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薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会
乳肉水産食品部会
議事録

厚生労働省医薬局食品保健部基準課

薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会


1.日時:平成13年10月30日(火) 14:00〜16:53
2.場所:厚生労働省 専用第24会議室(中央合同庁舎5号館 19階)
3.議事
乳及び乳製品の規格基準の改正について
(1)脱脂粉乳等の製造基準について
(2)乳等の殺菌基準について
(3)乳等の種類別分類について
(4)乳等の容器包装の基準について
(5)その他
4.出席委員: 小川益男、熊谷進(部会長)、品川邦汎、清水誠、伏谷伸宏、丸山務、山本茂貴
  事務局: 尾嵜食品保健部長、石井基準課長、高谷監視安全課長、滝本課長補佐、他2名

○事務局

 大変長らくお待たせをいたしました。定刻になりましたので、ただいまから薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会を開催いたします。本日は御多忙のところお集まりをいただきまして誠にありがとうございます。現時点におきまして、11名中6名の委員の先生方に御出席をいただいておりますので、当部会は成立しておりますことを御報告申し上げます。
 なお、塩見委員、鈴木委員、山崎委員、三森委員につきましては、本日所用のため御欠席、小川委員につきましては、後ほどおいでになられると聞いております。
 それでは、開催に先立ちまして、尾嵜食品保健部長より一言ごあいさつを申し上げます。
○尾嵜食品保健部長
 食品保健部長の尾嵜でございます。先生方にはお忙しい中、お集まりをいただきましてありがとうございます。本年の4月に諮問させていただきました乳及び乳製品の規格基準の改正について、7月に最初に御議論をいただき、また8月には工場を視察していただきまして、御議論をいただく際に大変有意義なことであったと思っております。
 本日は、脱脂粉乳の製造基準の設定等について御検討いただきたいというふうに考えております。御承知のとおり、雪印乳業による食中毒事件の際にいろいろ問題が指摘された中身でございますが、よろしく御審議いただきますようにお願い申し上げます。
 それと、本日はあわせまして、最後に御報告という形でございますが、十分お聞き及びでございましょうが、BSEにつきまして、9月10日に疑いのある牛が発見されまして以降、およそ1月半あるいは2月に近い時間が過ぎてきたわけでございますが、その間、緊急的な対応ということで、種々、農林水産省、厚生労働省ともに対策を講じてきたわけございます。そういった内容につきまして、御報告をさせていただきたいというふうに考えておりますので、御意見をいただければありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局
 それでは、熊谷部会長、よろしくお願いいたします。
○熊谷部会長
 それでは、議事を進行させていただきます。先生方には御協力のほどお願いいたします。
 本日は、この議事次第に沿って順次議事を進めたいというふうに考えています。まず、配布資料の確認を事務局の方からお願いいたします。
○事務局
 それでは、本日用意させていただきました資料について御確認をよろしくお願いいたします。
 まず、議事次第としてとじたものがございます。4枚ほどあろうかと思います。それから、資料1−1脱脂粉乳等の製造基準についてということで、調査結果の取りまとめたもの、それから、資料1−1−2製造工程のフロー図のサマリーでございます。それから資料1−1−3、これは委員限りでございますが、個々の施設の製造工程フロー図、今回、アンケート調査をいたしまして、33施設のものすべて網羅をしております。それから、資料1−1−4といたしまして、これも委員限りとさせていただいておりますけれども、8月の末に現地調査をいたしました2工場の概要につきましてまとめております。それから、資料1−2ということで、品川先生から御提供いただきました「生乳中の黄色ブドウ球菌の汚染実態に関する資料」をおつけしてあります。資料1−3ということで「黄色ブドウ球菌の毒素産生に関する資料」、毒素産生の温度等についての資料でございます。それから、資料1−4につきましては、「脱脂粉乳の製造基準の考え方」、あくまでもたたき台ということでございますけれども、事務局メモをつけさせていただいております。資料2−1といたしまして、これは加熱殺菌基準に関する部分の資料でございますけれどもアメリカの殺菌基準制定時の資料と、資料2−2といたしましてコーデックスの食品衛生部会に提出されましたガイドライン、資料2−3といたしましてQ熱リケッチアによる危害(文献調査)の概要、資料2−4といたしまして低温殺菌牛乳の自記記録温度計のチャートをつけております。それから、資料3は種類別分類の資料でございますが、コーデックスにおける乳等の種類別分類についてというものでございます。資料4といたしまして、容器包装の基準についてということで、これまで例外承認をしたもののそれぞれのデータをつけております。
 それから、資料5として、これはその他の議題になろうかと思いますが、『「ナチュラルチーズ」の定義について』というものです。それから、資料6以降につきましては、BSE関係の資料として、資料6−1、6−2の2部をつけさせていただいております。
 以上でございます。
○熊谷部会長
 全部ございますでしょうか。それでは事務局の方から、まず第1の議題であります「脱脂粉乳等の製造基準について」の御説明をお願いします。
○事務局
 それでは、資料に基づきまして、1つ目の議題でございます「脱脂粉乳等の製造基準について」について説明をさせていただきます。
 前回の部会におきまして、この脱脂粉乳の製造基準を今後検討するに当たって、現在の我が国における脱脂粉乳の製造工場においてどのような管理がされているのかということを詳細に議論をした上で検討を進めようというふうになされたところでございまして、その御指摘を踏まえまして2種類の調査を行いました。
 1つは、アンケート調査ということでございまして、全国で40弱ほどの脱脂粉乳の製造工場がございます。数も限られているということもございますので、それらのすべてについて、温度管理の状況を中心にどういうような工程で製造されているのかということについて調査をいたしました。
 もう一つは、実際の工場視察ということでございまして、これにつきましては、北海道の2つの工場について委員の先生方に御足労をいただいて、現地調査をしていただいたということでございます。
 まず、1つ目のアンケート調査の結果につきまして概略の御説明をいたします。
 資料1−1でございますが、「脱脂粉乳等の製造基準について」というタイトルがついておりますけれども、脱脂粉乳の製造工程における実態調査についてということで、今年の8月に調査を行いました。社団法人 日本乳業協会の方に調査をお願いしたわけでございますが、調査票によるアンケート方式で実施してございます。平成11年時点で全国に脱脂粉乳の生産工場数、これは牛乳乳製品統計から抜粋した表を資料1−1の下の方に載せておりますが、中央あたりの「脱脂粉乳の生産工場数」という欄を見ていただきますと、平成11年時におきまして、39施設ほどあるということでございます。今回調査ができましたのが、このうちの33施設ということになります。割合にいたしますと85%の施設について調査をすることができたということでございます。
 次を開けていただきますと、製造工程全体の概要でございます。各製造工程における平均品温及び稼働時間を一覧表で載せております。工程をごらんいただきますと、大きく分けますと、1から17ぐらいまでの工程に分かれるということでございます。生乳を受入れいたしまして、冷却をいたします。その後、タンクに貯めまして脱脂粉乳でございますから、まず生乳中から脂肪分、すなわちクリームの部分を取り除く、分離をする工程が必要になります。その分離をする際に加温、温めなければいけないという工程が入ります。大体50℃ぐらいに加温をしておりますけれども、4番目でございますが、加温工程がございまして、その後、分離というのはクリームを分離する工程でございます。その後、冷却をいたしまして、一旦貯乳をいたします。
