01/12/18 第7回医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会         第7回医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会                   日時 平成13年12月18日(火)                      10:30〜                   場所 厚生労働省本館17階専用第21会議室 ○医事課長  それでは定刻になりましたので、ただいまから医道審議会医師分科会医師臨床研修検 討部会を開会させていただきます。部会委員の皆様方におかれましては、お忙しい中を ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。初めに、本日の委員の出席状況を 報告させていただきます。本日は相川委員からご欠席の連絡がございました。また、本 日も文部科学省から、高等教育局医学教育課の村田課長が出席をしております。どうぞ よろしくお願い申し上げます。それでは、矢崎部会長、よろしくお願いします。 ○部会長(矢崎)  それでは、本日の議事に入りたいと思います。この会は、今日も相川先生以外は全員 ご出席と、大変出席率の素晴らしい会で、それだけご熱心な皆様、ご関心が多いところ だと思います。  前回は、4病院団体の協議会と日本医学教育学会、それから全国自治体病院協議会、 そして日本医師会からそれぞれのお考えをお伺いしました。本日は前回に引き続き、要 望などをいただいた様々な医療関係団体の方々から、考えておられる臨床研修のあり方 等についてお話を伺ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  それでは、まず初めに全国国民健康保険診療施設協議会からご意見を承りたいと思い ます。本日ご出席いただいておりますのは今井正信会長、そして高山哲夫副会長です。 大変恐縮ですが、およそ20分ということで、先生方のご意見をご説明いただければと思 いますので、よろしくお願いします。 ○今井氏  おはようございます。今日はヒアリングを本当にありがとうございました。私達の全 国国民健康保険診療施設協議会は、俗に「国保直診」と申しますが、私、会長をしてお ります今井正信と申します。私は、現在は三豊総合病院組合で、国保直診の中でも四国 のほうで病院を約30年間経営していました。そういう所に、実はやって来る専門医があ まりにもサラリーマン的で、本当に実際、住民の中に入っていくような地域医療をやる お医者さんが来ないということで、是非今日は委員の皆さんにお聞きいただいて、臨床 研修の必須化の変えた形をご提案したいと考えています。そこの資料に全部載っている のですが、これを読み上げると非常に長くかかりますので、かいつまんでお話したいと 思います。  まず、1頁を開けていただきたいと思います。我々は「国診協」と申します。全国国 民健康保険診療施設協議会は社団法人で、昭和13年に国民健康保険法が制定され、その ときに終戦までに100カ所ぐらいの施設ができました。その後、昭和30年までに大体3, 200ぐらいの市町村立の国保直診が全国にできまして、市町村のほとんど全部、全国的に 出来上がりました。ところが昭和30年、40年代にかけて、学園紛争がありました。それ で結局どんどん減ったような経緯があります。それから交通の便も良くなったこともあ り、現在は1,300施設ということが言えると思います。  県立病院とか、市町村立病院が全員である、自治体病院協議会と重複してはいるので すが、そういう意味で国診協と全自病協とは常に連携をしなければいけない。特に先日 ありましたヒアリングのときに、小山田会長、青沼先生も一緒に話されましたが、あの 全自病協の言っていることと非常に共通した面があります。ただ、違うところは、私た ちは非常にへき地、離島、それから都市周辺にある非常に医師の少ない所で頑張ってい る団体です。この委員の中におられます山口先生に特別顧問をしていただいておりまし て、前会長でもありますし、その主張された地域包括ケアシステムを主眼にしてやって います。  要望書2頁目に書いてありますが、要望としては、もちろん1番に、臨床研修の普通 のキュアのほかに、地域医療とか在宅医療、老人医療、それから保健・福祉、介護まで の分野の研修を加えていただきたい。これは地域において全人的医療、それからそうい うことまで全部できる医師をつくっていただきたい。いままでのつくってこられた医師 を考えてみても、実際問題として住民の中に真剣に入り込める医師が非常に少ないので す。我々が30年近く地域医療をやっていて非常に感じることは、住民の中に入って、住 民の相談に直接乗れる医師が非常に少ないということです。  それで2番に書いてあるように、病床数にかかわらずに地域包括ケアを実践している 施設も、実際に卒業したドクターに見せないといけないのではないかと私は思います。 どちらにしても学生時代にそういう講義を受けて、一応知識としては知っていても、そ の実際を知らずに大学で専門医に即なってしまうと、非常に偏った医師が育ちます。で すから、とにかく臨床研修の場は2年間でもいいし、できるだけ専門の所、大学を離れ た形で研修をお願いしたらと思います。そういう形のシステムが組めれば非常にありが たい。  それからもう1つは、そういう福祉のほうもいま非常に大事になってきています。非 常に高齢社会ですから大事なので、それを診れる医者、もしくはそれに携わるパラメ ディカルの人もみんな含めたチームのリーダーとしてやれる医師、そういう者を育てな いといけない。どうしても我々地域医療をやっていると、そういう医師が周りにいるか どうかでだいぶ違ってきます。開業医さんの中でもそうですが、単に専門医で育つと、 開業すると必ず儲けを主体にする医師になってしまう形が多いのです。もちろん、良心 的に非常によくやっている開業医の先生もおりますが、そういう周りが見える医師が出 来上がると、私達地域医療に取り組む者は非常にやりやすくなってきます。  ですから、今日はいままでの主病院、従病院のような縦の関係ではなくて、主従の関 係ではなくて、お互いに横の関係にある形のシステムを提唱したいと思っています。た しかに住民が望む医師像というのは、私は地域で本当に病人の、もしくは住民の健康と 福祉、医療を含めたものの相談に乗れる医師だと感じています。これを是非お願いした いと思います。  そして5頁をお開きいただきたいと思います。もちろん、それを言う場合に、たしか に細分化された教育で、先ほど言ったように若年医師において早くから専門医志向にす ると、全体が見えなくなると思います。ですから医学教育が終わったあと、研修の場は できるだけ臨床に返して一旦地域を見せる。いま現在どういう医療になっているか。地 域の住民がどういう所で生活し、病気になっているかということを知らせたあと、2年 して、それから専門医をやる場合はやるということでないと、地域や社会がわからない 医師が育ちます。それから、たしかに救急医療、救命医療、専門医療を担う人は絶対に 必要不可欠ですが、それだけに偏していくのではなくて、できるだけ地域包括ケアを担 う医師を育ててほしいと思っています。  6頁に書いてありますが、医療形態も、医者の力量による医療だけでなく、医療に携 わる非常にたくさんの人たち、他職種の人たち、チーム医療をやれる人たちのことがわ かり、純粋にその治療を進めていける。患者や家族の心理もすべてわかるようなお医者 さんが出来上がると、非常に地域は良くなってきます。  ここに書いてあるとおりいくと、7頁に書いてあるのですが、いままで昭和48年、昭 和50年に出た意見で、いろいろプライマリー研修の充実や、地域医療をやらなければな らないということは主張されているのですが、今までほとんどそれが実現されていない と思います。医療機関や研修の指導医が、プライマリーに関する知識が非常に乏しいと か、地域の事業、医療機関のいろいろな点のことを理解する医者がいないと非常に困 る。そういう事態がいま現在でてきていると思われます。特に社会的存在としての患者 というか、住民のこと、生活の場を観察するようなことができるお医者さんを望みたい と思うのです。  そして9頁、10頁、11頁までに、国保直診がいままでやってきた地域包括医療の主体 が書いてあります。特に委員である山口顧問が、いままで進めてこられた地域包括ケア システムというのは、都市周辺とかへき地など、それからその包括的な医療をするとい うことは、都市でも同じように必要だと考えられます。いままでの団体もみんな主張さ れてこられました。ですが、これは特に市町村長さんや行政の方も一緒になって、保健 と福祉と医療をマッチングした形の包括した医療ができないと、そういう医師でないと そこで務まらないのです。単にカメラ屋さんだったり、カテーテル屋さんだったりする ようでは、そういう医師に育たないわけです。  新しい考えのカリキュラムとして、国保直診から是非ご提案申したいというのは、12 頁以後に書いてあります。それはどういうことかというと、まず研修施設の3類型とし て、13頁に「A型」「B型」「C型」と書いてあります。この「A」というのは、いま までの高度医療を提供する大病院などに含まれる、従来型のスーパーローテート方式に よる研修の場です。「B型」は、我々国保直診の提唱している、地域包括ケアを本当に 実践している病院や診療所、「C型」はヘルスケアがやれる所、保健所や市町村保健セ ンターなど、そういう所です。ここに略図を描いてあります。15頁をご覧になっていた だきたい。この型それぞれの所の研修を全部やってしまった形が2年間でできれば言う ことはないということです。  どういう組合わせにするかというのは、それぞれ研修医がいろいろ選択する。自分は 専門医的に行きたいと思う者はAに重点が置かれたような形とか、もしくは地域医療を 学びたいと思えばB型の部分を主体にいくとか、そういう形にする。もしくは本当は保 健、ヘルスのほうをやりたいと思えば、C型を中心の所に重点的に行くとか、そういう 形が並列に並ぶ形の研修医制度を組んでいく。この3類型を組み合わせる研修施設群を つくる。  研修の期間の長さはそれぞれまたディスカッションして決めるなり、その内容は例え ば研修修了の認定にあたって、一定の単位数にそれぞれの場の点数を決めるとか、だか らA型、B型、C型の選び方は、AはAの基準で選ぶ。各型の基準を作って、BはB型 のそれぞれの基準をクリアした形で作っていく。それでそれを全部ある程度きちんと研 修して、それを身につけて、今度はそこからあとで専門医になるなりするということで す。  その地域に密着した住民のことが全部わかるような形の医師という基礎を持って、専 門医になり、偉い教授になっていくということにしないと、本当の意味では実際問題と して住民の心がわかり、大体患者のマテリアルは住民の中にあるわけですから、そうい うものを知って、そこから疾患をクリティークしていく、そういうことがわかる医者を つくっていただかないといかんのではないかと思うのです。時間が来ましたので、この 内容の具体的なことは、高山副会長がお話すると思いますので、お聞きいただきたいと 思います。 ○高山氏  いま今井会長からA、B、Cという新しい案をご提案しました。これは従来のままの 研修制度では、いま出てきた問題の解決には至らないと考えまして、それまでの研修制 度で欠けていた面を補う意味で、どうしたらいいのかという発想から起きてきたもので す。  私の担当は、今回提案したB型の研修施設で、何をやるのかということを重点にお話 したいと思います。9頁に書いてありますが、地域包括ケアを理解していただき、それ を実践するといった形の研修を、このB型での研修施設で行うことをいちばんの重点に しています。その中で何をやるのかと申しますと、16頁に書いてありますが、「全人的 なアプローチ」「日常診療マネージメント」「在宅医療」「介護保険」「保健事業」 「保健・医療・福祉の連携・統合」、「関係医療機関等の連携」を主体にしています。  個々にご説明しますと、私どもの考えている「全人的医療」というのは、ただ単に全 身を診る、あるいは身体と心の機能の連携を診るだけではなくて、地域の視点、地域の 文化等を含めた形での医療を推進したいということです。