01/12/13 第4回社会保障審議会議事録                 第4回社会保障審議会 ○日時    平成13年12月13日(木) 16:00〜18:10 ○場所    厚生労働省 省議室(9階) ○出席委員  貝塚啓明会長       〈委員:五十音順、敬称略〉        浅野史郎、阿藤 誠、糸氏英吉、岩男壽美子、翁 百合、奥田 碩、        鴨下重彦、京極高宣、高久史麿、永井多惠子、中村博彦、西尾 勝、        廣松 毅、堀 勝洋、山本文男、渡辺俊介       〈臨時委員:敬称略〉        村上忠孝       〈事務局〉        石本宏昭政策統括官(社会保障担当)、中村秀一審議官(医療保険、医        政担当)、河幹夫参事官(社会保障担当)、国立社会保障・人口問題研        究所植村尚史副所長、統計情報部菅原英夫企画課長、統計情報部田村哲        也人口動態・保健統計課長、医政局大谷泰夫総務課長、雇用均等・児童        家庭局皆川尚史総務課長、社会・援護局森山幹夫総務課長、障害保健福        祉部仁木壯企画課長、老健局小林和弘総務課長、年金局福井和夫総務課        長、西村 淳政策企画官、 ○議事内容 1.開会  西村政策企画官  出席予定の委員で、まだ、お見えになられていない方もおられますが、定刻になりま したので、ただいまから「第4回社会保障審議会」を開会させていただきます。  私は政策企画官の西村でございます。  審議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。  配席表、議事次第のほか、  ・資料1     分科会及び部会における審議の進捗状況について  ・参考資料1   平成13年度社会保障審議会児童福祉文化財一覧表  ・参考資料2   平成14年度医療制度改革について(医療保険部会報告書)  ・資料2     医療制度改革大綱  ・資料3−1   平成11年度社会保険給付費(概要)  ・資料2−2   平成11年度社会保障給付費(冊子)  ・参考資料3   介護保険制度の実施状況  ・参考資料4   児童福祉法改正について  ・参考資料5   平成12年人口動態統計(確定数)の概況  ・参考資料6−1 平成14年度厚生労働省予算概算要求の主要事項  ・参考資料6−2 平成14年度厚生労働省予算概算要求の詳細(計数編)  ・参考資料7   平成14年度予算編成の基本方針  そのほかに、日経連の奥田委員、連合の高木委員のご提出のペーパーがございます。  なお、本日は稲上委員、岩田委員、小宮委員、清家委員、木委員、高秀委員、長谷 川委員、樋口委員、星野委員、宮島委員、若杉委員がご欠席でございます。  そのほか、まだご出席になっていない方につきましては遅れてご出席とのご連絡をい ただいております。  また、本日は臨時委員の村上忠行委員にもご出席いただいております。  出席委員が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことをご報告申 し上げます。  それでは、以後の進行を貝塚会長にお願いいたします。カメラは会長の進行になりま したらお控えいただきますようお願いいたします。  貝塚会長  皆様、本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。  それでは、本日の議事についてお諮りいたします。  本日は、社会保障に関する動きとして、前回7月の審議会以降の動きを中心に事務局 から報告していただくこととしております。  まず、議題1として「分科会及び部会における審議の進捗状況」、議題2として「医 療制度改革」、それから議題3として、本日公表されることになっております「社会保 障給付費」について、順次審議したいと思います。  それでは、議事に移りたいと思います。  最初に議題1の「分科会及び部会における審議の進捗状況」について、事務局から資 料の説明をお願いします。 2.分科会及び部会における審議の進捗状況  河参事官  資料1に沿いまして、「分科会及び部会における審議の進捗状況について」ご報告申 し上げます。分科会長、部会長の委員がおられますが、時間が限られておりますので、 私から一括してご報告申し上げます。  分科会は5つございまして、それぞれ設置の根拠及び所掌事務が政令で定められてお ります。  部会につきましては、この場で設置が決められたものが8つありますが、議論が始め られたものが6つですので、お手元には6つの部会の資料をお配りしております。これ 以外に年金部会と年金数理部会がこの場で設置が認められております。  それでは、分科会及び部会の審議の進捗状況についてご報告させていただきます。  まず1ページは統計分科会(廣松分科会長)ですが、社会保障及び人口問題と関連が 深い統計について審議を行うことが政令で定められています。「疾病、障害及び死因分 類」の統計分科会における検討体制について審議し、20〜30歳代男女の縦断調査(仮称) の概要等について説明を行ったところであります。7月30日に第1回が開催され、12月 21日に2回目が開催されることになっております。  2ページは医療分科会(鴨下分科会長)ですが、医療法の規定により、その権限に属 する事項として、特定機能病院の承認又は承認取消をするに当たり意見を述べること等 が審議事項となっています。これまでに2回開かれていまして、そこにあります3つの 大学附属病院の安全管理体制の確保状況について検討を行い、措置を決定したところで あると伺っております。  3ページは福祉文化分科会(永井分科会長)ですが、児童の福祉の増進を図るため、 芸能、出版物、がん具、遊戯等の推薦及びそれらの製作者等に対する勧告を行うことが 審議事項となっています。これまでに2回開催され、出版物、舞台芸術、映像・メディ ア等の各委員会を設置し、児童福祉文化財の審査が行われています。参考資料1の一覧 表は、この分科会によって決定されたものです。  4ページは介護給付費分科会(西尾分科会長)ですが、平成15年4月からの第2期事 業計画期間に向けた介護報酬の見直しのための審議を行います。これまでに3回開かれ ておりまして、介護保険制度実施状況、介護報酬についてご議論をなさっていると承知 しております。  5ページは年金資金運用分科会(若杉分科会長)ですが、年金積立金の運用の基本方 針を策定する等の議論をする分科会です。これまで3回開催されていますが、特に2回 目には、この分科会の検討を経ることになっています年金積立金の運用の基本方針につ いて意見集約をされ、答申をされています。2月27日の第2回の答申につきましては、既 にこの審議会においてご報告させていただいております。  以上、政令によって設置されている分科会ですが、6ページからは部会についてご報 告をさせていただきます。先ほど申しましたように、この審議会の場で8つの部会の設 置が決められましたが、いま動いている、あるいは動く準備をしている6つの部会につ いてご報告申し上げます。  6ページは医療部会(高久部会長)ですが、医療を提供する体制の確保に関する重要 事項を調査審議するため、この場でお決めいただいたものです。これまでに3回開催さ れ、12月19日に4回目が開催されます。医業経営、医療の情報提供等についての検討が 行われています。  7ページは児童部会(岩男部会長)ですが、今後の児童に関わる施策の推進等の基礎 的な検討を行うために設けられた部会です。12月4日に第1回目が開催されたと承知し ております。  8ページは福祉部会(岩田部会長)ですが、市町村地域福祉計画、都道府県地域福祉 支援計画、いずれも平成15年4月施行ですが、これら計画策定に資するための指針につ いて審議をするための部会です。これまでに3回開催され、12月19日に4回目が開催さ れるということです。  9ページは障害者部会です。平成15年度から障害者福祉サービスが新たな制度(支援 費制度)に移行しますので、その施行に係る事項の検討と、「精神保健及び精神障害者 福祉に関する法律」の規定により社会保障審議会の権限に属する事項等をご議論いただ くことになっています。12月19日に第1回を開催されるとお聞きしております。  10ページは医療保険部会(貝塚部会長)ですが、平成14年度医療制度改革についてご 議論されるということです。これまでに8回開催され、意見書がとりまとめられており ます。この意見書につきましては、後ほどご報告、ご議論を賜ることにしておりますが、 参考資料2が「平成14年度医療制度改革について」の意見書という形でお配りしている ものです。  11ページは人口部会(廣松部会長)です。平成12年国勢調査人口を基準人口とした新 しい将来人口推計を国立社会保障・人口問題研究所が行うに際して、その考え方や推計 前提について検証を行う部会です。これまでに4回開催されています。  以上、政令で設けられた5つの分科会、この社会保障審議会の総会の場において設置 を決められた8つの部会のうち既に動いている、あるいは近く動く6つの部会について 審議の進捗状況をご報告申し上げました。以上です。  貝塚会長  ただいま資料1に基づきまして各分科会、部会の最近の審議の状況について簡単にご 報告いただきましたが、人口部会について部会長の廣松委員からご発言があるというこ とですので、よろしくお願いします。  廣松委員  全体としては、いまご報告いただいたとおりですが、将来人口推計につきましては各 種施策の立案のための基礎資料、さらには、もう少し広く様々な面で日本社会の将来を 見通すための基礎データという使われ方をしておりますので、客観的かつ説得力のある 推計とすべく、推計の考え方や前提について専門的な観点から審議を行っています。  