 次に余熱を行った後に殺菌工程に入るということでございます。殺菌後、乾燥して粉にするわけでございますけれども、そのために濃縮という工程がございます。これは水分を飛ばして脱脂乳を濃縮する工程でございます。その後、12番の工程では、一旦濃縮乳という形で貯乳をいたします。その後、乾燥、冷却、粉にして袋に詰める、基本的には、こういう工程に行われております。それぞれ工程が省略されるというケースもありますので、それは後ほど個々の工程について御説明をいたします。その主な工程の品温を見ていきますと、受入れから生乳の貯乳までは、大体4℃から6℃ぐらいの範囲内で保たれているということでございます。それから、クリームの分離の工程では平均で50℃、最も低いものだと28℃、最も高いものですと70℃、あるいは80℃ぐらいというケースがございますけれども、大体それぐらいの温度帯でクリームが分離をされるということでございます。その後、一旦冷却をされまして、平均ですと9℃ぐらい、高いものですと21℃ぐらいに置かれるというようなケースもございました。その後、余熱をかけて殺菌がされます。殺菌は大きく分けて2つあるようでございますけれども、ローヒートで加熱をするような場合とハイヒートで加熱をするような場合、これは品質の違いによって2つを使い分けているというような工場もございました。その後、濃縮工程に入りまして、12番の濃縮乳貯乳の工程に入るわけでございますけれども、この工程にまいりますと、大体平均で44℃ぐらいの温度帯に置かれるということでございます。一番低いものですと、10℃台ぐらいのものがあったということでございますけれども、これはごくまれなケースでございまして、多くは40℃ないし50℃で貯乳をされるというような実態が浮かび上がりました。その後、加温をして乾燥工程に入って、粉にしてタンクに詰められるということでございます。
 ちなみに、その稼働時間につきましては、それぞれの工程について平均と最少時間・最大時間を載せておりますが、これはあくまでも、その工程が動いている時間ということで御理解をいただきたいと思います。例えば、分離工程を見ますと、23時間という時間がありますけれども、これは分離機が23時間連続して動いているということで、この中で乳が滞留しているという意味ではございませんから、そのあたりは、また後ほど個々の工場の調査票の中で説明をさせていただきたいと思います。あくまでもこれは稼働時間という整理をしております。
 下のグラフはそれを折れ線グラフで示しております。一般的に黄色ブドウ球菌が増殖できる可能性、あるいはエンテロトキシンを産生する可能性のある10℃から46℃までの時間帯には、この脱脂粉乳という製品につきましては、クリーム分離における加温の段階で1回通過をする。それから、それが終わった後の冷却で1回。それから、殺菌までの段階でもう一回。それから、殺菌が終わった後の濃縮の段階での貯乳等でもう一回。乾燥工程に入るまでに、こういった工程の中で黄色ブドウ球菌が増殖できる機会があるということでございます。
 それから、資料1−1−2でございますが、脱脂粉乳の製造工程における実態調査結果ということで、こういうような工程でありますということをまとめております。基本的な工程は工程の1というところで、これはすべての工程が網羅をされている例でございます。受入れ、冷却、貯乳をし、加温分離、冷却、それから脱脂乳の貯乳、予熱、殺菌、濃縮、冷却、濃縮乳の貯乳、加温、乾燥、冷却、貯粉、充填、すべてのメニューがそろっているのは工程の1ということでございまして、具体的には6つの工場がこのような工程をやっていたということでございます。工程2、工程3につきましては、例えば受入時の冷却を貯乳のタンクの中で同時にやっているというような点が違うということでございます。工程4、工程5につきましては、受入れてすぐに貯乳をしている。受入時に十分冷却をされておりますので、特段その冷却工程がないというようなものでございます。それから、濃縮後の冷却も特段やっていないというような例でございます。工程6、工程7、工程8についても、それぞれの貯乳の工程がないというようなパターンのものも幾つかございました。
 それから、次を開いていただきますと、工場数として一番多かったのが工程の9という工程でございまして、8工場がこれに該当するものでございます。受入れ、冷却、貯乳等々加温から濃縮までと同じですけれども、濃縮後の特段な積極的な冷却を行わずに、そのまま貯乳を行うというようなケースでございました。
 少し変わっておりますのは、工程の13、工場番号でも13のものでございますけれども、これは原料乳を生乳ではなくて、ほかの工場から殺菌済の脱脂乳を受入れまして、それで製造するというものでございます。したがいまして、加温分離の脱脂の工程がないというパターンのものでございました。受入れて冷却して、タンクに入れてすぐ加熱殺菌に入って、濃縮をして粉にする。そういうような形態のものがございました。
 次の6ページにまいりますと、これも少し変わっていますが、これまでの工程はすべてクリーム分離をした後に加熱殺菌をする。その後に濃縮・貯乳をするというパターンでしたが、これは先に殺菌を行った後に分離をするというようなものでございまして、2つの工場がこういうような形式で行っておりました。受入れをいたしまして、貯乳し、すぐに予熱、殺菌工程に入りまして、冷却をして、その後分離をする。その後の濃縮工程については同様でございます。このような工程のものもございました。以上が33工場の全体の概略ということでございます。
 それから、全体の説明ではなかなか個々のラインの流れがつかみにくいと思いますので、それぞれ個々の工場における代表的な製造工程の御説明をしたいと思います。
 次の資料1−1−3をごらんいただきたいと思います。工場No.12を開けていただきます。これがすべての工程が入っているという例でございます。少し乳の流れを中心に御説明をしたいと思いますけれども、まず、生乳を受入れます。(1)のところでございますが、受入時の品温は大体2℃から10℃の範囲内で管理をしているということでございます。受入時の検査の後、冷却で1℃から5℃ぐらいまで温度を落としてタンクに貯めます。タンクにおける管理温度は5℃以下ということでございます。このタンクにおける貯乳の時間は標準で24時間、最大でも72時間以内で完了しているということでございます。
 その後、分離工程に入るわけでございますけれども、まず加温をします。この工場の場合ですと、40℃から44℃で加温をしてクリームの分離をいたします。クリームの分離をいたしまして、脱脂乳になった状態のものを冷却いたします。この4番から6番までの工程が大体3分ぐらいで乳が流れる、すなわち、乳が加温の工程に入ってから冷却のところまでにかかる時間が大体3分ぐらいであるということでございます。冷却が終わったものが貯乳をされます。この工場の場合ですと、これが20℃以下での管理という話になります。これは出し入れ専用タンクというふうに書いておりますが、このタンクの中に常時入ってきて、それからタンクから常時出ていくというような構造になっております。そういうような構造のタンクでございまして、それを20℃以下で管理をしておりまして、そのタンク中に乳がある時間が最大で20時間ということでございます。それから、予熱をかけ殺菌をし、濃縮に入り、冷却をいたします。殺菌はこの工場の場合ですと、125 ℃から130 ℃で20秒間の条件で行います。濃縮工程では87℃で入ってきて61℃で出ていく。この工程が大体15分ぐらいで通過をする。その冷却されたものがタンクに貯まります。濃縮乳という形でたまります。このときの品温が29℃から33℃、これも同様に出し入れ専用ということでございますが、タンクの中に乳が貯まっている時間が最大22時間ということでございます。その後、加温工程に入りまして、乾燥工程、冷却工程に入ります。この部分が大体1分程度で行われるということでございます。その後、粉にして充填をされるということでございます。
