02/02/15 第3回建築物衛生管理検討会議事録           第3回建築物衛生管理検討会議事録           日時:平成14年2月15日(金)10:00〜           場所:中央合同庁舎第5号館17階              専用第18〜20会議室           議事 1)建築物環境衛生管理基準について              2)その他 ○事務局  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第3回「建築物衛生管理検討会」を 開催させていただきます。本日は、御多用のところを建築物衛生管理検討会に御出席い ただき、誠にありがとうございます。  本日は、池田委員、宿谷委員が御欠席との御連絡をいただいております。開会に当た りまして、厚生労働省健康局下田局長よりごあいさつを申し上げる予定でございました けれども、所用がございますので、代わりに清水生活衛生課長よりごあいさつを申し上 げます。 ○生活衛生課長  生活衛生課長の清水でございます。第3回の検討会の開催に当たり、局長に代わりま して一言ごあいさつを申し上げます。  まず、委員の皆様方には、御多用中にも関わらず、本日の検討会に御出席いただきま して、ありがとうございます。  さて、建築物における衛生的環境の確保に関する法律、いわゆる建築物衛生法でござ いますけれども、さきの臨時国会で一部改正法が成立して、本年の4月1日から施行さ れることになりましたことは御承知のとおりでございます。この法律改正におきまして は、登録制度の業種の追加など、現在の業態に則した改正が行われたところでございま す。  具体的な基準につきましては、前回の検討会でも種々御論議いただいたところでござ いますので、その御論議の論点を受けて、また一般にパブリックコメントもかけてござ いますので、パブリックコメントで寄せられた一般の御意見も踏まえて、近日中に省令 改正をいたしたいというふうに考えているところでございます。  前回のこの検討会におきましては、湿度の管理でございますとか、化学物質汚染の問 題を中心として御論議賜ったところでございます。  本日は、1つは給水と排水の管理の件。2つ目には清掃の件。3つ目といたしまして 、ネズミ・害虫等の防除の在り方というものにつきまして、御論議いただきたいと考え ておるところでございます。  委員の皆様方には、活発な御論議を賜りますよう、お願い申し上げる次第でございま す。よろしくお願いいたします。 ○事務局  それでは、座長の吉澤先生、進行よろしくお願いいたします。 ○吉澤座長  本日は、お忙しいところありがとうございました。傍聴の皆様方も、大変関心を持っ ていただきまして、ありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。 それでは、まず事務局から資料の確認をお願いしたいと思います。 ○事務局  それでは、資料を御説明させていただきます。  まず資料1でございますけれども「第2回建築物衛生管理検討会議事録(案)」これ は委員限りとなってございます。  資料2といたしまして、紀谷先生から提出の資料。  資料3が、坂上先生から。  資料4が、石塚先生から。  資料5が、田中生男先生から御提出いただいた資料でございます。  参考資料といたしまして、1番〜4番まで入ってございます。  不足等ございましたから、お申し付けてください。 ○吉澤座長  ありがとうございました。よろしゅうございますか。それでは、第1番目の議題、前 回議事録の確認をお願いしたいと思います。 ○事務局  それでは、資料1をごらんください。これは、前回の議事録案でございます。速記録 を基に、事前に委員の先生方には御確認いただいたものでございます。特段の問題がな ければ、この内容で確定した上で、公開の手続に入らせていただきたいと思いますが、 いかがでございますでしょうか。 ○吉澤座長  先ほどからごらんになっていただけていると思いますが、何か御意見もしくは御訂正 、御提案ございますでしょうか。  もし問題ないようでございましたら、これを議事録として確定いたしたいと思います 。ありがとうございました。 ○事務局  ありがとうございました。  それでは、議事録につきまして、厚生労働省のホームページに掲載する形で、公開の 手続に入らせていただきます。 ○吉澤座長  早速議題の内容に入りたいと思います。今日は、先ほど課長さんからお話がございま したように、給排水、清掃、ネズミ・害虫の防除の問題について議論したいと思います 。  4人の先生方から資料を提出いただいておりますので、まず資料に基づいて御説明い ただきまして、その後で議論をしたいと思います。  まず、給排水に関しまして、坂上先生、お願いできますか。 ○坂上委員  それでは、お手元の資料の資料3に基づきまして、御説明させていただきます。4ペ ージございますけれども、最初の1ページは前々回、田中生男先生から発言があったよ うに、ビル衛生管理法のおおもとは憲法第25条にあり、そこでは国民は健康な生活を営 む権利をもち、国としては公衆衛生の向上・増進に努めるということが明記されていて 、こういうことに基づいて体系づけられているということがそこに書いてございます。  共同住宅が条文の前文に書いてあるんですけれども、これは実際には手が付けられて いないということも指摘してあります。  2番目の項目は、給排水衛生設備の概論、皆さんよく御存じのことですけれども、そ の特徴的なところをまとめておきました。  図の1ですが、これは水のフローでございます。入口と出口は都市設備に任せており まして、その中の建物の水のフローのところを給排水衛生設備は分野として担保してい るということになります。  そこで構成される設備は、この図にありますように、大変多種多様でございます。で すので、給排水の管理といった場合、どこまでを扱うかということが最終的には問題に なろうかと思います。  一般に給排水と言いますと、給水設備、そして給湯設備、それから排水設備という、 この3つが主要設備になるわけでして、以下ではこの3つについて主として論議を進め ております。  2ページ目をお願いいたします。ここでは、そのような給水・給湯・排水システムに おいて、衛生的な観点から、それを主とした要求性の項目にはどういうものが挙げられ るかを示したのが、表の1であります。基本機能、安全・衛生性、非加害性、付加性能 というふうな、4つのカテゴリーでまとめております。  特にその中の、安全・衛生性というところに着目していただきたいんですが、給水で は、飲料用給水の汚染防止というのが第1となります。給湯では、給水の水質に準ずる わけですけれども、そういう意味での汚染防止、それからもう一つやけどの防止という ことが付加されます。排水につきましては、排水の逆流、排水管の詰まり、室内空気汚 染、これはトラップの破封等によります。そして、清浄機器等の汚染の防止が挙げられ ます。  表2ですが、これは給水システムにおける飲料用給水の汚染防止に絡めて、その汚染 状況と原因をまとめたものです。材料成分の溶出から、残留塩素の消失というところま で、5つの項目が挙げられます。これらをすべて、本当は維持管理の中で手当てしなけ ればいけないんですけれども、まだまだ抜けているところがあると言えます。  表の3は、排水システムでありますが、ここでは4つの項目を挙げています。備考の ところにありますように、排水がダウンしますと、すべての給排水が使えなくなるとい うことがありますし、重大な汚損事故につながることもあります。トラブルがあった際 は、すでに大変重大な状況になっている例が多いのです。  3ページですが、ここでは、現行のビル衛生管理法の法体系の中で、給排水衛生設備 の衛生管理項目というのはどうなっているかということをまとめたのが、この表でござ います。バーが付いているところが、抜けているところというふうにみて下さい。給水 では、給水栓、貯水槽がありますが、特に貯水槽のところの充実が随分図られています 。ただ、今後このバーの付いているところを、これからどうしていくかということが課 題になろうかと思います。  給湯は、全部がバーでして、何も手が付けられていません。排水のところでは、いろ いろと項目はございますけれども、これまではなかなか実効性が上がらなかったのです が、今回は課長のお話でございましたように、登録業種に追加されましたので、この辺 の実効性、確実性が上がるような体制がやっとできました。この排水設備の充実が1つ の眼目でございます。  4章のところでは、今後の課題ということで、3ページ〜4ページにかけて、6つの 項目を挙げてございます。  まず最初の1ですけれども、「点検業務の充実」というタイトルですが、これは前回 に少し議論になったと思いますが、単に空気の質とか、給水の質、あるいは排水の質と いう質の管理以上に、特に給排水は使用者が直接器具を使って、その使われた水とか排 水が、システムの負荷に直結するという特徴がございます。  空気の場合は、中央監視システムの方で制御し、プロが管理します。しかし給排水は 使用者の使用がすぐ負荷に直結するという特徴がございます。そういう意味で、末端器 具、システムの末端の水栓でありますとか、あるいは排水口でありますとか、そこの水 の出具合、湯の出具合、あるいは排水の飲み込み具合というふうなことを、やはりチェ ックせざるを得ないと言いますか、そういうことが大切になってくるだろうと思われま す。  どうせ、清掃、点検、維持管理をやるならば、そこに点検という業務を付加した方が 、合わせ技で合理的ではないかということで、Aにそのことを挙げておきました。  4ページでございますが、給水、給湯に関しましては、紀谷先生の方から詳しい説明 があると思いますけれども、まず(2)の「給湯設備の取り込み」につきまして、先ほど の表で、これまで何も対応がなかったですけれども、レジオネラ属菌の問題とか、いろ んな意味で、給湯設備は30年前はほとんど普及していなかったのに、現状ではもう必須 設備として当たり前ということでありますので、そろそろこれを取り込んでいく方向に いくべきではないかということです。  Cは「雑用水施設の管理」とあります。雑用水ですから、直接飲用はありませんので 、余り厳しい水質ということではないんですが、やはりレジオネラのことがあり、水景 施設とか、いろいろアエロゾロが発生しますので、その辺の管理を拡張していくべきだ ろうと思います。  Dですが、これは紀谷先生からも説明があると思いますが、ここで掲げているのは、 そういう噴水等だけではなく、加湿器の問題もございます。それから、空調の冷却水も ございます。