01/10/31 第5回医師臨床研修検討部会議事録 第5回医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会 日 時 平成13年10月31日(水)     14:00〜 場 所 厚生労働省本館専用第21会議室 ○医事課長  定刻になりましたので、ただいまから「医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部 会」を開会させていただきます。部会委員の皆様方におかれましては、お忙しい中をご 出席いただきまして誠にありがとうございます。本日の出欠については、相川委員、井 部委員、花井委員、横田委員がご欠席です。また、オブザーバーとして、文部科学省か ら高等教育局医学教育課の村田課長が出席しております。よろしくお願い申し上げま す。それでは矢崎部会長、よろしくお願いいたします。 ○部会長  では議事に入りたいと思いますが、本日は論点検討の第3回目でして、臨床研修病院 等の施設基準および施設の在り方に関する検討を行っていきたいと思っております。 初めに、事務局に資料を準備していただいておりますので、その説明からお願いしま す。 ○事務局  まず資料の確認をさせていただきます。「次第」「資料一覧」「委員名簿」に続い て、資料1として前回の議事録を付けております。先般、厚生労働省ホームページに掲 載しております。資料2−1、2−2、2−3、資料3でございます。加えて本日の説 明に係る資料として、これらの資料とは別綴じで、「医療制度改革試案」があります が、これは本年9月25日に厚生労働省の試案として、医療制度改革についての案を取り まとめたものでございます。  本日の論点「臨床研修病院の施設基準等について」に関しまして、まず資料2−1に 基づいて、現在の臨床研修病院の施設基準等について、説明いたします。資料2−1の 1頁です。これは第1回の資料でも説明しましたが、臨床研修病院における施設基準に ついて、概要を説明したものです。臨床研修は医師法の規定により、大学病院または臨 床研修病院において、これを行う。その指定については、臨床研修病院の施設基準に基 づいて行っているところです。1頁には医師法の条文と、また、臨床研修病院を構成す る際のあり得るパターンをお示ししております。  病院が単独で指定を受ける場合、病院群として複数の病院で研修を受けられる場合、 さらには、地域の診療所、老人保健施設等と連携をして研修施設群というものを構成し 研修を行う場合、この3つのパターンがあるということでございます。  2頁ですが、臨床研修病院を厚生労働大臣が指定する際の基準を、簡単にまとめた表 です。2頁については、1つの病院が単独で指定を受ける場合の基準です。3頁につい ては、複数の病院がグループすなわち、病院群として指定を受ける際の基準です。2頁 から順に説明いたします。単独指定の場合の基準ですが、大きく「施設、人員等に関す る基準」と「研修プログラムに関する基準」ということで分けております。  まず「施設、人員等に関する基準」については、病床数又は入院患者数、診療科、医 師数、指導医、また剖検の状況、救急医療や中央診療部門、研修施設等ということにつ いて定めております。病床数については、基本的には約300床ということで、300床を超 える病院が臨床研修病院の要件として定められております。300床に代わって、年間の入 院患者実数が3,000名以上ということであっても良い、という基準になっています。  「診療科」については、内科、精神科、小児科、外科等合計11の診療科がそれぞれ独 立して設置されている、ということが要件となっています。  「医師数」、まず病院の中のトータルの常勤の医師については、医療法が定める定員 を満たしていることが条件となっております。この場合、卒後2年以内の研修医は含め ないで定員を満たすこと、ということです。診療科ごとの医師数については、先ほどの それぞれの診療科について適当数の常勤医師ということですが、内科については5名、 外科については4名、産婦人科は3名、その他の診療科については2名以上の医師がそ れぞれ必要であるということです。  「指導医」については、それぞれの診療科ごとに十分な指導力、これはおおむね10年 以上の経験もしくはさまざまな専門学会などの定める認定医、専門医などを取得してい ることを要件としておりますが、これらが配置されていることということです。  「剖検」、いわゆる死亡された患者の解剖についてですが、年間の剖検数が20体以上 であり、剖検率が30%以上であること、という基準を設けております。もしくは、剖検 率については、その他剖検に関する数値が相当数、具体的には、病床数の10%以上とい うことでも良い、という基準です。さらには「救急医療」の研修、「中央診療部門」と して臨床検査室、放射線照射室、手術室、分娩室等が十分であること。さらには、研修 に必要な施設、また病歴管理、研究・研修活動が活発であること、という要件です。  一方、「研修プログラムに関する基準」ですが、ご覧のとおり、研修プログラムその ものの基準と、研修の責任者・委員会をきちんと定めて研修を行うように、という2つ の基準です。「研修プログラム」に関しては、主に前回取り上げえられました卒後研修 目標が達成されることが必要であり、その方式としては、ローテーション方式が望まし い、ということが記載されています。  一方、「責任者・委員会」の項ですが、研修プログラムについては、教育責任者・委 員会を置き、さらにはプログラムを公表すること等の規定があります。  次に、3頁の「病院群による指定」についてですが、構成としては、基本的に満たす べき要件については先ほどの単独指定のものと同じですが、複数の病院がかかわること となることに伴い、病院群というものに特異的な基準をいくつか設けています。主病院 と従病院、それぞれ具体的に通常の診療の中で連携を行っていることが、まず第1の要 件です。  従病院の数が2つ以下とすること、主病院の機能を補う分野が特定されていること、 合同の研修プログラム、また責任関係、教育責任者、委員会等の規定があります。それ 以降の主病院の基準、従病院の基準、主病院、従病院合わせて満たさなければならない 基準については、先ほど単独指定の項で説明したものを主病院、従病院合わせて満た す、ということです。なお、「従病院の基準」の説明の中に、「大学病院は従病院とし ない」と定められているところです。ただいま説明した臨床研修病院の指定基準につい ては、4頁〜7頁にかけて、その全文をお付けしております。  ただいま現行の臨床研修病院の指定基準を説明しましたが、引き続き8頁において、 昭和43年にインターン制度が廃止され、臨床研修制度開始当初からの、この臨床研修病 院の指定に係る経過を説明します。8頁の中段に一覧表がございます。  はじめに、この昭和43年の段階においては、先ほど説明したような指定基準につい て、その案は当時の医師試験研修審議会において作成されておりましたが、実際には、 個別具体的に今後の整理可能性等も含めて審査が行われたところでして、具体的な新指 定基準については、昭和43年の段階では公表・通知等はされておりませんでした。  9頁に審議会の報告の抜粋をしておりますが、昭和43年の臨床研修制度発足の際に は、108の一般病院と、18の精神病院の指定をしております。ちょうど中段の「臨床研 修を行う病院の指定について」の所ですが、「臨床研修を行う病院は、新しい臨床研修 制度の趣旨に鑑み、内容の充実した水準の高い病院でなければならない」、「この要請 に応えるため、各病院につき、個別に詳細、かつ、厳密な審査をした結果、別紙記載の 病院を指定の対象とする」、という記述となっていたということです。  一方、現行の指定基準の基礎となる基準が定められたのは、昭和49年です。10頁です が、昭和49年に医師研修審議会において、「基準を改めて明確に定め、公表をし、通知 をする」ということが取りまとめられています。その内容ですが、先ほど説明した現在 の臨床研修病院の指定基準の原型と、おおむね同じような骨格で定められています。現 在と違っている点を簡単に申し上げると、指定基準の2番、現在11科ですが、当時は10 の診療科でして、精神科が含まれていませんでした。  7番ですが、年間の剖検例が20体以上で剖検率が30%以上、これは現行と同様です が、病床数の10%以上という基準については、当時は定められていなかったところで す。  8頁に戻って、その後、この基準については、おおむね10年ごとに大きな改正がなさ れています。昭和59年の改正において、精神科の追加と、病院群の制定がなされており ます。平成5年には、研修プログラムに関する基準を追加するとともに、研修施設群の 基準を追加しています。それについて、資料の12頁から説明します。  12頁は、昭和59年についてですが、当時の医療関係者審議会臨床研修部会の意見書 の概要において、「一般病院の指定基準の診療科に精神科を加える」ということが言わ れています。なお、この審議会の議論の中では、「指定基準の診療科に麻酔科及び脳神 経外科を加えることの可否については、今後とも検討」という記述がありますが、検討 の際、麻酔科、脳神経外科など、精神科以外の診療科を含めて、加えることについての 議論がなされた結果、最終的には精神科について加える、という結論になったところで す。  一方、「新たに病院群の指定ができるようにする」となっています。理由等として、 (1)〜(3)にあるように、医療のシステム化などが行われている中で、地域の中心 的病院が連携を図り、臨床研修を推進することは大いに歓迎すべきこととの考え方があ げられております。  14頁は、平成5年の指定基準の改正についてですが、平成4年6月に出された医療関 係者審議会臨床研修部会の意見書の関係部分を抜粋しております。3「医療研修制度改 善の基本的方向」の(2)「研修プログラム」の重視へ、(3)「研修施設群構想の導 入」により、改正されたわけです。  