01/11/16 第8回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録    第8回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 議事録 1 日時  平成13年11月16日(金)14:00〜16:10 2 場所  経済産業省別館827号会議室 3 出席者 [委員]  奥平委員、勝委員、菅野委員、吉川委員、齋藤委員、            笹川委員、桜井委員、佐藤委員、都村委員、中山委員、            長谷川委員、堀越委員、山路委員       [事務局] 奥田勤労者生活部長、南野勤労者生活課長       [参考人] 勤労者退職金共済機構 細野理事 4 議題  (1) 資産運用について  (2) 一般の中小企業退職金共済制度の財政状況の今後の見通しについて  (3) 剰余金の配分ルールについて 5 議事内容 ○部会長  第8回の中小企業退職金共済部会を始めます。議題は「資産運用について」、「一般 の中小企業退職金共済制度の財政状況の見通しについて」、「剰余金の配分ルールにつ いて」です。議題1から説明をお願いします。 ○勤労者生活課長  それでは議題1について、資料1に基づき御説明いたします。私から資産運用の全体 の枠組み等々について御説明いたします。その後、勤労者退職金機構の理事から勤労者 退職金共済機構の資産運用の状況について、資料2に基づいて説明をさせていただきま す。  まず資料1の資産運用の基本的な考え方についてです。ここでいう余裕金というのは 、積み立てられた資産を指しているわけですが、勤労者退職金共済機構の余裕金は被共 済者の退職金給付の原資であるということから、管理及び運用は、安全かつ確実である ことを要するわけですが、同時に加入者にできるだけ有利な条件で還元をしていくとい う観点から、できる限りの運用益を上げる必要があります。そういう意味で、安全かつ 効率的な運用が求められているということが言えるわけですが、中小企業退職金共済法 あるいは関係政省令、告示、通知等で具体的な運用の方法及び基本原則等を定め、勤労 者退職金共済機構におきましては、運用管理体制の強化、あるいはその責任体制の明確 化といったような観点から、資産運用委員会を設置しております。資産運用委員会にお きまして、資産運用の基本方針及び基本ポートフォリオを定めており、予定運用利回り を確保することを1つの目標として資産運用を行っております。  運用管理・チェック体制についてですが、資産運用は一定の収支見通しの上に立った 計画的なものであるということは当然のことでして、そのような観点から年度毎の運用 につき、勤労者退職金共済機構が事業計画の中で余裕金の運用計画を定め、これを厚生 労働大臣が認可をしております。また、年度毎の運用計画に加えて、四半期毎に余裕金 の運用計画を勤労者退職金共済機構が作成し、厚生労働大臣の認可を受けております。 括弧の中にありますが、資産運用の一部、例えば特定金銭信託での運用、あるいは不動 産での運用等につきましては、個別に厚生労働大臣の承認を要することになっておりま す。その際は、関係大臣とも協議をすることが法律上定められております。  勤労者退職金共済機構におきましては、資産運用には専門的な知識が不可欠であると いう観点から、外部の運用機関から運用の専門家を受け入れ、運用調査役として配置を いたしております。また資産運用委員会は毎月開催し、運用状況についてチェックをし 、同時に理事会においても、毎月その実績を報告しチェックを受けているところでござ います。それから事後評価という観点から見ますと、資産運用委員会、あるいは関係労 働者及び関係事業主の代表から構成される参与会を勤労者退職金共済機構に設けており 、こういった所で実績の報告をし、御意見を聞いているところです。  また、監事による業務・会計監査におきましても資産運用状況についてチェックをし 、その結果については監事から厚生労働大臣に報告をされております。さらに決算につ いても、厚生労働大臣の承認を要することになっております。また、各事業年度毎の資 産運用状況については、当部会に対しましても報告をさせていただいております。  次に情報公開ですが、特殊法人全体のディスクロージャーを推進するという政府の方 針もあり、勤労者退職金共済機構でも情報公開を進めているところでございます。資料 にもありますように、貸借対照表、損益計算書等を官報に公告しております。また、財 務諸表、附属明細書、業務報告書等につきまして、勤労者退職金共済機構において5年 間一般の閲覧に供しているところでございます。その他、情報誌やホームページでも資 産総額及び運用状況についても公表しております。年報でも決算諸表あるいは資産運用 状況等についても公表いたしております。  次に、法令等で勤労者退職金共済機構の資産運用に対してどのような規制がされてい るかということでございます。先ほど申し上げたとおり、中小企業退職金共済制度の資 産は安全かつ効率的に運用する必要があるという観点から資産運用の方法について、法 律によって規制を設けております。資産運用の方法について限定をしているところです 。それが法律の第79条に記載がある事項であり、3頁から4頁にかけて5つお示しし ております。3頁を見ますと、まず厚生労働大臣及び経済産業大臣の指定する金融機関 への預金または金銭信託でございますが、指定する金融機関というのは右側にあります とおり、告示で商工組合中央金庫等を指定しております。2つ目は、厚生労働大臣及び 経済産業大臣の指定する有価証券の取得です。有価証券の種類は(1)から(10)まででご ざいます。  3つ目は4頁の不動産の取得で、現在は勤労者退職金共済機構の所有しているビルの みでございます。それから4つ目に被共済者を被保険者とする生命保険、5つ目に財政 融資資金への預託で、いわゆる義務預託と言われているもので、政令により責任準備金 の100分の30以内の額を財政融資資金として預託するということになっております 。現在はおよそ20%を預託しております。  5頁は、これまで厚生労働大臣等の指定する金融機関及び有価証券をどのように追加 してきたかについて簡単にまとめた表です。昭和34年の制度発足以来、適宜金融機関 や有価証券を追加してきておりますが、追加したものにアンダーラインを引いておりま す。例えば一番下にありますように、平成8年4月の段階では、円建ての外国債券とい ったようなものについても、有価証券として指定をしております。8頁以降は中退法の 関係条文でございます。条文の説明は省かせていただきます。  11頁は厚生労働省の通知でございます。通知によっても勤労者退職金共済機構の運 用についていろいろと制限を設けておりますが、平成12年に、私どもの前身の勤労者 福祉部福祉課長から発出しているものでございます。具体的にどういう規制を行ってい るかについては12頁以降にございます。有価証券、金銭信託、その他について、細か い通知を出しております。具体的には、それぞれの有価証券の利回り、あるいは売却方 法等について、一定の枠をはめているということでございまして、例えば、政府保証債 を見ていただきますと、(1)にありますように、取得する政府保証債は原則として利 回りが3.2%以上であること、あるいは(2)にありますように、取得した政府保証 債については、原則として償還期日前に売却を行わないこととするといったような規制 を行っております。 13頁を御覧いただきますと、社債については、格付けがA格以 上であるといったようなこと、あるいは(4)にあるとおり、同一企業が発行する社債 での運用額は、社債で運用する余裕金の総額の100分の20を超えてはいけないとい ったことも定めております。15頁の第2という所で「金銭信託」についても規制をし ております。金銭信託には指定単と特定金銭信託がございますが、例えば指定単につい ては、同一人に対する株式、社債及び貸付金による運用については、信託財産の100 分の10以下の額でなければならないこと、あるいは特定金銭信託でいきますと、投資 一任契約を締結して行うこととしております。  金銭信託について、引き続き16頁では、同一人に対する運用については信託財産の 100分の10以下の額でなければならないことや、運用の総額について、資産総額の 100分の35以下とすることといった規制も設けております。20頁にこれまで勤労 者退職金共済機構の運用資産がどのように拡大してきたかについて整理をしております 。金融商品もいろいろと多様化が進んでいるわけですが、そのような金融商品の多様化 につれて対象の拡大もしてきております。その理由としては、できるだけ有利な投資先 を確保するための選択肢を増やしていくといったこと、あるいは運用資産を増やしてい くことによって、リスク分散を図るという効果も見込まれることから、運用資産につい ても拡大を図ってきているところでございます。  この中でリスク性の資産については、平成3年に金銭信託のうち指定単の導入を図っ ております。また、平成8年に特定金銭信託を導入しております。平成12年には生命 保険の特別勘定の第二特約も導入しております。  最後になりますが、特殊法人改革において、資産運用について指摘を受けておりまし て、以前御説明しているとおり、勤労者退職金共済機構の事務事業の見直しについての 行政改革推進事務局案として、明確な運用目標の設定、適切な事後評価、運用管理・チ ェック体制の充実強化を実施、運用内容や結果についての適切な情報公開についての指 摘を受けております。  