02/03/22 第2回労働政策審議会雇用均等分科会家内労働部会議事録        第2回労働政策審議会雇用均等分科会家内労働部会議事録 1 日時: 平成14年3月22日(金) 10:30〜12:00 2 場所: 専用第17会議室 3 出席者   公益代表    渥美委員、大沢委員、奥山委員、清水委員、水野委員   家内労働者代表 丸山委員、古川委員、原委員、渡辺委員、豊田委員   委託者代表   泉委員、橋本委員、志村委員、名倉委員 部会長  第2回労働政策審議会雇用均等分科会家内労働部会を始めさせていただきます。  初めに、事務局からご挨拶を申し上げます。 事務局  本日は、主たるテーマが2つあります。1つは、家内労働の実態がどういうふうにな っているかということの現状の家内労働概況調査結果報告をさせていただきたいと思っ ております。  近年、家内労働者の数が減っており、平成13年10月時点の調査で約30万人となってお りますが、これは、前年に比べ10%減っております。いかに家内労働をとりまく環境が 厳しいものかということを物語っていると思います。なかなか国内で家内労働という作 業態様が存立する基盤自体がなくなり、そういった仕事がどんどん海外に出ていってい るということだと思います。そういう状況のご説明をさせていただきたいと思っており ます。  もう1つは、家内労働対策は家内労働法に基づいて実施しておりますが、具体的な対 策としては各地域の家内労働工賃の改定を中心としてやっております。計画的に地方の 審議会で改定作業が進むよう、昨年度から第7次の最低工賃の新設・改定計画がスター トしております。昨年、地方労働局の審議会の体制も立ち上がり、各地域で審議が行わ れ始めております。その状況も後ほど、ご説明させていただきたいと思っております。 部会長  それでは、議事に入ります。議事については、お手元の議事次第に従って進めてまい ります。  まず、議事の(1)、「平成13年度家内労働概況調査結果」についてから始めます。 事務局から、ご説明をお願いいたします。 事務局  (資料No.2について説明。) 委員  平成13年度に講じた家内労働施策について説明いただきたい。 事務局  次の議事とあわせてご説明します。 委員  例年、家内労働概況調査と併せて家内労働実態調査の報告があるのですが、今日はな いように思うのです。家内労働実態調査は、隔年ごとに委託者と家内労働者とを交互に 調査していますね。毎年その実態調査と概況調査を併せて家内労働者の実態を掴んでき たと思うのですが、今回それが行われなかった理由が何かあるのか、その辺が1つです 。  それから今後の家内労働者実態調査の実施についてはどのように考えていらっしゃる のかお聞きしたいと思います。 事務局  いま委員からお話がありましたように、これまで2年ローテーションで調査を行って きたわけですが、最近、在宅ワーク従事者等の数が増えてきており、この実態を詳しく 調べる必要があるということで、平成13年度につきましては、在宅ワーカーについて の実態調査を行いました。  つまり、いままで2年ローテーションでやってきたものにつきまして、在宅ワーカー の調査を取り込んで、例えば3年ローテーションで行うといった方法も含めて少し新し いものの実態を踏まえるということを考えていきたいと思います。  平成14年度につきましては、家内労働の委託者調査の実施を計画をしております。 したがって、平成12年度が家内労働者、平成13年度が在宅ワーカー、平成14年度が 委託者調査、こういう回転でやっていこうと考えているところです。 委員  在宅ワーカーと、例えば印刷・同関連のワープロ作業従事者とはどのように区別をさ れているのでしょうか。 事務局  ワープロ作業を、家内労働に含めるかどうかというのは非常にグレーゾーンで、かな り議論をされたと聞いております。ご案内のように家内労働の体系というのは製造を中 心に考えていますし、最低工賃という考え方も成果物というものを基本に考えています ので、ワープロ作業については、どちらかと言うと、家内労働の体系というよりも違う 体系で捉えるということが自然かと思いますが、ワープロのフロッピーを成果物とみな して、いまの実態の中で家内労働に含めております。  ただ、おっしゃるように電子媒体を通じたいろいろな仕事というものが在宅ワーカー の中で広がっていますので、ここの施策をどういうふうにしていくのかというのは、非 常に大きな課題になろうかと思います。 委員  現在、この部会の対象外だということですか。それとも、一部はここに取り込んでお られるということですか。 