02/04/19 第3回社会保障審議会年金部会議事録              第3回社会保障審議会年金部会                    議事録                平成14年4月19日 第3回 社会保障審議会 年金部会 議事録 日時  :平成14年4月19日(金) 10:00〜12:30 場所  :霞が関ビル東海大学校友会館 出席委員:神代部会長代理、井出委員、大澤委員、大山委員、岡本委員、翁委員      近藤委員、杉山委員、堀 委員、向山委員、矢野委員、山崎委員      若杉委員、渡辺委員 ○ 福井総務課長  それでは、ただいまより第3回社会保障審議会年金部会を開催をいたします。  議事に入ります前に、お手元の資料を確認させていただきます。  座席図、議事次第のほか、資料1といたしまして、「年金部会における当面の議論の 進め方(改訂版)」、これは前回たたき台ということで提出をさせていただいたもので ございます。前回の審議における各委員のご意見を踏まえまして、改訂版とさせていた だいております。資料2は、資料2−1と資料2−2とに分かれてございますが、資料 2−1は「公的年金制度の役割とこれにふさわしい財政方式及び財源等」、資料2−2 は、これのいわば資料編でございます。資料3でございますが、「公的年金制度の歩み とこれまでの主な制度改正」、資料4でございますが、「諸外国の年金改革の要点」と いうことで出させていただいております。資料5でございますけれども、前回の当部会 の議事録でございます。  本日でございますが、まず宮島部会長におかれましては、急遽ご欠席されるというご 連絡をいただいたところでございます。規程によりまして、神代部会長代理に進行をお 願いしたいと存じます。今井委員、山口委員につきましては、ご都合によりご欠席との ことでございます。また、矢野委員、若杉委員につきましては遅れてお見えになるとの ご連絡を頂戴いたしております。  ご出席をいただきました委員の皆様方が定足数の3分の1を超えておりますので、会 議は成立をいたしておりますことをご報告申し上げます。  また、4月1日付で、社会保険庁幹部の異動がございましたのでご紹介をさせていた だきます。社会保険庁運営部年金保険課長の渡邊でございます。  それでは、以降の進行につきまして、神代部会長代理にお願いいたします。よろしく お願いいたします。 ○ 神代部会長  本日はご多忙のところお集まりをいただきありがとうございます。部会長が先ほど事 務局からお話がございましたような事情ですので、規程に基づきまして、私が進行を務 めさせていただきます。  お手元に資料1としてお配りしておりますのは、前回のご議論を踏まえまして、「年 金部会における当面の議論の進め方(たたき台)」を修正したものであります。委員の 皆様から出されましたご意見を概ね反映できているのではないかと思います。基本的な 流れはこういうことかと思いますが、ここに書いてないことは一切議論しないというこ とではありませんので、随時ご意見をいただければと思います。  それでは議事に入りたいと思います。本日は資料1で言いますとIIIに当たります「 年金制度の役割と財政方式等」についてご議論をいただきたいと思います。事務局の方 で、「公的年金制度の役割とこれにふさわしい財政方式及び財源等」、「諸外国の年金 改革の要点」を用意いたしております。本日は長くなりますが、議事の進め方といたし ましては、まずこれらの資料について、一通りご説明を受けた方がよろしいかと思いま すので、事務局からまとめてご説明をいただいた上で、時間の許す限りご議論をいただ いて、さらに次回も引き続いてご議論をいただきたいと存じます。  なお、前回、向山委員から公的年金の改正の経過につきまして説明してほしいという ご要望がございました。公的年金制度についてどのような考え方の下で累次の改正が行 われてきたのかということは、公的年金制度の役割等を考える上で重要な点でございま すし、資料も用意されているということでありますので、あわせてご説明をいただきた いと思います。それでは、事務局の方でご説明をよろしくお願いいたします。 ○ 榮畑年金課長  それでは資料2−1、資料2−2からまずご説明させていただきます。恐縮ですが、 座らせていただきます。  資料2−1の「公的年金制度の役割とこれにふさわしい財政方式及び財源等」と資料 2−2の(資料編)をあわせまして、ご説明させていただきます。資料2−1を1枚お めくりいただきますと、1ページ「公的年金制度の役割」でございます。(1)生涯を安 心して暮らすためには、必ず訪れる将来の生活保障、高齢期になって働けなくなったと きの生活保障、すなわち収入の確保をきちんと考えていかなければ生涯安心して暮らす ことができないという話でございます。  しかし、その際に、先の話でございますが、将来のことはなかなか確定できないこと が幾つかございます。その一つといたしまして、その時その時から、自分が高齢期にな って働けなくなるまでの超長期の間の経済社会変動をどう見るか。これはほとんど規模 が大きく、かつ、どう定まっていくか判明しにくいところがあります。例えば資料2− 2の1ページをご覧になっていただくと、「年金に加入し始めてから受給するまでの時 間の長さと経済社会の大きな変動」というのを絵で書かせていただいています。1956年 (昭和31年)に20歳の方が、昨年働けなくなって年金生活させられたといたしましたら 、その間、平均的なサラリーマンの生活水準は、そこに書いておりますように、1956年 のサラリーマンの平均賃金、約1.2 万円くらいだろうと思いますが、サラリーマンの平 均賃金、1.2 万円が、昨年は32万円と26.4倍になっています。これがこの間の26.4倍に なるような生活水準、すなわち経済社会の大きな変動でございます。これは実はこの方 が今後さらに70歳、80歳ということで、さらに、あと15年、20年、30年の間に、この生 活水準がどう変動していくかというのはなかなか判明しにくい点があるだろうというこ とで、長い、半世紀をも超えるような経済社会、生活水準の大きな変動にどう対応して いくかという点が一つでございます。  二つ目の判明しにくい不確定要因といたしましては、自分が何歳まで生きるか、それ が当然のことながら事前につかめません。資料編の2ページをご覧いただきますと、65 歳の平均余命を掲げさせていただいておりますが、1955年に20歳だった方を想定してい ただきますと、1955年の65歳の方の平均余命は女性14.13 歳、男性11.82 歳だったわけ でございます。この方が現時点のところは、45年たって65歳になられたときには、平均 余命が22歳(女性)、17歳(男性)ということで6〜8年延びているということですか ら、現実的にこういう方を想定いたしましたら、6〜8年の間の生活保障をどういうふ うに準備していくかというのは事前に想定できなかったということになるのだろうと思 っています。  ちなみに資料編の3ページに年齢別の生存率も付けさせていただいておりますが、平 成12年に誕生した方で想定いたしますと、男性78歳、女性85歳という平均寿命を超える 時点でも大半の方が生存しておられて、男性の17%、女性の39%の方は90歳時点でも生 存しておられるということで、まさに一人一人をとってみると、何歳まで生きるかとい うのは確定できないことだろうと思っております。  最初の資料に帰っていただきまして、そういう不確定要因がある中で、生活保障(収 入の確保)としてどういう機能が必要かというのが(3)でございますが、(1)は確実性、 (2)は、まさに働けなくなったときに、その時々に生活の支えとして実質的に価値のあ る、生活の支えとなることができる水準であること、(3)は、個々人の老後の生きる期 間が初めから定まってない中で、個々人の老後生活が継続する限り保障が続くというこ と、この3点が必要な機能だろうと思っております。  そう考えますと、これは貯蓄とか家族の私的な扶養等では、とても確実に保障するこ とができないことから、ここに公的年金制度が対応する役割があるのだろうということ を考えているところでございます。  その次の2ページをご覧になっていただきますと、そういう「公的年金制度の財政方 式」としてどういう方式があるかということでございます。  (1)は世代間扶養の「賦課方式」でございます。これはその時々の年金給付に必要な 費用をその時々の現役の方が払っていただく保険料で賄うという財政方式、まさに世代 間扶養の方式でございます。  もう一つは、世代間扶養に対置する形といたしまして、「積立方式」がございます。  これはどういうことかと言いますと、将来の年金給付に必要なお金を、保険料であら かじめ積み立てておいて、その金利と保険料そのもので将来の年金給付を賄っていくと いう方式でございます。  賦課方式(世代間扶養)と積立方式、いずれかと言いますと、実際問題、年金制度と しては賦課方式(世代間扶養)を基本として運営されてございますし、これはアメリカ 、ヨーロッパでもほぼ例外なく同様でございます。それは資料編の4ページをご覧にな っていただきますと、資料3でございますが、一番端の欄にアメリカ、イギリス、ドイ ツ、フランス、スウェーデン、ほぼ例外なく欧米先進国も賦課方式(世代間扶養)で年 金制度を運用しております。  この二つの財政方式を考えていただく際に、恐らく幾つか論点があろうかと思ってお ります。  (3)でございますが、一つ目は、先ほどもご説明させていただきましたが、年金制度 は超長期でございます。一人一人で言いましても半世紀を超えるような超長期にわたり まして現役から受給者へと移り変わっていくわけでございますが、その間の、想定を超 えたインフレや賃金上昇等の大きな経済社会の変動があったときに、その時その時の暮 らしを支えられるような実質価値が維持することができるだろうかということを一番大 きく考えていただく点だろうと思っています。  このときに、先ほどお話いたしました財政方式の基本的な骨格からいたしまして、最 初にお話いたしました現役世代の所得の一部を保険料として拠出していただいて、それ を年金給付に充てる、そういうような財政方式でございます世代間扶養の賦課方式なら ば、想定を超えたインフレ等々にも対応できるということでございます。  そうではなくて、まさに金利収入と保険料の元本そのものでやっていこうという方式 では、金利が実際に生活水準の向上に対応できていくというだけの保障がございません から、結局安定性に欠けることになるのではなかろうかと考えています。資料2−2の 1ページにお戻りいただきますと、下の方に積立的に金利でやったらどうなるか、二つ の例を挙げさせていただいています。1956年から2001年まで生活水準自体は26.4倍に上 がっておりますが、一方で金利で幾つかの指標で計算いたしましたら、14.8倍、5.7 倍 ということでございまして、とても生活水準の上昇に、少なくとも1956年から2001年と いう時点では対応できるような金利が稼げてないということが数字として挙げさせてい ただけるかと思ってございます。  資料2−1の3ページでございますが、二つ目の論点といたしまして、想定を超えて 長生きをして終身にわたって確保することが可能かどうかということでございます。こ れは先ほどの経済社会変動、生活水準の向上と同じ話が当てはまるかと思っております 。まさに二つの方式のうち、世代間扶養の賦課方式ならば対応可能ではないかと思って ございます。  巨額の積立金が形成されることにより、経済社会全体の貯蓄・消費バランスが崩れて 、国民経済の健全性が損なわれるおそれがあるのではないか、巨額の積立金による国民 経済への影響、これをどう考えるか、という点が三つ目の論点だろうと思っています。  四つ目は、少子高齢化、人口構成の変化。少子高齢化が進んだときにどちらがどうか ということでございます。二つの方式のうち最初に申し上げました世代間扶養の賦課方 式というのは、年金受給者と現役被保険者の比率の影響ということから、積立方式に比 べて人口構成の変動の影響を影響を受けやすいのではないかと思っております。  このように、賦課方式、積立方式を議論をいただくときのいくつかの論点がございま すが、現実に日本の公的年金制度はどうしているかと言いますと、まさに先ほどもお話 いたしましたが、諸外国同様、賦課方式(世代間扶養)を基本としつつ、しかしながら 、完全賦課方式というよりは一定の積立金を保有しながら運営させていただいています 。  これはどういうことかと申しますと、資料2−2の6ページをご覧になっていただく と、資料4といたしまして、実際の保険料の引上げ計画と完全な賦課方式、すなわちそ の時その時に必要な給付をその時の保険料で調達するという完全賦課方式による保険料 率等とを対置させていただいております。  この2本の線の差を、すなわち完全賦課方式では、2040年から2050年にかけまして標 準報酬ベースで言いまして35%ぐらいになるところを積立金の金利収入で下げている。 これはまさに人口高齢化が急速に進んで、保険料が急激に上がっていくということを避 けて、かつ大変高い高齢化の水準で、この35%にも完全賦課方式でやると、そのときに 調達しなければならない保険料になるところを金利収入、積立金の運用益でこの差を稼 いで、現実の階段上の保険料の引上げ計画で一番きつい時で標準報酬ベースで27.8%、 年収総報酬ベースで21.6%にとどめさせていただける。