これに対して、私どもとしては、指摘の右側にあるとおり、「運用目標の設定等につ いては、これまでも取り組んできたところであるが、今後ともその充実強化に努める」 という意見を返しております。これらの点について、是非部会の委員の方々の御意見を お伺いしたいと思っております。 ○部会長  続いてどうぞ。 ○理事(勤労者退職金共済機構)  お手元の資料2に基づきまして、勤労者退職金共済機構における資産運用の現状につ いて御報告申し上げたいと思います。  1頁目は、資産運用の基本的考え方についてです。先ほど勤労者生活課長からお話が ありましたように、資産の運用目的は、安全性を確保しつつ、長期的かつ効率的な増加 を図るため、必要とされる総合収益を確保することとし、資産運用を行っております。 近年の金融情勢の中では金利が低水準で推移しており、十分な運用実績を上げることが できなくなってきたため、中退資産の安全かつ効率的な運用を図るために、専門家の意 見を聞きまして基本ポートフォリオを作成し、これに基づき資産の効率的運用を図るこ とといたしました。基本ポートフォリオの策定は、先ほど述べました目的に沿って、3 年から5年の中期的視点に立って策定することになっております。現行の基本ポートフ ォリオは平成12年の12月に策定したものです。表1及び2が基本ポートフォリオで あり、各金融商品の構成割合を示したものです。  表1は資産全体についての基本ポートフォリオであり、それぞれの各資産ごとに2% の乖離許容幅を置いてあります。表2は金銭信託についての基本ポートフォリオでして 、これについては各資産ごとに5%の許容乖離幅を置いております。平成12年度から この基本ポートフォリオに移行を始めており、平成12年度末には表1及び2の下欄の ような資産構成割合になっております。概ねそれぞれの乖離許容幅の中に納まっている ということで、基本ポートフォリオに着実に移行しつつあると考えております。この基 本ポートフォリオに基づき、資産全体のリスクを低減させるとともに、できるだけ無駄 なコストの節減を図り、運用収入を確保することに努めているところでございます。当 然のことながら、(3)に書いてありますように、法及び関係政令、告示、通達などを 遵守して行うとしているところでございます。  次に中退資産の概要についてですが、勤労者退職金共済機構の資産運用は自家運用と 委託運用に大きく分けられ、自家運用の割合は57%、委託運用の割合は43%となっ ております。  自家運用はインハウスとも呼びますが、元本の償還や利払いが確実な金融商品等を対 象として、長期にわたってインカム・ゲインを確保するために満期保有、つまりバイ・ アンド・ホールドを原則として運用を行っております。具体的には、旧資金運用部預託 金である財政融資資金預託金、あるいは国債、商工債等の金融債等を中心に運用してお ります。こうした運用をするに当たり、一方で将来の退職金の支払いに充てるため、安 定的な利回りを確保するという観点から、償還期間に配慮しながら運用の分散を図って おります。  次に委託運用は、民間の運用機関に委託して運用しているものです。主たるものは金 銭信託ですが、運用リスクを勘案して、期待収益の実現を目指して行っております。委 託運用を行うに当たっては、参考1の基本方針に基づき、必要事項を受託管理機関に対 して文書で提示しておりますが、その主なものが2頁の(1)から(5)です。  まず(1)は、総合収益の極大化によりまして中退資産の効率的な増加に努めること 、(2)は、受託者責任を示しており、法令等の遵守、善良なる管理者の注意義務、及 び専ら中退資産の利益に対して最善の努力を果たす忠実義務、(3)は、新企業年金保 険を除いて、勤労者退職金共済機構が示した資産構成割合を遵守させること、(4)は 、個別資産の購入・売却に係る銘柄選定、売却の時期等については運用機関の判断に委 ねていること、(5)は、定期的に運用機関から運用報告を求め、また、随時ヒアリン グを行い、運用機関に対する管理・評価を行っていること、以上5点となっております 。また、ここには書いておりませんが、委託運用としましては、この他に退職給付とし て流動性の高い資産として、一定程度の生命保険資産を保有しているところです。以上 の自家運用、委託運用を的確に行うために、外部から現在2名の専門家を配置し、職員 に対しても、研修会参加等によりまして運用能力の向上を図っております。金融市場の 動向を的確に把握し、より客観的な評価、決定を行うために、資産運用に係る情報分析 のシステム化を図っているところでございます。  次に表3ですが、私どもの保有しております各資産の概要でございます。これは平成 12年度末の状況について記載してあります。まず自家運用の主なものとしましては、 資金運用部預託金が6,371億円ございます。これは法令等に基づきまして、前年度 末責任準備金純増額の20%相当額を新規に委託し、期限の到来した分については継続 預託するということになっており、資産構成割合が20.6%となっております。国債 は、5,759億円保有しておりまして、これは長期債または超長期債といった、10 年あるいは20年以上のものを原則としております。構成比はそこにあるとおり、10 年物が82.2%、20年物が12.5%、あと2年物及び6年物が合わせて5.3% となっております。金融債は、商工債を中心に取得しております。商工債は5年償還で あるため、安定的なキャッシュフローを確保するために、定期的に取得しております。 その他資産としまして、円建外債、短期運用、社債、政府保証債、地方債等を購入して おります。  次に委託運用ですが、大きく分けますと金銭信託と生命保険資産とがあり、金銭信託 は指定金銭信託が5,720億、特定金銭信託が4,220億でございます。この金銭 信託について説明を付け加えますと、お手元の資料の10頁から11頁、参考3を御覧 ください。金銭信託の大まかな枠組みについて示したものですが、1が通常指定単と呼 んでおります、単独運用の指定金銭信託についてのフローでございます。これは信託財 産の運用対象が財産の種類で定められるというものであり、運用の指定方法としまして は、株式とか公社債といった包括的な定め方が普通でして、信託銀行はこの指定の範囲 内で具体的な運用対象を選んで運用を行うものであり、。他の信託契約と合同で運用す るのではなく、各信託契約ごとに単独で運用するものでございます。  これに対しまして2が特定金銭信託についてのフローです。これは運用対象が特定の 財産に限られている、あるいは委託者がその都度具体的に指図する信託契約であり、指 定単との違いは、指定単では、運用方法等の大まかな指定をするのに対して、特定金銭 信託の場合には具体的な運用の指図をし、受託者はそれに基づいて運用売買を注文する だけというところであり、11頁の1行目にありますように、信託銀行は運用能力は提 供しないで、事務能力だけを提供するものです。  3が投資一任契約によります特定金銭信託についてのフローです。先ほど課長のほう から説明がありましたように、勤労者退職金共済機構はこれによっているわけですが、 運用指図は委託者自身が行わず、委託者の代理人として投資一任契約を交わした投資顧 問業者が行う形態でございます。私どもの特金はすべてこの形でやっているものです。 次に12頁の参考4を御覧ください。これは平成13年3月26日現在の委託先の運用 状況をファンドごとに一覧表として並べたものでございます。(1)が単独運用の指定 金銭信託、(2)が特定金銭信託、(3)は新団体生存保険でございます。  (1)の指定単については、12信託銀行に対して23ファンド、(2)の特定金銭 信託についてはは、投資顧問会社16社に対して28ファンドの金銭信託による運用を それぞれ行っております。かなり利回りにばらつきが見られます。(1)の指定単で見 ますと、全体としては平成12年度の運用利回りは2.16%でした。その中で最高が 4.25、最低が0.23となっております。同様に特金のほうを見ていただきますと 、最高が6.66%、最低が0.14%と、かなりのばらつきが見られるところでござ います。特金については、トータルで1.99%の利回りとなりました。次の参考5は 金銭信託の契約書の雛形です。  資料の3頁に戻っていただきまして、生命保険資産として、新企業年金保険等として 3,407億円の資産を保有しております。新企業年金保険と申しますのは、一定の利 回り保証がありまして、それを上回る部分については配当が行われるものであり、退職 金給付に充てるための流動性の高い資産として、一定程度保有することとしており、現 在生命保険会社10社で運用を行っているところでございます。  次に4頁の資金運用体制でございます。厚生労働省と私ども勤労者退職金共済機構と の関係につきましては、先ほど課長からの説明にありましたので、私のほうからは勤労 者退職金共済機構内における運用体制について申し上げたいと思います。理事長のもと に、資金運用を専門に担当する資金運用部を設けています。資金運用部には資金管理課 5名、資金運用課5名、運用調査役2名を配置しまして、ここにあるような業務を行っ ております。そして安全かつ効率的な運用に努めているところでございます。  また理事長を委員長とする資産運用委員会を設置しております。これについては資料 19頁の参考7の資産運用委員会規程を御覧ください。