02/01/23 第4回社会保障審議会介護給付費分科会議事録         社会保障審議会 第4回介護給付費分科会議事録 1 日時及び場所   平成14年1月23日(水) 14時から16時   霞ガ関東京會舘ゴールドスタールーム 2 出席委員   西尾、井形、青柳、喜多、木下、木村、京極、見坊、笹森、下村、田中(滋)、   田中(雅)、中村、橋本、樋口、堀江、村上、矢野、山口、山崎、   山本の各委員、新井参考人   岡委員、澄田委員は欠席 3 議題   (1)介護報酬について(介護療養型医療施設、訪問看護、訪問リハビリテー      ション、居宅療養管理指導)   (2)その他(介護報酬に関する事業者団体ヒアリング及び意見公募の実施につい      て、介護事業経営実態調査の実施について) ○ 資料1に沿って、介護療養型医療施設、訪問看護、訪問リハビリテーション、  居宅療養管理指導の報酬体系を考える視点等について、福本企画官より説明。 ○ 「介護療養型医療施設の現状と課題」について、木下委員より説明。 (青柳委員)  資料1の10ページの「介護療養型医療施設の指定について(意向調査)」のような きめの細かい調査が政策判断の上で必要だが、時期的には少し遅いと言わざるを得ない 。  意向調査の結果で介護保険に対する先行き不安や様子見が多いということは、医療提 供側にとって国の政策の首尾一貫性がなかったということ。  木下委員から要望があった看護職員3:1の人員配置については、経過措置を外さな いといろいろ問題も起こってくるので、木下委員の意見を支持する。  施設での介護事故の発生状況や身体拘束に関係する苦情・クレームについて、データ があれば次回にでも出していただきたい。必要と思うので、なければ調査を実施してほ しい。  おむつ代は経営的にはマイナーではなく、「おむつ代の評価に係る問題点」に計算を 載せているが、おむつ代で大幅な赤字が出ている。包括から外して個人対応として、適 切なコストを反映すべき。診療報酬改定でも、おむつ代を包括化するような改定はされ ないはずなので、医療と介護の整合性の観点も必要。 (橋本委員)  おむつ代は利用者にとっても本当にマイナーではなく、お年寄りの立場からすると受 け入れがたい。東京のある地域では介護療養型の自己負担が月20万円を超えるところ もあって、標準的な厚生年金の人では払えないが、おむつ代を包括から外すと、家族に 対する過重な負担に拍車をかけることになる。  介護保険が始まって間もなくの新聞の投書欄に、おむつ代が包括化されたことによっ て、なるべくおむつ代を使わないように努力するようになり、おむつ外しが進んだと老 健施設の介護職の方が書いていたが、これは大変結構なことであり、逆行することはや めたい。 (中村委員)  次の改定では利用者本位・利用者に分かりやすいことが必要。医療療養型より介護療 養型へ医療ニーズの高い人が入院している実態が多くあり、医療・介護ニーズに応じて の入所がなされていない。また、介護療養型は保険料額に大きく影響する。一度医療療 養型と介護療養型の機能の整理整頓が必要。医療的管理が必要な長期療養患者は医療保 険に収斂していくべき。  おむつ代や人員配置については、3施設の整合性を踏まえて議論すべき。 (山本委員)  療養病床は医療であって介護ではないから、介護保険からは外すべき。療養病床に入 院している患者は、治療のために入院したのであって、初めから介護を受けるために入 院した人はいないので、入院治療の必要がなくなれば、家に帰るか介護施設に入所する かどちらかにすることが本来の姿である。医療改革にあわせて介護も一斉に改革すべき であり、医療と介護が同居してはならない。  医療と介護の人員配置は当然違っているべきだが、介護施設より療養型の方が介護職 員の配置が多いのは適切ではなく、見直しが必要。人員配置を間違えると、人件費が半 分以上になってしまうこともある。それではいけない。  おむつが必要な人が介護を受けるのは当然であり、給付の一部としておむつ代をみる のも当然。おむつ代を包括から外すとすれば、一体どういう人が介護の対象になるかを 考え直す必要がある。一人一人が自覚してなるべく迷惑をかけないようにしようとして いるのだから、包括範囲内で継続することが必要。  医療と介護の療養型を比べると、介護の方が報酬が高いケースがあるが、老人医療に ついてかなり厳しく見直されるようであるから、療養病床を介護から外した上で、介護 費用についても見直すべき。 (矢野委員)  手厚い人員配置は保険財政負担や保険料負担の増大につながるため、慎重に対応すべ き。経過措置は法令通り平成15年3月をもって終了とし、その後の状況を見ながら、 必要があれば改めて検討すれば良い。  資料1の8ページには介護療養病床の入院患者の多くが福祉施設や在宅で対応できる というデータが載っており、社会的入院は依然として解消されていない。医療の必要性 の比較的低い入院患者への対応については、医療療養病床から介護療養病床や転換特例 適用型老健施設への移行を促進して、基盤整備に積極的に取り組むべき。中医協では6 か月を超える長期入院患者の入院基本料の特定療養費化が検討されているが、あわせて 医療と介護の役割を明確化することによって社会的入院の解消を図るべきであり、安易 な介護報酬の引き上げによってその解決を図るべきではない。 (井形委員)  医療が手放した人を福祉が受けるというシステムは利用者にとって不幸であり、医療 と介護の接点である療養病床、老健、そして特養と上手く移行することが望ましい。  どういう状態の人がどういうタイプの施設に入るかを整理・明記し、それぞれの人が 必要な施設に入るようにすべき。  高齢者の医療保険と介護保険の一体化は、利用者の立場からすると非常にリーズナブ ル。  介護から見た批判と医療から見た批判を上手く融和させることが我々の知恵。 (山口委員)  医療療養型と介護療養型は確かに混在しており、整合性を図ることが必要。  利用者の状態像によって居場所が決まるのがリーズナブルであるが、現在は全国的に はサービスが揃っていないので、状態像に応じた適切なサービスを提供することは難し く、結果として混在型になっている。医療と介護についてもう一度根幹から議論し直す 必要がある。状態像が余り変わらないのに、介護療養型に移ると一部負担等が違うとい うのは、利用者の理解を得にくい。  人員配置基準はケアの質の担保の意味では、できるだけ配慮すべきであるが、療養型 だけでなく他の施設との整合性も考えて議論すべき。 (喜多委員)  住民の立場から見ると、介護療養型と医療療養型の違いは一番分かりづらい。  当初から市長会は、生まれてから死ぬまで1枚の保険証でやるべきと主張しているが 、それが一番分かりやすい。制度を分断するから分かりにくい議論が出てくる。  医療と介護の境界については、分離した方がリーズナブルというお金の問題もあるが 、それよりも、明快に説明できて誰もがよく理解できることが必要。 (青柳委員)  金銭的インセンティブからおむつ外しに取り組むのは本来のやり方ではなく、ケアの 提供側はその方にとってベストのケアを目指すべき。また、おむつ代を包括化すると、 おむつを使っていない方からも毎月8,600円を徴収することになるが、これを当然と考え るのか。説明したときに納得してもらえるのか、考えなければいけない。  カナダのオタワで、1階が外来・デイケア、2階がホスピス、3階が老健施設、4階 が療養病床という機能をもつ複合老人施設を見学してきた。このようなバランスのとれ た施設があれば、利用者の状態像に沿った形で上手く区分けができると思うが、現在は 、バランスよくサービスが整備されている地域は極めて少ない。  医療のない介護はないというのが基本的な考え方。看護サービスや専門的なリハビリ が医療ではないとは言えないように、医療と介護に大きな境目ができるという考え方が そもそもおかしい。 (下村委員)  介護保険ができたときには、かなりの療養病床を介護保険に転換しようとしたが、そ れを抑制したために社会的入院が解消されずにいるので、まずは抑制策を緩和し、少な くとも当初予定していたベッド数まで転換を速やかに行うべき。  医療保険の長期入院患者の特定療養費化にあわせて、介護施設への転換を抑制してい る枠を緩和して、介護の方で円滑に受け入れる措置が必要。  要介護の方で医療が必要ないという方は全くいないので、一定の範囲の医療は介護保 険から介護サービスと一体的に給付するというのが現在の制度の考え方。医療の必要度 、医療内容・種類による医療保険と介護保険の区分の基準は一応存在しており、今の考 え方を基本に関係を整理していくべき。  物価、人件費が下がっている現在の経済情勢で、保険料引き上げはほとんど不可能で あり、保険財政に多少の余裕があれば一定の拡充の余地はあるかもしれないが、給付の 引き上げは難しい。  