また、将来2060年以降も完全賦 課方式では30%程度になるのを下げているということでございます。まさにこの分を金 利で稼ぐことによりまして、急速な保険料の引上げないしは保険料の上限を抑え、年収 ベースで21%程度まで下げることが可能ということで、日本の公的年金制度は完全賦課 方式でございますが、実は一部一定の積立金を持ちつつ運用しておるところでございま す。  それから、資料2−1の4ページでございますが、給付建てと拠出建てという議論が ございます。給付建てというのは、そこにも書かせていただいておりますが、あらかじ め設定されている算定式がまずございまして、その中に保険料の納付実績(納付期間や 賃金)を代入いたしますと年金額が決定されてくるような方式です。これは人口構成の 変化等によりまして、給付費が所定の財源では払い切れなくなったような場合には算定 式の改正をして給付を引き下げるか、または保険料負担を引き上げていくかということ で、給付額が決まってまいりますが、それに合わせてお金を調達するか、もしくは給付 を引き下げるか、そういうことが必要になる方式でございます。  そういった給付建てに対置される意味で、確定拠出もしくは拠出建てという概念がご ざいます。これはまさにその言葉どおりでございまして、拠出された、支払われた保険 料額及び金利の収入の範囲内で年金額をやっていこうということで、まさに保険料の元 利合計の範囲内でやっていきますから、年金の給付費が所定の財源で払い切れないとい う事態にはなりません。しかし、一方で、先ほどもご説明させていただきましたように 、金利が稼げず、実質的な生活水準の上昇に追いついていかなければ収入の確保の機能 は不安定になって、特に超長期の将来、半世紀を超える将来までの間での確実性は低く なるというような性格がございます。  この賦課方式、積立方式、給付建て、拠出建てというのは、その下の参考の形で組み 合わせてみるとこういう形になるというのを整理させていただいてございます。  それから、5ページ、財源論でございます。財源論といたしましては、「社会保険方 式」と「税方式」と二つございます。  社会保険方式というのは、5ページの(1)に書かせていただいておりますが、まさに 国民一人一人が保険料を払っていただくということを通じながら、互いに支え合ってい く方式でございまして、一人一人の保険料が払われたという実績が記録される。この記 録に基づいて給付が行われる、いわば個々人の負担と給付が連動する方式でございまし て、払っていただくことが給付の前提となるという方式でございます。  それに対しまして、そこに掲げてございます租税を全額財源といたします税方式でご ざいますが、個々人の負担実績に連動することなく、まさに税負担、租税負担による給 付が行われる方式でございます。この二つに大別されるかと思っています。  そのときに、現実的にどうかといいますと、社会保険料を基本としつつ保険料拠出を 支援する国庫負担を組み合わせるということで公的年金制度をずっとやってきておると ころでございまして、資料2−2の4ページを見ていただきますと、これも世代間扶養 と同様に、欧米先進諸国:アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンいず れの国も税方式ではなく社会保険方式ということで採用されてきたところでございます 。  この税、社会保険というのを考えていただく際に、まずこうなりますという事実を幾 つかご紹介させていただきます。まず費用がどれぐらいかかるかでございますが、基礎 年金を想定いたしますと、資料2−2の7ページ、資料5でございますが、平成11年度 価格で見て、平成14年度で基礎年金だけを想定いたしましても、2002年度で15.7兆円、2 025年で22.9兆円にのぼる費用が、税、社会保険を問わず必要になってくるところでご ざいます。  もう一つ、実際にこれまでの現実の税負担、社会保険料負担の推移でございますが、 資料2−2の8ページをご覧になっていただければと思います。1970年度から2002年度 までの30年余の国民負担率、これは国民所得に対して租税とか社会保険料はどれぐらい の負担になっておるかという率でございますが、現実問題といたしまして、1970年は、 全体で24.3%、それが2002年には租税、社会保障負担(社会保険料負担)合わせて38.3 %で、この32年間に14%上がってきておりますが、そのうちの10%、すなわち大宗は社 会保険料の負担が引き上がってきているということで、これはまさに一番端に書いてお りますが、個々人で負担をしなければ給付に結びつかない負担であるために、増加する 給付を払っていくための負担増についての国民のコンセンサス、合意・ご了解を得てこ られたのではないかと思っております。一方で、そうでない、地方税、国税につきまし ては、その間の32年間の増は3.4 %と0.7 %ということでほとんど変わってないという ことで、この32年間の国民負担率の全体の増加の大宗は社会保険料で合意を得ながらや ってきているのではないかと思っております。  次に、資料2−2の11ページから14ページで、現実問題として、今各種の所得保障給 付(現金給付)がございますが、それはまさに租税を財源としてやられておるところで ございます。これは例えば11ページにあります老齢福祉年金は、昭和36年4月、すなわ ち国民年金がスタートした時に一定年齢(50歳)を超えていたような方が国民年金に入 れないということから、全額租税を財源として経過的な年金給付を作ったところでござ います。この対象の方、今でも92歳ということで、まだそういう方が現実におられます が、年金の支給額3万4,000 円、すなわち基礎年金に比べまして低うございますし、ま さに本人だけではなく扶養義務者も含めた所得制限が現実のものとしてついてございま す。そのほか12ページ以降にも、租税を財源とする所得保障給付(現金給付)をつけて おりますが、それはいずれも所得制限がついているのが現行の制度でございます。  しかし、そうは言いましても、資料2−1の6ページでございますが、税方式の主張 で指摘されております利点というのはどこかということでございまして、一つは、保険 料よりも税の方が確実に財源としては確保できるのではなかろうかということを挙げて おります。二つ目は、国民年金の空洞化問題、すなわち入ってないとか、払ってないと かという人が増えているという問題を解決できるのではないことでございます。これら を主要な利点として、税方式のご主張がございます。  それをどう考えるかというのがその次の(8)でございます。まず我が国の経済社会全 体の在り方とそのような税方式の考え方が整合的かどうか。すなわち一定の年齢に達す れば、現役時代の努力、この場合の努力というのは、働いて稼いで、その中から一定の 保険料を払っていくということですが、現役時代のそういう努力をしたか、しないかに かかわらず、一定の年金が支給されるという仕組みが、働いて収入を得て生活していく という、経済社会全体の基本的な在り方、自助と自立というものと整合的かどうかとい うような議論があろうかと思います。  次に、先ほども申しましたが、税であれ、社会保険であれ、巨額の基礎年金の資金、 巨額の資金を調達しなければならないことは全く変わりはございません。資料2−2の 7ページで、先ほども少しご紹介させていただきましたが、現在で15.7兆円、2025年度2 2.9兆円になるような巨額の基礎年金国庫負担額を、全額年金目的消費税で賄おうとす れば、今で6.3 %、2025年で9.2%の財源が必要となってまいります。こういう負担が 可能かどうか。  資料2−1の8ページで、先ほど申しましたが、現実の問題として、社会保険料の負 担は、国民の合意・コンセンサスの下、10.1%に上げられてきているけれども、一方で 、給付と負担に、払ったから給付が受けられるという意味での連動がない租税・税負担 が、同じように今後これだけ急激に膨れ上がる基礎年金費用についての負担増の合意を 得ることができるかという論点が二つ目にございます。  三番目でございますが、7ページでございますが、これも先ほどご紹介させていただ きました我が国の租税を財源とする各種の現金給付の現状、考え方からいたしまして、 税方式でいきますと、所得制限が不可避であって、給付水準のカットや受給対象者の絞 り込みが行われることになり、まさに「第2の生活保護」になるのではないか、それを どう考えるかということでございます。結局そうなりますと、7ページの(3)の二つ目 でございますが、中間所得層の老後不安を高めることになり、その貯蓄を大幅に増やし て、経済全体の貯蓄・消費バランスを崩すということから、社会経済の不安定を呼び起 こすものになるのではないか、そのよう論点があろうかと思っています。  それから、四番目といたしましては、これまで保険料を払ってきた方たちと払ってこ なかった方たちの均衡の確保をどう考えるかという点でございます。  その下でございますが、基礎年金の保険料に対します事業主負担分が今3兆2,852 億 円ございますが、そこが基礎年金の費用に対します事業主負担がなくなってしまうので はないか。それをどう考えるかという論点。それから、一番下でございますが、国民年 金の空洞化問題の解決ということがございましたが、実際問題といたしましては、資料 2−2の15ページをご覧になっていただきますと、これも前回の年金部会でご紹介させ ていただきましたが、国民年金の未加入・未納の現状といたしまして、360 万人余の方 が未加入・未納でございますが、これは全公的年金加入対象者の5%にすぎない。この こと自体が非常に大変大きな問題であり、未加入・未納対策を全力挙げて取り組んでい かなければなりませんが、それにしても5%にすぎないし、また、これらの方は、お金 がない、所得が低いから払えないということではなくて、所得面で納付者と大きな差異 がないというのが16ページで幾つかの指標でご覧になっていただけるかと思っておりま す。これらの方の存在を理由に税方式に切り替えることが妥当かどうかという問題であ ろうかと思っています。  9ページでございますが、もう一つの議論として、厚生年金の報酬比例部分を廃止・ 民営化すればどうかというお話がございます。厚生年金の報酬比例部分の廃止・民営化 はどういうことかということをもう一回整理し直させていただきましたが、(1)でござ いますが、結局厚生年金を廃止して、その報酬比例部分を今の賦課方式ではなく積立方 式で、この場合、給付建てとか拠出建てとかございますが、それでやっていくという考 え方でございます。そうである以上は、サラリーマンに加入を強制することはできない ことになるだろうと思っています。  この提案を議論していただく際の論点は何かということで幾つか書いてございますが 、一つは、サラリーマンに対する老後の生活保障をどう考えるかということでございま す。9ページの下に老齢年金受給者者実態調査結果の表をつけておりますが、これは結 局現役時代の職業がサラリーマンか自営業かによって、引退後の収入に差があるという ことと、その差を調整するために公的年金があって、それを両方合わせるとトントンに なっていくということが実態だろうという意味から、そういう点ではまさに厚生年金の 報酬比例部分は、サラリーマンに対する老後の生活保障という点で必要なものなのでは ないかということが数字としてうかがわれる資料でございます。  もう一つは、サラリーマンに対する保障の範囲や水準がどうなるかということでござ いますが、9ページの一番下でございますが、廃止・民営化によって、その代わりとし て企業が拠出する企業年金として報酬比例部分を実施するといたしますと、現在企業年 金を実施できていない中小企業等の従業員の方には、結局は報酬比例部分がなくなって 、基礎年金だけになるということになりはしないかという点を挙げております。  それから、10ページでございますが、そうではなくて個人拠出の私的年金として報酬 比例部分をやっていくのだとしたら、事業主負担分はなくなり、その分従業員本人の保 険料負担増につながるのではないかという論点がございます。  それから飛びまして四番目でございますが、二重の負担問題というのがございます。  これはどういうことかと言いますと、資料2−2の17ページをご覧になっていただけ ればと思います。絵で書いていますが、左の現行制度は、先ほども申し上げましたが、 世代間扶養の賦課方式でございますから、現役世代が保険料を出すことによって年金受 給者の年金給付を賄っております。報酬比例部分をなくすとどうなるかというのはその 隣に書いてございますが、現役世代は自分の将来の年金のために積立ていくことになり ます。それに加えまして、既に今払われている年金、もしくはこれまで何十年か保険料 を払ってきた保険料納付実績に合った給付は、当然将来支給しなければならないわけで ございますが、今支給されている年金や今後発生する年金の費用を誰が支えていくか。 これは現役世代が負担するしかないわけでございますから、現役世代はそういう点で自 分のための負担と今支給されている年金等のための負担の両方を負うことになるという のが、この二重の負担の概念でございます。その金額が、年金の現在の積立金を充てた 上で、なお、330兆円必要であることをどう考えるかということでございます。  