事務局  先ほど申し上げたように、ワープロ作業というものが最低工賃の中に入っているとい う、非常に限定的なところについて家内労働の枠組の中に入っているということです。 委員  その理屈でいいますと、いわゆる電子媒体でフロッピーを加工したものというのは目 には見えないわけですね。 事務局  フロッピーだけを見ていればわからないですね。 委員  そうすると、少々無理があるのではないかという感じはするのです。それは、なんと か低廉な家内労働者を救済しようということからなされていることはわかるのですが、 そのところはもう少し突っ込んだ議論が必要ではないかと思っているのです。そうしま せんと、どうも、そこら辺の境がかなり難しい面が1つあるのと、もう1つは、やはり 改めて思うのですが、いわゆるILOの在宅形態の在宅就労の関係での条約があります が、あの中ではサービスは含めているわけですね。これは何回も私は言っているのです が、幸いなことに日本政府も賛成して採択されたわけです。そこら辺との関係で国内の 家内労働法も見直していく状況にきているのではないか、そうしないとどうしてもいま のような矛盾が解決されないのではないか、という気はするのです。  その辺などについてはどのようにお考えなのか。この間いろいろな検討部会も設けら れてきているのですが、そこら辺をやらないと結局、整合性のないままにいってしまう のではないか、という感じはするのです。 事務局  そこは、非常に大きな問題です。当面考えておりますのは、平成13年度に在宅ワーカ ーの実態調査を行うこととしております。  やはりなかなか実態がわからない状況の中で方向性は考えにくい部分もございますの で、そこはまず、実態を調べたいと考えております。  それから、ILO条約との関係ですが、サービスというものも施策の対象の中に入れ ていくということを考えたときに、やはり非常に難しいのは、いまの家内労働法の体系 というものが最低工賃という非常に重要なファクターで作られている。これはやはり成 果物がきちんと目に見えるということが前提になるわけです。そうすると、サービスを 施策の対象に加えていこうとするときに、そういう手法をどうやって新たなものにして いくのかという技術的な難しさが非常にあって、そこはまさにこれからいろいろとご意 見も伺いながら検討していかなければいけないと思っているところです。 委員  私の所は、機械を製造しているものですから設計部門の委託が非常に多いのですが、 1人で自宅で製図している人に委託する方法があります。ただ、非常に高収入だと思い ます。  私は、これからの傾向として、いわゆる就業時間というものに束縛されて仕事をする よりも、自分の時間を自由にできるという立場でいろいろ考えて行動をされる人という のは増えてくると思います。ですから、そういう分野での家内労働といった人たちもか なり多くなるのではないかと考えております。設計だけではなく、いわゆるIT部門も 含めて、在宅ワーカーという人たちは増えてくると思います。 部会長  いまのジャンル分けでいくと、設計部門の委託は家内労働に入ってくるのですか。 委員  いや、私はわかりません。 事務局  家内労働法の体系は、基本的に労働者保護ということを考えて、労働基準法でいえば 雇用関係がある中で確保される最低労働条件をどのように確保するかが主眼です。おそ らく委員がおっしゃっている設計部門の方々というのは、かなりお力があって保護を必 要としない層の方が多いのではないかと思いますので、そこは、家内労働者として考え ている層とは、性格を異にするのではないかと思います。 委員  設計の部門は、そういう見られ方をしますが、IT関連の人には、家内で行う仕事が 今後増えていきます。数が増えると競争となり、競争が増えてくる過程では必ず単価は 落ちてきます。いまのこの問題もすべて単価の問題だと思いますから、そういう傾向と いうか社会の動きを捉えていろいろ取決めていく必要があると思います。 委員  私もこの領域は流動化が2つの方向からあると思うのです。  1つは家内労働の製造業的な昔からのパターンから、ワープロを使った作業へと、内 職の中身が変わっていくということです。  また、いま労働者の、労働三法によって私もそれこそ雇用労働者として非常に保護さ れておりますが、大学も法人化したということになりますとどんどん従来の基幹労働者 たちがアウトソーシングされていって、私も、自宅で原稿を書いて1時間当たりいくら のそれを売って単価ということになりかねないわけです。  つまり、本来ならば労働者として高い賃金で守られていた人々が内職労働者として、 こちらの在宅ワーカーとして掃き出されるということになります。  