続いて、資料2−2ですが、現在の臨床研修病院の現状について、資料により御説明 いたします。まず資料2−2の1頁です。臨床研修病院の数については、一般の病院が 461、精神病院が15、合わせて476の病院が現在指定されています。あわせて、昭和49年 以降の、これまで臨床研修病院が増加してきたグラフを参考として載せております。  病床規模別臨床研修病院の数を見たものが、2頁の表です。精神科単独の指定病院に ついては、除外しております。本年4月現在の数は、単独指定については271、病院群の 指定については主病院で118、従病院が72となっています。単独指定はおおむね500床〜 599床の部分の67病院24.7%が最も多くなっていて、300床から700床台に山があるという ような状況です。  併せて病院群の主病院については、300床規模のものが40.7%で、最も多くなっていま す。従病院については、大きなものでは500床規模のものから、小さなものでは100床に 満たない病院まで、さまざまな範囲の病院が指定されており、200床〜300床規模が、中 心となってです。  3頁は、指導医についての状況です。病床規模別に、見た平均の指導医数は、単独指 定においては、臨床研修病院として置くべき11の診療科のトータルとして、47.5人の指 導医がいます。おおむね病床が多くなればなるほど、指導医の数は多くなる傾向にあり ます。一方、病院群指定では、病院群の主病院についてトータルで35.1人の指導医がい る状況です。この表においては、非常勤の医師は除いて算出しています。  4頁は、3頁と同じく平成9年度の私ども医事課において調べている数字ですが、受 け入れている研修医数についての状況です。単独指定では、平均13.2人を受け入れてい ます。一方、病院群の指定は、主病院の平均では6.5人、従病院の平均では1.1人という 状況です。なお、従病院の400床規模の所で、合計が4.3人となっています。ある1つの 施設が非常に多く受け入れていたものであり、その施設については、平成10年以降主病 院に移られている状況でして、それを除くとおおむね他の病床規模と同じ1を切る状況 である、ということを補足しておきます。  この平均研修医数について、研修方式の別で見ると、単独指定の場合の平均では、 スーパーローテイトが2.3人、ローテイトが5.3人、ストレイトが5.6人と、スーパーロー テイトが相対的に少ない状況です。主病院については、それぞれ2.7人、2.9人、1.5人と いう状況です。単独指定において、病床数の規模と、研修医数を見ると、トータルで は、おおむね病床数の多いほうが一般に研修医の数が多くなるという状況ですが、おお むね500床を切る規模と、それ以上の規模では、研修医の受入れの数に少し違いがあ る、という状況にあるようです。  5頁ですが、剖検についてでございます。これも平成9年の数字ですが、指定を受け た病院において、どれだけの剖検が行われているかというものです。まず単独指定です が、248の病院の集計によって、1年間に平均で45.7体の剖検を行っているということで す。これを対死亡数当たりで見ると、30%以上という基準に対して14.9%という状況で す。対病床数の10%以上という基準については8.6となっています。  病院群については、同様に43.6件、14.9、9.9となっています。  単独指定の900床規模で、年間145.3と非常に突出しておりますが、年間400件を超える 非常に多くの剖検を行って施設などがいくつか含まれるとことから、こういう数字にな っていることを補足いたします。  資料2−3ですが、臨床研修病院の施設基準などに関するこれまでの指摘事項等をま とめています。1頁は臨床研修が必修化される平成16年4月以降に施行される医師法の 規定です。第十六条の二においては、臨床研修を受けなければならないという規定です が、「大学に附属する病院又は厚生労働大臣の指定する病院において」ということで、 定められております。  2頁は、必修化されるにあたって、とりまとめられた医療関係者審議会臨床研修部会 の意見の施設基準に係る部分の抜粋です。  3頁は、医師の卒後臨床研修に関する協議会、いわゆる「四者協」として、当時の大 学関係、臨床研修病院関係、さらには当時の文部省、厚生省とそれらの関係者が会した 協議会における意見の抜粋です。  4頁は、この臨床研修の必修化に向けて、さまざまな団体から厚生労働省宛てに要望 書等をいただいておりますが、これまでいただいた要望書の中で、臨床研修病院の指定 基準等に関連するものを抜粋したものです。6つの団体からであります。5頁は四病院 団体協議会からの要望ですが、臨床研修制度について、「大学病院や大病院だけでの研 修では全人的な真の臨床医は育たない」という問題意識の下に、「2年間の臨床研修に は広く一般臨床の基礎を徹底的に教育すべきで、研修初期の一定期間は臨床研修指定病 院で研修を受けさせなければならないが、残りの期間は、臨床指導ができる医師がいる 地方の医療機関に配属する。地域医療に貢献している中小民間病院も含め、研修病院、 診療所群という概念で研修させるべきである」といったご意見です。  7頁は、全国公私病院連盟からの要望です。具体的には8頁に、「臨床研修病院の指 定基準にある剖検数の基準については、緩和または削除されたい」。その理由として、 「検査能力の進展により、死亡原因が特定できるようになったこと、さらに解剖は死亡 の原因究明をするのが主目的であり、剖検数を指定基準にするのはなじまないものと思 われる」という理由を挙げておられます。  9頁は、全日本民主医療機関連合会が出されているものです。9頁、「大病院の入院 医療中心ではなく、プライマリケアの臨床能力を修得するのに不可欠とされている中小 病院や、診療所などの第一線医療機関での研修をさらに広げること。そして、救急医療 や慢性期医療、外来・在宅医療などを担う医療機関を研修の場として積極的に活用し、 研修施設群の多様な組み合わせを認め、積極的に位置づけ活用すること」、10頁、「大 病院中心のハード面に偏った指定基準は見直し、プライマリケア研修、症例数を重視す る観点から、病床数を引き下げること。診療科目については、コアカリキュラムが実施 できる基準に見直すこと」。「地方都市の医師充足率などの現状から、地方での基準の 緩和措置についての検討をすること」です  11頁ですが、これは、前回のこの検討部会において三上委員が提出された資料です。 施設基準の部分について、16頁の4、「研修医の主体的研修のためのプログラム認定」 の中の(1)「臨床研修施設の指定の現状」で、「プライマリ・ケアを含む全人的な診 療能力を身に付けるための研修には、診療所を含む地域の第一線の医療機関が適してい る。」  (2)「研修施設群の指定」で、「これまでの臨床研修病院の指定を廃止し、今後は ハードに基づく認定ではなく、『研修プログラムの認定』に一本化する」。17頁で、 「研修を行う主たる病院である主病院は、200床以上の活発な臨床活動を行う施設と し、現在の施設の規模に重点を置いた施設基準及び人員配置基準を大幅に緩和すること を提案する。また大学病院も従病院になることができるように規定を改定する」となっ ています。  21頁は、全国自治体病院協議会並びに同協議会の中小病院問題委員会からの要望書で す。(1)「一定期間は救急医療、へき地医療、保健・医療・福祉・介護等の包括医療 を体験させること」、(2)「行政・住民と密着してプライマリ・ケアを実施している 中小自治体病院における臨床研修が極めて実効性が高いことから、臨床研修プログラム の一定期間は、中小自治体病院においても実施できるようにすること。又、指定基準を 『臨床研修病院は、必ず医療圏にある他の1つ以上の中小自治体病院と群を形成して指 定を受けること』」、「『常勤医師数が医療法上の定員を満たしていること』等施設、 人員に関する基準を緩和願いたい」、このような要望です。  さらに、全国国民健康保険診療施設協議会からの要望書ですが、26頁で、特に二およ び三で、「厚生労働大臣が指定する臨床研修指定病院若しくは診療所に関しては病床数 に拘らず、地域包括医療(ケア)を実践している施設をも対象とすること」。「これを 実践している国民健康保険直営診療施設及び併設する施設等を含めて、指定を受けるこ とが出来るように法令等を整備されたい」、このような要望です。以上、臨床研修病院 の施設基準の現況、これまでの指摘事項等について、事務局から一括して説明いたしま した。 ○部会長  ありがとうございました。ただいま現在までの大枠の取り決めとその他の説明をいた だきまして、それについての論点メモ的なのが資料3にありますが、その前に、いま説 明いただいた資料の中で、説明内容で何かご質問あるいはコメントはありますでしょう か。 ○高橋委員  剖検率が30%を満たしている所が全然ないということは、指定基準からいくと満たし ていない所が指定されている、ということになるわけですか。 ○事務局  臨床研修病院を指定するにあたっては、剖検の基準について、年間20体以上、死亡数 の30%以上もしくは病床数10%以上ということで、前年の実績を見た上で指定させてい ただいておりますが、指定後の現状については、先ほどご説明したような状況というこ とです。 ○高橋委員  指定は一遍すると、ずっと有効なのですか。 ○事務局  現在、そのようなことでございます。 ○高橋委員  最初の30%という基準の根拠は、何だったのですか。 ○事務局  当初、昭和43年もしくは49年の指定基準を定めた際の詳細な議論は現在残っておりま せんが、基本的な考え方として、剖検というプロセスによって、死因の究明ということ までを行うことが研修に必要だということで、研修医が適切に剖検を経験できるという 観点から定められたところです。  また、病院の指定についてですが、現状として、近年は指定の取消を行った例はあり ませんが、指定は、取消できる規定となっている状況です。 ○高橋委員  でも、できる規定になっていても、していないのですね。 ○事務局 過去には取り消した経緯もございます。 ○高橋委員  あるんですか。 ○事務局  ございます。 ○高橋委員  でも取消の理由は、剖検率ではないでしょう。 ○事務局  剖検率ではございませんでした。 ○高橋委員  いただいた資料を見ると、昭和59年の指定基準改正のときに、大学病院における研修 のあり方や研修内要のチェックシステムを、「今後検討を加える必要がある」と書いて あるのです。ずいぶん昔なのですが、検討はどうなったのでしょうか。資料2−1の12 頁の真ん中辺のなお書き後です。 ○事務局  今回、指定基準関係について、医療関係者審議会等の意見書の抜粋を付けております が、この昭和59年以降、平成4年の臨床研修部会、平成6年、8年と引き続き検討を重 ねてきたというところでございます。 ○高橋委員  議論しているだけで改革はしてこなかった、ということなのですか。まあ、いいで す。 ○黒川委員  やはり高橋委員に理解していただくように説明しなければいけないのではないかと思 うのですが、これが出来た昭和44年とか45年は、診断の確定とか勉強のためには病理解 剖の必要性が高いということで、病理解剖の率が非常に高かったのです。その後は画像 診断や検査の技術がものすごく発展してきたので、剖検率がどんどん下がってきて、実 際に何が起こったかといいますと、大学病院でも剖検率はそんなに高くないのです。内 科学会指定病院でも年間20体以上で、それが全部クリアできない大学病院さえも出てき て、剖検の数のパーセントのリクアイアメントは、現状とかなり乖離してきているの で、これは直すいいチャンスだと思います。  実際、琉球大学と旭川医科大学が少ないというので、実勢とは乖離してきているので す。特に琉球大学の場合、沖縄はそういうことが嫌だというカルチャーがあるのでとい う話もあったのですが、そんなことです。これは昭和45年とか49年のことでしたら、直 したほうがいいと思います。 ○宮城委員  高橋委員の疑問は鋭い所をついていると思うのです。指定基準の1つひとつはこれか ら検討するのでしょうが、本当に根拠は何だったのか、ということが最も大きな論点に なると思うのです。病床数が300以上とか、年間入院患者数が3,000だとか、こういう根 拠は一体何なのか。剖検体数が20体以上かつ30%、あるいは、病床数の10%以上と、こ れも根拠は一体何なのか。エビデンスベースト・メディスンの時代ですから根拠をしっ かりさせて、認定基準をこれから作っていかなければいけないのだろうと思うのです。  ですから、現行の指定基準と平成16年から施行される必修化に向けての臨床研修指定 医の基準は、大幅に見直していかないといけないと思うし、見直す上において、高橋委 員が指摘されたような、やはり、根拠を大事にした指定基準を作っていくべきではない かと思うのです。 ○山口委員  いま現行についての説明がありましたし、また黒川委員、宮城委員からもああいう発 言がありました。私も全く同じなのですが、いまの現行の基準で、どう考えても現在の 状況に合致していない。まず剖検率の問題は、かなりあれが出来た時代の医学や医療技 術のレベルと、いまとではかなり異なっています。昔は手術しないと分からない、剖検 しないと分からないというケースが多かったのですが、いまは、そういうことは術前に 分かってしまう時代になっています。それを考えると、剖検率30%というのは、いま黒 川委員がおっしゃったように大学病院ですらクリアできない所が出ていますし、やは り、現状にマッチした基準を作るべきだろう。必要に応じて剖検は行うべきでしょう し、最初に数字ありきというのはいかがなものか。これは見直すべき第一の要因ではな いかと思います。  第二にベッド数なのですが、これも300床以上になっていますが、ベッドだけあって、 本当に病床利用率がどれぐらいあるのかということは、現行では考えられていません。 もし8割という病院があれば、240ということになりますし、ベッド数だけで云々という のはいかがなものか。これもある程度のベッドがないと、患者といいますか、研修する 場としては不適ということになりますが、これも最初に数字ありきというのは、見直す べき所は見直すべきではないかと思っています。  さらに今回、いま事務局から説明があったように、従たる病院、主たる病院という病 院群と、研修指定施設群というものが、いまからの少子高齢化に対応する医療の現場で は必要だろうと思います。いままでの大学病院中心の臨床研修はもちろん大事なのです が、そこと連携プレイができる複数の研修指定施設群が必要だろう。我々がやってい る、いわゆる地域包括医療という保健も福祉も介護も取り込んだような、総合的な包括 的な医療というものをやっている病院は中小病院が多いわけですが、そういう面では、 全国の自治体病院協議会、我々の全国国保診療施設協議会の要望書にも書いてありま す。  そういうものを考えますと、いまからの指定基準というのは、現実に見合ったよう な、国民が納得できるような、そんなふうな指定基準を今後作っていくべきなのかと思 っています。 ○徳永委員  大学の立場からちょっと追加させていただきます。まず指定基準ですが、多分私の想 像では、インターン制度が廃止されたころはまだ大学病院以外の指定病院が少なくて、 臨床研修の行われている大部分は、大学病院の附属病院であった。そこの指導体制や医 療の実態が1つの基準になっていって、それからああいうものが出てきたのではないか と、これは私の想像です。そのあとこの30年の間に、厚生省の指定病院が増えていった ということですから、最初は大学病院のスタンダードに準拠して出来ていった、そうい うふうに理解したほうがいいと思います。剖検率については、先ほどのお話のとおりだ と思います。  もう1つは、高橋委員が、大学病院における研修のあり方について何もしていないと おっしゃいましたが、黙っていると何もしていないように思われるから、あえて申しま す。私も大学病院で委員の1人として何年かやりましたが、やはり、プログラムを作り ましょうとか、ストレート研修以外の所で、ローテイトがいい所はローテイトの制度を 取り入れましょうとか、そういうことをいろいろやってきているわけです。ですから、 全く何もしていないわけではありません。少なくとも、ほとんどすべての大学病院で は、プログラムを全部作成して、それを配って診療科あるいは指導員に徹底していると か、この1年間で何をやったかというチェック項目などを作るといったことはやってお りますので、大学病院は何もしていないと理解していただくと、大学の先生方は文句を 言いたくなると思いますので、追加いたします。 ○高梨委員  質問です。資料2−2の3頁に、指導医の数が、単独の場合47.5人とあります。4頁 ですが、研修医の数について、単独の場合に平均で13.2人とある。おおざっぱにこうい う理解でいいのでしょうか。継続的に毎年受け入れているとすれば、6〜7人ぐらい毎 年受け入れていて、1年目の方が6〜7人、2年目の方が6〜7人いると。その方々に 対して47〜48人の方々がこの指導をしておられるということだと思うのです。ちょっと 伺いたいのは、指導医の先生方は、365日ずっと指導しているわけではなくて、自分の担 当の科のときに指導していると考えられるのですが、内科の場合には、大体何時間ぐら い指導していて、外科の場合は何時間ぐらい指導しているという、人数だけの問題では なくて、質というのか、よく分からないのですが、時間で見ると、どんな感じになって いるのか。例えば、眼科なら眼科で、先生は多いが時間数は短いというような実態が分 かるものはあるのでしょうか。 ○事務局  まずご指摘のあった3頁、4頁の表ですが、研修医の数については2つの学年の合計 ですので、ご指摘のとおり、学年平均6、7人を受け入れている状況です。指導医につ いては、47.5人ということですが、内科、外科等についてそれぞれの指導の対応がどの ような時間数になっているかを分析した資料はありません。指導医の数が47.5人という のは、実際の研修においては、それぞれ研修医の研修の仕方、研修を行っている診療科 などのありようが、病院ごとに異なっておりますので、ここの平均指導医というのは、 単純にその数を取り出したというものです。  その点、この11科というのは、病院ごとにみると、研修医が直接研修を行っていない 診療科、というものを含んでおりますので、通常、直接研修医を指導する業務に当たっ ている数の平均が47.5人ではない、ということを補足させていただければと思います。 ○高梨委員  いまの説明を伺って分からなくなってしまったのですが、研修科目の数は11ですか、 すべてないといけません、ということになっているわけですね。指導医の先生方もすべ ての科に指導医の先生がいないといけない、こういうことですね。それから、生徒とい いますか研修医の方も、すべての科目について研修を受けないといけない、ということ になってはいないのですか。 ○事務局  その点についてもう一度説明させていただきます。例えば、4頁のスーパーローテイ トについて説明すると、スーパーローテイトによる研修方式というのは、一般的に内 科、外科、小児科、救急医療、産婦人科などを含めて、5つ、6つの診療科を回ること による、2年間の研修を行うということです。ある病院のあるプログラムを選べば、こ の5つの科のみを実際に経験するが、研修病院としては、直接研修にはかかわっていな い眼科なり耳鼻科なり、そういった診療科も必要であり、その指導医もおられるという ことで、それらを含んだすべてが47.5人いうことです。  そういった意味で、いま申し上げた例で申しますと、通常47.5人すべてが研修医の指 導に当たっているわけではありません。ただ一方で、例えば内科の患者さんでも糖尿病 で、白内障を合併した例など眼科的な観点からの指導も、当然必要ですので、そういっ た観点から眼科にもきちんと指導医がいる必要がございますし、耳鼻科にも必要という 定め方でございます。