第1条に、退職金給付の原資で ある余裕金の運用の重要性に鑑み、運用の基本方針及び運用計画等、余裕金の運用に関 する重要な事項を審議し、運用管理体制の強化と責任体制の明確化を図ることを目的と してこの資産運用委員会を設置しております。第2条は構成です。第3条では原則とし て毎月1回開催することとされており、基本方針の決定あるいは計画の策定、運用実績 等についての審議を行っております。  4頁に戻りますが、勤労者退職金共済機構の内部の体制としては以上のような形で資 産運用を行っているわけですが、流れ図の中で右のほうに委託運用または自家運用とい う形で金融機関との関係を示してあります。まず委託運用ですが、信託銀行・生命保険 会社・投資顧問会社に対するものです。これについて委託運用機関の選定及び管理、評 価を勤労者退職金共済機構において行っているところでございます。運用機関の選定に つきましては、経営理念や経営内容、中小企業退職金共済制度に対する理解、運用方針 及び運用スタイル等を十分に審査して選定しております。基本方針の中にこの選定につ いて盛り込んでおり、6頁の参考1の中程にございます。  運用機関の管理とか評価については7頁を御覧ください。運用の評価及びシェア変更 についてです。まず評価ですが、定量評価に定性評価を加えた総合的な評価で行うこと としております。ここで言う定量評価とは、各ファンドごとの利回りを市場平均の利回 りと比較することにより行っております。定性評価につきましては、受託運用機関の運 用体制とか投資方針、あるいは運用能力等に基づきまして総合的評価を行っております 。こうした評価を行った結果として、受託運用機関への資産配分のシェア変更、または 委託契約の変更を行うこととしております。  受託運用機関に対する管理は、金融機関からの毎月の運用状況や残高表等の報告、及 び四半期に1度ずつ行う運用状況についてのヒアリングによって行います。  4頁に戻りまして、自家運用については、財政融資資金預託金は財務省、国債は証券 会社、商工債、金融債は商工中金等に対して、勤労者退職金共済機構が自ら契約するこ とで運用を行っています。  次に、5頁の運用方法別資産額等の推移ですが、最近5年間の運用方法別に見た、資 産額の推移について見たものでございます。旧資金運用部預託金、有価証券、生命保険 資産、金銭信託、預金等がございます。特徴的なところだけ申し上げますと、旧資金運 用部預託金は、各年度とも、概ね20%前後の割合で推移しております。有価証券につ いては、平成8年度末には42.5%のウェイトであったものが、平成12年度には3 3.28%ということで、暫時保有割合が低下しています。全体としまして流動性を確 保しながら現行の金利下で、比較的高い利回りを確保できるような有価証券で運用する ということにしており、その結果として、商工債については、平成8年度末には22. 6%ぐらいの保有割合であったものが、平成12年度末には7.5%程度に割合が低下 しており、一方、国債については、平成8年度末に14%ぐらいのものが平成12年度 末には18.6%と、ややその割合を増加させているという状況にございます。生命保 険資産については、概ね各年度10%ぐらいの割合で推移しております。ただ平成8年 度に、20%弱あったものが、平成9年度に10%になっておりますが、これは、一つ には、効率的な運用を図るために資産を振り向けたということがございます。金銭信託 ですが、指定金銭信託は平成3年度から運用を開始したものです。特定金銭信託につき ましては、平成8年度からということでして、いずれも平成9年度以降本格的な運用に 移行しており、平成9年度以降、その割合を高めております。預金、長期貸付金、投資 不動産については説明を省略させていただきます。  こうした結果としまして、全体としての資産の運用利回りがどのように推移してきた かというのが、合計欄の利回りの所でございます。この数年間の金利低下動向を受けま して、全体としては徐々に利回りが低下しているということがわかると思います。特に 平成12年度末になりますと利回りが2.33%と株価の影響を大きく受ける金銭信託 の利回りが低下したことを受けて、全体としても運用利回りが低下したという状況です 。私どもは情報公開にも力を入れてやっているわけですが、先ほど課長のほうから説明 があったとおりですので、これについては説明を省略させていただきます。以上でござ います。 ○部会長  どうも御苦労様でした。それでは今の説明について質問なり御意見がありましたらど うぞ。 ○委員  資料2の8頁にリターン、リスクとありますが、説明していただけますか。 ○理事  基本ポートフォリオを策定するに当たっては、一方で効率をよくするということも考 えつつ、リターンをできるだけ高く上げるという運用を行うとなるとどうしてもリスク が高くなります。それとの兼ね合いをどうするかということについて随分議論があった 結果基本ポートフォリオがこのようになったとわけですが、ここで言うリターンという のは、期待収益率のことを示しています。リスクとは、期待収益率に伴う、その不確実 性のことを示しています。 ○委員  金銭信託の7.77とありますが。 ○理事  金銭信託につきましては、期待収益率が4.91%でして、かなり高い収益率を狙っ ておりますので、高くなりますとどうしてもリスクすなわち不確実性はその分だけ高ま るということでして、ここでのリスクは7.77%ということになっております。 ○委員  わかりました。 ○部会長  他にございませんか。 ○委員  運用の評価についてお尋ねしたいのですが、これは非常に重要だと思うのですが、定 量と定性があるということでしたが、どのような指標で評価するのかということと、評 価をしたらその次の年度に評価の結果がどのような影響を及ぼすのかということ、この 点についてお願いいたします。 ○理事  定量評価ですが、各ファンドごとに、毎四半期ごとの運用状況を委託機関に説明させ ています。最終的には年度末の時点で各ファンドについて、修正総合利回りと申してお りますが、1年間で、そのファンドがどれだけの収益を上げたかという結果が出てまい ります。その収益をどのような物差しで評価するかが問題になるわけで、例えば金銭信 託ですと5つの金融商品で構成されておりまして、債券、株式、転換社債、外債、外株 といったものがございます、それぞれごとに市場全体の収益指標があり、例えば国内株 ですと、TOPIXがございます。そのTOPIXがどれだけこの1年間に変動したか 、それと比べて勤労者退職金共済機構の金銭信託に係る株式の収益率がそれに勝ったか 負けたかを見ることとしております。その他の資産についても同様に、それぞれメルク マールとなる指標がありまして、それとの比較で定量評価を行っております。  一方、定性評価につきましては、1つは会社の運用方針がどうであるか、あるいはそ の運用機関におけるファンドマネージャーの数等、運用機関の運用能力や、投資スタイ ルがどうであるかを評価するものです。例えば同じ株式でも、運用方針によって、グロ ース株を中心に保有する場合や、バリュー株を保有する場合があり、運用機関ごと、フ ァンドごとに異なります。それが方針どおりなされているかどうかとか、あるいは資産 の構成比率が勤労者退職金共済機構の示したものを逸脱していないかとか、難しい点も あるのですが、十分な報告を求めて評価の指標としております。また、当然のことなが ら、法令事項に違反していないかどうかとか、それ以外のことも総合的に評価を行って いるところでございます。  これらの結果をその次にどのように活かしていくかについては、例えばシェア変更を しなければいけないような事態もあります。その場合は、例えば成績のよかったファン ドには年次計画において資産の投入割合について少し上積みする等の対策をとっており ます。成績の悪いところは切ればいいではないかという議論もあるとは思うのですが、 例えば昨今のような状況で株価が下がっているようなときに解約しますと、そのこと自 体がマイナスになるということもありますので、なかなか直ちにそのようなことはでき ません。  もう1つは、単年度だけで評価していいかという問題もございます。例えばファンド の性格がたまたま市場の動向にマッチしていたようなケースの場合は、かなりの利益を 上げることができるわけですが、たまたまそのときの市場の動向がファンドの指向して いたものとやや異なる方向を向いていたような場合には、いい成績を上げられないため 、やはり少なくとも3年ぐらいの期間をかけて、そのファンドのパフォーマンスを検証 する必要があると考えております。 ○委員  5頁の運用資産額の推移の中で、特定金銭信託が、平成8年度末の資産から比べると 、平成12年度までの間に急増していますが、その割にはリスクがあるにせよ、利回り が低いようです。何か理由があったのですか。 ○理事  先ほど申しましたように、平成8年度から9年度にかけまして特定金銭信託をかなり 増やしたということでございます。こういった特定金銭信託等を追加的に増額した場合 に、最初の年というのはなかなか収益が上がりづらいのが一般的なようでして、これも 一つの要因ではないかと考えています。 ○委員  いまの質問と同じようなことなのですが、要するに金銭信託がいいということで、生 保をかなり減らしていったわけですね。後の資料にも出てきますが、平成13年度は金 銭信託等の運用利回りが0%と予想されているわけです。運用資産額のうち、かなりの 金額を金銭信託に持っていっているわけで、これが今度は0しか予定できないというこ とになるわけですよね。 ○理事  その問題につきまして申し上げますと、確かに今年度に入りまして急激な株安や、景 気後退の中で今年度末は前年度以上に厳しくなると見ております。 ○委員  要するにこれをずっと見てくると、金銭信託はかなりの勢いで増やしてきたわけです 。いまはもう0だという予測が立っているわけですが、いまこれを売買したら含み損と いうのはどれくらいになるのですか。 ○勤労者生活課長  私が承知している範囲ですと、9月末の段階で、たしか850億円の含み損があると 。平成12年度末段階では含み損はほとんどなかったのですが、その後株価がかなり下 がり、特に9月末は、米国の同時多発テロが起こった直後だったものですから、さらに 株価が低下した時期でもあるわけです。なお、株に対する投入額は約1割ですので、額 にして3,000億円程度となっています。 ○委員  そうしますと、いま勤労者退職金共済機構の理事から説明してもらいましたが、結局 マイナスになっているということは、0で表示されるからそれでいいのですが、もうプ ラスになるまで動かせないということですよね。  9月末でいくらかの含み損があるという状態を含み損として計上しないというのは、 前回公益委員の方が質問されて、それに対する答だったのです。ということは、いまの 運用の方法について聞きましたが、実質的にはもうここの相当な部分は手が付けられな い状態であるという理解でいいのでしょうか。  言い方が悪いかもしれませんが、要するに損が出ているのだから0で表さざるを得ず 、含み損として表すことはない、保有し続けているのだから実際の損はないと言えるの ですが、それを数字で出すということは、含み損が表に出てしまうと、そういう意味合 いで理解していいのですか。ということは、このポートフォリオはあまり割合を変える ことはできないと、そのような理解でいいのですか。 ○理事  先ほど申しましたように、直ちに金銭信託を解約するということになりますと、確か に850億ぐらいの含み損を抱えているわけですから、その分だけ価値が下がってしま うことになるため、直ちにこの時期に契約を解約するということは難しいと考えており ます。 ○委員  1カ月ごとに会をやっているとか、理事長を長にして詳しく検討しているとかと言っ ている割には、もうかなり制約を受けている、ちょっときつく言って悪いですが、その ような意味合いでいいですか。 ○理事  先ほど申し上げましたが、市場のメルクマールとしての対比で見たときに、勤労者退 職金共済機構の運用がどうかというところを中心に評価をしているわけです。そういう 意味では、勤労者退職金共済機構だけが極めて悪い運用を行っている訳ではなく、市場 が大変厳しい中で他の運用機関と大体同じような状況になっていると考えています。 ○委員  先ほどの委員とちょっと似たような質問であったのですが、やはり事後的なチェック とその運用の基本方針の策定というのは、非常に重要な部分だと思うのです。特に金銭 信託の部分において、いままで月次で報告をして、四半期でヒアリングをして、その評 価をするということだったのですが、いま含み損もかなりあるということで、いまの状 態では変えるのは非常に難しいと思うのですが、実際にその組み替えというのはどのぐ らいの頻度で出されたことがあったのかということが第1点です。  それから、12頁に一覧表があるわけですが、例えばこの会社の名前というのは通常 は公表しないものなのか。あるいはファンドAとかBとかファンドがもらえますが、こ れは例えば株式重視型のものなのか。あるいは公社債型のものなのか、そういったよう な公表というのはなされていないのかということをお伺いしたいのですが。 ○委員  第1点、こういったファンドのパフォーマンス等を見た上で組み替えとかそういうこ とはないのかということですが、実はこの3月26日現在でここのファンドの数が51 ファンドありました。現在は、これを43ファンドに統合しています。やはりこれは効 率的な運用を目指す必要があることがひとつです。それから、基本ポートフォリオに沿 うような形でファンドの見直しも行ったことにより、ファンドを減らしています。  2番目に、個別の会社名ですが、実はこういう形で提示させていただくのは、たぶん 初めてではないかと思います。なかなか個別の名称及びファンドの種類ということにな ると、今度は契約運用機関との関係もありまして会社名については公表は控えさせてい ただいているところです。  ファンドについては、大きく2つに分けて、バランス型準特化型があり、準特価型に は、国内株中心のもの、それから外国株中心のもの、外債を中心とするものと3つのタ イプがあります。ここでは、そこを区分けした形では示していませんが、もし必要なら ばまた後ほどでもお示ししたいと思います。ファンドごとのパフォーマンスを中心に見 ていただこうと思いまして、そこまでご用意しておりません。 ○委員  委員に伺いたいのです。私は資金運用の専門家ではないものですからよくわからない のですが、例えば勤労者退職金共済機構がこういう資産運用をしているということを今 日のこの部会で聞いたわけです。勤労者退職金共済機構の資産運用は、中小企業労働者 の退職金を安全かつ確実に資金を運用するということでやっているわけですが、持ち帰 って勉強して、次の必要な資料などについて後でお願いしようと思っているのですが、 今日聞いた限りでは、この勤労者退職金共済機構の資産運用は安全な資産運用をしてい るというふうに見ることができるのでしょうか。非常に唐突な質問で大変申し訳ないと 思いますが、お願いします。 ○委員  非常に難しい問題だと思うのです。たぶん8頁の表でリターンとリスクのバランスを 考えて、基本ポートフォリオを組まれていると思います。この部会でも以前そういった 説明があったと記憶しているので、たぶん委員がおっしゃったのは、金銭信託が近年非 常に増えているので、それがリスクが増えているのではないかというような御趣旨があ るのではないかと思うのです。たぶんリターンとのバランスで増やしてきたのではない かなというふうには、理解しているのですが。これはたぶん勤労者退職金共済機構の方 のほうがお詳しいのではないかと思うのですが。 ○部会長  運用の体制のところで資産運用委員会を何のためにするかというと、何かいろいろと 趣旨がここのところに書いてありますが、別に作っては悪いというわけではないですが 、運用をやっている責任者が中に入った委員会を作っても、身内の話だから責任体制の 強化ということにはおそらくならないだろうと思います。むしろ責任を身内の人で分散 するような話になってしまって、かえって責任が不明確になるような気がするのです。  だから勤労者退職金共済機構の中でいろいろと幅広く意見を聞いて資金運用を行うと いう趣旨であれば、それはそれで役立つことだろうと思うのです。こういう資産運用と いうのは、きわめて二律背反のことをやらなければいけないため難しい。安全性と収益 率の確保なんて最近の事情では、なおさら相反するような話で、どこでバランスをとる か非常に難しい話だから、もっと別な人に評価してもらうと必要ではないでしょうか。 要するに、身内以外に評価をしてもらう仕組みを考えないと駄目だと思うのです。  いくら、厚生労働大臣の認可と言ったって、事業報告書等を持ってきても、そうわか るものではないと思うのです。だから、もっと別の人に評価してもらうことが、あるい はポートフォリオを厳密に外部の人に策定してもらうとかいった仕組みを考えないとこ れから時代は難しいのではないでしょうか。  昔は、資金運用部にさえ預けておけば安全で、現実にいえば、資金運用部に預けたほ うが絶対儲かっていたはずなんです。けれども、資金運用部にばかり預けるのはどうか という話が出て、もっと自主運用するべきでないかという話が出てきて、現在のように いろんな金融商品に資産を投入することになってきた。言い換えればいただいているも ので、危険度の高いものも買わなきゃいけないようになってきたわけですから、そこに ついても考慮しないといけないと思います。 ○理事  行革事務局からの意見にも、運用の管理、評価体制の強化について指摘されています ので、今後十分検討してまいりたいと思っております。 ○部会長  とりあえずこの点はこれぐらいにしておき、次のテーマに移ろうと思います。 ○勤労者生活課長  議題2と議題3は関連しますので、併せて説明をさせていただきます。資料3から資 料7までまとめて説明をさせていただきたいと思います。資料3、前回経済シナリオに 基づく将来推計を出しましたが、0.5%刻みだったということもあり、より細かな推 計をという御意見等もいただいたので、それを踏まえてより細かい刻みのものを作成し ています。予定運用利回りについて1.5%から1.0%までの間を0.1%刻みとい うことで用意しています。また参考までに、0.5%という推計も今回併せて出してい ます。  推計の全体は、前回お話したとおりですが、3頁にあるとおり、ケース1からケース 3、それから現行金利水準継続の4つとなっています。ケース1が13年度はマイナス 成長となるが、14年度以降プラス成長に転じるというケース。ケース2が、13、1 4年の2カ年はマイナス成長で、その後プラス成長に転じるケース。ケース3について は、4年程度はマイナス成長という前提で推計したものです。現行金利水準については 、有価証券等については、今年9月末時点の金利、それから金銭信託については12年 度の実績の利回りの2.054%を用い、各年度その実績を残すという前提で推計をし ています。  1頁のいちばん上の表が予定運用利回り1.5%の数字です。