 それぞれの工程の中で出てきた回収乳、パイプの中にある乳でありますとか、あるいは工程が終わったときに出てくる乳でございますけれども、これらの回収乳については、この工場におきましては、冷却、貯乳の工程の中から回収されてきたものを4番の加温工程のところに戻すということを行っております。このときの回収時の品温が30℃ということで、30℃の状態でどのぐらい保持されるかということですけれども、保持時間といたしましては、回収後、即冷却するということでございまして、恐らく冷却のプレートにかけて冷やすのだと思いますけれども、3℃から5℃ぐらいまで冷やすという管理をしておるようでございます。冷えたものを4番の工程の中に入れてくる。そういうような工程を行っております。
 あといくつか代表的なものを御説明したいと思います。3番の工場を開けていただきますと、これは実は8月の現地調査のときに御視察をいただいた工場でございますが、たしか2日目の工場だったかと思います。生乳の受入れをいたしまして、ここの工場の場合ですと、6℃から10℃で管理をしている。冷却をいたしまして貯乳し、貯乳時は5℃以下で管理します。その後、加温をいたしますが、この工場の場合ですと55℃で加温し、分離をし、冷却をいたします。この4番から6番目までの工程の中では、2分12秒間で乳が流れるというシステムになっております。その後、貯乳をいたしますが、先ほどの工場の場合ですと20℃という貯乳の温度でございましたが、この工場では8℃以下での貯乳を行っております。予熱をかけまして、殺菌をし、殺菌時の条件は115 ℃4.8 秒ということでございますが、その後濃縮をします。これにかかります時間が2分程度でございます。
 それから貯乳でございますが、この工場では45℃から50℃の範囲の中で、6時間の貯乳を行います。濃縮には貯乳のタンクを2基持っておりまして、6時間置きに一方のタンクを空にしてもう一方のタンクを使う。6時間経ちますと、またそちらのタンクを空にして、別のタンクを使うというような管理をしていたと思いますけれども、そういうにような管理をしております。その後、加温、乾燥いたしまして、粉にして袋に詰めるという工程でございます。それぞれの工程で出てきた回収乳につきましては、回収されてきてから冷却をし、それぞれの工程の中に戻すというようなことを行っております。
 それから、24番を開けていただきますと、これは非常にシンプルな工場でございまして、受入れ、冷却、貯乳をいたしまして、その後の工程におきましては、タンクに貯めるという行為を全く行っていない例でございました。この工場では定期的ではなく、不定期に脱脂粉乳を製造しているということでございますが、生乳を受入れて、冷却をして、貯乳をした以降、加温分離、予熱、殺菌、濃縮、乾燥、冷却、充填に至るまで連続をして行って、その間、タンクでとどめるということはないというような工程でございまして、この工程すべてを入れても25分間程度で、その処理が終わるというような工場でございました。
 それから、13番を開けていただきますと、これは殺菌済の脱脂乳を受入れるところでございます。工場No.13番、ページ数でいきますと20ページということになりますけれども、殺菌済の脱脂乳の受入れをいたしまして、当然クリームの分離工程はないということで、受入れてタンクに貯めて加熱殺菌し、濃縮をするということでございます。このケースですと、8番の濃縮乳の貯乳の段階で品温が47℃から53℃のもので最大14時間、これも出し入れ使用を行っているということでございます。
 あと1つ、26番になりますが、これは殺菌後にクリーム分離をするといった例でございました。これも非常に変わった例でございますが、受入れ、冷却をし、貯乳をし、予熱をし、殺菌をした後に冷却、分離、これは40℃から45℃の間で分離し、その後濃縮をするというようなケースでございます。このような工程で脱脂粉乳を製造している工場もあったということでございました。大体、今御説明したようなパターンのいずれかで脱脂粉乳が製造されているということが明らかになりました。
 それから、資料1−1−4でございますが、8月30日、31日にかけまして先生方に製造工場を視察していただきました。先生のお名前が抜けておりまして申しわけございません。1日目、2日目と丸山先生に視察していただいておりますので、追記をさせていただきたいと思います。
 8月30日、31日に北海道の方に調査に参りました。別添1を開けていただきますと、工場の概要ということでございますが、脱脂粉乳の工場ということでございまして、この工場におきましては、加熱を2種類分けておりまして、ローヒート、これは80℃ぐらいですけれども、それからハイヒート、120 ℃ぐらいて加熱殺菌をする2種類の脱脂粉乳を製造しているということでございました。殺菌温度が低いとたんぱく質の変性が少ないということで、そういう品質のものが求められる場合にはローヒートで製造するというような説明があったかと思います。
 工程につきましては、先ほど御説明したような工程でございますが、この中では、次の43ページ目の(4) でございますが、これは殺菌前のクリーム分離後の貯乳で19℃以下で最大20時間、これも出し入れタンクを使っているということでございますけれども、こういうようなことが見られました。それから、殺菌後における濃縮乳の貯乳は、30℃±2℃で最大20時間行われているということでございます。これも出し入れ専用で行っていたということでございます。
 それから、44ページにまいりまして、もう一つの2日目の工場でございましたが、これの工程については、ここに書いてあるとおりでございます。原料乳の受入れをいたしまして、分離をいたします。プレート加温で55℃に加熱をいたしまして、分離をするということでございまして、その後の貯乳は8℃以下、24時間以内で管理をしているということでございました。
 回収乳等の再利用につきましては、ここでは濃縮乳を回収してきて、あるいは粉になったような状態のものも回収をしている。これは外包装の破損、中身に問題はないけれども包装不良等のものをもう一度溶かして、製造ラインに戻すというようなことがございました。殺菌、濃縮をいたしまして、濃縮乳の貯乳につきましては、45℃から50℃で6時間以内の管理をしているということでございます。これはタンクを2基設けて6時間おきに切りかえているというようなことでございました。
 以上がアンケート調査と現地調査の結果でございます。
 それから、一通り資料の方を御説明させていただきたいと思いますが、前回の部会におきましても、生乳中の黄色ブドウ球菌の汚染状況について一部の文献について御説明をいたしました。健康乳から得られた生乳についても一定の頻度で黄色ブドウ球菌に汚染されている、毒素を産生する黄色ブドウ球菌に汚染されているという文献の御紹介をさせていただきました。今回それに加えまして品川委員の方から資料の御提供をいただきましたので、説明をさせていただきます。
 これは、品川先生の方で調査をしていただいた結果でございますが、46ページの序論の下から2つ目のパラグラフにございますが、「今回の調査では、酪農家から生乳出荷過程でのS.aureusの汚染状況を把握するために、コールドセンターへ搬入される各集乳ローリー車別の生乳、さらに各農家別に出荷される生乳(バルク乳)中のS.aureusの検出・定量を行い、汚染状況を調査をした」ということでございます。それから、それぞれのエンテロトキシンの遺伝子の検出も試みられたということでございます。
