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情報化にむけての
アクションプラン
最終提言 事務局原案
たたき台
IT化推進のアクションプラン
1.医療における標準化の促進
2.情報化のための基盤整備の促進
1)情報化社会におけるセキュリティの確保
2)システム・ハードの開発・、改良
3)ソフト(コンテンツ)の充実
4)規制緩和
3.モデル事業の展開
1)IT化を有効活用した医療モデルの提示
2)効果の検証
4.コストバリヤーの軽減促進
1)システムの価格
2)導入への補助
3)維持運営
5.理解の促進
1)国民の理解の促進
2)医療提供者側の理解の促進
- 保健医療分野の情報化のために設定された各目標をその性質に応じ以下の5つのアクションに整理した。
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1.医療における標準化の促進
2.情報化のための基盤整備の促進
3.モデル事業の展開
4.コストバリヤーの軽減促進
5.国民・関係者医療提供者の理解の促進
- それぞれの達成目標と役割分担をアクションプランとしてまとめた(別添 1)。
1.医療における標準化の促進
- 電子カルテをはじめとする医療情報システムでは施設内は勿論、施設を越えた情報交換・共有が重要であり、そのためには医療用語やシステムで処理を行うためのコードの標準化とデータの互角性互換性の確保が不可欠である。
- そのため、これらの標準化事業の推進とともに安定した維持管理体制を早急に確立する。
- また、診療報酬の請求・審査支払請求業務の効率化は医療における情報化の目的の一つであり、これらの用語・コードと診療報酬制度との整合性を早急に取ることとする。
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(用語・コードの標準化)
- 医療の情報化推進のために、その最も重要な基盤である医学医療用語・コード等の標準化を平成15年度末までに完成する。
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完成している用語・コード | 現在作成中のもの |
「病名」 | 18,805病名 | 「症状・診察所見」 |
「手術・処置名」 | 10,209処置名 | 「生理機能検査名・所見」 |
「臨床検査」 | 5,355検査 | 「画像検査名・所見」 |
「医薬品」 | 60.000品目 | 「看護用語・行為」 |
「医療材料」 | 70,000アイテム | 「歯科領域」 |
平成13年9月30日現在
(標準化に対する信頼の確立、情報交換規約の標準化)
- 標準化された用語・コードが普及していくためには、これらに対する信頼が確立することが重要であり、適時適切な改訂作業の実施等に積極的に取り組むことが必要である。また、あわせて、情報交換規約についても標準化を行う。
(診療報酬制度との整合性)
- 診療報酬請求事務の効率化は情報化の目的の一つであり、医療用語・コードとレセプト電算処理システムコードの整合性についても用語・コードの維持管理の一環として交換テーブルを作成し早急に対応する。
- 特にレセプト電算処理システムに用いられる「傷病名マスター(コード)」の見直しについては喫緊の課題であり、平成13年度内に完了する。
2.情報化のための基盤整備の促進
1)情報化社会におけるセキュリティの確保
−ネットワークセキュリティ・個人情報保護・認証制度−
(個人認証ならびに資格認証)
- 診療に関連した情報がインターネットなどによって安全に交換できるためには、公開鍵インフラストラクチャ(PKI)などの認証に関する社会的基盤が必要である。現在、政府機関の間にはこのような社会的インフラストラクチャが整備されつつあるが、医療は、公的機関と私的機関が混在する世界であり、医療の世界で用いる「医療公開鍵インフラストラクチャ」が必要である。そのため平成15年度までに、認証に関するこれらの社会基盤をどのように整備していくか、その方向性と計画を明らかにすることとする。
(情報セキュリティ)
- 電子化された診療情報については、紙に書かれた情報とは異なった安全(セキュリティ)対策が必要であり、蓄積された電子情報が蓄積されたコンピュータにに対して外部からの進入をネットワークを通じて進入し、不正に操作することを防ぐ不ためのファイアウォール正進入の予防対策(ファイアウォール)、電送されてきた電子メール等のファイルに潜みコンピュータに進入し、コンピュータ内部で自己増殖し電子情報を消去したりするコンピュータ・ウイルス予防対策、停電やコンピュータの故障の際に電子情報を失わないようにする二重保存などの安全な電子情報の保存安全対策方法などはその例であるその例である。