これは前回のものと全 く同じです。(注)の1にあるように、各年度の付加退職金の支給率を0とすることを 前提としています。剰余金が出た場合には、全額累積欠損金の解消に充てるという前提 での推計です。このケースで見ると、平成15年度から予定利回りを見直すという前提 で、平成15年度の改正初年度については、ケース1からケース3ともにマイナス10 0億円近い欠損金が出るという推計になっております。現行金利水準が継続した場合に は、107億の欠損金が生じます。ケース1で見ていくと平成16年度にプラスに転じ 、平成17年度になると、ケース2でもプラスになることとなっています。5年後の平 成19年度末の累積欠損金はケース1では2,124億、平成12年度末よりも100 億円ぐらい多い水準になります。ケース2では2,966億円、ケース3では3,67 0億円となり、現行金利水準が継続した場合には2,309億円となります。  その下が、予定運用利回りを1.4%に変更した場合です。当期利益金は各年度ごと に、1.5%の場合に比べると若干増えますが、ほぼ1.5%と同様に推移します。最 終年度の平成19年度末の累積欠損金を見ると、ケース1で1,993億円と、2,0 00億円を若干割る見込みです。ケース2で2,836億円、ケース3で3,540億 円となります。  予定運用利回り1.3%がその下の表です。これも傾向は同じで、19年度末の累積 欠損金が、1.4%の場合よりは各ケースともやや下回ることになります。その下のが 予定運用利回り1.2%までいくと、平成19年度末の累積欠損金がケース1で1,7 02億円。ケース2では2,545億円と、まだ2,500億円を上回ってきます。ケ ース3で3,250億円と、3,000億円を超過する見込みです。  次が予定運用利回り1.1%の場合です。改正初年度の平成15年度においてもケー ス1からケース3をとおして利益が出る見込みとなります。ケース1で28億円、ケー ス2で25億円、ケース3で25億円の利益が出るわけです。平成19年度末の累積欠 損金はケース1で1,492億円と、1,500億円を切る水準となります。ケース2 で2,336億円、ケース3で3,040億円です。  その下が予定運用利回りを1.0%に変更した場合の推計で、前回同じものを出して います。平成15年度の改正初年度でも70億を超える剰余金が出るということになり ます。平成19年度末の累積欠損金を見ると、ケース1では1,252億円まで累積欠 損金が減るということになります。ケース2では2,097億円と、平成12年度末の 水準にほぼ近くなるという数字ですが、それでも平成12年度末よりは60億円ぐらい 累積欠損金が多くなります。ケース3では2,801億円、現行金利水準継続の場合で 1,439億円となっています。  最後の予定運用利回り0.5%の表で見ると、かなりの改善が見られます。平成15 年度の改正初年度でケース1からケース3まで揃って210億円を超える利益が出ます 。平成19年度末の累積欠損金を見ると、ケース1で530億円、ケース2で1,37 6億円、ケース3では2,081億円ですので、ケース3になると0.5%まで下げた としても、12年度末の累積欠損金の水準よりも50億円程度多い水準に留まるという ことです。以上、細かい刻みの推計を御説明いたしました。  続けて資料4では、議題3剰余金の配分ルールについて御説明します。剰余金の配分 ルールについては、基本退職金の利回りを相当程度下げた場合には剰余金が各年度発生 する見込みです。それを付加退職金と累積欠損金の解消にどう配分するかというルール の案を資料5で示させていただきます。  これを御説明する前に、付加退職金の仕組について簡単に説明させていただきます。 資料4をご覧ください。付加退職金については、平成2年の中小企業退職金共済法の改 正により導入された制度です。それまでは基本退職金のみが退職金として支給されてい ましたが、金利の変動に対応し得る退職金制度を構築することが最大の目的として、退 職金を従来からの基本退職金と、年度ごとに基本退職金部分を上回って利益が出た場合 にそれを配分する付加退職金、この2つで構成するものとしたわけです。付加退職金導 入当初は、基本退職金は過去の経験に照らして、容易に運用実績がそれを割り込むこと のない水準、即ち単年度でも赤字が出ないような水準とし、各年度ごと期待できる剰余 を付加退職金として配分するという考えのもとに導入されたわけです。当初の考え方と かなり実態に大きな開きが出てきているということです。  付加退職金の支給対象者は掛金納付月数43月以上の者とされておりますが、これは 、退職金共済制度という趣旨にかんがみ、加入期間によって支給水準に若干の差を設け るという考え方に立って、付加退職金の給付についても一定の制限を設けたものです。 算定方法については、付加退職金の原資を前年度の利益見込額とし、それを、仮定退職 金と呼んでおります。その付加退職金の支給対象者がそれぞれ当該年度に退職したと仮 定した場合の基本退職金額の総額で除した率を基準として、当該年度以降の運用収入の 見込額、その他の事情を勘案し、厚生労働大臣が労働政策審議会の意見を聴いて支給率 を定めるとなっています。これだけを読むと、わかりにくいと思いますが、2頁に簡単 な図があります。  これは12年度の見込ということで出しています。実際にその各年度の損益計算書上 、当期利益金が出た場合、その当期利益金を計算の分子にします。分母には、付加退職 金の対象者が当該年度にやめると仮定した場合の仮定退職金の総額をおき、その支給の 基準となる率を算定するということになります。出てきた率を基準として運用収入の見 込額、その他の事情を勘案して、厚生労働大臣が労働政策審議会の意見を聴いて定める ということになっています。  平成12年度は当期の利益金が出ておらず、欠損金が出ておりますので、支給率は0 ということになっています。これを逆に利益金が出たと見ていくと、12年度、仮にそ の上の表にあるように、302億円の欠損金ではなく、302億の利益金が出たとする と、退職金の支給対象者となる人が、その年度にすべて退職したと仮定した場合の仮定 退職金の総額が3兆3,000億円ほどです。これを分母とし、当期利益金を分子とし て計算すると、13年度の支給率というのが、ここではマイナスになっていますが、逆 にプラスとして0.00916が、基準となる支給率となるわけです。  この基準となる支給率をもとに、先ほど申し上げたように運用の収入の見込額、その 他の事情を勘案して、労働政策審議会、つまりこの中小企業退職金共済の意見を聴いて 、最終的に厚生労働大臣が支給率を定めるということになっています。  1頁に戻っていただき、(2)(2)ですが、各人の仮定退職金額に(1)の支給率を乗じ たものを付加退職金として支給するということになります。もう少し簡単に申し上げま すと、前年度の1年間の利益を翌年度に各人の積立額に応じて配分しようというルール になっています。下に実績がありますが、平成2年の法改正で、平成3年度から付加退 職金の制度が導入されています。平成3年度については、予定運用利回りよりも運用実 績が若干上回っていますので、付加退職金を支給しています。支給の方法としては、翌 年度に配分をするということになります。したがって、平成4年度の付加退職金の支給 率が一番下にあるとおり、0.01309となっています。平成4年度についても、運 用実績が予定運用利回りを上回っているため、付加退職金を支給しています。支給率が 0.0015です。それ以降は、支給率0が続いているわけです。  この支給率でどのぐらいの付加退職金がもらえるかというと、(注)にあるように、 仮定退職金の額が100万円とした場合に、掛金1万円であれば7年から8年程度加入 をしているような方のケースで、平成4年度については1万3,090円、平成5年度 については1,500円もらえたということになるわけです。以上が、付加退職金の仕 組みについてです。  再び資料5の剰余金の配分についての事務局案を説明させていただきます。事務局案 として4つ用意させていただいています。前回、新しい中退金の仕組みとして考えられ る案を、事務局から提示させていただきました。1つ目は、基本退職金の利回りを0と して、各年度ごとの運用実績をすべて付加退職金として支給する方法、2つ目に、加入 者間の負担の公平性に配慮するという観点で、加入時期によって付加退職金の支給率に 差を設けるという仕組みですが、これについては、部会の御意見としては、基本退職金 が0というのはいかがかと思うとの御意見が強かったように見受けられます。また、こ の他に、現行の仕組みを維持すべきではないかという御意見もいただいています。そう いうことから、事務局としてはあくまでも現行の仕組を前提とするという形で、基本退 職金の予定運用利回りを引き下げた場合に生じるであろう剰余金の配分のルールについ て、いくつか案を御用意させていただきました。  まず1の案1、案2に共通する考え方として、基本退職金の利回りを低めの水準に設 定する場合で、あくまでも例えばということですが、0.5%から1.0%程度という 低めの水準に予定運用利回りを設定する場合です。これぐらいの水準に設定すると今後 経済情勢が悪くなった場合でも、各年度それなりの剰余金が出ることが期待できます。  案1としては、剰余金のうち一定割合、例えば2分の1といたしますが、場合によっ ては3分の2、あるいは3分の1という話もあるかもしれません。これを累積欠損金の 解消に充て、残りの2分の1を付加退職金として支給するという、割合で配分を行うと いう考え方です。  