 その結果でございますが、これは表の方で御説明をした方が良いと思いますが、48ページ目にまいりますが、集乳ローリー乳からの黄色ブドウ球菌の検出状況でございます。これはタンクローリーで複数の農家を回って乳を集めてきて、その最終のタンクローリー内で黄色ブドウ球菌が検出されるかどうかということを検査されたものでございまして、平成12年12月と平成13年1月8日ということかと思いますが、この2回にわたって検査をされておられます。検体数は平成12年12月については42、平成13年1月は41のローリーから検体が得られたということでございます。その結果、12月のもので6検体(14.3%)、1月のもので41検体中3検体から黄色ブドウ球菌が検出されなかったということでございますが、その他のものについては、黄色ブドウ球菌が検出されたということでございます。12月の検体ですと、そのうちの半数、50%のものが1ml当たり101から102までのレベルの菌が検出されているということでございます。また、102から103のものについては10検体、103以上のものは0であったということでございます。1月の検体についても同様の傾向が得られておりまして、101から102までの範囲の中で41%程度の検体から菌が検出されているということでございます。また、1検体だけ103を超えるものもございました。
 これを農家別の乳で見ますと、それぞれローリーの番号が書かれておりまして、例えば、ローリー番号で4番、No.9031というローリーでございますが、ここは12の農家から乳を集めているということでございまして、農家単位で見ますと、検出されない農家、この場合、一番上のものですと、12農家中の8農家ということが言えるかと思いますけれども、3分の2は検出されない。残りの3分の1について黄色ブドウ球菌が検出される。そのレベルを見ると100から101までが3検体、それから103から104までの検体が1検体あり、結果的にこれらのものが混合されてローリーに入ってまいりますので、ローリー全体が先ほどの表で示すような汚染状況になるかと思います。この中の17番については3農家ですけれども、これは幸い3農家とも検出されなかったということでございます。農家単位では、半数以上はマイナスなのですけれども、一部のポジティブの農家から乳が集められてくる結果、全体として混ざってしまうというようなことになろうかと思います。
 50ページ以降につきましては、検出された黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンの遺伝子型・毒素型の調査をMultiplexPCR法というエンテロトキシンのGあるいはH、I、遺伝子もあわせて検出できるような方法で検査をしていただいた結果でございます。この結果につきましては、52ページにございますが、b型、h型、あるいはg型とl型とかいろんな遺伝子パターン、いろんな組み合わせのものが検出されているということでございます。
 以上が黄色ブドウ球菌汚染状況に関する今回追加になった資料ということでございます。資料1−3もあわせて御説明をさせていただきます。これは出典が食中毒菌の制禦ということで、黄色ブドウ球菌の増殖能及びエンテロトキシン産生能について抜粋したものでございます。温度帯につきましては、上の表にございますが、至適温度としては40℃、エンテロトキシンを産生する最低の温度が10℃、最高の温度が46℃という範囲でございます。
 それから、ブドウ球菌の発症の毒素量につきましては、かなり古いデータでございますが、このような量が文献として出ております。昨年の雪印の場合ですと、これよりも低い量、少ない量で発症しているということがございましたので、これより低い量でも十分食中毒の原因になり得るということでございます。
 また後ほど、製造基準の議論の中に出てこようかと思いますので、あわせて雪印乳業の食中毒における原因究明調査結果の中で、黄色ブドウ球菌の増殖とエンテロトキシンの産生の温度、時間帯に関する実験が一部行われておりましたので、それについて御紹介をさせていただきます。
 57ページを見ていただきますと、何回か条件を変えて繰り返し実験をしております。培養温度を20℃、30℃及び40℃に設定し、0時間、3時間、4時間、6時間、7時間の培養時間で、菌数がどのように推移をするのか、あるいはエンテロトキシンが検出されるのかということを調査した結果、やはり至適温度であります40℃での培養が最も増殖スピードが速い、あるいはエンテロトキシンの産生までの時間が短いということでございました。資料中央付近の2回目という実験の3番目、40℃培養という中で6×102あるいは6×103の菌を添加をして、脱脂乳の、この場合は乳剤でございますが、その中で菌がどのように増殖しているのか、エンテロトキシンがどの段階で検出されるのかということでございますが、103の黄色ブドウ球菌を添加をしたものですと、6時間後に0.3ng/mlのエンテロトキシンが検出されております。
 一番短い時間では、どの時間でエンテロトキシンが検出されているのかということを見ますと、一番最初に行いましたのは、これは初発菌数として105の黄色ブドウ球菌を添加しております。その場合はエンテロトキシンが3時間で検出されるということでございます。しかし、現実の汚染の状況から勘案すると大体102、あるいは101、あるいは103ぐらいかと思いますので、その汚染レベルにおけるエンテロトキシンの産生条件を見ていきますと、58ページにまいりますが、4回目の黄色ブドウ球菌添加実験における表の上から2番目98−2−7の40℃のものを見ていただきますと、3.6 ×102の添加で6時間後、あるいは3.6 ×103で同じく6時間後にエンテロトキシンが検出されている。30℃の条件では12時間後になって始めて検出されているというような状況でございます。また、その2つ下のNo.30という菌株についても40℃、6時間でエンテロトキシンが検出されているというような実験がございます。同様に5回目の、これは少しボリュウムアップをした溶液を使って試験をしておりますけれども、同じく102あるいは103の添加で40℃、6時間でエンテロトキシンが検出されるというようなことがわかっております。これが黄色ブドウ球菌の毒素産生に関する資料の概略でございます。
 以上でございます。
○熊谷部会長
 どうもありがとうございました。膨大な資料ですけれども、今の資料の御説明で、まず御質問がありましたらお願いします。
○丸山委員
 品川先生の実験についてお伺いしたいんですが、調査を2回おやりになって、いずれも冬なんですが、夏の成績はあるんですか。
○品川委員
 今、四季に分けてやっているところで、ブドウ球菌の汚染は大体同じような感じで、少し菌数が上がるかなというぐらいです。ある程度ベースとして冬でもブドウ球菌はあるのかなと思っておりますけれども、少し夏の方は高くなります。
○丸山委員
 それと、エンテロトキシンの量なんですが、定性試験でタイプを細かくやっていらっしゃいますが、定量的には、おやりになっていらっしゃるんでしょうか。
○品川委員
 まだ菌体ごとに産生するたんぱく毒素の方というのはきちんと定量していなくて、菌がどういう遺伝子を持っているのかということを調べております。多分g、iについても少しやっているんですが、gとかiというのは、遺伝子としてはエンテロトキシン産生する遺伝子は持っているのですが、たんぱく発現としては非常に少ないということです。ここにもエンテロトキシンaとかbとか、あとc、eの遺伝子を持っているものは、数マイクロぐらいは毒素を産生、0.5 から数マイクロぐらいは産生するというのはあるのですけれども、g、h、iの辺は遺伝子は持っていても、毒素産生としては非常に少ないと。
○丸山委員
 ローリーによっては、菌数の多い、104というのも若干ございますね。ローリーの段階でのエンテロトキシンの産生は、菌数が多ければエンテロトキシン産生をしているということの並行性はあるのですか。
○品川委員
 やはりエンテロトキシン産生するというのは、増殖という過程が必要で、多分こういう菌数が多いというのは、乳腺炎、我々は乳房炎と言っているのですけれども、乳房炎のような疾病のものが入り込んできていると思いますので、菌数が104のときに直接その中にも毒素があるかというと、それは毒素として産生されていないだろうなと思っています。
○丸山委員
 ローリーは搾乳してからの時間が割合短いので、菌数が多いからといって、時間が経過して途中で増えたというわけではないですね。そう理解した方がいいですね。
○品川委員
 はい。搾乳後の増殖ではなくて、そういう病気なり、もしくは非常に汚染の高いものを搾ったという方が一般的であります。
○丸山委員
 ありがとうございました。
○小川委員
 今のに関連して、このデータは盛岡の近くですか。
○品川委員