そうすると、衛生と空調とか、空気と水とかという縦割りではなくて、レ ジオネラ属菌対策は総括的、横断的、総合的な対策を立てるべきであろうということか ら、一つの独立したと言うか、共通項としてまとめられないかということで、4番目に 挙げておきました。  Eが、実は私の役割の中の一番重要なところで、「排水設備管理の充実」であります 。少し詳しく書いてございますけれども、要は、先ほど申しましたように、排水はダウ ンするとどうしようもないということです。この庁舎の洗面所をチェックしておりませ んけれども、きっと洗面所の床排水口を見ていただきますと、トラップの封水がなくな っているか、あるいはそこに付いているわんが外れているか、どちらかだと思います。  もしそうなら、そこから排水ガスどんどん出てきますから、それが洗面所の空気を汚 染する、あるいは、それがひいては居室等まで入ってくることになります。その中には 有害成分が入っているものもあるということで、有害、不快と示してあります。そうい うことも含めて、排水設備は排水という水と、空気ということを併せて、ちゃんとした 管理が必要だということをそこに書いてございます。  Fでありますが、これは先ほどの排水ガスに関連してなんですが、排水口の点検とか 、封水深の点検ということもございますけれども、もっと簡便に、空気、特に臭気を測 る測定器があれば、それでしかもガス成分の幾つかのものが測れれば、排水管の中のガ スが出ていること、すなわちトラップが破封しているということがすぐわかります。  それから、これは建材から出ているか、あるいは空調機のダクトの清掃不徹底で出て いるなどということが、臭気測定がうまくできれば、原因が簡便にわかります。あるい は、測ることによって、通常の点検等と併せて、二重にチェックできますので、そうい う臭気測定法の開発、これは空気環境の衛生確保ということも併せて、共同して是非開 発されたら具合がいいだろうということで、一つ提言しておきました。  簡単ですが、以上説明をさせていただきました。 ○吉澤座長  ありがとうございました。それでは、引き続きまして、紀谷先生の方から、御説明を お願いしたいと思います。 ○紀谷委員  今の坂上先生の中に大分含まれておりますので重複いたしますけれども、一応資料を 用意いたしましたので、これに基づいて簡単にコメントさせていただきます。  私の方は、経過を述べたようなところがありまして、まず「はじめに」のところで、 建物の中の給水ということが、以前は水道と井水の二元給水というのが、こういう都心 の大きなビルでも一般的だったわけですけれども、地下水のくみ上げ過剰で、地盤沈下 を起こしたというような、昭和30年代〜40年代辺りの問題点があって、地下水のくみ上 げが禁止されたということで、水道による一元給水という時代が続いていたということ です。  しかし、水資源が逼迫する時代を迎えて、排水の再利用とか、雨水利用というものが 取り入れられるようになりまして、多元給水へと移行してきていると。すなわち、飲料 水と雑用水を区分し、更に雑用水の中でも多様な水質の水が供給されると。  飲料水の方も、更に上質水供給系統などと言って、水道水を更にグレードアップする というような設備が入ってくるというふうに、言わば多元給水の時代を迎えているとい うのが現在である。  そういう状況を考えますと、それぞれの多様な水に対して、水質管理を徹底する。あ るいは、貯水槽の管理を徹底するということが必要になると。一方では、これに対する 対策として、直結給水の範囲拡大という形で、水道が末端まで責任を持つというような 方針も取られつつあるというのが現状であろうというわけです。  一方、給水を加熱して供給するというのが給湯系統であるわけですけれども、そこで レジオネラ、その他の水質の問題が発生していると。  また、水景施設等の水質の問題というようなものも検討が進められているというのが 序文であります。  2番として「貯水槽と直結給水」というタイトルにいたしましたけれども、かつては 受水槽というのが、建築の中では面積を節約するというような意味から、地下の建築面 積に勘定されない空間を使って利用されておったわけでありますけれども、30年前にビ ル衛生管理法ができたことに呼応しまして、東京都が調査を実施した結果、約八割の受 水槽が不適格であったという実態が明らかにされまして、これは参考文献の1に記され ているところですけれども、その結果を受けて、昭和50年には建設省が告示1597号を出 し、これは床上6面点検という、画期的な変更を世の中に徹底したというものであるわ けですけれども、これがその後維持管理者の要望によって、57年に改正1674号となり、 現在では平成12年の告示1406号になっているというわけです。  これと関連するわけですけれども、昭和52年には水道法の改正が行われて簡易専用水 道というものが導入されて、20立米を超える受水槽、60年からは10立米超というふうに 、建物の中の受水槽を有する給水系統が、水道法によって水質を管理する。このような 状況になり、更に昨年から小規模貯水槽水道という10立米以下の貯水槽に対しても、水 道法の枠がかけられたというような形で、着々と管理が進められつつあるということで あります。 しかし、これによらない古い水槽を使っている建物もまだございますし、 このビル衛生管理法に基づいても、必ずしも100 %の貯水槽が点検されているわけでは ありませんで、必ずしもその受検率は高いとは言い難い状況にあります。  一方、3行目からですが、今後は水槽ごとの個別制御とか電極棒制御等によって、水 の総入れ替えを図る。あるいは、水需要の季節変動に対応して、水位とかポンプの運転 台数、あるいは貯水槽の稼働台数を変化させて水質管理をするというようなものが、一 般の設計にも確立されつつあるわけですけれども、更にこういうようなものを推進する 必要があるでしょうということです。  なお「空室の多い建物における水質劣化は今後の検討課題である」と書いたんですが 、これは余りまだ言われていないところですけれども、実は今年、私の研究室の卒業研 究で少しやらせておりまして、バブルの時代につくられたアパートとか、あるいはこう いう都心のビルでも、必ずしも100 %占有されているわけではないわけであります。そ ういうところで、今まで余り問題視されておりませんけれども、配管の中の滞留時間の 延長によって、かなりの水質劣化が心配される。これは鉛の侵出の問題とも絡みますし 、その他金属の侵出の問題も絡んでくるかと思いますが、この辺がこれから早急に検討 すべきところではないかというふうに考えております。  「高置水槽等の管理の問題もまだ残されている」と一応書いておきました。それらを 払拭する目的で、直結給水の範囲拡大ということが行われているということであります 。  また、赤水対策としてインヒビタ云々と書きましたが、ここで塩素消毒の問題を含め て、必ずしもこういう管理が徹底されているとは限らない。この問題に関連しては、こ こには書きませんでしたけれども、数年前に長崎の赤痢の集団発生というのがあったわ けですが、こういう同一敷地内に、複数の建物があって、給水系統は一系統であるとい ったようなものに対して、残念ながら特定建築物の対象には含められなかったわけです が、集合住宅を含めて、このような系統の管理ということを考えますと、かなり重要な 問題を含んでいるのではないかと思います。  1行だけ「雑用水の管理についても再検討が必要であると考えられる」と書きました が、これについは数年前から眞柄委員会で検討した報告書もございますし、その他幾つ かの関連する報告書もございます。本日は、ここには入れてございませんが、これは厚 生労働省の方で十分御承知のことかと思いますので、1行だけ書かせていただきました 。  3番として「給湯水の管理」ですけれども、これは一つはレジオネラ症の問題から脚 光を浴びたということで、我々も当初は余り気にしていなかったんですが、CIB-W62 と いう国際的な会議がございまして、そこで1987年〜98年にかけて、合計8件の報告がご ざいます。主として、イギリスとかベルギーの報告ですけれども、あとオランダとアメ リカとがこういうものを出しております。  これに刺激されたと言った方が本音だと思いますが、それによって我々も空気調和・ 衛生工学会、あるいはビル管理教育センターで研究委員会を継続いたしまして、これに 関連して6件の報告が出ております。これは、お手元に資料として今日配られたんでし ょうか、リストが私の最後のページに付いております。  このようなことから、給湯系統の水質問題というのが取り上げられるようになりまし て、それでビル管理教育センターでも、レジオネラ防止指針がつくり直されたというよ うな経緯がございます。そのときには、併せて給水系統も問題であるということは、イ ギリスの文献、あるいは基準等からも察知されましたので、トータルな取り上げ方をし ておりまして、加湿器とか水景施設、蓄熱槽、循環式浴槽等々が項目としては取り上げ られているわけであります。  しかし、その取り扱いがまだデータとしては不十分だというようなこともございまし て、それに対する補足的な調査研究が行われておりまして、それらを踏まえて現在マニ ュアルづくり等が行れつつあるというが現状であります。  そういうことで、一応給水・給湯系統全般として、幾つかの問題点があるであろうと 。給湯系統は特に従来余り水質管理という観点はありませんで、これはその方式との対 応もいろいろありますで、設計方法からして抜本的に考えなければいけないのではない かということを考えておりまして、単に維持管理という観点だけでは、解決しないので はないかというふうに考えているところであります。  以上です。 ○吉澤座長  ありがとうございました。それでは、先生方から何か御意見・御質問でもございまし たら、お願いいたします。どなたかございませんか。  かなり完全な形の御提案が、坂上先生からございましたけれども、何かございますか 。 ○田中(生)委員  (5)の排水設備の管理の充実という項目の中で、実は排水設備というのは、ネズミ、 ゴキブリ、チョウバエ等の侵入、移動路として、非常に重要な役割を果たしているんで す。ですから、管理の中には、そういうものも含めておく必要があるのではないかとい う気がします。 ○吉澤座長  おっしゃるとおりだと思います。どうぞよろしくお願いします。 ○坂上委員  実は、洗面所の床排水の配管を調べてみますと、掃除口が一番末端にございます。そ こが腐食して、少し穴が開いている。開けると、そこに昆虫の巣があるんですね。それ でガが飛び回っている。もともとそのガが飛び回っているというトラブルがあって、そ れで周りにはどこにも生息している場がないんですね。