例えば私の経験ですが、私の 病院の隣の町に肝炎が多発しました。これはC型肝炎でしたが、それを分析してみる と、実は医療過疎の地域で、素人によるはり治療がこのC型肝炎を蔓延させてしまった ということがあります。そういったことは、地域の文化あるいは生活も理解しないとな かなか解決できないということです。現在はその地域で新しい肝炎はもうなくなりまし た。あと事後処理ですが、そのような形です。  それから、私どもの地域では、いまだに味噌も自家製の味噌を作っています。例えば 減塩を指導するにしても、そういった文化を理解しなければなかなか徹底できない。あ るいは過疎の地域ではご老人が1人で生活しています。そういった方々は、朝作ったも のを昼も夜も食べるというような生活をしています。そうすると、果たして私どものい まやっている食事指導が本当に理解し、実行されているのかということも不安になって くるわけです。そういったものをきちんと捉えていくのは、やはりその地域の文化と いったものを理解していなければ、なかなか推進できないだろうと思っています。 2番の「日常診療マネージメント」も、従来、プライマリーケアという言い方がされて いますが、ただ単に救急救命の処置をする、あるいは初期の診療をするというだけでは なくて、私どもはこういったものをすべて含め、あるいは初期のプライマリーヘルスケ アまで含めた形での日常診療マネージメントという形で捉えています。そういった研修 を是非このB型の研修群でやっていただきたいと願っています。  また「在宅医療」ですが、在宅医療と申しますと、とかく昔の往診の感覚で、後始末 でどうでもいいやというような捉え方をされていますが、いま現在行われている在宅ケ アは決してそういったものではなくて、非常に高度なレベルの在宅ケアが行われていま す。例えばALS等の難病に対するレスピレーターを在宅で行う。これも短期間でなく て、数年間にわたってそれが維持されているということもあります。それから中心静脈 も在宅でどんどん進めています。  私自身も、いま現在末期の患者さんを積極的に在宅でフォローしていますが、最近の 事例でもこのようなことがありました。ある病院で、大腸がんの肝臓転移で、昨年の12 月に見つかり、入院して化学療法を9月までやり、その間に家に帰れたのは1カ月で す。あとは全部入院です。もちろんそれは積極的な治療で問題はありませんが、最後は 黄疸が出てきて、腸閉塞になり食べれない。イレウス管を入れてIVH。それからイレ ウスの解除のためにお腹を開けたのですが、手がつけられずにそのまま閉じて、そこに MRSA感染で創が離開。それからドレーンが入っているという形で、どんどん患者さ んの状態が悪くなってきました。  患者さんのご希望は、家で暮らしたいというのが最後の希望で、家族の方に頼まれ て、私が最後を看取りました。錯乱状態になっていて、その方の最初の診察では、縁側 でしか診察させていただけませんでしたが、そういった中で状態を見ながらイレウス管 も抜き、IVHを皮下に埋没して、必要なときだけやり、あとは楽に動けるような形に しました。それからMRSA感染をした創も、フラセチンパウダーを使ったら乾いてき て、そこも良くなってきたということで、最後は家族と自分のいちばん好きだった山ま でドライブに行って来たという状況になりました。当初は家に帰れば1週間もたないよ と言われた患者さんが、1カ月余もちまして、最後は楽な形で亡くなりましたが、その ような経験もしています。  それから在宅医療ということですが、私、ショックだったことがあります。これは胆 管がんで末期の方で、術後再発でしたが、この方も家で亡くなりたいということで、 ずっと訪問診療をしていました。最後、もう駄目だということで明け方の4時に呼ばれ ました。患者さんの血圧は30で、駄目だなということで診ましたが、そのときに家族の 方々が部屋に30人近く集まっておりました。そのときに末期の患者さんが突然起き上が り、布団の上に正座して、何を言われたかというと、「私はこれから逝くけれども、長 い間、世話になった。残された者たちは仲良くやってくれ」と挨拶して、それから数十 分後、20分もなかったと思うのですが、最後、亡くなりました。そういう形での人生の 最期もあるのだということを改めて感じた次第です。そのようなことを私ども直診の多 くの診療施設がやっているということで、従来の病院での看取りとまた別の形での看取 りもあるのだということをご理解いただければと思っています。  「介護保険」は従来から言われていますが、この高齢社会の中では単に医療だけでは 済まないということで、介護保険のいろいろなチームとの連携が必要ですが、多くの国 保直診は、そういった形でケア・カンファレンス等に積極的に参加して、連携を取って います。  5の「保健事業」は、もともと国保の診療施設というのは、保健、予防に力を入れて きました。私どもの病院も医師がボランティアで、夜間に移動健康教室ということで各 自治会を回っています。私自身も、最近は「脳生き生き教室」ということで、ボケ予防 のために各自治会を回っていますが、そういった中で坂下町の医療費は平成8年度から どんどん下がってきました。老人医療費ですが、73万円から平均49万円まで下がってき ました。これも私どものそういった努力が実ってきたのではないかと思いますし、そう いった形も、これからの医師にとっては必要ではなかろうかと思っています。  私ども国診協では、総合保健施設という形で、医療も保健も介護も連携、統合できる 形での施設を推進しています。そういった施設を拠点にして、日ごろの地域包括ケアと いうものを推進していますが、それがうまくできている地域は医療費も非常に下がって いるということで、是非若い先生方にも、そのような形での医師の生き方を知っていっ ていただきたい。  最後になりますが、最近ITということが叫ばれていますが、遠隔医療ということ で、ここにおります今井会長の所が積極的にやっております。在宅の患者さんとテレビ 電話を結び、遠隔医療を推進しているということもあります。これは過疎の地域におい ては非常に重要な点で、そういった形でも医療がうまく進んでいるということが言える と思います。  私どもの病院は、長野県と岐阜県の県境にあります。私はいまは研修指定病院になっ ていますが、600床の大きな病院から参りました。当初は104床の病院で、医師は6名と いうことで、大学関係の者に言わせると、「いちばん行きたくない病院が坂下病院だ」 と言われていましたが、いま現在は医師が18名になりました。ベッド数も199床になり、 いま現在は「坂下なら行ってもいいよ」と変わってきました。ということで、小さい病 院だから研修ができないということではなくて、いろいろな可能性を秘めているという ことを是非ご理解いただきたいと思っております。 ○部会長  どうもありがとうございました。それでは、ただいまのご意見について、委員の皆様 からご質問、あるいはご確認の件がありましたらどうぞ。 ○杉本委員  お話の趣旨はよく理解するのですが、こういった形の研修のできる施設をどういう形 で認定するのかということになりますね。資料を拝見すると、20頁に「地域包括医療研 修指導医」という頁があります。おそらくこういう方が配置されている病院、あるいは 施設が、指定の対象となるということだろうと思うのですが、これはただ臨床経験と認 定機関の認定によるということになっているわけですね。これはどういう形で認定をし ているのですか。 ○ 今井氏  これはいまから作っていくべきことだと思います。いま実際、地域包括にだんだん なっている病院は、私どものこの直診だけではなくて、厚生連にしても日赤関係、済生 会、それから一般の民間の病院でも包括をだんだんやり出しています。全自病協 の中にもありますので、全部で私達が計算しても大体全国で900施設は十分そういう方面 に耐えられる研修ができる病院だと考えています。ですから、そういう方たちと一緒に 検討したうえで、そういう資格なりをきちんと取っていく形を作ったほうがいいのでは ないかと思います。  20頁のきちんとした認定やそういうことは、我々がいま考えているものですが、これ はそういう団体の方々、この前主張された4病院や全自病など、そういう方と一緒に検 討会なり委員会なりを作って、きちんとした形を作るべきだと思います。地域包括ケア のできるきちんとしたものがいまはできると思います。ですから、そういう所で資格な りを取っていったほうがいいのではないか。それでまず認定を得る期間については6年 以上とか10年以上とかということがありますが、プライマリーケア学会でもそうです が、やはりある程度きちんとしたものが作れ得ると思っています。 ○杉本委員  私はすでに認定をやっていらっしゃるのかと思ったものですから、どういう形で認定 し、あるいは何人ぐらい該当者がいるのかということをお聞きしたかったわけです。こ れからこういうものをやってはどうかということですね。 ○今井氏  残念ながら、まだそこまではいっておりません。ですが、これは今後まず必ずできて いくものだろうと思います。私たちの診療施設のほうは、全国国保地域医療学会という 学会を持っています。そこでいろいろそれについての委員会なりそういうものを作って はいるのですが、そこまでまだいっていないのです。 ○杉本委員  臨床研修の必修化が平成16年ですね。 ○今井氏  そうなのです。それまでに十分に。 ○杉本委員  間に合うのでしょうか。 ○今井氏  これはおそらくあとから山口顧問がお話になると思いますが、十分にでき得ると私た ちは考えています。 ○杉本委員  その場合に、どういう認定方法をお考えになっているのですか。試験をやるとか、あ るいはそれまでの実績を何らかの形で評価するなどというやり方もあろうかと思います が、そういうこともお伺いできればと思ったのですが。時間もございませんので、どう もありがとうございました。 ○部会長  その前に黒川委員から。 ○黒川委員  私が繰り返し言うように、財源が問題だといつも言っています。それはどういう研修 プログラムをアピールしても、この委員会で決めたことは、国民が政治家を通して厚労 省が言うわけではなくて、我々は厚労省の応援団ですから、どうやったらこの研修のた めの財源が必要かという話を出すべきですと思っています。  私は実はほかのことがあるのです。先生方の病院は非常にお医者さんが足りなくて大 変だということも知っていて、実はそこで奨学金を出してもらえないかという話を、実 は厚労省も入っていまやっているのです。私立大学の医学部の学生は、いまのような状 況になると、学費が足りないというのが非常に大事な問題です。ところが、そちらはお 医者さんがすごく足りないという問題があって、結構いろいろな個別のコネでやってい るということは知っていますが、すごく大変だと思います。  だからこそ私が何回も本にも書いたし、言っているのは、2年の研修の義務化をする のであれば、いままでどおりの大学病院を中心としたネットワークはいいですが、混ぜ るということが基本。それは福井先生もおっしゃるように国立大学もそうしたい。つま り大学病院の研修医の定数をこれから決めるにしても、ネットワークを作るにしても、 自分の大学を出た人は3割以下にする。よそのカルチャーを見せる。  さらに私が書いているのは、2年目は4カ月は無医村のようなそういう所に行きなさ いという話をしています。そうすると、1年に8,000人卒業しますから、4カ月というこ とは、無医村と言われているカテゴリー、自治体のいわゆる無医村がいま970ぐらいある はずですが、そこに常に2人から3人の混ざった結果の2年目の研修医がいることにな ります。だからそういうことをすれば、それだったら無医村がなくなるのかと。それは 非常に政治的にも国民にもアピールできるのではないか。ですから、そこにもそういう 所がどのように参加してくるかというほうが大事なのではないかと思います。  私はそういう所の市町村の人たちにも何人か会いましたが、本当に苦労しています。 お医者さんが来てくれない。だけど何人かそういうコミュニティに、そういう混ざった あとの研修医が来ることによってどんどんいろいろなカルチャーが入ってきて、かなり 普遍性の高い医療の経験をみんながすることができるのではないかと思うので、例えば そういうことを言ったらどうかという話をしているのです。