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資料V-4-1 諸外国における育児期間等に係る配慮措置と育児休業制度

国名 被保険者
(◎強制△任意×非加入)
育児期間の取扱い 介護期間の取扱い
  (参考)育児休業制度
日本 ◎被用者、自営業者、無職

[2001年]
 育児・介護休業法上の育児休業を取得する労働者について、当該期間における厚生年金保険料が免除される。(この間は、直近の標準報酬をもとに年金額が算定される。) ○対象者 日々雇用及び期間雇用を除く労働者
○形態 全日休暇
○期間 子どもが1歳に達するまでに連続した期間(子ども1人につき1回)
特に措置はとられていない
アメリカ ◎被用者 収入のある者
◎自営業者(年400ドル(45,560円)以上の収入のある者)
×無職

[2000年]
特に措置はとられていない ○対象者 50人以上の労働者を雇用している事業主に12ヶ月間雇用されており、直近12ヶ月間に最低1,250時間の労務に服している労働者
○形態 全日休暇
○期間 1年につき12週間
特に措置はとられていない
イギリス ◎被用者(週に72ポンド(13,270円)以上の収入のある者)(それ以下の低所得者は△)
◎自営業者(年3,955ポンド(729,030円)以上の収入のある者)(それ以下の低所得者は△)
△無職

[2001年]
◎家庭責任のための保全措置
 16歳未満の子の世話をしているため最低稼得収入額以上の収入がないものについては、基礎年金の額の算定に当たって加入すべき年数から該当する期間控除(控除後の期間の下限は、有資格年の1/2(又は20年))され、より短い拠出で満額の給付を受けることが可能。
○対象者 1年以上勤続している男女労働者(実親、養親を問わない)
○形態 全日休暇
○期間 子どもが5歳に達するまでの13週間、ただし、1年につき最大4週間
 付添手当(65歳以降に障害者となり、過去6ヶ月以上、日常生活の介護を必要とする者に支給)等の受給者を週35時間以上・年48時間以上介護している者についても「家庭責任のための保全措置」が認められる。
ドイツ ◎被用者 (週15時間以内の短時間労働者、月620マルク(38,470円)以下の低収入者は△)
△自営業者(業種によっては◎、無職

[2000年]
◎育児期間(子1人について出生後の3年間)は、全被保険者の平均賃金を得て保険料を納付しているとみなす
◎さらに、本年成立した改正法によって、子が10歳になるまでの間の育児をしている者で報酬が平均賃金未満の者について、平均賃金の50%〜100%の範囲内で、報酬を年金計算上高く評価する措置がとられることになった。
○対象者 男女労働者(実親、養親を問わない)
○形態 全日休暇
○期間 子どもが3歳に達するまでの3年間、(ただし、このうち1年間については、使用者の同意があれば3歳から8歳までのうちの1年間に取得できる。)
 職業的にではなく、要介護者を週14時間以上介護し、所得行為が週30時間を超えない介護者は、要介護度と介護時間に応じた介護保険制度の負担により年金制度の被保険者となる。
フランス ◎被用者、自営業者
[ 年間33,616フラン(621,900円)の収入がある場合、4四半期(1年)の保険期間を得る ]
△無職

[2001年]
◎女性の被保険者が、子の16歳になるまでの間に少なくても9年間養育した場合、年金額の算定に当たって、子1人につき2年間加入期間が加算される。
◎さらに男女とも少なくとも3人の子を養育(16歳になるまでの間に少なくても9年間自身か配偶者が養育したことが要件)した被保険者は、年金額を10%加算
○対象者 男女労働者(実親、養親を問わない)
○形態 全日休暇、労働時間の短縮
○期間 子どもが3歳に達するまで原則として1年間(1年単位の延長を2回行うことが可能。)
特に措置はとられていない
スウェーデン ◎被用者、自営業者
[ いずれも年間8,952クローネ(123,450円)以上の所得を有する者 ]
×無職

[2000年]
 育児期間(子が4歳に達するまでの期間)と兵役期間については、年金権が保障される一定の配慮を行っている
 育児期間については、所得の喪失や減少があった場合、
(1)子の出生年の前年取得
(2)16歳以上65歳未満の全加入期間の平均所得の75%
(3)現実の所得に基礎額(37,300クローネ))を上乗せした額
の最も有利な額を年金制度上の所得として扱う
○対象者 男女労働者(実親、養親を問わない)
○形態 全日休暇、労働時間の短縮
○期間 全日休暇は子どもが生後18ヶ月
 労働時間の短縮は、子どもが8歳未満又は小学校1年生終了まで。
特に措置はとられていない

(注1)資料中の円表示は、IMF, "International Financial Statistics"による1999年平均レート(1ドル=113.91円、1ポンド=184.33円、1マルク=62.05円、1フラン=18.50円、1クローネ=13.79円)。

(注2)諸外国における育児休業制度については、平成9年の旧労働省調査による。


資料V-4-2 育児休業制度等の利用状況

◎「平成11年度 女性雇用管理基本調査」(労働省女性局(平成12年12月))

○平成10年度に出産した女性労働者のうち育児休業取得者

  • 事業所規模 5人以上  56.4%
  • 事業所規模 100〜499人以上  71.4%
  • 事業所規模 500人以上  76.3%

○配偶者が出産した男性労働者の0.42%が育休取得



◎育児休業に係る厚生年金保険料免除者数(出典:社会保険庁「事業年報」)

単位(人)
  7年度末 8年度末 9年度末 10年度末 11年度末
女子 33,616 37,246 41,137 45,464 48,898
男子 28 32 45 37 32
33,644 37,278 41,182 45,501 48,930
指数 1.00 1.11 1.22 1.35 1.45
出生数に対する割合 2.8% 3.1% 3.5% 3.8% 4.2%