そういう意味で、具体的な「ネジを回して使って」というのがワープロ作業になると いう変化のほかに、労働者全体の構造のあり方も変わってくるという気がしております 。在宅ワーカーの定義づけ、あるいは家内労働者の定義づけ、さらにそれらをどういう 施策で扱っていくのかということがよく見えないので、議論しておられたらお教えいた だきたいと思います。 事務局  十分に議論されていないというのが実態だと思います。いずれにしてもその問題は、 どこかで単一的に検討するというよりも、労働基準法の側から見れば、いままで捉えき れていたところがどんどん抜け落ちていく中で基準法制というものをどう考えるのか、 という観点から検討をする対象でしょうし。家内労働法の側から考えれば、家内労働的 な基準法では確保されない労働条件の部分をどのように拾い上げていくか、という観点 から検討すべき対象でしょうし。そこは確かにいろいろなところで議論をしていかなけ ればいけない非常に大きな問題だと思います。 委員  在宅就労の問題は、今までずっと雇用均等・児童家庭局で検討されてきたわけですね 。今後ここではないのかもしれませんが、少なくともいままでこちらで検討されてきた わけですから、その辺をもう少し突っ込んで取り組んでいただいたほうがいいのではな いかと思います。  ILO条約の件につきましても、家内労働ということではなくて、在宅就労というこ とで大きく捉えているわけですから是非、その辺を検討していただきたいと思います。 また、検討の場をどこでやるのかにつきましても、検討していただきたいと思います。 事務局  この在宅就労の問題につきましては、厚生労働省の中では雇用均等・児童家庭局と労 働基準局と、2つの所で検討をしております。  役割分担としては、当局は、非常に初心者といいますか、労働者保護の面で重要と思 われるデータ入力作業や、文書作成作業に関する労働条件なり能力開発をどのように推 進していくか、という観点から検討しております。  労働基準局は、勤労者生活という観点からSOHOといわれる、もう少しガッチリ働 いている層を対象に、仲介機関情報の提供や、需給調整方法といった生活の向上という 観点から検討しております。  この2つの施策は当然関わり合っているものですので、基準局とも連携をとりながら 検討を進めている、という状況です。 委員  そうしますといままで中家審に平行して在宅ワーカーの実態調査なり、また研究会な どを立ち上げてガイドラインを策定したわけですが、昨年度(平成13年度)はいわゆる 在宅就業の実態調査をやっている。これは大体いつごろまとまるのか、それと、それに ついてはどこでその結果を検討されて対応されるのかお聞きしたいと思います。  それからもう少し突っ込んで言いますと、家内労働という捉え方自体を改めていまの 時代の流れの中で考え直す必要があるのではないか、という気はするのです。その辺り 省としてどのようなお考えなのか聞かせてほしいと思います。 事務局  まず、調査につきまして、今年の夏か秋ぐらいに公表ということになると思います。 その結果を踏まえてどういう検討をしていくのかというのは、正直申しましてまだ青写 真が書けておりませんが、今後また少し検討してそれを行政としてどういうふうに咀嚼 していくのか、ということも含めて考えてみたいと思っております。  それから、家内労働のあり方を捉え直すというご質問がありましたが、もう少し具体 的にいいますと。 委員  どうしても日本の家内労働の場合、なかなか実態にかみ合わないような定義ではない かと思うのです。 事務局  それは、家内労働法の家内労働についてですか。 委員  そうです。ですからそこら辺はもう少し、例えばILOなどではあれは家内労働者を 定義しないで、家内労働という形態を定義しているのです。日本の場合は、家内労働者 とか補助者というふうに細かく定義しているために、なかなか実態に合わないのではな いかという気がするのです。  最低工賃額は工程により決めているために、実際の現場とはかみ合わないのです。そ の辺はどのようにお考えになっているのか。 事務局  そこの確たるお答えというのは難しいところなのですが、たしかに技術革新がものす ごいスピードで進んでいる中で、最低工賃という捉え方は、かなり無理をしてやってい るという事実はございます。ですから、家内労働法の中での最低工賃という捉え方とい うものを何か新しい手法と言いますか、そういう方向に切り替えることができるのかど うかという点も1つありますし、先ほど申し上げたような製造という括りの中で捉えて いる中での家内労働法の対象となっている労働者がどんどん減少をし、一方で在宅ワー カーのようなところが増えていると、こういう現実を家の中で労働するという1つのパ ッケージの中でどういうふうに整理をするのか、ということもこれまた非常に大きな問 題だと思います。  