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主要国における出生率の動向と家族政策

○1960年代半ば以降、欧米先進諸国で出生率が低下。
 ・ 人口学的要因・・・晩婚・晩産化の進行、ベビーブーム期(第2次大戦直後〜60年代半ば)の早婚化の反動
(注)西欧諸国では同棲の多くが婚外出生を伴うため、晩婚の全てがそのまま晩産につながるとは言えない。また、移民の出生による影響は小さい。
 ・ 社会経済的・技術的要因・・・女性の高学歴化・職場進出、価値観の個人主義化、青年層の失業率の上昇・窮乏化、ピル等の避妊方法の普及など

○1980年代半ば以降、国ごとに出生率の動向や家族政策の実施状況が大きく異なる。

※2000年時点の合計特殊出生率
国名
(出生率※)
アメリカ
(2.13)
フランス
(1.89)
イギリス
(1.65)
スウェーデン
(1.54)
ドイツ
(1.36)
イタリア
(1.23)
80年代以降の出生率 上昇傾向 比較的高水準で推移し、近年は上昇傾向 比較的高水準で推移 80年代後半に上昇後、90年代に再び低下 低水準で推移(統合後、一時低下) 低下傾向(世界最低水準)
出生率に影響する要因として指摘されているもの
 25歳以上白人の有配偶出生率や25歳未満白人の婚外出生率等の上昇
 出生を遅らせた人が晩産により希望子ども数へキャッチアップすること(キャッチアップ現象)による30歳代の出生率の上昇
 高出生率の人種の割合が上昇していることによる影響は小さい。
 同棲者の増大による嫡出出生の減少、婚外出生の増加
 ピル等の避妊方法の普及による計画的な婚外出生・婚前妊娠の増加、計画外出生の減少
 家族政策について、出生率を底支えする効果がある、という指摘はあるが、出生率を上昇させる効果は限定的、という研究が多い。
 10代の出生率が高いこと
 子どもを持つ家庭では、若い世代も含め2人以上の子どもを持つ場合が多いこと など
(80年代の上昇要因)
 キャッチアップ現象による30歳代の出生率の上昇
 家族政策の効果

(90年代の低下要因)
 若年層中心の失業率の上昇
 社会保障給付の削減による将来不安の醸成
 経済の低迷
 80年代後半のベビーブームの反動

(旧西独の低迷要因)
 低い女性就労率(通常、学校が午前で終了するため幼い子どもの母親は主婦であることが前提とされる等)
 「3歳児神話」による保育サービスの未発達
 「子ども嫌い、子どもに優しくない社会」の伝統と子育て環境の悪化 など
 男女の役割分担に関する伝統的意識が強い。
 女性の就労が進む一方で、仕事と育児の両立のための制度やサービスが未整備。
 若年層の高失業率
 住宅市場の硬直化
 ファシズム時代の人口増強政策への拒絶感 など
家族政策の実施状況 政府は家族の問題に介入せず、主に困窮家族の救済に焦点。育児休業、児童手当、公的保育サービスは低水準。 戦後一貫して、出生促進目的の家族政策(手厚い児童手当や所得控除、高水準の公的保育サービス等)を実施。 家族による自助努力の促進や扶養責任の遂行に主眼。育児休業制度はなく、公的保育サービスは低水準。 男女平等の理念の下、出産・育児と女性の就労の両立を目指した包括的家族政策(出産・育児のための手厚い有給休業制度等)を実施。 伝統的な家族制度の維持に関心。育児休業期間の延長による母親の自宅での育児の奨励等を実施。 家族政策の努力水準は極めて低い。保育サービスは供給不足で、児童手当の支給水準は最低限。
(参考文献)阿藤誠編「先進諸国の人口問題」(1996)、人口問題審議会「少子化に関連する諸外国の取組みについて」(1999)、阿藤誠「現代人口学」(2000)


各国の出生率の変化図

出典: 諸外国 UN,Demographic yearbook及びCouncil of Europe,Recent demographic developments in Europe and North America
日本 厚生労働省大臣官房統計情報部「人口動態統計」
1991年以前のドイツのデータは西ドイツのものである。


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