01/10/04 「第4回医療安全対策検討会議」議事録 「第4回医療安全対策検討会議」議事録                     日時  平成13年10月4日(木)      10時〜                     場所  厚生労働省省議室 ○森座長  定刻になりましたので始めたいと存じます。第4回の「医療安全対策検討会議」です 。今日は、幸いなことに2名が公務によるご欠席というだけで、こうして大勢の方にお 見えいただきました。それぞれお忙しい中、やりくりしたことと考えますが、どうもあ りがとうございます。よろしくお願いいたします。  そのような次第で、今日は、19名の方にご出席いただきました。また、議事を進めて いくにあたって、前回同様、いろいろな方のご意見を仰ぎたいということで、3名の方 をお迎えしております。横浜総合病院看護部長の桃田寿津代様、NTT関東病院看護部 長の坂本すが様、国立国際医療センター情報システム部長の秋山昌範様でいらっしゃい ます。どうぞよろしくお願いいたします。  したがって、今日は主としてこのお三方からお教えをいただく予定ですがですが、そ の前後に事務局からの説明とか、小泉先生から日本医師会としての最近のまとめなどに ついても教えていただきたいと存じます。  では、まず資料の確認をお願いします。 ○新木室長  本日の資料の確認をさせていただきます。資料の中身ですが、資料1「医療のIT化 について」。資料2「横浜総合病院における取組」。資料3「NTT関東病院における 取組」。資料4「国立国際医療センターにおける取組」。さらに参考資料1として小泉 委員より提出いただきました「患者の安全を確保するための諸対策について」。参考資 料2として「第4回医療安全対策連絡会議について」を配付しております。なお、この 後、長谷川委員より提出していただきました参考資料を配付する予定です。 ○森座長  それでは議事に入らせていただきます。本日の議題は、「IT技術の応用による医療 安全対策の推進について」です。冒頭に事務局から若干のご説明をいただけますか。 ○新木室長  お手元の資料1に沿い、説明させていただきます。資料1の1頁は、医療のIT化の 目的等についてまとめております。医療のIT化の目的としては、左に掲げております 質の向上、効率化、安全対策、情報開示等を目的とし、右に掲げてあります取組みを行 っているところです。なお、これについては後ほどご覧いただくということで、詳細は 割愛させていただきます。  それでは、院内の情報化について、どんな状況かということを2頁に基づき説明いた します。まず、(1)の現状ですが、現時点では医事会計、検査指示、画像管理など、 単独のシステムの導入はなされていますが、それらをネットワークとして十分つないで いるという状況にはありません。今後、(2)に掲げています3つの課題等を中心に、 取り組まなければいけないと思っております。なお、厚生労働省の補助事業等について は、(3)(4)に掲げております。  3頁は、医療機関側の電子カルテの導入状況の意向調査について、日本病院会が本年 7月にまとめた資料です。医療機関回答数は752ありますが、すでに導入済みの所は8 医療機関で、1%にすぎず、今後計画中というのを入れても30%ほどにすぎないという 状況です。導入にあたっての障害としては、費用の問題、メリットの問題等を掲げてい ます。  4頁は、オーダリング・システム導入状況です。オーダリング・システムとは、薬剤 、検査等の指示をするものですが、これの導入状況は235施設、31%、計画中を入れる と6割強が導入を考えているということで、こちらのほうは普及が進んでいます。  以上、簡単ですが現状について説明しました。 ○森座長  安全対策といっても、何か事が起こって初めて気がつくようなことが多いわけで、安 全を保ちつつ、さらにいろいろな対策をというのはなかなか難しいかもしれませんが、 やらなければいけないことですね。  では早速、先ほど申し上げた3名の方からお話を伺いたいと思います。まず横浜総合 病院の桃田看護部長からお願いします。ご同席の土田婦長にも、場合によってはご説明 の一部をお願いしたいと存じますが、よろしくお願いいたします。 ○桃田参考人  横浜総合病院の看護部長をしております桃田と申します。よろしくお願いいたします 。横浜総合病院は民間の病院で300床です。一応、看護は2対1ということでやってい ます。  バーコードシステム導入の背景としては、当院では1996年より注射オーダリングシス テムを独自に開発し、従来の手書注射箋による読み違い事故防止を図ってまいりました 。、この既存の注射オーダリングシステムとジョイントしたものを、2000年7月からメ ーカーと共同で、実施の際の患者誤認などの単純ミス防止のために、整形外科病棟にお いて患者誤認防止のバーコードシステムとして開発しました。実は、キューピーマヨネ ーズさんから当院に、ドレッシングの製造過程におけるパートタイマー職員の事故防止 のために、10年かけて誰もが安全で的確にということで開発されたバーコードシステム を医療の中で使えないかという相談がありました。私は、他産業の良いものは取り組む べきだと思いまして、早速キューピーさんのその機種を見せてもらいました。  私どもではオーダリングシステムをしており、それまでも点滴等は、全部手書をやめ ておりました。すでにオーダリングシステムで注射のボトルに名前と病室番号が印字さ れていますので、その下に、IDによるバーコードを入れることで、何なく出来るので はないかと考えました。できるだけ早くということで、昨年の7月から実施しようとし ましたが、看護婦から、現場では看護以外のことで手間暇かかるのは大変だとか、使い やすいとか使いにくいとか、いろいろな意見がありました。それで、注射のいちばん少 ない整形外科病棟を選び、現場の婦長を中心にして、病院とキューピーマヨネーズで、 看護婦が使えるものを開発いたしました。  開発にあたりましては、端末機は両手をふさがないもの、できれば首にかけられるも のということで、新幹線の売子が持っている端末機をより小さく読み取りがしやすいも のを、病院とキューピーとで3カ月かけて開発いたしました。その結果を今日ここでご 報告いたします。ここからは土田婦長と代わります。 ○土田参考人  今回のシステム開発の病棟婦長の土田です。よろしくお願いいたします。  「既存の注射オーダリングシステムによる注射の流れ」。まず医師が注射指示を入力 し、ワークシートが発行される。薬局では入力されたデータを基に、払出しリストと患 者ラベルシートが発行される。注射指示に基づき、患者ごとに薬剤が準備される。各病 棟では、看護婦による注射の指示受け、および薬局から準備された薬剤に対し、確認が 行われる。  「看護婦による注射準備作業」。注射を準備する際に、再度、指示や薬剤の確認を看 護婦が複数で声に出して行う。「患者に対する実施」。このような流れで注射業務は実 施されていました。  医師の注射指示のミスや、薬剤師、看護婦の準備ミスが少なくなるように、注射オー ダリングシステムで改善がされてきましたが、この他に改善すべき内容として、患者へ の実施部分がありました。看護婦が単独で作業を行うため、患者や注射の誤認などのミ スを起こしやすく、防止が難しいという、この部分の改善が重要課題でした。  注射オーダリングシステムの課題であった患者誤認を防止するために、バーコード・ ハンディターミナルを使用して、患者照合を行うこととし、整形外科病棟で実施をしま した。整形外科病棟は、ベッド数52床、看護婦が21名。バーコードの読み取りにはハン ディターミナルを使用し、携帯に便利なように掌サイズとし、ストラップを使用しポケ ットに入れ、業務に支障のないようにしました。  患者ID番号からバーコードラベルを2枚発行し、1枚はリストバンドに貼って患者 に装着していただき、もう1枚はベッドネームに貼付し、夜間の患者照合に使用するこ ととしました。患者がバーコード付リストバンドを装着するにあたり、精神的な抵抗が ないように、バーコードと氏名を同じ大きさに印字することで、バーコードが強調され ないようにし、また入院時に誤薬防止の趣旨をよく説明し、同意を得るよう努めること にしました。  看護婦に対しても、職員番号から各々にバーコードを発行し、名札に貼付することに しました。患者、看護婦のバーコードは、病棟でラベルプリンターを使用して発行でき ます。薬剤のバーコードについては、注射オーダリングシステムで発行していた患者ラ ベルにバーコードを印字することを追加しました。  「手順」として、点滴を例に挙げてみますと、看護婦は患者のバーコードをハンディ ターミナルで読み取る。続けて点滴ボトルに貼付されたバーコードを同様に読み取る。 その点滴を患者に対して実施して良いかをハンディターミナルで照合を行う。照合がO Kならば、最後に実施者として看護婦のバーコードを読み取り、注射を実施する。照合 がNGの場合、アラーム音がなる。看護婦は確認をして、正しい薬剤を再照合する。O Kになった時点で看護婦のバーコードを読み取り、注射を実施する。この一連の作業実 績が、ハンディターミナルにデータとして蓄積され、当然NGとなった事実も実績とし て蓄積される。  このシステムで使用する機器は、ハンディターミナル8台と、PCラベルプリンター 2台、およびハンディターミナル接続用端末2台。蓄積されたデータについては、ハン ディターミナルの通信機能を介し、パソコンに収集することが可能で、このデータはパ ソコン上のソフトウェアで点滴結果一覧として活用できる。  実際にシステムを導入してから、点滴を実施する際に、対象外の点滴であった事例や 、患者誤認を確認できた事例が数件ありました。このシステムは、開発しながらの運用 であり、実際の運用はまだ1年程度ですが、現段階におけるシステムの評価を行うため 、患者、看護婦にアンケート調査を実施しました。  アンケート調査の対象者は、整形外科病棟看護婦21名と、アンケート回答可能な入院 患者33名です。看護婦アンケートでは、医療過誤問題に対する精神的な負担は85%以上 が「ある」と回答しており、そのうちヒヤリ・ハットを経験した人は90%以上で、特に ヒヤリ・ハットを処置別に見ると注射57%、授薬36%であった。システム導入後、看護 業務に対する精神的な負担が減ったかということについては、「減った」45%、「どち らとも言えない」45%、「変わらない」10%。システムの患者照合は業務に負担がある かについては、「ある」24%、「ない」29%、「どちらとも言えない」47%。システム を導入して良かったかということについては、「良かった」57%、「良くない」0、「 どちらとも言えない」43%という結果でした。  患者アンケートでは、入院前や入院時に医療事故に対する不安があったかということ については、「あった」70%、「なかった」24%、「どちらとも言えない」6%。バー コード付のリストバンドを装着することへの精神的な抵抗があるかということについて は、「ない」82%、「ある」15%、「どちらとも言えない」3%。システムを利用した 看護を受け、どのように感じたかということについては、「安心感が得られる」82%、 「どちらとも言えない」15%、「必要ない」3%。また、このようなシステムを導入し ている病院に対しては、「安心できる」97%という結果が得られました。  