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訪問看護ステーションの基準を緩和し、訪問看護の充実を

2002年1月23日 社会保障審議会介護給付費分科会委員 山崎摩耶

「在宅重視」を全面展開に

 介護保険法では、「居宅において能力に応じた自立した生活を行える」よう支援することが、保険給付におけるもっとも重要な考えのひとつとされている。すなわち在宅サービス重視の考え方である。
 しかし、保険給付の実態をみると、約3分の2が施設サービスへの給付であり、制度スタート時点としてはこの理念は達成し切れなかったといえよう。 2003年の介護給付費および関連制度の改定においては、介護保険法理念の達成のために、在宅サービスが量的にも質的にも適切に給付されるようにすることが最も重要な課題である。

○ 実際には、理念に反し施設サービスへの給付が多い

在宅サービス施設サービス
1,209億円
(37.0%)
2,056億円
(63.0%)
*2001年3月〜5月の1ヶ月平均
*2001年10月22日社会保障審議会介護保険給付費部会資料より

訪問看護はますます必要になる

 高齢者の特性を考えるとき、生活支援と医療を適切に組み合わせながら、サービス給付を行うことが重要である。訪問看護サービスは、この特性をもち、医療と介護を担うものであり、要介護者の保険給付に不可欠と考える。
 一方、病院での在院日数が短縮していく中で、医療ニーズをもったまま居宅で過ごす者の数も増えていくと考えられる。医療経済研究機構の調査でも療養型病床群に入院中の患者の約半数は在宅で対応できるという。今後ますます訪問看護の必要性は高まる。

○ 訪問看護の利用者は要介護度が高い傾向にある

 要支援要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5
訪問看護3.2%16.5%18.8%15.2%18.9%27.4%
訪問介護17.4%36.4%17.9%10.3%8.8%9.2%
*訪問看護は、2001年6月実施 日本看護協会「介護保険事業所の事業進捗状況等についての調査」より n=80,495人
*訪問介護は2001年11月5日社会保障審議会介護保険給付費部会資料より

訪問看護の規制を緩和し量的整備を

 訪問看護の給付は、介護保険開始後あまり増加していない。その理由は、訪問看護サービス提供の8割以上を占める「訪問看護ステーション」の開設が進まないからである。全国の市町村の約半数で訪問看護ステーションがなく、地域偏在も大きいという状況は、介護保険施行前とあまり変わっていない。
 訪問看護をめざす看護職は非常に多いにもかかわらず、訪問看護ステーションの開設がすすまない理由は、「指定基準」の高さにあると考えられる。そこで制度施行前に検討課題として残されている以下の点を今回で解決すべきである。

(1) 訪問看護ステーションの指定基準における人員配置基準である常勤換算2.5人の規制を緩和し、1人とすべきである。

(2) 基準該当を認め、法人格がなくても訪問看護事業所を開設できるようにするべきである。

○ 訪問看護費の給付実績は伸びていない

説明図

*2001年10月22日社会保障審議会介護保険給付費部会資料より

きめ細やかな介護給付の要件設定を

 利用者の医療・介護ニーズを満たし介護予防に資するため、よりきめ細やかな訪問看護サービスを行うためには、介護給付費の訪問看護に関連するいくつかの要件を見直す必要がある。具体的には次の事項である。

1) 厚生労働大臣が定める疾病等の見直し
 医療処置などのニーズがあり頻回な訪問看護を必要とする対象者として、インシュリン注射を要するが自己注射のできない者、重度のじょくそうがある者、頻回な喀痰・吸引が必要な者、胃管・腸管の管理を必要とする者などを加えることで、これら利用者へより多くの訪問看護サービスを提供できる環境が整う。

2) 30分未満の訪問看護療養費の見直し
 医療処置を中心に行いながら多くの患者を巡回する短時間の訪問看護は、交通費などの費用がかかる割に単位の設定が低いため、あまり普及していない。30分未満の訪問看護療養費の単位をあげることで巡回型の訪問看護が今より普及する。

3) 退院前・退院時の訪問看護
 医療機器の利用等が病院から在宅へとスムースに移行できるよう、入院・入所中の医療機器を使用している利用者に訪問する場合の点数を設けることで、退院当日から心配のない在宅生活を送ることができる。
 また、退院・退所日の訪問看護を算定対象にすることで同様の効果が得られる。

4) ターミナル加算
 前月からの訪問が必要との要件を廃止することで、在宅で看取られるために退院した者などの短期間の利用がすすむ。

5) グループホームへの訪問
 看護職のいないグループホームに訪問看護を行った場合、介護給付費からの算定ができないが、これをできるようにすることで、グループホームにも負担の無理なく、利用者にも心配なく訪問看護をうけることができるようになる。


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