ですからそれもいかにプロ グラムに入れるかということと、そういうプログラムを作ることによって、財源が何百 億などということは、いまの医療制度ではとても望めないと思うけれども、財源が全く ないのにこれをやれと言われるのは、極めて国としても見識のない話ではないかと思っ ています。 ○今井氏  あまり財源のことばかり言っていると肝腎のシステムづくりができないと思います。 このシステムが大事なのです。いままで何回もシステムを組もうとされてきたけれど も、財源の話だけをしてしまうと、財源は別のところでもう一度考える。例えば保険医 になるわけですから、その人たちは少なくとも保険を使って治療ができる形にはなりま す。ですから、ある意味ではその期間を、彼らの修錬の場ですが上が付いて、大学以外 とか、そういう地域で働いてもらったりする形を作る。それを国で全部持とうとする と、余計に財源がいる形ができるのではないかと思います。 ○黒川委員  ですから、このプログラムが、いかに国民が納得するようなプログラムかということ が大事だということを言っているわけです。 ○今井氏  それは私たちもそう思っているわけです。ですから住民が納得するのは、こういう住 民の横で一緒になって自分の健康や病気とか、そういうことの相談ができる医者をつく らないといけないのです。 ○黒川委員  それも大事なコンポーネントだということを私は言っているわけです。 ○今井氏  最も大事なのがそれではないかと思うのです。それから今度は医療の本当の大事なと ころの専門医になっていくことが必要だと思うのです。それを先にきちんと作らない と、財源のことだけを言っていると、この会はおそらく進まないのではないかと思うの です。もっときちんと作ったシステムの形を示して、あとでお金のことを考える。 ○黒川委員  それを判断するのは国民であり、政治家だと思います。 ○山口委員  いまお2人の委員からご質問あるいはご意見をいただき、ありがとうございました。 認定医に関しては、いま現在国診協の中に委員会を作っており、現在すでに検討に入っ ています。なるだけ来年度の上半期のうちにそういうものを作り上げたい。そして平成 15年の国が指定をする時期には、間に合わせたいと考えています。  いま黒川先生がおっしゃったのは、私は逆に国保直診にとってエールを送っていただ いたと思っています。たしかにへき地で、医師の確保で苦労している土地が多いわけで すから、結果としてそうなれば、私はやはりいいことだろうなと思っています。ただ、 どこにでも直診であれば出して研修してもらうとなると、研修の質が担保されるか否か が問題になりますので、その点は我々も考えながら判断をしていきたいと考えていま す。ありがとうございました。 ○徳永委員  先ほどの黒川先生の話とほとんど一緒だったのですが、15頁にモデルがありまして、 その前に2年として、コミュニティベースの研修が必要だと。これはどなたも異議はな いのですが、地域に馴染むためには期間がいるわけですね。ですから、いまの先生方の ご発言の15頁の左下の図は、1年目から行ってやるのか、2年目から行ってやるのか、 あるいは地域に馴染んで、本当のコミュニティベースの研修ができるために、どれぐら いの期間が最低必要だと思っているのか。その期間は、具体的にどういうやり方をいま の段階でお考えになっているかをご説明いただければと思います。 ○部会長  簡単にご説明お願いします。 ○今井氏  私たちとしては、先ほど黒川先生がおっしゃったと思うのですが、本当は最低4カ月 が必要ではないか。できればBとCに本当は1年ぐらいほしいのです。少なくとも半年 はほしいと思います。 ○徳永委員  1年でも2年でも……、それはだいぶ違うと思うのですが。 ○今井氏  それはそうですけれども、2年間ということになると、やはりAの部分で1年は絶対 にきちんとした医療をある程度やったうえでということは必要だと思います。 仲村委員  19頁の3に書いてある、いろいろな施設にいろいろ行っていただくことに関しては、 私も非常に賛成なのですが、プログラムを組むときに、誰が組んで、それをそのように きちんとやっているということを誰がチェックできるか。そこのところはどのようにお 考えですか。 ○高山氏  先ほども少し触れたと思うのですが、私どもが考えているのは、地域医療の指導医と いうものを考えています。それはただ私どもだけが作るのではなくて、同じような考え 方の自治体病院だとか、いろいろな各団体と一緒になって指導医を選定したい。実際の 指導は、そういった指導医の方によって行う形を考えています。 ○黒川委員  よくわかるのですが、私が言っているのは、毎年8,000人が4カ月経験していけば、2 年経ち1万6,000人、3年、4年、5年すれば、そういうことを生涯のキャリアとしてや ろうという人が出てきます。ですから、やはり全体として義務化するのなら、どのよう にするかが大事なので、それはすごくよくわかるのですが、やはりそういう基本的な… …総意がすごく大事なのではないか。というのは、混ぜるということでそういう所への サービスということを入れることは非常に大事なことだと思います。ですから5年間で 4万人がそういうことを経験することになります。 ○内村委員  B型、C型のイメージですが、研修指定病院として現在指定されている所は小さい所 で300床ぐらいですね。300床ぐらいの病院だと、非常に地域密着型の病院なのです。大 体人口3万から5万ぐらいの地域を対象にして、そういう所を研修指定の実地調査で見 ていますと、案外サテライトとして診療所とか、あるいは老健施設とかをもち、包括的 な医療を目指しておられる感じがします。300床ぐらいあるとかなり指導力のある医者も きちんといるわけです。そういう病院がメインになって地域包括医療をやっている所を 見ると、大病院よりもこれは研修にいいなと私も実際思うのです。そういうイメージで このBを捉えていいかなと思ったのですが、Cになるとどういうイメージで指導体制を 組むかが少しイメージが作りにくいので、そのことを一言だけお願いできたらと思いま す。 ○今井氏  結局従来は保健所があったと思うのですが、保健所は例えばインターンのときもほと んど行かなかったような形がありますので、今度は例えば福祉施設がいまたくさんでき てきています。ですから、そこの所がそのカリキュラムにある程度入った形で、例えば 全老健もありますが、全国で2,700ぐらい出来上がっていますが、そこだと介護保険につ いて、それから特に医療をある程度しなければいけない人もたくさんいます。ですか ら、そういう所で何カ月かという形を取ったほうがいいのではないか。  それからヘルスのほうは、町村の在宅介護支援センターとか、健康管理センターなど がありますので、それに併設されたものが多いのです。ですから、そういう所でヘルス の部分を十分にやる形が必要だと思います。特に我々としては、国保の総合施設で非常 にそれに対応しているのです。総合施設というのは、保健と医療と福祉も全部含んだ形 態を持っていますので、そこだと割合全部がわかるようにはなるのです。それを例えば Bの200床、300床のそういう病院と組んで、CとBと連携してやるのが多いのですが。 内村委員  現在の300床ぐらいの基準を、もう少し下げたほうがいいという考え方ですね。 ○今井氏  下げても下げなくても結構です。それはベッドに関係なくです。というのは、国保の 方は、ほとんど在宅がベッドという感覚もかなり持っています。ですから、例えばそれ が200床、100床であっても、周りの福祉施設のベッドもほとんどそういう形で使える。 ですから、そういう感覚の医者の必要がある。そういう素養を持った医師が、ゼネラル マネージャーのような形の医師が各地区に必要なのではないかと思います。 ○内村委員  それは必要だと思うのですが、その指導体制のことを言っていたのです。 ○部会長  どうもありがとうございました。先生方の趣旨は、十分委員の方はご理解されたと思 いますが、やはり私どもとしては研修の質をどのように担保するかということが、いち ばん先生方のご意見では感じますので、その仕組みと制度設計的なことは、やはりある 程度具体的に立てられたほうがいいのではないか。  それと見学型に終わってしまうようなことになると、臨床研修にならなくて、卒前教 育のほうに入ると思いますので、ただ見て回ることだけではあまり意味がないと思うの です。その点はお考えになっていると思いますが、よろしくお願いしたいと思います。 あと、へき地、離島に関しては、しっかりした臨床能力のある方が行かないと、本当の 実績が上がらないと思いますので、ただ見てくるという意味ではいいのですが、実際に 医療の質を上げるには、どうしたらいいかということは先生方、十分お考えいただけれ ば大変ありがたいと思います。 ○高山氏  ご指摘のことは、十分もう理解していますが、私ども独自にすでに研修カリキュラム 案と、どのように評価するという案も一応できているのですが、本日は時間の関係で提 出しませんでした。その点、ご了解をお願いします。 ○部会長  どうもありがとうございました。会長の今井先生、副会長の高山先生には、ご多忙の ところを貴重な時間をお割きいただき、ありがとうございました。それでは、次に衛生 学・公衆衛生学教育協議会のご意見をお伺いしたいと思います。本日は卒後研修カリ キュラム検討委員会世話人の川口毅先生、そして順天堂大学の稲葉裕先生、京都大学の 中原俊隆先生にお見えいただいています。大変恐縮ですが、少し時間が過ぎております ので、20分厳守でこ意見を承れればと存じますので、よろしくお願いします。 ○川口氏  本日は、このような貴重な時間を私どものために割いていただきまして、厚く御礼を 申し上げます。ただいまご紹介いただきました私どもは、全国の医科大学の衛生学・公 衆衛生学の教授で構成しています衛生学・公衆衛生学教育協議会というものがありま す。  そこで、実は本日、先生方のお手元に「プライマリーケア卒後研修カリキュラム」と いう資料がございますが、それをご覧いただきたいと思います。いまお示ししたカリ キュラムの後ろのほうに「要望書」と書いたものがあります。当時の世話人代表である 東北大学の久道教授の名前で出ています。現在は、東京医科歯科大学の高野教授が代表 世話人になっておりますが、現在アメリカに行っておりますので、私、世話人である川 口と稲葉先生、それから京都大学の中原先生に一緒に説明していただくことになりま す。  まず、後ろの「要望書」をご覧いただきたいと思います。これは平成11年、まだ臨床 研修が法制化される前のことですが、当時の厚生省に対して教育協議会として要望書を 出したものです。要望事項はそこに書いてあるように、卒後臨床施設における研修カリ キュラムの企画と運営にあたっては、是非社会医学系、衛生・公衆衛生学の分野の指導 者も入れていただきたい、というのが第1点です。  第2点は、卒後臨床研修カリキュラムには是非保健と福祉に関する知識と理解を高め るような内容を盛り込んでいただきたい。第3点は、スーパーローテーションの拡大を 是非図っていただきたい。さらにそのための研修体制の整備を図っていただきたい。そ れからスーパーローテーションの指導体制の整備を図られたいと、この4点です。  次の頁をご覧いただきたいと存じます。私どもはこの臨床研修の期間は、あくまで医 師免許取得後の生涯研修の出発点と位置づけています。したがって、単に救急医療や一 般的な臨床治療の技術の取得だけではなくて、リハビリテーションから介護、予防まで の幅広い知識と経験を包括したものでなければならないと考えています。  ご承知のように、近年人口の高齢化や医療の高度化に伴って、国民の医療費はさらに 急増することが予想されます。今後、将来に向けて、国民が安心して医療を受けられる 体制を作るためには、疾病の治療と介護を中心とした臨床治療だけでなく、予防的観点 を視野に入れた公衆衛生の研修が不可欠であると考えています。そのために、将来国民 の保健医療要求に的確に対応できる医師の養成を図るために、卒後の臨床研修の中に、 社会学実習としてプライマリーケアとしての公衆衛生研修を入れていただきたいと考え ています。  