ただ、いずれにしても、先ほど申し上げた最低工賃といういわゆる底上げの手法をど ういう新たな手法にし得るのかがかなりポイントではないでしょうか。その手法として ある程度いまの時代に合ったものができるということになりますと、いまの製造現場の 状況というものももっときちんと把握できるようになるし、それからそれはサービスの ようなものにも適用を拡大していく方向性というものが出てくるかもしれないと考えて おります。 委員  いまお話の中に出てきました最低工賃ですが、なぜそういうことが言われるかという と、基本的には競争なのです。競争原理を無視していろいろなものを決めても、全然意 味がありません。  一昨年でしたか、WTOで、幼児労働に対して米国から苦情が出たのです。幼児を労 働力として使うことは良くない、ということは先進国では当たり前のことなのですが、 発展途上国へ行けば(幼児を労働力として使うことは)当然なのです。  そういう問題についてやはりグローバルな中で競争というものを捉えて、そしていま アメリカ、ヨーロッパばかりを見ていてはいけないのです。最低賃金の問題というのは 、一番大きな問題は、中国なのです。そういう社会の変化、経済の変化を、これからど う移っていくのかということを捉える。  私がなぜそういうことを申し上げるかと言うと、10年以上、家内労働を続けている方 がおられるわけです。それは全国で10万人、20万人おられるかわかりませんが。では農 民というのはいま何人いるのか、ということになってくるわけです。農村を政府が補助 しているわけです。そして、農業労働力というものを守っているわけですから。厚生労 働省として、長年社会に貢献してきた家内労働者たち(の存在)を見せるという問題も 考えていかなければいけないのではないかと思います。最低賃金で生活を守っていくと いうことは成り立ちません。中国と競争したらできません。そのようなことも一つご配 慮に入れられることが必要ではないか、という気がいたします。 委員  たしかに経営をされるお立場では、競争に残らなければ元もこもなくなるというのは 重々承知はしております。ただ、それを競争に勝ち残るために何をやってもいいんだと いうことでこういった国の基本的な政策に関わる部分を論議するということであれば、 非常に危ういものが出てくると思いますので、実態は実態としてそれを真っ向から否定 するつもりはありませんが、競争に生き残るがためにどんな基準も設けないとか、基準 をどうこうするというのはあまりよろしくない議論ではないか、と私は個人的には思い ます。 委員  私は、それが成り立つのならよろしいと思います。しかし私は、競争に生き残るため にどういうことをしよう、と言っているのではないのです。世界がそういう方向に向か うのなら、それでよろしいと思います。しかしできないのだったら、ある程度民間の力 が及ばない面においては政府がきちっとその助成策をとるということにしていかなけれ ば、これは続かないのではないか。はっきり言って、続かないと思います。 部会長  だいぶ大きな問題になってまいりましたが、次の議事として、「第7次最低工賃新設 ・改正計画の進捗状況」についてということになっておりますので、事務局から、また ご説明をお願いいたします。 事務局  (資料No.4、No.5、No.6、No.7により説明。) 部会長  先ほど委員からご質問が出ましたが、それは、いまのご説明でよろしいですか。 委員  ほかにも講じている施策があると思いますので、全体の概要をお話いただければと思 います。 事務局  家内労働対策につきましては、都道府県労働局の賃金課・室において実際に取り組ん でおりますが、それ以外にも労働基準監督署が事業所に監督に行った際に家内労働法に 定められていることが守られているかどうかの監督を併せて行っております。  具体的には、いちばん重要なのは労働条件の明示。発注者と家内労働者との間で委託 の条件が明確になっているかどうか、ということが後々いろいろな問題が生じたときに もいちばん重要なものですから。そのため、家内労働手帳という、いわゆる家内労働者 の委託条件を明示した紙の交付がきちんと行われるよう徹底しています。  もう1つは、先ほど申し上げました、最低工賃というものがきちんと守られているか どうか確認する、ということです。さらに、最低工賃についての周知を行っております 。  それから、家内労働者の安全衛生を確保するということです。非常に危険な業務に従 事していないかどうか、危険業務に従事するときにはきちんとした措置が取られている かどうか確認しております。 