(個人情報保護)
- また、個人情報である診療情報の扱いについては、個人情報保護の立場からの綿密な配慮が必要である。このため医療分野における個人情報保護ガイドラインの作成を行う。(なお、現在国会で審議中の個人情報の保護に関する法律(いわゆる個人情報保護法)との整合性をもったものとすることが必要。)
2)システム・ハードの開発・改良
(医療情報システム開発における国や公共公的機関の役割)
- 情報技術は常に進歩するために、医療機関としては、システムとして確立していない段階で導入を行うことにはリスクが伴うところである。
そこで国や公的機関において、新しいモデルの実験を支援し、汎用性があるシステムを広く公開し普及させるという先導的役割を担うべきである。
(情報システムの汎用性・互換性)
- 資格認証システムなど全国で統一的に構築すべき情報システムについては、地域単位や医療機関単独での開発は困難であることから、国が先導的役割を担ってハードウェアやシステムの汎用性、互換性のを確保するべきである。
そのため全国一律的であるべきシステムと各地域や医療機関に任されるシステムの整理を早急に検討し結論を得る。
(ユニバーサルデザインへの取組)
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情報化社会が進展すると高齢者、障害者などの情報機器を使い慣れない人に対する不利益を生ぜしめることになる。
これを防ぐためには、家庭でも簡単・安全に活用できるIT関連機器の開発改良・改良開発が必要で、このような機器の開発は医療関係者の主導により行われているが、今後、も国も積極的に支援することとする。
(ICカード等の医療分野での活用)
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平成15年度に予定されている住民基本台帳カードの配布に伴い、ICカードが身近に利用できるようになることが予想される。
ICカードは、さまざまな利用の可能性をもっており、たとえば保険証をICカード化すると、個人情報のカルテ、レセプトへの転記を自動的に行うことが可能となり、また、オンラインで迅速に被保険者資格を確認するシステムへのアクセスカードとして活用でき、資格喪失後受診及びこれに伴うレセプトの返戻の減少による医療機関事務の効率化が可能となる。
- 医療情報システムへのアクセスカードとしてICカードは、さまざまな利用の可能性をもっており、保険証などへの応用、被保険者資格の失効確認をオンラインで行うシステムの構築、医師等の資格を確認するために活用すると、オーダリングシステムでは処方・検査指示を出したりする際に指示を出している人が医師本人か確認でき、電子カルテシステムでは権限のある人のみが患者の診療情報を見られるようになるため個人情報保護にも有用である。
(レセプト電算処理システムのレベルアップ)
- レセプトのオンライン請求等の試験事業の実施 (平成14年度要求)
レセプトの電算処理を推進するため、インターネットを活用したオンライン請求システムの実用化を目指し、オンライン化によるシステムの安全性・信頼性の確保、経済効果等の検証を行う。
3)ソフト(コンテンツ)の充実
(医療情報提供基盤としての根拠に基づく医療EBM)
- 正確な情報を大量に収集できる情報化技術を活用して臨床研究を促進し、得られた最新の科学的根拠を整理、・収集した診療ガイドラインの作成支援を平成16年度までに主要20疾患について行う。これらの主要疾患診療ガイドラインは国民向けの分かりやすいものをあわせて作成する。
- 最新の医学知見や診療ガイドラインをデータベース化し、インターネット等の情報技術を応用して迅速に提供することにより、根拠に基づく医療を医師が臨床の現場で実践できるような情報提供体制を平成15年度中に確立する。
4)規制緩和
これまでも、厚生労働省は、適時、規制の見直し制度の改革を行ってきたが、技術の進歩と共に、今後も迅速に対応することが必要である。
このような観点から、次の2点について直ちに規制緩和を行うとともに、随時必要な規制の見直しを行うこととする。なお、具体的なものとしては次の通りである。
- レセプト電算処理に係る医療機関等の個別指定制度の廃止
(平成13年10月1日施行)
(平成13年度内予定)