10ページの一番下でございますが、主要先進国の状況といたしましても、どこの国で も報酬比例給付はございますが、これを全て民営化、積立方式化する動きはございませ ん。ただ、後でもご紹介があるかと思いますが、スウェーデン、ドイツ、アメリカなど では、公的年金の一部につきまして、もしくは公的年金を少し変える形で積立方式(拠 出型)の年金の導入の動きがございますが、丸々変えるということはどこの国でもやっ ていないという事実がございます。  それから、12ページでございますが、最後になります。公私の年金制度の役割分担と いたします。公的年金の機能と私的年金の機能とは違うということから、私的年金が公 的年金の機能に代わって受け持つという関係にはないということで、あくまで将来の生 活保障という点では、公的年金が基礎でございます。その基礎を踏まえた上で私的年金 を老後の生活の多様化に対応する仕組みとして、公的年金と組み合わせていくというよ うなことでの役割分担があろうかと思っております。  あと、簡単に資料3の経緯をご説明させていただきます。公的年金制度は、昭和17年 (1942年)に労働者年金保険を、厚生年金の前身でございますが、スタートいたしまし て、その後、昭和36年に国民年金ができ、国民皆年金がスタートいたしました。その後 、いわば40年代に制度の充実期ということで、「1万円年金」、「2万円年金」、48年 には物価スライド、賃金再評価を導入したりして制度を充実させてまいりました。  2ページでございますが、その後、本格的な高齢社会の到来をにらみまして、昭和60 年改正以降、例えば昭和60年改正で、まさに全国民共通の現行の基礎年金を作ったり、 給付水準の適正化をさせていただくような改正をした上で、3ページでございますが、 平成6年改正では、60歳台前半の支給開始年齢の引上げがあったり、前回の平成12年改 正では、同じように給付水準の調整をさらにさせていただくということで、本格的な高 齢化社会に向けた制度改正をし、対応してきたところでございます。  なお、それとともに、平成8年改正とか13年改正では、公的年金の一元化ということ への取り組みも、これと並行して進めてきているというのが経過でございます。 ○ 神代部会長代理  どうもありがとうございました。引き続いて国際年金企画室長からお願いします。 ○ 池永国際年金企画室長  国際年金企画室長の池永と申します。私からは、諸外国の年金改革の要点について、 資料4に沿ってご説明をさせていただきたいと思います。「諸外国における年金改革の 要点」でございますが、これは現在私どもが得ている情報を基に要点をまとめたもので ございます。  目次がございますが、まず諸外国の年金制度の概況をご覧いただき、また、主要先進 国の高齢化の状況、出生率の動向の概況をご覧いただいた上で、アメリカ、ドイツ、ス ウェーデン、イギリスの各国の年金改革の概要についてご説明をしたいと思います。  2ページをお開きいただきたいと思います。アメリカ、ドイツ、スウェーデン、イギ リスのそれぞれの年金制度の概要を整理してございます。各国とも所得比例型の年金制 度を持っております。上にイメージ図を書いてございますが、ご覧いただけますように 、年金額の計算式の仕組み、所得再分配の仕組みが若干異なっておりますが、それぞれ 所得に応じた年金を支給する仕組みを持っているということでございます。  アメリカについても自由主義、民間医療保険のイメージが強いわけですが、年金につ いては、大恐慌の後に作られた社会保障法に基づいた、れっきとした公的年金によって いるということでございます。また、イギリスについては、1階、2階という仕組みに なっておりますが、その2階部分について、企業年金あるいは個人年金が公的年金を一 部代行するということが認められております。  次に、それぞれの年金制度の財政方式については、いずれも拠出と給付が連動する社 会保険方式によっているとともに、世代間扶養による賦課方式を採っております。一部 一定割合の積立金を持っているということはございます。それから、スウェーデンにつ いてはまた後ほどご説明しますが、近年の改正で一部積立方式の拠出建ての部分を設け たということがございます。さらにアメリカについて「※」で付記しておりますが、高 額年金受給者の年金に課税をして、それを再び年金給付の財源にするという仕組みが設 けられております。  それぞれの各国の年金制度の対象者は、いずれも所得がある者については強制的に加 入するということが基本になっております。  さらに各国の保険料率につきましては、アメリカは現在12.4%、これを労使折半とい うことになっております。アメリカは「社会保障税」という名前がついておりますが、 給付額が所得と拠出期間に連動するという意味において、我が国の社会保険料と基本的 には同等なものだと考えております。それから、ドイツにつきましては、現在19.1%の 労使折半の保険率でございますが、近年の改革で、将来のピーク時は22%に抑えるとい う改革が行われております。それから、スウェーデンについても、近年の改革で同様に1 8.5%労使折半に保険料を抑えるという改革が行われており、予定では既に実施される 予定であったわけですが、実際には最終的な政治合意にまだ至ってないということで、 現状の保険料率はここにございますように17.21% で事業主の割合が若干高くなってい るという状況でございます。  それから、イギリスについては21%、若干事業主の割合が高いということでございま すが、イギリスは高齢化の状況がやや緩慢だということ、比較的早くから20%という高 い保険料に引上げられてきたこと、給付の抑制が図られてきたこともあって、ヨーロッ パの中では唯一これから保険料が若干下がり気味になる国と承知をしております。  それから、下の欄は各国の改革の状況をまとめてございますが、こちらは後ほどの資 料で各国それぞれ詳しくご説明したいと思っております。  一枚めくっていただきまして、先進国の高齢化の状況と出生率の動向をご覧いただき たいと思っております。上が高齢化の進行状況ですが、まずヨーロッパの国々は1970年 代、80年代あたりから既に高齢化の割合が10%を超える状況に至っていたわけですが、 それに比べると、まだその時は我が国は比較的な高齢化の進行が遅かった。しかしなが ら、その後、非常に速いスピードで高齢化が進んできているという状況がご覧いただけ るかと思っております。  また、二つ目には、いずれの国も2010年代、2020年代にかけて、いわゆるベビーブー マーが高齢期を迎えるという頃に高齢化が急速に進むという状況がご覧いただけるかと 思っています。ただ、その絶対的な水準は各国によって少し違いがあるということで、 それが高齢化のピークにも反映しており、アメリカは2050年の時点でも20%を超えると ころでとどまっているのに対して、ドイツ、スウェーデン、日本といったところは30% を超えている、その中間にフランス、イギリスがあることがご覧いただけるかと思いま す。  引き続いて出生率の動向ですが、こちらも長期的にはいずれも低下傾向にあるわけで すが、現在の状況ではその中でも少し各国によって違いがあります。まだ合計特殊出生 率が2を上回っているアメリカ、1.5 から2の中間にあるイギリス、フランス、さらに1 .5 あたりで何とかとどまっているかに見えるスウェーデン、1.5 を下回ったドイツ、 日本、さらにその下をいっているスペイン、イタリアといった状況がご覧いただけるか と思います。 もう一枚めくっていただきまして、アメリカの年金改革の議論の動向を ご紹介をしたいと思います。アメリカも長期的にはベビーブーマーの高齢化ということ で年金財政が厳しくなることが随分前から予想がされていて、ベビーブーマーが高齢期 を迎える頃には現状のままでは年金財政が非常に厳しくなることが見込まれ、かねてか らこうした財政問題に対処するための取り組みが行われてきています。  まず1980年代の改革を振り返ってみますと、2の(1)でございますが、レーガン政 権の時代、1983年に長期の年金財政の健全化を図るための改正が行われておりますが、 給付の抑制と保険料の引き上げ、具体的には2003年から2027年にかけて支給開始年齢を6 5歳から67歳に引き上げるというプログラムをこの時点で組んでおりますし、保険料率 を被用者、自営業者それぞれ引き上げることをしております。この時点で決まった1990 年の12.4%という保険料率が現在に至っているということです。  三番目は、先ほど申しました高額所得者に対する年金課税をこのときに導入をしてい まして、これを年金給付の財源に充てるという仕組みです。  次のページをめくっていただきますと、クリントン政権下の1990年代の後半の改革の 議論を紹介をしてございますが、1994年に年金改革を検討する委員会が設けられ、97年 1月にその改革案が三つ提示された経緯がございます。確定拠出・積立方式の個人年金 勘定を現行の賦課方式の年金に加えるという案を含む案ですが、具体的には(参考)に (イ)、(ロ)、(ハ)と三つ並べてある案が提示されました。  (イ)は、できるだけ現行の給付水準を維持することを目標にその分保険料を引き上 げることを中核とする案です。  (ロ)は、現行の社会保障税の上に上乗せして強制的な確定拠出型の個人年金勘定を 設けることとともに、現行年金制度についても支給開始年齢引上げの前倒しや、満額年 金を得るための保険期間の引上げなどの年金給付の適正化を図る案もセットになってご ざいます。  (ハ)も、個人年金勘定と現行の年金制度の改革のセットですが、現行年金制度を定 額方式に変更し、個人年金勘定の分が若干多くなるということでございます。  さらに、1999年において、クリントン大統領の一般教書演説において、将来のベビー ブーマーの高齢化に備え、財政余剰の6割を年金基金に投入をし、その財政余剰の一部 を株式市場で運用すること。さらには加入者の拠出と政府の拠出を合わせて拠出する個 人年金勘定を創設する案も提案されております。  これらの案はいずれも案として提案されたということで、具体的に実施に移されたと いう状況ではございません。  そういう中で政権が替わり、ブッシュ政権下においても年金改革の議論が行われてい ることをご紹介しますと、次の6ページ、ブッシュ大統領選挙時の公約に「個人退職勘 定の創設」を掲げていたこともあって、委員会を設けて検討が行われておりましたが、 昨年12月に最終報告として三つの案が提案されております。  この案の検討に当たり大統領が示した原則は、この3の(1)にありますように、現 在の受給者、近い将来の受給者には影響を与えないこと、公約である個人退職勘定も含 む案であることが掲げられています。ちなみにその中では、社会保障年金の積立金を株 式市場で運用しないということも掲げられていますが、先ほど申し上げたように、クリ ントンの改革案では一部積立金を「株式市場で運用する」とあったわけで、ブッシュ大 統領の原則で「株式市場で運用しない」とされている理由は、株式はリスクがあるから ではなくて、国によって市場を支配し、それをゆがめることにつながりかねないのでは ないかということを問題視する考え方が背景にあるためだと理解をしております。  (2)にあります三つの案の概要を簡単にご紹介したいと思いますが、いずれの案も 一定の任意加入の個人退職勘定を設ける。その分、若干保険料が社会保障税から個人年 金勘定分に移るということですが、それに応じて現行の年金制度の額を一部控除する。 しかしながら、個人勘定と合わせると、両方では現在よりも保障の水準は上回るという ことで作られております。  〔モデル1〕は、その個人勘定に振り向ける分が課税所得の2%になっております。  一枚めくって〔モデル2〕では、個人勘定に振り向ける部分が〔モデル1〕よりも少 し多くなっている。〔モデル1〕ではその他の社会保障年金の部分は現行どおりであっ たものを、〔モデル2〕では現行年金制度についても一定の見直しをするということで 、具体的には新規裁定時の賃金スライドを物価スライドに変更する。最低賃金労働者に 対する年金額のかさ上げをする。遺族年金の水準を引き上げるという形の給付の見直し 、適正化、重点化があわせてセットになっている案でございます。  〔モデル3〕も同じく個人年金勘定を一部導入するわけですが、これは現在の社会保 障税の外側に1%の追加拠出を行った場合に、社会保障税の内側の部分と合わせて個人 年金勘定として運用を認めるということです。  さらに〔モデル3〕は〔モデル2〕と同じように、現行の年金制度についてもスライ ド方式、ここでは賃金スライドと物価スライドの中間でスライドをする、早期退職者に 対する減額率の見直しや退職後の労働によっても受給が増えるようにするといった労働 参加への影響の配慮、高所得者に対する給付費の削減と賃金の低い者に対する年金の重 点化、遺族年金の見直しといった形の現行制度の見直しを合わせてセットで行うという ものでございます。  以上の三つの案が、ブッシュ大統領の設けた委員会で提案されたものですが、いずれ も現行年金制度の一部に個人勘定を導入する案ですが、公的年金全体を民営化する動き はないものと理解をしております。  この改革案はいずれもまだ委員会の報告にとどまっておりますので、今後の政治的な 状況もあわせて見通しは現在はっきりしているものではございません。  