戻る 

2000年度
生協の助け合い活動と食事会・配食活動調査報告

―はじめて活動時間合計が前年より減少。介護保険で―

●福祉事務局

 標記活動調査の結果について報告します。介護保険一年目をすぎ、その影響がくらしの助け合い活動にも表れています。利用会員数がほぼ横這い、一年間の活動時間がはじめて減少しました。

1.くらしの助け合い活動

■くらしの助け合い活動に取り組んでいる生協は全国75。新規設立は4生協。

 くらしの助け合い活動を行っている生協は全国75になりました。
 2000年度には新たに4生協で「くらしの助け合いの会」が設立されています。三井造船生協、コープのだ、あいち生協で2000年4月に、市民生協にいがたで2001年3月に設立総会が開かれました。
 なお、生協の合併等にともない、くらしの助け合いの会も合併し、取り組み生協数は昨年度と同じ75となっています。

■会員数合計は60,611名に。前年比107.4%の伸び。

 会員数合計は前年より4,174名増えて、60,611名となりました。前年比で107.4%の伸びはここ数年でみると鈍化しています。主な要因は、利用会員の介護保険制度への利用移行による減少です。
 会員別にみると、活動会員が2,392名増で25,378名(前年比110.4%)に、利用会員が489名増と微増で20,382名(前年比102.5%)に、賛助会員が1,293名増で14,851名(前年比109.5%)になりました。いずれの伸び率とも一昨年度を下回りました。

■活動時間の年間合計は1,137,774時間で、前年比93.4%と減少。

 昨年度一年間の活動時間は、1,137,774時間となりました。前年比93.4%で、1999年度より79,951時間減少しました。過去の調査の中で、活動時間が減少したのは今回がはじめてです。主な要因は上記と同様、利用会員の介護保険制度への移行によるものとみられます。
 このことは、介護保険制度の開始にともない、利用会員を制度利用につなぎ、そのことが利用料の軽減にもつながったということができ、プラス評価することができます。ちなみに、減少分がすべて介護保険の家事援助に移行したとみなすと、約1億2千万円の介護報酬に相当します。実際には家事援助のみでなく介護を行っている会やワーカーズがあることから、この額以上と計算することができます。逆に言えば、くらしの助け合い活動がそれに相当する家事援助・介護を担っていたと言うこともできます。

表・グラフ1-1

90〜00年度助け合い活動会員数および活動時間の推移の図

■くらしの助け合いの会は生協の介護保険事業の立ち上げに大きく貢献。

 介護保険事業をスタートさせた生協の中には、くらしの助け合いの会の利用会員が20〜25%程度、活動会員が15〜20%減少しているところがみられます。利用会員は介護保険へ移行し、活動会員もケアマネジャーやホームヘルパーとして事業の方へ移ったとみることができます。このことは、生協の介護保険事業の一年目を支えるうえで、大きく貢献したということができます。

■介護保険がもたらした、生協やくらしの助け合い活動への変化。

 くらしの助け合い活動が基盤となり、生協の介護保険事業が生まれました。現在40生協が取り組み、昨年度の事業高は全国で30億円となりました。そのスタートを支えたのは、前述のとおり、くらしの助け合いの会で経験を積んだ仲間であり、会そのものの存在です。
 介護保険がもたらした、生協への変化は、介護事業をはじめたこと、それによって生協がケアマネジャーや看護婦、ソーシャルワーカーなどの専門職を抱える組織になったことがあげられます。
 くらしの助け合いの会はこれまで、外部の専門職と協力関係を結び、よりよい活動をつくることをめざしてきましたが、これからは内部に専門職がいます。生協内部の専門職の知識と技術を活動に生かすことや、活動と事業との連携により利用者のよりよい生活づくり、地域福祉の向上にとってより有効な活動のあり方を考えていくことは、新しい課題となっています。
 介護保険によって、地域の様子も変化しています。介護保険には介護認定以外のサービスはなく、サービスの量にも上限があります。くらしの助け合いの会等には、介護保険の上限を上回る部分の家事援助や介護保険の範囲にふくまれない「話し相手」「草取り」「窓拭き」などの依頼が増加、あるいは病院に入院した方の食事介助や洗濯の依頼などが増加しています。また、生活支援の観点から、在宅介護支援センターからの紹介が多くなっている地域もあります。

■ワーカーズの介護保険事業

 介護保険の指定事業者・「基準該当」としてサービスを提供しているワーカーズがあります。2000年度は、コープかながわの6つのワーカーズ・コープが「基準該当」で33,066.5時間、指定事業者としてコープしずおかの特定非営利活動法人「ワーカーズコープ夢コープ」が47,372.0時間、生活クラブ生協神奈川のワーカーズ・コレクティブが198,765.0時間のサービス提供実績となっています。