まず、要望事項の第1点ですが、研修委員会の中に、従来は臨床の先生方だけで構成 した場合が非常に多かったのですが、これからは先ほど言ったような趣旨から見ても、 医科大学の衛生学・公衆衛生学講座担当者や保健所の医師等、公衆衛生関係者の参加を 是非図るようにしていただきたい。それから、卒後臨床研修カリキュラムの内容の2番 目については、急速に進行する少子・高齢化社会における医師の役割と、責任の自覚を 図るためのカリキュラムの追加をお願いしたい。そのカリキュラムについては、後ほど 例としていろいろご説明したいと思います。  スーパーローテーションの拡大ですが、従来のような臨床系だけのスーパーローテー ションではなくて、プライマリーケアを担う実地医科や保健所での研修を含むスーパー ローテーション研修の整備体制が本日最も大事だろうと思います。特に平成6年に地域 保健法が改正され、保健所が地域の公衆衛生高度専門機関としての役割として、教育研 究あるいは調査という事業もいろいろ入ってきています。そういう意味からも、やはり そういうものを包括した保健と福祉、あるいはそういう地域の社会資源を活用した形で の研修体制を拡大していただきたいということです。特に、先ほど部会長先生からお話 がありましたように、その場合の質の確保のためにも公衆衛生及び保健、福祉の指導医 の養成をきちんとしていかなければならない。保健所の医師については国立公衆衛生院 等がありますし、また、それについて我々教育協議会の委員会としても、全面的に協力 していきたいという考えを持っています。  スーパーローテーションの指導体制の整備を図っていただきたい。これは我々、衛生 学・公衆衛生学教育協議会は国立公衆衛生院、あるいは全国の保健所等と連携しなが ら、この指導体制の整備を図っていきたいと考えています。  そこでお手元の資料の2頁をご覧いただきたいと思います。2頁に我々がいままで5 回にわたっていろいろワークショップを開いて、このカリキュラムのあり方、あるいは 卒後臨床研修におけるプライマリーケア研修のあり方について検討してきた結果の一部 をご紹介させていただきます。まず研修テーマですが、ここに書いてある1から10まで です。「臨床・疫学の立場から、生活習慣病の疫学調査の企画・立案・その他」。それ から「健康危機管理」「健康教育の企画・立案・実施・評価」「へき地住民の健康管 理」「在宅寝たきりの老人の介護・医療プログラム作成と評価」「在宅難病患者の管理 プログラムの作成」「各職場における保健予防管理プログラム」「老人ホーム、老人保 健施設、福祉施設における健康管理プログラム」。これは特に医師会が中心になります が、「地域保健医療機関等と共同でプライマリーケアの実習」、それから「保健婦や他 職種と共同の保健事業の企画・立案・実施」、そういう内容を主に含んでいる必要があ るのではないかと考えています。こういうメニューの中から研修生が好きなテーマ、あ るいは地域の事情に応じてできる範囲のテーマを選択しながらやっていく例として挙げ ています。  当然、アンダー・グラデュエイトの卒前の研修との関係がありますので、臨床研修ま でに大学において身につけておくべき、いわゆる卒前教育として次のようなものを研修 しておく必要があるだろうということが(2)に書いてあります。(3)に、これは平 成16年から実施ですので、M4の約100人の学生に、どのような研修を臨床研修で望むか というもののアンケートを取った結果を書いています。彼らは「高齢者の医療、医療 チーム、知識から実践医療へ」「全人医療」「ゼネラリストとしての医療」「他科ロー テーション・スーパーローテーション」「日常的な疾患への対応」。次の頁に「第1次 予防・健康増進」「医師としての倫理・モラル」「患者とのコミュニケーション・心の ケア」「早期発見・早期治療・予防医学」「医療ミスの防止」「基本的な医療技能」 「EBM・救急医療」。これはたまたま100名のM4の学生ですが、こういうものを望ん でいるということです。  次に、臨床研修の内容です。当然臨床研修としては、「保健、医療、福祉の研修を通 して、医師に必要な問題解決力の育成を図る」ことが大きな目的です。カリキュラムの 一般目標として「GIO」がありますが、一般目標としては、「将来地域におけるプラ イマリー・フィジッシャンとしての必要な知識と技能の習得を体験させる」。行動目標 としては、「医師として最低限必要な倫理、法律について理解できる」「地域における プライマリー・フィジッシャンとして果たすべき役割と責任について説明できる」「医 師として、医師以外の専門職種との共同作業や連携ができる」「医師として、地域保健 医療、福祉等の社会資源を患者に対して適切に紹介できる」。患者とのコミュニケー ションスキルということです。それから「産業保健、学校保健、地域保健活動を理解し 参加できる」「地域医療における予防、福祉の重要性について理解し、積極的に参加で きる」。このような行動目標を全体的に置いています。  研修方式については、あくまで我々の検討した範囲では必修とし、内容は選択方式と する。機関はおよそ1カ月ぐらいを考えています。研修の場としては、医科大学の衛生 学・公衆衛生学教室をキーステーションとして、研修にふさわしい保健所、医師会、事 業所、福祉施設等を選択するということです。臨床研修病院の場合には、先ほど言いま した病院に設けられた臨床研修委員会の中に、公衆衛生医を置いて、ふさわしい施設を 選択していくことを考えています。  さて、そこで具体的に研修カリキュラムでどのようなものを考えているか。先ほどの 10の例の中身をご紹介させていただきます。まず第1の臨床・疫学の立場から、生活習 慣病の疫学調査、解析、対策の樹立等に関するカリキュラムの例です。研修目的として は、そこに書いた「生活習慣病の疫学調査の実施から対策の樹立まで、いわゆるプロセ スを実施させ、臨床疫学の考え方を身につけさせる」。行動目標としては、「臨床・疫 学の技法と考え方を身につけさせる」「生活習慣病の原因、リスクファクターを説明で きる」「生活習慣病の予防のための戦略を立てることができる」「医師として、適切な 生活習慣病の予防指導ができる、また、EBMということです。  では、具体的にどういう形でやるかを想定すると、「医科大学の衛生学・公衆衛生学 教室がキーステーションとなり、地域の保健所や事業所等との連携の下に、生活習慣病 の疫学調査を実施し、結果の評価を行う」ということです。例えばカリキュラムの1日 目か2日目は、衛生学教室である程度基本的なオリエンテーションをして、直ちに地域 に入り3週間、医師会あるいは地域病院などを通じて、在宅ケア、検診、休日・夜間、 救急など、いろいろな場を通じての生活指導を行っていくということです。最終日に1 日か2日、衛生学・公衆衛生学教室において、報告書の作成と発表会をいろいろ行う。  健康危機管理についても、「伝染病、食中毒の発生、災害等について想定モデルの下 に、疫学対策を樹立する」ということで、研修目的としてはGIOは「将来地域医療に 従事する医師として、行政をはじめ地域の医療関係者が、感染症や食中毒あるいは災害 等の健康危機管理に対してどのように対応しているか。また、どのように対応すべきか を実践を通じて研修する」ということです。行動目標としては、「感染症の疫学の技法 を身につける」「健康危機管理についての行政及び地域の役割、医療機関の役割を説明 できる」「プログラムを書くことができる」「医師の役割を説明できる」というような ものです。  この研修方法としては、やはり医科大学の我々公衆衛生教室がキーステーションとな り、都道府県または保健所、行政機関が中心になりますが、そういうものを対象に、3 週間ぐらい、想定モデルや過去の事例を基にいろいろ検討して、健康危機マニュアルの 管理の実践とマニュアル並びに……書の作成や評価を行う。これはどちらかというと行 政に近い話です。  3番目は「健康教育の企画・立案」です。GIOとしては「健康企画のプラン・ トゥー・シーを実践を通じて対験し、将来臨床医として患者の保健指導や地域住民の健 康教育などに役に立てることができる」。行動目標としては健康教育の技法と考え方を 理解でき、プログラムを書き、健康教育を行い、さらに評価ができるというものです。 具体的な研修カリキュラムとしては、衛生学・公衆衛生学のある程度のオリエンテー ションを1日か2日やり、あとは実際に保健所、市町村保健センター等で、個別または 集団を対象に健康教育の実践と評価を行う。保健婦との共同作業もあると思います。最 後に衛生学・公衆衛生学教室で報告を行う。  先ほど国保から話がありましたが、4つ目のメニューとしては、「へき地住民の健康 管理」があります。これについては先ほど国保の関係者からご説明がありました、へき 地住民の健康管理の技法プログラム作成、またさらに実際に健康管理を自分で行い、な おかつ評価を行う。これについてもやはり衛生学・公衆衛生学教室がキーステーション となって、へき地宿泊病院や診療所に派遣して、厳選したそういう施設において研修し ていただき、衛生学・公衆衛生学教室で報告会を行う。  在宅寝たきり老人の保健介護、医療プログラムの作成と評価については、在宅寝たき り老人の健康管理を実際に行わせ、将来臨床医として在宅管理や保健指導や地域の保健 医療、福祉などとの連携の中で、健康管理のあり方を考えさせるということです。SB O、いわゆる行動目標としては、在宅の寝たきり老人の健康管理の技法を理解し、プロ グラムを作り、実際に自分で健康管理をし、評価をするということです。これもやはり 衛生学・公衆衛生学教室がキーステーションとなって、地域医療支援型病院とか医師 会、そういう方々のこ協力をいただいて、地域で実践をして行っていく。そういうこと で、最後は衛生学・公衆衛生学教室で報告書の作成と発表会を行う。  そのほか現在は保健所がほとんど難病患者の管理を行っていますが、在宅難病管理プ ログラムについても同様に、保健所あるいは地域の医療機関のご協力を得ながら、在宅 難病患者の健康管理を実際に行い、難病患者の健康管理の技法と管理プログラム、ある いは実際に健康管理を行う、あるいはプログラムの評価を行うということです。これら は先ほど申し上げたように、保健所あるいは地域の医療機関、医師会等のご協力をいた だきながらやっていくということです。  7番目が「産業保健」です。各職場における保健予防管理、産業管理のプログラムを 作る。これについては「職場の健康管理を実践を通じて体験し、将来産業医として労働 者の保健指導や健康管理、作業管理、環境管理などを理解し、実際に管理を行う」。そ の管理プログラムを作ったり、医者が管理を行って評価してくる、というようなことを 実際に実演させることになります。具体的には、事業所の健康管理室、あるいは医師会 を通じての産業医プログラムに参加させるとか、職場の巡視とか作業管理を実際に体験 させるというものです。  8番目は、老人ホーム、老人保健施設、その他、福祉施設……の健康管理プログラム です。これは施設に入所、または通所の老人の健康管理を通じて実際に体験し、将来臨 床医として、在宅または施設入所老人の保健指導や、地域の保健医療福祉機関との連携 の中で健康管理のあり方を考える。  行動目標については、施設入所老人の健康管理の技法、プログラムを作成し実際に健 康管理を実施し評価してくる。これらを実際に我々が公衆衛生の……室がキーステー ションになって、地域の特別養護老人ホームとか、いろいろな社会福祉施設とか、そう いうような所へ行って活動していただく。こういうようなものを考えております。それ で最後は我々のほうで評価を行う。  最後は、地域保健医療です。これは医師会、地域医療機関との共同でプライマリケア 実習として最も大きな部分を占めると思いますが、将来地域におけるプライマリケア フィジシャンとして、最低限必要な知識の収得と体験をさせる。行動目標としては、医 師として最低限必要な倫理・法律にさいて理解できる。地域におけるプライマリフィジ シャンとして、果たすべき役割と責任について説明できる、医師として医師以外の専門 職としての共同作業ができる、医師として地域保健医療福祉の社会資源を適切に紹介で きる、医師会活動としての産業保健、学校保健、地域保健活動を理解し参加できる。