また、こうした三つの案が提示された背景には、90年代の株価の好調、確定拠出年金 が普及してきたことが一つの背景にあり、またアメリカの貯蓄率の低さも反映している のではないかと考えております。  次の9ページをお開きいただきますと、ドイツの近年の改革の内容についてまとめて ございます。ドイツも同様に高齢化の進行が非常に急速に見込まれるということで、現 行制度のままでは、1.の(2)にございますように、2030年には現在の2割程度の保 険料が26%まで上昇することが見込まれていたことがございます。  こうした背景で2001年の改革が行われましたが、それに至る前史を2で触れておりま すので、少しここを触れた上で2001年の説明に移りたいと思いますが、ドイツでは1990 年代初頭において、賃金スライドを可処分所得スライドに変更する、通常の支給開始年 齢前に受給できる早期受給特例がございましたが、これを一部を除いて廃止をする、と いった改正が行われ、さらにそれが95年には前倒しされた経緯もございます。  また、1999年には、平均余命の延びに応じてスライドを抑制することが決まったわけ ですが、政権交代により凍結されたことがあり、当面の措置として2001年では可処分所 得スライドを物価スライドにすることが行われております。  そうした経緯を経て2001年の改革に至ったわけですが、10ページをご覧いただきたい と思います。  まず改革の骨子の第一は、保険料率上昇を抑制するということで、2020年までには20 %以内、2030年にも22%以内に抑え、そのために給付水準を引き下げる。具体的にはモ デル年金の給付水準、現在現役世代の可処分所得の7割になってございますが、この設 計を2010年から段階的に引き下げて、最終的には67%程度にすることを行っております 。  (3)は、現在の公的年金の給付率の見直しに合わせて、補足的老後保障制度(任意 加入、拠出建て)の個人年金といったものをあわせて創設することをしております。公 的年金を補足する自助努力の年金制度として任意加入で拠出建ての積立老後保障制度を 段階的に導入することとしております。この制度は事業主の負担は義務づけられてはお りませんが、政府による補助があります。また、拠出金は非課税ですが、給付は課税と なっております。  次の11ページをご覧いただきますと、段階的に導入をされるということで、2002年か ら所得の1%の限度額に始まり、2008年には4%まで拠出できる形になっておりますし 、「※2」のございますように、政府による補助がございますが、その中は基礎的な補 助とともに児童がいる場合には補助額が追加されるという形で育児負担にも配慮されて います。  以上の三つがドイツの改革の今回の柱ですが、そのほかも幾つかの改正が行われてお ります。スライド方式については、先ほどの可処分所得の所得スライドの再開とともに 、今直前にご説明しました積立型の老後保障制度への積立拠出分を差し引いた形でスラ イドするという形の改正も行われております。  12ページに移っていただきまして、これは児童養育期間に対する配慮ということで、 従来からある3歳までの育児休業期間に対する優遇措置に加えて、4歳から10歳までの 子どもを養育しながら働く方、その中でも平均賃金が低い方に対する優遇措置を行って おります。また、離婚しない場合にも年金分割(任意)をすることができるようにする とか、子どものいない方の遺族年金の額を若干減額をすることで給付の重点化を図るこ とを行っております。  最後に「参考」に改革の経緯を載せておりますが、ご覧いただきたいのは、当初2000 年7月の段階では、給付水準の見直しを7割から64%に引き下げる案であったものが、 最終的には67%にとどめることになったという経緯でございます。  引き続いて、スウェーデンの1999年の年金改革について、その内容をご紹介したいと 思います。  スウェーデンの年金改革に至る背景は大きく分けると三つございますが、その一つは 、ほかの国とも同様に人口の高齢化が急速に進むことにあるわけですが、改革原案がま とめられた1994年の人口推計では、ピーク時の2035年から2040年には高齢化率が22.4% に達するものと予想がされておりました。先ほど高齢化の見通しの図をご覧いただきま したが、これは直近の推計によるもので、この直近の推計では2035年から2040年にかけ て28.7から29.9と3割近くになる見通しになるということで改革の議論当時よりもさら に高齢化が進んでいることがあるように承知しております。  さらに二番目の点は、経済の低成長ということで、スウェーデンでは90年代初頭、91 年から93年にかけてマイナス成長を記録していた中で、他方、物価は上昇していた経緯 がございます。そこで旧年金制度では既裁定年金が物価でスライドされることであった ものですから、物価に連動する年金給付費と経済成長の間に乖離が生じ、年金財政の悪 化を招いていたわけでございます。  さらに三つ目の要因として、スウェーデンの年金制度、2階の付加年金の部分につき ましては、15年ルール、30年ルールという形で、生涯の最も所得の高かった15年を年金 額計算の基礎とするということで、生涯全体の獲得賃金は同じでも、その獲得した時期 により年金額が変わってしまうことや、30年で満額年金をもらえるということで、30年 を超えて働いても保険料は徴収されるけれども、年金額に反映しないという形で労働参 加に対してやや阻害的な要因を持っていた、こういったことで社会的な不公平の問題が 指摘されていた背景があったわけでございます。  次に14ページをご覧いただきますと、90年代初頭から改革が始まっておりますが、199 9年の改革の経過をまとめてございます。特徴的なのは、当初から超党派のメンバーに よって年金改革に取り組まれてきたということがございます。  次に15ページに移っていただきますと、今回の99年の改革の主な内容をまとめてござ います。大きな柱は五つございます。まず一点目の柱は、従来の年金制度が基礎年金と 所得に比例する付加年金という2階建ての体系であったものを、これを所得に比例する 年金の一本建てにするということで、従来1階部分を担当していた基礎年金は、事業主 負担及び国庫を財源として、居住を要件として支給される、給付に連動しない、いわゆ る税方式の基礎年金であったものを廃止して、所得比例型の社会保険方式の年金に体系 を組み換えることをしております。さらにその一部には積立方式の拠出建ての年金をそ の中に設けるということが、このイメージ図でご覧いただけるかと思います。さらに所 得比例年金の、年金額が一定額を下回る場合について、国庫負担により補足的な保証年 金を支給する制度を設けることもあわせて行っております。  以上が一番目の柱ですが、二番目の内容として、制度の改革では、保険料率を将来に わたり18.5%に固定をして、その範囲で給付を行うという仕組みをしております。具体 的には、ここに書いてございますように、従来19.86% であったものを合計で18.5%の 保険料率にし、これを将来に向けて固定をする。その内訳は賦課方式部分が16%、先ほ ど申し上げた積立方式に当たる部分が2.5%になっております。  この18.5%に保険料率を固定することについては、後にご説明する給付の調整、抑制 とあわせて、保険料を将来にわたり固定することをスウェーデン国民が選択をしたとい うことでありますけれども、その背景の一つには、この改革が議論された当時の高齢化 の見通しでは、保険料水準がほぼ高原状態に入っていたということが考えられたものと 思われます。この点に関しては、これから保険料の引上げをしていかなければならない 我が国とでは若干状況が異なると思っております。  さらに次のページをめくっていただきまして、16ページの(3)ですが、よく概念上 の拠出建て方式にしたといわれるものです。少しわかりにくいところがございますが、 この中身については、本質的には賦課方式の制度設計であること、現役世代が高齢者を 支えるという世代間扶養によっていることは変更がないものだと考えておりますが、年 金給付の計算式が、従来、先ほども申し上げたように、2階の付加年金部分については 、30年加入で満額年金になる形であったわけですが、右側の枠囲みの中にあるように、 拠出した保険料を記録し、名目賃金上昇率をみなし運用利回りとして年金原資を計算す るということで、拠出に応じて給付額を計算する形に変更したことがその内容の本質で あると思っております。  また、この右側の枠囲みの中に書いてございますように、65歳の平均余命で原資を割 って算出するということで、平均余命が延びれば、その分コーホートの年金額は減額さ れ、長寿化に対応した措置もあわせて講じられているところであります。  四番目の柱がスライド方式の変更ですが、最初に申し上げましたように、スウェーデ ンでは既裁定のスライドについては、前の制度では物価スライドであったわけです。こ れが経済成長と年金給付額との乖離を招いていたわけですが、新しい制度では実質的に は名目賃金スライドに変更することにしております。これによって年金給付費と経済成 長、それに応じた保険料収入ということになるわけですが、その乖離が生じないように 配慮されています。  その名目賃金スライドは、実質賃金スライドと物価スライドを加えたものになるわけ ですが、このうちの実質賃金スライド分については、制度における予定の実質賃金上昇 (年1.6%)を見込んでいますが、この実質賃金スライド分については、支給当初から 年金額に先取りして織り込んでおります。したがって、そのとおりの成長であれば物価 スライドになるわけですが、実際の賃金上昇が1.6 と異なる場合には物価スライド分で 調整をすることがあります。  17ページをご覧いただきますと、既裁定年金のスライド方式というところの第2パラ グラフの「すなわち」というところをご覧いただくと、実際の賃金上昇が1.6%を超え た場合には、物資スライドに加えて1.6%を超える分を上乗せしてスライドをする。また 1.6%どおりであれば、物価スライドでスライドをする。  さらには、1.6%よりも下回った実質賃金上昇であった場合には、1.6%を下回った分 を物価スライド分から控除することが行われるということで、賃金上昇に応じて給付の 調整を行う仕組みになっています。  さらに、先ほど申し上げたように、年金給付額の中では平均余命に応じて額を算定す るということで、長寿化に対応した年金給付の調整が行われるようになっておりますし 、17ページの真ん中あたりですが、実際の受給開始年齢よりも前に60歳から受給ができ るようになっておりますが、年金数理的には同等になるように年金額が調整をされるこ とです。 さらに最後の五つ目の柱ですが、先ほどから申しましたように、保険料を18. 5%に抑え、その一方で賃金変動や平均寿命の延びに応じて給付を調整するという仕組 みが設けられたわけでございますが、それによっても、なお、出生率の低下といった要 因に対しては、年金財政の影響を完全に排除できたわけではないということから、五番 目の自動財政均衡メカニズムというものを導入しております。出生率の低下による被保 険者数の減少、積立金の利回りの実質的減少等の年金財政が悪化した場合、国会の議決 を経ずに給付を調整できるような自動財政均衡メカニズムを設けているということがス ウェーデンの年金改革の五つ目の柱です。  以上が、スウェーデンの年金改革の状況ですが、19ページをご覧いただきますと、イ タリアの1995年の年金改正のことに若干触れております。イタリアの95年の改革では、 新規裁定時の再評価を平均GDPによって調整することや、スウェーデンと同じように 、一定の期間の賃金を基に給付計算していたものを概念上の拠出建てという方式に変更 するということでスウェーデンと似たような改正が行われております。どちらが元祖か というのはいろいろ議論があるようですが、似たような改正が行われてきていることが ございます。  最後になりますが、20ページをご覧いただきますと、イギリスの年金改革の動向と直 近の改革の内容をまとめてございます。イギリスは、最初に触れましたように、1階の 基礎年金に加えて2階の報酬比例年金という体系になっておりますが、その2階の報酬 比例年金については、一定の範囲で企業年金あるいは個人年金がそれを代行するという ことで、それを代行した場合には、2階部分の公的年金には入らなくても良いという仕 組みが設けられております。  そういう仕組みの下でありますが、この改革の背景の(1)で触れてございますよう に、1980年代の保守党政権の時代から、高齢化の進行を見据えて給付の抑制等が1階、 2階含めて行われてまいりました。その中で2階部分を担当する国家所得比例年金は、1 978年に比較的遅く導入をされていたことから、企業年金が既に伝統的に普及していた ということもございました。そういう中で保守党政権が2階部分を代行する企業年金、 個人年金の普及をさらに促進する政策を進めてきたという状況がございました。  こういう中で、「(2)英国年金制度の近年の問題」は、一つには私的年金、企業年 金、個人年金の部分について、所得の高い人については比較的普及が進んできたわけで すが、中間所得者に対して必ずしも十分なものになっていないということで、その中間 所得者に対する年金水準の問題が一つの焦点になっていたこととともに、これまでの改 革も反映しているのであろうと思いますが、経済成長に取り残された所得の低い者に対 する給付の水準の問題があわせて問題になってきたということで、これらに対応する改 革が望まれてきたということがございます。  