平成12年の国勢調査人口の基本推計が9月に公表されました。平成12年の人口動態統 計の速報も10月に公表さましたので、それらの基礎資料をもとに検討を行っているとこ ろです。  特に第3回の部会で出生率の仮定設定にあたって、近年の夫婦の出生力の低下が著し いということが議論になりまして、将来人口を推計するにはその見通しをどうするかと いうことが一番重要な点であるため、夫婦の出生力の見通しに焦点を当てた部会を特別 に第4回として開催し、慎重に審議を行っているところです。  今後の予定ですが、人口動態統計につきましては、参考資料5として配られている 「平成12年の確定数」が公表されました。平成13年の年間推計も近く取りまとめられる ということですので、これらのデータを総合的に勘案した上で、現在、国立社会保障・ 人口問題研究所において最終的な推計人口を行っていただいております。その結果につ きましては来年1月に人口部会で報告を受け、審議をすることとなっております。なお、 この推計結果につきましては、その直後に開催が予定されます本社会保障審議会でもご 報告する予定です。簡単ですが、補足として発言させていただきました。  貝塚会長  ありがとうございました。  たくさんの議題がありますが、医療制度改革については一応まとまっておりますので、 議題2として別に審議していただくことにしたいと思います。それ以外につきまして、 各分科会、各部会について何かご意見、ご質問、あるいは分科会長、部会長のお立場で 説明などがありましたら、ご自由にご発言いただきたいと思います。  渡辺委員  いま人口部会の廣松部会長からご報告いただきましたが、平成4年、平成9年の人口 推計、特に合計特殊出生率の推計によって年金の財政再計算が行われた。私はこの問題 の専門家ではありませんが、私の印象としては、特に平成4年の合計特殊出生率は非常 に甘かったと言わざるを得ないし、それによって年金の将来負担について相当に狂って 見通しを出さざるを得なかった。平成9年の推計についても、これはこれからの評価に なるかもしれませんが、私の個人的な見解としては甘かったと言わざるを得ない。これ が2004年の年金改革の基礎データになるわけですから、統計的かつ専門的な推計が必要 なんでしょうけど、出生数の問題というのは、それ以外の社会的な問題、あるいは国民 の意識など統計に表れないようなデータによって左右されるのではないか。先ほど部会 長がおっしゃった信頼される、世間に納得されるような数字を出していただきたいとい う要望を申し上げておきます。  廣松委員  その点に関しましては人口部会でも時間をかけて議論をいたしました。結論として、 今回の将来推計において、出生力に関しては過去の統計データを追うだけではなくて、 様々な要因も考慮した形での見通しを立てるべきであろうということで、現在、説得的 な仮定設定及び計数の計算等を鋭意やっていただいているところです。  貝塚会長  ほかに何かございませんでしょうか。  それでは、議題2の「医療制度改革」に移りたいと思います。事務局から資料の説明 をお願いします。 3.医療制度改革  中村審議官  医療保険と医政を担当しております審議官の中村でございます。今お話のありました 医療制度改革につきまして、医療保険部会での検討状況、医療制度改革をめぐる状況に ついてご報告申し上げたいと存じます。  参考資料2「平成14年度医療制度改革について」は、去る11月26日、貝塚部会長のも と、医療保険部会でまとめていただきました報告書です。  資料2「医療制度改革大綱」は、11月29日に政府・与党社会保障改革協議会で取りま とめられたものです。  前回、この社会保障審議会が開催されましたのが7月ですので、7月以降の医療制度 改革をめぐる動きについて、資料がなくて恐縮ですが、口頭でご報告させていただいた 上で、部会の報告書についてご説明申し上げたいと思います。  厚生労働省は14年度の医療制度改革待ったなしということで、9月25日に「医療制度 改革試案」を公表させていただきました。内容は、健康づくり・疾病予防の推進、医療 提供体制の改革を含めて、持続可能で安定的な医療制度を構築していこうということで 幅広い項目について提言しておりますが、特に医療保険制度改革に絞って申し上げます と、いくつかポイントがありました。  一般の医療保険制度につきましては、現在、サラリーマンの患者負担が本人は2割で すが、被用者保険と国民健康保険については給付率を7割に統一する。逆に申しますと、 サラリーマン本人の負担は3割に引き上げるという提案をいたしました。  保険料についても、厚生年金の方がボーナスも含めて保険料をいただくという総報酬 制と呼んでいますが、それが平成15年度から実施されますので、政府管掌健康保険につ いても保険料を月々標準報酬からいただいているのを改めまして、総報酬制度を導入す る。今は月々8.5%の保険料をいただいておりますが、総報酬制にしますと7.5%に相当 します。政府管掌健康保険は財政が厳しいことから、現行の7.5%の保険料を平成15年度 から引き上げたいという提案をさせていただきました。  老人医療制度につきましては、老人医療費が伸びていますので、老人医療費の伸びが 経済の動向と大きく乖離しないような伸び率の管理制度を導入したらどうかという提案 をいたしました。  現在、70歳から老人医療の対象になっていますが、5年かけて75歳に順次引上げてい く。現在は70歳以上の高齢者は1割負担ですが、70歳から74歳までの方は順次引上げて いって、2割の患者負担をお願いする。75歳以上の方は1割負担ですが、高所得の方に ついては2割の負担をお願いするという提案をさせていただきました。  現在、70歳以上の高齢者医療には公費負担が30%入っていますが、各保険制度から拠 出していただく拠出金の負担を軽くするために公費負担の割合を3割から5割に引き上 げる、こういう提案をいたしました。  口頭で恐縮ですが、ただいま申し上げましたような提案を9月25日に厚生労働省の試 案として提出させていただきました。  資料1の10ページにあります「医療保険部会の検討状況」を見ていただきますと、9 月7日の第1回でフリーディスカッションをしていただき、9月25日に厚生労働省の試 案を出しましたので、第2回以降この試案について医療保険部会でご検討いただいたと いうことです。  その結果が参考資料2に出ております。貝塚部会長がいらっしゃいますが、私の方か ら簡潔にご説明させていただきたいと存じます。表紙をめくっていただきますと、平成 14年度医療制度改革について、4ページにわたる記述があります。  この4ページの後に別添として1ページから振られているものがありますが、「社会 保障審議会医療保険部会における議論の概要」ということで、ただいま申し上げました 各項目に沿って部会で出ました議論について記述されています。  まず、最初の4ページは「平成14年度医療制度改革について」ですが、本年9月より 8回にわたって医療保険部会で検討された概要についての総括です。  1として、第2次世界大戦前からの医療保険制度の歴史が書いてありますが、基本的 な認識としては、少子高齢化が一層進展し、経済が低迷する中で、医療制度については 抜本的な改革が実現されないままに、医療保険財政は悪化し、制度としての持続可能性 が危ぶまれる状況に至っている。  2として、他の先進諸国に目を転じると、各国とも医療費の増大の抑制が優先的な課 題として位置づけられているということが論じられています。  3として、我が国の医療はどういう状況かということですが、かつてのような経済の 伸びが期待できない中で、将来に向けて医療保険制度を持続させていくためには、保険 料・公費負担と医療費の伸びの兼ね合いが国民的な合意の下に適切に保たれることが重 要であるとしています。  4で、医療保険制度の考え方が書いてありますが、特に、高齢化が進む中で、国民健 康保険制度に顕著に問題が生じてきており、持続可能性の確保のためには、高齢者の負 担と現役世代の支援を適切に組み合わせ、医療費を国民全体で公平に負担するシステム を考えていく必要がある。このように総括しています。  3ページでございますが、厚生労働省の「医療制度改革試案」について述べています が、特に、医療保険制度の給付と負担、高齢者医療制度、老人医療費の伸び率管理制度 の3点を中心に提案がなされています。  部会でも各項目についてご議論いただきました。健康づくりや疾病予防、医療提供体 制の改革など、概ね共通の認識が得られた部分もあるが、個別の項目については意見の 隔たりが大きく、全体的な意見の一致には至らなかった。このような状況になっていま す。  3ページの7で、特に論点となりました医療保険制度の今後の在り方については、早 急に制度の一本化を求める意見がある一方、医療の効率化に逆行するのではないか、一 本化は適当でないとする意見がありました。  伸び率管理制度については、その導入について強い反対意見がある。他方、老人医療 費のみならず一般医療費についても実効性のある総額管理を行うべきとの強い意見があ る。このように意見が分かれているということがございました。  このほか、今回の位置づけとしては、平成9年以来の懸案について進捗が十分でない ため、その進捗が求められるのであって、保険料や患者負担へのしわ寄せは行うべきで はない。診療報酬や薬価制度の見直しを進め、また、診療報酬の引き下げを行うべきと の意見があった。