こ ういうような内容を考えております。  これについては、1日ないし2日、大学でオリエンテーションをした後、地域の医師 会との緊密な連携の中で、地域医療、そういうようなものを在宅ケア、検診、健康診 断、あるいは夜間救急、老人ホーム、その他の産業医、学校医などの、いろいろな地域 のプライマリケアを我々のほうと医師会とが連携しながらやっていく、というような内 容です。最後は衛生学教室、公衆衛生教室で評価を行う。  これについては、私ども日本医師会では小泉副会長、東京都の医師会長等に「一応、 こういうような内容を考えているのだ」というご説明をし、「非常にいいのではない か」ということはいただいております。公式な返答ではないですが内々そういうような サインは示されております。また、保健所長会においても「非常に結構ではないか」と いうふうな意向をいただいております。今後、具体的に更に進めていく必要があると思 います。 ○部会長  もしできれば、ご質問の間でお答えいただければ大変有難いと思います。それでは委 員の方々にお願いします。まず宮城委員、最初にお願いします。 ○宮城委員  前回の検討会からいろいろな団体が来られて、いろいろなヒアリングを聞かせていた だいているわけですが、臨床研修はなぜ必修化されなければならないか、という原点に 立ち返った議論が必要ではないでしょうか。日本の臨床研修は、やはりグローバルスタ ンダードという観点から遠く離れていた臨床研修だったというようなことから、もっと ジェネラリストとしての臨床研修をどうしても2年間必要ではないかというようなこと から、この必修化の構想が生まれたと、原点に立返れば。  そういう点から考えると、2年間という期間の中で、いろいろな団体の方々が自分の 所でも是非研修医を送って教育したいという、非常に大きな情熱を持って参加したいと いう気持は非常に有難いわけですが、わずか2年間の中で、本当にそんなに、いろいろ な所へ研修医を送って、我々が最初から構想していた、本当にグローバルスタンダード の臨床教育ができるのか、というようなことを考えると、向こうでは6カ月ほしい、こ こでは3カ月ほしい、ここでは1カ月ほしいと、10ぐらいの団体が言われただけでも、 もう3年ぐらいトータルになっている。本当に原点に立ち返った議論から少し外れてい るような気がしてならないのです。  ですから、我々は何のために必修化するのか。本当に地域に密着したジェネラリスト としての臨床教育を2年間みっちりやらないといけない。そのためには指導医がグロー バルスタンダードの教育をできる人たちの集まったところで、本当に地域に密着した教 育をするのが原点だと思うわけです。そこは、まさにいろいろな団体の所に研修医を分 散させて、本当に初期に我々がもくろんだ臨床研修というカリキュラムが組めるのかど うか、非常に不安になってまいりました。 ○部会長  それでは、福井委員。 ○福井委員  いまお話になった内容は、私はコンセプトとしては大賛成ですが、いくつか疑問がご ざいます。1つは、具体的な研修方法として少しダイダクティックな部分、つまり医学 生の時にできるような部分見学型にならざるを得ない部分がかなりあります。それを研 修医が主体的に患者を受け持つという研修スタイルにどういうふうに組み込むか、とい うところが難しいところではないかと思います。  2つ目は、大学附属病院では、「卒後臨床研修センター」というものを構想してお り、そこで研修プログラムをオーガナイズすることになると思います。説明されたプロ グラムでは公衆衛生学教室が中旬に入り、二段構えみたいに見えます。できましたら卒 後臨床研修センターに公衆衛生関係の先生方が入られて、全体をオーガナイゼーション をしたほうがいいのではないかと思います。 ○中原氏  宮城先生が言われたことは私どもも予想したことでございます。要するに、インター ン制度の時代の保健所実習とか、そういうことは非常に効果のないことであった、とい う反省もあったところでもあります。先生は「基本的なところにもう一度立ち返って考 えろ」と言われましたが、私どもとしては、公衆衛生というのは医師法の第1条に「医 師は医療及び保健指導を司ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国 民の健康な生活を確保するものとする」という条文があり、これに基づいてインター制 度を始めたときには、公衆衛生の第一線機関である保健所の実習が必修とされたもので あると思います。その後、公衆衛生が非常に広がってきた、保健所の活動だけが公衆衛 生ではない。先ほども国保の方々もいろいろ言われておりますが、精神保健センターだ とか、労働衛生の健診機関だとか、数え上げればいくらでも公衆衛生を担当している所 はあります。そういう所で、実際問題としてリーダーとして働いているのはお医者さん でございます。  もっと重要なことは、そういう専門の公衆衛生機関がないような所で、本当に公衆衛 生の実践活動をやっているのは地域医師会です。公衆衛生担当理事という方が大抵、そ の地域の公衆衛生に就いて、リーダーという役割を果たしておられます。そういうよう なことから、原点に立ち返れば立ち返るほどこの公衆衛生の問題というのを臨床研修の 間に、何らかの形でアップ・ツー・デイトな公衆衛生活動というものに触れさせて、そ して、将来その地域においてリーダーになっていく、ということを考えなければいけな いのではないかと思います。 ○川口氏  福井先生のご質問にお答えします。私どもは先生が言われた一段で考えています。公 衆衛生、プライマリケア研修を別に切り離すのではなくて、いま言われた一段階の中に 組み入れてほしいという意味でございます。  もう1つは、参加型です。医師免許を持っていますので見学型のものは全然考えてお りません。基本的には、彼らに実際に勉強してやっていただく、というようなことを ベースにしております。 ○部会長  櫻井委員、いかがでしょうか。 ○櫻井委員  私は宮城委員と同じような内容です。いろいろなヒアリングをして、あれも大切だ、 これも大切だということになりやすいです。そうすると、最終的に1週間、2週間のコ マ切れ的なものになっては非常に困ります。何しろ「2年間」と期間が限られています ので、その中でいいプログラムを組むときに、ちょっと考えるべきではないかと思いま す。  そういった点で、先週末の協議会では、例えば内科または小児科にローテーションし ている間に、実例としてこういった衛生学、公衆衛生の知識または経験を積ませるよう なカンファレンスとか、そういったプログラムとかアイディアはディスカッションされ たでしょうか。 ○川口氏  臨床研修は、ご存じのように、いまカリキュラムでどう組んでいるかというと、要す るにカレンダー方式である期間はめ込むわけです。実際に病院の中で内科なら内科とか 内部でローテーションをしているときはなかなか組めませんので、そういう中の一部と して、実は1カ月ぐらいを想定しているわけです。その中にスーパーローテーションと してこういうものを入れていただきたい。いまは申し訳ないですが、大学の中の内科の 先生とか外科の先生とか、臨床の先生方は、やはりこういうものには手が出ませんの で、我々公衆衛生学、公衆衛生学を教育している担当の者が、その分はやりましょう、 というのがこの原案でございます。 ○櫻井委員  これからローテーションの問題で話題になると思いますが密度の問題もあります。私 が大学にいたとき整形外科とか脳外科といったものが必要ではないかと思って、実は整 形外科に医局員を2カ月派遣しようと思って話をしたら、「2カ月では到底駄目だ、少 なくとも半年いないとまずい、できれば1年いてもらいたい」というようなことを言う のです。2カ月では何も知らずに帰る、というようなことを言うのですが、アメリカ辺 りは、2カ月のローテーションをするとかなりの実績を得られるのです。そういったこ とを考えますと、密度といいますか、それを考えずに、ただ期間だとか、必要性だけで 話をしていても、ちょっとまずいようなことがあるのではないかと思います。 ○黒川委員  確かに、実際に2年したらどういう医者か、なんでもかんでも悪いというのはすごく 難しいです。例えば、皆さん医師免許を持っていると思いますが、ここで誰かがひっく り返ったら皆できますか。医師免許を持っているということの重さは何かということで す。そのミニマムは何かというと、電車でも飛行機でも呼ばれたら何でもとにかく行っ て、そこはやれるという医者をつくっていないからいけないのだ、という話をいまされ ているわけなので、それをしようとしているわけです。それは櫻井先生が言われたよう に、密度の高い、密着した、そこをやってくれと言うのです。いま病院はなんだかん だ、いろいろなアレストを起こしたら、さあどうした、というような話が常に起こって いるからこそいま言われているわけです。  例えば内科や何かをやっているときでも、うちは公衆衛生の先生とも一緒にやってい るから、しょっちゅう来たり親身にやってもらったり、そういう話はしょっちゅうして います。もう学内でもどんどんやっているわけですから、いかにその間に、我々の所も 大事だと言うのではなくて、その中の密度を、いかに中に入っていくかという、その壁 をいかに取るかのほうがよほど私らとしては大事なのではないかと思っています。 ○部会長  堀江委員、どうぞ。 ○堀江委員  先ほど福井先生も発言されておりますが、1つは学生教育のレベルで衛生と公衆衛生 についての教育は実習を含めてかなり取り組まれていると思います。もちろん医師とし てやっていく場合も、公衆衛生の実習のあり方は学生とではかなり違うのは十分わかり ます。拝見しますと、この中には必ずしも医療の現場に出るということではなくて、カ リキュラムの立案・検討といったものがかなり含まれております。そういうものが、実 際に臨床研修の場において必要なのかどうか、ちょっと疑問に思います。 ○稲葉氏  いま説明した9つのプロジェクトというか、全部をやるわけではありません。もちろ ん学生の中では当然やっている部分もありますし、それぞれの大学の得手、不得手があ ると思います。実際に地域に出て、医師免許を持った人たちが1カ月なんらかの形でこ ういう作業をすることということに、私たちは強く強調していきたい。全くこれなし に、いまのような形の卒後研修が、このままの形で行われてしまうことに危惧を持った のです。黒川先生が言われたことはもっともだと思いますし、大学によっては、衛生、 公衆衛生が弱いと言うと変な言い方ですが、研修の中に全然入らないで、そのまま医師 になってしまうプログラムが出来かねない、のがいま私たちが非常に懸念しているとこ ろです。少なくとも、このようなものをどこかで入れてもらう、ということが必要では ないかというのが意見です。 ○宮城委員  公衆衛生学の先生方の趣旨は大変よく分かります。予防医学も大切なことも、公衆衛 生学の疫学調査の仕方の勉強も、とても大事だということは私も思います。しかし、臨 床研修プログラムの中には、どんな病院でもコア・レクチャーみたいなものが毎日行わ れていますし、そういったところに保健所の先生方が来ていただいて、年に5回から7 回ぐらいのコア・レクチャー形式で、先生方がお考えのような医師指導への方向付けは できるのではないかと。わざわざ1カ月間研修医を派遣して教育するだけの内容に本当 になるのかどうか、その辺を少し考えさせられます。 ○川口氏  医師免許を持った方々が聴講型で、またアンダーグラディエートを勉強したような法 律を延々と聞かされるのは、ちっとも面白くありませんし、むしろ、実際に現場に行っ て自分たちが健康管理をやったり、あるいは実際に検診をやったり、十分に接してく る、このことが大事なので、コア・レクチャー方式でやるのなら、アンダーグラディ エートで十分だと私は思っております。実際に医師免許を持った人が地域でやることに 意味がある、というふうに理解しています。 ○部会長  どうもありがとうございました。今日は川口先生、稲葉先生、中原先生に貴重な時間 を割いていただきありがとうございました。いまの先生方のお話は、先ほどと同じよう に十分ご理解受けたかと存じます。