医師が出した注射指示は、コンピューターに入力すると薬剤師の確認があり、指示を 受ける看護婦や実施の看護婦の確認もあります。注射が患者に実施されるまでの間には 、確認の機会が何重にもあるのですが、患者に実施する看護婦には、それ以降確認の機 会がありません。このシステムで、単独で行う注射の実施の際に、看護婦自らの確認と 、機械による確認のダブルチェックが可能となり、看護婦は注射を安心して行うことが 出来るようになりました。また夜間の暗い病室での確認にも効果があります。夜間のバ ーコード照合では、バーコードをベッドネームにも貼付しているので、患者の睡眠を妨 げるという問題は生じていません。このシステムは、患者照合ミスの防止に有効であり 、それは看護婦の精神的負担の軽減につながっていると考えます。  ハンディターミナルは、業務の支障にならないということを重視したことにより、看 護婦は動きを制限されることなく、日常の看護業務に当たることができました。チェッ ク作業に対する負担について、「ある」と「どちらとも言えない」を併せて71%であっ たことは、操作に慣れることの負担と、操作自体の負担が考えられます。しかし、シス テム導入を「良くない」とする回答が0であったことから、今後、操作性を改善するこ とでチェック作業の負担の軽減を図ることは可能と思われます。  当初、システム導入にあたり、患者がバーコードの付いたリストバンドを装着するこ とにかなり抵抗があるのではないかという懸念がありましたが、アンケート結果では、 特に問題となることもありませんでした。システムの導入と、事故防止に取り組んでい る看護婦の姿勢や努力が、患者の安心につながっています。また、病院に対して評価す る意見も聞かれました。  今回のシステム開発過程では、注射業務プロセス全般のチェック・システムの開発も 試みました。しかし、医薬品それぞれにバーコードが入っておらず、人間の行う確認作 業になるため、システムの確実性には問題がありました。また、医療の現場では、患者 の急変など、常にさまざまな動きがあり、画一的なチェック・システムでの運用は困難 と思われます。またさらにシステムが複雑化することで、看護婦の負担も大きくなりま す。それと共に、安全なシステムと過信することにより、新たなミスを誘発する危険性 をはらんでいます。これらのことから、あえて患者照合のみにとどめ、簡単な運用を重 視しました。  現行システムの操作性の改善を進めるとともに、現在バイタルサインなどの簡易入力 機能を加えた温度表システムも開発運用しているのですが、その他の看護業務、例えば 、採血管や輸血の確認、また内服薬の確認などに活用していくことにより、医療の最終 提供者である看護婦の、サポート役となるものと考えます。また、他部門とのデータの 共有を図り、現場指向でシステムの構築をし、看護だけでないシステムへの発展も考え ていきたいと思います。また、今後アンプルなどにバーコードが入るようになれば、医 薬品の確認も含めた、さらに安全なシステムの開発も考えていきたいと思っています。  注射業務は、ほとんどの病院で看護婦が実施しているのが実状です。事故を未然に防 ぐために、こうしたシステムを活用することは有効と考えます。また、このような取組 みを行うことが、患者の安心につながり、病院の信頼を深めることが分かりました。  今回、開発したシステムをご紹介する機会を頂き、どうもありがとうございました。 ○桃田参考人  ただいまご紹介いたしましたこのシステムに使用する薬品、また貼付したものを現在 お持ちしておりますので、どうぞご参考までにご覧ください。  システムにかかる費用としては、ハンディターミナルが約20万です。1つの病棟にこ のシステムを導入しますと、大体500万近くの費用がかかります。、看護部が主体とな って取り組んで1年経過しました。いま2つの病棟に入れております。患者の安全およ び看護婦の安心という、精神的負担の軽減のためにはコストがかかるわけです。これを 導入して相当数の病院が当病院に見学に来られましたが、コストというところでもう1 つ踏ん切りがつかないということです。診療報酬の中で、薬剤であるとか、諸々にいま 何点か付いていますが、何かのきっかけで点数化されますと、安全な提供というところ に結びつくのではないか。お金というところでは、なかなか発展しないものでございま す。  また、他の産業の進んだ技術や知識を取り入れて、医療界に入れるという、医療界の 柔軟さがやはり必要ではないかと、これを入れてみて思いました。人はミスを犯すもの という前提に、ミスが事故につながらないために、看護婦への権限というところを考え ていただければと思います。このことを事務に相談したり、医局に相談したら、おそら くこの結果は出なかっただろうと思います。その辺のところで、看護部がいろいろなこ とに取り組めるようなシステムを作り上げていただけましたらということを提言とさせ ていただきたいと思います。どうもありがとうございました。 ○森座長  バーコードは、日常生活で始終遭遇するものではありますが、患者さん関連では、少 なくとも私は、拝見したことがありませんでした。経験をお話いただきありがとうござ いました。おそらくご質問その他たくさんあろうかと思いますが、まずお三方のご説明 を伺って、その後総合的にご質問なりご議論いただくということにさせていただきたい と思います。  では、次にNTT関東病院の坂本看護部長、よろしくお願いいたします。 ○坂本参考人  坂本です。よろしくお願いいたします。当院は、去年の12月4日に新病院をオープン しまして、その時に電子カルテをほぼペーパーレスで導入いたしました。そのことと、 安全にどのような関連性を持って作り上げたかということをお話させていただきたいと 思います。 ☆スライド1  概念的には、安全は最終的には人が守るものであるというふうな捉え方をしておりま す。しかし、すべてのものを人がチェックしたり、予防したりすることは不可能なこと です。どれだけシステムとしてサポートできるかということを考えております。 ☆スライド2  NTT関東病院は、508床です。個室病棟が48.5%、ICU8床、CCU8床、手術 室が10室、クリーンルームが2室です。外来患者数が2,90人、稼働率が93,2、平成11年 は98.2でした。今、徐々に増えつつあります。在院日数が16.2です。 ☆スライド3  電子カルテの導入目的は、患者サービスの向上、効率化、医療の質向上への貢献とい うことで、「チェック機能」「情報の共有」という部分を安全というふうに考えており ます。 ☆スライド4  特徴は、ほぼ完全なペーパーレス・フィルムレスということで、保存に関しては完璧 にペーパーレスになっております。ドクターの指示に関しては、フルオーダリングにな っております。記録の記載は、POSに基づくSOAPを採用し、医療職が全員でSO APを記録しております。入力は、ワードをただ手打ちで打つだけではなく、できるだ けテンプレートを作成し、それを活用しています。看護支援には力を入れ、大々的な看 護計画機能の導入を行いました。4カ月遅れてクリティカルパスを電子化の中に導入し ております。 ☆スライド5  これが概要です。総合医療情報システムとして、30余りのベンダーが入り、こういう 形で関連させて作っております。 ☆スライド6  電子カルテの時代における認証の必要性ということで、厚生労働省から打ち出されて いる真正性の確保、見読性、保存性、あとはプライバシーの保護です。 ☆スライド7  現状のオーダリングシステムですが、当院は昭和47年から医療情報を段階的に導入し ておりましたがIDコード等は、誰が介入したかという認証の問題点をずっと抱えており ました。どれをとってもその人であるということの認証が難しい。性善説をとるしかな いというところで行っていました。 ☆スライド8  今回は、IDのパスワード認証、カード、指紋認証の3点を評価し、最終的には指紋 認証を導入しております。真正性、プライバシー保護、運用の観点から、当院で検証し た結果、指紋認証が真正性、プライバシー保護、セキュリティに関しては最善であるだ ろうという判断をいたしました。これに関しては追加費用がかかっております。 ☆スライド10  システム起動画面がこのように出ておりますが、これが指紋を認証する装置です。一 般的には両手の人差し指です。登録してある指紋を読み取り、ログインされて書き上げ ます。違う人が来て入力してしまうという危険性がありますので、指紋認証をして、そ のスタッフがその場を離れて30分間放置しますと画面がロックされます。再度指紋認証 をして立ち上げるということになります。 ☆スライド11  こういう形です。手が荒れている人はなかなか認証しづらい点があります。 ☆スライド12  これが第1画面に起こってきます。いろいろなことがあった時には、掲示板というの が周知にも使用可能です。 ☆スライド13  厚生労働省通達の3条件に適合しているかということですが、真正性に関しましては 、指紋により作成責任者の認証と識別が可能です。また、画面を立ち上げた時に、こち らのほうに記載者および記録日時を明確に自動記載することによって、記載情報の真正 性を担保確保しております。これで、修正等、書き直しは全部明らかになります。1時 間後に書き直しをしたとしても、誰がそういうふうに書いたかということが明確になる わけです。 ☆スライド14  見読性の確保では、論理的な整理によって必要情報を参照可能にしております。また 、職種による機能ごとのアクセス権限を設定しており、例えば事務系がこういう画面を 見ようと思っても見られないようにしております。ナースとドクターにおいても、権限 の制限をしております。書面の一括印刷可能で、出力しますと全体的なプロセスを持っ た画面として出力されるようになっています。履歴等から複数の診療録を選択すること により、瞬時に該当カルテを開くことが可能です。論理的な診療録記載は、ドクター、 ナース、コメディカルがSOAPで記載していくことにより、突発的に起こった状況は 、医療職が全員、画面を開けば共有できるということになっております。保存性は、デ ジタルデータ保存により、永続的な保存が可能です。また、サーバーの二重化によって 、参照用サーバーは別に構築しておりますので、過去の記録は安全に保存でき、万一の 場合も復元が可能になっています。 ☆スライド15  これがギガビットの保存方法といいますか、接続形態です。当院の電子カルテはクロ ーズされており、外との連携は行っておりません。まだまだセキュリティの問題、外か らの不明者からの介入が起こる可能性がありますので、一応はクローズにしております 。院内で使っているメール等は、別のネットで持っておりますので、それとは交流して おりません。 ☆スライド16  例えば、電子カルテとオーダリングシステム等で誤薬がどういうふうに関連していく かということですが、新病院ということもあり、機械設備等で、体制的なものでリスク をできるだけ防ぐ方法はないかと検討いたしました。その結果、薬剤においてはピッキ ングマシンを入れ、薬品を補充することにより、ドクターのオーダーを識別し、カート の中に、その患者の薬等が出てくるようにしております。  しかし、機械のほうも完璧に信頼するというわけにはいきませんから、補充する時、 必ず2人の薬剤師で補充をチェックしています。しかし、今まで数人の薬剤師が三重の チェックをしていたものが、2重の出口と入口の所でチェックすることで、そこは軽減 されております。