平成8年3月8日閣議決定「公的年金制度の再編成の推進について」
「被用者年金制度の再編成を進めるに当たっては、制度運営に関する適切な情報の公開を行うとともに、社会保障制度審議会年金数理部会に要請し、制度の安定性、公平性の確保に関し、財政再計算時ごとに検証を行うものとする。」
【基本的考え方】
年金制度の安定性
年金制度の安定性とは、各制度の保険料率が急激に引き上げられたり、負担可能な水準を超えることなく保険料収入が確保され、各制度の年金給付が将来にわたり確実に支払われることである。年金給付は、保険料、国庫負担、積立金(運用収入を含む)により賄われるが、特に保険料率の引上げを確実に実現できるかどうかが重要な点であり、保険料率の引上げ幅や最終保険料率を検証の対象とする。
年金制度間の公平性
年金制度間の公平性とは、基本的には、制度間で同じ年金給付に対する保険料水準に差がないことである。したがって、共済制度の職域部分を除いた場合の各制度の保険料水準と厚生年金の保険料水準とが将来にわたりどの程度の差となっているかが重要な点であり、最終保険料率及びそれに到る途中段階の保険料率を検証の対象とする。
【要旨】
○ 被保険者数・組合員数の見込み
共済各制度は組合員数の将来見通しについて複数のケースを設定しているが、厚生年金との比較を行う必要などから、「厚生年金の被保険者と同様の傾向で減少する」場合を中心に財政検証を行う。
○ 各制度の財政状況の評価
○ 総合評価
区分 | 厚生年金・国民年金 | |
基礎数 | 初期値となる被保険者の性、年齢、被保険者期間別のデータ、年金受給権者の性、年齢別データ等は、平成8年度末の被保険者統計及び受給権者統計を基礎としている。 | |
基礎率 | 人口学的要素 |
基本的に平成6年度から8年度にかけての被保険者統計及び受給権者統計に基づいて性、年齢別に作成している。 老齢年金失権率については、「日本の将来推計人口(平成9年1月)」における将来死亡率の改善と整合性をとって改善していくものとしている。 |
経済的要素 | 賃金上昇率: 実質賃金上昇率が過去10年間の平均が1%程度であること、将来の実質GDP成長率の見通しが概ね1%程度であることを踏まえ1%と考え、これに物価上昇率1.5%を加えた2.5%と設定。 物価上昇率: 実績平均が過去10年間で1.5%であることから1.5%と設定。 運用利回り: 今後の自主運用下における年金積立金の運用は、国内債券が中心的な役割を果たすであろうことから、運用利回りは国内債券を軸に設定することとしている。 ここで、資金運用部への新規預託金利が過去の実績で賃金上昇率を1.5%程度上回っていることや、国内債券収益率が過去の実績で短期金利を1.5%程度上回っていること(短期金利を賃金上昇率と同程度とみる)から、4%と設定。 なお、過去7年間に資金運用部に預託した分の利回りについては確定していることから別途織り込むこととしている。 年金改定率(新規裁定者分)年当たり2.5%(ただし平成36年財政再計算期までは2.3%) |
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被保険者数 | ・日本の将来推計人口(平成9年1月 中位推計)(国立社会保障・人口問題研究所) ・労働力率見通し(平成10年10月)(労働省職業安定局)を使用して推計。 |
区分 | 国共済 | 地共済 | ||
基礎数 | 組合員及び年金受給権者の性別(遺族共済年金については死亡した組合員の性別)、年齢別に作成 | 平成10年3月末における動態統計調査及び年金受給権者統計を基に作成 | 組合員及び年金受給権者の性別(遺族共済年金については死亡した組合員の性別)、年齢別に作成 原則として平成7年度、平成8年度及び平成9年度のすべての地方公務員共済組合の実績によるものを用いる。 |
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基礎率 | 人口学的要素 | 原則として平成7年度から9年度までの3ヶ年の動態統計調査及び年金受給権者統計を基に作成 | ||
経済的要素 | 賃金上昇率2.5% 物価上昇率1.5% 運用利回り4.0% 年金改定率2.5%(ただし平成36年財政再計算期までは2.3%) |
賃金上昇率2.5% 物価上昇率1.5% 運用利回り4.0% 年金改定率2.5%(ただし平成36年財政再計算期までは2.3%) |
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組合員数 | 3ケースで計算 I組合員数一定 II対人口比率一定 III対厚生年金被保険者数比率一定 |
3ケースで計算 I組合員数一定 II対人口比率一定 III対厚生年金被保険者数比率一定 |
区分 | 私学共済 | 農林年金 | ||
基礎数 | 加入者数・年金者数等の基礎数については、平成10年度末における実績を基に作成 | 組合員及び年金受給権者の年齢別(脱退率及び給与指数は年齢別・期間別)に作成 |
平成9年度末における農林年金実績統計を基に作成 | |
基礎率 | 人口学的要素 | 給与指数、総脱退力は平成8年度から10年度の実績等を基に作成(基礎率の種類により異なる。) | 原則として平成7年度から9年度までの3ヵ年の農林年金実績統計を基に作成 | |