冒頭の委員のご質問で、実際に1人の指導医の研修にかかる時間 をご指摘いただきましたので、この47.5人については、常に研修医が付いて指導してい るという方もおられれば、そうではなく、コンサルテーションを受けたときだけかかわ るという方も含まれている、ということでのご説明でした。 ○部会長  高梨委員は、もう少し数字として出てくるのではないかというお話ですが、実際に研 修医の指導というのは、医療行為の中で行われていますので、授業などとは違って、何 時間ということでは割り出せません。おそらくベンチマークのスタディであっても、正 確な時間は出てきません。夜中に指導をしたり、早朝に指導をしたりというように、い ろいろな場面で指導をして、一緒にやっていますので、何時間という時間数を出すの は、なかなか難しいと思います。 ○宮城委員  具体的に言いますと、私たちの病院は、臨床研修に力を入れている病院の1つです が、研修医は1年次から4年次までに65名おります。スタッフは71名おります。スタッ フは朝7時半にみんな集まってきて、教育行事が始まります。研修というのはオン・ザ ・ジョブ・トレーニングですから、一緒に働いて指導していくわけです。ですからスタ ッフは自分が外来でない日は、7時半に来て大体夜の8時ぐらいまで、必ず研修医に付 いて何らかの指導をしています。もちろん昼食の時間はありますから、そういう時間を 抜きますと、どれぐらいになるのかは知りませんが、ほとんどずっと付き合って指導し ているというのが実態です。 ○ 星委員  開設者別の臨床研修病院を見ると、400いくつあるということになっていますが、現実 に次の頁以降に出ているのは、240いくつという病院ですよね。この考え方は、研修指定 病院は受けているけれど、研修医を引き受けていないというように理解するのですか。 ○事務局  1頁の476もしくは461という数字は、平成13年4月の分です。6頁を除く3頁以降の 資料については、平成9年に私ども医事課のほうで調べた資料で作らせていただいてお ります。その関係で9年時点の指定は、200いくつだったということです。 ○星委員  この数とこの表を見ると、違いますよね。それが知りたいのです。最初の表には、大 学は1つも入っていないわけですよね。 ○事務局  はい、大学病院はこの表には含まれておりません。 ○星委員  これを見ると、平成9年で300を超えているのですが、ここに出てきているのは、200 いくつですよね。ということは指定病院を取っていても、研修医を引き受けていない病 院があると、理解すべきですよね。 ○事務局  3頁以降の表については、すべての病院を足し合わせますと、310になるのではないか と思われますが、これは平成9年に調査をした時点での、すべての臨床研修病院の数と いうことです。1頁とは調査時点が違うということを、ご説明させていただきたいと思 います。 ○星委員  よく分かりませんが。 ○高橋委員  1頁の数字と2頁の数字が違うということを、星委員は問題にされていると思うので す。 ○事務局  1頁と2頁の違いですが、2頁のいちばん下の271と、118と、72を足していただきま すと、461になっているかと存じます。これが精神の指定病院を除く、一般病院について の1頁の数と同じです。 ○星委員  もちろん研修医の数というのは、1年目と2年目に限っているわけですね。 ○事務局  ここで調査をしているのはそうです。 ○中野委員  私の話は、ご提案と言うほど押し付けがましいものでもなく、感想と言うほど無責任 でもないつもりで、申し上げたいと思います。資料3でおまとめいただいた、「必修化 後の施設基準等についての考え方」というのが、おそらく今日検討すべきポイントを、 いくつかにまとめられたものだろうと拝見しました。頭の中では、こういうタイムス ケールがあります。いまは平成13年度の真ん中すぎて、14年度がきて、15年度までには 完成させなければいけないという中にあって、我々はいま施設基準についての討論を展 開しようとしているのだな、という位置付けがまず1つです。それで間に合うのでしょ うか。  この3種類の資料を見て、私なりに軸、ベクトルで考えてみました。まず「研修プロ グラム」に対する関心というものが、施設基準に活かされてきたなというのが1つで す。また途中からずっと変更してきた流れの中には、思惑として人材確保というものが あったなというのが2つ目です。3つ目は、最近になって保険や介護ができましたか ら、サービス領域の拡充です。この3つぐらいのベクトルがあったなということは、よ く理解しました。ただそういった変遷に対して、昭和47年以来今日まで、何回か見直し がされたとはいえ、明らかに追い着いていないのです。そうすると、ここで我々が一生 懸命討論をして知恵を絞ったところで、剖検率のパーセントを変えるかとか、なくすか とか、指導医をどうするかとか、診療科をどうするかということでしか、結局ハード的 な規制はできないだろうと思います。それをやっても、決めた瞬間から古くなるので す。  剖検率については先ほどから黒川委員が、どこかの地方の文化的な話をなさいました ね。私どもの病院でもそうですが、皆さんお受けになっていただけないというのが、今 日の日本の風潮になってきました。指導医でもそうです。クオリフィケーションをどう するか、コストをどうするかというような話は、簡単には解決しません。診療科はまさ にそうです。臓器別診療と統合診療に分かれようとして、大学病院ですらも講座診療科 を解体しようという動きが、中心になりつつあるのです。そういうものを待ちながらい くのか、あるいは入口でいくのか。  いずれであれ今日13年度ないし14年度の段階で、規定できないもので規定しなけれ ばいけないという難問を抱えます。そういうことになりましたら、一体何が問題だった のでしょうか。やはり結局はパターナリズム的延長で、手ごろなハード的な基準でもっ て、我々が施設基準として運用してきたところに、問題があったと思うのです。そこ で、この対極を考えましたら、施設基準を決めないというのが、重要な施設基準の決め 方なのです。それは一体何か。ハードにしろソフトにしろ研修を受けようとする人に、 我々はどれほどの情報公開ができるのか、そこで新たな市場競争原理で、適当な施設と そうでない施設を振り分けていくだろうということぐらいを考えたほうが、私は少なく とも委員として賢いような気分になるのです。 ○部会長  いま中野委員は、資料3について触れられましたが、事務局から説明された資料2ま での内容について、例えば数字の違いなどをいまお話になって、了解は得られたと思い ますが、まずそこを一応理解されたということでよろしいでしょうか。 ○星委員  いまの資料の説明の流れの中で、もう1つだけ聞いておきます。制度発足以来、とに かく大学病院というだけで、施設基準を全く当てはめずにやってきたわけですが、一方 で特定機能病院という考え方があって、紹介率が何パーセント以上だと何々だというの があって、いま大学病院はそちらのカテゴリーに入ろうとしている、あるいは入ってし まっているのです。そこでは求めている研修病院の姿と大学病院の姿というのは、多分 大きく乖離しているはずです。そのことの議論がなく、いまは重箱の隅と言いますか、 大部分の研修が行われている大学の中身のことが全くわからず、たまたま厚労省の所管 である、臨床研修指定病院のことだけが議論されていますが、大学病院のことを置いて はいけないのです。今までどおり大学病院だけでいいのだ、「大学病院」という名が付 けば、研修してもいいということではないだろうと。このことは長年、ずっと言われ続 けていました。  これは文部科学省と厚労省の力関係かもしれませんが、現実に大学病院に対しては、 施設基準を当てはめることもないし、検証することもなく、引き続きやってくださいと いうことでやってきたわけです。「文部科学省所管の病院も一緒にやるのですね」と、 前の医政局長にお尋ねしましたら、そのときは「そうです」というお答えをいただきま したので、そのことに関してもう1回確認をしておきたいのです。大学病院における研 修のあり様、あるいはいまの施設基準との関係がどうなっているのかというのは、重要 な論点だと思うので、その辺についての説明と、医政局長のお気持が変わっていないか どうか、お尋ねしておきたいのです。 ○部会長  これも資料説明を少し超えたご質問ですね。とりあえず資料2までの内容について は、ご了解を得たということにします。 ○黒川委員  ですから過去と現在のデータは、こうなっているということですね。 ○部会長  現状までですね。 ○黒川委員  そういうことでは納得したということですね。 ○部会長  調査の結果がこうであるということで、現在までの現状の把握です。最初に高橋委員 が2点、大切な問題をご指摘されましたが、一応ご理解いただけたのでしょうか。  では資料3についてですが、事務局から説明する内容はないですね。中野委員からの ご指摘もありましたし、星委員のご指摘もありましたので、なかなか重い問題がありま すが、これに関しては議論はほぼ出尽くしたと言いますか。いろいろなご意見はあって も、ある方向には集約されると考えます。いちばんの問題は、指定病院の本当のあり方 はどういうところにあるかというコンセプトを、どういうように持っていったら良いか ということです。その中には大学病院と。 ○中野委員  部会長がおまとめになる気持はよく分かりますので、それに反対する気はないのです が、私にはこういった施設みたいなものをつくり上げていくことが、日本にとっては必 要だろうというスタンスがあるものですから、最初からガチガチに決めることはよして 欲しいというのが、私の提案なのです。それがもう1つの骨子でございます。 ○宮城委員  随分委員が代わりましたので、確認したいと思います。たしか杉本委員も、徳永委員 も、内村委員も、磯野委員も、前から委員ですよね。