 主体はそこですけれども。
○小川委員
 一般に乳房炎そのものは、臨床型にしても潜在型にしても、夏、発症率が有意に高くなる。ただ、それがブドウ球菌によるかどうかちょっと記憶がないのですが、かなり地域によって発生率が違うがあるということで、地域の問題が気になるのですけれども、その点が1つと。
 もう一つは、先ほどの事務局の御説明で1−1−3でデータが出てきていますが、例えば50℃前後における保持時間は、工場によってかなり違うわけですが、一番長いのは何時間ぐらいになるのか、その点がちょっとフォローできなかったんですが、もし整理してあったら教えていただきたい。といいますのは、今1−3で殺菌温度と保存時間の関係の御説明があったわけですが、これは夏の方がちょっと多いということで、103の菌を接種した場合における毒素産生時間のデータは記載されていますが、104位を接種した場合に、一体どうなるのかということが心配になるものですから。どの辺が安全かということを推論する1つのポイントになるおではないかということで教えていただきたいのですけれども。
○品川委員
 乳房炎に地域性の問題があり夏になれば乳房炎の発症率は上がる、これは事実ですけれども、乳房炎イコール、すぐそれが搾乳されて出回るかというとまた別問題です。搾乳しなければいいことだし、そういう指導というのはどこも皆やっていると思います。そういうことで、夏場になれば乳房炎なりの懸念があれば、搾乳前に検査をしてから搾乳しなさいという形になっている。
○小川委員
 日常的にそれがはっきりわかる場合は違うでしょうね。
○品川委員
 一応しぼる前にPLテスターなり、ストリップカップ法で検査しなさいということは指導していて、それでも中には、こういう高い菌数が検出されるところがあるというのは、多分そういうのが1頭なり紛れ込んだのかなと思っています。菌数が高い農家では、そうでないとこのぐらい菌数は高くならないと思います。確かに乳房炎なりは、もちろん地域性のものはあると思います。
 しかし、成績として岩手は比較的全体のレベルから見れば高い方だということで積極的に取り組んでいるし、北海道はもう少しいいという話は聞いています。事実、データを見せてもらう限りは、北海道の生乳の方がもう少しいい。
 それと、需要との関係もあると思います。乳がたくさん必要なときにはどうしても無理してしぼるから、悪い乳も入ってくるという形で、需要との関係のバランスで、こういうものは高くなったり低くなったりすることは少しあると思いますけれども。
○事務局
 あと工程中の温度と時間の関係と思いますが、資料1−1を用いて御説明させていただきますと、資料1−1−1の2ページ目の下の方にグラフを書いております。工程をずっと見ていきますと、脱脂粉乳の製造工程の中では大きく分けて2か所、この黄色ブドウ球菌の増殖帯を通過する部分がございます。
 1か所目は殺菌前のクリームの分離工程でございます。クリームの分離という性質上、どうしても40℃から50℃の付近で行うのが一番効率的に行われるようでございますけれども、そこで一旦加温するケースがございます。これが1つ目の山のところでございます。
 それからもう一つは殺菌後でございますが、濃縮乳を貯める貯乳の段階でございます。このグラフは時間的なファクターを入れておりませんので、それぞれの時間についてどのような感じになっているかと申し上げますと、クリームの分離以降、最初の段階ですが、ここはほとんどの工場で連続式に行われております。具体的に言いますと、1分とか2分とか、最大でも3分程度だったと思いますが、乳が連続して貯乳のタンクから加温されて分離工程を連続的に流れていく。したがって、乳そのものは50℃付近を数分以上保持されることはないということでございます。分離された以降、冷却をされますけれども、それも同様連続的に行われるようでございます。それから、殺菌前の予熱も速やかに熱が加わりますので、ここで滞留することはないということでございます。
 それが1点と、滞留する可能性のありますのは、殺菌後の貯乳、濃縮乳の貯乳の段階でございます。この貯乳の段階は、今回調査したものでも、ほとんどが40℃とか50℃ぐらい、まさに黄色ブドウ球菌が増殖をしやすい温度帯に保持されて貯乳をされております。その理由について二、三聞きましたところ、この濃縮乳の貯乳の段階で温度を低くすると、濃縮乳中の乳糖が結晶化をして製品にならない。逆に高くするとメラード反応という反応が起こって、脱脂粉乳の色が黄色くなってしまう。見た目よくないので、この40℃から50℃ぐらいの付近で濃縮をするのが一番品質的には良いということで、この温度帯が採用されておるようでございます。その時間帯でございますが、ほとんどのところは出し入れ形式と申しますか、一方から入れて、一方から出すというような形で、そういう状態で、例えば20時間だとか、24時間だとかというふうに保持されているケースが一方でございました。最短は数分で出てくる可能性もありますが、そのタンクの中でどういうふうに滞留しているかによっては、殺菌後の乳が40℃、50℃でとどまってしまうというようなケースも考えらないことはないということでございます。一方では、時間単位で管理をして、例えばタンクを2基設置しておいて、6時間おきに一方のタンクを空にして、6時間後のもう一方のタンクに入れかえるというような形で管理をしているところもございました。
○小川委員
 大分個々に違うデータがあるんですが、その点で心配になるようなことはされていないわけですね。現在の製造方法で。
○事務局
 そのあたりが、次の製造基準のところでどういう基準を設ければ、去年起こったような事故が今後二度と起こらないかというような御議論になろうかと思います。
○品川委員
 ちょっと聞き漏らしたのですが、濃縮乳というのは何倍ぐらいまで濃縮していましたか。普通の牛乳の何倍ぐらい濃縮して濃縮タンクに入っていましたか。というのは、普通の牛乳に比べて濃縮すれば水分活性はどうしても低くなってくるから、毒素産生の適温に保存されていても、牛乳と比較すると少し毒素産生が悪くなるかなという気がしますけれども。何倍ぐらいまで濃縮されたものがタンクに入っていましたでしょうか。
○事務局
 生乳に比べて一般的に4.5 倍から5倍ぐらいです。
○品川委員
 生乳から見てですね。脱脂された後、普通が10%ぐらいの割合で、50%ぐらいと考えれば、水分活性が少し下がるのかなと思いますけれども、濃縮乳の冷却、貯乳のところは、毒素を産生する温度帯に結構入っているのですね。
 個々の管理も必要になろうかなとも思いますが。
○伏谷委員
 今のに関連してちょっとお尋ねしたいのですが、例えば、103とか、104ぐらいの菌を含んだ生乳が入ってきて、それから最後に出るところまで、どういうふうになるかというのはシミュレーションできないのですか。
○品川委員
 それがある程度、ここに図が出ている。
○伏谷委員
 こういういろんな条件を加味しながらシミュレーションを実施するというのはどうなんですかね。いろいろなことが考えられると思うんですが、いろんなファクターが入っているのだと。
○事務局
 ミニプラントを使って原料乳に黄色ブドウ球菌を接種し、どうなるかというのを調べようと思えば調べられないことはないと思いますけれども、実際の工場でやるわけにはいかないんです。工場を汚染してしまうという話にもなりますので。ただ、適切なプラントを使えるようなところがあれば、そういう補完的なデータというのはとれるかもしれません。
○伏谷委員
 結構思わぬことが起こってくる可能性がありますね。さっきおっしゃったようにさっと流れるわけではなくて、液体ですから、いろいろな動き方をしていると思いますし。
○品川委員
 特に資料1−1の2ページ目のところは、先ほどから説明がありますように、基本的には、普通にいけば殺菌のところで菌は全部死んでしまうはずなのです。濃縮、冷却、貯乳というのは、本当は菌がいないはずなのですけれども、もしいるとしたら2次汚染があるということであって、1次汚染の問題は大体この辺でみんな消える、特にブドウ球菌の1次汚染であれば、問題はなくなるであろうということは考えられます。だから、ここの温度が高いということは、2次汚染を余り考えないから、保存温度も高くなっているのではないかなと思います。まだ、ここで菌が生きているのだったら、こんな温度に保存すること自体が、平均でこれぐらいの温度というのはちょっと高過ぎるという感じがします。