そうしたら、排水管の末端の掃 除口、水が来ませんから、そこに巣をつくっていたということがございますし、おっし ゃるとおり、排水系統が昆虫のすみかになっている、あるいはネズミの通路になってい るということはたしかでございます。 ○田中(生)委員  そうですね。管理の中で併せて検討する必要があると思います。 ○坂上委員  そういうことは必要だと思います。 ○紀谷委員  これも管理の問題だけではなくて、ヨーロッパでは既に相当実行されているんですけ れども、排水管の途中に、言わばネズミ返しをつける、しかもそれは一重では大体だめ なんで、二重に付けないとネズミは十分飛び越えて来てしまうというようなことが、相 当検討されて実行されているところです。 ○相澤委員  坂上先生に御質問させていただきたいんですが、4ページのFの悪臭成分の検知装置 があればというようなことが書いてあるんですが、これは実際にあって確実にできるか どうかわからないというのか、あるいは全くないのか、ちょっと教えていただきたいん ですけれども。 ○坂上委員  簡便なガス分析、これは特定しなければいけないですが、例えば、硫黄成分とか、そ ういう特定した上でのガス濃度をはかるというふうなものは、既にありますね。それを ビル衛生管理という観点から、特定しなければいけません。すべてが測れるわけではな いですから、その場合は官能試験になります。官能試験も一つの方法ですが、これはち ょっと補集して、また持って行ってということになりますから面倒ですね。ワンタッチ で測れるようなものということになれば、まずガス成分はどんなものがあるのかという ことを実態調査を踏まえた上で、例えばこれとこれを測れば、それで大体代表できるだ ろうということであれば、これは容易にできると思うんです。  ただ、その実態調査も含めた全体の評価が最後に出てきますので、トータルな測定法 というものを、是非確立してもらいたいという、要望でございます。 ○吉澤座長  これは私の方からもお願いしたいと思いますけれども、ビル衛生管理法なんかの現場 で使っている、小さな風速計がございますね。あれはビル衛生管理法ができたころには 、まだもっと大きなもので、しかもメインは5ミクロンの熱線を使いましたアカデミッ クなものしかなかったのです。一生懸命お願いして、やっと小さなものができるように なったわけです。  ですから、これもどの程度まで簡略化したものが使えるかということについては、か なり勉強していかなければいけないのではないかという感じがします。是非そういった ものも、目的に応じた方法が開発されることを願っています。そうすれば、きっと機械 もたくさん使ってもらえるのではないかと思います。  何かほかにございますでしょうか。どうぞ。 ○事務局  建築物衛生法の法体系の中で、建築物環境衛生管理基準の部分につきましては、政令 で給排水の維持管理をしなさいという規定があって、参考資料で言いますと11ページ以 降のところの政令の部分で、給排水の維持管理をやるようにという規定がございまして 、13ページ以降の施行規則の部分で、貯水槽ですとか、排水設備の清掃の回数等の規定 があり、細かな維持管理の仕方につきましては、30ページ以降の技術上の告示で定めら れてございます。  それに対する、補足的、技術的な細かい細則につきましては、参考資料2の4ページ のところに通知がございます。昭和58年に出した通知の中に、維持管理の方法について 、建築物関係衛生維持管理要領というのを定めておりまして、そういったところを参考 にして維持管理をやっていただくといった体系になっているところでございます。  ただし、これが制定されてから、もう20年経過しているということもあって、新しい 衛生問題が生じたり、新しい技術が普及してきているといった中で、見直していくべき 事項があるのかなというふうに考えております。  また場合によっては、新しい衛生上の問題等も踏まえて、現在は通知で定められてい る内容を、告示や省令に引き上げていくと。あるいは、告示で書かれている内容も重要 な部分については、省令に引き上げていくといった対応が必要ではないかということを 、給水と排水に関しては考えております。  それから、第1回検討会でも申し上げましたけれども、現行では規定のないお湯の関 係、給湯設備について、どのように基準を定めていくのか、それから雑用水の問題につ いても、どのように基準を定めていけばいいのかということも、また御議論になるかと 思いますので、その辺りついてまた先生方から御意見をいただければというふうに考え ております。 ○吉澤座長  実際何か御提案でもございましたら、どうぞ。 ○坂上委員  実は、昨年、循環式の浴槽、これは住宅ですから、ビルとはまたちょっと違いますけ れども、バスクリンですが、そういう緑色の入浴剤がありますね。下の階から、それが 蛇口から出てきたという事故がありました。これは、高置水槽の清掃をしていて、給水 管が閉止された状態で、下で水を使ったときに、負圧が生じまして、循環浴槽のお湯が 給湯器を介し、かつ、住戸の水道メーターもスルーし、下の階の台所の水栓から緑色の お湯が出てきたという事例です。そんな例は、結構あるんです。  これは何かというと、給湯器には本来2つぐらいの逆流防止装置が付いています。そ れがダウンしていたということです。それから、水道メーターそのものにも、逆流防止 機構があるんですけれども、それも機能していなかったという、トリプルのスルーがあ ったということで、我々にとっては大変重要な問題でありました。  それで、紀谷先生から御説明がございましたように、直結給水の場合は、水道管への 逆流防止ということが、大変重要になってきます。影響範囲が広いですから。そういう 意味で、逆流防止をどう確保するかということは、非常に重要なキーとなりますので、 少し私の方では書いておきました。吐出したお湯が給湯系統に逆流しないことを、給水 と同じような水準で手当てしなければいけないだろうと思います。 ○吉澤座長  これは、是非ともしていただきたいですね。どうぞ。 ○田中(正)委員  坂上先生の資料の3ページの表で、給湯のところが何もないということなんですけれ ども、これは先程はやけどの話がありました。そういったところからは、ある程度の規 制がすぐにもできるんではないかと思うんですが、どうなんですか。 ○紀谷委員  この表は、できるかどうかではなくて、現在あるかないかということです。 ○坂上委員  できるかどうかですけれども、実は幼児、あるいは保育園みたいなところ、一方でケ アハウス等々、熱に対して応答性に優れていないという人たちがいるわけです。我々も そうなるかもしれないですね。そのときに、例えば給湯配管がむき出しで、そのままじ っとあたっておりますと、すぐやけどをしますね。  それから、誤操作して、ダイレクトにお湯が出た場合、給湯温度がそのまま使用温度 になった場合はやけどになりますね。そういう意味で、暴露時間にもよるんですけれど も、55度とか54度というのが一つのラインとなります。10秒から20秒ぐらい暴露しても 、何とか問題とならないラインです。  その一方でレジオネラの話がございまして、そこでは60度というのが、なかなかすば らしい温度となりますが、この温度とのギャップが問題となります。これは、設計上の 話と、それから実際にここで書いていますけれども、給湯については水温の監視ぐらい は是非維持管理でやるべきであろうと思います。その範囲は末端の要所要所で55度〜60 度の間と言いますか、福祉施設とかでは、例えば57度とか、56度とかというふうなこと はできるかもしれませんけれども、一般ビルではやはり55〜60というようなところでど うでしょうか。管理基準として、できるかと思うんですけれどもね。 ○田中(正)委員  温度の問題よりも、今、基準に入っていないのができるのか、できないのかというこ とですね。 ○坂上委員  これは私より、行政の方でどうなのかということですね。 ○事務局  今、先生方から御紹介ありましたように、参考資料2の21ページでございますけれど も、平成11年に建築物等におけるレジオネラ症防止対策についてという通知を出してお ります。これは、厚生科学研究の成果を踏まえまして、財団法人ビル管理教育センター で新版レジオネラ症防止指針というのが出されております。その中で、給水設備、給湯 設備、冷却塔、加湿器、そういった項目ごとに、レジオネラ症の防止対策の在り方につ いて検討されていおります。  27ページを見ていただきたいと思います。中ほどに、4番で「給湯設備におけるレジ オネラ防止対策」について、60度以上にお湯の管理をするのが望ましいと、あるいは清 掃を徹底するなり、必要に応じて菌の検査を行う必要があると。そういったことが書か れております。これは法律上の根拠があるわけではないんですけれども、これに準じた 指導をされている自治体もあると聞いております。  ここに書いている内容を、そのまま法令上に盛り込んでいくべきなのか、あるいは若 干異なった考え方をした方がいいのか、そういったところをまた御議論いただきたいと 思うんですけれども。 ○吉澤座長  どうぞ。 ○田中(正)委員  ここでは60度以上となっているんですね。そうすると上限がないわけですね、もっと 高い方がいいということですので、そうしますとレジオネラの効果に対してはよろしい でしょうけれども、一方やけどの方にしますと、それは困った問題になりますので、総 合的に考えなければいけないんではないかと思います。 ○紀谷委員  この「以上」が何で付いたのか、私は今日初めて知ったんですが、防止指針の中では6 0度と特定しておりまして、これはやけどの関係から、それ以上超えてはならないとい う表現になっています。ただ、一度、60度まで上げて、中央式ですと末端では少し温度 が下がると、しかし下がる限界を55度で抑えろという表現になっているわけでして、そ ういう点ではクリアーしていたつもりなんですから、以上と書かれてしまうと、ちょっ とまずかったですね。 ○坂上委員  これは給湯温度ですから、デフォルト値なんです。システムの初期設定で、昇温して 送り出すときの温度が60度ということです。実際には、システムは非常に複雑でござい まして、近いところもあれば遠いところもあります。その末端で使うときの、給湯・使 用温度というのがあります。本当は、そこを規定しないといけないんです。デフォルト 値より、末端や局所での給湯・使用温度が何度であるかが重要で、それが今、紀谷先生 がおっしゃったように、やけどを考えれば55度、それで50度を下回るとレジオネラが発 生する。ですから、55〜60というのが、5の倍数ですから、割切りもいいですし、大変 リーズナブルなバリューだと思います。 ○小田委員  今、温度の話が出まして、紀谷先生の文献の中に、トリハロメタンのお話がちょっと 載っておりますけれども、1999年に札幌市保健所と衛生研究所で、貯湯式のトリハロメ タンと金属の溶出について検査した経緯がございます。そのときは、やはり温度が高い と、札幌市の水道でもトリハロメタンが増えました。それから、瞬間湯沸かし器ですと 、温度が高くてもそんなに増えていません。したがって、中央給湯式で行って帰ってく る方式ですと、接触時間が長いせいか、温度が高くなるほどトリハロメタンが増加して いる傾向にあります。これは、増加していると言いましても、総トリハロメタンの基準 が0.1mg /lですから、そのオーダーは1桁以上下ですので、すぐ心配することではな いかもしれませんけれども、接触時間とか温度によってそういった副産物が増えるとい うことがありますので、ちょっと紹介いたしました。 ○吉澤座長  いろいろ議論がありますけれども、何かまとまりがつきそうな気がしないでもないで すね。あと行政が、どうやってうまくまとめるかですね。この基準ができた当時、いろ いろわからない点がいっぱいありましたし、今は大分違うかもしませんのでね。 ○事務局  給湯設備の方式によっても、維持管理の在り方が異なるのかなというところもありま して、それを一律に規定できるのか、あるいは方式ごとに分けて項目設定をしていくの かというのも、議論になると思います。  それから、温度が高くなると、やけどの心配という話がございましたけれども、やけ ど以外にも、例えば金属が溶出しやすくなるという、そうなってくると水道水質基準の 値を満たすことができなくなる。あるいは、ある種の金属がレジオネラ菌等の繁殖を促 進するというデータもありますので、その辺りをどのように担保していくか、設備の配 管の材質とか、そういったところに対する考慮の必要性というのはあるんでしょうか。 ○吉澤座長  今の問題いかがですか。 ○紀谷委員  当然ある思いますが、その辺は国土交通省の方の告示でも一応触れているわけで、こ れは設計の方のテリトリーと言いますか、そちらで処理すべき問題で、維持管理レベル ではもう既に手遅れになるということだと思います。 ○吉澤座長  ただ、維持管理の方でそういうふうにするということがはっきりすれば、つくる方も そういうふうにつくりますから、そういった意味でも相互関係があると思いますけれど も、いろいろなことがあって、非常に複雑だと思うんですが、できることからしていか なければいけないし、もう少しはっきりできるんではないかと思います。 ○坂上委員  前回にも私が発言したんですけれども、悪しき物をどんなにうまく手当てしても、よ くはならないですね。だから、今の材料にしても、悪い材料を使っているものを、どん なに清掃したり手当てしても、成分が変わるわけではないですから。そうすると維持管 理の中で、そういうことが発見できたら、評価もできたら、すぐそれは改修するんだと いうルールを一つつくっておかないと、何かむなしい話にもなっていくと思うんです。 これはちょっと大きな問題だと思うんですけれどもね。 ○吉澤座長  今の話は、非常に基本的なことで、是非ともそういふうに持って行きたいと、持って 行ってほしいと思いますね。つくる側と、使う側が、全然分かれているというのは、大 変おかしなことでありまして、それはやはりこちらの方ではこうしてほしいというよう な形の線を出していく、あとはきっと行政の方でいろいろ協議なんかがあるんではない かと思いますけれども、とにかく使ってどうだということから持って行ったらいいんで はないかと思います。  何か、どうぞ。 ○相澤委員  今、事務局が言われたことを、先ほど質問しようかと思ったんですが、温度が上がる と溶解度がますので、金属あるいはプラスチックを水道管に使っている場合は、溶ける 可能性があると思うんですが、参考資料3の13ページ辺りに、給温水と給水の理化学的 試験のいろいろな金属とか、細菌学的なものの比較があって、これを見ていたら、そん なに変わらないようです。ただちょっとおかしいなと思ったのは、細菌学的検査で、む しろ給温水の方が多いわけです。ですから、温度がかなり高温ではあり得ないんで、恐 らく、余り高い温度でやっていないのではないかなと思ったんです。材質を決めるとき には、当然温度を上げて、どういうものが溶けるかとか、そういったことはやられてお られるんでしょうか。 ○紀谷委員  それなりの検討はされておりまして、材料の制限とか、そういうことは実際的には行 われているわけですが、それが時代とともに若干は変化しておりまして、以前はそうい う知見が余りないままに行われていたという時代もあるということです。  それから、今、御指摘のここで給温水の方が細菌が多いというのは、これはむしろ当 然でして、こちらの方が増殖に適温になっているという結果です。こういうのが見つか ったために、我々がその後中央式給湯設備について中で徹底した調査をやったという経 過があって、これはその一番当初のデータです。 ○相澤委員  そうすると、温度自体はそれほど高くないので、例えば金属や何かは、余り変わりが ありませんから、温水と言うか、それぐらいの温度でやっているということですか。 ○紀谷委員  はい、そういうことです。 ○相澤委員  わかりました。 ○吉澤座長  これについては、後で原案が出てくるんでしょうか。 ○事務局  個別の先生方に、また相談させていただきながら、たたき台と言いましょうか、検討 の方向性を次回お示しできればというふうに考えております。 ○吉澤座長  是非ともその場でがちっと検討していただきたいと思います。今の話は、給湯設備に 関して、レジオネラとか金属の溶出なんかに話を限定してしまいましたけれども、もっ と幅広い問題がありますので、そういった意味でがっちりやっていただきたいと思いま す。  雑用水について、何かございますか。 ○眞柄委員  雑用水に関しましては、資料がありましたように、数値が出ましたのが、もう随分昔 の昭和56年でして、その当時雑用水を利用する目的が専ら水洗便所でありまして、衛生 的な観点から雑用水の源水は水洗便所以外ということになっていて、確かにその当時は それがほとんどでしてたけれども、現在は水洗便所もそうですし、新宿あるいは福岡辺 りでは、下水の処理水そのものを使っていたり、あるいは最近都内の大きな建物では、 従来とは全く違う雑用水のシステムに変わっておりますので、やはり新しいシステムに 対応した通知なり何なりを、変えていかなければならないだろうというふうに思ってお ます。 先ほど紀谷先生から御紹介がありましたように、委員会をつくって、それなり に報告書をお出しし、その段階でそれなりの基準はつくったつもりですが、もうあれ以 来多分10年ぐらい経っているかと思いますので、そういう意味で前に厚生省にお出しし た報告書をベースにして、今日の状況にあった形で基準をつくっていただくのが、やは り適切だろうと思います。  もう一つは、その当時それほど意識はしていませんでしたが、やはり水資源やエネル ギーの問題を考えて、そういう観点からも組み込む必要があるだろうというふうに思い ます。 坂上先生からもありましたけれども、建物の中の給水設備、あるいは排水設備 そのものについてはビル管法でしか、勿論国土交通省の方もありますが、性能そのもの を示す基準というのが明確になってないんで、やはりビル管法の枠の中でもやはりそう いう設備・器具について、少なくとも性能基準だけははっきさせておく必要があるだろ うというふうに思います。雑用水も、全く同じものだと思います。  水道の方でも、少しずつ検討しておりますが、やはり合成樹脂管について、我々が想 像しないというか、知らないのがいけないのかもしれませんが、やはり製造の過程で可 塑剤・安定剤というのは、かなり使われている。一方、厚生労働省の中で、食品衛生法 の枠組みの中の調理器具ですとか、あるいは食器だとかということに関しては、かなり 事細かに、ポジティブリストなりネガティブリストが整備されているんですが、水回り については、その辺りが必ずしも明確になっていないんで、そういう観点もビル管法の 枠の中でもお考えをいただいた方がよろしいではないだろうかと。  特に普通の水の系はいいんですが、やはり給湯になりますと、可塑剤・安定剤の溶出 がかなり促進されているというデータも少しずつ出てきていますので、そういう観点か らは少し踏み込んでいただければよろしいんではないかと思います。 ○吉澤座長  ありがとうございました。性能に関する規定についてお話がございましたけれども、 これはまさに設計とか施工に戻ってゆくことでございまして、是非ともがっちり押えて いきたいと思っています。  溶出の問題、これは実際に使用上出てくる問題で、確かにつくる側では、なかなか抜 けてしまう点がありますので、こちらからそれはがっちりと押えていっていただきたい と思います。  ほかに何か、今の眞柄先生のコメントに対して御意見ございませんか。 ○事務局  雑用水と言った場合に、一回使った水を再利用するものと、あるいは雨水を利用する もの、あるいは場合によっては工業用水等を利用するものと、いろんなタイプがあると 思うんですけれども、原水ごとに維持管理の方法ですとか、あるいは必要な対策という のは違ってくると思うんですけれども、やはりその辺りは、原水の種類ごとに規定して いく必要がございますね。 ○眞柄委員  理想的にはそうだと思うんです。先ほど性能基準というお話をしましたけれども、要 するに、雑用水は人の健康に障害を及ぼさないことと一言書けば、それが性能基準にな るわけですね。でも、それでは余りにも不親切ですから、建物の用途に合わせて、例え ば先ほどから話題になっているようなレジオネラなり、あるいは感染性の原虫なり、あ るいは細菌という枠組みをつくると同時に施設設備でそういうものが出てこないという ふうに、やはり少しは丁寧に書いて上げなければいけないだろうと思います。  実は、来月WHOで従属栄養細菌のことについて水質のガイドラインに入れるかどう かという国際的なワークショップがあるわけです。日本は、水道には残塩があるという のが、当然のことですので、従属栄養細菌のことなんか心配しなくてもいいわけです。  ところが、ヨーロッパの多くは、塩素を入れていないわけですから、従属栄養細菌と いうのは、要するに、水道管から出てくる水質管理の重要なポイントになっているわけ です。だから、彼らは議論をしようというわけです。それと同じことを、日本の国内で 事を考えると、実は塩素が抜けているのは給湯のわけです。  そういう意味で、レジオネラ菌を指標として給湯水の水質管理をするだけでいいのか 、もう少し細菌の種類を大がかりに見るような、そういう指標を考えるのか。やはり、 日本は塩素を使って、それで担保されているから、ほかのものは目を向けないような性 格があったわけですが、だんだん給湯の問題、あるいは雑用水の問題になってくると、 従来の塩素を前提とした衛生基準ではない。