(注) 1.旧三共済を除く
2.表中の指数は、平成7年度末を1として算出
3.平成7年度以降の出生数
(7年度)1,187千人 、(8 年度)1,207千人 、(9年度)1,192千人
(10年度)1,203千人 、(11年度)1,178千人
(出典:厚生労働省「平成11年人口動態統計」)


資料V-4-3 働きながら子育てする労働者に対する育児休業以外の支援措置

○平成11年度「女性雇用管理基本調査」

平成11年度「女性雇用管理基本調査」の図


○育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部を改正する法律(平成13年11月9日成立)

この法律の中で、

  •  現在1歳未満の子を養育する労働者で育児休業しない者を対象に勤務時間の短縮等の措置を講ずることが義務づけられているのに加え、

  •  1歳以上3歳未満の子を養育する労働者に関して、育児休業の制度に準ずる措置又は勤務時間の短縮等の措置を講ずることを義務づけている。



資料V-4-4 諸外国の年金制度で採用されている育児期間の評価方法と我が国の年金制度

1.育児期間は制度上平均賃金で就労したとみなす措置(ドイツ)

○ドイツの場合、この措置がとられなければ、育児により就業できない期間の年金の保障が得られないのに対し、我が国の場合、被用者の被扶養配偶者に対しては、基礎年金給付が保障されており、そのうえにこのような措置をとることが適当か。

○ドイツの場合、制度体系が報酬比例構造のみであり、平均賃金で就労したとみなす措置が年金額算定上効果的であるのに対し、我が国の制度では、給付額が賃金に対応しない国民年金の体系があり、基礎年金給付のみの第1号被保険者に対しては、この措置は効果がない。



2.育児のため稼得活動に従事できなかった期間を加入すべき年数 から除外する措置(イギリス)

○イギリスの基礎年金にとられている措置であるが、イギリスでは稼得活動に従事できず収入がない場合は強制加入対象とならず、加入しなかった期間を加入すべき期間から除外して年金額を算定するのに対し、我が国の場合は、20歳から60歳までのすべての者が強制加入対象となっており、イギリスのように加入しなかった期間が想定されておらず、整合的ではない。



3.子を一定年数以上養育した場合、加入年数を加算(フランス)

○フランスの年金は、報酬額と加入年数に比例しており、我が国の厚生年金の報酬比例部分は構造が類似するが、基礎年金部分については、20歳から60歳までのすべての者が強制加入対象とされ40年加入フルペンションとなっている中で、年数を加算することは整合的ではない。



4.育児により所得の減少・喪失があった場合の年金算定上の報酬 額における配慮(スウェーデン)

○スウェーデンの場合、制度体系が報酬比例構造のみであり、平均賃金で就労したとみなす措置が年金額算定上効果的であるのに対し、我が国の制度では、給付額が賃金に対応しない国民年金の体系があり、基礎年金給付のみの第1号被保険者に対しては、この措置は効果がない。

○我が国においては、勤務時間短縮等の措置により就業を継続する女性よりも、離職する女性が多いが、この措置をとる場合には、雇用関係のない離職者にも厚生年金を適用することとなるがそれは適当か。



資料V-4-5 育児期間に係る配慮措置以外の年金制度における対応について

○「若者皆奨学生」制度(『年金のすべて』から抜粋 宮武委員)

 21世紀にふさわしい事業として、「若者皆奨学生」制度を発足させたい。
 高校生から大学院生まで、専修学校や各種学校も含めて、生徒・学生1人につき年間50万円限度を無利子で貸し出し、20年返済にする。
 公的年金の全体で、200兆円近い積立金を活用すれば、当初で毎年度最大4兆円の融資財源は楽に確保できる。
(中略)
 親の世代も、若者の世代も、この制度の創設によって教育費の重圧を軽減され、「公的年金」への関心を高め、年金制度のありがたさを実感できるようになる。
(中略)
 この奨学金は、自分が親になった場合にもありがたい存在になる。
 大学、高校を卒業してから20年経過して、奨学金の返還を終えるころには40歳前後になる。結婚・出産が早い場合は、ちょうど第一子が高校に進学する時期に当たる。事実、総務庁の「家計調査」では40〜50歳代世帯で教育費は、平均でも家計の6〜10%に達する。
 この時期に、今度は自分の子ども達が奨学金を受けられる。
 その際、親たちが公的年金の保険料を支払い、奨学金を返済(完済あるいは返済中)しているのを、制度利用の条件にする。
 年金が教育費の悩みを軽減する制度になれば、加入拒否者や滞納者は減少するに違いない。徴収の強化に大金を投じるより、ずっと効率的な勧誘になる。
 ライフサイクルの中に「年金」が組み込まれ、親の世代も、子の世代にとっても、「年金」は身近な存在になる。「世代間の仕送り制度」「社会的な親孝行」などと説教するより、奨学金が年金制度の大事さを具体的に教えてくれる。



○「保育費用の助成」(『年金改革には育児支援の視点を』一部要約 永瀬委員)

 子ども育成世帯の子どもコストを軽減する方策を年金制度の中に入れ込み、一方子どもを持たない世帯の子どもコストを一部負担する方法が可能ではないだろうか。
 具体的には、子どもを出産した世帯に、育児休業後、入園待ちなしに入れる質の高い保育施設を(実物給付でも保育切符でも)提供する。その財源を年金制度に求めたらどうか。子どもが一定年齢(二、三歳程度か)に達した後は、手当ての支給をうち切るが、相当年齢(例えば十歳未満程度)に達するまでは、非就業の妻の社会保険料は免除する。加えて、二階部分の年金は妻の就業(パートタイムであっても)とともに増加する設計とする。


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