○清水委員
 先ほど伏谷先生が言われたように、最初にいる菌がどこでどういうふうに挙動しているかは非常に重要な問題だと思うのです。先ほど分離のところで機械自体は二十何時間動いていて、ミルクの通過時間は3分ということですけれども、連続遠心ですから、クリームと脱脂粉乳が分かれていきますけれども、菌みたいなものは、下手するとその辺で沈殿みたいな格好で周辺にとどまっていくという可能性はないのでしょうか。
○事務局
 遠心分離をしてクリームの部分と脱脂乳の部分、それからスラッジと呼ばれる汚物みたいに粘調性が高いものが出ます。その部分には、当然、菌がとどまる可能性はあるのですが、それが定期的に分離機から排出をされるということと、そのスラッジが乳に混ざるということは、機械の構造上考えにくいという説明は工場側がしておりました。実際に工場を視察したときに、コンタミの心配をしたのですが、そこは構造上少し考えにくいのではないかという説明はありました。
○熊谷部会長
 他に何かありますか。
 特に工場No.12なのですけれども、加温と分離のところで、今のお話にもありましたけれども、これはダクトとか、その内部の部分ですき間とか、鋭角になっている部分がないかどうかというのは非常に気になっているのですけれども、それについては何か御存じですか。
○事務局
 特段、詳しい構造とか、機能については承知しておりません。そのあたりも機械の構造とか、あるいは管理の仕方についても、少し資料を集めたいとは思っておりますけれども。
○熊谷部会長
 それから、品川先生にお聞きしたいのですけれども、先ほどお話が出ましたけれども、最低毒素量で発症する量というのは人でどのぐらいなのですか。
○品川委員
 この前の雪印乳業の食中毒における検査データは数十ngです。けれども、毒素の回収量等がきちんわからない。今までのレポートの報告では100ng/人というのが、論文になっているぐらいかと。この前の雪印のときには数十ngぐらいまでは検出されていますが、これは検出された数字がそのまま記載されていて、回収量とか検査法に問題がありますから、その辺から考えると、もう少し毒素量は高かったのかなという感じはします。
○熊谷部会長
 もしそうだとしますと、58ページの40℃の培養条件で、6時間目のエンテロトキシンが1.0 とか2.0(ng)という記載がありますけれども、これを100ml 飲むとやや危ないという感じになるわけですね。58ページの添加実験における真中くらいに40℃で培養もので、6時間目に毒素が検出されたものがあるのですが。
○品川委員
 そうですね。1ng/ml ということは、そのまま100ml 飲めば一応なるのではないかなというのは。
○熊谷部会長
 そうしすまと、培養時間3時間で毒素は検出できないとありますけれども、検出リミットはいくつぐらいなのですか。
○品川委員
 今のキットからいくと、やはり0.1ng/mlで、もし検出しようと思えば、そのサンプルの抽出、濃縮でどのぐらいまでできるかです。要するに抽出濃縮方法にかかわると思いますけれども、きっとそのままミルクを検査するとしたら、1ngとかそのぐらいがミニマムの量だと思います。
○熊谷部会長
 それでは 、例えば最初に3.6 ×102を添加した場合に、3時間目に5.6 ×104になっていますね。それから、2オーダー上がってエンテロトキシンの量が1.0(ng) 、その前はエンテロトキシンを検出せずなんですけれども、それから104から106までさらに100 倍ということは104が100 個あるのです。つまり、104の100 倍を言いかえて言っているのですけれども、106になりますと、104個が100 あるわけです。それが3.6 になっているわけです。エンテロトキシンの総量はつまり3倍ちょっとになっているわけです。そうすると、それを下の方に伸ばしていくと、3時間目というのは検出せずだけれども、かなり1.0 に実は近いのではないでしょうかという疑問があるのですが。
○品川委員
 これは、1つは細菌の増殖カーブのところになる。対数増殖期に入るのか、摂取してすぐ増殖を始めるんだったら、今の考え方は成り立つますけれども、誘導期という問題があるから、どうしても最初というのはタイムラグといいますか、ラグフェーズがあるから、対数増殖期も、エンテロトキシンが入ってきたものがすぐ増殖を始めて毒素産生するとしたら、104個のものがそういうデータになるわけですね。
○熊谷部会長
 既に3時間で102から104になっているわけです。
○品川委員
 102個から3時間で104個になるわけですね。
○熊谷部会長
 遅くとも2時間目からは増殖が始まっているだろうと。多分もっと早い時期だと思いますけれども。
○品川委員
 増殖カーブとエンテロトキシン産生が全くパラレルにいくのだったら、1回分裂したら毒素が出るという形。毒素産生から見れば、少し増殖カーブに遅れて立ち上がるというのは、菌が増殖して、毒素産生のメカニズムになるんですけれども、全く分裂と毒素産生がパラレルにいくのだったら、1回分裂すれば毒素がいくらか出てという形になりますけれども、遅れて少し産生するというのは、グロスカーブに遅れて毒素産生があるというような形かもしれません。
○熊谷部会長
 6時間では少なくとも十分発症できる毒素量がつくられている。そうすると問題は、どこまで大丈夫なのかしらということですけれども、初期菌数が103ですと、3時間目でも0.5 くらいには、もしかするとなっているのかなと。そうすると、例えば200 ml、育ち盛りの子どもは1リットルとか500 mlとか飲みますのでその時間帯も危ないのかなと。
○品川委員
 菌数的には、一般に今までの食中毒というのは、105 個というのが1つの目安で言われている。食中毒を起こす人の菌数のバロメーターはミニマムが105 個と言われていたのですね。今、104個のところは、検出感度を上げるとこの中に毒素がないということではないだろうなと思います。もっと抽出させていけば、0.0数ng/ml位の毒素はあるかもしれないし、その辺ははっきりしませんが。
○熊谷部会長
 40℃で培養しますと、菌数3.6 ×103から3時間で5.3 ×105 になるわけですね。それからさらに3時間経つと、毒素量が2ng/ml になるわけです。そうすると、安全を見越すと3時間は危ないというふうに思っているのですけれども。
○品川委員
 ブドウ球菌というのはすべてのブドウ球菌が、食中毒の菌株の毒素産生実験をやっているときには毒素産生のいい菌株を持ってきているわけです。だから、そういう一番いい条件のものがたまたま入ってきて、こういう条件を考えていけば、先生の言われるように、そこまで全部懸念するのか、先ほど言ったような生乳中にいるブドウ球菌のエンテロトキシン産生は実際には少ないんです。遺伝子を持っているのも少ないし、だから、今のその辺を最悪の条件を考えれば、エンテロトキシンAは一番食中毒が多くて、毒素産生のいいものがあって、増殖もいいということになれば、それを100 mlとか200 ml飲むということで考えれば、3時間というのは起こり得るかもしれない。だから、どの辺までを考えるか。そういう現実というのは、当然エンテロトキシンA産生のものを、そんなと言ってはあれだけれども、ほかのに比べたらちょっと少ない。毒素産生のこんないい菌株も、そんなに牛乳中にはないということになるんですけれども、その辺で非常に難しいのは、菌株側の増殖の条件、毒素産生の条件、いろんなファクターがかかってきた中で、総合判断をせざるを得ないのかなというのがある。
○伏谷委員
 一度産生された毒は強いわけですね。それがこの工程で最後まできて、途中濃縮といういうファクターが入りますから、何ミリ飲むとかそういうものではなくて、できたものは最初の何リッターとか、何キロリッターから濃縮されたものということになるわけです。ですから、その辺も考えなくてはいけない。
○熊谷部会長
 ただ、最終製品は濃縮されているかもしれませんけれども、それを飲む段階になるともとに戻しますので、もとの濃縮で考えて。
○伏谷委員