新しい考え方を持ってこないと、やはり生 活をしている人たちの健康のことを考えると、少し足りないのかなという感じがしてお ります。 ○吉澤座長  ありがとうございました。塩素に頼ってしまって、ほかのことを忘れてしまうという のは、ほかの場合もいろいろありますので、是非その辺についても基本に戻って考えて いだきたいと思います。 ○紀谷委員  水を差すようで申し訳ございません。おっしゃるとおりなんですけれども、現実の建 築を考えた場合に、なかなかそれをきめ細かく決めるというのは難しい。  先ほど事務局が言っているように、水源別に考えるかというのも、理想的にはまさに そう考えたいところですが、現実問題としては、多分不可能に近いと思います。  これは、もっといろいろデータが蓄積されれば、まだ可能性もあるでしょうけれども 、水道の水質基準は、相当長い時間をかけて、あれだけの蓄積があって、今対応ができ ているわけで、雑用水とか給湯に、それに準ずるような対応をつくるというのは、非常 に難しいと思うんです。  そういう点では、やはり管の清掃を定期的にやるとか、何かそういう維持管理の方法 を考えて、あるいは使う場所を制限するとか、そういうような形でとりあえず取り組ん で、徐々に蓄積が出てきたところで、もう少しきめ細かい対応をするということをせざ るを得ないんではないかなという気がするんです。 ○事務局  今、使用用途の制限という話が紀谷先生からございましたけれども、昭和56年の古い 通知の中では、便所の用水として使うことを想定していたということなんですけれども 、今はいろんな用途が拡大されていると。  水資源の有効活用という観点から、非常に幅の広い再利用水、雑用水が使われている と思うんですけれども、やはり衛生上、これは絶対に使ってはまずいと、そういったと ころについては禁止していくとか、あるいは制限を加えていくとか、そういった方法も あるのかなというふうに考えております。  例えば、現行の告示の中で、空調設備の加湿装置の水については、水道法の第4条に 規定する水質基準に準ずる水を使うように規定されています。しかし以前の調査では、 加湿器の水で雑用水を使っているというケースもあったようなんですけれども、微生物 汚染防止の観点からは好ましくない事例だというふうには考えられますけれども、再利 用水の使用が好ましくない用途があれば、そういったものも禁止と言いましょうか、制 限していくということもあり得るのかなと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○吉澤座長  一番最初のコンセプトとして、人の健康にプラスになるとは言わないけれども、ネガ ティブにならないものということはありますね。  その上で、知見と色々な条件に応じて、緩めたり、タイトにしたりしていけばいいん ではないかと思います。その辺の姿勢というのは大事だし、さっきの塩素に頼り過ぎて しまったというのはとても大きな問題で、きっとほかにもあるんではないかと思うんで すけれども、そういったことを含めて検討していただきたいなと思っています。  まだ、2つ以上の課題がございますので、先の方に行かせていただきたいと思います 。 清掃の問題につきまして、石塚先生から資料を提出していただいておりますので、 御説明をお願いしたいと思います。 ○石塚委員  それでは、資料4と参考資料3の(6)と(7)を使いたいと思います。  一番最初の検討会で、私の方から課題のお話をさせていただいたのですが、昨年リサ イクル法案もできまして、世の中全体がリサイクル率を上げていかなければいけない。2 010年までにある程度目標パーセントを決めてやっていくとしますと、現在のビル管理 法の中で、建物から出てくる段階で、どれだけリサイクルに関与できるか、その辺りを きちんとしておきませんと、実際上リサイクルがなかなかうまくいかないというところ が出てきます。中間処理場で分別というようなことが起こってくるわけですので、そう いう意味で、特に建物内でできる分については、建物できちんと対応するというふうに 考えてみて、ここに改正と書いてございますけれども、大きなところにつきまして何点 か整理しましたものを御紹介させていただきたいと思います。  現在のビル管理法の中では、汚物と規定をされているわけですが、当時としては、そ ういう考えだったわけですけれども、現在は考えてみますと、有価物も含めてあるわけ でございますので、建築物の廃棄物と訂正する必要があろうかと思います。  実際に分別しなければリサイクルできないわけですので、建築物内廃棄物保管設備と いうものを新たに規定する必要が出てくるのではないかと思われます。これが大きな2 つでございます。  まず1番目ですが、建築物内廃棄物に訂正するということで、今のビル管理法では、 各言葉につきまして定義がありますので、やはりこの建築物内廃棄物の定義も必要だろ うかと思われます。  関係する部分として、施行令、施行規則、技術基準、ほとんど該当するところを書い ておきました。  2つ目でございますが、建築物内廃棄物保管設備の規定ということですが、現在は規 定がないということで、再利用、また減量化を推進するために基準が必要だろうと思い ます。そのために規定が必要になってまいります。  幾つかあるわけですが、まず1つ目としまして、保管場所の面積基準ということです が、現在ビル管理法にないものですから、いろんな各都道府県のもの、また市のものを 参考にさせてもらったわけですが、東京都の条例の廃棄物保管設備の中で、保管場所面 積基準というのがあります。これは、参考資料の36ページをお開けいただきたいと思い ます。管理基準はもっとたくさんあるんですが、その中で特に面積関係だけ載ったもの を1枚だけ資料として用意いたしております。  左側に用途がありまして、事務所、飲食店、学校、病院・診療所、店舗、ホテル、文 化・娯楽施設等となっておりまして、上の方に面積のランク別が載っております。これ を全部線でつないでいきますと、一本の線でつながっていくわけですが、このようにた くさんの用途別に面積基準を出しております。  これは当然でして、どういうものが出てくるかによって、非常にたくさん分類分けが 必要なものと、余り分類が必要でないもの、もともと発生量が少ないもの等があるわけ ですので、このような分け方が必要であろうかと思われます。  資料4に戻っていただきまして、東京都条例の中に再利用廃棄物保管場所面積基準が あるということで、これを両方見たんですが、おおむね基準のやり方につきましては妥 当性があろうかと思いました。  同じように、神戸市条例に、やはり廃棄物保管場所面積基準とか、資源化物保管場所 面積基準がございます。  これは、図表にプロットしてみましてわかったことは、まず神戸市の場合は、用途別 になっていない。非常にたくさんいろんな種類が出る用途のものと、非常に量が少ない 、または質量が少ない用途のものが別々になっていないということがあります。  比較的小規模が高めに設定させている点がございまして、そういうふうに考えますと 、全国規模に展開する上では、余り望まくないのかもしれないと考えております。  その下の本文に戻りまして、日本環境管理学会論文とか、日本建築学会論文にいろん な調査がされておりまして、そういうものが出ております。  それにつきましては、一点だけ用意いたしました。これは、参考3の37ページからで すが「ビル内廃棄物の衛生管理問題に関する調査研究」という昨年4月に出されたもの です。これの最後の42ページを見ていただきたいと思います。ここに「表11 衛生管理 上の問題発生の有無によるビルの特性」とあります。これは、問題発生のあったビル群 と、問題発生がなかったビル群を相互比較しまして、数値を調べたものでございます。  その中で下から2行目ですが「最終集積所の延床面積に対する設置面積割合」ですが 、これは面積で0.15%ですと、多くの問題が発生するということが出ておりまして、0.3 8%ですと問題発生がないという群です。これは32棟の平均を出しているわけですけれ ども、少なくともこれぐらいの面積をベースとするような担保が必要なのかなと考えら れます。 資料4に戻りまして、2ページ目ですが、保管場所の設備ですが、当然保管 場所の中には洗浄設備も必要になってこようかと思います。東京都条例には、そういう 記載がございます。  洗浄設備があれば、当然排水設備の設置が必要になりますし、また非常ににおいが強 く出るものもあるわけでございまして、厨房のものもありますので、換気設備の設置等 が必要になろうかと思います。  関係する部分としましては、法と、施行令、施行規則、技術基準のおのおのの該当箇 所を載せておきました。  というようなことで、できるだけ早い時期に清掃について、特に建築物の廃棄物の保 管設備の規定をする必要があるんではないかということでまとめさせていただきました 。  以上でございます。 ○吉澤座長  ありがとうございました。何か先生方、御質問・御意見ございますでしょうか。どう ぞ。 ○中谷委員  今、東京都の方の条例のお話が出たわけですけれども、廃掃法の関連で、ビル管法と は別な視点で、こういった基準が決まっているということではあったわけですけれども 、実はもともと都ではこういったような基準がある中で、ビル管法の範疇の中の指導の 中でも、それの内容を踏まえて、これまで対応してきている経緯もありまして、やはり 今おっしゃいましたように、ビルの中のそういった廃棄物の保管・管理というところを 考えていく中で、やはり場所をどう確保していくかというところをきちんとしていませ んと、実効性がないというようなことがございまして、私自身も今後の方向性としては 、この機会にきちんとこういったものを位置づけていくべきではないかなというふうに 考えております。 ○吉澤座長  ありがとうございました。ほかに何かございますか。 ○田中(正)委員  42ページの表ですが、問題発生ありの5棟と、問題発生なしの32棟で、平均値が出さ れているんですが、値の幅は何か出されていないんでしょうか。 ○石塚委員  この報告書では載っていないんですが、この報告書がまとまる前に幾つかまだ報告書 がありまして、そういうものは少し精査しないとわからないんですけれども、御趣旨の とおり若干幅はあろうかと思います。その幅をある程度まとめて、こういう数字を出さ れていると思います。 ○田中(正)委員  こういった場合、数が少ないと、非常に大きい数と、少ない数とが平均したような数 字になる可能性もあると思って質問しました。  