3.モデル事業の展開
- ITを有効に活用した医療への取組が行われはじめているが、大部分が医療機関ごとの取組で、情報ネットワークをはじめとするITのメリットが十分に生かされていない。
- また、その効果についても医療の質の向上、患者サービスの向上、経済効果、経営の改善効果など多面的に検証する必要がある。
- さらに全体の医療費への効果、病院経営の改善効果など、より大規模な効果の測定する必要もありモデル事業等を通じて検証する。
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1)IT化を有効活用した医療モデルの提示
- 最近では、厚生労働省管轄のナショナルセンターである国立国際医療センター、国立がんセンター、国立成育医療センター(仮称:平成14年3月1日開設予定)等においても先進的な医療情報システムが開発導入されている。
- 今後も引き続き、国による経済的な面での維持運営も考慮したシステムの開発や、他の医療機関への導入を積極的に進めていく必要がある。
2)効果の検証
- 電子カルテによる医療機関同士のネットワーク化モデル事業
(平成14年度要求)
病診連携や医療機能分化、医療の地域偏在解消のため医療機関に電子カルテをはじめとするITを導入し、ネットワークを構築することにより情報化がもたらす医療の質の向上、効率的医療提供体制、情報公開などへの効果を検証し、これを広く公表することにより、電子カルテの導入が医療機関に有用であることを示す。
(平成13年度実施)
医療材料は多品種少量製品であり、技術革新が日々行われライフサイクルが短い(すぐに陳腐化する)という特徴があり、製品数は数十万品目にものぼる。そのため、従来から物流管理の困難さが指摘されており、過剰在庫を抱え有効期限切れとなる製品の発生や逆に欠品が発生するなど物流管理上の種々の問題を抱えている。
これらの課題を解決するため、バーコードを活用した物流管理システムの有用性、問題点を検証し、バーコード化推進方策検討のための効果測定を開始する。本事業によりバーコード貼付製品が相当程度市場に流通することになり、医療材料のバーコード化が大幅に推進され、電子カルテ、オーダリングシステム等との連携によりさらなる効率化が可能である。
4.コストバリヤーの軽減促進
- 今後医療情報システムが普及し標準化が進む一方で、多くの企業の参入による情報システム選択の幅が広がれば、カスタマイズ(改造)をする必要はなくなりコストは低減すると思われる。
- そのため、国としては医療情報システムの普及を図る方策を行い、ベンダー側は、技術開発やシステムの汎用化、規格化などの企業努力によりその情報機器のコスト低減を図るとともに、医療提供者側も、情報化の目的や効果を十分理解して目的にあったシステムを選択しなければならない。
- また、システムの維持費が導入費に転嫁されている原因の一つは情報システムの維持費をが現在の医療提供体制の上でどのような位置づけとするか、全く十分な議論がなされていないことにあり、この情報化システムの費用をどのように負担するかの問題を早急に検討し結論を出す整理する。
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1)システムの価格
- 医療情報機器は、価格が高く医療機関の利用を抑制している。しかし、一般的な情報機器の価格は急速に安くなっており、医療情報機器の価格についても、医療界、産業界が共同でコストダウンに努力しなければならない。
- 産業界としては、最近ではソフトウェア開発の費用がハードウェアの費用を上回っていることから、情報システムの標準化、マルチベンダー化、オープンソースの利用、Application Service Provider (ASP)への移行などによってソフトウェアの費用の軽減を図り、全体としてのシステム導入費用の低減を図る。
- 医療提供者側としては、各医療機関が標準的なシステムを使わずに、独自のシステムを開発しようとしたり、過度のカスタマイズを行ったりすることがコスト増の一因であることを十分理解し、まず標準的システムの導入を検討するべきである。
(医療分野における共通ソフトウェアの開発)
- 日本では、これまで医療用のソフトウェアを医療機関が個別に開発してきたため、システムの開発コストが高くなっている。コストダウンを図るためには共通のソフトウェアが利用できるシステムを整備すると共に、ソフトウェアの流通機構を改善する。