このような状況でして、個別の項目についてはかなり意見の隔たりが 大きかったということが触れられております。  4ページの8では、この部会においても厚生労働省試案の老人医療費伸び率管理制度 が実質的な議論となったことは、我が国も他の先進諸国と共通の時代的要請の中にいる ことを感じさせるものである。このような総括をしていだだいております。  別添の「議論の概要」につきましては、1ページが「基本的な考え方」について、2 ページから「医療保険制度」についてですが、ここでは制度体系・保険者の在り方、給 付と負担、保険料負担等というくくりで、それぞれ意見が整理されております。後ほど お読みいただきますと、それぞれの項目についてかなり意見が分かれていることがご理 解いただけると存じます。  「高齢者医療制度」につきましては、まず「制度の体系」が5ページにあります。6 ページに「老人医療費の伸び率管理制度」について、「導入を求める意見」、7ページ に「導入に反対の意見」、「伸び率の目標値」、「調整の方法」等について意見を整理 しています。高齢者の「患者負担」について8ページで論じられています。9ページか らは「診療報酬・医療提供体制等」の項目ですが、「診療報酬・薬価基準等」、10ペー ジに「健康づくり・疾病予防」、「医療提供体制」となっています。11ページに全体の 項目にわたる「その他」の事項について整理されております。  以上が11月26日に取りまとめられた医療保険部会の報告の概要でございます。  次に資料2ですが、政府・与党社会保障改革協議会で取りまとめられました「医療制 度改革大綱」についてご説明申し上げます。この「大綱」は、9月25日に厚生労働省 の方で提案をいたしました「医療制度改革試案」について、政府・与党社会保障改革協 議会、この協議会には下部にワーキングチームも設置されましたが、関係省庁、与党3 党の代表者が集まってを議論し、「医療制度大綱」として取りまとめられたものでござ います。  1ページに「医療制度改革の基本的視点と将来方向」が書かれてございますが、2ペ ージをご覧いただきますと「医療制度の将来方向」といたしましては、まず「医療保険 制度の一元化等」について触れております。医療保険制度の一元化を将来の方向とする ことは一つの有力な考え方であり、これについて具体的な検討を開始し、一定の期間内 に結論を得ることとするとされております。  3ページでございますが、高齢者医療制度については、「新しい高齢者医療制度の創 設」に向けて議論を進めていくべきだという指摘がなされております。また、「診療報 酬体系」についても、現在の診療報酬体系については様々な問題があることから、ある べき医療の姿を踏まえ見直すとともに、医療技術や医療機関の運営コストが適切に反映 されるよう、透明性の高い体系へと見直しを進める必要があるとしております。  3ページの下の「II.保健医療システムの改革」については、「健康づくり・疾病予 防の推進」、「医療提供体制の改革」などに触れられております。  5ページの「III.診療報酬・薬価基準等の改革」ですが、診療報酬については(1)の (2)でございますが、当面する平成14年度の診療報酬改定については、改革の痛みを公平 に分かち合う観点からも、賃金・物価の動向、昨今の経済動向、さらに保険財政の状況 等を踏まえ、引き下げの方向で検討し、措置するとされております。  6ページの「IV.医療保険制度の改革」につきましては、まず、「保険給付の見直し」 でございます。2つ目のパラグラフでございますが、総報酬制の下で、平成15年度から 政府管掌健康保険の保険料を予定どおり引き上げるとともに、先ほど申しましたいわゆ る3割負担に統一することについては、政府・与党社会保障改革協議会では「必要な時 に7割給付で保険間の統一を図る。」という文言で整理をされております。  それから「保険料の見直し」については、高齢化のピーク時においても、保険料負担 の水準が過度なものとならないようにする。政府管掌健康保険の保険料率については、 定期的に収支両面の見直しを行い、改定を行うこととする。また、被用者保険について、 保険料負担の公平を図る観点から、総報酬制の導入を図るとされておりまして、この部 分では書かれておりませんが、先ほどの(1)の「保険給付の見直し」のところで総報酬制 の下で、平成15年度から政府管掌健康保険の保険料を予定どおり引き上げるということ が明らかにされております。  「高齢者医療制度」については、7ページでございますが、まず、「対象年齢・公費 負担の見直し」については、現行制度の対象年齢を75歳以上にするとともに、公費負担 割合を引き上げるということについては、厚生労働省試案のとおりとなっております。 その際、患者負担については、厚生労働省の提案は70歳から74歳の方については2割負 担ということを提案しておりましたが、この「大綱」では70歳から74歳の者の患者負担 は75歳以上の者と同様の取扱いとするとされております。  それから、高齢者の「患者負担の見直し」のところでは、老人医療の対象者の患者負 担については、低所得者に配慮しつつ、完全定率負担とするとともに、一定以上の所得 の者に対しては応分の負担を求めることとされております。  「医療費の伸び率管理」という提案が厚生労働省試案でされていることを申しました が、「大綱」では伸び率管理という制度はとらず、医療費総額の伸びの適正化というこ とで、医療費、特に高齢者人口の増を大きく上回って増加する老人医療費について、そ の伸びを適正なものにするよう、伸び率抑制のための指針を定め、その指針を遵守でき るよう、速やかに、診療報酬の在り方など有効な方策を検討し、実施するものとされて おります。  以上が政府・与党社会保障改革協議会の「大綱」ですが、この大綱を踏まえ、診療報 酬の改定、薬価基準の見直しなどを含めて14年度の予算に関連いたしますので、政府と しては14年度政府予算案編成に向けて、現在、大詰めの作業をしているところでござい ます。以上、ご報告を申し上げました。  貝塚会長  ありがとうございました。  今回の医療制度改革は従来までと違い、やや複雑なプロセスで、1つは厚生労働省で 試案を出されたということがありました。医療保険部会ではそれを念頭に置きながら議 論をしましたが、多様な意見が出まして、そう簡単に意見の合致は得られませんでした。 その後、今お話がありましたように、政府・与党社会保障改革協議会で議論したことに ついてそれぞれ触れられていますが、微妙な表現も入っている文章になっています。 最終的には審議官が言われましたように、明年度予算編成で公費負担の問題が必ず入っ ておりますので、そういう問題を含めて政府として成案という形になっています。  医療保険部会に所属してご議論いただいた方もおられますが、それ以外の方々も含め て、ご質問、ご意見がありましたらご発言いただきたいと思います。  村上委員  私どもの代表の高木が所用があって出席できませんので、私が臨時委員として代理で 意見書を預ってきましたので、それについて申し上げたいと思います。  いま政府・与党でやられている医療制度改革は抜本改革を先送りしている。国民に負 担増だけを押しつけているという認識を前文で書かせていただいております。我々とし ては97年に政府が国民に公約したことをきちっとやってほしいという立場です。  1の(1) 医療提供体制の問題ですが、ここに書いてあることは、かねてから言われて いたことがなかなか実現しない。年限を切って医療提供体制の整備をきちっと進めるべ きである。  (2) EBMはようやく始まりましたが、我々としては3年以内に完全実施を期してほ しい。  (3) 2002年度中にカルテ、レセプト開示の義務化、医療ミス・事故の届出の義務化な ど医療情報の公開、医療広告規制の原則撤廃という問題をやっていただきたい。  (4) 保険者機能の発揮・強化については、今回の政府の大綱の中にも若干ありますが、 我々としてはまだ足りない。保険者の規模の適正化はもちろんですが、保険者機能を強 化することを早急にやっていただきたい。  2.診療報酬関係では、(1) 診療報酬体系については、これもかねてから申し上げて いるところですが、年限を切ってきちっとやっていくべきではないか。  (2) 薬価基準制度については2002年度中にやっていただかなくてはいかん。「205円 ルール」はただちに廃止していただきたい。  (3) 現行の老人保健制度にかわる新たな高齢者医療制度「退職者健康保健保険制度」 を我々は提案していますが、これを2002年度に創設していただきたい。  (4) の健康づくりのところについては、もっと急ぐべきです。  3といたしましては、中医協で診療報酬改定の協議が進んでいますが、医療費総額を 据え置くことを考えるべきであるということで、それに見合うような診療報酬のマイナ ス改定をやってもらわなければ困るということです。  4.その他の問題としては、3割負担は認めることはできません。総報酬制の導入は 容認しますが、保険料の引き上げはやるべきではない。これまで我々は何回も負担して きましたので、また負担の繰り返しになる「三方一両損」というならば、我々は負担は すべきでないと思っています。  高額療養費の問題は保険制度の根幹にかかわるということを前回から申し上げてきま したが、医療保険制度の理念という問題がきちっと整理されないまま、また引き上げよ うとしていることはおかしい。  老人医療の対象を70歳から75歳に引き上げることは、理由が分からないまま財政のこ とだけ考えてやっていくということは、将来いろんな問題を来すだろうということです。  薬剤の一部負担金制度は効果があるので、やめることはない。