清掃についてなんですけれども、ワックスとか、消毒剤の中には、刺激性の強い揮発 性の有機化合物などが含まれているものもありますので、においに敏感な人とか、過敏 な人からしますと、使用する薬剤についての配慮も必要になってくるんではないかと思 います。直接コミットするかどうかわかりませんが、一つの項目をいろいろな方面から 考えなければいけないんではないかなと思います。 ○吉澤座長  ありがとうございました。何かほかに。 ○相澤委員  今の御意見の追加なんですが、掃除機とかモップや何かは、廊下に置いてあったり、 窓の外に置いてあったりして、非常に衛生的にもよくない。うちの大学なんか特にそう なんですけれども、よく見かけることなので、これはやはりある特定の場所をつくって 保管するとか、そういったことをすべきではないかなと思います。 ○吉澤座長  ありがとうございました。これは、大学でも、私の自宅でもそうですし、やはりいつ も悩んではいますね。確かに何か場所はあってしかるべきだと思います。 ○事務局  汚物と廃棄物の表現の使い分けについて、先生から御指摘のあったところでございま して、廃棄物の問題につきましては、先ほど中谷先生の方からもございましたけれども 、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、いわゆる廃掃法の中で規定がございます。  一般的に汚物と言った場合に、日常用語で使う汚物の使い方と、法令用語としての汚 物の定義が若干異なっているというところもあって、その辺り廃掃法の中の定義、使い 分けを踏まえて、対応していきたいというふうに考えております。  廃棄物の保管設備についても、これもいわゆる廃掃法の観点からいろいろ規定されて いる自治体があるということでございますけれども、建築物における衛生的環境の確保 の観点からも必要があれば、今後考えていきたいと思います。 ○吉澤座長  ありがとうございました。今、御指摘がございました清掃に使う材料だけではなくて 、作業から出てくるいろんな問題というのはあるかもしれないなという感じはするんで すが、それに対して何か。 ○石塚委員  清掃の作業をする方が、いつも24時間作業しているわけではなくて、ある程度作業の 間に休憩するような場所が必要だとか、そういうスペースが必ずしもビルによってはな いとか、そういう問題も中にはあるようです。そうしますと、非常に劣悪なところで作 業をしているということになろうかと思いますので、そういう要員の確保だとか、機材 の確保とか、そういうこともビルをきれいに使っていくというような点で必要なことで はないかと思いますが、そういう基準も必要ではないかと考えます。 ○吉澤座長  今の問題は、何か法律関係ではあったんですか。作業者の問題ですか。 ○事務局  作業者の健康管理という観点からは、労働安全衛生法とか、そちらの観点から作業者 に対する配慮というのはあるかもしれませんけれども、利用者サイドの観点からの衛生 基準と言いましょうか、そういったところについては必要に応じて検討していきたいと いうふうには考えております。 ○吉澤座長  何かほかに御意見・御提案か何かございますでしょうか。 ○眞柄委員  床の洗浄剤もそうですし、一番わかりやすいのがトイレの防臭剤です。浄化槽の観点 から、ああいう衛生薬品あるいは衛生器具も含めて、どういうものがいいかどうかとい うことは、いつも議論にはなるんですが、法律だとか、通知だとかというものではなか なか対応できないので、逆に言えば、エコマークではないんですが、建物、あるいは多 くの人が使う不特定の建物なんかに使ってもいいというような何かわかりやすいマーク みたいな制度を考えていだだくのがいいんではないかなと思います。  実際、トイレの洗浄剤のかなりの部分は、パラジクロロベンゼンが使われていて、水 道の方の監視項目でパラジクロロベンゼンが入っているということで、バラジクロロベ ンゼンそのものの毒性はそれほど高くはないんですが、少なくとも水道の基準の中で注 意しなければならないというものが実は使われているわけです。  そういう意味で、建築物の中で床の洗浄剤も含めて、いろいろ建物の衛生維持、ある いは衛生管理のために使われている物質について、何か規制ではないにしても、こうい うものだったらいいよとか、これだったらそれなりにリスクはあるけれども、建物を維 持するために必要なものだとか、何かそういうことをそろそろ考えていかないと、ある いはそういうものをつくっておられる業界の団体の方で工夫をしていただくとか、何か 工夫が要るんではないかというふうに思います。  それは、そういう化学薬品だけではなくて、最近は防錆用のマグネットや何か、その 機構が十分解明されていないものが出ている。防錆効果があったり、なかったりという 意味ではわからないんですが、少なくとも使っていても健康には影響がないわけですね 。  そういう意味で、少なくとも健康なり環境にリスクをもたらすものではないというこ とぐらいをわかるようにしてもらいたいなというふうに思います。 ○吉澤座長  難しそうですね。本来から言うと、やはり使用する材料とか、薬剤とか、建材もそう ですけれども、どういう材質が入っていて、何が出てくるかということについては、情 報公開をしなければいけないわけです。  実はビル衛生管理法で、炭酸ガスを決めて、それによっていわゆるシックビルディン グを防いだために、欧米のように材料からの発生量に関する情報公開が日本ではすごく 遅れてしまっていると思うんです。それは企業秘密とかいろいろあると思いますけれど も、やはりなるべく早く、中に何があるかということがわかる、今のポジティブには、 眞柄先生がおっしゃったような形のエコマークみたいなものが出てくるといいと思いま すけれども、少し難しいかもしれないけれども。 ○事務局  清掃に使う薬剤の問題、先生方から御指摘ございましたけれども、そういうところは 確かに、これまで余り直接注目されてきたわけではございませんので、余り調査の事例 も多くないかもしれませんけれども、今後調査をやっていきつつ、安全性等についての 普及・啓発も関係団体等を通じて、行っていきたいというふうに考えております。 ○坂上委員  眞柄先生の話に乗っかって、少し議題から外れていると思うんでけれども、実は排水 管の清掃で、機械洗浄と薬剤洗浄と2つあります。  薬剤は、酸性、アルカリ、いろいろ強烈なものが使われるわけです。そうでないと汚 れが落ちないということがあります。  それは、管そのものに損傷・損害を与えるだけではなくて、最終的な排水の水質に大 きな影響を及ぼします。このことは、排水管清掃という中でやはりきちっとチェックす べきです。  しかしながら基準もないし、調査もありません。これは是非、排水管の清掃というと ころでも、これからの重要な検討事項だと思います。 ○吉澤座長  ありがとうございました。 ○相澤委員  労働安全衛生法で職場には産業医がおられるわけです。職場で使用する化学物質につ いては、譲渡・提供者からマテリアル・セーフティー・データシートを必ず取り寄せる こと、事業者は、使用する場所に掲示するということが義務づけられておりまして、清 掃する作業者も勿論どういうものを使っているかを知らなければいけないものですから 、それは現行法でもある程度規定されていると思いますし、建物については、産業医が すべきか、あるいは清掃作業者がすべきかどうか、その辺の解釈が難しいと思うんです が、それをきちっとすれば、今の眞柄先生の問題は解決するんではないかなと思います 。 ○吉澤座長  ありがとうございました。 ○田中(正)委員  確かにそうなんですが、ただ成分の方からいきますと、産業医もそうですし、使用す る人も、ではどうなのかということで、一般的に使う場合にそこまで配慮をしているの かどうかということなんです。  私は、できたら眞柄先生のおっしゃるようなある程度のマーク的なものをやった方が わかりやすいんではないかなと思っているんです。清掃をやっている人は、実際に余り 注意しませんね。 ○相澤委員  成分だけではなくて、有害性についても書くことになっているので、それを実際にや らないといけないわけです。ですから、きちっとやってもらうということが大事ではな いかと思うんですけれども。 ○吉澤座長  よろしゅうございますか。それでは、次の課題にいきたいと思います。  ネズミ・害虫防除に関しまして、田中生男先生から資料が出ていますので、どうぞよ ろしくお願いいたします。 ○田中(生)委員  それでは、私の「特定建築物におけるねずみ・衛生害虫の防除」のところをごらん下 さい。  これまでの検討会でもお話したように、ビル管理法に基づいて有害生物の管理は非常 によく行われるようになったわけですけれども、まだいくつかの課題がありますので、 そのい課題を中心に取り上げてみました。  一つの大きな問題点は、ネズミ・害虫の場合は他の分野よりもさらに季節性とか地域 性が大きいことです。また、同じ一つのビルを取っても、エリアによって発生する場所 、しない場所というのは全く違います。そういう中で、今、定期に統一的に実施しなさ いということになっているわけですけれども、調査は定期的にやる必要がありますが、 防除は定期的である必要はないんです。つまり、調査を定期的にやって、そこで発生し たものについて防除を行えばいいわけです。  次に、対策には、発生源対策と発生対策があります。これは、私も口を酸っぱくして 機会があるたびに言うんですが、なかなか実施してもらえない。つまり、発生源対策と いうのは、発生しないようにすること、発生対策というのは出たものに対してどう処理 するかということです。  ところが今、どうやられているかと言うと、出たから何かをしようという傾向が非常 に強い。確かに発生対策では、やはり薬剤が決め手になるんです。しかし、発生源対策 をやればそれだけで済む場合もあるし、少なくとも50%から80%くらいは発生源対策を きちっとやれば解決します。  つまり、最近の話題で言えば、カラス問題の解決にはごみの収集とか、出す時期を変 えればいなくなるだろうと言っても、なかなかそれができないのと同じように、発生源 対策というのはなかなかやってもらえないということです。  次にこの法律の下で行われる対策で、調査が防除の一貫として組み入れられていない というのが非常に大きな問題だと思うんです。つまり、防除対策をする場合に、何をタ ーゲットにして、どういう場所にやるのかというのは、日常的に調査がしっかりしてい ないとできない。現実にはどう行われているかと言うと、例えばビル管理者などが防除 業者に委託しているわけです。そうすると、まず薬をまいてくれという話になる。薬を まく側からすると、調査をしないといけないけれども、調査はサービスでやれという話 になる。実は、害虫を防除する上で、薬剤をまくというのは、どちらかといえば楽な仕 事で、ちょっと言い方は悪いですけれども、労力もそれほどはかからない。