- 現在(社)日本医師会を中心として医事会計システムを無償で提供しようとする活動がある。国としてはこれらの活動に対して、医療の情報化の普及推進策として、標準的な用語・コードマスターを積極的に提供するとともに、汎用システムや標準的な規格の普及を図るため連携を取る必要がある。
2)導入への補助
(先進的な導入機関に対する支援の検討)
- 医療のIT化は、グランドデザインの冒頭で指摘したように、我が国の医療を、将来のあるべき姿に近づけていくために必要な社会的資本である。
- 現在、病院における電子カルテの普及率は1%程度と医療のIT化の黎明期ともいえる時代であり、医療情報システムの導入は費用が高く、リスクも大きいことからIT化の進展が阻まれている状況にある。
- しかし、他の産業の情報機器と同様、ある程度普及すればその後は急速に進展し、導入費用も低減して行くものと考えられる。
- 従って、この黎明期にIT化へ積極的に取り組んでいる医療機関に対して過大なリスクや費用の負担を専ら負わせることを回避し、現在の局面を打開して医療のIT化を飛躍的に発展させるためには、産・官・学が協力して、現在IT化に取り組んでいる医療機関を支援していく必要があるものと考える。
- 政府としても、現在の普及に弾みをつけるための導入促進策として、導入への補助、融資、優遇税制、診療報酬での対応など、あらゆる政策手段を用いた支援をすべきである。
3)維持運営
- IT化により「医療の質の向上」や「医療の安全対策」が促進されることが期待され、その導入を積極的に図るべきであることは、これまで指摘してきたとおりであるが、その維持運営に多大なコストがかかることを忘れてはならない。
- この維持運営費は毎年度生じるものであり、また医療機関としては将来のIT化の進展を見越して毎年減価償却も行わなければならない。
- 当検討会でも指摘されたように、他の産業界では情報化投資の費用は情報化による効率化や収益の向上により、通常経費の中で賄うことが普通であるが、このように毎年生じるコストについては、医療ではその収入のほとんどが医療保険財政から賄われていることに留意すべきである
(IT技術者のその資格や待遇の確立)
- 医療機関の情報システムが大規模かつ高度化してくると、その安全な維持管理のためには医療機関内にIT技術者を持つことが必須となる。
5.理解の促進
- 情報化を進めるに当たって、まず医療の利用者である国民に情報化のメリットを理解してもらうことが今後の医療の情報化推進には重要となってくる。
- また、医療の提供者も情報化の目的を明確に認識する必要がある。
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1)国民の理解の促進
- 患者やその家族がインターネットの上で多くの医療関連情報を入手したり、また同じ疾患を持つ患者同士が情報交換をしたりすることも頻繁に行われるようになっており、医療関連情報への要求も年々強くなっている。
- 今後の情報システムにおいては、これらの国民の要求について十分こたえられる必要があり、今後の情報システムにおいては、国民からの視点を踏まえたものでなくてはならない。
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(国民の情報への3つの要求)
1.医療施設や医療提供者の情報
どこにどのような病院や医師がいるかという情報
2.自分が受けた診療情報
カルテの開示に対する要求など
3.医学・医療情報
薬に関する情報や自らの病気の診断治療法など
- このように、医療のIT化を進めるに当たっては、医療を受ける側である患者や国民のIT化についての正しい理解を促進することが重要となってくる。このため、IT化の意義・目的、患者の側からのメリットならびに利用に当たっての注意事項等、患者の理解の促進を図ることとする。
2)医療提供者の理解の促進
(情報化に対する意識改革)
- 医療提供者に対して医療の情報化の目的は、単なるカルテの電子化や省力化のみでなく、豊富な診療データの共有や蓄積、分析が可能というIT化の特徴を生かした、より良い医療を行うため環境整備であるとの意識改革を促す。
(臨床研修におけるIT研修)
- 臨床研修指定病院におけるIT化の意義はITを活用した「根拠に基づく医療」の実践など、質の高い効率的な医療の提供体制を担う医療従事者を養成するためであり、また臨床研修の充実にもIT化が寄与するものと考えられるため研修指定病院の情報化を早急に行う。
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