そのまま残してもらい たい。  老人医療費拠出金の問題ですが、上限撤廃というのは認めるわけにはいかない。老人 加入率の算定対象は0歳まで入れていますが、20歳以上の加入者数で行うべきだと思っ ています。  老人医療費の伸び率管理については、老人だけやるのはおかしい。医療費全体につい ての抑制策を法定化してやるべきである。  政管健保がらみですが、社会保険病院、必要ならば国費でやっていただきたい。貧乏 な政管で年間320億も出すゆとりはございません。地域病院として必要ならば国費で出し ていただきたい。財政構造改革法によって170億程度の政管健保の事務費が時限立法で保 険料から賄われていますが、これについては時限立法を守っていただきたい。  これは忘れてもらっては困るのですが、1992年の健康保険法改正の時に、保険財政に ゆとりが出てきたということで、保険料引き下げと同時に国の補助率が16.4%から13% にされました。しかし、その後、平成9年に8.5%に引き上げられた時に、当分の間、 16.4%から13%にするとした以上は、保険料引き上げにしたがって16.4%に戻すべきだ と思っておりましたが、今回も保険料を引き上げるということは、この92年の健康保険 法改正の経緯から考えて、我々としてはおかしい。ただちに保険料引き上げの前に、 16.4%に戻すべきであるということです。以上、代理として申し上げておきます。  貝塚会長  ほかにご意見、ご質問はございませんでしょうか。  奥田委員  お手元に「医療制度改革について」という資料を出しておりますが、ご説明申し上げ ます。  第1に予算編成の問題ですが、診療報酬の相当程度のマイナス改定は是非行っていた だきたい。現下の厳しい経済動向、特に賃金・雇用・物価、国家財政及び各医療保険財 政、それと大きく乖離する医療費の伸びを踏まえて、薬価の引き下げに加えて、相当程 度の診療報酬のマイナス改定をすべきである。  医療費総額の抑制については、実効性がある「指針」を策定すべきである。来年度に ついては、上記(1)で述べた諸状況を踏まえて、伸び率抑制に向けて「指針」を定め、こ れを遵守すべきである。今後は、医療費全体を抑制する実効性のある制度を早急に導入 すべきであると思っております。  2.今後、早急に取り組むべき課題として、(1) 拠出金制度の廃止と新たな高齢者医 療制度の早期創設。現役世代の保険原理を歪めている老人保健拠出金制度を廃止し、世 代内・世代間の公平な負担に基づく独立方式の高齢者医療制度を早急に創設すべきであ る。さらに、退職者医療制度についても存在意義の見直しを含めて抜本的に改革すべき である。こうした抜本改革については平成14年度中に結論を出すべきであると考えてお ります。  (2)「医療サービス効率化プログラム」の計画的かつ早期の実施ですが、第1に、「医 療制度改革大綱」にあるとおり、医療のIT化、広告規制の緩和、診療ガイドラインの 策定、包括払いの拡大などを着実に進めるべきであると思います。  次に、「大綱」に明記されているもの以外でも、閣議決定された「骨太方針」や総合 規制改革会議の「答申」、厚生労働省の「改革試案」で示された各種施策を、計画的か つ早期に実施すべきである。特に、以下に述べる課題が重要でありまして、一刻も早く 実現すべきであると思います。  3つございまして、1つは保険者によるレセプトの直接審査・支払、保険者と医療機 関の直接契約など、保険者機能の強化に関する規制改革。  2番目に混合診療の容認を含めた公的医療保険制度の守備範囲の見直し。  もう1つは、株式会社の医療機関経営への参入規制の廃止、以上の3点であります。  (3)として、安易な一本化には反対したいと思います。医療保険の安易な一本化は、保 険者機能発揮のインセンティブを著しく阻害し、医療の効率化に逆行するため、行うべ きではないと思います。保険者が医療費効率化に取り組み、保険料徴収の実効性を上げ るような環境整備を図るとともに、所得捕捉の格差が是正されることが先決問題である と思います。  最後に、改革の推進体制ですが、厚生労働省は、上述の諸課題について、具体案を至 急作成し、社会保障審議会やその傘下の部会等での検討を含めて、オープンな議論がな されるようにすべきである。もう1つ、医療制度改革につきましては、経済・財政問題 と深く関わっているため、改革の進捗状況について経済財政諮問会議に定期的に報告す るなど、政府全体として推進体制を一層強化していく必要があるだろうと、このように 所見を申し上げます。以上でございます。  貝塚会長  ありがとうございました。ほかにご意見がありましたら、どうぞ。  糸氏委員  私は部会に入っておりまして、いろいろな議論をずっと聞いてまいりました。今度の 「試案」の問題ですが、我々も高齢者医療制度が当面の問題ということで、厚生労働省 が高齢者の抜本的な改革案を出してくれるのではないかと期待してたんですが、出てき たものは75歳以上に年齢だけ引き上げたとか、負担をちょっと変えたということで、場 当たり的な改革、いわゆる手直しに終わったというのは非常に残念であります。抜本改 革については、特に高齢者医療制度は国民的な1つの願いであったわけで、これから大 変な高齢化社会を迎えますので、早く作らなくてはいけない。そのために我々も医療提 供者として、できるだけの努力はしなくてはいけないと覚悟しているわけです。  特に問題になっている拠出金の問題です。これは経営者団体連盟が指摘しております ように、これがやはり解決されてない。我々はこれはなくするべきだと、そして、その 財源を拠出金の方は若人の方にお返しして、若人の方はあくまでも保険原理でやるべき だ。高齢者については保険というよりは保障に軸足を置いたかたちの制度をできるだけ 早く作ってほしいということをお願いしていたわけですが、これは実現できなかったと いうことで非常に残念に思っております。しかし今からでも遅くない。21世紀の大変な 高齢社会でお年寄りが安心して暮らせるような新しい独立型の高齢者医療制度を是非作 ってほしい。かように思っております。  先ほどから連合ならびに経営者団体連盟のご意見をいろいろ拝聴いたしました。その 中で、特に今回の改革にあたって、診療報酬のかなり大幅な引き下げのご意見、薬価は 当然下がってくるわけですが、さらに診療報酬も引き下げろというご意見です。医療機 関が現在の診療報酬で十分な新しいテクノロジーも駆使し、また、十分な人的サービス を患者さんに施しているかどうかというと、私は必ずしも十分ではないと思います。そ の証拠に、大学病院、国立病院、自治体病院などマンパワーをそろえたところは全体で 1兆以上にのぼる税の投入をしても、なおかつ赤字を出している病院が多いという実態 を考えますと、現在の診療報酬で国民の納得のいく医療、技術革新に耐えうるような医 療が必ずしも提供されるとは思っておりません。ましてや民間はそういう税の補填もあ りませんから、本当にぎりぎりのところで看護婦さん、医師が夜も夜中も必死になって やっているわけでして、さらに診療報酬を引き下げろということについては私たちは必 ずしも同意できない。特に我が国の医療制度を何十年、ずっと振り返ってみますと、国 による一元的な管理医療でやられているわけです。手術料にいたしましても、入院料に しても、また、薬価にしても、国によってこの価格は決まっているわけです。その中で、 なおかつ医療のやり方というかその方法については、これは厳しく政府で決められてお りまして、それを踏み外すと支払いは拒否されるという状態になっている。医療単価も そうですし、医療のビヘービアについてもかなりの縛りがかかった状態で我々は国民皆 保険体制をなんとか必死に維持してるというのが実情でございます。こうした中で、さ らに診療報酬を引き下げろというのは、いろいろな理由であることは百も承知しており ますが、しかし、これからますます革新的な医療技術の進歩、あるいは情報化時代にお ける国民のさらなる医療へのニーズ、サービスの要求というものに、どう私たちは切り 下げられた医療費の中で対応していくかということが問題でございます。蓄えはできな くても、ランニングコストが賄える程度の診療報酬であれば、我々はいくらでも国民の ためであれば、相当な切り下げにも応じたいと思いますが、これからくるさらに大きな 高齢化という波の中で、遺伝子治療とか臓器移植とかいろいろな医療が次々とやってく るわけですが、こういう技術革新に対応しながら、なおかつ診療報酬を一方で引き下げ てやれというのは我々としては非常に厳しいものである。医療の質とかサービスは結果 的に下がりますし、我々自身もこれを合理化しようと思えば、ほかの企業と違いまして、 人員は定められているわけですから、その中でやっていかなくてはいけない。簡単に人 員削減はほかの企業のようにリストラというわけにはまいりません。我が診療所におい ては、今度、医業経営実態調査で示されたように、人件費を切り詰めて、何とかしのい でいくしか仕方ないという厳しい状態でございます。しかしながら、国民皆保険制度と いう大事な事業を我々は今まで支えてきましたし、今後もこれを支えていかなくてはい けないと思っております。  内閣府の医療サービス効率化プログラム等を見ましても、株式会社の導入とか混合診 療の容認とかいろいろ言っておられますが、これが進みますと、今のアメリカのような 弱肉強食の世界になるおそれが多分にあると私たちは心配しております。それに参加で きない、例えば私保険が買えないような人はどうなるのだろうか。お金のない人は悪い 医療で甘んじろ、お金のある人はとことんいい医療で結構ですということが我が国の国 民のコンセンサスとして受け入れられるのかどうか。