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第3回社会保障審議会人口部会資料2−1
平成13年11月29日

少子化の見通しに関する専門家調査

速報結果

I. 調査概要

II. 少子高齢化社会について
 1. 少子化の今後の趨勢

III. 今後25年間の経済・社会状況の見通し
 1. 経済状況・社会環境
 2. 性・生殖をめぐる環境
 3. 家族規範
 4. 家族形成の状況

IV. 人口指標の今後の動向
 1. 平均初婚率・生涯未婚率・夫婦の完結出生児数
 2. 2050年の男女平均寿命



厚生科学研究
「少子化に関する家族・労働政策の影響と
少子化の見通しに関する研究」
結婚・出生力の社会経済モデル班
(分担研究者:大淵 寛中央大学教授)


少子化の見通しに関する専門家調査

【調査概要】

(1) 調査の目的

 1970年代半ば以降、日本の出生率は人口の置換水準を下回りつづけ、その結果、人口高齢化が急速に進み、まもなく人口減少が始まるものとみられている。このような人口の変動は、われわれの日常生活や経済・社会のあり方に様々な影響を与えることが指摘されている。しかし、過去に例をみないほどの速度で出生率が低下していることから、極めて今後の見通しが困難であり、また対策の有効性や必要性についても十分な議論の蓄積があるとはいえない状況である。
 本調査は、かかる認識から、少子化問題に詳しい専門家を対象として、少子化の影響をどのように受け止めているのか、少子化の動向についてどのような見通しを持っているのか、望ましい施策や社会の取り組みは何かを探り、人口の将来予測や少子化に関わる施策の方向付けの参考資料とすることを目的としている。

(2) 調査時期・調査方法・調査対象

<調査時期>
平成13年7月16日(月)〜8月24日(金)

<調査方法>
郵送による配布・回収

<調査対象>
人口学、経済学、家族社会学、公衆衛生学を中心とした専門家を対象として少子化研究会のメンバーが対象候補者を抽出し、回答者の偏りや不足等について検討を加えた上で、748名を対象として調査を実施した。

<調査票の回収状況>
アンケート発送数  748票
有効回答数  329票
有効回収率  44.0%

(3) 調査主体

少子化研究会メンバー:厚生労働省の政策科学研究推進事業(平成11年〜平成13年)「少子化に関する家族・労働政策の影響と少子化の見通しに関する研究」社会経済モデル班(代表:中央大学教授 大淵寛)を中心とした下記の5名

大淵  寛(中央大学経済学部教授)
兼清弘之(明治大学政治経済学部教授)
安蔵伸治(明治大学政治経済学部教授)
坂井博通(埼玉県立大学保健医療福祉学部教授)
和田光平(中央大学経済学部助教授)
  調査実施機関:(株)アジール


【回答者の基本属性】

(1) 性別

251 76.3%
73 22.2%
無回答 5 1.5%
合計 329 100.0%

(2) 年齢

年齢人数
25〜29歳10.3
30〜34歳123.6
35〜39歳267.9
40〜44歳4112.5
45〜49歳5115.5
50〜54歳4413.4
55〜59歳4814.6
60〜64歳278.2
65〜69歳267.9
70〜74歳267.9
75〜79歳144.3
80〜84歳41.2
無回答92.7
合計329100.0
平均53.8歳
中央値50歳
最頻値45歳

調査対象の年齢分布の図


II. 少子高齢化社会について

1.少子化の今後の趨勢

7割が少子化の傾向は今後も持続するとみている

 少子化の趨勢をどう考えるかについて、「少子化はいずれ止まり、出生率は回復に向かう」とみるものは18.2%にとどまり、71.1%が「少子化は今後も持続する」との見通しを示した。

図II‐1

図


III 今後25年間の経済状況・社会状況の見通し

1.経済状況・社会環境

景気動向は悲観的、女性の就業は今後も進むとの見通し

 経済関連の将来動向については、実質経済成長率、完全失業率、貯蓄率ともに悪化するとの回答が目立った。一方、育児期間もフルタイムで働く女性や、非正規雇用に従事する女性は増加傾向、男女賃金格差は縮小傾向との回答が多く、女性の社会進出は今後も進むとの見通しが示された。また、労働時間は景気判断と連動して減少傾向と答えるものが多かった。外国人労働者に関しては単純労働者・技能労働者の区別なく増加するとの見通しが大多数を占めた。

図III−1 経済環境の将来見通しの図
注:数字(%)は無回答を除く。それぞれの項目は、左から順に「低下」「やや低下」「変わらない」「やや上昇」「上昇」。

図III−2 労働環境の将来見通しの図
注:数字(%)は無回答を除く。それぞれの項目は、左から順に「低下」「やや低下」「変わらない」「やや上昇」「上昇」。

図III−3 外国人労働者受け入れの将来見通しの図
注:数字(%)は無回答を除く。それぞれの項目は、左から順に「減少」「やや減少」「変わらない」「やや増加」「増加」。