調査の方が はるかに技術も費用もかかるんです。ですから、そこのところをサービスでやってくれ というのは本来おかしいという気がするんです。  資料にあるように、最近「Integrated Pest Management」つまりIPMという考え方 が随分出てきています。これは、もともと農業から出てきた考え方で、天敵を一緒に使 ったり、屋外ですから、周辺の環境に影響が出ないようにしよう、さらには経済的にも 釣り合う方法で、経済被害が出ないようなレベルにまで害虫なり菌類の発生を防ぐ。そ れをうまく調和させてやりましょうという考え方です。  これが、最近ではビル衛生管理上、あるいは都市の衛生害虫対策についても、取り入 れられるようになってきています。ビルの中で考える場合には、衛生的、経済的、社会 的な被害を一定水準に抑えるということになるのでしょう。  一方、この法律は衛生管理法ですが、衛生的な問題だけでいいのかなという気がする んです。虫やネズミは、衛生的か、そうではないかとを分けてくれないからです。  現実には、衛生的な観点で防除をするという考え方は非常に薄くて、例えば繊維製品 が被害を受ける、あるいは調度品がかじられるとか、電機製品の中にゴキブリが潜り込 むとか、高圧配電盤にネズミが接触してショートを起こすとか、そういうことのための 防除意識というのが非常に高い。その辺で、衛生的だけでとらえずに、もう少し広くと らえていかないと、最終的には衛生問題に跳ね返ってくることになるという気がするん です。  次に、農業で言われているように、損害が許容できないレベルになることを避けると いうのは、何だろうかという問題です。このことについては、実は人間の考え方に幅が あり過ぎます。具体的に言えば、屋内に蚊が一匹でもいたら嫌だという人から、ハエは 多少いてもいいではないかという人までいる。そうすると、どうしても維持管理基準の ようなものを設定しなければいけないんです。現在それが設定されていないから、目標 が定まらない。そうすると防除をしても、まだいるではないか、ゼロにしろという要求 になってきてしまう。そのための弊害がすごく大きくなるのではないかなという気がす るんです。  実は、このIPMの考え方というのは、古くからあって、私たちはもちろんですが、 先達たちが、最初から環境整備をきちっとやりなさい、防除は殺虫剤をまくだけではな いですよ、殺虫剤をまいただけでは根本的な解決にもなりませんと言ってきました。そ れはどの本を見ても書いてあるのです。  そういうことが全く実行されないというのが問題なんです。  これには2つ問題があります。1つはユーザーの方がそういうことを志向してきたん です。カラスの問題はさっきお話しましたけれども、例えばビルの厨房で働いている人 にごみを片づけて帰ってくださいと言うと、夜12時まで仕事をして、そんなことできる かと、そのまま帰ってしまう。発生しているものに薬をまいてくれればいいよという志 向をしています。  もう一つは、防除業者側の問題です。防除業者はこれまでのところ発生対策として入 っているわけですから、効率的で、安価で、労働力もかからないような殺虫剤が中心に なります。発生対策には殺虫剤を使わないとうまくいかない害虫もいます。例えばゴキ ブリです。ゴキブリは環境整備だけでは無理だと思います。無理というのは、少なくな るけれども、完全な防除は非常に難しいという意味です。  こうした問題の背景をみてみますと、例えばビルで防除を依頼する人、官庁において もそうかもしれないんですが、費用の積算を何でやるかというと、原価積み上げ方式な んです。どういう薬剤を何缶ぐらい使いますか、それをどこへまきますか、そのために 労力がどのぐらい必要ですかという根拠で費用が算出される。つまり費用が質に対する 代償ではないんです。  本来から言えば、質に対してそういうものを評価しないといけない。例えば調査を行 って、現在10いるものを1にする時、それに対する代償として労力、手間、時間はかか るけれども、環境的には問題はないとか、薬剤を使うので安価、簡単にはできるけれど も、こういう問題もありますということをきちっと示した上で選択させ、それに対する 経費が支払われたり評価が行われるべきではないかという気がします。  そういう中で、よく問題になる薬剤の役割とか安全性について、少し話をさせていた だきます。  実はこの前の委員会で、8月22日の厚生労働省の医薬局長の通達のところで、屋内に 残留した薬剤を除去するというところで質問をしたんですけれども、現実的には、例え ば空間に煙をまくとか、あるいは細かい霧状にしてまいた場合に、壁などに付いている ものを全部除去することは不可能です。食品や食器については、もし付いた場合にはき れいに洗う必要があります。そこで問題になるのは、安全性を正しく評価するというこ とです。どうも殺虫剤というのは、原体レベルの毒性で評価されているような気がする んです。  例えば、現在、屋内で使う殺虫剤として一番毒性が強いのは、多分ジクロルボスだと 思います。DDVPです。アメリカで発がん性が問題になったことがありますが、それ はともかくとして、この薬剤の毒性は、研究者によって幅があるんですが、LD50値、 つまり急性の経口毒性で、その集団の50%を死亡させるのに必要な薬量は、体重1キロ グラム当たり50〜100mgなんです。ここでは低い方の値を取って50とします。  一方、そこで使われる製剤、つまり、最終製品についてみると、油剤では、このジク ロルボスについては、0.3 %製剤です。つまり、0.3 %がDDVPであって、残りは主 剤ではない何かが入っているかもしれませんが、99.7%はおおむね灯油です。言ってみ れば石油です。  ここで、例えばDDVPの毒性が50mgとします。ケロシンには色々なものがあります けれども、毒性は大体10,000mgぐらいだろうと言われていります。10,000mgだと多くの 人は安全だと考えるわけです。つまりDDVPの毒性は灯油の200 倍あるわけです。  ところが、実際には製剤は0.3 %ですから、灯油との成分比は333対1ということに なります。つまり油剤をまくということは、灯油の毒性の方が強い計算になります。こ のようなことをひとつ認識する必要があります。  もう一つは、殺虫剤の許認可に関して、最近の情勢は私は余りよくわからないんです が、製剤に対する毒性評価の基準というのがあって、どの有効成分でも、例えば油剤で は、経口急性のLD5O値で言えば、10ml/kg以上が基準だと思います。毒性はそれより も弱くなければいけない。また、乳剤というのは、水で5倍〜10倍に希釈しますが、こ れだと2ml/kgです。ですから、5倍に希釈すれば10mlになる。これが、強いか弱いか という問題です。私は弱いから使っていいと言っているわけではありません。10mlとい うのはどういう値かと言えば、例えば皆さんよく御存じの塩化ナトリウム、塩です。こ れの同じ値は4,000 なんです。4gです。そうすると、液剤と固形ではそのまま同等に 比較はできないけれども、現在許可になっている薬剤の最終使用濃度の毒性基準は、10m l/kgですから、毒性からみると塩の2.5 分の1でしかないんです。  そういう意味で、食品に付いたものとか、食器についたものはやはり洗う必要がある けれども、ほかのもの、例えば壁などに付いたものを全部除去するのは非常に難しいの で、そこまでは必要ではないのではないかと考えています。私はそういう評価をするべ きではないかなという気がするんです。  私は決して安全だから使っていいと言っているんではなくて、発生対策をもしやるの であれば、殺虫剤でないとどうしようもない場合があるから、決め手としてきちっと使 わないといけない。その場合に、ゴキブリの場合には残留処理みたいなものをやらない と無理なんです。室内に煙霧するような処理の仕方はほとんど効果がないと考えていい んです。  アメリカの研究者が来て議論したときにも、何で日本はゴキブリにそんな方法をやっ ているんだと指摘されました。そのような方法は、飛翔昆虫、つまりハエとか蚊のよう に飛んでいる虫には効果はあるけれども、ゴキブリみたいに隅に潜っている害虫には効 果がないんです。  そうすると、残留処理しなければいけない。その場合に、塩を例に挙げて恐縮なんで すが、塩の2.5 分の1しか毒性がないものが壁に塗ったときに、塩が塗ってあったら、 皆さん多分安心すると思うんです。でも、殺虫剤が塗ってあったら、これで死ぬんでは ないかと思う方が随分おられるんです。  話を元に戻しますが、防除に当たっては、調査を必ずやらなければいけないというよ うに、防除体系の中に組み入れてほしいんです。その場合には、6か月以内に一度とい うような表現ではなく、もっと具体的に期間を狭めてほしいんです。例えば、ゴキブリ は、25℃では、卵からかえった幼虫はほぼ50日で成虫になります。成虫はほぼ1か月で 次の卵を生むわけです。そうすると、2か月もあれば十分に増えるわけです。このよう な状況を考慮すると、最低でも2か月以内に一度ずつ定期的にモニタリングしていかな ければいけない。それが必要なんです。  しかも、その場合に、同定するということが非常に必要になる。これは、かなり知識 を持っていないとできません。  講演などでよくあるのですが、ネズミや虫の種類の話をするとすぐに始まるのは、ア カイエカとかチカイエカなんていう話はどうでもいいから、蚊の防除の話をしてくれと 言う苦情です。これは、非常に困るんです。例えば、アカイエカというのは屋外で発生 しますが屋内で発生しないわけですから、極端に言えば窓に網戸を張れば終わりになる わけです。しかしチカイエカだったら網戸をはっても中にいる成虫を外に逃がさないだ けであって、何の解決にもならない。  そういう意味で、同定というのは非常に重要だと思うのです。そういう観点からする と、調査に重点を置きながら防除を進めていくという考え方が、どうも今の法律の中で は強く打ち出されていないような気がします。  したがって、これまでお話しましたように、1つは防除基準を設定するということで す。 これについては、参考資料を説明させていただきます。参考資料8です。これは 一般家庭を対象にしたもので、以前厚生省の委託として私どもでお引き受けしたもので すが、ねずみ・衛生害虫駆除に係る環境の維持管理基準設定に関する調査研究報告書の 1ページ目のところにあるように、許容限度を設定しました。その背景は書いてありま すので後でご覧下さい。  その後の資料に「ねずみ・衛生害虫発生予察表利用の奨め」というのがあります。農 業では従来から発生予察をやっておりますけれども、衛生害虫では非常に難しい。しか し、これを作った目的は、発生を予測して対策を早めにという意図で作られたものです 。