受け入れられればいいですが、も し受け入れられなかった場合はどうするか。そのへんのことも考えなくてはいけないの ではないかと思っています。国民皆保険制度においては富める者も貧しい者も平等性と いうことが一貫して尊重されてきたわけですので、平等性ということは所得の格差によ って医療の格差ができるということが果たしていいのかどうかということが我々として も気になるところでございます。  いろいろ難しい面を抱えながらも、我々としては国が定めたことに従わざるを得ない し、国民が少しでも医療へのアクセスのチャンスをなくさないように、低所得者であっ てもそこそこの医療が十分受けられるような体制を堅持していきたい。そのためには、 いかなる努力も惜しまないつもりでおります。以上でございます。  山本委員  私は一言だけ申し上げておきたいんですが、これからも医療保険部会などはあると思 いますが、意見の一致ができるように取り運ぶべきだと思いますね。バラバラで、みん な言いたい放題で、まとまりのない部会だったと思います。それは提案の仕方が悪かっ たという以外にないと思います。忙しい皆さんが参加してるわけですから、皆さんの意 見がまとまるよう、一致ができるような提案の仕方をすることが必要だと思いましたね。 私はこういう部会に出てきたのは初めてでして、びっくりしました。それだけ申し上げ ておきたいと思います。  なぜそうなったかというと、じっと見ておりましたところが、改革という名のもとに、 我々のところでは道路を修繕するのをガリムシェというんですが、ガリムシェ方式のよ うな試案を出されて、それに対して議論するんですから、議論する方も難しかったかも しれません。その点については理解できるんですが、現代、21世紀にふさわしい日本の 医療制度を考えていくことが必要ではなかったかと思うんです。皆さんもそういう気持 ちだろうと思うんですが、出された試案に対して集中的な議論になったので、こういう ことになったと思います。もう少し提案の仕方を考えることが必要で、改革という名の もとで財政再建だけやればいい、医療費の高騰を抑制すればいいということだけでやら れると、こういう結果が出てくるのではないかと思われますから、これからも十分考え て提案をしていただくよう願いたい。  もう1つ私は、今回の議論の中で給付と負担の流れがうまくいくようになるだろう、 そういう議論も出てくるだろうと思ってたんですが、とうとうそれはできませんでした。 ギシギシした流れの給付と負担になったような感じがいたします。なぜそうなってるか というと、保険者の方に問題があると思うんですが、私も国民健康保険を維持しており ますけれども、国民健康保険はもう維持困難になってきておりまして、破綻寸前です。 平成14年か15年に診療はしていただいたけれども、財政破綻を起こして支払いができな いくなった場合、どうするのだろうか。それを思うと、なぜこの際、国民健康保険がき ちんとやれるよう、そこまで突っ込んだ議論をしなかったのかということを後悔してい ます。給付と負担の流れというのは順調でなければならない。よく流れるような組み合 わせができるようなシステムを考えることが必要だと思いますが、それが欠けてるよう な気がしました。しかも、負担についてですが、今はばらばらな負担をしているわけで す。保険者組合、政府管掌の保険組合、我々のような国民健康保険などがありますが、 それぞれの地域に適合した保険料を負担するような、そういうことを考える必要がある ということで、地域ごとの一本化、例えば県ごとの国民健康保険の一本化を私どもは提 唱した。ところが、どうやら少しは分かっていただいたような気がいたしますが、すべ てを認めていただくまでにはいかなかった。これも中途半端になってます。このままで は私どもはやっていけませんので、先ほど申し上げたように、破綻がきた時の責任はい ったい誰がとるのかということになると我々がとらなきゃならんようになりますから、 その点についても非常に不満があります。今後、これも厚労省の方で真剣に考えていた だかないといかんと思います。  診療報酬についても、うんと突っ込んだ議論をするんだと思ってたんですが、これも ありませんでした。その時の考えでは、診療報酬については次の診療報酬の点数のとこ ろで議論すればいいということになったんだろうと思うんですが、一貫して議論するよ うにすることが必要だと思います。  もう1つは老人医療です。老人医療は頭押さえだけすればいいと考えておられるとこ ろが非常に残念です。みんな老人になるんです。いま自分は40だから、40から上は歳を とりませんという人がいるなら、いつでもお会いしたい。みんな老人になるんです。も う少し老人のことを考えて老人医療の組み立てを考えればよかった。何か他人のような、 人のことのような考えで老人医療について議論したことを非常に寂しく思います。私は 歳がいってるからそう言ってるんじゃありませんよ。みんな老人になるんです。だから、 その時のことを考えていくならば、老人医療というのは、もう少し真剣に取り組んでい けばよかった。ただ頭だけ押さえておけばいいという考え方については非常に残念な気 がいたしました。その点についてこれからも考えていただければと思います。  もう1つ、株式会社方式を考えるなんていうのは医療を破壊するものであると思うの で、何でそういうものを考えるのか全く分かりません。すべて力によってやっていけば いいという国にするのなら仕方がありませんが、みんなが楽しんで平和に暮らせる国を 作ることが一番大事じゃないでしょうか。こういう考えを出してくるのは、すべてを壊 してしまうような感じがして非常に危険を感じます。  今回、初めて参加させていただいたので、よく分からなかった点もありましたが、私 は何十年間か医療に携わってきましたので、よく知ってるつもりです。知ってるつもり にもかかわらず、私が最後に後悔するような結果になったことは非常に残念です。これ から、もう少しその時代にふさわしい、将来に持続性の高い提案をしてくださるようお 願い申し上げたい。それが今回の医療保険部会での私自身の所感でございます。いらん ことを申し上げたけど、言うだけのことは言っておかないと皆さんに理解してもらえな いから申し上げておきます。以上です。  貝塚委員  医療保険部会以外の方で何かございますでしょうか。  高久委員  いろんなご意見の中に必ず出てくるのは、医療費の無駄とか非効率ということが必ず 出てくるんですが、しかし実際に、私は細かいことは分かりませんけれども、私が今ま で長い経験した中で、病院の中でそんなに無駄をしてるという感じはほとんどないんで すね。必ずこういうことが出てくるというのは私は個人的には非常に心外にいつも思っ ておりました。それから大きな病院というと大学病院ですと研修医というのは1日に十 数時間も働いて、兵庫医大などでは研修医が過労で死んだというので裁判になってりま して、そういう点で医療従事者は非常に苛酷な状態で働いてる。先進諸国の中で患者さ んの数に対する医療人の数は日本が一番少ない。そういう状態で医療の現場では一生懸 命働いてることを、皆さんが是非理解していただきたいと思います。何かというと無駄 をしてるという表現をするのは、私たち医療の場にいる者としては非常に心外であると 言いたいと思います。勝手なことを言って申し訳ありません。  それからもう1つ広告の問題が連合と経済団体の方から出ていますが、ある程度は規 制を緩和する必要があると思いますけれども、アメリカの現状を見ますとテレビとかイ ンターネットで猛烈な広告をした結果として患者さんの方から薬に対する要望が非常に 増えて、薬剤費が非常に上がったという事実がありますので、むやみに規制緩和を広告 にやりますと、その結果として医療費全体が上がることは間違いない事実だと思います。  貝塚委員  まだいろいろとご意見があるかと思いますが、時間の関係がありますので、医療制度 改革については以上で終わらせていただきたいと思います。  それでは、議題3の「社会保障給付費について」国立社会保障・人口問題研究所の植 村副所長から資料の説明をお願いします。 4.社会保障給付費について  植村副所長  それでは、平成11年度社会保障給付費につきましてご説明申し上げます。資料の3− 1と3−2でございますが、資料3−2が今回とりまとめました社会保障給付費の計数 編です。3−1がその概要版ですが、この概要版にしたがいましてご説明申し上げます。  社会保障給付費は、ILOが国際比較上定めました社会保障の基準に基づいて、毎年 推計し公表しているものでございます。我が国の給付費は、昭和39年度のものから計算 をし、公表いたしております。当初、当時の厚生省で計算、公表しておりましたが、昭 和57年度の給付費から旧社会保障研究所が担当いたしまして、平成8年の社会保障研究 所の廃止、国立社会保障・人口問題研究所の設立に伴いまして、私ども国立社会保障・ 人口問題研究所で平成7年度の社会保障給付費以降、担当いたしております。  平成11年度の社会保障給付費ですが、総額75兆417億円、前年に比べて2兆9,007億円、 4.0%の伸びです。この給付費の数字自体は毎年、最高値を更新しています。  対国民所得比は19.60%でして、平成11年度の国民所得の対前年伸び率が0.2%と低か ったこともあり、対国民所得比は推計開始以来、過去最高を記録しています。  なお、国民所得比の方はバブル期等に一時期、前年度に比べて下がった年もあります が、平成3年度以降は毎年上昇しています。  2ページですが、社会保障給付費は従来から「医療」、「年金」、「福祉その他」の 3つの分野に分類して集計しています。