薬剤だけをチェックすれば良いかということではないわけですが、医 師、薬剤師、看護婦等、かかわる人たち全員がチェックする、たくさんのチェック機能 を設けておかなければならないと思います。また、薬剤指示の適正評価が抜ける危険性 がありますので、これに関してはオーダリングシステムの中にチェック機能を設けてお ります。  ナースは、カートから運ばれたものを取り出す時に、指示と照合していく。また、指 示の変更等がないかどうかの見落としがあると考えられますので、そこは必ずナースが マニュアルどおり見ていく。電子カルテに医師が入力した結果が看護婦のほうに到達す るまでにタイムラグがありますので、そのタイムラグをどのように補うかということが 、オーダリングシステムとナースの実施の関連だと思います。リストバンド等でナース は患者を認識するので、注射の実施時にチェックをするということです。実施が入力ミ スされますと、していなかったというふうに違うナースが判断して実施をするという、 ここもタイムラグがあります。こういうことが問題になっております。  実施入力をしなければコスト計算にいきませんので、病院としてはこの点でもリスク が発生する可能性があります。看護婦は、カートから取り出して指示と照合して実施を しますが、時間的なズレにより、ワーク時と打ち出し後の変更が伝達されていないとい うリスクが伴いますので、これに対してはどのようにするかという運用が重要になって くると思います。 ☆スライド17  30あまりのチェック機能を設けております。ドクターが出したものが「薬剤が重複し ています」ということが画面に展開されます。これがドクターがストップルックをしな ければいけないというものです。 ☆スライド18  投与量がオーバーしますと、「○○の薬剤は、最大投与量を超えています、ストップ ルック」と「良いですか」という意味を含めたサイン画面が出ます。 ☆スライド19  設定ボタンが押せない時、「上限枠を超えています」ということで、「これで良い」 とドクターが設定ボタンを押そうとしても次に進めないといった設定です。 ☆スライド20  これも「経過の実施日を選択してください」ということで、日数的な問題があって、 設定ボタンが押せない状況です。 ☆スライド21  できるだけドクターのサポートをしようということで、Eという薬を設定すると、E という関連の薬が上がってくるようになっています。これに対して当院では、3桁をこ ちらのほうに作ろうとしています。2桁ですと、並んでいる似た薬品をドクターが選ん でしまう可能性がありますので、3桁にして、できるだけ少なくして、効率的なものも 含めて改善しようとしております。 ☆スライド22  アレルギー反応がある患者の入力をした時は、アレルギーがあるということも検証す るようになっており、抗がん剤については、体重を入力しておくと、そこからオーバー しているとか、日数が超えているといったことをチェックするようになっています。  病棟のシステムですが、当院では、入院患者ケアシステムに入院患者を登録すること により、ナースが持っているものがパーソナルホスピタルコミュニケーションの携帯用 がナースコールになるように設定されます。これが入力されることにより、病室の表示 が転送され、こちらの画面にも同じ画面が転送されます。電子カルテを導入すると、当 然のことですが効率性は高まります。できるだけネットで結んで、転記を減らすなど、 効率が悪くないようにしつつ、安全性を確保しようと考えています。電子診療録から栄 養部に、栄養部ではいろいろなチェック機能を持っております。 ☆スライド23  これはNTTが作りました。PHSです。電波が弱いということで、機器には影響がな いということで使っております。これがナースコールにもなります。1患者と1ナース に結びつくもので、これによって患者さんからコールがありますので、いちいちナース センターに帰る必要がなくなりました。夜になっても、患者のグループ分けをして、こ ちらのほうにセッティングしています。また、1人のナースが何か違うことをしていて 早急に出られない時には、チームの中の次のナースに転送するようになっています。ま た、先ほどお話をしました投与の変更、ドクターが薬を変える時は、タイムラグをとら ないで直接ナースのほうに連絡することも可能です。 ☆スライド24  薬剤は、ピッキングマシンというもので、在庫を全部この中に入れておきますと、ド クターのオーダーから転送された薬剤が選ばれて、1人の患者の薬品がセッティングさ れて箱の中に出てきます。ここまでは、今までは人手でやっていました。人手が入れば 入るほど、間違うことも多いわけで、そういうところをカバーしました。しかし、これ だけですぐに患者の所に運ばれるかというと、そうではなくて出口の所で薬剤師がチェ ックをしています。また、在庫を入れる時に薬剤師がチェックをしております。内服薬 等に関しても、このようにシステムのほうでカバーしていますが、患者に渡す時に薬剤 師がチェックをして渡すということになっています。 ☆スライド25  病室表示も、思い違いとか思い込みというのがいろいろありますので、病室の状況と いいますか、できるだけ病棟の配置に応じたことで表示をしております。 ☆スライド26  情報の共有化が医療リスクを左右すると思います。当院は電子化に関しては、情報の 共有化ということをコンセプトに挙げております。これは一般的に使われている温度表 ですが、この下をクリックしますと、ドクターの指示、点滴、処置、看護の計画までが スクロールされて、今日1日の患者の状況がどのようになっているかということが明確 に、第1画面に表示されるようになっています。これによってナースたちは、この患者 には今どんなことが起こっているか、ドクターは今、どういう検査をしようとしている のかを一画面で見ることが出来ます。 ☆スライド27  ほぼペーパーレスとお話をしましたのは、入院診療計画書や診断書等がペーパーで残 るということ、もう1つはドクターのオーダーや看護はこういうことをしなければいけ ないということについては、ワークシートとしてナースたちは紙に打ち出して持って働 いています。その時患者から得た情報、バイタルサインや、観察、出血等については、 こういうものをナースはポケットに入れて、できるだけ早く患者の情報を入力すること に努めています。 ☆スライド28  『いろいろな情報を共有化することがリスクを防ぐ』ということが大前提だと思って おりますので、クリティカルパス等もそういう観点から取り入れております。 ☆スライド29  患者のベッドの配置をクリックしますと、クリティカルパスを使っている患者につい ては、すぐにこの第1画面が出てきます。クリティカルパスを使うという判断は、「C P」と書いてあるところに示されます。これはドクターが指示することになっています 。クリティカルパスは標準的なものですし、仮説であると想定していますので、ドクタ ーがこれを使うといいましても、1週間入院している患者の1週間の状況を全部オーダ ーしたというわけではありません。まず想定し、日々これで良いかどうか、ドクターが ここでオーダーを出して確認をして、ケアをするナースと意識を一致させることが、や はりリスクを防ぐと思っています。また、突然この検査をしなければいけないというこ とになると、ドクターがオーダリングのほうから転送し、こちらのほうに添付されます が、その中ではこれは今まで予想としていたものではないことをしたんだということを 示すために、こちらのほうに「V」と示されます。バリアンスとしていろいろなことが 追加されたことが表示されるようになっています。  また、この患者は今日は第2ステップが終わればいいんだということで、これをクリ ックしますと5項目ぐらいが、達成の指標が表示されます。これは画面ではお見せ出来 ませんが、これをクリックすることによって具体的なゴールが示され、それを達成した ということを判断した時に、最終的にこれをクリックしますと下のほうに「バリアンス なし」という項目が出るようになっています。 ☆スライド30  病院というのは、たくさんの医療職がかかわっており、危険が矢のように降ってくる 状況の中で、すべての矢を防ぐことが可能かどうかは論議があると思います。しかし、 できるだけ矢を少なくしていかなければならないわけですが、電子診療録のIT化をは かることで、いろいろなことが可能になってくると思います。しかし、最終的にいちば ん大きなものは何かというと、やはりヒューマン的なものだと思います。ヒューマン的 なリスクを未然に食い止めることも、ハードで、ITで防ぐ。さらに補うものは、運用 のルールだと思います。  多職種の運用のルールは、病院の中ではなかなか作りづらいものですが、電子化を導 入した結果、多職種が集まった場合に、運用ルールはきちんと作ることは必然のものだ と考えています。 ☆スライド31  当院は、オーダリングに関する運用規定には、全部リスク対策の委員長が参加してお ります。リスク委員会のほうでも、その運用をきちっと検証して、最終的に合意しなけ れば使わないとしております。電子化の中で、いちばん不安に思うのは、やはり入力が スムーズなだけに、処置の変更、オーダーの変更等はすぐ出来ます。それに対して臨床 の場面でナースが実施するわけですから、生じるタイムラグをどういうふうに運用規定 にするかが大きなことだと思います。取り決めを作成しても守らなければミスにつなが る可能性がある。これは電子化だけではありませんが、きっちり出来ているから余計、 そういうものを作っておかなければいけない。取り決めは関連職種で作成して、実施評 価を必ずしていくということ。作成するだけではなく、関連職種で評価をしていくこと が重要だと思います。当院におきましても、輸血や麻薬に関して、ピッキングマシンに は入れないということを、多職種で話し合ってきました。そして取り決めていくという ことが、やはりリスクを少なくするのではないかと思います。 ☆スライド32  IT化をすること、電子化をすることのメリットとして、ドクターの記載内容の充実 が挙げられます。ローテーションのドクターが内服薬の全体量を指示し6mg分3として いたのが、前の病院では6mg3×と書いていた。1回2mg投与であるのにもかかわらず 意味を1回6mgと捉えた場合、18mg患者にいくことになり、こちらのナースが勝手に判 断をして使ってしまったら、必ずミスが起こってきます。その点、短期間でローテーし てくるドクターも、1つの標準に基づかなければ出せなくなっています。オーダーの見 やすさということでは、やはり意味があると思います。  また、共有化の推進と患者の参画、できるだけ患者に画面を見せ、患者からも意見を もらいながらやっていく、という方向で進めていきたいと思っています。あくまでもリ スク対策で、ITは補助であるということを、スタッフ等も踏まえておかなければいけ ないと考えています。  以上です。どうもありがとうございました。 ○森座長  たいへんありがとうございました。  では次に、国立国際医療センターの秋山部長、よろしくお願いいたします。 ○秋山参考人  今までいろいろなITによる医療過誤ということがいわれておりましたが、ここでご 紹介いたしますのは、医療過誤を起こすタイミングの『点による対策』それが前後の関 係を時系列で見た場合の『線による対策』、1人ひとりの医療行為の時系列ではなく、 複数のチーム医療として、病院全体から見た場合の『面による対策』という、その3つ が出来るような観点から設計された病院情報システムをご紹介させていただきます。 ☆スライド1  このシステムの特徴ですが、先ほどの坂本部長のご紹介にもありましたように、シス テムそのものは電子カルテという観点から作られています。 ☆スライド2  電子カルテには、リスクマネージメントという観点が入っています。 ☆スライド3  患者初診においては、透明性、説明責任、自己責任という、ある意味では患者主体の 医療が出来ることが重要になってきます。しかしながら、患者に常に付きまとうのは、 自己責任を果たすための情報の提供が十分であるかどうか。また、実際にその情報が正 確であったかどうか、というところに心配点があろうかと思います。 ☆スライド4  そういう意味では、正確な記録がリアルタイムに行われるという、リアルタイム性と いうことが、1つ重要になってくると考えます。 ☆スライド5  病院の課題はいくつかあります。もちろん、リスクマネージメント以外に、地域のニ ーズとかいろいろありますが、いずれも正確な診療記録がありますと、その予防、今後 の対応策などの戦略も決められるわけです。 ☆スライド6  100%のペーパーレスというのは、制度上の問題もあります。100%ではない段階で も電子カルテが有用なのではないか、ということを簡単に挙げています。要するに、蓄 積されたデータ、診療情報を点による分析、線による分析ではなく、複数の症例を面に よる分析をする場合は、当然、電子的なデータとして集まったデータベースを分析する ことにより、二次解析が可能になってきます。したがって、電子カルテが有用ではない かと考えられるわけです。 ☆スライド7  このビジネス・プロセス・リエンジニアリングと呼ばれますのは、他の産業界で行わ れてきたいろいろな対策ですが、やはり何といってもリスクマネージメントを行うため には、そのリスクマネージメントに投入する経費を稼ぐということが当然必要になって きます。経営改善ができるような対策を先に行い、同時に余った経費といいますか、余 剰が出来た部分をリスクマネージメントに投入していくという姿勢が必要なのではない かと思います。 ☆スライド8  そのすべてにおいて、職員の業務管理とか意識改革が必要ですが、複数のシステムを バラバラに入れていくと、重複入力が必要になり、転記作業とか2度入力によって、ま たミスが行われる可能性があります。 ☆スライド9  単品管理、他の産業界でいわれているトレーシングが出来ること。誰が何をしたか、 何を使ったかという情報が、後でトレーシングが出来ることが非常に重要になってくる と考えられます。 ☆スライド10  そういう意味では、処方をする場合に、医者の行ったことだけではなく、周辺の医事 課であるとか薬剤部であるとか、卸業者とか、その後の分析をする研究者の部分まで含 めた対策が出来ないといけないと思います。 ☆スライド11  注射をする場合も、患者を中心に考えて、複数の職種が十分連携できることが重要だ と思います。 ☆スライド12  上手に使われてきたのが、スーパーマーケットとか、コンビニエンスストアで使われ ているPOSシステム(ポイント・オブ・セールス)、販売時点情報管理という考え方 です。どういうタイミングで、どういうものが動いたか、どういうお客様にその商品が 使われたかという観点で、リアルタイムに情報を収集し、それを後で分析するための手 法が「POSシステム」です。そういう考え方を病院に持ってきたわけです。 ☆スライド13  短時間で正確に、大量に物をさばきますから、忙しい方々がいかに正確にそれを処理 するか、という観点でPOSが使われたと聞いています。 ☆スライド14  このPOSのシステムを病院にどういうふうに持ってくるか。当然、病院業務は商品 を売ることが業務ではありません。お客様、この場合は患者ですが、患者に医療行為を 提供するというサービスを行うわけですから、病院業務のアクト、それぞれの病院従事 者のアクトというものを提供するシステムとして、「POAS」というものを考案いた しました。 ☆スライド15  このシステムを導入する際に問題になりますのが、先ほどの坂本部長がおっしゃって いたリアルタイム性、タイムラグという問題です。このタッチパネルと携帯端末を使い 、先ほどのPOSのような、記録の自動化、ならびにその実施記録をデータベース化し 、後で管理をする。その時に使った物、例えば中心静脈栄養と呼ばれるようなもの、心 臓の近くまでカテーテルを入れる、自分の身体の中に管が入る、生命に直結するような 商品に関しては、その商品が一体どこで作られたか、いつ作られたか、そのロット番号 はいくらで、不良品だったかどうかが後で分かった場合に、いち早い回収ができるかど うかということまで含めて管理をしようとすると、今の人手だけではとても管理できな い状態があります。今の医療記録では、こういうことまでは義務づけられておりません 。先般行われたHIVの反省点や、ヤコブ病に使われた商品名の管理なども、このバー コードを使うと自動的に出来るようになるわけです。 ☆スライド16  そのトレーシングのことを単品管理というふうに申します。 ☆スライド17  このシステムは、タイムラグをなくすために、携帯端末ですが、無線LANといって 、リアルタイムに病院情報システムのデータベース、いわゆる電子カルテのデータベー スと直結するシステムを開発いたしました。 ☆スライド18  ここで取り扱いますバーコードは、商品の番号だけではなく、いわゆる5W1Hの情 報、いつ誰が誰に対して、どういう理由でどういう病名で、何を使って何をしたかとい うふうな情報をリアルタイムに記録していき、それを分析しようということです。 ☆スライド19  そういう意味では、医療スタッフ、患者、医療用の薬品だけではなく、消耗品のすべ て、医療行為そのものにバーコードを付けます。看護婦の1日の勤務時間の中の約40〜5 0%ぐらいが、転記もしくはチェック機能の時間に使われていることが、3つの国立病 院の調査で判明しています。例えば、傷の処置をしたとか、患者の身体を拭いたという ふうな医療行為そのものにバーコードを付けることによって、看護婦の業務のチェック の時間を減らせば、余った時間でより患者に直結したサービスが行える。そのことによ り、医療過誤対策ができるのではないかという考え方です。 ☆スライド20  間違えないでやるということは、横浜総合病院やNTTの病院でも同じです。 ☆スライド21  バーコードがどういうふうに使われるかと申しますと、医療行為が行われる、実施さ れる段階で、バーコード・チェックをすることにより、その実施記録、記録の自動化な らびに物品の正確な記録、発注業務の簡素化、医療過誤対策ということが行えるわけで す。 ☆スライド22  実際には、看護婦が自分のIDを読みとり、医薬品のIDを読みとり、混ぜた後のボ トルに新しいオーダー番号のIDを付ける。 ☆スライド23  こういう手順になりますが、この手順は分かりにくいので、ビデオでご紹介したいと 思います。 (ビデオ映写)  実際に管理病棟で看護婦が点滴をしようとしているところをご紹介いたします。先ほ どの携帯端末は、1人1台、医師、看護婦が持っており、この医療スタッフが患者にそ の医薬品を付ける時にこの携帯端末を用いて使うわけです。看護婦は紙を見て黙視して 、読み上げることによりチェックをする。そのサポート業務として、こういうITを使 うということです。本人認証がうまくいかないと画面が出てきません。本人以外のID が入っても動かないわけです。点滴の中に混ぜている薬のバーコードを読みとって、そ の薬をこの点滴の中に今から混入いたします。混入した際に、見かけは他の点滴のボト ルと同じになりますので、新しいオーダー番号がついたバーコードを貼ることにより、 先ほどIDを読みとった看護婦が、点滴を調整したという記録が自動的になされます。  通常、別の看護婦が調整した点滴が患者のところにいきますので、バーコードを読み とり、患者のIDを認証します。同時に、このボトルを認証します。これによって横浜 と同じように、取り違いを防止するだけではなく、このバーコードは、先ほどの薬がA という看護婦によって混ぜられたという情報も入っていますし、今、目には見えません が無線でチェックにいきましたから、0.1秒前に医師が変更指示を出していると、当然 アラームがなります。要するに、リアルタイムに、医者がその直前に患者の状態、例え ば血液検査のデータを見て、それが変更になったということで中止指示を出すと、この 段階でアラームがなります。したがって、NTTの病院でも問題になっていたタイムラ グということを、ITを使うことで完全に防止できるわけです。 (ビデオ終了) ☆スライド24  もちろん、これで点滴を抜く場合に、先ほどタッチパネルを触っていましたが、全部 入ったのか、半分で患者が苦しいと言って抜いたのか、4分の3入ったとかいう記録も 残ります。 ☆スライド25  処方、注射の過誤ということを洗い出しておきます。医療過誤の80%が処方オーダー をしてから実際に投与するまで、あとは別のところで起こりますが、決して点滴をする タイミングだけで医療過誤が起こるわけではありません。このように、ずっと一つなが りのチェックをITによってやっておきますと、全体の80%の部分の医療過誤対策が出 来ることになります。 ☆スライド26  点滴だけではなく、血液サンプルの取り違い事故も医療機関の中ではよく起こるので すが、これも同じ仕組みにより、取り違い事故が起こらない状態になります。 ☆スライド27  このシステムは無線で、先ほどの携帯端末は医師の指示を出す電子カルテと直結して います。したがって、必ずリアルタイムに、いま現在の最新の医療情報が、医師の指示 に基づいて医療行為が行えるという利点があります。 ☆スライド28  自動的に記録がリアルタイムに行えるというところもメリットですが、もう1つのメ リットとして、事故が起こった場合に、この医療スタッフ以外に、他の人たちは一体何 をしていたのか、この人だけが悪いのか、この人が大変忙しくて、1人に負荷が集中し て、他の人たちが手が空いていた状態で事故が起こったのか、もしくは皆がバタバタし て、救急車が同時に5台も入ったような状態で事故が起こっていたのかというのは、従 来の紙の記録ではなかなか難しいわけです。1人の患者のカルテがバラバラに存在して いますから、それを面で分析することがなかなか難しいからです。 ☆スライド29  このように、記録を自動的に行うことにより、ある医療スタッフの直接的な原因だけ ではなく、その周辺で一体何が行われていたか、周辺のマネージメントは適切だったか 、もしくは人員配置がうまくいっていたか、ひょっとするともう少し負荷が分散するよ うな人員配置ができたのではないか、というふうな工夫が出来るわけです。 ☆スライド30  医療行為を自動的に記録する。例えば、骨髄穿刺をするといった時に、どんな針を使 うのか、どういうものが動くかということを分析した上で、骨髄穿刺というバーコード を読みとる、もしくはタッチパネルで触ると、この辺の記録が自動的に行えるわけです 。 ☆スライド31  要するに、いろいろな臨床現場のノウハウをそのまま入力するということです。 ☆スライド32  医療スタッフは、目の前の患者にできるだけ適切な時間をかけて医療行為を行う。そ の後ろでコンピューターが、こういう無駄な伝票業務、無駄な書類業務を自動的にやっ てくれる。