これはカリキュラム自体の内容等をこれから詰めて いかなければいけませんし、卒前教育とも密接な関連のあるところですので、またご議 論いただければというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。  それでは、大変お待たせいたしましたが、日本病理学会のご意見をお伺いしたいと思 います。本日は日本病理学会理事長の秦順一先生、認定制度運営委員会委員長の小池盛 雄先生がいらっしゃっております。時間も迫ってまいりましたが、20分をメドにお話い ただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○秦氏(日本病理学会理事長)  本日はこのような機会をいただき大変ありがとうございました。日本病理学会資料2 −4の最初の頁にあるように病理学会の要望は、平成16年度から導入が予定されている 卒後研修必習化に際して、病理診断、あるいは病理解剖の研修を選託科目として取り入 れて頂きたいと思っています。最初に病理学会として病理解剖を含めた診断病理、これ は病理の中の臨床ですが、どういうふうに現在位置付けられているか、ということを簡 単にご説明したいと思います。  1978年に、一定の経験年数あるいは症例数の資格審査などが試験によって資格を与え る、認定病理制度を日本病理学会が確立いたしました。その制度をもちまして、学会認 定制度協議会に加盟し、日本医師会、日本医学会とで運営されている、いわゆる三者懇 談会で基本診療領域の13学会の1つとして、承認されて現在に至っております。  さらに、平成10年からは学会が、従来の任意団体から社団法人化に移行いたしまし た。その機構改革の目的に重要な点の一つは、病理診断学を臨床の一分野として捉え、 医療の中で十分に機能する仕組みを学会で確立することにあります。その活動として認 定病理部会を設け、診断病理学の認定病理医の教育、病理診断の制度管理、あるいは生 涯教育を学会活動の重要な機能として位置付けてまいりました。さらに、医療評価や医 療事故の防止などにも公開シンポジウムを開くなど積極的に係わってまいりました。  このような最近の学会活動を背景として、このたび、臨床初期研修制度に病理部門で の研修を是非、加えていただきたいという要望を提出しております。この研修の内容あ るいは意義については、担当の理事である小池教授から説明させていただきたいと思い ます。 ○小池氏(認定制度運営委員会委員長)  資料の中に国立大学の病院病理部の「初期研修プログラム」というのがあります。こ れは私が現在議長をやっておりますが私が就任する前でありましたが、大変立派な内容 のカリキュラムが出来ているので、一応それを付けました。ただその中に、この時点で は病理研修を必修化してはどうかという意見で作られておりますが、現段階では必修化 は考えておりません。選択科目として病理を選べるようにしていただきたい、というこ とで考えております。これは全体としても合意を得られていることでございます。  内容に関しては、一般に研修の中の一部として病理を選びたいという人、あるいは、 将来的に病理医になりたい人にどういう研修を与えるか、というようなプログラムが書 かれております。  それと、後から配布した資料は、福井先生の論文で大変恐縮ですが、内科学会が病理 解剖の有用性について、どう臨床の先生方がお考えになっておられるか、ということで 取られたアンケートの資料です。いちばん後ろに1枚の紙が付いておりますが、これは 世界の中で剖検がどのぐらい行われていて日本はどの程度の率になっているかが資料と して載っております。  資料は後でお読みいただくこととして、我々がいまお願いをしたいことの中に、どう いう意味があるか、ということだけをご説明させていただきます。初期研修プログラム の概要は、幅広い臨床能力を持ったお医者さんを育てようということが1つ、問題対応 能力の改善や研究や学会活動に関心を持つようなお医者さんも育てよう、あるいは自己 管理能力を身につけて生涯にわたる基本的臨床能力の向上に努めるような医者にするの だ、最近の医療現場で最大の問題点である医療事故に対処すべく安全管理を重視する、 というようなことが目標として挙げられるかと思います。  先ほど理事長が申しましたように、現在病理学会では診断病理部門の機能の充実を考 えております。実際に我々が行っておりますのは、先生方もすでにご存じのように、生 検材料や手術材料、細胞応診、術中迅速診断といったような外科病理から病理解剖、あ るいは、剖検例のCPCといったようなことを通じて、治療の決定や判定などと幅広い 臨床医学としての活動をしております。  実際にこれからの医療の中でEBMの推進であるとか、患者主体の医療をどういうふ うに構築していくか、医療の科学性と透明性をどうするか、というようなことが大きな テーマになるかと思います。病理診断について言いますと、かなり客観的な情報である ということは間違いありません。EBMの1つではあるというふうに理解できると思い ます。いま目指しております臨床研修は幅広いものでありますが、具体的に各科にまい りますと、かなり細分化された知識に基づく教育がなされるということが現状では想定 されますが、それに加えて、全身の臓器を診断する、また、そういうものの診断の過程 を学ぶということによって、非常に幅広い臨床医を育てるということにつながってい く、というふうに私どもは確信しております。  選択細分化された臨床各科を研修することとはまた別に臓器を診て、あるいは客観的 に病理解剖によって、ある時書にました疾患が全身に及ぼすような影響というようなも のをちゃんと読み取ることができる。そして患者さんの病態を振り返ることができる大 変貴重な機会であろうかと思います。例えば病理を選択した場合に、病理解剖に従事 し、あるいは病理診断に従事することによって、客観的に疾患そのものを観察検討する 能力を身につけることができると考えております。  大体、福井先生の統計で見ましても、病理診断と臨床診断との食い違いがあります。 これは画像診断がどんなに発達したといってもほとんど変わらないパーセンテージで 残っております。いま日本では4%ぐらいしか解剖されていないわけですが、こういう 状況で本当にいいのかどうかという問題もありますが、その中でも12%ぐらいの診断の 食い違いがあるわけですから、そういったような病態を積極的に解明するような意味合 いも含めて、病理解剖をしていかなければいけないと考えます。  臨床研修プログラムの概要の中で安全管理ということを言いましたが、安全管理のた めにも経験例を総合的に、チーム医療の観点も入れて、どの段階でどのようにすれば良 かったのか、あるいは、もっといい医療をするためにはどうすれば良かったか、という ようなことを病理解剖の具体例で学び取ることができる非常に貴重なチャンスであろう かと考えます。現在問題となっておりますような医療不信を改善し、医療の質を高める ということが国民的な課題であるというふうに考えられますが、こういったものを客観 的に観察をし、診断をし、反省をするという機会は極めて重要なものであろうと考えま す。  それで、研修指定病院の病理部門に関する要件が平成5年の局長の通達の中に載って おります。その中に病理解剖の数であるとか、剖検例であるとかというようなことも記 載されていますが、これがなかなか現実的でないということは皆さんよくご存じのとこ ろであります。  いま申し上げましたような理由で指定病院、あるいは病院群を構成して研修指定を検 証するとしても、そのコアになるような病院には、やはりそれなりの病理機能があるべ きである、というふうに私どもは考えております。剖検数、剖検率で規制すること自身 は、どうも現実的ではないといたしましても、2年間の臨床研修の間に1例ぐらいは ちゃんと病理解剖して、それをCPCで、臨床側からで結構ですが、研修医がそれを発 表しディスカッションをする。そのぐらいの機会がなければいけないのではないか。こ れは医療レベルの維持ということも含めて私どもは、そう考えています。  以上、申し上げましたようなことを現段階で考えており、お願いをしたいと思ってお ります。 ○部会長  それでは、詳しくは質疑応答の中で述べていただければと思います。櫻井委員から、 よろしくお願いいたします。 ○櫻井委員  いま先生方が言われたことは私も全く同感です。1つかなり気になることは、実際に 臨床の病理に関与する絶対数が非常に少ないです。大体1万6,000人の研修医を預かるわ けですが、各認定施設ですら病理の専任の先生がいなかったり、いてもパートという現 実があるわけです。その点はどういうふうにお考えですか。 ○小池氏  現在認定病理医の数は、アクティブな数ですが、大体1,770名ぐらいです。確かに先生 ご指摘のとおり、病理医の数を増やすということは大変至難の業であります。我々毎年 認定医の試験を行っておりますが受験する人たちが80人ぐらい、うち受かる人は70人前 後です。多いときで80人ぐらいです。これでは年をとってやめていく人とバランスをと りますと、増えていく数は、せいぜい20、30というのが現状です。なぜ病理には人が来 ないのだ、と言われますと我々も大変苦しいのですが、臨床のほうが大変面白くて病理 は面白くなく見えるということが、あるいはあるのかもしれません。現在学会としても 病理医を増やす努力をしております。  それは1つには、病理学会そのものの体質が、従来は基礎医学としての病理学という ところに力点を置いていて、あまり臨床医学としての病理学、診断学とか、そういうこ とに力点を置いていなかったということにも原因が大きくあると思います。それが機構 の改革で、病理学会が病理診断、あるいは病診断を業とする医者を一生懸命育成するの だ、ということに少し変わってきておりますので、これからかなり変わることを期待を しています。  いまの先生のお話の中に、どのぐらいの施設、病理医がいるのかというご質問があり ましたが、病理学会で認定されたお医者さんが専任としている病院が全国で290です。必 ずしも認定病理医ではない、あるいは認定病理医ではあるけれども、あと1つの要件を 満たしていないとか、さまざまな要件で、あるいは病理医はいないけれども病理を機能 しているという所が191、全体で480です。そのほとんどは研修指定病院と重なっている と思われます。 ○磯野委員  いまの病理の問題と剖検体という問題があって、研修の指定病院を私ども視察をして まいりますと、確かにいま櫻井先生が言われたように、パートの病理であるとか、ある いは研修している間に実際には剖検に立会えない研修医がかなりある、ということは実 際に任識しているところです。私はそのときに強調することは、先生も言われましたけ れども、やはりCPCというふうな形をもっと採用していただく、パートで来られても CPCをやると。さらに、相互の病院の連携により病理の先生がそういう形の中で、C PCの形で研修医を研修していくという形をとっていかないと、先生が言われているよ うに、病理をこれから増やして云々するということは、これはなかなか至難の業で、空 想論を論じているようなことであって、今の現状で病理の大切さをどう解決していくか ということを、いろいろお考えいただいたほうがよろしいのではないかと思いますが、 いかがでございましょうか。 ○秦氏  確かに先生が言われるとおりであります。どちらかと言うと、今までは大学単位で縦 の関連が中心となっていましたが、最近は地域で1つの病院群というようなものを作っ て、そこにコアの病院に病理医がいて、その病理医が、いくつかのグループの病院を、 先生が言われたようなCPCを行うとかという形で回っていくか、コンサルテーション をするとか、そういうような汚染が現に出て来ております。 ○杉本委員  現在の臨床研修病院の指定基準に病理解剖の数と率があります。いま小池先生は、そ れは必ずしも現実的ではない、研修医がその期間中に1例剖検ができるような形が望ま しいと言われたわけですが、これは現在の指定基準から病理解剖の項を外してよろし い、その研修の実績を評価するに当たって1例の解剖ができればよいということでしょ うか。あるいは、研修医の数だけ、年間の剖検数が確保されているということを基準に 加えるというご意見でしょうか。 ○小池氏  いま先生が言われた後者のほうは、具体的に、例えば30%であるとか、20体でやって いくのが現実的かどうかというのは大変問題があると思います。