この3分類ごとに見ますと、「医療」は全体の 35.2%、「年金」が53.2%、「福祉その他」が11.6%という構成になっておりまして、 この構成割合は昨年とほどんど変化がありません。  それぞれの伸びを見ますと、「医療」は3.9%の伸びですが、平成10年度が0.4%、平 成9年度が0.5%でしたので、この2年度に比べると大きな伸び率となっています。これ は平成9年の健康保険法等の改正の効果が一巡したことによるもので、平成8年度以前 の伸び率よりは多少低いものの、それに近い水準に戻ったということです。ただ、現役 の勤労者の医療費は引き続き減少しておりまして、この増加の大部分は老人医療費の増 によるものです。  「年金」の対前年度伸び率は3.9%で、前年度が5.5%でしたので、それよりも低い伸 びになっています。この伸び率は、「年金」という分野で集計を始めたのが昭和40年度 ですが、これ以来、最低の伸び率となっています。これは物価スライドが0.6%と低かっ たこと等によるものです。  「福祉その他」の対前年度伸び率は5.0%で、平成10年度の伸び率8.0%よりは小さい ものの、平成8年度、9年度よりは大きな伸び率となっています。  次に3ページでございます。機能別の社会給付費ですが、この分類は1997年12月にI LOの方から各国に対して、今後この分類で分けて報告してほしいという依頼があった ものでございまして、我が国は平成10年度の推計からこの分類を用いています。数字自 体は平成6年度まで遡って数値を出しています。  数値は4ページにあります。9つの機能別分類がありますが、最も大きいのは「高齢」 です。「高齢」というのは、年金のうちの老齢年金、老人福祉サービス等に係るもので して、この割合が44.8%です。  2番目が「保健医療」です。老人医療は保健医療の方に入っていますが、これが34.8 %で高齢と保健医療で全体の8割近くを占めています。  それ以外は、大きい順に申し上げますと、「遺族」、「失業」、「家族」、「障害」、 「生活保護その他」、「労働災害」、「住宅」といった順になっています。  5ページは高齢者関係の給付費です。機能別の「高齢」に加えて、高齢者に関係する 給付ということで、老齢年金以外の年金、老人医療、高年齢雇用継続給付を加えたもの です。これらの高齢者関係給付費は50兆3,559億円ということで全体の67.1%を占めてい ます。  最後に6ページですが、この推計では給付費だけではなく、管理費等も含めた社会保 障全体の収入・支出を計算しています。総収入は96兆9,265億円で、これに見合う管理費 等も含めた支出総額、そこには書いてございませんが79兆4,285億円です。若干の収入が 多いという状況になっておりまして、厚生年金、厚生年金基金、地方公務員共済等で黒 字が出て基金の積み増しが行われているという状況です。  収入の項目を見ますと、一番大きいのが社会保険料で総収入の56.3%を占めており、 次が税で25.4%を占めております。ただ、社会保険料につきましては、収入全体が8.64 %上昇したにもかかわらず、社会保険料収入は0.8%減少しています。これは推計を開始 して以来、初めてのことです。この理由は、経済状況が厳しいことから被保険者数、そ れと標準報酬月額ともに減少したことによるものです。  資産収入については、平成10年度には大幅に下がったわけですが、平成11年度は厚生 年金基金で資産収入が大幅に増加したこともありまして、伸び率59.2%という大幅な増 になっています。これは平成11年度末の時点で株価が非常によかったことを反映したも のです。  なお、一番下の対前年度伸び率の税のところですが、12.2%という大幅な伸びになっ ていますが、これは平成11年度から厚生年金への国庫負担の繰延べがなくなったことと、 政府管掌健康保険に対する過去の繰延べ分の一部返済が行われたことから、税の伸びが 大きくなってるということです。以上でございます。  貝塚会長  ありがとうございました。  ただいまの社会保障給付費のご説明に対してご意見、ご質問がございましたらお願い します。  中村委員  ご存じのように6か月を超える入院患者医療費改定が行われますが、それに対応する 形で12月10日の介護給付費分科会では、療養型病床群の老健施設への転換の基準緩和と いう特例が出されましたが、医療保険から介護保険への流れということになるわけでご ざいまして、こういう根幹にふれる3施設体系の横断的部分は議論すべきではないか、 重要な部分についてはこの社会保障審議会でするべきとの問題提起をさせていただきた い。  それと同時に施設入所について、要介護度の重い人を特別養護老人ホームに優先入所 さる、これも介護保険制度の根幹にかかわる部分だと思うのです。これら根幹部分はど こで議論し、意見集約を図っていくのかを是非お聞きしたい。  それから、12月11日に総合規制改革会議から医療も福祉も保育も改革案が出されまし た。特別養護老人ホームのホテルコストの利用者負担、ケアハウスへの株式会社の参入、 また、社会福祉法人に対する規制の見直し、社会福祉法人の在り方の見直し、社会福祉 協議会の役割の見直し、すべて13年度中に検討・措置しようということが総合規制改革 会議から突きつけられているわけですが、こういう部分をどこでやっていくのか。我々 にそういう具体的な意見をこの社会保障審議会で言わせていただけないのか、先ほど山 本委員からご意見が出ましたように、ただ言っとけばいいのか、ガス抜きに使うのか、 このへん再三この審議会で出る問題ですけれども、分科会設置を了承案件としてこの会 を開くのであれば、はなはだ失礼ではないかと、お忙しい糸氏さんや奥田さんや浅野知 事にお集まりいただいているのであればこそ、この審議会の在り方、性格づけをもう少 しはっきりさせていただきたい。  貝塚会長  ただいまの件は一番最初の社会保障審議会でも議論されまして、社会保障の話という のはそれぞれが保険制度で分立しているわけですが、相互の関係はいろいろあるわけで すね。これは重要な問題だと思いますが、厚生労働省の方としてはそれぞれの制度のコ ーディネーションについてはどのようにお考えなんでしょうか。  中村委員  介護給付費分科会では給付の議論はできるけど、制度全体の議論の場がなくなったと いう議論も出ております。そういうことで、今日ここで疑問を呈さしていただきました。  貝塚会長  介護保険制度の問題というのはあるタイムリミットというものがあって、ある段階で 再検討する必要があると思うのですが、そのあたりはどうですか。  石本政策統括官  この問題は非常に大きな議論で、この場でどうするかということが結論づけられてな い問題だと思っております。事務局としていま考えておりますのは、当面、今年の中心 的な社会保障における大きな問題は医療改革であるということで、医療保険部会、医療 部会においてご議論いただきながら、この当審議会においてもご議論を賜るという二重 の段階を経て、本日いただいたご意見は私どもの大臣にも、本日マスメディアの方々も 大勢きておりますので、全国に公表されるわけですが、そういうことを受けながら、私 どもとしても間違いのないように進めなくてはいけないということで、ご意見を賜った ものと理解しております。  いまご指摘の点につきまして、私ども事務局としては、社会保障制度の横断的な問題 についてご議論いただいた方がいいというご提案があれば、制度全体に対応するような ものを本審議会総会でやるのか、あるいは特別に制度改革的、構造改革的な組織をこの 審議会の下に置くのか、そういったことも含めてご議論を賜りたいと思いますが、一方 でいまお聞きしてますと、介護の分科会なり介護の面である程度カバーできる問題もあ るのかなという印象も持っております。それは非常に微妙なところでございますが、介 護と医療と福祉というのはそれぞれ重なっておりますから、ここでテーマにするという のも一つの考え方としてあると思います。貴重なご提案として考えさせていただきます し、具体的にどういうふうにしたらいいかということを少し考えさせていただいて、会 長と会長代理とよくご相談しながら、次回の審議会までには方向づけをさせていただき たいと思います。  貝塚会長  今の点は、最初の審議会から問題になったものでございまして、なるべく横断的な切 り口ができれば、そのようにするのが一番よろしいのではないかと思います。  社会保障給付費につきまして説明をいただいたのですが、それ以外にいろいろ資料が ございますので、参事官に説明をいただきたいのですが、よろしくお願いします。  河参事官  時間も限られておりますので、参考資料の3から簡単にご説明をさせていただきます。  参考資料3は「介護保険制度の実施状況」です。要介護認定、サービスの利用状況等、 介護保険制度が発足して動き始めてから1年半という期間での状況等で把握されている ものがここに述べられています。  参考資料4は、先般の臨時国会で議員立法により、児童福祉法が議論され改正されて おります。保育士の名称独占、認可外保育施設の届出制の創設等がこの法律で創設され ておりますので、参考資料として児童福祉法の改正についてお配りさせていただきまし た。  参考資料5は「平成12年人口動態統計(確定数)の概況」です。毎年6月に人口動態 統計の月報の概数を公表しておりますが、年末まで精査して6月時点の公表の数字を確 定していくことになります。人口動態統計の中に合計特殊出生率、つまり1人の女性が 一生の間に産む子どもの数を平成12年でみた場合、6月の概数では1.35であると計算さ れていましたが、確定値が1.36になっております。  