そのことにより、患者に向かい合う時間をできるだけ増やし、増やすことに よって安全対策が出来るのではないかという考え方です。 ☆スライド33  その時に、同時に5W1Hの情報が自動的に残ります。ITでやりますのでごまかす ことが出来ません。したがって、正確な診療記録が出来、後で思い込みによる勘違い、 ならびに「あそこはうまくいったはずだ」というふうな分析が後でできるわけです。 ☆スライド34  そのためには、このシステムを作るにあたって、すべての医療スタッフ、医師、看護 婦、薬剤師、コメディカル、事務部門といった段階で、どういうふうに情報の連携を行 っているか、どのタイムで物品の移動が起こるかということを正確に分析し、それを国 立の5つの病院で分析したものを集計して、このプログラムを作り上げました。 ☆スライド35  業務一覧です。 ☆スライド36  実際の画面です。電子カルテにはサマリーボタンというのがあります。医療行為の記 録が、どういう疾患にどれくらいの医療行為が行われたか、医療行為の多さに応じて太 さで表現されます。 ☆スライド37  そこをクリックすると、直腸がんということで、こういう医療行為が行われたという ことが分かるわけです。 ☆スライド38  別の検査をすると、この段階で医療行為の中心がこちらに移っているわけです。これ は、もちろん1人の患者だけではありません。これをマルチプルに、複数の患者の医療 行為をこういう形で見せることが出来ます。 ☆スライド39  実際に誰が行ったのか、どういうものを使って行ったのかが分かります。 ☆スライド40  誰が指示をして、誰が受けたか。いつのタイミングで行ったかということが全部わか ります。 ☆スライド41  もう1つの重要なポイントは、リアルタイムで情報を共有するということを、病院の 中にとどまらず、病院の外、いわゆる日本全体の病院の情報に、リアルタイムで連携す るという考え方です。HIV訴訟の時にもありましたが、医薬品情報を臨床現場の末端 までリアルタイムで届けることは、人間の力では困難です。もちろん、人員を増やすこ とにより、また文書、メディア等を使うことにより、できるだけ速いタイミングで実際 の現場まで届ける仕組みが、数年前よりもはるかに進んできたのは、皆様ご承知のとお りですが、それでもやはり1日、2日等のタイムラグが出る可能性があります。 ☆スライド42  私どもの病院では、医薬局が提供している、医薬品機構の中の医薬品情報提供ホーム ページにあります添付文書とか、副作用回収情報を、先ほどの電子カルテの中からリア ルタイムに参照できる仕組みを設計しております。 ☆スライド43  このように、たくさんクリックをして初めてここまで到達するわけですが、通常、病 院の端末からこれにアクセスすると、やはり数分時間がかかってしまいます。 ☆スライド44  1人の患者に薬を出すたびに、数分間かけて調べることはなかなか出来ません。 ☆スライド45  そこで、国立病院の中では、国立病院全体でシェアできる、インターネットとは安全 な状態で隔絶されたシステムに、午前0時に、先ほどの情報のうち部分情報だけ、要す るに本日午前0時現在、最も新しいと医薬局が保証した情報を、こちらに自動転載して おります。 ☆スライド46  この情報は、先ほどの医薬局が提供している情報と完全に一致した情報を、常にリア ルタイムに提供しているわけです。しかしながら、これもこちらの病院端末から利用し ますと、やはり1分程度は時間がかかってしまいます。 ☆スライド47  そこで、この情報をいかに病院まで届けるかということです。こちらの情報を自動的 にこちらに届けることは可能ですが、病院の中の電子カルテのすべての端末で、この情 報をリアルタイムでとれないか、という工夫をいたしました。 ☆スライド48  電子カルテの端末、例えばタガメットという胃潰瘍の薬がありますが、そこでクリッ クすると、このボタンが出てきます。このDIというボタンを押しますと、先ほどの文 書が1秒程度で出てきます。数分かかっていた情報が電子カルテのIT技術を使うこと により、本日いちばん新しい添付文書が、病院の中のどこの端末からでも1秒程度で飛 んでくる。 ☆スライド49  さらに、その材形情報まで飛んできますので、初めて薬を出す場合は、患者に必ずこ の薬を見せています。もし薬局でもらう薬が、これと違う形や色をしていたら、すぐに 連絡をしてくださいということで、いちばん新しい情報を直接見せることにより、患者 と一体化した医療過誤対策ができるのではないかと考えているわけです。現在のいちば ん新しい情報を、患者と医者が共有することにより、より事故が防げるのではないかと いうことです。 ☆スライド50  要するに、もともとある情報を国立病院全体でまとめてとる仕組みを、すでに2年前 に構築しています。この情報をいかに病院の中から、リアルタイムに欲しい時に欲しい だけとりにいけるか、ということを構築したのがこのシステムです。これは、人手を全 く介しておりません。全く人手がなく、医師1人がクリックを1回するだけで、こちら の情報を1秒以内に、24時間365日、自動的にとれるというところがメリットです。 ☆スライド51  もう1つは、こういうふうに集まってきた医療の実施記録の情報を、どうやって分析 するかという手法です。 ☆スライド52  1つの病院の中の分析は、1つの電子カルテで出来ます。しかし、それを複数の病院 で分析する、データの倉庫で行ってきたマイニング、分析です。 ☆スライド53  もちろん経営分析をして、その資源をさらに安全対策に投入することができるように なります。 ☆スライド54  さらに、そのリスクマネージメント、一体どこに問題点があるのか、その問題点を解 決する手法として、こちらで浮いた資源をこちらに投入する。さらに臨床研究などにも 用いられるという考え方です。 ☆スライド55  この分析手法を積極的に導入したのがコンビニエンスストア業界だと聞いています。 ☆スライド56  大量のデータを分析することにより、人間の視野では気がつかなかったことも見つけ ましょうということです。 ☆スライド57  実際には、某コンビニエンスストアのシステムでは、1日に3回トラックが来る。ト ラックが来るたびにバーコード・チェックをすることで、前のトラックの製品が残って きた段階で次の製品が来るとか、もしくは売り切れてしまって、次のトラックが来るま でに欠品が出てしまったという情報を、職員にリアルタイムで提供することが可能です 。職員はこれを見て、なぜここが欠品が出来てしまったのか、前の日が雨だったのに、 次の日は晴れた。しかしながら発注量を増やさなかったから良くなかった。したがって 、天気と関連づけて発注量を可変させることが必要だというふうに、このシステムはコ ンピューターが発注量を自動的に制御するのではなく、集まった情報を上手に見せるこ とにより、考えて発注しなさいという、いわば考えさせるシステムになっていることが 特徴です。  病院情報システムでも、コンピューターが自動的に写し間違いのチェックをすること も重要ではありますが、先程来申し上げましたような、いろいろな職員、いろいろな病 院で行われた情報を先ほど私がお示ししたような形で見せることによって、一体どこで 間違ったから、こういう事故が起こったのかということを、集まって分析するようなこ とを可能にするのが電子カルテだと考えます。 ☆スライド58  これを複数の病院で医療ネットワークを組んで出来た場合には、さらに有効な対策が できるのではないかと思います。 ☆スライド59  従来は、疾患特異別の研究はどんどんやられています。しかし、医療安全対策という のは、共通の診療情報です。したがって、すべての医療行為を分析することに、それも リアルタイムに蓄積された精度の高いデータの分析が必要になってくるのではないかと 考えています。 ☆スライド60  患者から見た場合に、当然危機管理は最重要でしょうし、質の担保ということも必要 でしょうが、やはり複数の疾患が集まった場合でも、安全に医療行為が行われるという こと、それを実際の医療行為の実施記録というエビデンスに基づいて分析をしよう。そ のためには、精度の高いデータをリアルタイムにとるということで、精度を上げたデー タを分析する必要がある。それにより、より良い医療が提供できるのではないかという ことを、病院職員に常に考えてもらおうということです。 ☆スライド61  その意味では、データを集めることだけではなく、分析をすることが重要になってく ると考えます。 ☆スライド62  実際にアメリカでも、こういう携帯端末を用いた例があります。 ☆スライド63  携帯端末は使っていませんが、ハーバードのBrigham & Woman's Hospitalでは、1993 年に電子カルテを導入し、それから2年間で医療過誤は55%に減少しています。実際に 患者への過誤は17%減少しました。10年経ちまして、すでに86%も医療過誤が減るとい う、この病院情報システムを導入した成果が、ボストンのほうでは出てきています。こ のようにアメリカでは、積極的にITを導入することにより、確実に患者の安全を確保 できるという考え方で、今ではハーバードの関連病院、ならびに退役軍人病院チェーン 、ならびにHMOの最大手であるカイザーパーマネントという所は、100%電子カルテ 化されているというのが現状です。 ☆スライド64  行われた医療行為の分析に関しては、アメリカの医療評価機構により、積極的な分析 がすでに行われています。 ☆スライド65  ハーバードのリスクマネージメント財団でも、そういう分析が行われています。 ☆スライド66  医療機能評価と経営のバランスがとれた形で、より効率的な安全対策をとるためには 、やはりコンピューター等を積極的に活用した分析が、今後必要になってくるのではな いかと思われます。 ☆スライド67  今日ご紹介したのは、1つは省力化、省時間ということにより、浮いた時間を患者の 直接診療にできるだけ振り向けたいという考え方です。もう1つは、人間が黙視では見 落としがちなところを、先ほどの2つの病院と同じようにチェックする機構を作ること により、うっかりミスを予防できるようにならないか。もう1つは、集まったデータの 分析により、それをできるだけ次の災害を起こさないように、システム全体、組織全体 で対策を行っていけるようなツールとして、ITが利用できる可能性があるのではない かと考えています。  以上です。 ○森座長  ありがとうございました。最後にアメリカの事情についてもご説明がありました。国 立病院管理研究所の長谷川部長が、最近のアメリカ事情などについてデータをお持ちで すので、若干のご説明をいただいてはという示唆が事務局のほうからありました。恐縮 ですが、お願いいたします。 ○長谷川委員  今、お三方から日本の先進的事例のご紹介があり、かつ秋山参考人のほうからアメリ カのご紹介があったと思うのですが、アメリカでもITを使った医療安全対策は進行し ております。それの関連で研究をしておりますので、その一端をについて、今日は興味 深い2つの事例をご紹介します。資料をご参照ください。  いわば理論と実践と申しますか、情報と実際ということだと思いますが、現在、医療 安全に関しては、米国は国をあげてプロジェクトを進めているようです。大変奇妙でし て、小さな政府を自認する国としては、非常に力コブが入っております。