むしろ、例えば1人の 研修医が研修期間に、実際に患者の解剖をご依頼し、ご承諾をいただいて解剖するとし て、それがCPCにかかってディスカッションをし、それがレポートとして出てくる、 こういうようなことは最低限必要だと思うのです。ただ、それを20%とか30%、何十体 とかというふうに限定する。  逆に言えば、大学がこんなにたくさん研修医を抱えていて本当に研修できるのかとい うことが起こる、そのことが多分、先生の言われた後者、私が考えている1人の研修医 が、少なくとも1体ぐらいは病理解剖をちゃんと受け持って、受け持つというのは自分 でして、という意味ではございません。病理解剖に立ち会ってディスカッションにまで 参加してレポートを書く、というようなことを規定付けることは、大学にとってはかな りきついことになるかもしれません。  例えば私の大学ですと、病理解剖が年間100ちょっと切るぐらいです。そうしますと、 100人研修医を抱えていて年間1体、2年間とすれば200人やっと抱えられるというぐら いのことだと思います。ですから、もし数字で目標を掲げるとすれば、そういうような 形にするというのが現実的かなというふうに思います。逆に言うと、首を絞めることに なるかもしれません。 ○宮城委員  臨床研修医にとって病理はとても大事だ、というのは皆が認めるところだと思いま す。先生が言われましたように率とか数を誇る時代ではないと思うのです。臨床研修そ のものにとって、病理解剖というのがどういう意味を持つのかというスタンスが大事だ と思うのです。臨床研修プログラムの中にCPCはどうしても入っていかないといけな いと思います。臨床研修指定病院では2週間に1遍ぐらいはCPCをやるのがプログラ ムとしてはいいのではないかと。毎週するのはなかなか大変ですから。  そうしますと、年間24体も剖検を取ればルーティンに2週間に1遍CPCができる。 その代わり、ちゃんとCPCをやったという証拠を出してもらう、こういう基準のほう が私はプラティカルではないかと思うのです。いまのようにベッド数の10%とか、剖検 率30%とかというのはプラティカルではない。本当に臨床研修指定を受けるにふさわし いと思われる病院でも、剖検率が整わないために脱落しているという病院がたくさんあ ると思うのです。やはり臨床研修医にとって病理は何を意味するのか、ということに立 ち返れば、2週間に1遍CPCをちゃんとやって、臨床研修プログラムに役立て行くこ との方が大事ではないかと思うのです。 ○星委員  病理医を増やす、病理の研修を必修化するのは今は言わないと報告されましたが、私 としては、むしろもっと頑張って病理医を増やすのだ、というようなコンセプトを打ち 出していただくほうがいいのではないかと思っています。いつまで経っても病理医が増 えない、あるいは放射線の医者が増えない、といった状況が日本で続くことになります と、大変に困った状況が想定されます。今までの臨床教育というのが、どちらかと言え ば、実際の診療科の先生たちが優れていて、優れていてというかいい仕事で、その周辺 の人たちはそうではないというようなことを、いわば順番に伝えてきてしまった。この 平成16年というのは、それを断ち切る極めていいチャンスだと私は思います。あまり後 向きに考えるのではなく、もっと病理医なり、その周辺で働くお医者さんたちが育って いく環境をつくってもらい。先ほどの地域に出て行く、無医村で働くお医者さんたちを つくるのだというものと同じような流れで、病理の先生たちをもっと育てていくのだ と。そのためにどういうプランがあるのかと。これは単にCPCをやればいいのか、病 理解剖に立ち会えばいいのかではなくて、もっと興味を持ってもらえるような何か具体 的なプランをお考えいただく、そして、それを取り入れていくことが必要ではないかと 思います。 ○小池氏  大変有難いお言葉ですが、実際的に、これを全部義務化いたしますと本当に病理にそ れだけのキャパシティがあるのかという問題も起こると思います。私は今回、どのぐら いの期間ということを一言も申し上げておりませんし、先生方もお聞きいただけません からなるべく黙っていようかと思いましたが、例えば将来病理を目指す人には多少長い 期間病理の研修を組み込む。国立大学の中には6カ月ぐらいと書いてありますが、そう いうようなことをする。  現在認定医の試験を受けるためには5年間の病理研修が必要とされており、5年のう ち1年は臨床研修でよろしいとなっております。例えば半年間の研修をお認めいただけ れば、その2年間をそのまま繰り込んで、あと3年で認定医の試験を受ける、受験資格 を与えることが可能だというふうに考えています。  先生のお言葉は大変有難いのですが、現在の段階で病理を全部義務化したときに、本 当に病理が機能できるかどうか、本当に有効な研修を提供できるかどうかというところ に、まだ若干の疑問があります。先生が言われるように、あっさり出来てしまえばよろ しいのですが、その辺は少しヘジテイトするところがあり、これが正直なところです。 ○星委員  私は病理の先生方のことはよく分かりませんが、得意、不得意というのがあって、消 化管は得意だけど肺は嫌だとか、いろいろあるのだと思うのです。そうすると、地域の 中で非常に少ない病理の先生たちがタッグを組む病理解剖というのではなくて臨床病理 診断のチャンスを作るとすれば、そういう体制は必要だと思うのです。そのようなもの が準備できるような環境にあるのでしょうか。 ○秦氏  これについてはだいぶ前から「コンサルテーション・システム」を作っており日常的 にやっております。それは、ある限られたインターネット方式でも、お互いに病理画像 を参照できるような格好になっております。同時に、最近テレパソロジーが非常に発達 してきており、テレパソロジーシを通じてでも、専門領域をカバーする取組みがはじ まっています。  具体的に言いますと、どこかの病院で移植の手術をして、それの拒絶反応を診る際 に、そこに移植専門病理医がいないので、その画像をすぐ専門医に送ってその拒絶反応 の程度を診断するというようなことは現実に行われております。今後病理医の人数の不 足に対しては、ITとシステムを使って若干改善することができるのではないかと考え ております。 ○部会長  そのほか、いかがでしょうか。 ○福井委員  1つはコメントと、1つはお伺いです。私も剖検は絶対に重要だと思っております。 研修医は最初のところで少なくとも1例、できれば2例、経験してほしいと思っていま す。今後検討が必要なのは、剖検が本当に必要な患者さんと必要でない患者さんをどう やって区分けすべきであり、それができれば剖検をお願いすべき患者さんかどうか判断 できると思います。すべての患者さんについて無作為に剖検をやって、病理の先生方の 時間を無駄に使ってしまうことは、これからは、できないのではないでしょうか。  1つの質問のほうは、もし最初の2年間のある時期、病理のローテーションを、した いと思った場合、最低限どのぐらいでできるプログラムでしょうか。アンケートの調査 では、3カ月とする意見が多かったと書いてありますが、3カ月間ローテーションする 必要があるのでしょうか。 ○小池氏  病理をずっとやろうという人でない選択コースは2カ月から3カ月。2カ月でもそれ なりに。病理はどうしても実践ですから、その場で診断をしレポートを書いて、その結 果を見る、あるいは臨床とディスカッションをするというプロセスがあり全部入ります ので、そこに直接入ってもらうということで2カ月間でもいいと思います。 ○部会長  確かに、時代と伴に病理に対する考え方は違ってきました。私の研修のときは、受け 持医が亡くなったら必ず剖検し、その剖検報告をし、そしてレポートを出して受け持ち が終りというシステムでしたが、いまではずいぶん病理に対する考え方が違ってきまし た。おそらく剖検、病理解剖と同時に、先ほどからお話にありました手術の試料とか、 生検の、いわゆる臨床病理診断というのが、病院としては極めて重要な機能になってき ているので、これから病理の占められる位置はますまず重要になるというのが委員の先 生方のご意見で、頑張ってほしいというエールを出すと思います。  この委員会としてちょっとまとめさせてもらいますと、病理のコースというのは、で きれば定めてほしい、ただ、それは選択でいいのではないか。指定基準としては、剖検 率とか剖検体数というのではなく、もう少しファンクションの切り口でやってもいい と。例えば研修、臨床医が少なくとも1体は剖検に立ち会うという条件があって、さら にCPCを行って、昔の時代のように全部の患者さんではなくて、少なくとも1体は病 理報告をしていただく、そういう基準が満たされれば病理学会としては、よしとする、 というようなお考えのように受け取られたと思うのですが、よろしいでしょうか。 ○小池氏  剖検体数とか剖検率を押さえることが剖検数をもっと減らす、ということにつながる ことを憂いますが、そうならないことを願って、とにかく現実的に機能としてちゃんと する、ということを担保するほうがいいのかなと考えています。 ○部会長  臨床医は、先生方の病理の意味というのは臨床医であればあるほど、非常に重要だと いうことは分かっていますので、是非、頑張っていただければと思っています。 今日は、お忙しいところを秦先生と小池先生に貴重なご意見を伺いまして、ありがとう ございました。 ○磯野委員  この会の運営に関してですが、今まで国診協の問題、公衆衛生の問題等を聞かせてい ただいているわけですが、この趣旨というのは何がどれほど重要かということの問題点 をここでご議論いただいて、できるならばコア・カリキュラムとして、こういうふうな ものが望ましいというふうなものを作り、その後のカリキュラム作成は、各病院に任せ る。つまり、各病院それぞれの特徴のあるカリキュラムを作らせることが目的ではない のか、又研修医もどういう医師になるのか、ということを考えながらマッチングして、 それを選ぶという形式が必要であり、これをご議論いただいているのだろうと私は考え ておりますが、それでよろしゅうございますか。  そうでないと、国診協の問題にしても、その後に出ました公衆衛生の問題にしまして も、内容的にダブっている問題もたくさんあります。これでもって期間の問題を論じて いたり、全内容を論じているということは、私にはちょっと釈然としないところがある のです。こういう問題ではないのではないかと思っているのです。即ちこのような議論 の後に何をやろうとしているのか、ということが問題だと思うのです。  それで、病理の重要性とか、公衆衛生の重要性、精神科の重要性など、皆さんが各分 野にわたって必修化を叫ばれてくるというものの中で、これのご議論を続けていくとい うことになると大変ですし、さらに期間とか内容云々を問題にするのも大変です。実際 にこれが終わられた後、この会議はどういう形で進んでいこうとされているのか、とい うことをお聞かせ願えれば有難いと思っています。来年の新しい時期において、コアを 作ってゆくための参考としてお聞かせいただいているものと思います。如何でしょう か。 ○部会長  先生の言われるところはよく理解します。私個人としては、ある程度の考えはありま すが、いまの件について事務局からお答えいただけますか。 ○医事課長  基本的には先生が言われるように、いろいろな学会等のご意見を伺い、これからカリ キュラムといいますか、プログラムといいますか、作っていく上での基本線をお考えい ただくということだろうと思います。この間、いろいろな団体等からのご意見を伺いま しても、かなりご意見に幅があるということが分かってまいりました。そういうことも ありまして、今般ヒアリングを更にさせていただいているところでございます。基本的 には、先生が言われるような方向で進んでいくのではないかと思っております。 ○中野委員  続けてお答えが局長からいただけるのですか。磯野先生と同じことを考えながらヒア リングに参加させていただきました。お伺いしまして、制度設計ということから入りま したらパラメーターがあるだろうと。1つは、今日の中心になりましたカリキュラム論 がありますので、GIOやSBOをどう設定するかというお話。また、今日も話題にな りましたが指導体制論、質の担保をどうとっていこうかという話。