんけれども、いまの患者 の立場に立ったという議論の中で、例えば、医療費も交渉してもう少し安くというよう なお話も出ましたが、そういう論点についてはまさに保険者機能の方の論点になってお ります。いま医政局の立場でお答え申し上げましたけれども、医療保険の分野でも検討 課題になっております。これも村上委員の先ほどのお話と関連するわけですが、今年度 中に医療制度についてさらなる改革を、いま提出している法案の附則でも求められてお りますので、また我々の方でも少し論点整理を行った上で、関係者の方々のご意見を拝 聴する機会を設けたいと思っておりますので、そのときにまた議論させていただきま す。 5.次回以降の審議会の進め方について  貝塚会長  時間がだいぶ遅くなりましたが、最後に、次回以降の審議会の進め方についてお願い します。  石本政策統括官  ご審議ありがとうございました。  次回以降の審議会でございますが、今日、若杉先生、清家先生、等々からもいろいろ ご意見をいただき、貝塚会長からもお話ございましたが、この2年間の経済前提と人口 が、あまりにも大きく変わっております。  一昨年、官邸の方で有識者会議を、まさに貝塚会長に座長をお願いしその結果の路線 で、この間、私ども、厚生労働省として走ってきたところがございます。今回の人口推 計に基づきましてもう一回改めて考え直さないといけないのではないかと、先ほどもご 指摘ございましたし、我々もそういうふうに考えております。  現在、健康保険法が国会で審議され、来年3月目途でいろいろと基本的方針を出す。 その後、年金改革に入り、その後、介護保険の改革に入るという中で、この審議会にお きまして、経済、人口を踏まえた社会保障、あるいは社会保障から経済、人口等への発 信ということで、ビジョンというまで行くかどうか分かりませんが、社会保障の給付と 負担の見直しについてのご議論を、各部会長さんからの個別のテーマのご審議と併せて 、是非次回からお願いしたいと思っておりまして、突然でございますが、ひとつよろし くお願いしたいと思います。  時期としては、夏休み前頃の7月下旬頃に開催していただければ有難いと考えており ます。  貝塚会長  どうぞよろしくお願いします。横断的な議論をもう一度やる必要があると思います。 6.閉会  貝塚会長  それでは、本日はこれで閉会としたいと思います。  どうもありがとうございました。                                 〜 以上 〜  照会先 厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室 政策第一係 代)03−5253−1111(内線7691) ダ)03−3595−2159