前の委員会では大学病院も含め て、再認定という議論があったはずなのです。それがどこでどう変わったのか、いつの 間にか大学は再認定を受ける必要がないというようになってしまいました。私はあまり 休んだつもりもないのですが、徳永委員、ご記憶にありますか。 ○徳永委員  私は平成6年からしか委員をやっておりませんので、それまでのことは知りません。 たしかその後で大学のことが話題になったことはなかったと思います。常に大学以外の 指定病院の基準の審査ばかりしていました。その中で今日上がっている資料3のような ものが、だんだん煮詰まっていったということだと思います。 ○宮城委員  いや、大学も含めて再認定するのだという議論はありましたよ。 ○徳永委員  大学病院と言えども、「研修プログラム」がしっかりしていなかった場合には、今後 外される可能性があるということは、事務局から何回か聞きました。しかし大学として そういうものの実態調査をしたとか、基準に合っているかどうかを照合したとか、そう いう作業はしていなかったと、私は理解しています。 ○磯野委員  この問題については、おっしゃられたとおりです。最初のころは臨床研修検討部会 で、大学病院もという強烈な意見が出まして、いろいろ議論をやり取りしたという経緯 があります。しかし大学病院というものは普通の病院に比べて、指導医の問題やいろい ろな教材の資料といったものが、非常にズバ抜けているという話の中で問題になったの は、分院の問題です。分院の中にはこういう条件を満たしていないものもあるのではな いかということがありました。分院の問題に関しては、実際には病院群という形の中で 扱っていくべきではないかという話も出たと思っております。  私も全体を通じてお話をお聞きしていますが、今度の医道審議会で同じような議論を また繰り返していくのかなという感じがしています。例えば指定基準の問題にしても、 前の平成6年からの検討の枠組みの中においても、さらに施設基準の審査のときにおい ても、4者協議会においても、こういう基準を見直していかなければいけないのではな いかというのが、随分叫ばれてきて、そのままずっと続いているのです。そして、また ここで同じ議論をやって、今度はいつどういう形でまたこれを議論していくのか。別に 委員会を設けて検討していくような話を、私はお伺いしていたのですが、何だか議論ば かりが堂々めぐりをして、先に進んでいない。  いまタイムスケジュールのお話も出ましたが、これは一体どこで何時決着していくの か。議論だけをやって、この委員会が終われば、またそのままになるのかという心配が あるのです。この委員会と並行してでもいいですが、指定基準というものがこれだけ叫 ばれていながら、どうして別の委員会を作って、こういったものをこういう形で検討し ているのだということがないのか、という感じがしています。私がお聞きしていても、 同じことを議論しているのです。これでまた大学病院がどうのこうのとか、施設がどう だとか、同じことを聞かされると嫌になってきます。やはり進捗していかないと、どう するのでしょうか。  今後、この会をどういうように運営していくのか。もっと決まっていない問題がある はずです。その決まっていない問題だけを取り上げて、ここで真剣に決めるとか、ある いは決まらない問題は委員会でも作って、並行してやっていかないと、解決にならない で同じになってしまうのではないかと思います。ただ時間だけが経っていっている。聞 いていても、これは同じ議論です。私が初めからこの説明を聞いていても、説明も同じ なのです。みんな分かっていることの説明なのです。これではただ時間の浪費をしてい るような感じがして、もったいないのです。ですから並行してやるなら並行してやって いただければ、非常にありがたいと思います。 ○黒川委員  磯野委員のご意見も中野委員もそうだと思いますが、やはりこういうことが起こって いるときに、何のためにやっているのかという話が出てこないと、手先の技術ばかりに 走ってしまって、結局あまり変わらないで、ゴチャゴチャゴチャとなってしまうのでは ないかと思います。数を決めているのは、昔の大学に比較的近いようなことで、指定し てきただけの話なのです。例えば婦人科などだと何人要るという話ですが、婦人科など で入院の患者さんもどうしても診るような所は、研修医も当直をしなくてはなりませ ん。しかし当直をするとなると、指導医も当直していなければ、本当は責任問題になる ようなことが出てくるわけです。それが大学ならカバーできるけれど、これだとカバー できないとか、いろいろなことがあると思うのです。  ストレート研修だと、そういうことがありますが、根本的にはなぜこんなことをしな くてはならないかということです。小泉さんが「やる」と言っても、なかなかそうはい かないのと同じで、突然ある所に到達するのは無理ですよ。しかし理念の方法は何かと いう話を考えておいて、いままでの日本のやり方ではどうやっていったら、少しずつ前 進するかという話が、いちばん大事ではないかと思います。  私はやはり財源も避けて通れない問題だと思います。アメリカが何でもいいわけでは なく、社会保険やいろいろなものが違うからですが、アメリカの場合は研修医1人につ いて、国から1年に10万ドル出ています。そこから研修医の給料が大体4万ドルぐらい 出てきて、あとの6万ドルは研修する病院に行くわけです。しかし、これは先生たちの 人件費とか、いろいろな所に使われているのです。この10万ドルを、例えば内科なら3 年、外科なら5年のプログラムなどというようにやると、平均して少なく見積もって も、国が出している医療費の1%にもいかないぐらいの額ですよ。それをやっているの は、それだけ質のいい医者を社会に出せよということを、やはりみんなが期待している からやっているわけです。  それはなぜか。2回前のときに私が言っているので、議事録にも出ていると思います が、いままでは我々の都合で、医局員をどんどんどんどん勧誘していっただけですよ ね。しかしパブリックが払うからには、それだけの見返りはして欲しいということを、 かなりアカウンタブルにしているから払っているのです。例えばあれだけ広いアメリカ では、毎年医師は1万8,000人ぐらい出てきますが、脳外科は7年のプログラムで、1 年に25人しか採らないのです。日本でそんなことがあると思いますか。外科も5年です が、毎年その病院のチェックを外科学会がやって、1人で500の手術ができない病院 は、レジデントが取れないのです。取れるということを保障しているからこそ、それだ けのお金を出しているわけで、それによってレジデントの数が決まってくるわけです。 1人が手術をするのに5年で500例だったら、2人いたら1,000例の手術の実績がなけれ ば駄目だというのを、毎年チェックしている。そのぐらいのことをしているのです。  日本でその辺の議論が出てきてしまうと、今は両方が非常に困るのかもしれません が、「少なくとも10年先にはそうしましょうかという話があるから、こうしてくださ い」と言わないと、非常に難しいのではないでしょうか。財源がなくて数ばかりを決め ていくと、いままでと同じことになってしまって、お互いにパイの分取り合戦になって しまう。それから言うと、国が出している医療費の30兆のうち、研修医には1000億 ぐらいですか。あとは保険や何かだとすれば、100億ぐらい出してもいいのではないか という気がします。その代わり条件は何かと言われたら、そういうことですよ。  専門医をつくると言いますが、この2年の卒後研修としてみんなが考えたのは、「プ ライマリ・ケアと、コモンディジーズと、エマージェンシーのできる医者をつくりまし ょう」と言っているから、みんな「地域医療」や「プライマリ・ケア」と言っているの です。これは実は何かというと、アメリカやイギリスでやっている、卒前のクラークシ ップの話をしているわけです。つまり授業料を取ってやっている分ですから、卒後にな ったら内科は3年、外科は5年だと。その代わり内容はこうなっていて、お金をもらっ ていますということを言っているわけですから、日本の大学にそれが出来るかなという ことを、むしろ心配すべきではないでしょうか。今は出来ないとは思いますが、10年先 はそうなると思ってやっていないと、これをグチュグチュやってまたハッピーでないこ とが起こって、また10年ぐらいすると、ゴチャゴチャゴチャゴチャ起こってしまうだけ ではないでしょうか。それで世の中はちっとも変わらない、という話になりはしないか と思っているのが、私のコメントです。ですから是非国民にアピールするようなプログ ラムを作って、財源をもらいたいと思います。厚生労働省の応援団として、財務省が納 得するような財源の確保をさせていただきたいというのが、いちばん大事ではないかと 思います。 ○磯野委員  いま黒川委員は、非常に大事なことを言われました。こういった問題の中では、財源 の問題はどうしても避けて通れないのです。これをいつまで先延ばしにしていくのかと いう問題から始まっていかないと、同じことの堂々めぐりになりかねないのではないで しょうか。いつまで避けて通るのかなという感じがしています。やはり大きな問題は、 財源がどうなっているのかというところから、始まっていかなければいけません。前委 員会で議論をやっていたときは、これは法制化されてからやるべきものであるから、法 制化される前は、一応財源はストップしておきましょうということで、議論の対象にな らなかったのです。それで法制化された時点において、また同じような議論を繰り返し ているのです。最初から財源の問題の話を持っていけば、指定の問題も随分変わった議 論になってくるのではないかと思います。それをずっと避けていらっしゃるから、また 同じ議論ばかりやっている。堂々めぐりで、いつその問題をやっていくのかが見えてこ ないのです。これはどうなるのですか。 ○黒川委員  私たちは厚生労働省の応援団なのですから、是非より充実したお医者さんを育てたい し、より良い環境で研修をさせてあげたいのです。