3つ目をあえて挙げ るならば、研修医身分論、生活保障を含めて。この3つぐらいのジャンルに分けて物を 考えた中で、今日のお話はカリキュラムをはっきり、皆さん前面にお出しになられてお 話をなさいましたが、それなりによく理解できる部分がたくさんあったと思います。  一方、例えば研修医身分論に照らしながら今日の3つの代表の方々のお話を聞いたら どうなるかな、と思ってお伺いしていたのですが、基本は、やはり研修というプロセス そのものが労働なのか、学習なのかということでずいぶん変わってくるのだなと思いま した。最初の国保のご関係の方は、保険収入があるのだということにまで触れました が、そういったことで手当の道があるのではないか、というサゼスションがあったと思 います。公衆衛生と病理の方々は、どちらかと言いますと、病院の支援ということ、指 導医には謝礼というようなことが書いてあります。これはまさに学習の延長で、卒前と のつながりができます。  身分保証論ということから見ましたら、今日のご三方のヒアリングはカリキュラム論 としては一致しますが全くバラバラの状況です。したがいまして、この次はどういうヒ アリングをご準備されているかしりませんが、議論が終息する方向を考えなければいけ ないなと。違う角度から言いますと、少しずつ違うスタンスで物を言っていますので、 我々ここで作り上げます制度の場合に、それを1つにまとめなければいけない。こうい う討論が、ずっと先でも結構ですが、とても気になってしようがありません。磯野先生 と全く同じ考えを持っています。 ○局長  磯野先生、ちょっと先を急がないでいただければ、結論が先にあるわけではありませ んから。この審議会ができるときに事務局からご説明されたと思いますが、今年1月6 日から審議会のあり様が変わりました。今までのような性格ではありませんので、そこ をちょっとご理解いただきたいと思います。この審議会は公開されておりますので、お 集まりの先生方はお医者さんが多いのでしょうけれども、お医者さんの中で分かってい ることだけでは意味がないので、公開をしているということはマスコミの人も、その他 の人も自由に入っておりますから、今までの医師だけの世界のことを、ある意味では国 民に知らせながらやっているというのが大きな違いです。福岡先生お帰りになりました が、特に財源問題のときに、財源が確保できるかどうかは、やはり国民が、これでいい と納得するかどうかが非常に大きなところです。  そういう意味からは、これは前にもちょっと言いましたが、今までと同じようだった ら絶対に取れないと思います。43年から30数年このような形でやっておりましたので、 今までやってきたやり方を若干習正して踏襲するような形では、私はまず駄目だろうと 思います。  そういう意味で、今までどおりではないというようなご意見をヒアリングでお聞きし ているというのが今の状況です。また、意見の収斂は必ずしも必要ありません。これは この1月6日からの審議会のあり様でですので、こういう審議会で意見がまとまらなく ても、両論併記でも一向に構わないわけです。こういうことはあるべき、ということは まとめる必要はないと思っております。ですから、いろいろなご意見をお伺いするとい うのが今の状況でございます。  この後どうするかですが、この6月に始まってまだ年度が終わっておりませんから、 来年2月とか、年度末になりましたら、次のステップはどうしようかということをお諮 りをしようと思っておりますが、いまはいろいろな意見を伺うという時間帯にしたいと 考えております。  前にも言いましたが、やはり財源がいちばん大きい問題です。財源というのは、平成 15年度の8月末の概算要求と、16年4月の診療報酬改定と、この2つがタイミングなの です。ちょうど来年の4月に向けての改定が、まさにいま、今日、明日ぐらいでやって おりますが、そういうタイミングのときですから、今からこうだ、というのは私どもの 立場としても言えない。  そういう意味で、昭和43年以来の臨床研修の問題点を洗い出していただくことが大事 で、それを国民に知ってもらうことが大事なのではないかというつもりでおります。 ○磯野委員  いまのお話の中では私がご質問したのとちょっとずれているのです。私は、何も意見 を集約しろとか、という問題ではなく、いろいろご報告をいただいて皆さん方がディス カッションしていただくポイントをどこに絞ってご議論いただくのかということです。 でないと、いろいろな問題で少しずれた形のディスカッションになっているということ を申し上げているわけです。何が重要なのかという点の中でご議論いただいたほうがい いのではないかということです。 ○横田委員  まさに磯野先生のお話につながることだと思うのですが、前回のヒアリングと今回の ヒアリングの中で、いま社会のニーズがどこにあるかという問題から我々のカリキュラ ムの問題を考えなければいけないと思うのに、人口の15%を占める小児に関しての問題 が1つも取り上げられていないのです。今日も国診協の先生たち、公衆衛生の先生たち からもお聞きしましたが全く取り上げられていない。逆に言えば、いま不採算性で非常 に困っている、小児救急がすでに破綻しているという状況の中で、しかも小児科医がい ま少ない、女医さんが30〜35%を占めて、妊娠出産でどんどん欠けていく。そういう中 で小児の医療をどうしていくかという問題も非常に大きな問題で、その部分は、おそら く研修のローテーションの中で、やはり一般の内科医、外科医の先生たちが小児科に関 しての、あるいは小児に関しての知識も技量も持っていてほしいと心から思うのです。  したがって、そういう議論を、このカリキュラムだとか指導体制の充実の中に、小児 という部分をきちっと入れていただきたいというのが要望です。 ○高橋委員  局長に質問します。先ほど意見の収斂は必要ない、両論併記で亢わないというお話で したが、両論併記だった場合、最後に誰が決めるのですか。要するに1つの制度を作ら なければいけないですよね。 ○局長  行政が決めます、私どもが決めます。 ○高橋委員  私どもは、なんなんでしょうか。私どもは新しい制度を作るということで委員の依頼 を受けたような記憶があるのですが、最終決定は、やはり。 ○局長  24カ月必修化するというところは、もうきちんと決まっているわけです。その24カ月 の中にどういうものを入れるかと。先ほどからいろいろ議論がありましたが、24カ月の 中に入れられるものというのは、そんなに変わるわけはないです。今まで、例えば公衆 衛生が6カ月という話だったり、病理が何カ月という話がありましたが。カリキュラム の中身については若干の違いはあるかもしれませんが、そんなに大きな違いはないのだ と思います。いちばん大きな問題は処遇の問題だと思います。ですから、臨床研修をど うするかというのは、やはり財源問題がいちばん大きいと思います。財源をどうするか については、最終的には私どもの仕事ですから、ということを申し上げたわけです。そ れをこういう場で30数年やってきましたが、臨床研修の中でいろいろなご意見を伺っ て、例えばまとまらないところがあるかもしれませんが、それは一向に構わない。ただ 予算を取るときには、ある程度の形で収斂をしなければならないということです。 ○部会長  おそらく局長が言われているのは、財源の問題についてはこの委員会で磯野先生が言 われたようなことだと思うのです。臨床研修のあり方をどうすべきかというのは平成5 年から議論をしていて繰り返しだ、というお話がありましたが、いま議論されているの は、最初は全人的な医療ができる医師を育成してほしい、しかし、医療の現場に行きま すと、ちつは医師の地域差、いろいろ議論がありました僻地の問題とか、都市に集中す る医師の問題があります。一方では、今日病理学会の先生からお話いただきましたよう な、あるいは小児科の問題、すなわち、領域のアンバランスが大きな問題になってい る。そういうものを何とか研修制度で補えないかというのが趣旨だと思います。  ただ、我々が担わなければならない役割は、やはり研修の質をどういうふうに高める のか、ただカリキュラムだけを作っただけでは、これは委員の方からもご意見がありま したが、本当に研修医のためになるカリキュラムというか、研修内容をどういうふうに 構築していったらいいかということを我々がじっくり考えていかないといけない。  私、すごく大きなテーマが持ち上がってきたというのは、身分保証とも関連します し、各団体のご意見を考えてみますと、研修の場をどう構築するかというときに、いち ばん大きな問題は、やはり定員をある程度、敷かなければいけないのではないかという ことが明らかになってきたのではないかと思います。ここの議論というのは、すなわち 財源にもつながる問題ですし。財源問題は局長が言われたので局長に任せるとして、そ れが具体化になる前に我々が、しっかり制度設計をして理論武装ができるような、いい 案を作るのが我々の役目ではないかと思いますので、あまり急がずにということで。 ○徳永委員  いま身分とか保証の話が出ましたが、私ども大学もご承知のようなことが起こってい ていま検討中のことがたくさんあるのですが、医師が労働者であるかないかということ を前々回の委員会でいろいろお話があり、課長も行政の立場から一定の回答みたいなも のを出されています。平成16年4月以降は、それがはっきりした形をとって進むという ように考えざるを得ないと私は個人的にそう思っています。それまでは曖昧模糊した状 態が現実だと思います。  したがって、ヒアリングのプロセスで、いまは研修医がどうであるかという話もある のですが、お医者さん自身が労働者意識が極めて希薄というか、そういう実態もあるわ けです。そういう中で、研修医だけが突然ある日から労働者になってやれるかどうかと いう、医療界の1つの体質というかカルチャーみたいなのがあります。その辺のことを 何かの機会で適当な方が、この場で発言をしてディスカッションする機会を考えていた だきたいと思います。私が関係している私立医科大学の関係の人とかは、平成16年3月 31日までは現状だけれども、4月1日からは違うのだよという意識がかなり強い。それ らを突然言われても現場は対応できません。私の大学でも、病院あるいは理事会でどう いうふうにやるかなど相談していますが、例えば研修医が何月何日何時何分に出て来 て、何時何分に退院して、残業時間が何分であったとかという考え方などは現場では まったく理解されていない。これは非常に大きな問題で、私自身はそう簡単な問題では ないと思います。  例えば、医療労働者の労働基準法も考えていいのではないかと思っているくらいで す。あるいは、アメリカなどで検討されているホワイトカラーのイクゼプションという か、例外規定ですか、そういったことも話題になっております。その辺のことを私たち の勉強のために、何か学習の機会がほしいと思います。 ○部会長  それは是非、対応を立てていかないといけません。ただ労働者という言葉が、最初の 議論のときに研修医は労働者かということがありましたが、勤務体制からいくと、そう ならざるを得ないというのが事務局の答えだったと思います。  時間が過ぎてしまいました。今日は大変ご熱心なご議論をいただきましてありがとう ございました。いろいろご意見はありますでしょうけれども、次回は大学病院でのお話 をしていただきたいと思っていますので、よろしくお願いします。次回の日程、その他 について事務局からお願いします。 ○医事課長  次回の日程は既に日程調整をさせていただきました。年明け早々で大変恐縮ですが、 平成14年1月11日(金)、午後2時から4時までということで予定しております。委員 の皆様方におかれましては、何卒よろしくお願い申し上げたいと思います。 ○福井委員  次回は是非、国立大学の共通カリキュラムの説明をさせていただきたいと思います。 それに基づいて国立大学附属病院は研修を行うことになりますので、是非時間をとって いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○部会長  それでは、本日は大変ありがとうございました。 (照会先)  厚生労働省医政局医事課   電話 03−5253−1111      内線 2563 染谷         2568 手島