経済的要素 | 賃金上昇率2.5% 物価上昇率1.5% 運用利回り4.0% 年金改定率2.5%(ただし平成36年財政再計算期までは2.3%) |
賃金上昇率2.5% 物価上昇率1.5% 運用利回り4.0% 年金改定率2.5%(ただし平成36年財政再計算期までは2.3%) |
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組合員数 | 3ケースで計算 I組合員数一定 II対学齢人口比率一定 III対厚生年金被保険者数比率一定 |
5ケースで計算 I組合員数を12年度まで直近の傾向により減少させ12年度以降一定 II12年度までに5万人減少させ12年度以降一定 III将来推計人口に連動して減少 IV厚生年金被保険者数に連動して減少 V12年度までに5万人減少、以後厚生年金被保険者数に連動して減少注2) |
注 | 1) | 総理府社会保障制度審議会年金数理部会に提出された資料に基づき作成。 |
2) | 公的年金制度の一元化に関する懇談会では、13年度までに5万人減少、以後厚生年金被保険者数に連動して減少する場合の将来見通しが示された。 |
財政再計算における 組合員数の見込み方 |
国庫負担割合1/3 | (参考) 国庫負担割合1/2 |
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厚生年金 | 将来推計人口(平成9年推計)の中位推計や労働力率の見通しを用いて推計
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保険料率 (2000年4月現在) |
17.35% | − |
最終保険料率 | 27.6% | 25.2% | ||
到達年度 | 2025年度 | 2020年度 | ||
引上げ幅 (5年ごと) |
2.5% | 2.3% (2004年度のみ1.3%) |
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2060年度の 積立比率 |
3.4 | 3.8 | ||
国共済III | 2011年度まで 112.2万人で一定、以後厚生年金の被保険者数と同様の傾向で組合員数が減少
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保険料率 (2000年4月現在) |
18.39% | − |
最終保険料率 | 29.8% | 27.8% | ||
到達年度 | 2025年度 | 2025年度 | ||
引上げ幅 (5年ごと) |
2.8% | 2.5% (2004年度のみ1.5%) |
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2060年度の 積立比率 |
5.7 | 6.1 | ||
地共済III | 2007年度まで 332.6万人で一定、以後厚生年金の被保険者数と同様の傾向で組合員数が減少
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保険料率 (2000年4月現在) |
16.56% | − |
最終保険料率 | 26.64% | 25.12% | ||
到達年度 | 2025年度 | 2025年度 | ||
引上げ幅 (5年ごと) |
2.2% | 2.0% (2004年度のみ1.2%) |
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2060年度の 積立比率 |
6.2 | 6.5 | ||
私学共済III | 2000,2001年度は 40.4万人 2002,2003年度は 42.3万人 以後厚生年金の被保険者数と同様の傾向で組合員数が減少
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保険料率 (2000年4月現在) |
13.3% | − |
最終保険料率 | 27.8% | 25.4% | ||
到達年度 | 2045年度 | 2045年度 | ||
引上げ幅 (5年ごと) |
1.7% | 1.4% | ||
2060年度の 積立比率 |
6.1 | 6.9 | ||
農林年金IV | 2007年度まで 48.2万人で一定、以後厚生年金の被保険者数と同様の傾向で組合員数が減少
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保険料率 (2000年4月現在) |
19.49% | − |
最終保険料率 | 29.69% | 27.19% | ||
到達年度 | 2020年度 | 2020年度 | ||
引上げ幅 (5年ごと) |
2.9% | 2.5% (2004年度のみ1.5%) |
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2060年度の 積立比率 |
2.3 | 2.6 |
注1: | 標準報酬ベースの値である。 |
注2: | 経済前提は、賃金上昇率年2.5%、物価上昇率年1.5%、運用利回り年4.0%となっている。 |
注3: | 地共済IIIの国庫負担割合1/2の場合の2004年度の引上げ幅1.2%は、公務負担分を含む保険料率16.66%と17.86%との差である。 |
