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介護報酬に関する意見


平成14年5月23日


全国老人福祉施設協議会



介護報酬に関する意見


 介護保険制度は、施行2年を経過し、利用者・国民に定着してきたものと考える。その間、措置制度から移行した老人福祉関係者は、利用者本位のサービス、生活者の視点にたった「自立生活支援介護」の実現に努めてきたところである。
 しかし、約40年に及ぶ措置制度で培われた都道府県の指導監査や社会福祉法人の経営体質は、わずか2年の経験では変わりようがない。
 にもかかわらず、「全室個室・ユニットケア」「ホテルコスト」「退職共済制度」「PFI方式による新型ケアハウス(民間参入)」など特別養護老人ホームに関る重要課題が次々と提起されている。こうした事態に対処できる法人経営・施設運営を可能とする制度的な改革と報酬設定が望まれる。種々の制度的な課題について十分な検討がされないまま、介護報酬改定の議論をせざるを得ない状況にあることから、全国老施協としては、以下の事項に十分な配慮をされるよう求めるものである。

1 施設規模について

○施設の定員規模は、サービスと人的体制の両面から効率的かつ適正な規模が決まってくる。しかし、特養ホームはゴールドプランにより都道府県及び市町村行政の政策的な推進策として定員が決められてきた経緯がある。その結果、50床が圧倒的に多く、過疎の町村や大都市部では30床の小規模特養が整備されてきた。

○また、大都市では小規模特養が認められる以前には、大規模施設により待機者の解消を進めてきたのも事実である。こうした都市部施設には、人件費や物価等のコスト高などがあり、一概にスケールメリット論ではくくれない状況があることを理解すべきである。

○今後、大中規模施設には、「人材育成」(介護福祉士実習受け入れ、介護体験受け入れ等)、「地域貢献」(小中学生のボランティア体験受け入れ、地域の福祉文化醸成等)などを積極的に担うことが求められてくる。

○規模別単価を多段階で設定することは、都道府県の設置状況による格差や利用者負担に格差が生じること、報酬請求コードの増、短期入所生活介護の報酬設定など、制度の効率性、公平性、簡素化に反することになる。


2 重度優先入所について

○特養ホームの入所者を要介護度の重い者に限定しており、優先させたりすることは、介護保険制度の本旨から言っても認めることはできない。

○しかし、特養ホームへの入所待機者が非常に多い現状では、単に「申し込み順」とすることも、ニーズからみて不合理である。

○特養ホームは、これまで利用者の施設介護の必要性を、要介護度、居住環境、家族環境、地域の福祉環境等を勘案して判断してきた経緯があり、これらを踏まえた入所の考え方を示すことが妥当と考える。


3 「新型特養」の整備について

○全室個室・ユニットケアの「新型特養」整備は、公費補助が60%から32%に減少することから一部都道府県では「新型特養しか認めない」というところもでている。

○利用者のプライバシー等への配慮から全室個室・ユニットケアが今後の施設整備の主流と言われているが、多額の法人負担が生じることから施設整備にブレーキがかかるおそれがある。(70人定員の場合、総事業費8億6,800万円のうち5億8,200万円を法人として確保しなければならない。)待機者が非常に多い地域では、利用者ニーズに応えられない状況が生まれ、危惧されるところである。
このため、資金調達能力を含め、時代ニーズを勘案した社会福祉法人の今後のあり方についても検討していく必要がある。

○利用者の居住に関る費用を「ホテルコスト」として徴収する案が示されているが、既存施設でも、法人負担により全室個室・ユニットケアを実践する施設や、一部改築により個室・ユニットケアに取り組む施設も出ていることから、これらとの整合性に配慮する必要がある。

○個室・ユニットケアは、入所者一人ひとりの生活リズムを大切にした個別ケアを行うものであり、各ユニットに常時1人以上の介護職員を配置することが必要である。そのためには特に昼間の体制強化が必要となり、人員配置上は、「2:1」程度にならざるをえず、これを可能とする報酬上の配慮が求められる。


4 今後の課題

○特養ホームの管理者給与は、平均44万4千円となっている。特養ホームの管理責任者がこの程度の水準にある状況下にあって、はたして改革的な運営に挑戦できるか心もとないものがある。
結果、

(1)入所者の重度化に対応した介護の質向上や人員の加配、

(2)多額の法人負担を伴う全室個室・ユニットケアの「新型特養」の整備(社会福祉法人の負担は約40%から68%になる。)、

(3)地域ニーズに応じた介護予防・生活支援の保険外サービス等の開発・実施、

などへの意欲が喪失している状態を懸念せざるを得ない。

○全国老施協は、このような措置時代の残滓を引きずった経営管理体質からの脱却をはかり、「生活視点の介護」サービスの向上をめざすものである。



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