これについても後で読んでいただければと思いますが、このようなものでビルでも適 用できるようなものを一つつくればいいのかなと思います。  次に日本ペストコントロール協会で作成した、ネズミ・害虫等の調査と防除基準とい うのがあります。これは、実際に防除業者が、ビルの中で害虫防除を管理していく上で 、どういう調査をすればいいのか、防除基準はどこに置けばいいのかということを設定 したものです。これも私がペストコントロール協会から委員長を仰せつかって、とりま とめたものですけれども、やはりこういうものをつくり積極的に使用しなければ、いつ までたっても今起きているような問題は解決しないという気がします。  繰り返しますけれども、防除基準の設定、科学的調査の義務づけ、発生源対策を中心 に行い、発生したものについては、殺虫剤も含めて適切な対策を取ることが必要ではな いかなという気がします。 ○吉澤座長  ありがとうございました。大変明解に御説明いただいたんですが、何か先生方から御 意見・御質問ございますでしょうか。 ○相澤委員  駆除をする薬物というのは、かなり有害性があるので、なるべくそれは使わないで、 発生源対策等、調査をするというのは大変結構な御意見だったと思います。  調査の基準なんですけれども、例えば44ページのダニというのがありますけれども、 ダニは喘息の原因になるので、そういったアレルゲンとしての影響がかなり強いわけで すが、この値以下であれば、そういったことも起きないということなんでしょうか。 ○田中(生)委員  実は、これを作成した時点ではアレルギー疾患の患者とか、あるいはいわゆる弱者と いうのは、また別途に考えなければいけないという扱いにしています。  例えば、ダニについては、WHOが室内塵中の感作が起こるレベルや発症するレベル について一つの基準を出していますが、そういうものを盛り込んでいかなければいけな いだろうと思います。  薬剤でも同じで、健常人で起きないことが、弱者では起きる可能性があるわけです。 それはまた別に考慮しなければいけないと思います。 ○相澤委員  それ以外にも、例えばカビなんかもそういった意味では喘息や何かの原因になるんで すけれども、これは害虫とは言えないので、どこに入るのかわからないんですけれども 。 ○田中(生)委員  そうですね。私もカビはよくわからないんですが、例えば床のクリーニングというと きに、前に質問したことがあるのですが、見た目はきれいになるけれども、それでは菌 類はどれだけ取れるんですかと聞いたら、だれもわからなかったんです。だから、これ からはそういう問題も基準をつくっていかなければいけないのではないかなという気が します。 ○吉澤座長  ありがとうございました。何かほかにございますか。 ○事務局  建築物衛生の中で、ネズミ・害虫等の防除をやる理由と言いましょうか、防除の対象 としている動物は何かという場合に、昭和56年の通知の中で、ネズミ及びゴキブリ、ハ エ、蚊、ノミ、シラミ、ダニ等の、いわゆる衛生害虫のように病原微生物を媒介する動 物が対象になると謳っています。  防除の対象となるのは、病原微生物の媒介動物だというふうな定義だったんですけれ ども、これは当時20年〜30年前という段階であれば、一般的な衛生管理の考え方だった かと思うんですけれども、今、指摘があったように、アレルギーの問題とか、そういっ たところ、あるいはそれ以外の問題も含めて、防除の対象というのを、どのように設定 していくべきかというのは、再度また議論が必要なのかなというふうに思います。いず れにせよ、従来の病原微生物対策だけではなく、アレルギー疾患対策という観点を、や はり打ち出していく必要がありますね。 ○田中(生)委員  要するに、ベクター、つまり疾病の媒介者については、どうしても防除しなければい けないですね。  アレルギーについては、先ほどお話したように、WHOの基準レベルにまで抑えるこ とが必要です。  やっかいな問題は、不快という問題なんです。昭和58・59年に厚生科学研究で衛生動 物をどう考えるかという整理をしたことがあります。その中で、衛生動物を媒介動物、 有害動物、不快動物というのに分けて、すべてを屋内で防除対象にしましょうという考 え方を出したわけですけれども、虫好きな人間はムカデだっていたっていいよと思いま すが、嫌いな人にとっては蚊一匹でも嫌なわけで、外に出るのにエアゾール剤を持ち歩 くこともある。だから、その辺が非常に難しい。そうなるとやはり維持管理基準を決め て、ある程度までだったら許容してもらうという方向にしていかないと、安全面でも問 題が起こりかねないと思います。  とにかくゼロにするということだけを目指すと、それは環境破壊にもなりかねないし 、問題が多くなるというのが私の考え方です。 ○吉澤座長  ありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。 ○田中(正)委員  季節と地域というのは、本当なんですね。農業などをやっているところで、ある程度 先生のおっしゃっているように寛容にならないと困るわけですね。農薬のまき過ぎにな るというようなことがありまして、そういう点から考えますと、私はもう少し自然と融 和したようなものにしていかないといけないと思うんです。 ○田中(生)委員  それは、具体的に言うと、殺虫剤をまかない方がいいという意味ですか。まかないで 済むのなら、私もそれにこしたことはないと思いますが、ゴキブリなどの問題は、どう しても解決しないんです。 ○田中(正)委員  先生のおっしゃったような場合もあるから、ある程度の上限は決めてということです 。 ○田中(生)委員  そうです。ゴキブリの場合は、今ものすごく増えているんです。それはどうしてかと いうと、1つはインテリジュントビルというように、色々な機械を入れているから、放 熱する部分がたくさんあって、温度が高くなっていること、もう一つは、流通機構が非 常に発達しているということが考えられます。  さらに少し問題があるのは、殺虫剤を毒性が低いものへと志向をしてきたので、結果 的に十分に有効な殺虫剤が少なくなってしまったということです。  例えば有機リン剤というと、みんなサリンを思い出すから困るんですけれども、今、 使われているフェニトロチオンですと、LD50値が1,000〜1,500mg/Kgぐらいなんです 。それほど強くはない。それでも、やはり危ないからといってピレスロイドが多く使わ れます。ピレスロイドというのは蚊取り線香などに入っている成分ですけれども、これ だと、大体塩並の毒性です。しかし、効力的には少し落ちるといってよいでしょう。  そういう意味で、私は殺虫剤使用の勧めをやっているんではなくて、やはり適性にき ちっと使っていかないと、快適なビル環境というのは保てないんではないかなというふ うに考えています。 ○眞柄委員  私は、ほかの役所で農薬の登録保留の審査に関係しているんですが、農薬の場合には 、フェニトロチオンにしても、ジクロルボスにしても、それなりに審査をして、それを 使うときには、どういう作物に10アール辺り何グラム使うというところまで農薬は規制 がかかっているんです。  それと同じように、ビルや何かで使う殺虫剤について、この殺虫剤は床1平米か、あ るいは空間1立米かどうかは知りませんけれども、それ当たり何グラムまで使いなさい とか、そういう規制というのはあるんですか。 ○田中(生)委員  あります。例えば、残留処理する場合には、1平米当たり50mlを基準にしています。 空間にまく場合も同じように基準があります。  もう一つ縛りがあるのは、さっきお話したように、製剤として許可になる場合の基準 として、例えば油剤だったらLD50値が経口急性で10ml/kg というふうに決められてい ますから、原体毒性が幾ら強くても、そこで縛りがかかります。 ○坂上委員  そういうケミカルな薬剤を使う方法だけではなくて、メカニカルな話もありますね。 ○田中(生)委員  メカニカルな方法を一つやっている典型的な例は、クマネズミだと思います。これは 抵抗性、耐性ですが、薬剤が効かなくなっている。それで、仕方なく粘着剤を並べてい るんですが、一つの例を挙げますと、デパートで1年間粘着シートを並べて防除をやる 。そうすると、毎月同じぐらいの数だけ取れるんです。300なら300だけ取れるんです。 ということは間引きしているというようなものです。間引きすると条件がよくなるから また増えるということの繰り返しになってしまう。ユーザー側としては、目に見えて取 れるから安心するわけですけれども、本当の防除にはなっていない。  もう一つ、ゴキブリ用の粘着剤はどうかというと、モニタリングするには非常にいい んですけれども、防除の手段としては今ひとつです。  1軒の家で、1匹か2匹いるのを粘着剤でつかまえるのは効果的ですが、例えばビル の厨房などでたくさんいるときに、そこへ粘着剤をかけて、それでゴキブリがいなくな るかといったら、首をかしげます。 ○吉澤座長  ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。  もしございませんでしたら、一応時間の都合もございますものですから、次の議題に いきたいと思います。  次は、その他でございますが、何かその他の議題がございますでしょうか。 ○事務局  特に事務局としては、その他はございませんけれども。 ○吉澤座長  それでは、今日は御議論をいだたきましてありがとうございました。  本日議論された意見を事務局の方でまとめまして、次回に出していただきたいと思っ ています。各委員におかれましても、是非とも御検討の継続をお願いしたいと思います 。  それでは、今後のスケジュールを教えてくれませんか。 ○事務局  先ほど、吉澤先生から御指摘がございましたとおり、事務局で今回の議論の内容を整 理いたしまして、次回の検討会で先生方の御意見をお伺いしたいというふうに考えてお ります。  次回の予定でございますけれども、一度日程調整させていただきましたが、再度調整 をさせていただきたいと思っております。後ほどまた日程表をお配りいたしますので、 御記入の上事務局に提出いただければと考えております。  次回は、先ほど申し上げたとおり、これまでの議論をまとめて、たたき台としてのペ ーパーを提示したいと考えております。資料作成の過程で、先生方には個別に御相談さ せていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○吉澤座長  よろしゅうございますか。  本日は、長時間にわたり御議論いただきましてありがとうございました。今後ともど うぞよろしくお願いいたします。 【照会先】 厚生労働省健康局生活衛生課 林(2434)、小林(2432)