医療療養型にも介護療養型にも退院できる人がかなり入っているわけだから、在宅サ ービスだけでずっとやっていけるとは思わないが、まずは在宅サービスの充実に重点を 置くべき。 (樋口委員)  医療と介護の切り分けが曖昧なままスタートした。高齢者であれば誰でも必ず医療的 ケアが必要であるが、だからといって医療保険と介護保険が一緒でいいかというと、と んでもないと言わざるを得ない。介護保険は、高齢者の生活者としての自立を支援する システムであり、その原点を絶対に忘れないようにしてほしい。  利用者に分かりやすいことが大事で、どういう状態なら、どの施設に入って、どうい うケアをして、それには費用がいくらかかるか、保険外負担や家族の手のかかり具合は どうか、などを各施設または行政が示すべき。 ○ 「訪問看護ステーションの基準を緩和し、訪問看護の充実を」について、  山崎委員より説明。 (京極委員)  介護保険スタート時には詰めが足りなかったので、今回の見直しでは訪問看護に係る 要望はなるべく実現した方がいい。  介護保険における訪問看護が進むと、全体としては社会的入院を減らす大きな誘因と なるので基本的に賛成だが、医療保険の方が利用者負担が軽く、介護保険で使うと負担 が厳しくなるので、この辺りは詰めが必要。  おむつは基本的な介護そのものであり、一種の福祉用具であるので、在宅においても 本来は福祉用具サービスの一つとして支給限度額の中で給付すれば、施設や病院に入ら なくてすむ方も出てくるはずで、利用者にとって非常にプラスではないか。 (笹森委員)  訪問看護は身体面のみというイメージが強く、家族の会でも利用は少ないが、訪問看 護に含まれる痴呆の方の在宅ケアの助言指導の役割は非常に大きい。これから新しく痴 呆の方の介護に関わる方にとって、どこに相談していいか分からないという悩みは非常 に大きいので、在宅における痴呆ケアの助言指導を介護保険の在宅サービスの加算の対 象としてもっと位置づけてほしい。 (田中(滋)委員)  在宅における医療事故については、今のところ、利用者の方がおとなしいためか、事 実上ヘルパーが医療行為を行っていてもあまり問題となっていないが、早めに手を打つ べきであり、在宅における医療管理や訪問看護を充実させることが必要。  訪問看護について一人一法人の基準該当サービスを認める方向は、質の管理の観点か らしても難しいので、サテライトと本部の関係について運営上やや緩やかなものを認め 、ネットワーク化を図ることが必要。  利用料の差でサービスを選ぶことはできるだけ防ぎたいので、医療保険と介護保険の 訪問看護の利用料についてもきちんと整理しなければならない。 (田中(雅)委員)  訪問介護サービスの中でヘルパーが一番悩むのが、家族からの要望もある軽い褥瘡の 手当等の医療行為であるが、訪問看護ステーションが身近にないことが問題。基準該当 サービスがいいのか、サテライト型が増えるべきなのかという議論もあるが、いずれに しても利用者の医療ニーズに量的に対応できるように早急に改善していただきたい。 (山口委員)  在宅シフトが進まず施設に利用者が集中しているのは、在宅ケアの受け皿の基盤整備 が不十分であるため。例えば、訪問看護における痴呆対応がもう少し必要。訪問リハの 活用や、住宅改修や福祉用具の支給限度額の拡充により、身体障害を重度化させないよ うにする介護予防の発想を在宅ケアの中に入れ込むことも必要。訪問介護という福祉サ ービスと訪問看護・訪問リハという医療サービスの連携をとることによって、効率的に サービスを提供できるのではないか。  グループホーム、ケアハウス、生活支援ハウスなどのケア付き住宅がまだ非常に少な いが、老健施設などではこういったケア付き住宅をもっているかどうかで在宅に帰れる かが決まる場合もあるので、なお一層の政策誘導をお願いしたい。 (堀江委員)  保険者の財政状況を踏まえ、各サービスの望ましい運営の実態をしっかりとみるべき 。例えば、訪問看護ステーションが全然ない町村が約6割とのことであるが、その要因 が基準上の制約であれば、介護保険制度の望ましい運営と乖離するので、実態に即して 見直すべき。資料1の8ページの介護療養型医療施設の入院患者の実態のデータについ ても、あれだけのサンプル数で判断できるのか。もっと全体的な実態把握が必要であり 、その上で望ましいものであれば、要介護度別の入院基準なども行うべき。  