そのためには財源が必要なのです が、いまの状況で厚生労働省がいくら財務省に交渉しても難しいから、ここで出してく る「研修プログラム」をより国民にアピールして、政治家も同意してというようなプロ グラムを出さない限り、それは無理だと思っているのです。厚生労働省が言ったとき に、財務省も政治家もそうだなと思うようなプログラムを、是非作りたいというのが、 ここの役割ではないかと思っております。すぐにはいかなくても5年、10年先には作る ということです。 ○部会長  財源その他は大変難しい問題ですので、将来これからの進展について、ここで医政局 長からコメントをいただきたいと思います。 ○局長  もう5回目ですね。伊藤前局長からも十分引継ぎを受けておりますので、伊藤前局長 も私も、言うことは同じです。今日は始まる前から事務局とも相談して、私も一言ご意 見を申し上げようと思っていたのですが、ちょうどタイミングよく、磯野委員や黒川委 員から言っていただきましたので、言いやすいのですが。今日の資料で、「医療制度改 革試案」というものをお出ししていると思いますので、これを先に説明させていただき たいと思います。これは先生方は初めてですよね。9月25日にこれが発表になりまし て、今のところ厚生労働省は、満身創痍です。この案については、本当は事務局が説明 すればいいのでしょうけれど、私がそういう場面にいちばん立ち会っておりますので、 私から説明したほうがいいのではないかということで、説明させていただきます。  鑑にも書いてありますように、今のところ来年度の予算編成ができないというわけで はありませんが、袋詰めになっているわけです。つまり厚生労働省全体の予算の中に シーリングがかかっており、2,800億円削らなければなりません。それには医療費がいち ばん大きいので、今後はこういう抜本改革をして来年の予算要求をして、政府案を決定 していただき、来年1月から始まる通常国会の中で、必要なものは法律改正もして、来 年4月の14年度以降、厚生労働省の事業を動かそうということです。  そこで9月25日に、厚生労働省試案というものを発表いたしました。いままでですと 大体こういうものは、関係団体の了解を取ってから発表しますので、あまり批判をされ たりということはないのですが、まさに小泉構造改革流と言いますか、これは私ども厚 生労働省の考え方を出しました。ですから関係団体と調整をして出しているものではあ りませんから、いまは満身創痍ということです。ただ私どもとしては、こういう考えで いかないと、この後いろいろな制度改革を行うわけにはいかないし、今までのような世 界に冠たる医療制度は維持できないという考えから、これを出しているものです。  主に3割負担ということばかりが、バーッと出ておりますが、それ以外にもたくさん 書いてあります。3割負担については少し飛ばして、ご説明させていただきます。まず 目次で、省く所を申し上げますと、「医療制度の基本方向」というものを、1枚ぐらい で述べております。その次に「保健医療システムの改革、21世紀の保健医療ビジョ ン」というものを出しております。その中の1番では、予防のことを言っております。 ここでは一応、健康増進法という法律を作ろうということになっております。2番目 が、いま私どもの所管である医療提供体制の改革で、21世紀の我が国の医療の目指す べき姿、つまり当面進めるべき施策というものになっております。第3が主にインシュ ランス(保険)の話です。最後に「別添」というのがありますが、これは私がこちらに 着任してから作り上げたものです。  途中は飛ばしていただいて、4頁では「医療を担う適切な人材の育成・確保」となっ ております。いまご議論いただいております「臨床研修の必修化に向け、研修目標や研 修プログラムなど、臨床研修の具体的な在り方について検討するとともに、研修医と研 修病院の広域でのマッチング方式等について検討し、平成15年までに結論を得る」とい うことが、改革試案にも書いてあります。  また飛ばしていただいて、次は別添です。17頁の次に「21世紀の医療提供の姿」と いうのがあります。これは私どもで作った案です。まず1頁の「我が国の医療体制の現 状と課題」の第1パラグラフで言っているのは、昨年「ワールドヘルスレポート2000」 というのが出て、日本は平均寿命・健康寿命、保険システムの到達度が世界一でした。 今年も「ワールドヘルスレポート2001」というのが出ました。去年は非難囂々だったの で、1番から191番までの順位は付けなかったのですが、アフガニスタンから始まって 191の国は書いて、今回は平均寿命と健康寿命だけについて数字を出しました。やはり また日本は平均寿命・健康寿命共に世界一でした。ちなみにアフガニスタンがAですか ら、いちばん上ですが、平均寿命・健康寿命共に44歳ぐらいでしょうか。そういうこと で2000年、2001年共に世界一でした。  このように今まではかなりいろいろなものが機能して、ここまできましたが、第1パ ラグラフの2行目に書いてありますように、これから21世紀は、なかなかそうはいか ないのではないかと。少子・高齢化ということは、社会保障の中の負担をするほうの人 数が、うんと減ってきているわけですし、病気を持つ老人の人たちの数も増えるという 問題があります。また医術が急速に進歩しており、医療については非常にお金のかかる ものが出てきました。あるいは国民の意識も大きく変わってきております。今までのよ うにパターナリズムで、お医者さんに任せておきましょうという意識ではありません。 そのような国民意識の変容などもあり、今までどおりにはいきませんよということを、 第1パラグラフでは述べているわけです。  またちょっと飛ばしていただいて、3頁ですが、では今後、我が国の医療はどういう ものを目指すのかということが、ここに書いてあります。私どもとしては3つの視点を 書きました。1番目が患者側の視点です。患者の選択の尊重と情報提供というものが、 極めて大事になってくるのではないかと。2番目は、逆に医療提供側の話だと思いま す。質の高い効率的な医療を提供するということです。つまり医療の質を上げなければ ならないということが、今後はいちばん大事なことではないかということです。3番目 が、患者さんと医療提供側との間に立つ私どもと言いますか、行政や団体がやるべき仕 事というのは、基盤づくりであるということが書いてあります。  また飛ばしていただいて、6頁の「医療の質の向上」の第1番に、医師と歯科医師の 臨床研修のことが書いてあります。「適切な研修制度が確立され、すべての医師・歯科 医師がそれぞれ総合的な診療能力を修得して、患者とより良い信頼関係を築ける十分な 診療能力を有する医師・歯科医師としての診療に従事する」ということで、臨床研修の ことがここにも書いてあります。  次が11頁の「安心でき、信頼される医療提供体制の確立」です。医療を担う適切な人 材の育成・確保ということです。平成16年度から、臨床研修必修化後の臨床研修の具体 的な在り方について、次のような方向でこの研修部会において検討するものです。「研 修期間中は特定の医局に入局せずに研修を行う」「研修医と研修施設のマッチング方式 などを導入する」「研修で達成すべき幅広い目標を、研修修了認定の基準として明示す る」「単一の施設に限らず、複数の施設において幅広い疾病等を経験させる」「経済的 なものも含めて、研修の効果が十分上がるような研修環境の確保に努める」と書いてあ りますので、15年度までに結論を出すということです。  いまいろいろなご意見がありましたが、9月25日に厚生労働省として清水の舞台から 飛び降りたつもりで、かなり具体的に書きました。これは初めてのことです。そこで16 年度から医療法の改正をして、必修化することが先に決まりました。これについて厚生 労働省の責任は、極めて大きいと考えております。いままでは努力規定でしたので、主 に厚生労働省は、どちらかと言えば研修施設の認定に関与して、その後は研修施設にお 任せという姿だったと思いますが、これからはそうはいかないわけです。特に研修医の 経済的な保障の問題とか、宿舎の問題などを真剣に考える義務が、私どもにはあると考 えております。  こういう問題に対処するには、まず財源を確保しなければならないのですが、16年4 月からスタートとなりますと、15年8月末の概算要求が1つのタイミングです。また16 年4月には、2年ごとにある診療報酬の改正がありますので、これも1つのタイミング になろうかと思います。ただ、いまの状況によりますと、新たな財源を確保するという のは、極めて難しいと思います。それが私どもの仕事ではありますが、右肩上がりの経 済情勢ではありませんし、来年度ですら2,800億円のシーリングがかかっているような状 況ですので、新たな財源を獲得するというのは、至難の技だと思います。  ただもう義務化は決まっておりますので、とにかく何とか財源は確保しなければなり ません。それには先ほど黒川委員がおっしゃったような、国民的なコンセンサスがなけ れば駄目だと思います。つまり国民が、これならば財源を出しても仕方がないというよ うな、ある意味で新しい制度を作るようなつもりでないと、駄目ではないかと思いま す。いままでも議論がありましたし、特に磯野委員からもありましたが、いままでの延 長線上のようなものでは、まず難しいのではないかと思います。  私もそれに近い世代ですが、戦後にインターン制度があり、ようやく43年にいまのよ うな制度になりました。しかしそれも努力規定でしたので、今度16年4月からが、戦後 初めての大きな制度改革だと考えております。13年度もあとわずかですが、そういう意 味でいままでの制度の抜本的な見直しをする必要があるのではないかと考えておりま す。まさに小泉政権では構造改革ということですから、今までのもので必要のないもの はやめる、どうしても必要なものは追加する、あるいは今のもので少し変えたほうがい いものは変える、という視点でご議論いただきたいと思っております。  