具体的には(1)に書いてございますように、中間層に対して企業年金、個人年金が非 常に利用しづらいということがあり、また、保守党政権時代の政策も反映して、非常に 低所得者の割合が増えてきたことがあったわけであります。  次のページに移っていただきまして、保守党政権下の改革の内容を簡単に触れた上で 直近の改革を説明したいと思います。1980年の改革でスライド方式を従来の賃金スライ ドから物価スライドに変更しておりますし、88年に実施された改正では、2階部分を担 当する所得比例年金の給付率を25%から20%に引き下げるといった改正を2000年から行 うということがこのときに盛り込まれております。また、あわせて2階部分の所得比例 年金が適用除外される企業年金等の対象を拡大するという改正も行われております。  そうしたことを経て、1999年の改革では、従来から指摘をされていた私的年金の不十 分さ、具体的には中間所得者に対する年金制度の充実を図るということで、従来からの 企業年金や個人年金に加えて、新しい選択肢としてステークホルダー年金と呼ばれる個 人拠出、確定拠出年金の制度化を行っております。この中身は22ページの(ロ)にござ いますように、手数料に上限を設けることを通じて保険料水準を抑えるということで、 中間所得者にとって加入しやすいものにし、これに加入することによって国家所得比例 年金の適用除外になるということでございます。さらに、事業主の義務としては、給与 の天引き、情報提供といった協力を行わなければならないこととされておりますが、保 険料の負担は義務としては設けられておりません。任意拠出は可能でございます。  さらに、このときの改革では、男女の公平化を図ることで離婚時の年金分割の導入や 遺族年金を男性にも支給できるような改正も行っております。  さらに2000年の改革では、先ほど申し上げた低所得者に対する対策として、従来の国 家所得比例年金を低所得者に有利な国家第二年金として衣替えするという改正を行って おります。具体的には22ページのところからありますように、年金の計算式を従来所得 の2割であったものを定額給付として大幅に引き上げる。23ページの図をご覧いただく とイメージがつかめるかと思いますが、所得の低い者に対する年金額を大幅に引き上げ るという改正を行っております。  イギリスの改革は、先ほど申し上げましたように、2階の所得比例年金の導入が遅か ったということと、早くから給付の抑制措置が行われていたことがあって、2階部分の 企業年金や個人年金の普及が進んだというように理解をしております。企業年金、個人 年金が十分であることが、公的年金の部分の担当している割合が少なくなっていること では必ずしもないと理解しておりますが、所得が高い層はともかく、中間層に対して現 在2階の企業年金と1階の基礎年金とを合わせて果たして十分な水準が確保できている のかどうか、あるいは今後も十分な機能が果たせるのかという点についてはやや疑問を 感じるところはあります。  以上、非常に駆け足で恐縮でございますが、アメリカ、ドイツ、スウェーデン、イギ リスの年金改革の動向についてご説明をさせていただきました。 ○ 神代部会長代理  どうもありがとうございました。これまでのご説明につきまして、ご質問やご意見が ありましたらどうぞ。 ○ 向山委員  数字の確認をしたいのですけれども、ただいまの諸外国の年金改革の2ページのとこ ろに、スウェーデンの保険料率17.21%という数字があるのですが、その中で、この資 料の15ページのスウェーデンのところに、19.86%の負担率と書いてあるのですが、こ れとの関係はどういう関係になっておるのでしょうか。 ○ 池永国際年金企画室長  15ページの19.86%という保険料水準は、1997年の水準でございます。今回の制度改 正が行われる直前の数字ということで、1997年の数字を15ページでは使ってございます 。2ページの数字は一番直近の2001年の数字として掲載をしてございます。 ○ 向山委員  わかりました。 ○ 岡本委員  ご丁寧なご説明ありがとうございました。よく理解できました。今日は財政方式、財 源ということが論点だということだから、給付水準、給付の在り方等については余り申 し上げると混乱いたしますので、財源のところについて考えるところで意見を少し申し 上げたいと思います。  私は、今日ご説明がありましたように、これからの公的年金の財政方式が賦課方式を 基本にすること自体は否定するものではありませんし、そういう方向で議論するのはよ ろしいかと思っておりますが、これまでの日本の過去の30年、40年は、まさに日本が最 も輝いた時でありますから、そういう社会情勢なり、人口動態等を考えて、私は賦課方 式を今後とも全く無原則的に是認することについてはいささか疑問を持っておるわけで あります。  どういうことかと言いますと、人口動態を考えて、かつまた日本の高齢化と言います か、平均寿命が延びていくことを考えますと、財政的に逼迫して来るわけでありますが 、それを賦課方式という名の下に、現役世代に過度な負担をかけるようなことは私は避 けるべきであると考えております。社会の活力というか、社会の活性化は、その時代そ の時代の現役の世代の活力なり、若い世代の活力が非常に大事であって、年金の受給者 の水準がどうというよりも、これからの日本を考えれば、そういう若い世代なり現役世 代の活力というか、そういうものを私は大いに議論し、また尊重する中で賦課方式を考 えるべきではなかろうか、こう思っています。  そういう視点に立ちますと、私は賦課方式については、現役の世代なり若い世代が負 担の水準について理解ができる、納得ができるということが大原則でありまして、財政 のバランスからどんどんと負担が上がっていくことがあって良いとは決して思われない わけでありますから、そういう意味で、私は賦課方式の中における現役世代なり若い方 々の負担の限界というものは大いに議論して、そういう方々の活力を損なわないように 、そういう方々が理解できるようにしていくべきだと思いますし、若い方々の生活を、 犠牲という言葉は私はよくないと思いますが、かなり抑制してまで負担を強いるという ことは避けるべきでなかろうか、こんなふうに思っております。  そういう意味で、長期的には今後これ以上の負担はないのだ、これがシーリング(天 井)だというような展望は今回の改正の中では出していかないといけないのではなかろ うか。それと同時に、将来の給付の展望を若い人が持てるということが大事ではなかろ うか、こんなふうに思っておりまして、言ってみれば、無原則的に賦課方式で負担がど うなっても良いというような議論には私は注意していきたい、こんなふうに思っており ます。 ○ 大山委員  年金の問題についてどう考えたら良いかということで資料をかなり出していただいて おりますが、長期の問題になっておりますので、場合によると、今の若い世代の人たち の給付の安定をどうするかということを考えながら、まだ生まれていない、これから生 まれてくる人たちの負担を考えることも必要なのではないか。その場合に、今、年金の 問題に関しては、将来の不安などもよく言われていますので、今の若い人たちに将来の 不安を解消するという意味では給付を安定させるという問題については、当然財源問題 が残ると思いますが、給付を安定をさせることを基本に置いた、いろいろな議論をお願 いしたいと思います。  その上で、今日財源問題があるわけですが、基本的な考え方としまして、今、年金制 度の基礎年金、報酬比例部分の関係につきまして、それぞれ微調整はあるかもしれませ んけれども、大枠を変えないということは基本的には安定という問題で、出生率のこと がこの前言われまして、一般的にはああいうデータが出れば、ますます将来の不安をあ おるようなデータとして示される可能性もありますので、そういう点では現行の、そう いう基礎年金あるいは報酬比例部分を大枠は変えないということで意見を申し上げたい と思いますが、一つ、基礎年金については税方式に移行すべきであるという考えです。 報酬比例部分については賦課方式を原則としていくという考えで良いだろうと思います 。  その上で、今日示された中での論点がありますので、その論点についてご意見を申し 上げたいと思います。まず、6ページの「税方式に係る論点として考えられる点は、以 下の通り」ということの一番最初の部分であります。この中で「自助と自律の精神に立 脚する我が国の経済社会全体の在り方と整合的かどうか」という問題が指摘をされてお ります。この中で、現役時代の努力の有無に関わらず、一定の年金が支給されるという 仕組みが指摘をされているわけですが、サラリーマンといいますか働く者が失業問題を どう考えるのですかという問題があると思うのです。失業している労働者は別に好き好 んで私は失業しているわけではないと思います。私の職場も組合の関係でも倒産をして いる企業が1週間に1件ずつありますけれども、そういう中で職場を離れざるを得ない という人たちは何も望んでそういう状況になっているわけではありません。  今、職場の中で強く出てきておりますのは、これは年金の問題ですから将来の問題で ありますが、今払っている教育ローンをどうするか、あるいは失業してからの社会保険 料をどうしてくれるのか、地方税をどうしてくれるのか、住宅ローンをどうしてくれる のだという声が強いんです。もちろん長期的な相談でありますから、そういう短期的な 問題については別の場所でやりますけれども、基本的に失業率が5%から6%というよ うな状況が想定されるています。日本は完全雇用政策をとるという前提で完全失業率は 1%を目指していくということが昔はあったんです。そういう経済政策、財政政策、国 を挙げてそういう対策をとるならば、一人一人の働く者が実際に保険料を払えないとい う状況になった時との関係を見た場合にこれは論点になるのかどうか。失業者が多いと いう問題について、経済全体との在り方を考える場合にはそこを一つ論点として入れて いただきたい。そういう立場からも、私は基礎年金部分については、税方式に全面的に 移行すべきであるという考えを持ちます。それは今働く者の立場から言いまして、将来 の不安もあるのですが、雇用の不安という問題がありまして、日々の所得の問題もあり ますが、社会的な制度である社会保険料等を含めて、地方税、税金等について本当に支 払われるかどうかという問題を抱えているわけでありますから、そういう問題から言っ て、税方式に移行すべきであるという考えを持っておりますし、その辺の失業という問 題についての論点を是非入れていただきたい。  それから、7ページの貯蓄をするという関係なのですが、中間所得階層ももちろん年 金ですから長いスパンで考えますから、もし、こういうふうにした場合にみんな貯金す るようになるのですというだけのゆとりがあるという見通しを持っているならば良いと 思いますけれども、私のところも組織の関係で言いますと、平均年齢で39歳であります が、標準報酬月額32万円、所定内賃金で言いますと30万ちょっとですから、31万いって いません。今、時間外労働は減っておりますし、一時金も削られておりますので、標準 報酬月額が32万円を維持できるかどうか、何とも言えませんけれども、そういう状況の 中で、先ほど言いましたように、教育ローンや住宅ローンが大変だ、と失業した組合員 ではなく、現に働いている労働者が言っています。一時金が今まで4カ月か5カ月保障 されていたものが、将来見通し的に保障されないというような状況が生まれたりしてい る中で、そういう問題をどうするかということなのですが、ここで言っている中間所得 階層というのは、標準報酬月額で出されています32万円との関係で言った場合に、32万 円の人たちを対象にしているのかどうか、これは質問です。  同時に、今の状況から言った場合には、基礎年金部分について税方式にするといった 場合には、かなりの人たちが貯蓄に回るという方向になるのかどうかということについ ても、もっと深めた議論をお願いしたいと思います。以上です。 ○ 岡本委員  私がマイクを独占して失礼しますが、今、大山委員のおっしゃいました失業が論点に なるのではないかということについて、これはいろいろな意見があるのではないかと思 いますが、私は将来の日本は、労働人口が年々何十万、という単位で減っていくという ような社会が予想をされているわけであって、かつ、また経済財政諮問会議でおっしゃ っているように、将来2%、3%の潜在成長力があって、それを顕在化するとこうなり ますと。一方で、40万人、50万人、年々労働人口が減っていって、2%、3%成長させ ていくとすれば、私は日本の場合は短期的には今は失業の問題は私は重要な問題である ことは否定しませんし、これは大事な問題なのですが、年金の議論をするときの、10年 、20年、30年先の超長期の議論をするときに、私は余り失業というものが論点というこ とになるのかどうかについて、いささか疑問は持っておるわけであって、それよりも終 身雇用がなくなっていって、労働のモビリティーが高まるとか、あるいは就業の多様化 によって働きの形が変わるとか、日本の人が外国へ行って、また帰ってくるとか、そう いうようなモビリティーが高まっていく中で年金制度を実務的にどうしていくかという ようなことが論点になっても、失業率そのものについては、私は論点としてどうかとい う気は個人的にはしております。 ○ 神代部会長代理  今のお答えありますか。 ○ 榮畑年金課長  32万円という方が中間所得階層になるのかということでございますが、今の厚生年金 の被保険者の方の平均標準報酬月額が大体そのあたりでございます。数字だけで申しま すと、平均の辺りでおられるような方ではないかと思ってございます。  それと関連いたすのですが、社会保険方式、税方式いずれにいたしましても、先ほど ご説明させていただきましたように、何らかの形で15兆円とか23兆円といった巨額の費 用の負担をしていくことを前提といたしましたときに、仮に標準報酬月額32万円の方が 失業して収入がなくなったといった時に、仮に急増する費用の財源を消費税で賄うとし たら、それは失業した方までお払いになることになるわけでございます。したがいまし て、社会保険方式だから払って税を払わないということではなくて、むしろ失業した方 に対する現実の負担、所得がなくなったとしたら軽減できるかどうかとか、そういう話 なのだろかうかと今のお話を聞いていて考えさせていただいたところでございます。 ○ 矢野委員  今、年金部会で我々が論議しようとしていることは何であるかという基本に返ってみ ますと、今の年金制度が、将来的に長期的に持続性のある制度として維持できるか、維 持するにはどういう方法が良いのか、財源は何なのだろう、ということを論議しようと しているのだと思います。そうしますと、今から新しい年金制度を作ろうという、グリ ーンフィールドに工場を建てるという話ではなくて、既にある今の制度が、今後どうし ていったら良いかということであると思います。そうしますと、今の賦課方式でこのま ま行ったら、負担を上げて給付を下げる、そういう作業の繰り返しになっていくのでは ないか。その背景事情として、経済成長は今マイナスですが、せいぜい上がっても1% か2%とかということでありますし、少子高齢化は大変なスピードで進んでいく状況を 考えてみますと、今の方式では早晩限界に達する。既に限界に達していると言っても良 いわけであります。  ですから今後どうするかということについては今後の議論でありますが、私は基礎部 分については税方式、特に目的間接税という考え方についてしっかり議論する必要があ ると思うわけでございます。それによって年金に対する信頼が回復されるし、国民の理 解も得られるものであると思うわけです。  資料は大変よくまとまった良い資料だと思いますけれども、例えば資料2−1に、財 政方式と財源についての見解が述べられておりますが、税方式というもののメリットが ほんの少し書かれていて、そうではないのではないかという議論が大部分の資料なので ありますが、しっかりとその得失を双方比較して論議をすることがこの年金部会にとっ てまず第一にやるべきことではないだろうか、財政方式を考える場合にそれが大事なこ となのではないかと思うわけでございます。  2階の報酬比例部分については、これも積立方式が良いのではないかという考えを私 は持っておるわけですが、これについても現行のやり方との対比の中でしっかり議論を して、十分な比較考量に基づいた議論が必要であると思っておりますので、その点につ いて申し上げておきます。 ○ 向山委員  公的年金が果たす役割のことについて少し触れたいと思います。公的年金制度は医療 保険や介護保険、こういったものと並んで、21世紀の日本が目指す福祉社会というもの の基礎をなす社会保障制度の重要な構成部分であると認識しておりますが、昨今少子高 齢化が進む中で、基本的にはこれからは全体として負担は避けられない、こういうこと でありますが、しかしながら、こういった中で公的年金が果たす役割は、国民に安心の 給付をきちんと保障するということが一番大事ではなかろうかと思っておるところでご ざいまして、今はそういった中で国の財政も厳しい、少子高齢化が進んでいるというこ とで、とにかく負担を上げ、給付を引き下げる、こういう不安の給付に陥っているとい うところで、国民や特に若い人たち、さらには自営業者等についても、国民年金に対す る不安が非常に強まっている、こういう実態であろうと思っています。  その中で、資料の1ページに書いてある囲みの中に、「公的年金制度は、国民のセー フィティーネットの中心として」云々とこう書いてありますが、セーフティーネットの 意味するところを再確認をしたいと思っておりますが、このセーフティーネットの意味 するところは一体何なのか。この辺を聞かせていただきたい。 ○ 榮畑年金課長  すいません、ご質問のご趣旨がよくわからないのでございますが、セーフティーネッ ト、まさに国民の生活の支え、所得がなくなるとか、障害になるとか、生活の中で困っ たような事態が生じたようなとき、従来の暮らしが維持できなくなったときに、それを どこかで支えていくというような意味でのセーフティーネットの役割を果たす社会保障 制度でございますが、その中でも公的年金制度はそういう点では収入がなくなった、所 得が下がった、そういったときのセーフティーネットの中心として位置づけられている 、そういう役割があるという理解をしております。 ○ 辻年金局長  非常に基本に触れることですので、私からも発言をお許しいただきたい思います。恐 らく税方式の問題、そういうことにも絡んでの問題提起ではないかと思うのですが、公 的年金制度がセーフティーネットとして果たす役割につきましては、もともと国民年金 制度ができるときに大きな議論が行われましたが、どの国にも公的扶助、生活保護制度 があるわけです。ですから最低生活水準を割れば、生活保護制度が憲法におきましても 保障されている。そういう中でむしろ生活保護制度があるわけですけれども、そこに落 ちたときに救う、よく救貧と言われましたけれども、現役時代に一生懸命働いてきて、 老後生活保護と、これは段差が激しいということで、防貧と言うのでしょうか、落ちる ことを防ぐというのが公的年金制度の役割だと、私ども歴史的にそのような経過で年金 制度ができてきたと理解しております。  したがいまして、基本的には現役時代に所得を上げていたところが、例えば高齢にな ったことによって現役時代にあった稼得能力が落ち込むわけですが、その場合でも、現 役世代の所得から著しく落ち込むことを防ぐことが年金制度の本質だと理解して運用に 携わってまいりました。  したがいまして、基本的には現役時代に納めた保険料、これは現役時代に努力した生 活水準に対応すると思いますが、保険料に連動して年金額の水準は決まってくるという 意味を持っておるということから、国際的にも現役時代の保険料納付に連動した給付水 準の年金制度が一様に作られていると理解いたしております。  そのように言いますと、セーフティーネットというのは、救貧ではなくて防貧として の機能、つまり生活保護になるべく落ちないようにする機能、現役時代から著しく落ち 込まないために現役時代の所得のなにがしかに対応したものを補てんする、このような ことをセーフティーネットと私ども理解をいたしております。 ○ 大澤委員  全体に関することと個別的なこととございます。まず全体に関することなのですけれ ども、これはこの部会での議論の進め方とも関連いたします。簡単に言いますと、私は この際、体の寸法を取り直して型紙から作り直す必要がありはしないかと思っておりま す。90年代の改革を振り返ってみると、給付を切り下げ負担を引き上げるということを 通じて信頼を損なってきたと思います。このやり方は、寸法は採っていたのだけれども 、やったことはリフォームだけで、ウエストがきつくなったから出すとか、袖を直すと かそういうことをやってきた。しかし、どうやら、その服を着ていても、将来は寒くて 凍え死ぬかもしれないというような不安感が高まってきたという問題があると思います 。この際、型紙から取り直して制度を考える必要がありはしないかと思うのですけれど も、その際に、今まで多くの方のご発言にもありましたように、現役の世代、もっとは っきり言うと、20代や10代の後半の若い世代の意見を聞くことが非常に重要ではないか と思います。  今回この部会の委員にというお話をいただいたときに、私はまず若い方を委員にする という計画はないのですか、と質問をしました。そして小論文か何かで公募をして、若 い方に委員になっていただいたらどうかと申し上げたのですが、それは残念ながら実現 はされませんでした。今後部会の議論を進めていく中で、これも小論文で公募などして 、20代や、場合によったら10代の後半ぐらいの方に来ていただいて、その方々の年金に 対する考え方や意見を聞くいう場面があっても良いのではないかと思います。これは進 め方についての要望です。  あと、個別のことが二つほどございます。ひとつは、遺族とは何かということでござ います。資料2−1の1ページに、(5)としまして、「誰にとっても老後を迎える前に 、現役世代に障害を負ったり、また死亡して遺族を残す可能性があり、こうした場合の 生活保障についても対応できる仕組みであることが必要」とございますけれども、この 場合の遺族というのは、言うまでもなく常識的な意味での遺族ではなく、社会保険の制 度上、もっと言えば、年金制度上の遺族でございますから、これは常識的な遺族ではな いということをまず注意しなければいけない。  その場合には、全く天涯孤独でなければ、誰にでも遺族がいるでしょうということと は違う意味を持っているわけです。そのような年金制度上の遺族を残す可能性というの は、これはかなり個人が選んだ、世帯、夫婦として選んだライフスタイルに依存してお ります。障害を負うことの自己責任と年金の上での遺族を残す上での自己責任というの は区別されるべきではないかと思いますので、この点注意が必要ではなかろうかという ことでございます。  個別の二番目の点は、これは諸外国の制度を簡潔に整理、紹介していただきまして大 変ありがたかったわけですが、個人的にはスウェーデン型というのが合理的ではないか と思っております。あわせてイギリスにおける年金改革について、これは資料4の20ペ ージ目でございますけれども、サッチャー改革の後近年の問題は、中所得者にとって私 的年金が加入しやすくないということと、低所得者の年金水準が非常に貧しい惨めなも のになってしまったということがございます。この低所得者というのはかなりの程度女 性ということとオーバーラップしているというのを申し上げたいわけです。  ご承知の方も多いように、サッチャーの年金改革は85年ぐらいから大々的に宣伝され ましたので、既に86年くらいから公的年金の加入者の減少が始まりまして、86年から90 年までの間に公的年金の加入者は1,200万人から750万人まで減少したわけでございます 。この間、450 万人が適用除外になった、そういうことをサッチャー政権は大々的に推 奨したわけです。ところで、この同じ期間に、認可個人年金の加入者は400 万人増えま したけれども、その75%は男性だったのですね。ということは、非常に惨めになったSER PS、国家所得比例年金に取り残された人々はブルーカラー労働者と女性であったという ことで、この低所得者というのは非常に大きく女性とオーバーラップするということを 強調したいと思います。以上でございます。 ○ 福井総務課長  大澤委員の第一点目、若い世代の人たちの意見を聞くべきであるというご要望でござ います。私どももそういう認識は持っております。ただ、やり方とかタイミングとか、 いろいろございますので、これは検討させていただきたいと思います。また、部会長、 部会長代理とも相談をさせていただきたいと思っております。 ○ 若杉委員  少し基本的なことになり過ぎるかもしれないのですが、議論を整理する意味で意見を 述べさせていただきたいのですけれども、今、少子高齢化というようなことで、若い人 の負担が問題になっていますし、また経済が悪いために失業が問題になって、そういう ことからも今財源問題についてご意見が出されているわけですが、いろいろな観点から の意見が錯綜しているようですので少し整理させていただきたいと思うわけです。  まず、年金の財源ということですが、本質は何かというふうに考えてみますと、私、 よく申し上げるのですけれども、年金というのは大体20歳から60歳、65歳まで約40年間 働いて、あとの20年間は遊んで暮らそうという、遊んで暮らすというと表現が悪いかも しれないのですけれども、そういう精神ですね。ですから40年間働いて、60年分食べら れるだけの所得がなければ年金というのは不可能なわけです。ということは、別の言い 方すれば、それだけ労働生産性の高い経済でなければ年金はできないということになる わけです。  また、同時に積立方式の場合には、将来のために積み立てていって、それを資本とし て運用して、つまり企業活動に用いて、その収益でもって増やしているわけです。です から資本の生産性も高くないと年金は豊かなものができないわけです。つまり、経済が 労働生産性も高くて、資本の生産性も高い、豊かな経済でなければ、年金だけではなく て社会保障そのものがもたない、そういう本質だと思うのです。ですから高い生産性が 年金の財源だということです。  