参考資料6−1、6−2は、例年12月に予算の編成作業が年末に始まりますが、8月 に厚生労働省が概算要求した主要事項、計数をお配りしたものでございまして、政府全 体で予算編成作業の中で厚生労働省に係る部分については、これに基づいて議論が行わ れているというところでございます。  参考資料7ですが、12月に「平成14年度予算編成の基本方針」が閣議で決定されまし て、このような基本方針を踏まえて、予算の概算要求に基づく編成作業が12月に行われ ますので、資料として配付させていただき、ご報告させていただきました。以上です。  貝塚会長  それでは、参考資料も含めて本日の議題以外の事項等につきましても、ご意見等がご ざいましたらお願いいたします。  京極委員  社会保障給付というのは統計的なことですので、現在の我が国の社会保障制度の運用 の結果が数字に表れているということになるわけですが、1つ気になりますのは「福祉 その他」のところです。ILOのかつて幹部の方もおっしゃってたんですが、「その他」 は各国ばらばらでして、全く国際比較ができない。社会保障研究所などのスタッフは日 本の「その他」が少ないので、社会福祉が遅れているのではないかという議論をしたよ うにも聞いております。これについては先進国間では少なくとも調整していく必要があ って、例えばスウェーデンなどを見習って、労働政策とか学校給食とかその他いろいろ 入ってるようですが、その出入りを整理する。せっかく厚生労働省になりましたので、 社会保障給付の見直しを「その他」についてはしていただいた方がいいのではないかと 思っております。  2点目は全体の構成割合ですが、旧連合政権の時に年金、医療、福祉の割合は5、4、 1から5、3、2にというんで、かなり「福祉その他」を増やそうという方向づけが出 されたわけですが、連合政権が新しくなりましたし、政治的ないきさつもあるわけです けれども、この間、福祉関係は非常に努力をしてきて、介護保険を作ったり、児童福祉 法を改正したり、その他いろいろやってきたんですが、伸びが十分ではない。9%から 11%ぐらいの伸びなので、医療から福祉へ転換できるものはしていく、それから年金な ど全体として底上げする時代ではないということも考えまして、戦略的な見方をする必 要があるのではないかと考えている次第でございます。  貝塚会長  ただいまの点は、1つは社会保障給付費の分類ですか、国際比較をする時にいろいろ 制度上難しい問題があると思うのですが、全体的に現在の推定、分類の仕方というのは 比較可能な感じになっているのか、そのへんはいかがでしょうか。  植村副所長  「福祉その他」の「その他」の部分につきましては、ただいま京極先生ご指摘の面が かなりございまして、各国によってかなりのばらつきがあります。日本の「福祉その他」 の数値自体も資料の制約等によりまして、地方単独で行われている福祉施策について把 握できず、そのために過小に出てしまうといった点もあります。日本国内での資料の問 題、諸外国との定義の相違の問題がありますが、さらに細かく研究して、より精緻で、 かつ国際比較のできるものにするために努力してまいりたいと思っております。  貝塚会長  社会保障審議会では広範囲な話を扱うことになってまして、今日は医療を中心的に議 論したのですが、今後、社会保障システム全体を議論をする時に、どのようにやればこ の問題にうまくこたえられるかというのは重要な話だと思うのですが、その点について、 あるいはその他の点について、ご注文、ご意見がありましたらお願いしたいと思います。  浅野委員  私はいつも分権のことだけ言うためにここに出てるような気がしてるんですが、今日 もまた言います。参考資料3に「介護保険制度の実施状況」というのがありますが、こ れは分権とは違いますね。というのは、介護保険というのは国全体をカバーして、同じ 制度でやる、保険の基盤が大きい方がやりやすい。そうなると、宮城県だけ別な要介護 度の認定を少しきつくするとか甘くするとなると不公平になるからということで一律に やるんだと思うんですね。介護保険制度の実施状況というのは、迫りくる見直しを見通 してのことだと思うんですが、各地域の市町村、県で行われている実態をしっかりとつ かんで見直しをしていただきたい。当たり前のことですが、そのことを申し上げたいと 思います。  介護給付費分科会で平成15年1月に答申予定とあったのですが、検討期間があと1年 しかないんですね。報酬の決め方も地域においてはいろんな見方がありますので、大き な議論になると思います。いま言ったように地域の実態も含めてのものですから、限ら れた1年の間に精力的に地域のヒアリングというか、それ以上のものをお願いして、見 直しが誤りなきよう期していただきたいと思います。  参考資料4に「児童福祉法改正について」というのがあるのですが、これを見てます と、なんでこれは法律なのかなという感じがするんですね。なんで国で全部決めなくち ゃいけないんだろうか。2ページの定期報告義務は知事に対してあるんですね。利用者 への自治体による情報提供措置、これも「自治体による」なんですね。こういう枠組み をどうして法律で決めるのか、これは条例事項じゃないか。児童福祉のあり方、例えば 「認可外保育施設に対する監督の強化」、そもそもこれは国で全部一律にしなくちゃい けないんだろうかという基本的な疑問があるわけです。保育士資格の法定化は、これは ばらばらではいけないのだろうから、分かるような気がします。それから児童委員を都 道府県が推薦して厚生労働大臣に委嘱してしてもらうというのは、免状が厚生労働大臣 の方がありがたいからかなと思いながら、こんな面倒なことをしなくても、知事がその ままやればいいのではないか、児童委員になっている方はこの方がいいというのかもし れませんが、何を言いたいかというとこれからは違うんです。医療保険や年金は国でや らなくてはいけないんですが、福祉の分野は枠組みも考え方も県に任せていいのではな いか。児童福祉でうまくいかなくて困るのは、県よりも市町村が困るんですね、保育所 の範囲内なんかで言えば。国は困らないんですよ。なんでこんなふうになるかというと、 保育所の施設整備とか今までの措置費とか、そういうところで国庫補助を出してるから 規制をしなくちゃいかんと思うんでしょうが、考えを切り替えて、たまたま児童福祉の ことを言ってますが、ほかの分野もそうです。老人福祉もそうです。第1回でも申し上 げましたように、どうして特別養護老人ホームの施設整備費を国からもらわなくてはい けないんだろうか。一般財源化すれば、それで済むんじゃないでしょうかということを 毎回申し上げてますが、是非そのへんは状況が変わってるんだということを各論ごとに 見ていただきたいということを毎回しつこく申し上げます。  厚生労働省予算概算要求の主要事項、これは一つ一つ見ませんが、ここにあげてある 予算項目も、20年後も30年後も全部これでいくんですか、20年後も30年後も福祉施設整 備費という項目が残るんでしょうか。私は残らないと思うんですね。だとすれば、5年 後どうするか、10年後どうするかということを考えていかなくてはいかんということを、 たまたまこんなことをきっかけに申し上げますけど、今までの連続性のもとにはないん だ。去年の4月に地方分権推進一括法が通ったということはすごく大きいということを、 毎回、改めて注意喚起したいと思っておりますので、これは当たり前じゃないんだとい うことを是非考えていただきたいと思います。  村上委員  同じ厚生省の中で縦割りにやっておられて、年金、医療とか、介護ができましたが、 その他福祉とか、どうもうまくつながってない、整理のついてないものがいっぱいあっ たんですね。そこをトータルできちっと整理し直してくださいと、我々に分かりやすく してください、やたら複雑で分かりづらい、様子が全然分からないようなシステムにな ってきてる、体も一つ、懐も一つですから、トータルでどうなるのかということをちゃ んとして下さいということを10年前にお願いしまして、ようやく5年前に当時の厚生大 臣が腰を上げてくれたんです。ところが、やられたのは、8つの審議会会長の会議の会 議が作られまして、私はヒアリングで呼ばれたんですが、それでお茶を濁されて終わっ てしまった。  今度は新しく厚生労働省になって、現役世代をひっくるめて、ある意味で生まれる前 から墓場まで、我々働く者にとって頼りになる役所ができたと思ってるんです。我々利 用する側から見て使い勝手がいいとか効率性がいいとか、いろんなものがうまくつなが ってるとか、トータルでちゃんと見てほしい。我々はトータルビジョンをきちっと示し てほしいと前から言ってるんですよ。先ほどの中村さんの話じゃありませんけど、どこ かできちっとやってもらわないと、どこかの専門家に頼まないと利用もできないような 制度がいっぱいあるんですね。それで国民のための福祉なんでしょうか、社会保障なん でしょうか。医療の無駄とか非効率という問題はありますが、私は制度上の無駄、非効 率がいっぱいあると思っています。  私はびっくりするんですが、勉強するたびに新しい公益法人とか特殊法人が見つかっ たり、福祉のまわりにはわけのわからない団体がいっぱいある。こういうことは整理し なきゃいけないと思うんですね。そういうことをひっくるめて、どこかでやってもらわ なきゃ困るということを申し上げておきたいと思います。  岩男委員  先ほど人口動態統計(確定数)の概要のご説明がありましたが、少子化が非常に深刻 であるということは皆さん共通の認識になっているわけです。これを見ますと、合計特 殊出生率が11年度は1.34であったものが12年度には1.36になったということです。