おむつは介護そのものかもしれないが、要介護度に応じておむつの使用ニーズは違う はずであり、もっと的確に実情を把握すべき。医療保険ではおむつは完全に自己負担で あるが、介護保険ではなぜ給付費の中に算入するのか、理論的な整合性がないのではな いか。理論的な観点をもっと議論できるようなデータが必要。  給付費を上げるべきとの議論が多いが、そういう面では、介護事業経営実態調査の方 法論を充実させていただきたい。 ○ 「平成13年度 介護保険への医師の関与度実態調査」について、青柳委員より  説明。 (青柳委員)  ケアマネジメントの質に問題があるという指摘については、報酬が安い等の問題も一 部にはあるが、それだけでは全て説明できない。厚生労働省はハード面での調査以外の 機能面に着目した調査は十分していない。ケアマネジメントに関しても、ケアカンファ レンスの開催日数だけではなく、連携の仕組みを調査していただかないと、質の向上を 目指すという本分科会の役割は果たせない。 (見坊委員)  おむつ、排泄、身体拘束の問題は、要介護者の人格や生きがいに関わる重要な問題で あり、おむつ代という費用の問題とは別に議論していただきたい。  在宅における医療と介護を利用者が選択・活用しながら自立するためには、訪問看護 や訪問医療にもっと全力を挙げていただきたい。 (橋本委員)  1日780円の食事の利用者負担額がまかない材料費であると理解されており、例えば東 京の特養では、従来は1日900円〜950円のまかない材料費が含まれていたのを、一斉に7 80円に下げ始めたと聞いている。特養以外の介護保険施設でも同様に食事が悪くなって いるが、780円はまかない材料費のことなのか、確認させていただきたい。 (貝谷課長)  780円は、低所得者の方を除いて、全国の状況から見て標準的に負担していただく額と して設定したものであり、それで全てをまかなわなければいけないという規制をかけた ものではない。 (橋本委員)  必ずしもまかない材料費は780円の範囲内でと言っているわけではない、ということを 議事録に残してほしい。 (堤局長)  医療保険でも同じ取扱であり、全国的な食材料費の平均をベースに780円を設定してい るが、それぞれの施設がその範囲内でしか食材料費を使ってはいけないという規制をし ているわけではない。 (木下委員)  医療と介護を明確に分けることはできず、医療の必要度の比重の問題である。要介護 度が低い方は在宅でも生活しやすいので、介護療養型医療施設には、要介護度が高く、 より医療度の高い方が入るというスタンスを今後も続けていきたい。 ○ 資料2、3に沿って、介護報酬に関する事業者団体ヒアリング及び意見公募の実  施、平成14年介護事業経営実態調査(案)の概要について、福本企画官より説明。 (西尾分科会長)  資料2の事業者団体ヒアリングについて、ヒアリングを行う事業者団体は分科会長が 選定することとされているが、委員の皆様が是非ヒアリングした方がいいという分野、 事業団体等あれば参考にしたいので、ご意見をいただきたい。 (京極委員)  ヒアリング団体の選定について、社会福祉法人の中でも大規模法人とそうでないとこ ろ、生協、農協など幅広く選定する場合でも、なるべく類型的に整理していただきたい 。  実質的に施設の役割をしている怪しげな宅老所等についても工夫して調査してほしい 。 (青柳委員)  第2ラウンドの議論の優先順位を今から考えておいていただきたい。  中医協の実態調査は実際の診療報酬改定に直接影響したことがあまりないので、今回 の経営実態調査は介護報酬に反映できるようにお願いしたい。 (西尾分科会長)  事業者団体ヒアリングは原案通り実施するということでよろしいか。 (各委員)  異議なし。 (外口老人保健課長)  第5回は、2月13日(水)の10時からで、議題は、介護報酬の各論として、介護 老人保健施設、短期入所生活介護、短期入所療養介護、その他を予定している。  今後の予定としては、3月の第6回では、グループホーム、福祉用具、住宅改修、特 定施設入所者生活介護を予定している。  事業者団体ヒアリングについては、4月に2回に分けて実施することを考えており、 ヒアリングと意見公募の具体的な要領を数日中にホームページ等を通じて公表する。 (西尾分科会長)  本日はこれをもって閉会とする。 照会先 老健局 老人保健課 企画法令係     TEL 03(5253)1111 内3948