年金扶養比率の見通し
年度 (西暦) |
厚生年金 | 国共済III | 地共済III | 私学共済III | 農林年金IV |
2000 | 4.0 | 2.0 | 2.4 | 6.9 | 3.2 |
2005 | 3.2 | 1.9 | 2.2 | 5.9 | 2.9 |
2010 | 2.5 | 1.8 | 1.8 | 4.4 | 2.3 |
2020 | 2.1 | 2.0 | 1.6 | 3.2 | 2.1 |
2030 | 2.2 | 2.2 | 1.6 | 2.8 | 2.3 |
2040 | 1.9 | 1.9 | 1.6 | 2.4 | 2.3 |
2050 | 1.8 | 1.7 | 1.5 | 2.2 | 2.3 |
2060 | 2.0 | 1.7 | 1.5 | 2.2 | 2.2 |
年度 (西暦) |
厚生年金 | 国共済III | 地共済III | 私学共済III | 農林年金IV |
2000 | 18% | 22% | 16% | 13% | 23% |
2005 | 21% | 24% | 19% | 14% | 25% |
2010 | 25% | 27% | 23% | 16% | 29% |
2020 | 28% | 29% | 29% | 20% | 32% |
2030 | 28% | 29% | 29% | 24% | 31% |
2040 | 32% | 33% | 31% | 32% | 32% |
2050 | 33% | 36% | 33% | 37% | 32% |
2060 | 31% | 36% | 34% | 36% | 32% |
年度 (西暦) |
厚生年金 | 国共済III | 地共済III | 私学共済III | 農林年金IV |
2000 | 14% | 18% | 13% | 10% | 19% |
2005 | 16% | 19% | 16% | 10% | 20% |
2010 | 19% | 21% | 19% | 12% | 22% |
2020 | 21% | 22% | 24% | 15% | 24% |
2030 | 21% | 22% | 24% | 19% | 22% |
2040 | 23% | 25% | 25% | 25% | 22% |
2050 | 24% | 27% | 27% | 30% | 21% |
2060 | 22% | 28% | 28% | 30% | 22% |
年度 (西暦) |
厚生年金 | 国共済III | 地共済III | 私学共済III | 農林年金IV |
2000 | 82% | 88% | 66% | 67% | 97% |
2005 | 87% | 88% | 72% | 65% | 96% |
2010 | 92% | 91% | 80% | 69% | 99% |
2020 | 88% | 83% | 87% | 73% | 99% |
2030 | 86% | 79% | 84% | 74% | 95% |
2040 | 97% | 87% | 87% | 86% | 99% |
2050 | 102% | 94% | 93% | 98% | 98% |
2060 | 97% | 95% | 98% | 99% | 98% |
年度 (西暦) |
厚生年金 | 国共済III | 地共済III | 私学共済III | 農林年金IV |
2000 | 7.2 | 7.1 | 11.6 | 11.8 | 4.9 |
2005 | 6.0 | 6.1 | 10.1 | 11.3 | 4.1 |
2010 | 5.0 | 5.2 | 8.7 | 10.6 | 3.4 |
2020 | 4.1 | 4.7 | 7.1 | 9.9 | 2.4 |
2030 | 4.8 | 6.0 | 7.1 | 9.7 | 2.4 |
2040 | 4.6 | 6.5 | 7.3 | 8.3 | 2.4 |
2050 | 3.8 | 6.2 | 7.0 | 7.0 | 2.4 |
2060 | 3.4 | 5.7 | 6.2 | 6.1 | 2.3 |
年度 | 厚生年金 | 国共済 | 地共済 | 私学共済 | 農林年金 | |
実績 | (%) | (%) | (%) | (%) | (%) | |
1986 | 2.6 | 2.2 | 1.9 | 2.0 | 2.7 | |
1990 | 2.9 | 2.7 | 2.3 | 2.7 | 3.4 | |
1995 | 3.8 | 3.5 | 2.9 | 3.3 | 4.3 | |
推計値 | 2000 | 4.9 | 4.4 | 3.3 | 3.9 | 5.1 |
2005 | 5.7 | 5.1 | 3.7 | 4.2 | 5.9 | |
2010 | 6.6 | 6.0 | 4.3 | 4.8 | 7.1 | |
2015 | 7.5 | 6.9 | 5.0 | 5.5 | 8.4 | |
2020 | 7.9 | 7.3 | 5.3 | 5.8 | 8.9 | |
2025 | 7.9 | 7.4 | 5.4 | 5.9 | 9.0 | |
2030 | 8.1 | 7.6 | 5.5 | 6.1 | 9.2 |
注1: | 保険料率は標準報酬月額ベースである。 |
注2: | 経済前提は、賃金上昇率 年2.5%、物価上昇率 年1.5%、運用利回り 年4.0%である。 |