 それは大体同じぐらいの濃縮ですか。
○品川委員
 大体9.何倍ぐらいの濃縮じゃなかったかな、普通の牛乳からみれば。9.何倍ぐらいの脱脂粉乳で、脱脂粉乳を大体10%近くで溶かせば、もとのたんぱく濃度になってくると。

○熊谷部会長

 ほかに御質問ありますか。
 それでは、御説明いただいた資料につきましては、一応御質問はないようですので、先に進ませていただきます。
 資料1−4に事務局が用意してくださったたたき台がありますので、まずこれを御説明いただけますでしょうか。
○事務局
 これは製造基準の案ということではなくて、製造基準を御検討いただく際に、こういったところを中心に御議論いただければということで、あくまでたたき台という形で、今回行いました実態調査の結果、あるいは諸々のデータ等も踏まえると、こういうふうな管理が検討の素材として上がってくるのかなということでございます。
 製造基準の前提に際してなのですが、前回も別のデータをつけさせていただきましたけれども、今回、品川先生のデータもつけさせていただきました。脱脂粉乳の工場に入ってくる原料乳、これについては健康の牛の乳からも黄色ブドウ球菌が拾えるという事実からすると、この時点でシャットアウトすることはなかなか現実的には難しいのかなと。そうすると、原料乳段階での黄色ブドウ球菌の汚染を前提とした上での対策が必要になってくるのではないか。汚染ありきという中で、それを製品の中にエンテロトキシンという形で残さないためのことを考える必要があるではないかというのが1つ目に書かせていただいた点でございます。
 それから、脱脂粉乳の製造工程中で、どの工程が問題になるかということですが、これは乾燥してしまった後は、水分活性の関係で黄色ブドウ球菌を増殖できないし、毒素も産生することができないであろうということからすると、受入れから乾燥工程までの工程、そこの工程における温度と時間、この管理が重要であるというのが2つ目でございます。
 いろいろ実態調査を見ますと、やはり脱脂粉乳の工程の中では、先ほど申し上げました分離の工程のところと、濃縮の貯乳のところ、これは製造上、必要不可欠な工程として黄色ブドウ球菌が増殖し得る、あるいはエンテロトキシンを産生する可能性がある10℃から50℃で保持されるということがございますが、これら必要不可欠な部分以外を除けば、原料乳受入れから乾燥工程までの工程においては、10℃以下あるいは殺菌工程ですと50℃以上というような温度帯で保持をするべきではないかというのが3つ目でございます。
 製造上、必要不可欠な工程の1つでありますクリーム分離工程、これは4番目に挙げておりますが、この工程につきましては、製造実態を見ますと、すべて連続式で行われておりまして、その通過時間も1分ないし3分程度ということでございますから、この工程については、連続して乳が滞留することのないよう管理を行うことというのが、実現可能性のある基準として置くことができるのかなというのが1点ございます。
 それから1つ飛びまして、6番目でございますが、加熱殺菌後の濃縮乳、これを10℃から50℃の範囲内でタンクに貯める場合の管理の方法でございます。ここはいろいろ御意見があろうかと思いますが、1つは殺菌後でございますから、殺菌がうまく行われていれば、黄色ブドウ球菌の汚染は考えなくてもいいわけでございますが、殺菌後に2次汚染が何かの手違いであったときのことを考えた対策として、2次汚染があった場合でもエンテロトキシの産生に結びつかないための対策として、この時間がいいのかどうかいろいろ御議論があろうかと思いますが、1つの案として、先ほど雪印のデータなども6時間ではエンテロトキシンが出るということですから最大限6時間を超えて貯乳されることのないよう管理をすること。例えばタンクを2つ設置して、一方のタンク6時間貯めていれば、6時間を超えた段階でもう一方のタンクに切りかえる。あるいはタンクが1つの場合は、6時間で一旦工程を切っていただく。一旦タンクを空にしていただいて、CIPをかけて、またタンクに入れるというような方法が1つ。これは2次汚染があっても、ホールスセーフというのですか、手違いがあってもエンテロトキシンの産生にならないという安全をかけている。
 それからもう一つは、ここの工程は基本的には殺菌後の工程ですから、しかも閉鎖系で行われている工程ですから、その閉鎖系が完全に担保されていればいい、外部からの2次汚染、特に細菌汚染がないような閉鎖系で管理を行うということを基準として設ければ、その予防になるという考え方もあろうかと思いますので、(2)外部からの細菌がないよう閉鎖系で管理を行うことというのがあるのかなと。ほかにもいろいろ視点、ポイントがあろうかと思いますけれども、1つのたたき台として御議論いただければということで用意をさせていただきました。
○熊谷部会長
 これは製造基準を設定するときにどういう考え方に基づくかという、その考え方ですね。
○事務局
 したがいまして、1番目、2番目は製造基準の中には入らない。具体的な製造基準ということになると3番、4番、5番、6番。5番は説明し忘れましたけれども、殺菌工程、これは一般的な殺菌工程を載せております。こういった基準が製造基準としてあるのかなということでございます。
○熊谷部会長
 このような基本的なスタンスですが、御意見いただきたいと思います。
○小川委員
 1番目の1行目の対策が必要であるということは、製造のことだけではなくという意味ですか。製造基準とは1、2は余り関係がないということですか。
○事務局
 製造基準を考えるにあたって、原料段階、受入れ段階で黄色ブドウ球菌の汚染が排除されれば、特段それ以降、黄色ブドウ球菌に着目した管理対策が必要ないと思うのですが、そこは避けることができないという前提で工程の中での対策、黄色ブドウ球菌によるエンテロトキシンの産生がないという対策が工場の中で必要だということでございます。
○伏谷委員
 今の点に関係してですが、この工程表で抗生物質を使っているところは幾つかありますね。例えばナンバー3の工場。
○事務局
 これは原料乳の受入れの段階で抗生物質が残留していないかどうかということをチェックする、調べるという意味でございます。
○伏谷委員
 3.5 時間と書いてありますので。
○事務局
 調べるのに3.5 時間かかるという意味です。
○伏谷委員
 どうしてこんなところに使っているのかなという気がしたのです。わかりました。
○品川委員
 6番目のところが、この前の事件ではクローズアップされたのです。2次汚染の問題ですが、クローズドでありながら現実にはそこがオープンになるということは、どうしてもフィルターを替えたりする現実論があって、そこでの汚染の問題がある。むしろ、この前の事件では、本当に問題があったという確証はとれていないけれども、どちらかというと問題があったのではないかと思われる。この2次汚染をどうするかという問題は非常に難しいところではあると思います。
○山本委員
 1番、2番のところですけれども、これは一応製造基準に入らないということなのですが、2番の受入れまでの温度管理について、それを超えた場合に拒否するというような項目を加えることはあるのでしょうか。そういう管理の仕方もあるかと思いますが、それをやったときに、経済的な問題をクリアできるかどうかがありますけれども、そういうことも1つ考え方としてはあるのではないか。
○事務局
 それは結果として、食品衛生法、乳等省令上の基準として入るのか、あるいはその他のところで担保していただくのかということも含めて、部会の報告としてはすべての項目を網羅したいと考えておりますので、こういったことも当然その中に含めることは可能だと思います。
○熊谷部会長
 工場No.12ばかり言って申しわけないのですけれども、この工場の貯乳の最大20時間20℃以下、こういうのが避けられるような基準がいいと思いますけれども。
○事務局
 これは恐らく3番で言っております。製造上、必要不可欠な工程を除き、10℃から50℃で保存することを避けなさいと。ここで12番の工場で行っておりますのは、殺菌前の分離後の貯乳でございますから、他の工場をみると、ここの冷却は10℃以下の温度でやっております。恐らくここは熱効率の関係、またその後加熱するものですら、そういうことも考慮しているのかもしれませんが、ここのところは、我々とすれば、製造上、必要不可欠な工程ではないだろうという判断をしております。ですから、ここのところは10℃以下にしなさいというのが、この3番のところで言えるのではないかというふうに考えております。