委員  それぐらいしかないというのは、寂しいですね。家内労働者には、専業的な労働者が おりますね。せっかく家内労働法で保護するということであれば監督指導というだけで はなく、もう少し前向きな施策はないのかなと思ったのですが、ちょっと寂しいという 感想です。 委員  最低工賃の改定状況について、改定件数が、平成13年度の着手件数が300人以上で35 件、300人未満で10件、うち廃止が4件、と聞いております。  地域最低賃金ですと、最低は毎年変わりますね。最低賃金の場合、最低でもゼロとい うことはないですね。  大体、0.いくつの世界になっているような感じもします。いずれにしても、毎年改定 されて上がってきているのではないかと思うのです。そうしますと、家内労働の最低工 賃の場合は、毎年改定されているわけではないのですね。長いところですとスパンが4 、5年だとか、早いところでも2年か3年という状況の中で据え置きなり検討をされな かったということになると、本来、最低工賃の持つ意義、意味合いが薄れてしまうので はないか、という懸念が1つあるのです。その辺はどのように考えられているのか。と いうのは、いわば最低工賃については、(家内労働法において)最低賃金との整合性を とりなさいと謳われていると思うのです。その点では、一般的に改定件数が何件という のではなく、中身をできれば。  例えば、前回の改定以降平均値でどのぐらいのアップになったのか、それともアップ にならなかったのか。最高でどのぐらいとかという辺りを出していかないと、先ほどの 逆の意味での最低工賃の形骸化になってしまうのではないか。これは1つの考え方で全 く思いつきなのですが、最賃との連動をある程度考慮しないと、格差が余計出てきてし まい、それこそ家内労働者が増えるどころか、減ることは間違いないだろうと思います 。その辺をどのようにお考えになっているかをお聞きしたいと思います。 事務局  最低賃金との均衡という問題は、家内労働法の中にも書かれておりまして、そこは改 定をする際にある程度、横並び的に見ている材料には当然なっているわけです。 ただ、賃金とこの工賃というものを考えますと、工賃は、1単位の成果物に対する支払 い額になります。 委員  出来高賃金ですか。 事務局  はい、出来高賃金です。そうすると、例えばその生産性が上がって1単位を作るのに かかる時間が短くなれば、当然その工賃がマイナスになっても1日の実収入というのは 上がり得る可能性があると考えられます。そうすると、その時間賃金で見たその賃金の 動きと、いわゆる1単位を作るということで見た工賃との動きの違いはあるかと思いま す。工賃の推移は最近はマイナスになっておりますが、この間、賃金は曲がりなりにも プラスになっておりますので全く同じに賃金を動かすことは難しい面はあるのかと感じ ます。ただ、いずれにしても、そのバランスをとるという考え方は非常に重要だとは認 識をしております。 委員  ちょっと意味合いがよくわからないのです。能率が上がれば、たしかにその熟練度合 いで10足やるのが20足になるとか、ありますね。しかし、最低工賃においては原則の限 度が規定がされているわけです。しかも、その初任給程度のところと同じベースにして いるわけです。だから、作業能率が上がればできるんだから下がることもあるんだとい うのは、理屈としては成り立たないのです。それは、最低工賃の考えでは成り立たない のです。そこがちょっとおかしいな、と私は思うのです。というのは、これはあくまで も中卒新規の初任給と同じところで最低工賃のいちばん最低の下限で決めているわけで すから、そこのところが1つ問題があります。  もう1つは、いわゆる8時間当たりの標準能率というものがあるのです。  例えばいまのご主張ですと、逆に言えば、標準能率を変えればいいのです。だからそ れが変えられているのかどうか、やはりその辺の問題が1つあるのではないかと思いま す。だから逆に言うと、最低工賃が下限としての法規制としての意味合いをどこに置い ているのかというところを据えないと、いまの話は変な話になるのではないか、という 感じがします。  ついでに、私は、前からおかしいと思っていたのは、「8時間の換算額」と「必要経 費を引いた8時間換算金額」は、みんな同じなのです。全部とは言いません。例えば平 成11年で調べてみましたら、  63件中、違っているのは8件だけで、あとは全部、必要経費を除いた8時間換算額と 8時間換算額が同じなのです。これはどういうことなのでしょうか。  私は靴の関係なので、たまたま皮靴のところを関心をもって調べたら、いわゆる必要 経費が、全部、工程別に決まっているのです。パンプスの場合はいくら、ブーツの場合 はいくらと。