案2は、剰余金のうち一定額、例えば200億円までは累積欠損金の解消に充て、そ れを超える額については付加退職金として支給するという案です。剰余金の額で配分を 行うという考え方です。ここで、200億円という例示は、平成14年度まで3.0% の現行予定運用利回りが続くとすると、3,000億円ぐらいの累積欠損金が貯まると 推計されるわけです。ほぼ15年間で3,000億円ですので、これを同じ期間で解消 すると仮定すれば、3,000億円÷15年1年当たり200億円になる。こういう考 え方で、200億円という数字をとりあえず設定しております。  案1と案2の違いですが、案1の場合は剰余金が出れば必ず付加退職金として半分は 支給をするということになるわけですので、剰余金が出れば付加退職金の制度が機能し ていくということがいえます。案2は、剰余金の額によっては付加退職金が働かないと いうことになります。剰余金が200億円を超えなければ、付加退職金としての配分が ないということになります。逆に、確実に累積欠損金の減少を図るということができる とも言えます。  2として、基本退職金の利回りを高めの水準に設定する場合です。例えば1.0%か ら1.5%程度の場合とさせていただいています。この場合、基本退職金の利回りを高 めの水準に設定するということになると、今後の経済情勢いかんによっては、これまで のように累積欠損金がさらに増加する可能性もあります。案3は、基本退職金の利回り を高めに設定するかわりに、剰余金は全額累積欠損金の解消に充当するというものです 。案4は、剰余金のうち一定額、これも200億円という金額を仮に入れていますが、 ここまでは累積欠損金の解消に充て、それを超える額については付加退職金として支給 するというものです。案3と案4の違いは、御覧いただければわかるとおり、案3の場 合、累積欠損金が解消するまでは付加退の制度は全く機能しないということになります 。ただし、案4についても、経済が相当程度好転して、かなりの剰余金が出なければ、 実質的には案3と同じです。  付加退職金の決定方法ですが、案1から案4のような原則的ルールを予め定めておき 、各年度ごとの付加退職金の支給額についてはその都度、労働政策審議会勤労者生活分 科会中小企業退職金共済部会の意見を聴いて決定することとしてはいかがかと考えてい ます。例えば案2で剰余金が仮に201億しか見込めなかった場合に、わずか1億円で も付加退職金として支給するのが適当かどうかという判断も出てこようかと思います。 そういう意味で、原則的なルールは定めるものの、各年度ごとの具体的な付加退職金の 支給率については、この部会で御意見を伺った上で決めてはどうかということです。  資料6が、以上の案1から案4のイメージ図ということで簡単に図で整理したもので す。資料5と照らし合わせながら御覧いただいた方がいいと思います。各年度ごとに、 横軸の0から右側が剰余金、0から左側は欠損金を表します。縦軸の0から上が、付加 退職金に回す部分、0から下の部分が累績欠損金の解消に充てる部分です。それぞれの ケースごとの推計に基づく剰余金額を横軸上にプロットしています。ケース1は青の菱 形、ケース2は赤丸です。  最初の頁は、予定運用利回りを0.5%に変更した場合で、それぞれの推計をプロッ トしています。案1では、剰余金については半分を付加退職金に配分し、半分を累積欠 損金の解消に充てるということです。緑の線ですが、上にいく線と下にいく線とが両方 出てきます。例えば剰余金が200億あったとすれば、付加退職金の配分に充てる分が 100億、累積欠損金の解消に充てる部分が、横軸から下にいって100億ということ を表しています。  案2では、200億円までは全額累積欠損金の解消に充てるということですので、剰 余金が200億円のレベルまではすべて45度線でその下のほうに線が伸びるというこ とになります。200億円を超えると、その部分を付加退に配分するということですの で、200億円以上については横軸の上の部分が45度で付加退職金の原資として出て くるということです。  これを見ていただくとおわかりのように、案1と案2の相違点は剰余金が400億円 のところで線が交っていますが、ここまでは付加退職金という観点からすると、案1の ほうが案2を上回ることになります。剰余金が400億円を超えると、案1よりも案2 が付加退職金の配分が増えることになります。逆に累積欠損金の解消という観点からす ると、400億円までは案2のほうが累積欠損金の解消額は多くなります。400億円 を超えると、案1が大きくなります。  次頁は、1.0%に変更したケースです。これは、案2、案4も合わせてプロットし ていますので、ちょっと線が複雑になってきています。1.0%ですので、ケースごと のプロットの場所が、0.5%よりもやや左に寄っています。これを見てわかるのは、 やはり案3が、累積欠損金の解消にはいちばん資するということになります。時間の関 係もありますので、詳しい説明は省きます。  次頁は1.5%に変更したケースです。これは、案3と案4を想定しています。ただ 、予定運用利回りを1.5%に変更しますと、そのプロットの位置がかなり左側に寄っ てきます。1から5まで数字が書いてありますが、これは改正後1年目、2年目、3年 目とこういう意味です。ケース3の場合は、すべて欠損金が出てしまう。ケース2でも 1年目、2年目の15年度、16年度は欠損金が出てしまいます。案3は、すべて累積 欠損金の解消に充てるということですので、線は1本です。付加退職金が付くのは、1 .5%に変更した場合ですと、200億円から右の部分ということになりますので、ケ ース1の3年目、4年目、5年目だけということになります。それ以外は、剰余金が2 00億円よりも左になっていますので、付加退職金は付きません。参考にしていただけ ればと思います。  最後の資料になりますが、剰余金の配分について案1から案4までを考慮して、それ ぞれを将来推計に当てはめた収支状況について見た資料です。これも、資料5を参照し ながら御覧いただければと思います。まず、案の1です。基本退職金の利回りを低めの 水準に設定して、剰余金のうち2分の1を累積欠損金の解消に充て、残りの2分の1を 付加退職金として支給するというケースです。予定運用利回りを0.5%に変更した場 合では、改正初年度の平成15年度からかなりの剰余金が出るということが想定されま す。剰余金を見ると、ケース1からケース3、それぞれ200億を超えています。従っ てその半分を付加退職金に回すということになりますと、100億円を超える付加退職 金の原資が出てきます。平成19年度を見ると、累積欠損金の額が、ケース1では1, 772億、ケース2では2,194億、ケース3では2,546億となります。現行金 利水準継続ということになりますと1,671億です。基本退職金は0.5%に設定し ますが、かなりの部分その付加退職金として支給するということになります。右の欄で 、19年度末時点における実質利回りというものをラフな計算でお示ししています。括 弧書が、付加退職金として配分される部分です。ケース1では0.757%が0.5% に上乗せされ、トータルでは1.25%になります。ケース2では0.541%が上乗 せされて、1.041%、ケース3では0.565%になります。その下の案1で、予 定運用利回りを1.0%に変更したケースです。この場合でも、改正初年度の15年度 から相応の剰余金が出ることが想定されます。付加退職金の原資としても、ケース1か らケース3、それぞれ30億以上の原資が出ることが想定され、15年度から付加退職 金にそれなりの額を回せるということになります。その結果、累積剰余金の減少額とい うのはかなり小さくなることになります。平成19年度では、ケース1では2,132 億、ケース2では2,554億、ケース3では2,909億です。現行金利水準継続で も2,031億で、0.5%よりはそれぞれ累積欠損金の額は多くなります。実質利回 りでは、ケース1では1.501%、ケース2では1.207%、ケース3では1.0 45%になると推計しています。  案2は、剰余金のうち200億円までは累積欠損金の解消に充て、それを超える額に ついては付加退職金として支給するケースです。予定運用利回り0.5%のケースでは 、剰余金のうち200億円までは優先的に累積欠損金の解消に回すということですので 、平成15年度、16年度はその付加退職金に回す分は相当少なくなることになります 。ケース3では、平成19年度まで付加退職金の原資は0になります。その結果、19 年度末の累積欠損金で見ると、ケース1からケース3ともほぼ似たような金額になりま す。ケース1で2,010億、ケース2で2,012億、ケース3で2,097億です 。累積欠損金の減少は、ケース1を除いて案1よりも早いと思います。  実質的な利回りは右側にあるとおりです。ケース1では1.413%、ケース2で0 .588、ケース3で0.502です。案2で1.0%に変更した場合ですが、改正初 年度はケース1からケース3で付加退は0です。ケース1では平成16年度から、ケー ス2では平成17年度から付加退が付きます。ケース3では19年度まで付加退は0で す。  19年度末の累積欠損金はケース1で2,132億円、ケース2で2,277億円、 ケース3で2,801億円です。案1よりは累積欠損金の減少額は大きくなります。実 質的な利回りは右側にあるとおりです。  次頁は基本退職金の利回りを高めの水準に設定する場合です。