社団法人全国老人保健施設協会
はじめに、
介護老人保健施設は、
「利用者の自立した生活を営むことを支援し、家庭復帰をめざします。
また、施設は明るい雰囲気を持ち、地域や家庭との結びつきをめざします。」
をその運営の理念として掲げ、
4つの役割と機能、つまり、
介護保険制度開始の基本理念と我々介護老人保健施設が創設以来基本的な運営の柱としてきたその理念、役割・機能は同じである。介護保険制度開始後も、最も介護保険制度に近い施設として運営した実績を基本に、在宅と施設両方に軸足を置いた唯一の施設として、介護保険開始後、全体的に施設へのニーズが高まる中、あくまでも介護保険の理念である在宅重視をその運営の中心におき、介護保険の中心的施設としてゆるぎなき運営を行っている。
さて、我々は介護保険制度開始直前、数回にわたり、当時の老人保健福祉局長に対し制度開始後予想される問題点について改善方の要望を行った。その後、実際に介護保険制度に移行し運営した現状ではそのいくつかは現実の問題点として現れている。今回の介護報酬の改定に当たっては、そのような問題点について、介護保険制度の基本的視点から再度検討を行うとともに、介護老人保健施設の理念、役割と機能を評価した介護報酬になることが望まれる。
1)老健の理念、役割・機能のあり方から見た今後のサービスの方向性について
施設サービス:
2)介護保険制度施行後運営の実態としてその理念から乖離するものとして次のような課題が浮かび上がっている。
課題(1)「施設入所者の長期化、在宅復帰率の低下」
今もなお、退所者の40%以上が在宅に復帰しているという実績はあるが、我々の制度開始後の実態調査においても、現実に、介護保険制度開始後入所が長期化し、在宅復帰率が低下しているのは事実である。その長期化、在宅復帰率の低下の原因究明のために行った当協会加盟施設における入所期間が1年を越える利用者の在宅復帰を阻害している要因についてのアンケート調査によれば、その要因について
課題(2)「短期入所利用に関する課題」
短期入所療養介護においては、療養病床、介護老人保健施設の有する病床の範囲でより効率的に利用できるようになったことや、介護保険開始後一時減少傾向にあった利用量も総体として回復傾向にあることは評価するが、実際の利用にあたって、要支援や要介護度の低いグループに於いて、介護報酬と限度額の関係から、介護負担の軽減や緊急的な利用がしづらいという在宅ケア支援の面からの課題が現場にある。また、短期的な施設サービスではないかという利用者の現場の感覚との制度の乖離などが指摘される。
課題(3)「通所サービスにおける通所リハの専門性の確立」
更に現場では通所サービスにおける通所リハビリテーションの専門性が不明瞭という指摘があり、通所サービスにおける通所リハの専門性の確立が求められる。具体的には個別リハビリの導入や在宅の現場での訪問リハビリの一体的提供の検討が必要である。
課題(4)「施設で提供すべき医療の整理」
昭和63年老人保健施設の創設以来、施設における医療の内容は基本的に変わっておらず、急速に進歩した医療の実態や国民の医療に対する一般的な期待から乖離しており現場で多くの矛盾を抱えて運用されている。施設で提供すべき医療の範囲を明確にし、医療保険との整合性の検討や介護報酬上の整理が必要である。
3)最後に、今後の改善の方向性について
社団法人全国老人保健施設協会
総論的には、療養病床からの転換であろうが、新規開設等であろうが、老人保健施設が国民から期待されている役割、機能を十分理解し、その運営の理念に賛同して開設されることがきわめて重要であると考える。
ただ今回の特例転換型老人保健施設おいては、あくまでも施設基準等で一定期間の特例を認めるものであり、質の確保の観点から以下の項目について確認と要望を行っておきたい。