この表にはそれが全然表示されていないのです。  8時間労働で換算した金額と、必要経費を引いた8時間換算額とが全く同額なのです 。これまた不思議な話で、その辺がどのようになっているのか、いま、最低工賃の問題 が出たので、お聞きします。 事務局  後ほど、調べてお答えしたいと思います。 最低賃金と最賃工賃との関係については、最低賃金は生計費を確保するという考え方が ベースにあるわけです。そうすると、家内労働をしている場合も、例えばニットの編み 機が技術革新されて、前よりも生産性が上がったという場合には、出来高一単位に与え られるその工賃が低くなっても、収入の面では確保される可能性があると思いますので 、生産性を加味した時に、賃金と最低工賃とは若干違った見方をする必要があると感じ ております。 委員  いまの事務局の説明では、ここで決めている最低工賃の規定からいっても、ちょっと ずれてしまうのではないかと感じます。これは家内労働法第13条に定められており、い わゆる最低工賃については、一定地域と統一型の地域内における類似の、いわば最低賃 金との均衡を考慮して決める、となっているわけです。そうしますと、熟練して(製造 又は加工する物品の)数が(たくさん)できるようになったから、(1単位当たりの工 賃が)下がっていいというのは、現場の話であって、法規制している工賃の論議として はおかしい。そうなってしまったら、最低工賃は毎年下がっていきます。 事務局  その方の履歴もあるでしょうし。 委員  とり方は熟練でとるのではないのです。ともかく、最低賃金であれば、その会社に入 って、新卒の方が最初にいただくところを基準にしているわけです。最低工賃の考え方 も、原則、3年ぐらい小僧して一人前になって、職人になったところを見ているのです 。それを10年、20年経った人のところで見たら、変な話になるのではないですか。 事務局  最初の段階で得られる生産性が違っている場合ですから、機械がよくなるとか。 委員  いや、その場合は逆に工程を変えなければいけないのです。最低工賃というのは、す べての工程で厳格に決めているのです。ご存じのように、見てもらえば分かります。材 質から全部決まっているのです。素材から。それが無視されたのでは、何のために規格 があるのか分からなくなります。例えば皮靴でいえば、皮の種類、形およびデザイン、 工程はどうであると事細かく決めてあるわけです。そのうえで、この工程についてはい くらですよと。それを8時間換算で出すわけです。8時間換算で出したのを見ています と、2,300円とか、今時こういうのがあるのかと。これは何十何銭の世界です。そのぐ らいきちんとやっているわけですから、そこのところは活かしていかないと、かえって 形骸化してしまうのではないかと思います。 委員  感想ですが、私もこれを担当するまで、家内労働というのは漠然として、特に工賃に 関しては非常に分からなかったです。ここで工賃の改正計画を論議していますが、改正 するには、どういう手続きをとるのかが分からないままに皆さんお話しされても、もち ろん分かっていらっしゃる方もたくさんいらっしゃいますが、私の地方に行って、いろ いろ実際に携っている人に確認したりしまして、ある程度分かってきました。それで、 資料を拝見しますと、こういう具合にやられるのだなあということが、改めて分かりま した。 委員  最低工賃は、下がる傾向にあるわけですか。 事務局  最低工賃は基本的には上がっています。 委員  私は、委託者代表という立場で出席しており、愛知県で、実際に内職をあっせんする 仕事をしていますが、現実としまして、最低工賃に引っ掛かるものは、私のところは一 つもありません。従来は、引っ掛かったかもしれませんが。現在は、例えば浴衣を縫う (といった単純な物)は、みんな中国に行ってしまいます。特殊な浴衣は最低工賃に引 っ掛かりません。ですから、現在(国内で行われている家内労働)は、非常に技術的と いいますか、芸術的な物をやらさせていただいているのです。  工賃の話をいろいろ聞いておりますが、なかなかその最低工賃が当てはまらないので す。それでは、いまの工賃をいくらにするかということですが、それは、内職をしてい る方からお話があるので。「ああ、これはいい仕事だなあ」とか。忙しいと、当然、工 賃は高いわけです。すぐ、明日やってくれということだと。  そういうことで、いま、愛知労働局が決定している最低工賃もなかなか適用にならな いというのが現状ということです。 委員  衣服その他の繊維製品の家内労働者の占めるウエイトが11万4千4百何十人というこ とで、いちばん多いわけです。いま、まさしく私どもの企業は、その業種に属している わけです。