2.性・生殖をめぐる環境

ピルの使用、体外受精による出産は増加の見通し

 ピルの使用は、今後さらに普及するとの見通しが示された。また、体外受精による出産は8割が増加すると答えた(「やや増加」「増加」を合わせ81.2%)。生殖能力については、「やや減少」と答えた人が女性の生殖能力について4割弱、男性の生殖能力について5割弱を占めた。

図III−4 生殖に関する将来見通しの図
注:数字(%)は無回答を除く。それぞれの項目は、左から順に「減少」「やや減少」「変わらない」「やや増加」「増加」。

図III−5 生殖能力の将来見通しの図
注:数字(%)は無回答を除く。それぞれの項目は、左から順に「低下」「やや低下」「変わらない」「やや上昇」「上昇」。

3.家族規範

伝統的な家族規範は全般的に弱まるとの見通し

 「夫は外で働き、妻は家庭を守る」「子どもが小さいうちは母は育児に専念すべき」「老親扶養は子どもの義務」「同棲の否定」「嫡出子志向」の5項目については、すべて「弱まる」との見通しが示された。最も多く「弱まる」と回答された項目は「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきという考え」で、次いで「年をとった親は子どもが面倒をみるべきという考え」だった。

図III−6 家族規範の将来見通しの図
注:数字(%)は無回答を除く。それぞれの項目は、左から順に「弱まる」「やや弱まる」「変わらない」「やや強まる」「強まる」。

4.家族形成の状況

離婚の増加、女性の晩婚化、晩産化、無子化が進むとの見通し

 家族形成の状況については、まず離婚率が上昇すると答えた人の割合が9割を超えた(「やや上昇」59.3%、「上昇」34.7%)。30〜34歳の女性の未婚率、第1子出産年齢が35歳以上の割合も「やや上昇」「上昇」を合わせてそれぞれ78.4%、79.3%で、晩婚化、晩産化が進むとの見通しが示された。また、子どもを持たない夫婦の割合も7割が増加すると見ている。

図III−7 結婚の将来見通しの図
注:数字(%)は無回答を除く。それぞれの項目は、左から順に「低下」「やや低下」「変わらない」「やや上昇」「上昇」。

図III−8 子どもをめぐる将来見通しの図注:数字(%)は無回答を除く。それぞれの項目は、左から順に「低下・減少」「やや低下・減少」「変わらない」「やや上昇・増加」「上昇・増加」。


IV 人口指標の今後の動向

表IV‐1

表図

1. 1985年生まれの女性の平均初婚年齢・生涯未婚率・夫婦の完結出生児数

(1)平均初婚年齢

平均値は28.2歳、晩婚化は進むとの見通し

 1985年生まれの女性(現在15〜16歳)の女性について、具体的な予測数値を書き込む形で平均初婚年齢を回答してもらったところ、平均値は28.2歳であった。国立社会保障・人口問題研究所による平成9年の将来人口推計における1980年コーホートの女性の仮定値は27.4歳で、若いコーホートではさらに晩婚化が進むとの認識が大勢を占めた。

(2)生涯未婚率

平均値は15.8%、生涯未婚率は今後も上昇するとの見通し

 数値書き込み式で回答してもらったところ、平均値は15.8%であった。上述の社人研平成9年推計では1980年コーホートの女性の仮定値は13.8%であったため、50歳時に未婚である女性の割合はさらに上昇すると見られている。

(3)夫婦の完結出生児数

平均値は1.76人、少子化は今後も進むとの見通し

 数値書き込み式で回答してもらったところ、平均値は1.76人であった。上述の社人研平成9年推計では1980年コーホートの女性の仮定値は1.96人であったため、50歳まで結婚を継続した女性の平均子ども数はさらに減少するとの認識が示された。これは、晩婚化が進むという上記(1)の予測と連動したものといえる。

2.2050年の男女の平均寿命

(1)男子の平均寿命

平均値は79.3歳、寿命の延びは止まるとの見通し

 数値書き込み式で回答してもらったところ、平均値は79.3歳であった。社人研平成9年推計では2050年の仮定値が79.4歳であったが、これより0.1歳短い回答となった。ただし、最頻値は80.0歳であった。

(2)女子の平均寿命

平均値は86.1歳、寿命の延びは止まるとの見通し

 数値書き込み式で回答してもらったところ、平均値は86.1歳であった。社人研平成9年推計では2050年の仮定値が86.5歳であったが、これより0.4歳短い回答となった。女子の場合は最頻値が85.0歳で、男子よりも将来の寿命の延びについて暗い見通しが示されたといえる。


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