そういうことで言いますと、日本の経済が80年代までは勢いがあったわけですけれど も、90年代から急速に失速して生産性が下がっているわけです。社会保障の大前提であ る豊かな経済という前提が失われているというのが今の日本の社会保障制度の大問題な わけです。そういう問題と、今度はもう一方で、年金をやるときに、財政方式として賦 課方式と積立方式があるわけですが、年金は現役の世代の40年間の所得の一部を老後の2 0年間に移転するという、そういう意味で言いますと、所得の再分配になるわけですが 、その所得の再分配のやり方として、積立方式ですと、自分の若いときに働いた分を積 み立てておいて老後に使うということで、自分の分は自分でと、あるいは自分の世代の 分は自分の世代のものという、そういう考え方なわけですけれども、それに対して賦課 方式ですと、同じ時代の人たちの間で現役世代から老齢世代に移転しようとそういう考 え方です。  賦課方式ですと、人口構成に大いに負担が依存するわけです。したがって、日本のよ うに、人口のピラミッドが特殊な形をしているところでは、人口構成がどんどん変わっ ていきますから、世代間の負担の格差ということが起こってきて、それが不公平という 形で言われているということになるわけです。そういうことで、少子高齢化の問題はま さに賦課方式に絡む問題であって、人口構成の変化が起こる問題なわけです。  同時に積立方式は、積み立てていって増やしていくわけですから、その運用がきちん としたリターンが上がらなければいけないわけで、あるいは計画したとおりのリターン が上がらなければ、思ったような年金にならないということになるわけですが、日本の 公的年金に限らず企業年金も個人年金も積立方式の部分があるわけですが、その部分は むしろ、金融システムが機能しないとか、株式市場が非常に悪いということで、積み立 てたお金が破壊されているということが大きな問題があるわけです。  そういうことで、少子高齢化という賦課方式に伴う問題、そもそもその前提となる労 働の生産性とか資本の生産性が高い経済でなければ、年金ができないという前提が失わ れている、そういうような問題が絡んでいるわけです。ですから、その辺をきちんと区 別して議論しないとなかなか決着がつかないと思います。  ついでに申し上げさせていただきますと、年金というのは現役の世代の所得を賦課方 式なり積立方式で老後に移転するということですけれども、そのときに、賦課方式の場 合には、同じ時代で分け合うわけですから、インフレは影響がないということになるわ けですが、積立の場合には、そういう点でいいますと、途中でインフレが起こったりす れば、積立方式がだめになる。収益性が大きく予想よりは変化する、そういう大きな問 題があるわけです。  ただ、もう一方で、公的年金の場合には、ただ単に現役世代から老後に移転するとい うだけではなくて、病気やけがで働けない人とか、所得のない人にも年金を払うという ことで、そういう意味で言いますと、本人の間の世代間の移転だけではなくて、高所得 者層から低所得者層、健康な人から働けない人への所得の移転、そういう面があるわけ でして、その部分は、ここで言うような時間的な所得の再分配と考えて良いのか、それ とも貧しい人を救うという意味の所得の再分配、二つの面があると思うのですね。ただ 単に、世代間の所得の再分配であれば、社会保険料方式が良いと思うわけですけれども 、もし豊かな人から貧しい人に移転する部分、そういう部分が混ざってくると税方式は 合理的かもしれないと思います。  繰り返しになって恐縮ですけれども、財源自体は経済社会の中で生まれる豊かな労働 所得と資本所得になるわけでして、それが確保されない限りは、今まで考えていたよう な社会保障・年金はできないということですね。ですから、こういう社会保障制度・年 金制度を始めた政府の責任としては、きちんとした生産性の高い社会を維持することが 大事で、あるいはそれを回復することが大事で、年金制度を預かる担当部門としても、 政府の一員ですけれども、そういうことをきちんともっと主張しなければいけない。あ るいはそれができないのであれば、年金は貧しくなるのはしようがない。今までは60歳 まで働けば良かったのが65歳に延び、また70歳に延びるというのはしようがないという ことをきちんと説明しなければいけないということだと思います。ですから少しこれか らの議論で、いろんな問題が錯綜しているので、少し整理してご議論いただけないかと 思います。  長くなって申し訳ありませんでした。 ○ 堀委員  今日の議論は財政方式の問題と、社会保険方式か税方式かという問題ですけれども、 負担の問題がかなりご意見として出ました。高齢化が進めば、高齢者が増え、かつ若い 世代が減っていく。高齢者は一応生産の場から引退しているわけで、負担が増えていく ということは、ある意味では当然なことです。今の賦課方式の年金というのは、基本的 には若い世代の保険料で、高齢者の年金を賄うということですが、そうすると基本的な 考え方としては、そういう引退世代ができるだけ生産世代に回っていただく、あるいは 現在生産してない人も生産、要するに支え手に回ることが重要ではないかと私は思って います。そういう意味で、支給開始年齢の問題、女性の就労の問題、そういった点が大 きな問題になるのではないかと思います。  賦課方式と積立方式で負担がどうかということなのですが、積立方式にすると負担が 減るという議論もあった。しかし、少なくとも当面は積立方式にすると、先ほどの二重 の負担のために負担は増える。負担について、若い世代の負担が賦課方式の場合は大き くなる、こういう議論もあるのですが、ILOとかISSAなどでは別の議論もしてい るわけですね。賦課方式というのは、確かに現役世代が税金とか社会保険料という形で 直接に負担するのですが、むしろ積立方式も同じような負担をするのではないか。消費 財で見ると、両方式とも老齢世代が増えれば、その分は若い世代の消費に回る分は相対 的には減る。積立方式は基本的には相続とかなんとかで、若い世代に回るはずであった 遺産を積立金として積み立てる。しかも、積立方式の場合は、年金給付総額の7割、8 割は運用収入です。その分は若い世代が生産したものが、要するに賃金への負担として ではなく、利子とか配当という形で、高齢世代に回っていく。そういう意味から、賦課 方式であれ、積立方式であれ、若い世代の負担はそんなに変わらない、こういう議論が あるわけなので、その辺も考えていく必要があるのではないか。  社会保険方式と税方式の問題ですが、私は繰り返して言っているのですが、これは財 源だけの問題ではないです。現に基礎年金に対しては3分の1の国庫負担があっても社 会保険方式と言っているわけです。我々社会保障の歴史を研究している者は、これを社 会保険方式と社会扶助方式と言っているわけです。基本的に社会保障というのはどうい う形で生まれたかというと、一つは貧困者を救済するという形で、イギリスを始め世界 各国で救貧法というのを作った。救貧法というのは厳しいミーンズテストが必要なので 、受けられる人も実際には受けない、そういう貧困救済がうまく機能しなかった。そこ で考え出されたのが社会保険方式ということで、これはご承知のように、1880年代にビ スマルクが作った。  これはある意味では私的保険のアナロジーで、保険料を出せば、その見返りとして権 利として給付を得る、というメリットがあるので、これまで世界的に普及していった。 そういう意味で、社会扶助方式の欠点を克服するものとして社会保険方式が普及した。 世界のどの国でも社会保険方式が採られている理由だと思います。  負担を減らすために税方式にするという意見がありましたが、給付の総額を減らさな い限り、財源が税であっても保険料であっても国民の負担は変わらない。ただ、税か保 険料か、あるいはどの税にするかによって国民の負担の形、個々人の負担の額は変わっ てくるわけです。税方式にすれば、天から財源が降ってくるということはない。  現在の国家の財政を見ると80兆円の歳出をしているわけですが、税収は50兆円しかな い。その差を30兆円の国債で賄っているわけです。要するにそういう国家財政が危機的 状況にある。しかも増税はできない。税方式にするとどういうことになるかというと、 さらに国債を発行して賄うことにならざるを得ない。増税ができれば良いわけですけれ ども、できないとすれば、現在30兆円、毎年毎年国民から借りているお金に加えてさら に借金をする、そういう状況になるのではないか。  社会保険は基本的には収支相等、給付と負担が見合うという形でやっているわけです 。その赤字が出る場合には給付を下げるか、負担を上げざるを得ない。極めて財政規律 が保てるシステムではないか。その他、今日説明があったように、社会保険方式の方が 数々のメリットを持つので、税方式に変えていくのは非常に私は問題があると思ってお ります。 ○ 翁委員  先ほど豊かな経済が年金の大前提だという話がありましたけど、私も全くそのとおり だと思います。ただ、年金の財政方式自体も、例えば労働インセンティブとかそういっ たものを通じて経済の活性化に影響がございますので、そういった豊かな経済を目指す 上でどういった財政方式が望ましいのかという観点も非常に重要なのではないかと思い ます。  もう一つ、賦課方式と積立方式の議論の中で、余り触れられていなかった部分ですけ れども、確かに私も皆さんおっしゃったように、賦課方式は、官の役割というか公的年 金の基礎は賦課方式であり、それは所得再分配政策であるからこそ賦課方式が大前提に なると思います。  積立方式を考えていく上では、さっきのアメリカの議論の紹介にもありましたけれど も、どういった主体がそれを運営していくのかということと切り離せる問題ではないと 思っております。基本的に積立方式で資金運用をやっていこうとした場合にはどうして も株式運用でどんどん運用していかなければいけないわけでございますので、そういっ たことを考えると、積立方式を拡大しながら公的な部分をやり続けて良いのかという問 題があると思います。それはいろいろな問題を引き起こしかねないので、賦課方式か積 立方式かということを考える際には、積立方式について検討するのであれば、かなり官 民の役割分担ということを相当念頭に置いて、制度設計を少し公的年金以外の部分にも 広げて、例えばアメリカであったような一部積立拠出の個人勘定の導入とか、そういっ たものについても検討していく必要があるのではないかと思っております。 ○ 渡辺委員  まず私申し上げたいのは、これまでの年金改革で、特に当時の厚生省が採っていた方 策というか考え方は、負担面からの制約みたいな感じで、原則5年に一度の財政再計算 を行ってきた。私自身は、これが今の年金制度に対する信頼を損ねてきた一つの原因で はないかと思っております。つまり負担面は確かに大事だし、若い世代、特に現状のよ うな賦課方式で過剰な負担になることは良くないということはわかるのだけれども、今 国民が一番公的年金に対して関心持っておるのは、一体いくらもらえるのだと、極端に はこれに尽きると言っても良いわけでありまして、もちろん若い世代と中高年世代の発 想は違うところがありますが、そうなりますと現在の厚生年金を例にとっても、いくら もらえるかほとんどの国民はわからない。  これは別に負担面からだけ強調していたこともあるかもしれないし、現実の特に計算 方式のことだと言いましょうか、特に賃金の再評価等々もあって非常に公平な仕組みだ けれども、わかりにくいということがあります。まず年金制度に対する信頼を確立する ためには、一体いくらもらえるのか、あるいはこれを保障するのだといった給付面から もアプローチと言いましょうか、そういったことを国民に約束する。それからもちろん 負担は大事ですから負担も考えていく、そういった方式を採る方が私は望ましいのでは ないかと思います。まず給付面、そういったことが信頼を勝ち得ることにつながってい くのではないか。  先ほど来議論されていますとおり、賦課方式か積立方式かは重要な論点でありますし 、積立方式は確かに自分の年金ということでわかりやすいという問題はある、つまり年 金に対する信頼が勝ち得やすいというメリットはあると思いますが、現実論から言いま すと、これは先ほど来出ていますような二重の負担の問題、こういったこともあります ので、現実的にこれは不可能だと思わざるを得ません。これを導入するとなりますと大 きな混乱を引き起こし、かえって信頼を損ねることになりかねないと私は思っておりま す。そこのところの説明をもう少しやらないと、今、賦課方式になったといっても、現 実問題としては、昭和48年の例の大改正のときには修正積立方式と言っていたのが、い つの間にか賦課方式になってしまったという現実があります。  つまりもっとはっきり言うと、給付はより高く、負担はより低くというのが昭和50年 代まで続けてこられた。その結果として、いやが応にも現行の賦課方式になってしまっ たという現実があるわけで、その結果として600兆円の債務を抱える。ですから積立方 式に移行すれば、積立金160兆円、国庫負担を放り込んでもまだ330兆円の残務債権と言 いましょうか、債務が残るといった格好になっているわけですから、過去の年金財政、 年金行政の、国会も責任がありますが、そういったツケが今回ってきてしまっているわ けですから、現実問題として言えば、積立方式に移行することは極めて難しくなってし まったと私は考えております。  