いまや、ピークの時の工賃に比べて、工賃は、頑張っている所で60%。50% に下がっている所が大半です。したがいまして、業者数が、ピークに比較して、もう30 %ぐらいしか残っていません。そこに従事している労働者数が30万人をいつ切るかと言 われているので、ここに11万いくらの家内労働者がいるということは、ちょっと不思議 なのです。  先ほど、最低工賃の設定で、いろいろご意見がありましたが、私は、やはり、支払う 方でありますけれども、家内労働者といえども、最低賃金というものは、最低月収でな くて、最低時給で決めるべきだと思うのです。その時給の中で、能力のある人と、ない 人とによって差が生じるのが当り前の現象だろうと思うのです。 委員の大半の皆様方は、日本のいろいろな中小企業の現場を直にご覧になる機会はほと んどお持ちになっていらっしゃらないと思うのですが、その働いている姿を見ると、本 当に、この人たちはこんなに一生懸命、脇目も振らずに頑張ってくれているのに、加工 賃が下がる一方で、給料の上昇はなかなか見込めないということを考えると、陰で涙が 出るということも、本当に経営者の実態なのです。  それをどうやってカバーするかというと、当社の場合は、先ほどお話に出ておりまし たように、中国へ進出する、それによって得られる利益を、国内の製造業を絶対維持し たいと思うがために、中国へ出て行って、得られる利益を国内に補充している現状があ るのです。  そういうことからいいますと、最低賃金自体が上がっていくことに対しては、非常に 苦しいというのが現場の実感です。ただ、それを何とか、最低賃金ではなかなか実際に 正社員としては働いてくれませんから、常に最低賃金よりも何十%か上をいくようには 設定しているのですが、大変苦しくなってきています。それが実態です。 部会長  ねじれ現象なのですかね。いろいろな現象がありますね。 委員  繰り返しになりますが、結局、誰が製造された物を買うかという買う人の立場からコ ストが決まってくるわけですから、その買う人の立場に立った政策決定がなされなけれ ば、意味がなくなってしまいますから、最低工賃を決めたところで、もっと安い所があ れば、そちらにいってしまうのです。それを政策としてどう考えるか。農業の場合は、 政府が補助金を出しているわけです。お話の中にありました、一生懸命やっている人た ちを、いきなり切り捨てるというようなことをやってはいけないというのであれば、地 方自治体なり公のシステムで、その分を補填しなければ成り立ちません。  私の所の実態を申し上げますと、もう中国で加工した部品を使わなければ、競争に耐 えられないのです。その手を早く打つか、打たないかで、会社の存続が決まってきてし まうわけです。皆、塗炭の苦しみになって、万歳するような状態になって、それこそ暴 動でも起こるような形になってから、政策の手を打っても、もう遅いのではないか、早 くやらないといけないのでないか、という話を申し上げたわけです。 委員  最低工賃を決めることよりも、むしろ、ここで、政府の役割は何なのか、どうすべき かということを議論しないと、この問題が解決できないのではないか。 委員  現実に、最低賃金や工賃を決める上で、30万人近い(家内労働に従事する)方々、そ の中で10年、20年続けている方には、農業と同じような対策を、講ずべきではないかと いう気持ちです。成り立たないと思います。それだけ競争というのはシビアですから。 委員  いま、いろいろとお話が出ておりますが、品物の発注は経営者や事業主に出していた だくのですが、現在、国内で内職に出す物と、海外に出す物とで、相当、色分けされて いると思うのです。国内に出す物は、急いでいて時間の勝負(である物)とか、国内の 人が指導してすぐに仕上げる(必要のある)物が、現実に私のほうでは多いわけです。 大量に何万枚、何万個を縫う物はまずありません。  ただ、言えることは、最低賃金は、適用されるか、されないか、品物によって様々で すが、目安として、これを決めていだだくのはいいのではないかなと考えております。 私は、いま、日本の内職の状況はあまり分かりませんが、現実に私が見てますのは、内 職は、これは国外に出したほうがいいという物の選別は、はっきりしてきたのではない かなと思っています。内職でも、何万円という工賃をいただくものもあります。ですか ら、一つには、内職者も技術を修得して、「あそこへ発注すれば、必ずいい物ができる 。すぐ間に合わせる」ということも、非常に大切ではないかと思います。そうすれば、 内職者も、「このぐらいのことをやれば、これぐらいいただける」ということで、工賃 が安いか高いかというのは、私も本当に分かりませんが、「今回は非常に工賃がいいな 」ということは聞きます。