■伸びているのは、地道な拡大活動を意識的に行っているところと「子育て家庭支援」の比率が高いところ。

 介護保険事業に参入した生協でも、会員、活動時間が伸びているくらしの助け合いの会があります。介護保険事業への貢献はもちろん、活動としてもエリア拡大やお知らせ活動などを計画的に実施している会は大きく伸びています。
 活動年数の長いところと短いところを比較すると、年数の長いところは伸び率が鈍化し、比較的新しいくらしの助け合いの会が伸張しているという傾向がみられます。新しいくらしの助け合いの会は、拡大する活動エリアが広く残っていることや、活動に参加したい組合員も多いことは当然ですが、「子育て家庭支援」の比率も高いということができます。(グラフ1-2、1-3参照)
 子育てに悩む母親が増え、また児童虐待等の事件が後を絶たない今日です。親が安心して子育てができるよう支援していくこと、安心して子育てできる地域づくりが重要な課題になっています。昨年度、日本生協連が行った「生協の子育て支援活動全国実態調査」で、子育てに関するグループ・サークルのある生協は24生協で、合計788グループ・サークル、参加者数は約1万人におよぶことがわかりました。生協が開催する子育て講座への親子組合員の参加も活発です。くらしの助け合いの会は、このような子育て活動分野とのつながりも今後考えていく必要があるでしょう。
 国ではファミリー・サポートセンターの設置を推進していますが、2001年度より札幌市が実施するこの事業に、コープさっぽろのくらしの助け合いの会が参加するという動きも出始めました。

■援助内容別にみると利用会員に子育て支援を必要とする人が増加。

 今回の調査で、援助内容別に利用会員数と年間活動時間(=利用時間)の比率を調べてみました。この項目に答えた52のくらしの助け合いの会の合計では、高齢者の利用会員は53%、障害者は9%、子育て支援を必要とする会員は21%、その他が17%となっています。年間活動時間はそれぞれ、60%、7%、15%、18%です。
 利用会員数の比率を前回(1996年度)と比較してみると、「高齢者」の利用会員には変化はなく、「障害者」が12ポイントマイナス、「子育て」が6ポイントプラス、「その他」が7ポイントプラスとなっており、「子育て」と「その他」を必要としている会員が増加していることがわかりました。

表・グラフ1-4

利用会員数と年間活動時間(=利用時間)の比率の図

■男性の活動会員は1.4%。

 今回はじめて調べてみたのが、男性の活動会員数です。男性の活動会員を数字で答えた46生協での合計は332名でした。「0」と回答した生協も含めて73生協の活動会員23,134名に占める割合は、1.4%となります。ただし、回答欄に記入していないところもあるので、実際にはこれより多い会員数となります。
 男性活動会員は、庭木の剪定や家具の移動などの力仕事、送迎などに能力を発揮しています。みやぎ生協では男性会員がグループを作り「お父さんの料理教室」を開催、さいたまコープでも「おやじの会」と称して、施設訪問やふれあいサロンなどの活動に活躍しています。
 団塊の世代が今後、職場をリタイヤし地域での生活がメインになることなどを視野に入れると、男性も参加しやすいくらしの助け合いの会のあり方を考えていくことも必要となるでしょう。


2.お食事会・配食活動

■昨年より3生協増え44生協383ヶ所の取り組み。

 全国で44生協383ヶ所で、お食事会および配食活動が取り組まれました。お食事会が開催あるいは配食活動が行われた回数は2,913回で、前年より277回増(110.5%)で増加傾向にあります。
 昨年度には、この活動に絞って関西と関東で担当者交流会を開催し、ノウハウの交換をしました。地域には、食事作りが楽しいと思う組合員と、食事会があれば参加し交流したいという高齢の組合員がいます。また、生協には調理設備があります。この3つの要素を計画的につなぐことが大事です。

■調理した食事は一年間で88,747食。

 昨年一年間に調理した食事は、88,747食となりました。前年より1,877食の増加です。前年比では102.2%にとどまりました。

表・グラフ2-1

90〜00年度 お食事会・配給活動の推移の図


3.「介護予防・生活支援事業」に関わる活動・事業

 国は「在宅の高齢者に対し、要介護状態にならないようにする(介護予防)とともに、自立した生活への支援(生活支援)を行うための対策を推進していくこと」として、「介護予防・生活支援事業」を実施しています。事業主体は、市町村や都道府県などで、2001年度は500億円の予算措置がなされています。生協の福祉活動や事業でも、いくつかこの事業に参加しています。

■家事援助活動では、新潟県総合生協のくらしの助け合いの会が、上越市の「1コインボランティア制度『美助っ人さん』」に団体登録しています。2000年5月より活動を開始し、年度末までに269時間の活動をしました。

■食事サービス関連では、2001年3月から始まった大分県臼杵市の配食サービス事業に、コープおおいたのくらしの助け合いの会が参加し、週2回の配食を担っている。その前までは、市社会福祉協議会の配食サービスの中で、週1回を担当していましたが、臼杵市の事業となったことで、週2回に増えました。
 毎日型の配食事業を実施しているコープこうべの「食事サービスセンター」は、神戸市の委託事業を行っています。

■埼玉県のドゥコープは、吉川市の「買い物支援事業」を2000年度より受託しています。「買い物が困難な方に、生協の宅配を利用し、日常生活品や食料品を自宅まで届けるサービス」で、配送料は市が負担しています。

■みかわ市民生協ではデイサービス事業を行っていますが、介護保険の事業とは別に、豊橋市の「高齢者生きがい活動支援通所事業」を受託しています。



トップへ
戻る