案3、剰余金は全額累 積欠損金の解消に充当するケースです。1.0%に変更した場合、これはいままで示し た付加退0の推計と、1.0%に変更して付加退0とする推計と同じです。結果だけ見 ますと、平成19年度でケース1で累積欠損金が1,252億円、ケース2が2,09 7億円、ケース3が2,801億円です。  予定運用利回りを1.5%に変更して付加退を0とした推計と同じです。  19年度末だけ見ますと、ケース1で2,124億円、ケース1でも平成12年度末 を100億円ぐらい上回る水準でケース2で2,966億円で約3,000億円になり 、ケース3で3,670億円となります。  最後の案4は、剰余金のうち200億円までは累積欠損金の解消に充て、それを超え る額について付加退職金として支給するケースです。予定運用利回り1.0%の場合、 15年度は付加退の配分はケース1からケース3を通じて0です。16年度になります と、ケース1で付加退の原資が少し出てきます。17年度に、ケース2でも出てきます 。ケース3では、19年度まで付加退が0となる見込みです。19年度末の段階でケー ス1で2,132億円、ケース2で2,277億円、ケース3で2,801億円の累積 欠損金が生じる状況になります。  案4で1.5%に変更した場合、15年度、16年度といずれのケースも付加退職金 への配分は0です。17年度で、ケース1の場合だけ55億の原資が出てきます。ケー ス2、ケース3は、平成19年度まで付加退への配分は0です。その結果、累積欠損金 はケース1では2,420億円、ケース2では2,966億円、ケース3では3,67 0億円となるとうことで、かなりの額に膨らみます。資料の説明は、以上です。 ○部会長  いまの御説明に何かありますか。 ○委員  おっしゃっている意味の内容はいろいろわかるのですが、全部よくお考えになるもの だと感心をしていますが、何といってもケース1、2、3の取り方の問題です。勤労者 退職金共済機構の方がお考えになって、試算されたと思います。19年度まである程度 成長率を見込まなきゃいけないわけです。それに見合ってそれぞれの利回りの問題が出 てくるので、言葉では表現されていますが、具体的に数字をあげて言っていただけるこ とができますか。数が多いから大変ですが、対前年比で。 ○勤労者生活課長  実は、これは前回お出しした資料の中にありまして、今回ちょっとそこまでの資料を 用意しておりません。平成13年度については、ケース1からケース3まですべて仮定 経済成長率の予測をマイナス0.9%という前提となっております。政府の経済見通し が最近変更になるという報道がありましたが、その数字それと全く同じ数字になりまし た。ケース1の仮定経済成長率は平成14年度がプラス0.5%、15年度が0.6% 、16年度が1.4%、17年度が1.8%、18年度が1.6%、19年度が1.4 %となっています。  ケース2では、13年度がマイナス0.9%、14年度がマイナス0.1%、平成1 5年度がプラス0.1%、平成16年度がプラス0.3%、平成17年度がプラス0. 5%、平成18年度がプラス0.8%、平成19年度がプラス1.5%です。  ケース3では、平成13年度はマイナス0.9%、平成14年度マイナス1.0%、 平成15年度がマイナス1.0%、平成16年度がマイナス1.0%、平成17年度が 0.0%、平成18年度がプラス0.3%、平成19年度がプラス0.5%と仮定して います。 ○委員  いま、最初に説明のあった付加退職金のそもそもの趣旨をどう考えるのかということ は改めて問われているだろうと思うのですが、金利の変動に対応し得る退職金制度とい うことになっているのですが、現在のようにこれから長期間累積欠損金が相当出ると見 込まれることとの兼合いをどうするのかというのは資料には書かれていません、それか ら、この前私は付加退職金制度はもう廃止すべきではないかということを申し上げたの ですが、その申し上げた理由は、公平性ということから考えると、例えばこの付加退職 金が出ている平成3年と平成4年を見ますと5.5%の高利率時代なのですね。さらに それよりも多かったからプラスアルファーでももらっているわけですね。現在は3%、 おそらくこれからはさらにもう少し低くなるだろうというこれからの話ですが、それと の兼合いから言って、やはりこれはおかしいのではないかと思います。この当時として はやむを得ない情勢があったとはいえ、やはりそもそも中小企業退職金共済制度をどう 見るかということにも関わってくると思うのですが、401K年金のような確定拠出金 年金とは違うと思うのですね。つまり、掛金を決めて、あと、金利の変動に任せて、も らう金はまさに市場の金利によって変わってくるという意味ではないと思うのですね。  やはりある程度公費も投入されている、それから、入るときにはある程度一定の給付 水準が約束されているということを前提に入ってくるわけですから、その意味では金利 の変動にあまり機動的に即連動させて退職金を変動させるということはやはりちょっと おかしいのではないでしょうか。もちろん変えざるを得ないということはわかりますが 。  その意味からすると、必ずしも確定拠出型年金とも違うということからすると、やは りある程度公平性ということは意識して考えてもらわなくては困るということだろうと 思いますね。そうすると、これだけの定義からすると、利率が高い時代でも低い時代で も単年度の剰余が出た場合は付加退職金として支給しましょうという、こういう定義の 仕方では甚だおかしいのではないでしょうか。私は、これからはおそらく予定運用利回 りが低くなった場合に、その公平性ということから見ると、低く設定された予定運用利 回りよりも、運用実績が上がり、たまたま剰余金が出たという場合は、逆に付加退職金 として払ったほうがいいだろうとは思うのですが。その意味では前回申し上げた、すべ て撤廃すべきだということは修正するのですが、定義づけとしては、その剰余金が出た 場合に、どんな予定運用利回りの時代であってもそれを付加退職金として配分するとい う考え方は公平性からいっておかしいのではないかと。その意味で改めてこれは定義づ けを考える必要があるということを提起しておきたいと思うのです。 ○部会長  他には何か ○委員  予定利回り率を比較的期待を込めて少し高目に設定してきた結果から見ると、経済情 勢とかの事情もあるのでしょうけども、気持としては加入者に少しでも高い金利をとい うふうに運用していただいてきたということだったと思うのですけれども、これがこれ だけ積立不足が出きているという中でどう処理し得るのかということが多分いま直面し ている問題だと思うのです。そういう中で、やはりもうちょっと現実的な金利水準とい うことで考えて、仮に剰余が出たときに、その公平性の議論からそれを還元するという ことが付加退職金の趣旨だったと思うのです。創設当時の趣旨はわかりませんけども。  そういう意味では、私はやはりこういう仕組の存在意義というのはそれなりに根拠が あるのではないかなという気がいたします。それで、いろんな4つの案を出していただ いているのですけど、やはりそれぞれメリット、デメリットというのがあって、どれが いちばんいいというのは個人的にはなかなか言いにくい面があるのだと思うのですけど 、やはり制度というのはあまり複雑にするよりは単純のほうがいいのかなということか らすると、剰余が出たら少なくても多くても半分ずつぐらいの感じで原則的なルールを 作っておいて、また年度ごとに非常にわずかな場合とか、特に大きい場合とか、そうい った場合の扱いはまた、審議会で具体的な確定のルールを決めるということが一番現実 的なのかなという気がします。  それと、これは私の個人的な意見ではございますが、あともう1つ、いずれにせよ、 平成13年度480億円、平成14年度、仮に1年間周知期間をとるとすると、ここは 予定運用利回りが現在と同じで動かないということで490億円ぐらいの積立不足の追 加が出てくるわけなので、いまの試算は、法改正した場合に、平成15年度4月1日施 行という前提で考えておられるわけですけれども、この期間を半年までいかなくても、 例えば四半期、少なくとも1〜3月だけでも前倒しをすれば何百億円かの更なる累積欠 損金の増加が防げるわけで、公平性の見地からも、ある程度周知期間はとりながら累積 も防ぐという考え方が適当かと思います。あくまでも大きな枠組みで大体イメージを持 っていただくということで、詳細に試算していただくという趣旨で申し上げるのではな いのですが、ここで是非議論していただいて、皆さんでお考えをいただく形にしたほう がいいのではないかという気がいたします。  あともうひとつ、これは逆に言うとかき混ぜるような議論になるのかもしれませんが 、いずれにせよ、先ほどご紹介いただいた今後の経済成長率の見通し、ケース1からケ ース3と、あと現状の金利固定ということで試算をいただいているのですが、今年度の 経済見通し修正で△0.9となっていますが、あれは実質成長率で、デフレターはもっ と下がっていますので、名目でいうともっと低くなるわけですね。ですから、ちょっと 本当は、いわゆるデフレターがどう動くのか、今後のデフレ状況がどういう形で動くの かという予測が本当はその間にないといけないのかもしれないという気もするのです。  これはなかなか前提が置きにくいということなのかもわかりませんけれども、ちょっ といま話をお伺いしてそんな印象を持ちました。 ○委員  頭のいい人が考えることだと言わせてもらったのですが、労働者側からすると、運用 利回りをそんなに低く下げられては困るという気持ちがひとつありますよね。