たし かに政府の方でも仕事と子育ての両立支援とかいろんな形で少子化対策、少子化への取 り組みを進めておられますが、これを見て、やっと上向きになったというのは、いろん な対策をとられてからそれほど時間もたってないので、喜ぶのは少し早いのかなと思い つつ、私としては国民会議のメンバーでもあり、これが新しい歯止めになったと解釈で きれば大変うれしいと思うのですが、それはちょっと早すぎると思うべきなのか、何か お分かりでしたら教えていただきたいと思います。  貝塚会長  これは、廣松委員がご専門に近いので、何かございましたらお願いします。  廣松委員  阿藤国立社会保障・人口問題研究所長もおられますので、後で補足していただければ と思うのですが、いま岩男委員の方からご指摘のあった点につきましては、おそらく今 までの施策の効果が一部現れているものだろうと思いますが、この数値の評価に関して 人口部会の中では特殊な事情としてミレニアム婚、ミレニアム・ベビーの効果も議論さ れました。もう少し細かく分析してみないと分かりませんが、そのような要素も入って るのではないかと考えています。  それから、先ほどちょっとご紹介いたしました現在行われています将来人口の推計に 関しては、ここに書かれている合計特殊出生率だけではなくて、コーホート別出生率の 細かいデータも出していただいて見ています。それで見ますと2000年の時点で40歳にな るのでしょうか、1960年から65年のコーホートの出生数をそれ以前のコーホートと比べ ますと、かなり出生数が下がっています。前回の推計の時には晩婚によって子どもが生 まれるのが遅くなっている。すなわち、晩産化が進んでいる。ただし、結婚したカップ ルの子ども数はそれほど減っていない、減らないのだろういう仮定設定だったんですが、 現状では、例えば母親の年齢が35歳の時の子どもの数を見ますとかなり傾向的に減って きています。人口学的には女性が50歳の時の子ども数が完結出生児数ですが、その間、 36歳以降50歳までの間に生まれる子どもの数はそれほど大きくなくて、35歳時の出生児 数が全体の大きな傾向を表しており、出生力は落ちていると考えざるを得ない状況では ないかと思います。  阿藤委員  人口部会での議論は、いま部会長が要約されたとおりです。1997年に私どもが行った 第11回の出生力基本調査というのがありまして、そのデータから、年次的にはこの10年 弱の間、コーホートでいうと1960年代コーホートの結婚してからの子どもの生み方が、 それ以前とは違ってきているのではないかということが人口学者の間でも議論になって ますが、今回の部会でも、そこをどう読むかということが相当議論になりました。不況 による一時的な効果と見るのかというご意見もあります。そうじゃなくて、もう少し長 期的な趨勢の始まりではないかという見方と両論ありますが、今まで安定していると見 られていた夫婦の子ども数というものが崩れる兆候が見えている。そういう見方が出て いるということです。  翁委員  先ほど中村委員、京極委員がおっしゃった横断的な議論をしていくべきだという点に ついて、私自身もここでそういったことを考えていくべきだと思っております。私は女 性と年金の検討会にも入っておりまして、そこで切実に感じていることですが、少子高 齢化社会になってきますと、21世紀は女性が働いて年金を担っていく、支えていくとい うことが年金制度からの要請になってきてまして、そういう時代にふさわしい保育の在 り方、介護の在り方というものを横断的に考えていく必要がある。経済全体のパイを支 えていく上でも、そういった新たな時代になってきていると思いますので、そういう観 点から横断的な社会保障の在り方というものをもう一度改めて考えていくことが必要で はないかと感じております。  言い換えますと、年金、医療、福祉というのは所得再分配政策であるわけですが、そ れらをどのように組み合わせることが日本全体の資源配分の効率性に結びついていくか というそういう観点から相互の関連性をよく考えて制度を設計していくことが必要では ないかと思っておりまして、そういった議論をする場が必要ではないかと思います。  永井委員  私もそのように思っております。高齢者医療の話にしても少子化の問題にしても、所 得分配政策を考えることももちろん必要なんですが、それを考えつつ、この審議会では 将来どうするのかという理念、哲学みたいなものを議論しつつ、例えば世界の人を100人 に例えましょうという時に、どの程度まで、ここはこの程度に抑えるとか、ここはこの ように充実しようとか、知恵で乗り切る必要があると思うんですね。そういう理念をも う少し確認し合いながらやらなければいけないのではないか。財政を抑えるということ だけが前面に出ると、今の若い人たちは将来に夢も持てない、安心もできないという社 会にしては仕方がないので、それを納得してもらうような明るい知恵の出る審議会でな ければいけないのではないかと思います。  それから、先ほど経団連の奥田さんがおっしゃいました医療機関の企業経営みたいな 話ですけど、公益法人、医療法人は公益法人ですね、そうすると会計の仕方などが見え にくい、どうしても細かいことが分からない。イギリスやアメリカなどでとっておりま す複式簿記とか公会計のシステムみたいなものを取り入れて効率的に中身が見えるよう にするということ、それから、病人などを抱えますと情報がなくて私どもは心細いんで すが、地域に信頼できる相談センターとか、情報体制が非常に必要である。そういうシ ステムの転換によってある程度財政的なことも抑えられるようにもっていく。すべて削 るという観点ではなくて、システムの転換によって抑えるべきところは抑えるという知 恵が必要だと思います。  奥田委員  医療の問題、診療費の問題についてですが、いろんな審議会とか、ここにもあります 「大綱」ですとか、こういうものを読むと、結局みんな出てくる話は両論併記とか各論 併記ばかりで、なんの結論も出てない。先ほども言われましたけど、何も出てないじゃ ないか、誰が決めるんだという話になるわけです。これは小泉総理が改革をするという 話で、特にこの問題については「三方一両損」ということを公衆の前で言われるわけで す。「三方一両損」と言われたことは、それは総理の言葉として我々は重く受け取らな くてはいかんと思うんですが、下の方から出てくる話は、だれも結論を出さずに、ああ だこうだと言ってるだけで、何も出てこない。両論併記と各論併記ばかりだ。それを過 去何年間も続けてきて、最後の最後のところに押し詰められて、暗闇の中で決まったと か、手を握ったとか、こういうのが実情だと思うんですね。  今回の場合も総理が「三方一両損」ということを言われてるわけです。経済財政諮問 会議としても、この前坂口大臣にもお願いしたのです。経済財政諮問会議のところで診 療費の問題も筋を通して下さいよということはお願いはしておいたんです。そのへんを 決める仕組みをはっきり決めていかないと、何かわけの分からんところで、これは作戦 なのかもしれませんが、最後にバタバタッと決まってそれで終わりと、これの繰り返し を何回やったって同じ話なんで、今回はだめだったら次回からでも決める仕組みを透明 性を持たせた形でやる。これが一番大事なことじゃないかと思っています。そういう意 味で小泉総理が「三方一両損だ」と言われたことは1つのガイドラインみたいなもので、 あれはできたなと思って、今回の件については安心といったら変ですけど、そういう原 理が働いてるんだなと思ってるんですが、これは厚生労働省の方はどう考えてるんです か。  貝塚委員  私自身は多少の感想を持ってますけど、従来の審議会の方式というのはある種の限界 にきてるという点があると思うんですね。その時にどうするかという話を問題提起され てると思うんです。私の考えはそうなんですが、厚生労働省はどういうお考えでしょう か。  奥田委員  私が言いたいのは、軽くいなしてるのか、あるいは重く受け止めてるのか、そこを聞 きたいと思います。  河参事官  やや個人的な部分も入るかもしれませんが、いま会長がおっしゃいましたように、民 主主義社会の中における意思決定の方法というものが、かなりいろいろな形になってい く中で、また価値が多様になる中で、どうやって合意形成を作り上げていくかというの は公務員として仕事をする者達みんな共通に悩んでいるというのが率直なところだと思 います。それがどういう形で合意形成というものがなされるのか、特に社会保障の場合 には、先ほど村上委員もおっしゃいましたけれども、国民全体の合意があって初めて保 険料なども決まるわけでして、その意味での合意形成が社会全体の中できちんとした形 でできるというのが社会保障制度の基礎ですので、それがきちんとできる方法というも のを常に基本に置かなくてはいけない。そのために皆さん方のご議論とか、国会でのご 議論とか、内閣の中での議論とかというものが1つの方向に向かっていく、ある程度収 斂に向かっていくということをひたすら願っているというのが率直な状況でございます。 5.閉会  貝塚会長  私がコメントするのも変ですが、役所的なお答えのような気もしますが、とにかく変 わりつつあることは間違いないので、それをどうするか、知恵を出さなくてはいけない と思います。  大きな話になりましたが、時間がまいりましたので、本日の社会保障審議会はこれで 閉会といたします。どうもありがとうございました。                                    〜以上〜 照会先 政策統括官付社会保障担当参事官室 政策第一係 代)03−5253−1111(内線7691) ダ)03−3595−2159