13年度も今回で5回目ですから、もうあまり時間が残っているわけではありません。 何とかこういうところは改めるべきだというご意見をいただきたいと思っております。 その次は私どもで、また次の対策を考えるつもりでおります。先ほど事務局からもご説 明申し上げましたように、いくつかの議論は、もう今までに出尽くしております。プロ グラムをどうするかというのは、ある意味ではもう何回も何回も言っていることですか ら、それよりも、むしろ財源を確保するためには、制度そのものを新しい制度のつもり で抜本的に見直していただきたい。そのためのご意見をいろいろいただきたいと、この ように思っております。 ○部会長  どうもありがとうございました。いまのは大変抜本的なご提案だと思いますが、それ をいかに研修制度に反映していくかというのは、やはりまた大変な議論が必要ではない かと思います。いまの局長のお話で、どなたかご意見はございますか。 ○高橋委員  局長がそのようにお考えだったら、どうして資料3のような資料が出てくるのでしょ うか。資料3は明らかに、いまの制度の延長上の改革についてご議論くださいという紙 ですよね。もっと根本的なところの論点をまとめた紙が出てきて、然るべきではないで しょうか。 ○医事課長  これはあくまでも必修化後の考え方について、現状を起点に考えた場合、こういうと ころが問題になっている、あるいは現状の運用上議論になっているということで、提出 させていただいた資料です。4番目などについては、まさに今後の課題ではあるわけで すが、この範囲でお考えいただきたいという趣旨では全くありませんので、よろしくご 理解をお願いしたいと思います。 ○宮城委員  局長のご説明で、ちょっと不安になってきました。財源が確保できなければ、16年の スタートは延びる可能性があるのですか。 ○局長  それはありません。もう法律が決まっていますから、また法律改正をしなければいけ ません。 ○宮城委員  それでは絶対に財源を確保するのですね。だってスタートできないでしょう。 ○磯野委員  皆さんも私も、同じような疑問を持っているのです。カリキュラムなどは例えば大学 病院のカリキュラムにしても、制度ができてもどんどん変えていかなければならないの です。そうすると、財源に絡んでの制度をどのように変えていくかということを、議論 するのですか。そこの焦点を絞っていかないと、「国民に納得させる」と言われている けれど、16年までにあと数年しかないのに、カリキュラムを作って国民に示して、国民 皆さんが「じゃあ、全部応援します」と言う可能性は、私はほとんどないと思います。 ですから、そんなきれいな絵に描いたようなことは言わないでください。  要するに、財源を削減するために制度改革の話をやるのだというように、話の焦点を 持っていくのなら別です。2年を1年でやるわけにはいかないのです。いちばん良いの は、2年を1年にすれば財源は半分になってしまいますから良いのですが、そうはいき ません。法律で決まったら、2年はやらなければいけません。では2年と決めた段階に おいて、財源が本当に確保できないとするならば、どれだけの程度の財源かというのを 予測しながら、ではどういう形に削っていくかということを論議していかないと、実現 性のないことを私たちはずっと議論していかなければならないと思うのですが、いかが でしょうか。 ○辻本委員  国民の立場として、例えばカリキュラムが出されたことで納得できるかというと、納 得できないのです。先ほど来の議論の中で、高梨委員がご質問なさったところで事務局 のご説明のときに、「47.5人の指導体制で、各病院でバラバラですので、どういう指導 をしているのか分かりません」というご発言がありましたね。それが国民としては、い ちばん納得がいかないところなのです。カリキュラムを絵に描いた餅のように、これを 目指しますと出されても、あるいは「47.5人の指導医がいます」と言われても、そのア ウトカムを私たちは受けるわけですから、その中身としてどういうことがやられている のか、どこが責任を持っているのか。  義務化ということでは先ほど局長がいみじくも、「厚生労働省の責任になりました」 とおっしゃってくださったのですが、逆に責任ということでのお立場をここまで明確に おっしゃっていただける以上は、私たち国民・患者に何を保障していただけるのか。例 えば先ほど研修医の宿舎の問題とか、いくつか具体的なことをお出しいただきました が、そういうものが見えなかったら、国民としては何を考えていいのかも分からないの です。義務化になって私たちにとって何がどのように変わってくるのか、そういったも のを分かりやすくお示しいただくことが、やはりこの議論に国民が参加できるというこ とだと思います。事務局も含めて議論のもっと具体的な内容、何をどう変えて、どこで 患者にアピールし、理解を求めたいのか、その辺りを分かりやすくご提示いただきたい と思います。 ○福井委員  その点については第三者評価が必要だと思います。議論が錯そうしていて、あっちに 行ったりこっちに行ったりして、何も決まっていないように感じます。第三者評価も、 どこかで決めなくてはならないのですが、個別のテーマから全体像の話まで、何か腰が 定まりません。例えば施設基準を決める場合も、2年後にどういう医師をつくりたいの か、みんなが同じイメージを持たない限り、決められないのではないかと思います。何 を根拠に決めるかと言われた場合うと、2年後にどういう能力を身に付けた医師を養成 したいのかということだけが、みんなの共通基盤にならざるを得ないと思います。簡単 でいいですから、研修目標など共通の基盤を確認した上で、1つ1つ決めて行っていた だきたいと思います。 ○黒川委員  福井委員のおっしゃるとおりです。基本として国立だけを相手にしているわけではあ りませんが、国立大学の附属病院群では、マッチング方式を基本とすべしというのが出 てきたのは、非常にいいことです。ただしマッチングというのは、それぞれが全く共通 の基盤を持っていなくては困ります。私はここへ行きたいという所と、こちらはこうい う人を採りたいというものを、コンピューターでマッチングさせていくわけです。「う ちは30人」と言ったら、全国で100人ぐらい、いろいろな人が出してくると思うのです。 その代わり自分の所の出身の人は、3割以上は採らせないというのを条件として付けて おかなければいけません。  それが第三者機関でなくてもいいのは、毎年8,000人出ている人が、どこへ行くか分か らない所でやるわけではないですか。そうすると、その人たちは同級生ですよね。実際 にトレーニングを受ける人たちの口コミで、日本中の同級生があそこは良いとか、あそ こは良くないとか、あそこは看板に偽りありとか、カリキュラムではこんなことを言っ ているけれど、そうでもないなという話が、あっという間に広がっていくわけです。毎 年8,000人、次の年は1万6,000人、また次の年はというようになれば、お互いにだんだ ん評価が定着してくるではないですか。そうすることによって、あの大学で教育を受け た人はすごく良いかどうかという話がどんどん定着するから、教育に対してもプレッシ ャーがかかってくるのです。  例えば宮城委員の所の沖縄も、いろいろな大学の出身者が来ますから、あそこは良い ものをつくっているなどというのは、みんなご存じですよ。しかし他の大学は主に自分 の卒業生を抱えているから、分からないようにしているわけではないですか。ですから 「第三者評価」とは言っても、形はいいかもしれないけれど、分からない人たちが委員 を作っているわけです。むしろ実際に研修のベネフィットを受ける研修医に情報公開を させるために、マッチングをするのが良いのではないかという話です。彼らは自分たち のことですから、そんな噂はすぐに広がってしまいます。実行したときにマッチングは いいけれど、プログラムをそうしましょうというのは、すぐには無理かもしれないか ら、ちょっとズラしてやるという話で持っていきましょう、というのは良いと思うので す。  私がしょっちゅう言っているのは、そのようにやってきた研修医は、2年目には無医 村に行ったらどうか、そうすれば無医村があっという間になくなるし、1つの無医村に 2人から3人の研修医がいますから、そういうことは政治的にも国民にも、すごくア ピールするのではないか。しかしその先にはまだ医局制度もあるので、2年が終わった ら自分の所に戻ってもいいので、しばらくは自由にしておけばいいのではないかという 話です。第三者機関を作ればいいと言っても、パブリックはそんなことを信用しません よ。いまの大学評価機構がいい例だと思います。ですから実際にトレーニングを受けた 人たちを混ぜることによって、彼らに評価させることが、私はいちばん正確だと思うの です。そういうことを国立大学で是非やりたいとおっしゃってきたのは、ものすごい前 進だと思いますから、それを財源の確保にどうアピールできるかは、高橋委員などがガ ンガン言ってくださればいいなと思っております。 ○堀江委員  私は私立医科大学協会理事会に、この検討部会の結果について報告しています。具体 的に平成16年に向かって、各大学でもカリキュラムをどうするかとか、いろいろ検討し なければいけないという認識はあるのですが、実際にその基盤となる本検討部会での決 定事項は何かということが求められるのです。  例えば研修目標として国立大学医学部附属病院長会の部会からの案が提示されて、そ の目標に向かって2年間研修ということであれば、ストレート研修は、問題があるとい う認識を持っていると思うのです。しかし、これは決定した目標ではありません。カリ キュラムを変えようとしている、大学は多いと思いますが、例えば目標が明確にされい ませんと、新しいカリキュラムの組み方に間違いはないのかと不安なところがあるのは 事実です。  例えばカリキュラムについては、目標が設定されてくれれば、コアがあって、選択的 なところもあるようなものを作ることもできます。