そういう ことを言ってはいけないが、付加退職金の意義についても議論しなければいけないこと はいけないけれども、低く設定するほど付加退職金がつくという、一見これ誘導策のよ うな感じがしますので、今日なかなかちょっとうんともすんとも言いにくいところです ね。我々が十分論議をしないといけないと思いますね。まだ論点をまとめていく段階で はないと思いますが、予定運用利回り0.5%というようなことが当たり前というよう な論議になっていきそうな雰囲気については非常に困ったものだという、そういう気持 をしています。 ○委員  今日配られました資料7の作り方には、私はちょっと異義があるのですよね。誘導的 な作り方なのではないか、公平性に欠けるのではないかと思うのですよね。データを出 すときには、前回は0.1%刻みのものを出しなさいということで資料の3で出してい ただいています。資料7については、そこまで小刻みに出さなくてもいいのですが、例 えば案の1では、予定運用利回りが0.5%と1.0%の場合しかデータを示してない わけですよね。こういうときはは、やはり1.5%という議論があるのだから、1.5 %のシュミレーションも出すのですね。1.5%、1.0%、0.5%のシュミレーシ ョンを出して、もっと詳細なものはこちらの資料を見ながらやると、全部公平なシュミ レーションを作って、いかがでしょうかと議論するのがお互いいいのではないかと思う のですよ。私たちだって無理難題を言っているわけではないわけですから、資料の提供 はとても重要で、私なんかはこういう数字をやっている人ではないですから、とかく誘 導されそうで、今日はもう何にも言わないで帰ろうというふうにさっきから思っていた のですけども、ちょっと資料の作り方について少し異義を申し立てさせてもらいます。  あと、それと委員がおっしゃいましたが、労働者にしてみればやはり運用利回りを高 くしておいてささやかな退職金がほしい。これはもう労働者の立場を考えると、労働者 を代表する私たちは、運用利回りが下がることに対して反対するのは当然の話なわけで す。とはいっても、やはり中小企業退職金共済制度が健全で、そして安定的な運用をし なければいけないということも理解しているわけですから、そのためにどういうふうな やり方があるのかということを私たちもきちっと対応したいと思っています。今日こう いうシュミレーションが出ましたから、今日資金運用のについての勉強をさせていただ きましたし、こういう数字も出ましたので検討しますけども、できたら三つの案を同じ ような形で資料を出していただきたいと思います。 ○委員  労働側ですから、お二人と大体同じような意見なのですけども、予定運用利回りとい うことですから実勢に乖離があるのはやはりまずいと思います。そういう面では、いま 実勢が3%を切っていますから、そういう点での理解はできるのですが、経営側にとっ ても労働者側にとっても退職金はやはり老後の生活の資金ですから、ある程度魅力がな ければいけないわけです。ですから、そういう面ではこれから5%、6%というのはあ り得ないかもしれませんけども、3%ぐらいは確保してもらいたい。だけど、例えば実 勢が1%とか0.75%とかになったとしても3%分ぐらいまでの運用はやはりすべて 付加退職金という形も考えられないのか、それ以上超えた分を反対に累積欠損の解消に 充てるという場合のシュミレーションがないわけですけども、そんなことも考えられな いのかなということを意見として申し上げたいと思います。 ○委員  先ほど委員からも指摘があったのですけど。付加退職金をどう考えるかということも 、考えた上で全体の設計をしていく必要があるのではないかなということは非常に感じ ております。と言いますのは、例えば余剰金が出た場合の配分ルールはいつまでの措置 なのか、累損を解消するのはいま非常に重要な問題であって、ある意味でその限定的な 期間だけでのルールを作るのか、あるいは、もし累損が解消した場合にその後どうする か、例えばその後は基金を作っていくような形である一定の安定した財政状態を作るよ うな形で設計していくのがいいのかということをまず考えなくてはいけないのではない でしょうか。もう1つは、今、やはり、累損を解消しようというのがいちばん重要なの ではないかということがありますし、もう1つは、経済情勢が非常に悪い中で、先ほど も勤労者退職金共済機構の方がおっしゃられたように、実は金銭信託に含み損があって 、それを解消するにはやはり数年間は多分その部分は0%になるだろうということを考 えると、予定運用利回りを相当程度低く見積らなくてはいけないのではないかなという ことも勘案して決めなくてはいけないのではないかと思います。ただ、その中で、非常 に難しい問題だと思うのですけれども、今回提示された剰余金の配分案を考えると、累 損を解消する間だけの、ある意味での暫定的な措置なのだというふうに理解していいの でしょうか、あるいは設計全体として考えているのかというところをちょっとお聞きし たいのですが。 ○勤労者生活課長  基本的には累損を解消するまでということでその配分案を考えております。 ○委員  言い忘れたのですけど、予定利回りの件で、その金銭信託等の含み損ということで、 当面は配当が0ということで、ここ数年間は大変厳しいのだと思うのです。ただ、一方 では普通の生命保険会社とか特定退職金共済とか、そういうところの予定利回り率とい うのも1を切るというところまではなっていないことを考えると、やはり1を切るよう な水準というのは、それは加入者の立場から見るとなかなか賛同を得られ難いのではな いかなという気もするのですね。したがって、試算の中では0.5ということを示され ていますけども、それはやはり将来の加入者、勧誘、この制度の安定ということから考 えてみてもやはり悪影響が大き過ぎるのではないかという気がいたします。私はやはり 1%あるいは1%プラスアルファーというところまでが限度と思います。プラスアルフ ァーのところはなかなか加工しにくいという状況ではあると思うのですけれども、累損 の解消のほうに回せる金額というのは当面やはり小さくしか出ないということだと思い ます。ただ、根っこから全然、剰余金がが小さいから出さないというような形でやるの がいいのかどうかということもあるので、そこはもう半分半分というようなルールで、 やはり安全サイドを見た金利設定という方向転換を少ししっかりするということで金利 設定も考えていただければいいのではないかなという気がいたします。ちょっと金利設 定のところだけそういう感じがいたします。 ○委員  将来の予想についての、やはり冷静な判断の下で歩み寄らざるを得ないと思うのです よね。いろいろな希望とか期待とか利害とかもあると思うのですけど、それで判定して いるとまたその安定性を欠くということになるので、将来の経済情勢とか、それから、 金融情勢というのはなかなか不透明で難しいとは思うのですけども、やはり冷静な判断 の下で合意のところを見い出すというか歩み寄るということがこの際必要なのではない かなというふうに思います。以上です。 ○部会長  他に何かつけ加えることはございますか。  それでは、もう予定の時間を過ぎてしまったものですから、今日はこれくらいにさせ ていただきたいというふうに思います。いままでに、大勢の方からご意見が出ていると ころもありますので、そういうようなものも整理して、少し論点を整理して、それを踏 まえて少し議論を集中というか、論点に沿った形で議論をしていきたい、というふうに 思います。  それから、委員が言われた資料はおそらくこの資料5で、配分ルールの案1と案2は 基本退職金の利回りを低目の水準に設定する場合で、それから、3と4は基本退職金の 利回りを高目の水準に設定する場合の案だと、おそらくこういうことで整理をして表を 作られたのだろうというふうに思いますから。別に意図的に1.5%のシュミレーショ ンを出さなかったということではないだろうというふうに私は思うのですが。そういう 話になっても具合が悪いから、次回に両方の資料を作ってお配りしたほうがいいのだろ うと思います。  それでは、次回はいつですか。 ○勤労者生活課長  11月28日の10時から、中央同号庁舎第5号館厚生労働省の会議室で行います。 ○部会長  それでは、今日はこれで終わりにしたいと思います。 6 配布資料  (1) 中小企業退職金共済制度の資産運用について(厚生労働省)  (2) 中小企業退職金共済制度の資産運用について(勤労者退職金共済機構)  (3) 将来推計(予定運用利回り1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%    、1.0%、0.5%)  (4) 付加退職金について  (5) 剰余金の配分について  (6) 剰余金の配分について(イメージ図)  (7) 将来推計(剰余金の配分について考慮したもの) (注)配付資料については多量のため省略しておりますが、厚生労働省(大臣官房総務   課行政相談室又は労働基準局勤労者生活部勤労者生活課)において供覧しておりま   す。    ┌──────────────────────────────┐    │照会先 厚生労働省労働基準局勤労者生活部勤労者生活課    │    │    担当:河野・武村                  │    │    03(5253)1111(内線5376)      │    └──────────────────────────────┘