アメリカの厚 生省、退役軍人省、米軍、航空宇宙局NASAの4省の縦割を超えた連携で、さまざま な取組を行っております。いちばん興味深いのは、退役軍人病院がフィールドになって 、厚生省は頭脳といいますか、何といってもNASAと米軍はノウハウの蓄積した所で すので、そういうものを使って、実際に171施設で取り組んでいます。先ほどご紹介が あったバーコードシステム、医師の末端入力システムなどを実際にやっています。実は 、アメリカは日本よりもその面では遅れているのですが、逆にアメリカの国立病院がパ イロット役を果たしているということがございます。  もう1点は情報ですが、つい最近、7月20日にアメリカの厚生省の医療の質を研究し ておりますAHRQという所から出版された「Makinh Health Care Safer」という報告 書があります。これは、医療安全にかかわるほとんどすべての対策につきまして、EB Mの手法を使って、有効性と安全性と効率性、コスト等を分析した報告書です。大変大 部の662頁59章にわたるものです。はっきり言いまして、ほとんどすべての対策が網羅 されており、大変厳密なEBM手法で吟味されています。  資料の2頁にその過程がまとめられていますが、どのようにデータを集めたか。クラ イテリアを決め、研究のレベル4段階を同定をし、結果についても4段階を吟味してい ます。報告も、フォーマットを決めて、非常に分かりやすく、対策のやり方、頻度から 始まって、有効性、効率性、有害性、あるいは費用、問題点等、総括表にまとめて最後 にクリティカルレビューの結果を表示してあります。  懸案のIT関係ですが、恣意的にピックアップした約10か11ぐらいの分野が分かりま した。資料4頁の上にまとめていますが、参考文献を引っ張ってきて、その中から批判 に耐える文献を分析するという手法でやっており、今日ご発表のあった電子末端の入力 とか、あるいはバーコードによる患者の認定とか以外にも、いわゆる術中や病床におけ るアラーム、患者安全への教育、シミュレーションへの有効とか、あるいは医学判断に 対する支援とかが挙げられております。大体、今日ご発表がありました入力とか患者同 定については、かなりたくさんの文献が書かれており、結論的には大まかに言って有効 、という答えが出ております。  ただ、教育への応用とか、レポーティングシステムへの応用等については、はっきり した成果が出ていないという結論にはなっているのですが、まとめますと、やはり執行 上のミス、単純ミスは、IT等で置き換えていく。記録については、正確にその内容を 伝えるという意味で有用と。ただ、判断等をこれを使ってやっていくということについ ては、これからの課題が残っているのかという印象でした。  このドキュメントについては、AHRQのサイトからダウンロードできまして、1.7 メガですので使えます。本を注文しているのですが、例のテロの関係でなかなか手元に 届きません。インターネットからダウンロードするのがよろしいかと存じます。  以上です。 ○森座長  ありがとうございました。  さて、本日の検討会議の最後には、日本医師会で最近おまとめになった事柄について 、小泉先生からご説明をいただくことになっています。それまでの30分間、何なりとご 自由に、今日のご説明についてご質問なり、ご意見をお述べください。 ○三宅委員  ITを使うことに、私どもも非常に興味を持って、いろいろ考えたり、メーカーとい ろいろ相談をしていることがあるのですが、皆さん非常に参考になる意見で、勉強にな りました。秋山先生の最後のようなシステムは、理想的なシステムだと思っています。 ただ、そこにかかる費用は、私どものように独立採算でやっている病院では、なかなか そこまでいけないのが実状です。厚生労働省とかの補助という点でサポートしていただ きたいという気持もありますし、先生がいま考えられているようなシステムを、標準化 してはどうでしょう。今いろいろなメーカーがいろいろな取組みをしていますが、やは りそういうものはある程度統一した基準で、皆がやればもっと安く、そして広く使える のではないかと思うのですが、そこらのところはどうなのでしょうか。 ○秋山参考人  重要なサジェスチョンありがとうございます。先生のおっしゃるとおりで、実は私ど もの病院は、なるべく標準的なシステムということで、アメリカと日本、内視鏡の用語 集に関しては、日米欧で決めた標準のターミノロジーを学会で日本語訳をしたものを使 っています。できるだけワールドワイドに、1本になるような方向性で開発を進めてま いりました。従来の手法と違って、これは私どもの病院で自ら設計してプログラムを作 り上げたものですので、メーカーも12社ぐらいが一緒に作っており、どこのメーカーで もこのシステムは作り上げられるように作ってまいりました。したがって、もしカスタ マイズをしなければ、従来の医事会計システム、プラスアルファぐらいでこのシステム を導入することは可能になっております。実はこのシステムをこのままお買い求めにな るだけの場合は、本年度はこのシステムをさらに安くする研究開発を進めていますので 、ちょっと市場価格では申し上げにくいくらい安い価格でおそらく導入できるのではな いかと考えております。 ○堺委員  今日いろいろ教えていただいた病院に、1つずつ質問させていただきたいと思います 。横浜総合病院の桃田看護部長からは、いろいろなシステムのお話がございましたが、 いま横浜病院で導入されたのは、患者さんの誤認を防止するシステムだというふうに理 解しています。私どももいろいろ検討をしておりまして、現場の看護婦の意見では、誤 認防止はもちろん非常に大事だけれど、やはり医師のオーダーミス、それをさらに薬剤 部が見逃す可能性、それの最後のストッパーとして看護婦が、薬名、用法、容量をチェ ックしたいという希望が非常に強いのです。これは、最後に秋山先生からご紹介いただ いたシステムが、それに相当するかとは思いますが、横浜総合病院で、誤認防止はもち ろんですが、もっとやりたいという気持が看護婦のほうにあるかと思うのですが、その 辺はいかがでしょうか。 ○桃田参考人  これまで、相当数事故報告とヒヤリ・ハット報告があり、今まではいろいろな方法を やりました。点滴をする時には、病室で声を出す。また、ベッドネームで声をもう一度 確認する。最終的には、患者さんに確認をするのですが、その最後のところで何でも「 はい」と言ってしまう患者さんがいたり、また点滴を受けたり注射行為が多い患者は、 返事も出来ないという場合がほとんどなのです。大体、私どもで報告を見ていますと、 若い看護婦ではなく、経験10年ぐらいのベテランの看護婦が、ふっと何か分からなくな ると、そういうふうな本人たちの報告があります。  この辺のところを、今までの薬剤の使い方、もちろん医師が入力して、薬剤師にボト ルを作ってもらって、病棟に上がった時には看護婦が3回目のチェックはやる。なおか つこの機械を使うということは安心ということで、最後のこの部分を私どもが実施した というのが良かったのかなというふうに思っております。ただ、これだけでは手間暇だ けということで、今後いろいろなことに活用できたらと思います。ただ何分、国立や県 立、公的病院は補助金というものがありますが、民間病院はとてもやり繰りが出来ない 。たかが10万といっても、とてもこれは購入はしてもらえないという現状です。  病院経営が厳しくなりますと、質の高い看護婦を採用するにはお金がかかる。どうし ても経験年数の浅い看護婦ということになりかねない。今の民間病院の経営は、明日倒 産してもおかしくないという現状であるということを申し上げたい。事故は起こしたく ない、起こせば、おそらく報道によって即、その病院には患者も来ないでしょうし、職 員も離職するだろう。この辺のところをしっかりやっていきたいと思って実施しており ます。 ○堺委員  ありがとうございます。あと2つの病院にお伺いしてよろしいでしょうか。NTT東 日本関東病院の坂本看護部長さんに伺います。いま長谷川部長や秋山先生からもお話が 出ましたが、EBMに基づいてクリティカルパスを組み直して、そのクリティカルパス をオーダリングとか物流とか、あるいは経営管理システムに落とし込んでいかなければ いけないわけですが、現時点では、私の知る限り、日本のベンダーが持っている病院情 報システムには、その機能がないといっていい状況です。米国にはいくつかありますが 、これが直ちに日本にローカライズできるかというと、そういう状況でもございません 。NTTが開発されたシステムは、そこのところはいかがでしょうか。 ○坂本参考人  当院も、クリティカルパスを用いるのは、情報の共有化ということが最終的な目的で はありません。経営的なものにどうやってデータをとって展開させていくか、というこ とが1つ残っていると思います。その余地は残していますが、いま開発しているという ことではありません。 ○堺委員  秋山先生にお伺いいたします。大変優れたシステムを開発されていると承りました。 システムのことではなく、ヒューマンファクターのことを1つお尋ねしたいと思います 。現場での単品入力というのは保険材料・非保険請求材料ともに、是非行わなければい けませんが、緊急性の高い現場の場合に、一体誰が入力するんだということがあります 。もちろん、やらせることはある程度までは可能ですが、決して完璧にはいかないと思 いますし、入力しなかったことが分かるかということもあります。これは完全には解決 できない問題ですが、その辺をどのようにお考えでしょうか。 ○秋山参考人  大変重要なご指摘をありがとうございました。ただ今、実はそこを開発している最中 で、ほぼ出来上がりつつあります。アメリカでも、救急分野で使われている病院は1つ もありません。私の知っている限り、ハーバード・グループでもVAでも、また他の大 学病院でも使っていないと思います。HAにこの8月に伺った時も、やはり使っていな いということでした。そこで、オリジナルに作るしかないということで、私どもの病院 で開発を始めたのですが、基本的な考え方は実施後入力です。実施後入力なのですが、 すべてにバーコードが付いておりますので、その物品ならびに医療行為の一覧表はあり ます。終わったらすぐに医師や看護婦が読み込む。従来の請求伝票という形で書いてい たのを、代わりに実施後入力として看護婦が読み取る。これも随分早くできます。  その段階で、電子カルテにかけているエラーチェックが後ろで動きますので、投与量 が多すぎれば当然アラームがなりますし、タイミングを間違えてもアラームがなります 。先ほどは時間の関係でご紹介できなかったのですが、あのシステムは、例えば抗がん 剤にいく前に、制吐剤、例えばカイトリルのようなものが投与されて、その血中濃度が 十分上がる時間より前にプラチンなどが投与されるとアラームがなる設計になっていま す。要するに、医薬品の血中濃度モニターに基づいたタイムラグ化分析というのもやっ ております。  したがって、タイムラグが起こらない。順序分析、実際のスケジュール管理というの を分単位でやっておりますので、その辺のこともチェックを後でしてくれます。万一間 違ったものが投与された場合、当院のER部門、当然ICUもそうですが、直ちに胃洗 浄ならびに血液吸着などの措置を行うことにより、すべてが救命できるというふうに考 えており、直後にバーコード入力により、万一事故が起こった場合に、必ず患者の生命 を救えるという観点から、そういう救急情報システムを今、作成している最中ですので 、来年の5月ぐらいには稼働する予定です。 ○山崎委員  秋山先生のお話は、いつも先端的なお話で、一種の感動を持って承っております。三 宅先生からのご質問で、費用のことで、これは一種の価格破壊につながるような安さで 入手できるようになるというお話ですが、実際に使っていく人、例えば医師、薬剤師、 看護婦を含めて、トレーニングにかかわる部分をちょっとお教えいただければと思いま す。 ○秋山参考人  実は、私どもの病院でこれを動かす際に、最低6クールの教育研修を必須化いたしま した。医師以外の職員は、100%履修されました。しかし、医師は忙しいとかいろいろ な問題があり、なかなか時間がかかります。インストラクター等を雇って、専門的に教 えるのが上手な方が教えればいいのですが、ITの得意な先生が教えますと、何が分か らないのかが分からないという問題があります。要するに、教えるプロというのがやは り必要になります。ですから、教えるプロを雇うお金が必要になりまして、そこでやは り断念せざるを得なかったのですが、先般アメリカに行った際に伺いますと、アメリカ ではこういうシステムを導入する際に、2割がハード、1割がソフト、あとの7割をト レーニングとエデュケーションに使うというふうに伺いました。ハーバード等がうまく いった理由はそこにあると思いますので、これからはやはり教育研修に十分な費用と時 間をかけて導入することが重要なのかなと、私どもはいま承っております。 ○全田委員  医薬品のいろいろな話が出ていますので、立場上申し上げますが、今の教育に関して も、IT化ということで、いかに機械化の中で事故を防止するか。先ほどの先生のお話 で、8割は防げるということですが、2割は防げない。私が、自分が病院の薬剤師とし て申し上げたいことは、やはり餅屋は餅屋、看護婦には看護婦の専門性があるし、医師 には医師の専門性があるわけで、こういうことを言うと今の時代に駄目なのですが、や はり勘というのがあるのです。  教育をする際も、今のシステムの中でも薬剤のことに関しては薬剤師が教育をする。 また、常に私は言っているのですが、薬が動くのなら、どんなにIT化しても、そこに 薬剤師がいなければ、やはりいろいろな問題が起こる。そういう点を是非私は強調させ ていただきたいと思うのです。結局、100人のうち80人を救っても駄目なのです。99人 救っても、1人が犠牲になれば、その人は100%ですから。私は古い人間ですが、IT 化は必要だと思っています。しかし、本当にそれだけで良いのかということを疑問に感 じています。プロはそれだけのトレーニングを受けておりますので、あえて申し上げさ せていただきます。 ○井上委員  今の話に関係するのですが、例えば横浜総合病院の場合、側管から入れる静注用の注 射液などは、正確な薬品、注射等が側管から入れられたかどうか管理できていないです ね。混注作業についてのチェックというのも、まだそこまでいっていない。やはり病棟 に薬剤師がいるということが、そういう管理では非常に大事ですから、IT化をするこ とによってチェックできるということもありますが、各病棟ごとに薬剤師が1人配置さ れ、その中でITを使ってチェックをし、看護婦に渡していくということが大事だと思 うのです。IT化を利用する、その前の病院のシステムづくりというのが、1つは大事 だと思います。  もう1点、私どもがいちばん困っておりますのは、標準化、クリティカルパスに対す る用語の統一というのがまだ全然できておりません。医薬品に関しては、厚生省コード から始まって、13種類のコードがあり、互換性が全くありません。医療用語についても 、例えば発赤というのか発疹というのか、これを英語訳するとどうなるのか、「ラッシ ュ」という言葉1つだけで済んでしまうのか。そういう部分の臨床的な用語統一も、ヨ ーロッパ系を使うのか、米国系を使うのか、採用についてまだ進んでいない状況です。 基盤的な部分の整備が全く出来ていないところにIT化をかけていっても難しいのでは ないでしょうか。最近、院外処方箋でIT化によるミスというのがいくつか出てきてい ます。アルケランとアルサルミンのクリックミスによる院外処方箋のミス。書いてある 文字が読めないのではなくて、はっきり読めて、ミリ単位数までちゃんと書いてあるの ですが、人的な要因でミスが起こっている。  ですから、基本的な部分をきちんと押さえて、システム自体をきちんと作る。その上 にIT化を乗せていく。乗せるのであれば、IT化された部分は、できれば用語から始 まって、医療用薬品、医療用具の統一コード化がきちんとなされていないと、医療機関 での共有化は出来ないという問題点があるのではないかと思います。 ○秋山参考人  今の点で、標準化の話ということで追加させていただきたいのです。私どもでは、ホ ット番号という標準的な医薬品番号を使っておりまして、それは井上先生がご指摘の13 種類の医薬品コードにすべて連携が可能なシステムです。それは、山崎先生を中心にま とめられたもので、それを私どもも使わせていただいて、非常にうまくいっているとい うことが1つです。  病院薬剤師の役割ですが、先ほどご紹介したシステムは、人的なシステムのサポート ・システムなので、最終的には院内処方箋のチェック、病棟の服薬コンプライアンスの チェックは、すべて病院薬剤師が行っています。従来、ITがない場合には、服薬コン プライアンスのチェックを、医師、看護婦に伝えるタイムラグがあったのですが、現在 は薬剤師が入力することで、リアルタイムでコンプライアンスが外来へ行った時も分か るというメリットがありますので、むしろ病院薬剤師が服薬指導を行う際に、非常に強 力な武器になるのではないかと考えています。  また、院外処方箋の発行の際も、先ほどのどこかの病院で、エラーチェックの紙が出 てまいりました。我々の所も、通常量を超える場合などアラームの紙が出てくるのです が、医師は確信犯的に許容量を超えて出す場合があります。それを阻害すると医療の質 を下げてしまう可能性がありますので、その場合は処方箋が発行されるのですが、「通 常容量を超えています」という印字を一緒に打ちます。それを患者自身に見せることと 、院外処方箋薬局で直接もう1回チェックしていただいて、もし不審な場合は必ず主治 医にチェックしてください、ということを直接印字して返ってくるような仕組みを導入 しており、まさに医師、薬剤師の連携、ならびに患者も含めた連携に、非常にITは役 に立つのではないかと考えております。 ○川村委員  秋山先生にお伺いしたいのですが、先ほど点と線と面での分析とおっしゃいました。 私は、その面の分析ということに非常に興味を覚えます。実際に先生の病院でも、やは りインシデントは起こっていると思うのです。その時に、具体的にその面でのデータを どう分析されてフィードバックをされたり、あるいは改善に持っていかれているのか、 何か具体的な事例でもございましたら教えていただきたいのですが。 ○秋山参考人  実は、このシステムは5月から始まったばかりで、まだ面の分析は行われていないの です。まだ開発中で今日は持ってこなかったのですが、要するに、ある事故が起こった 時間の、時間軸を縦に切りまして、その横断面でその瞬間、誰がやっていたかをビジュ アルに見せる画面です。そのページをめくっていくと、その5分前には何をやっていた か、1分前には何をやっていたかが分かり、病棟の中での他の看護婦の動き、医師の動 き、隣の病棟の動き、救急部門で何をやっていたか、その動きの関連性、それとそれを トレーシングすることによって、医療スタッフの動きに無駄がなかったか、クロスがあ ったか、そういうことを分析するシステムです。 ○児玉委員  3病院それぞれに、おそらく状況が違うと思いますので、それぞれの状況についてお 尋ねしたいのです。お尋ねしたい中身は、コンピューター・システム上の情報と、紙ベ ースに落ちた情報のミスマッチの問題です。過去に事故が起こった例は、例えばある時 間帯にコンピューター・システムが部分的に紙ベースの情報流通に置き替わるとか、そ ういう時には本来作動すべきアラームが作動しなくて事故が起こる例があります。おそ らく、コンピューター・システムにどんどん情報が移行していく移行期に、紙ベースの 情報が残っているのだろう。また、バックアップのための紙ベースの情報があるはずだ ろう。もう1つは、時間帯により、あるいは分野により、例えば土日の薬の払い出しは 紙ベースになっているとか、そういう病院があろうかと思うので、そういう紙ベースの 情報とコンピューター・システム上の情報のミスマッチの問題を、どういうふうに処理 しておられるかということを、お尋ねしたいと思います。 ○秋山参考人  運用マニュアルを持ってくればよろしかったのですが、そういうことをすべて運用マ ニュアルで決めておりまして、システムダウンならびに一時的に端末が壊れて使えなか った場合は、紙で運用することになっています。それは病院長権限で許可することにな っています。印鑑を押し、記載するのですが、それを次に使う時に電子化したいわけで す。したがって、紙の情報を電子化する時には、紙が原本になります。通常は、すべて 電子化が原本です。紙の原本を載せる時に、原本は病院長管轄で管理されます。それを 写したこと、整合性があったかどうかは院長が証拠の判こを押し、その日時を記録して 公証役場で公証人に日時の確定をしていただいて、それを管理しています。したがって 、必ずその過誤は起こらないということ、また後でインチキが出来ない。もう1つは、 画面上は原本が紙の場合はイタリック体で出ています。我々が見た場合に、原本が紙だ ったということが分かり、原本を見せてもらってミスマッチがなかったかどうかチェッ クすることができます。イタリック体で表示することで、それが直ぐに分かるようにし ています。 ○坂本参考人  当院は、ドクターがオーダーを出す場合に時間制限をしております。その時間以外で 臨時にオーダーを出す場合は、ドクターが出したオーダーは、必ず直接、患者を受け持 っているナースに打ち出して渡さないと受けられないことになっています。画面に臨時 オーダーを入れても、それだけでは実施できないということです。  また、バックアップは、バックアップ体制で1つホストを持っており、それが15分で 立ち上がるようになっています。15分しても立ち上がらないような事態が生じた時は、 いろいろ大変なことになるわけですが、まだそういうことには多くは遭遇していません 。外来においても15分は待ちます。メモしたりそういうことがあったとしても、待って という放送が入った時は待つことになります。参照用で患者状況は見ることができます 。  その時、「伝票で動け」ということになれば伝票で動くということです。伝票で動い た時、また紙カルテで動いた時は、全部の紙がなくなったわけではありませんから、例 えば診断書とか、診療書計画書等の患者のファイルはまだあるわけで、それにその紙の カルテを挟むことにしておりまして、夜中の2時間止める時に、入力するというふうに なっています。そして、入力した時は、これは紙カルテから写したものですということ をそこに記録することになっています。 ○桃田参考人  私どもは、基本的にはワークシートという紙と、入力とを同時に行っています。病棟 薬剤師は、各病棟に配置されています。また、指示変更の時は、薬剤部のほうでギリギ リまで、何回か指示の変更がないかということをチェックして、それで病棟のほうに薬 剤が上がってくるというシステムをとっています。 ○児玉委員  完全にコンピューター・システムですべてが運用できるほど、費用をかけたきちんと したものが出来れば、それは非常に素晴らしいことなのですが、移行期には部分的に紙 であったり、コンピューターであったりするわけで、そういう時期にミスマッチの問題 が生じて、実際に事故のリスクがままあるという点を指摘させていただきたいと思いま す。 ○望月委員  秋山先生に2点お聞きしたいのです。1点目は、アメリカのハーバード関連の病院の ような電子カルテを含めて、いろいろなチェック機能を持ったシステムを導入している 医療機関は、アメリカで5%ということでしたが、それ以上広がらないのは何が原因か ということなのですが。 ○秋山参考人  広がらないというのは、2年前の古いデータで、現在はおそらく増えてくるだろうと 考えられています。先般8月にアメリカに行った際に、HHSとか、ヒクハの方々とデ ィベートする機会がありましたが、メディケアとメディケートは原則としてもう電子化 でなければ支払わないという方向でいっているのだそうで、そういう意味では、どんど んあのパーセンテージは上がっていくだろう。だからこそ、パートナーズ・グループや ケア・グループのハーバード関連病院は100%電子カルテになっていますし、VAのチ ェーンも100%電子カルテになっています。非営利HMOの最大店であるカイザーパー マネントも100%です。それはここ2年ぐらいの状態で、その前のデータになっており ますので、おそらくあの数字は今は飛躍的に高くなっていると思われます。 ○望月委員  やはり、そういった保険システムの中でシステムを導入していないと、支払者側がゴ ーと言わないとか、そういった仕組みがある程度促進する一因になるということでよろ しいでしょうか。 ○秋山参考人  私が言ったのは、リアルタイムでやれば、紙よりもコンピューターのほうがむしろご まかしがきかない。コンピューターがごまかしがきくのは、後で直せるからで、リアル タイムにネットワークを通じて上げてしまえば、後での修正は手元では出来なくなりま すので、逆にそのほうが正確な収支がとれるのではないかと思います。ヒクハでボルテ ィモアにCMS(セントラル・マネージメント・システム)というところを作っていま すが、全米の、フェデラル・レベルのデータを分析するためには電子化しないと、2度 入力するだけの人件費が確保できないということで、メディケアを分析するためのデー タ入力としても電子化が必須であると伺いました。 ○望月委員  NTT関東病院と国際医療センターのほうでは、オーダリング時に医薬品に関して投 与量のチェックとか、相互作用のチェックをおやりになっているということですが、患 者と投与される薬剤のマッチングだけでなく、そういったオーダリング時のチェックを かけるためには、チェックをするための元情報、医薬品の情報が、そういったものに活 用できる形で提供されているかどうかが、やはり問題ではないかと思うのです。先生方 の施設では、それはどこで、どういう形で入手されているのか。あるいは、そういうこ とに関して、要望等があったらお聞かせいただきたいのですが。 ○秋山参考人  国立病院のシステムは先ほどお見せしましたが、国立病院218の病院・療養所でシェ アできる病院情報システムを平成9年から運用しております。私は、そのシステムの担 当者です。私どもの副院長を委員長として、私がそのワーキング・グループの座長とし て、情報のコンテンツをメンテナンスするグループを9病院共同で立ち上げておりまし て、月当番で全国の9病院が順番にメンテナンスをするという運用体制を3年ほど続け ております。したがって、チェックするリストとか、情報提供をするリストは、病院薬 剤師が9つの病院で共同して、月当番で毎月運用し、それを全病院に提供するという運 用のルール、仕組み、委員会、ワーキング・グループができております。迷った場合に は、病院の薬剤委員会にかけて、それで相談するという考え方になっています。 ○坂本参考人  当院では、医療情報室というのがありまして、それがすごく機能をしております。厚 生省通達等も全部システムのほうに入れて、伝達をしたり、先ほどログインした時に出 てきたところに入れたり、そういう役割をしています。当院が採用した薬品に対する副 作用状況等もそれに全部載せており、ドクターのほうにいくようにしております。それ を薬品情報のほうで入力したものが、ガードをかけるという仕組みになっています。 ○岡谷委員  看護の観点からちょっとお聞きしたいのですが。こういうシステムを導入することに よって、看護婦の間接業務のようなものがかなり省かれて、本来、患者の所に行ってい ろいろと直接的にケアする、そういう時間がとれるということを効果としてお挙げにな っていたのですが、実際には、例えば時間ベースでどのくらいゆとりが出てくるものな のかということについて、何かデータはございますでしょうか。 ○坂本参考人  まだ当院は、1年経っていませんので、データはとっておりません。しかし、伝票等 の整理も含めて看護の間接業務と捉えた場合は、半減以上しているのではないかと思い ます。記録が標準化されたことで、ちゃんと見比べて判断していくというところに集中 できるわけです。ランダムに書くことばかりに集中するのではなく、そういうスタンダ ードを作り上げていくということが先ではないか。それが最終的に、何を記録していい のかということの判断ができるということで、記録時間の短縮になると思います。 ○桃田参考人  私どもは、まだ全科が導入しておりませんので何とも言えないのですが、やはりIT 化が進んでいけば、記録物がかなり減って、その上で精神的な負担が軽減されて、良い 人間関係が成立すると思っております。是非進めていただきたいと私は思っています。 ○森座長  どなたもお触れにならなかった問題を1つ。秋山さんに伺いたいのですが、安全性を 高めるためとか、能率を上げるために、医療スタッフの行動がある程度記録されていき ますね。これはあるいは、昔の組合的な発想かもしれませんが、「監視されている」と いうようなプレッシャーを与えることはないのでしょうか。人間は別に悪いことはして いなくても、怠けてはいなくても、とにかく監視されるというのは愉快なことではない ですね。何かそういう声はありませんか。 ○秋山参考人  大変重要なご質問で、なかなか触れにくいところですが、実は私も毎週外来をやって いますので、監視される立場です。今日はご紹介しなかったのですが、私の病院では、 外来でのその先生の待ち時間、シュミレーション・プログラムによる待ち時間、リアル タイムの待ち時間が出ます。従来であれば、たくさん患者を診ているから待たせたんだ という言いわけが出来るのですが、実際に何時から何人、何分診たということを全員が 見られるようになっていますので、そういう操作が出来なくなります。そうすると、も のすごいプレッシャーですし、患者には、どの先生は待ち時間は何分というシールみた いなのが出てきます。たくさん待たせた場合、入った瞬間にそのカードみたいなのを渡 されて、「こんなに待ちました」と言われるのです。そうすると、ものすごく一生懸命 に診療しなければというプレッシャーを感じます。患者に直接関係する部分はそれをし なければいけないと思います。ヒヤリ・ハットとか、インシデント、アクシデント対策 のための分析は重要だと思いますが、それ以外の部分は、労務管理みたいなものに使う と、かえって悪用されかねないと思いますので、それはわざと出来ない設計に今の段階 ではしております。 ○森座長  それでは小泉先生、医師会のことをご報告いただけますか。 ○小泉委員  報告の機会をいただきましてありがとうございます。このほど日本医師会の医療安全 対策委員会が答申をまとめましたのでご報告いたします。なお「患者の安全確保に関す る活動状況」という資料を添えさせていただきましたのでまず、これで説明させていた だきます。日本医師会は4年前に医療安全対策委員会を設けまして、まずリスク・マネ ージメントについての答申をまとめました。次にこの委員会の勧告に沿いまして、まず 日本医師会から、さらに日本医師会を含む関係5団体からの共同声明を発表いたしまし た。2000年3月には、「医療安全に関する研究と人材育成の必要性」という緊急提言を 提示しました。  昨年の7月には、日本医師会内に「患者の安全確保対策室」を設けました。同じ年に は、「患者の安全に関するセミナー」を2回開催いたしまして、ここにお出での三宅先 生にも特別講演をいただいたり、アメリカの医師会にある患者の安全基金の創設者で、 元医師会長のディッキー先生、次いで基金理事長のクワンブル先生を招いて講演を聞き ました。2001年2月からは、先ほど申し上げた緊急提言にある「医療安全に関する研究 と人材育成」、特に人材育成の提言を受けて、日本医師会の医療安全推進者養成講座を 開講いたしました。これは、10カ月の通信教育で、500名を超える参加者がおります。 通信に加えて、年に3回スクーリングを行っております。  また、今年の4月には、医療安全器材開発委員会を会内に設けました。先程来いろい ろご報告の中で触れられております器材の問題について、具体的な検討を始めておりま す。また6月には、全国の都道府県医師会の担当理事の連絡協議会、同じ6月には、世 界医師会の第2回東京会議、これは坪井日本医師会長が世界医師会の会長でございます ので、会議を招集して「患者の安全に関する東京決議」を採択いたしました。  下欄にあります「患者の安全を確保するための諸対策についての答申」というのが、 今日ご報告する答申です。ごく簡単に、この青い表紙の小冊子について申し上げます。  この委員会は、4年間にわたって活動しておりますが、この会議の委員の児玉委員が 副委員長として、この答申のまとめにも大変尽力されました。この答申には、4つの大 きな柱がございます。  第1に「患者の安全を確保するための諸対策実践の理念」ということで、医療のリス クの問題、医療事故へのアプローチ、特に原因追求型の重要性ということを強調されて おります。第2の柱は、ひとについてのことで、「医療従事者に関する安全対策」、資 質向上の責務、教育訓練、業務の質と人員の適正配置という提言を受けております。3 つ目がものです。「医薬品、医療用具、医療施設等に関する安全対策」ということで、 ここでも具体的なことに触れながら、重要な提言を受けております。4本目の柱が、「 組織とコミュニケーション」ということで、患者の安全のための体制作りということの 重要性を、これも具体的に提言を受けております。  時間の関係で詳細は省略させていただきますので、お時間が時にご一読いただければ 大変ありがたいと思います。どうもありがとうございました。 ○森座長  大変良い資料をご提供いただき、ありがとうございました。今日はこれで終わりにし ますが、事務局から次回のことについて連絡事項をお願いします。 ○新木室長  次回の日程については、委員の先生方のご都合を調整させていただきました結果、10 月31日(水)10〜12時に開催させていただきます。詳細については、後日ご連絡を差し 上げますので、よろしくお願いいたします。 ○森座長  そのような次第でございます。若干時間を超過して失礼いたしました。本日はどうも ありがとうございました。 (照会先) 医政局総務課医療安全推進室企画指導係 電話 03-5253-1111(内線2579)