それから、あとは税方式か保険方式かという問題がありますが、これについても、非 常にこれまで数年間こういった議論が行われてまいりましたけれども、私自身の個人的 な意見を言うと、いまだにどちらが良いのかよくわからない、委員として無責任かもし れませんが、正直な気持ちを言えばそういうことでありまして、理屈面と現実面がある と思わざるを得ない。ですから前回の財政再計算時の年金改正のときの国会の決議にお いても、2004年まで2分の1というのがありますが、2分の1と今の3分の1国庫負担 、税方式、全面的な社会保険方式、どういうメリットがあってどういうデメリットがあ るか、私自身いまだによくわからないと思わざるを得ません。これは先ほど若杉委員も おっしゃったような要因、つまり世代間だけの所得移転なのか、あるいは生涯の所得・ 収入といったもの、ああいったものについての考え方も当然あって良いと思いますし、 まだまだこれについては、現実面及び理屈面でのメリット・デメリットがよくわからな い部分が私自身あります。  そういった意味から言いますと、どちらの意見を聞いても、なるほどと思うところが なかなかない。やや委員として無責任な言い方かもしれません。もう少しこれにつきま しては、いろいろなデータも含めて、メリット・デメリットを含めて出していただきた いと思っています。とりあえず以上です。 ○ 神代部会長代理  事務局、何かありますか。 ○ 榮畑年金課長  ただいま何人かの方から、特に税方式、社会保険方式に関しましてメリット・デメリ ットをもう少し整理をというお話をちょうだいいたしました。もう少し工夫もさせてい ただかなければならないかもしれませんけれども、私どもの気持ちといたしまして、今 回の資料の2−1の中でもある程度議論の材料を書かせていただいたつもりでございま すから、できれば、例えばこの辺が足りないといった具体的なご指摘などをいただける と作業がしやすいかという気がいたします。 ○ 山崎委員  具体的な指摘をということで少し意見を述べさせていただきます。積立か賦課という ことはかなり抽象的な議論になりやすいのですが、もう少し現実的な議論をした方が良 いのではないかと思います。基礎年金は別にして、2階部分の財政方式の在り方が論点 だと思うのですが、現実には恐らく平成13年度の厚生年金の収支では既に積立金を取り 崩しているはずだと思います。  というのは、先日いただきました予算では黒字ということになっていますが、最近の 実績からすると予算をかなり保険料収入が下回っておりますから、その動向から推察す ると、恐らく既に積立金を取り崩しつつあるということです。このことをどう考えるか ということだと思うのですね。明らかに将来の過大な後世代の負担を緩和したいという ことで積立金を持っているのですが、その将来に備えるはずの積立金に今手をつける状 態になっているということなんです。まずその事実を直視しなければいけないというこ とです。それが一点。  それから、賦課方式を基本としつつ、一定の積立金を保有するという考え方で今の財 政方式は説明されているのですが、別の説明の仕方があるのではないかと思います。そ れは賦課方式とともに積立方式の要素も含んだ財政方式であるということです。それは 今厚生年金基金があります。代行部分というのがあります。その代行部分につきまして は、物価スライド、賃金の再評価を除いた部分については完全な積立を求めているわけ です。ということは、本体の中にもそういう部分が現在あると考えて良いと思います。 つまり、今代行返上という話がありますが、その場合には移管金を求めますが、それ相 当な部分は本体でも持っていないと要求できないものではないかと思うからでございま す。  ということになると、どちらにどの程度傾斜しているかは別にして、賦課方式と積立 方式をミックスしたシステムになっているという説明の方が合意が得やすいのではない かと思います。そして、そのことは、この説明では賦課方式のメリットが非常に強調さ れていますが、その一方ではっきりしていることは人口変動に弱いというウイークポイ ントがあるわけでして、積立方式と賦課方式のそれぞれのデメリットを補い合う、つま り一方に偏った財政方式を選択することの危険性を補い合う仕組みがベストではないか と思います。それが一点です。  それから、若い世代が公的年金離れ、その一方で、将来不安の高まりの中から自助努 力に励むということになっておりますが、積立方式の要素を持つということをはっきり させることによって、将来に備えようという、若い世代の、ある意味では健全な意識を 公的年金の中に組み込むという意味もあると思います。これが第一点です。  それから、今後の課題としては、堀委員もお話になりましたが、次世代の育成を支援 するとか、女性の就労、高齢者の就労を促進する、そういった形で支え手を増やすこと が非常に大事になってくると思います。これは年金の中でやるか外でやるか両方でやる か、いずれにしても非常に大きな課題になってくると思いますが、そのようなことを考 えた場合に、その政策効果が見込まれる時期は相当将来まで見込まなければいけないと 考えます。今の財政計画では2020年代に保険料のピークを迎えて、それ以降安定させよ うという財政計画になっておりますが、今言ったような政策を本格的に進める。またそ れを前提にして財政計画を立てるとするともう少し長いスパンで考えてみてはどうかと いう気がします。  それから、第3点ですが、税方式か社会保険方式かということですが、これにつきま しては、この、事務局が用意しました説明に基本的に私も賛同しますが、これに書いて ないことについて申し上げます。社会保障全体を見ておりまして、この議論は年金に限 らない議論なのです。高齢者医療でも実質的に税方式という主張はあります。介護保険 でもまだ底流として相当根強いものがあります。恐らく基礎年金を税方式に切り換える ということは、高齢者医療も介護も税でという主張になるのだろうと思います。学者に も少なくありません。政党でもそういう主張があります。そうした場合に、基礎年金も 高齢者医療も介護もすべて税方式という国はどこにもないわけです。恐らく懸念される ことは、その場合にはかつての19世紀の社会保障に戻る。極めて生活保護に近い年金で あり、医療であり、介護になるのだろうということが懸念されます。それは所得制限が 入ってこざるを得ない、恐らく金融資産にも条件をつけて対象を絞ることにならざるを 得ないと思うのですが、それは19世紀型です。既にかつて経験したことです。それをど のように克服するかということで社会保障が今日まで来たのですが、歴史の歯車を元に 戻すことになりませんかというのが一点です。  もう一つは、いやいや税を使っても所得制限する必要ない。すべての人に一律平等に 年金・医療・介護のサービスをすれば良いと、これは割り切れることでございます。国 民がそのように選択すれば良いのですが、それは本当にどこの国にもない、完全な社会 主義を実現するということでございまして、過去に戻るか、夢の国を作るか、どちらか ということだろうと思います。  それから、今基礎年金を税でと言えば、論理的には高齢者医療・介護にも恐らく波及 せざるを得ないのだろうと思うのですが、しかし論理的でない主張もたくさんあります 。それは介護保険を推進した人たちの中でしばしば基礎年金は税でという主張が見られ るわけです。ということになると、これは説明ができません。むしろそういった人たち に、なぜ年金は税で、介護保険や医療は保険なのかということもあわせて説明していた だかなければならないと思います。これは事務局に説明を求めているわけでなくて、そ ういうご主張の方があるとすれば納得のいく説明をいただきたいということです。  長くなりましたが、以上です。 ○ 井手委員  税方式か社会保険方式かの比較の過程の中で、ここで少し触れられていないと思う点 で、徴収にかかるコストというのがあるのではないかと思うのですけれども、税方式の 主張の主な利点というところで、確実に財源として税の方が確保できるという表現がご ざいますけれども、必要な財源を確保するに当たってのコストと言いますか、未納率を 下げるためにいろいろな督促の努力もされていくというような方法も出ておりますので 、社会保険料として徴収するコストと消費税のような形で徴収するコストについて何か シミュレーションしたようなものがございましたら教えていただきたいと思います。 ○ 十菱社会保険庁・企画課長  社会保険の徴収コストということでございましたが、今手元に資料の持ち合わせがご ざいません。どういった観点から比較するのが良いのか、整理いたしまして、また場を 改めて報告させていただきたいと思います。  社会保険の場合は、いわゆる徴収事務だけをやっているわけではございませんで、給 付の部分にかなり大きな比重がございますし、どういう比較が適当なのか検討させてい ただきたい、こう思います。 ○ 堀委員  事務局にお願いなのですが、しばしば税金は強制的に徴収できるけれども、保険料は そうではないから税方式にしたらどうか、こういう議論がある。ここで例を挙げるのは どうかとも思うのですが、サッチーの巨額脱税とか加藤代議士の秘書の巨額脱税、そう いう脱税とか消費税の益税とか租税特別措置にもいろいろ不合理なものがあると思う。 あるいは税の滞納もかなりな巨額で、数日前に新聞で税の滞納が1兆5,000億円で、そ のうち消費税が半分とか、そういうのを見たような記憶があるのです。そういうことか ら言うと、私は税は絶対徴収できるという意見は間違っていると思うのですが、保険料 の未納・滞納のほかに、税の逸脱というのはどれくらいあるのか。社会保険方式の良い ところは、保険料を納めるべきなのに納めなかった人は年金をもらえないことです。し かし、税方式にすると、そういう脱税をしていた人にもすべて年金が出るわけです。要 するにただ乗りができるわけです。そういうことを指摘しておきたい。 ○ 大山委員  最初に発言をして、その後、税方式かどうかという議論になっておるのですが、先ほ ど介護保険の話も出ました。もちろん論点いくつもあると思いますが、日本社会におけ るそれぞれの制度の成熟度というものがあると思います。ですから、今日は時間があり ませんから、次回からまたもう少し質問させていただきますけれども、救貧とか防貧と いう話が出てまいりましたので、私ももう少し概念を正確にとらえてから発言したいと 思っておりましたけれども、制度の成熟度があると思います。  私の考えとしましては、年金について言えば、私も含めてですけれども、あるいは私 の組合も含めまして保険料は払っていますので、当然それに見合ったものの老後の生活 が保障されると、安定するものとして、そういう成熟した制度として私たちは考えてい ます。 介護制度の問題について言えば、当然制度の成熟度、最初私が発言したのは、 その後、岡本委員からもっといろいろな状況があるというお話がありまして補強してい ただきましたけれども、私自身は労働者の長期的安定雇用の考えを持っています。それ を追求したいと思っています。しかし、現実はそうでないわけです。これからさらに変 化が激しくなるだろうと。  そういう中で保険料を払うわけですから、場合によれば、勤労者でなくなる方もいま す。そういう点で基礎年金の部分について整合性があるかどうかという問題について、 どちらかというと、事務局から論点として非常に否定的に書かれています。しかし、こ れからの社会の状況を見た場合、これは積極的に税方式を導入するかの論点になるので はないか。いわゆる厚生年金に入って、基礎年金部分も報酬比例部分も含めて保険料を 払っているわけですが、その人たちが65歳を過ぎた後も未来永劫同じような状況で事態 が進むかどうかという点を含めて、制度の成熟度という問題があると思います。さらに 議論をお願いしたいと思いますけれども。 ○ 神代部会長代理  まだ非常にたくさんご意見、ご質問等が予想されますが、大体予定の時間が近づいて きております。本日ちょうだいいたしましたいろいろなご議論、それも踏まえまして、 中には若干誤解に基づくものとかインターネットを良く見れば出ているようなものもた くさんあると思いますが、滞納額なんていうのはインターネットを見ればすぐ出ており ますが、それは別としても、必要な資料も十分に用意をいたしまして、公的年金制度の 基本論についてのご議論をさらに続けていただきたいと思います。  前回の事務局からのご説明によりますと、次回には新人口推計で置き換えた年金財政 の試算を報告できるように作業を進めるということでございましたので、準備ができま したら、その内容について説明を受けて、それを基にご議論をいただきたいと思ってお ります。事務局どうぞよろしくご準備をお願いいたします。  日程につきましては、事務局の方で委員の方々の日程を調整していただきまして、改 めてご連絡をすることにいたしたいと存じます。事務局、何かございましたらどうぞ。 ○ 福井総務課長  お求めの資料でございますけれども、お求めの趣旨をよく確認させていただきながら 、可能な限り用意をさせていただきたいと思っております。ありがとうございました。 ○ 神代部会長代理  それでは、本日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省年金局総務課企画係 (代)03-5253-1111(内線3364)