それで、私どもも、その事業主に、「ちょっと面倒見てもら えんかね」ということは申し上げますが、「これなら、また、ちょっと出しましょうか 」という交渉みたいなことを、いま現実にやっております。これが私の実態です。 部会長  なかなか面白い議論になってきたのですが、もう一つ議題がありますので、次の議題 に移らせていただきます。  議事次第には、「その他」となっておりますが、これについて、事務局からご説明を お願いいたします。 事務局  (資料No.8、9、10、12、13により説明。) 委員  一つは、労災保険の加入状況で、加入対象者はどのぐらいいらっしゃるのか、概況調 査で、細かい数字が1人に至るまで出ておりますので、お分かりいただけると思います ので、教えてほしいのです。  「年別監督指導実施結果」がありまして、これは、例えば家内労働手帳が39.9%、約 4割弱法違反があるとか、最低工賃の効力の問題とか、工賃の支払いについても増えて きている感じですが、この分母を説明してほしいと思います。 事務局  監督指導の状況については、おっしゃるような家内労働手帳の違反率が、監督指導を 実施した事業所のうち39.9%が、家内労働手帳に書かれているようなことをやっていな かったということです。  労災保険特別加入の対象者数は、統計的にとれないと思います。 委員  危険有害業務の種類、類型別に危険有害業務に従事する家内労働者数は、1人に至る まで細かく出ているのですから、逆に言うと、その対象者は当然出ると思うのですが、 これは対象にならない人の数なのですか。2万1,666名と出ていますが。 事務局  労災保険の適用対象者以外の業務の最終の数字を集計していますので保険の対象者の 母数の数字とは違います。 委員  対象にならない人は細かく出ているわけですから、その対象になる人は、当然何名い るのか分かるでしょ、と聞いているわけです。分からないのですか。 事務局  後ほど、調べてお答えしたいと思います。 委員  工賃の支払いの第6条の違反と言うのですか、この「1.1」というのは、件数でなくて 、パーセントなのでしょうか。この母数がよく分からないのです。 事務局  母数は、いちばん上の「1,214」で、「1.1」はパーセントです。 委員  そうすると、1,214件やって、1.1%あったということですね。 事務局  はい。 委員  そうすると、12〜13件あったということですね。 事務局  はい、そういうことです。 委員  分かりました。 委員  家内労働労災保険加入状況において、団体数、加入者数が出ており、平成12年度の「 家内労働調査結果報告」に、特殊健康診断をどの程度受けているのかパーセントが表示 されていますが、こういった家内労働者がどの程度特殊健康診断をお受けになっている のか、あるいは実際の事故等による負傷、疾病の有無等は一般の企業の勤労者に比べて 高いのか、低いのか。高い気もするのですが、この辺の管理監督といったものはどのよ うにされているのか。在宅ワークという場合に、家庭でいろいろなワープロ、パソコン 機器を使った時の取扱いに関する、いわゆるVDTのガイドラインが出ているわけです が、この間テレビを見ていましたら、企業の中では絶対にあり得ないような、かなり健 康障害を起こすような使い方をしていると指導は、どうなされているのかを伺いたいの です。 事務局  健康診断の関係については、おそらくこれがいちばん詳しい資料で、これ以上のこと はちょっと分からないのですが、いわゆる一般の労働者と比べて、どういう位置にある かについては、後ほどお調べして、お答えしたいと思います。  VDTの関係については、この在宅ワーカーのガイドラインにおいて、VDT作業の 適正な実施方法、腰痛防止策など、健康確保のために、在宅ワーカーに情報を提供する よう、発注者側への周知に努めております。 委員  企業でも、一斉にパソコンを使っており、産業医がかなり厳しく指導しないと、なか なか予防のための使い方をしていない。むしろ、在宅ワークの場合には、産業医がそう いう所を巡視することはあまり考えられないので、個人的に努力しない限りは駄目であ ろうと思います。ただ、パンフレットを読むだけでは、なかなか改善には結び付かない のではないかと思うのです。労災の認定数の、数の上昇とかかわってくるのではないか なと感じました。 部会長  ほかにはございませんか。ほかになければ、本日の部会はこれで終了させていただき ます。本日の署名委員は、豊田委員と志村委員にお願いします。どうもご苦労さまでし た。 照会先:雇用均等・児童家庭局 短時間・在宅労働課 最低工賃係(内線:7879)