また「マッチング」といういいます が、それを16年から始めるというのが本当に大丈夫なのかと。それとも黒川委員が言わ れたような評価をどこでやるかというのは、いろいろあると思いますが、こういう目標 で組まれたカリキュラム結果は、ある期間設定をし研修医たちに、こういうカリキュラ ムでやった結果、こういうプロダクトが出てきて、こういう評判もあって、これからマ ッチングに入るということをしていただければ、スムースに移行できるのではないかと 思うのです。そういう意味では、部会が開催された時には結論的な具体的なものが出さ れていくことが、必要ではないかという気がいたします。 ○部会長  しかし、それは先生方が大学で講座単位の積上げで研修制度を作るのではなく、やは り国民がどういう臨床医を求めているかという視点で、「研修プログラム」を作ってい ただければ、それで解決するのではないかと思うのです。 ○堀江委員  そういう方向で進もうという意向は、明らかにあるわけですが、平成16年度からス タートするのに、具体的にどう対応していくことが求められているのか、まだ明確でな いような気がするのです。 ○黒川委員  確かに第三者機関も必要です。それは何をするのか。2年間で出てきた研修医の人た ちが、例えば内科や婦人科で、あそこは評価点がいくつだとか、あそこはどういうよう に良かったとか、あそこは何々という話を全部そこに集めて、それぞれでどんどん公表 していけばいいわけでしょう。そうすればフィードバックになるわけですから、そうい う意味ではすごく大事な所ではないかと思います。  例えば先生の所で2年のスーパーローテーをやったけれど、毎年毎年集まってくれ ば、そこの評価点はこうこうこうだとか、どこがいいという話は、研修医の中では自然 に分かってくるし、出した所でもどこが弱いのかがかなり分かってくるので、お互いに 頑張る目標ができてくるわけです。ですから、そのようにすれば良いのかなとこの間、 先生ともお話していたのです。しかしマッチングを同時に入れるというのは、今はなか なか。ものすごく難しいことを2つ同時にやるというのは、非常に難しいのではないか と考えていたので、少しズラしたほうがいいのではないかと思ったのです。 ○部会長  個人的に考えますと、やはり「研修プログラム」が絵に描いた餅ということではな く、「研修プログラム」をベースに、ある決まった財源でサポートするということにな ると、どういうことが起こるのかということです。例えばある大学には希望者がたくさ んいるから、全部採るというわけにはいかなくなるわけです。そうすると卒業生が100 名いるところ、自分の病院ではたかだか40名しか採れない場合だってあるのです。先ほ どから「絵に描いた餅になる」と言われましたが、もし「研修プログラム」をしっかり やっていけば、その大学では外部からいい人を採りたいために、30名ぐらいにして外か ら10名入れるということは。  私も大学から出ましたが、私どもの国際医療センターは、きっちりしたプログラムで 研修をやっておりますから、希望者が出たら、全部を引き受けるわけにはいかないので す。定員があって、全国から来るわけです。ですから、いろいろな大学から来て、もう すでに大学以外はマッチングしているのです。マッチングというのは、自動的にきっち りプログラムでやると、卒業生が自分の附属病院で研修できるのは、何人というように 決まってくると、どうしてもそういうマッチングにならざるを得ないと思います。それ が16年になると現実問題として、医学大学関係で相当大きな問題になるかもしれませ ん。しかし実際問題として、そういうことになってしまう可能性があるのではないかと 思うのですが、どうでしょうか。 ○堀江委員  私達の大学としては、もちろんそういう方向で審議をしながら、3附属病院の特徴が 違うので、すべてをローテーション1次、2次、3次応急員経験できる、かつコアにな る所をローテーションさせる、カリキュラムを組むような方向で、実際に動いているわ けです。ただ、まだそういう動きが始まっていない大学もあるのです。すでに福井委員 が目標(案)の資料を出されておりますが、これが目標設定なのかという質問も出るも のですから、そういう意味で申し上げたのです。 ○山口委員  先ほどからお話をお伺いしていて、局長は、いままでの延長線上ではなく、新しい発 想でこの問題を考えて欲しいとおっしゃいました。私もまさにそうだろうと思います。 私も今回初めてこのメンバーにさせていただきましたが、いままでの大学病院や大病院 の研修指定病院でのあり方は、いままでにもいろいろな先生方が、お話なさったとおり だと思います。ここも改めるべき点は改めていかなければいけません。私は、従来には なかった、昔のものを見ると、これらはちゃんと謳ってあるのですが、実際には実施さ れていなかった、地域医療の分野、在宅医療の分野、老人医療の分野、あるいは今度新 しく始まった介護の分野というところに、研修でお医者さんがどんどん入っていきます という点を、もっとはっきり打ち出せば、国民的コンセンスサスが得られるのではない かと思います。  例えばいまは、在宅医療が非常に重視されております。これは単なる往診ではありま せん。我々の所でも訪問看護、訪問リハビリなどをどんどんやっておりますが、いまは かなりの高度医療ができます。我々の所でもALSで、もう3年以上も自発呼吸が止ま って、24時間365日レスピレータを使っているケースを、在宅でも診ています。1日に数 回行きますし、数名のスタッフがこれにかかわります。これはかなりのエネルギーと、 時間と、お金がかかっています。セットも1セットではなく、2セットです。いざとい うときのためのセットを用意しています。病院のほうがよほどやりやすいのですが、本 人や家族の要望、その他を考えれば、やはり在宅がいいということで、我々はやってい るのです。  その他にIVHとかCAPD等も、私は同じだと思います。かなりの高度医療が、い ま在宅でも可能になりましたので、これを若い先生方には是非知っていただきたいし、 見ていただきたい。介護の分野も同じです。いま介護保険施設がどんどん作られており ますが、今後の高齢者は先ほどのデータにもありましたように、健康寿命も伸ばそうと しています。 「健康日本21」の意義は、そこにあると思うのです。そういうものを考えると介護予 防、昔「寝たきりゼロ」と言っていた発想は、やはり必要になるだろうと思います。そ ういう分野もお医者さん方は是非研修しておいて欲しいし、こういうことをこの検討会 でも是非検討していただきたいと思います。いままでも検討されていますが、実際には なかなか実施されておりません。それを今度は必修化によってやりますということを打 ち出して欲しいのです。今日の施設基準についても、高度医療までやれる在宅ケア、在 宅医療と、訪問看護程度のものと、いろいろあるだろうと思いますので、今後いろいろ と検討する中で、そういう点も基準を決めていったらどうかと考えております。 ○部会長  間もなく時間がまいりますので、議論はここで一応打ち切らせていただきたいと思い ます。おそらく現状の医学教育、あるいはいままでの臨床研修のシステムの上での議論 だったと思います。やはり大学病院でもこのままではいけない、一生懸命医学教育を変 えよう、卒前臨床研修を充実させようという動きが、非常に強力になっていますので、 この1、2年が、相当大きな変換期ではないかと思います。いまの現状で議論をする と、いろいろな問題が出てきますが、例えば臨床プログラムの問題で、到達目標として どういう医師を育成するのかということを、やはりきっちり認識すれば、大学の医学教 育でもそれが普及してきますので、そういう状況で今後はどうしていったらいいかとい うことを、また次回にでも改めて議論させていただければと思っております。いままで の現状の説明と、論点メモで議論が錯そうしてしまいましたが、今日の議論は一応ここ で止めさせていただき、次回改めて、今日提起された問題に焦点を絞ってご議論いただ ければ、大変ありがたいと思います。 ○宮城委員  最後に。財源が決まらないことには、この会の議論は非常に浮ついたものになると思 うのです。ですから毎回、財源確保の進捗状況を報告してもらいたいのです。 ○局長  財源というのは、我が国では単年度主義ですので、15年の8月に予算要求がきちんと できるかどうかにかかっております。きちんとした財源が確保できるかどうかというの は、ひとえにちゃんとしたプログラムと言いますか、国民の合意が得られるような制度 になっているかどうかが問題なのです。それも併せて、よく検討させていただきたいと 思います。 ○櫻井委員  いまの議論を聞いていると、かなりいろいろなレベルのいろいろな意見が錯そうして いるのです。ですから次回は、この検討会の目的をきちんと提示していただき、その目 的に沿って、もし意見があったらその意見は違うとか、絞って議論をしたほうがいいの ではないかと思います。  もう1つは、委員とはちょっと意見が違うのですが、お金の話がかなり全面に出てい ますね。確かにお金はあったほうがいいし、是非頑張ってもらいたいのですが、お金が そんなに出ないからといって、今のままでいいというわけではないですよね。ですから その点をやはり強調して、どういうように変えたらいいかというものを、是非議論の中 に加えていただきたいと思います。 ○部会長  聖路加は臨床研修もしっかりしていますし、給料もしっかり出しておられるので、次 回はそういうお話をいただいてもいいかと思います。それでは、これで終了させていた だきます。どうもありがとうございました。 ○ 医事課長  本日は熱心なご討論をありがとうございました。次回の日程は、11月27日の午前を予 定させていただいております。会議室等の詳細については、改めて後日ご連絡申し上げ たいと思います。どうもありがとうございました。 照会先  厚生労働省医政局医事課  03−5253−1111  内線 2563,2568