○山本委員
 その観点からいけば温度もそうですけれども、時間も6時間にするのか3時間にするのかで、2時間だったら20℃以下でオーケーなのかとかそういう考え方も、温度時間は両方を考えなければいけないと思いますけれども。
○丸山委員
 もう一つよろしいですか。6番に関連してなんですが、回収乳のことについては何か決めなくてよろしいでしょうか。というのは、私も工場を視察させていただいて、私が節穴なのでしょうけれども、見るとどこも全然悪いところがないのですね。こうでこうでと言われると、大変きれいにやっているなと、こういう感じなのですが、どうもひっかかるのは回収のところです。本当に閉鎖系で全部やるのかということでいきますと、現実どうも無理ですよね。ですから、閉鎖系でやるのは望ましい。原則はそうかもしれないけれども、現実的でないとすると、回収乳の扱いというものを少し考慮した何かを規定せざるを得ないのかというふうに、特に現地へ行って見て、そんな感じがいたしました。
○事務局
 実際どのようにやられているのかは別にしまして、一応今回のアンケート調査の中では、回収乳は、例えば濃縮乳タンクから回収する場合は、40℃とか50℃の微生物の増殖にいい温度帯で貯乳をしているものを回収してくる。そのような場合は直ちにプレートにかけて10℃以下に下がるように管理をし、そこで次に製造ラインに戻すまでの時間を貯乳した後、戻されるというような管理をほとんどのところがやっておりますので、回収乳については直ちに10℃以下に冷却するというようなことも、この基準の中に具体的に盛り込めればというふうに考えております。
○品川委員
 12番というのは、回収乳は回収乳タンクのところに戻るのでしたか。回収乳の矢印は冷却、貯乳された乳がもう一回回収乳タンクに戻って保存された後、加温されてここに流れてくるという形ですか。
○事務局
 恐らくここには記載されていませんが、冷却、貯乳工程から30℃の回収乳を回収してきて、冷却プレートで3℃から5℃まで直ちに落として、それを回収乳タンクの中に入れて、貯乳時間は最大72時間という管理と思います。
○品川委員
 そうですね。そういう形で今度使うときに、ここに合乳していくという形でしたね。閉鎖系で行うというのはなかなか難しいですものね。閉鎖系で実際に汚染のないようにというのは、確かに回収乳の問題のところというのは、どのぐらい規定できるのかということになるのでしょうけれども。ロスをなくすためには、工場をストップするときにどうしても回収乳は利用しなければならない。6時間というのも、6時間を超えてはならないとすると、タンクはどうしても2つぐらいは用意しないと、1つのタンクで1回使ってまた洗ってというわけにはなかなか工場側ではできないのかなという感じで、このとろの決め方というのは確かに難しいなという気はしますけれども。
○小川委員
 品川先生、10℃以下の場合のことを書いていないのですけれども、ブドウ球菌は、10℃以下では絶対エンテロトキシンは出さないと見ていいのですか。
○品川委員
 これまでの報告なりを見ると10℃以下ではエンテロトキシンの産生はストップするという形になっています。
○小川委員
 増殖はしますよね。
○品川委員
 増殖はもうちょっと低いところでもします。さっきもあったのではないですか。
○小川委員
 そうすると、貯乳時間は最大72時間なので、貯乳の間に増殖した菌がその後温度が上がったときには、急に菌数が増えて例えば3倍とか5倍になるので、元の菌数が多ければかなりの量が出てくるわけですね。
○品川委員
 最低で増殖する温度は5℃から8℃といったのは、今の問題は抜きにすれば5℃以下で保存するというのを、本当言えば、増殖もストップさすのが一番いいところではあるわけですね。増殖を許しておいて、毒素産生はどうだ、全くしないのかといわれたって、このデータが古いから、必ずしもその証拠というのはなかなかないから。増殖をストップすることはまず必須ではあるような気がするのです。今までのやり方としては、毒素産生の有無というのは、アッセイ系との問題がありましたから、どうしても古いデータは検出感度以下でしたらマイナスという形になっているけれども、今はどこまで検出できるのか。そういう面からこのデータの1−3の資料を見ると、5〜8℃で増殖するということであれば、増殖をストップするためには、これ以下のところというのは1つあるかなという感じはしますね。
○小川委員
 そのチェックとしては、データがあるかないか知りませんが、貯乳時間を何時間とするか、温度を制御するとか、いろいろな方法があると思いますが。
○品川委員
 5℃以下にしたら相当影響というのはあるのですか。濃縮乳のところは何か言っていましたね。乳糖か何かが結晶化すると。10℃以下だったらどうですか。
○事務局
 そこは10℃くらいでもうだめだと思います。濃縮乳の貯乳のところは、40℃から50℃ぐらいがほとんど必須の条件のような現状です。
○熊谷部会長
 製造基準でほかの乳、それから乳製品で、殺菌後のこういう基準というのはものがあるのですか。製造基準というのは、基本的に製造基準を守れば何してもいいという話ではないと思うのですけれども、つまり2次汚染とかそういうのはどういうふうに位置づけるかという。
○事務局
 2次汚染を前提とした上での製造基準というのは、これまでつくられていないと思います。逆に言えば、今回の事件のインパクトが大きいものですから、完全にその再発防止を担保するためには、少しの過ちでも安全な方に落ちるような製造基準ということで今回案を出させていただいているのですが、これが法律に基づいて罰則の伴う基準として設定するのが妥当かどうかというのはいろいろ御議論があろうかと思います。あるいは業界からの意見もあろうかと思います。
○小川委員
 殺菌後の問題としては、脱脂粉乳の保存の問題がもう一つあると思うのだけれども、これはまた別に考えるのですか。
○事務局
 粉になった状態では、他の危害はあるにしても、黄色ブドウ球菌の増殖の機会はないだろう、したがって、そこでエンテロトキシンが出てくる心配はしなくてもいいのかなと思っております。
○小川委員
 例えば工場の倉庫等で温度が急変した時、私、文献で読んだことがあるのですが、部分的に水分量が高くなって、その部分だけ菌が増殖するというような話だったと思います。
 もう一つの問題は、購入後の家庭における取り扱いですね。これは製造基準ではないと思いますが、よく家庭では袋をあけて冷蔵庫に入れておくと、安心して、これは粉だからいつまでも大丈夫だと思いがちですが、1か月も2か月も置いておくと、私も経験していますけれども、かなり菌が増えている例があるのですね。製造基準ではないけれども、家庭に届いた場合の注意事項として、フォローをするかしないかですね。
○事務局
 脱脂粉乳の製造基準はまだないのですが成分規格は既に設定をされておりまして、その中に水分規定もございます。水分は5%以下という規定がありますので、現在でも5%以上を含むような、これは局所的にあったとしても、そういうような製品は乳等省令でストップをかけることができます。
 それから家庭における取り扱いについては今後そういった点を普及していく必要があろうかと思いますけれども。
○小川委員
 殺菌後の問題ということがちょっと出たものですから。
○熊谷部会長
 これは10℃から50℃という範囲と、それから6時間というのをどうするかというのは難しい問題ですね。厳密に言えば、先ほど、どなたかから御意見をいただいたように、各温度で時間が違ってくるのだと思うのです。だけれども、それを示すに足る豊富なデータがあるかどうかという話が一方であって、そういうのは簡単に覆されてしまうということも余り本質的なことではありませんけれども。そうすると仕方ないというか、現在できる範囲といいますと10℃から50℃で、この6時間というのをどういうふうに、これは2次汚染の仕方によって、先ほど言いましたように、3時間でぐっと増えてしまうという、つまり毒素がつくられてしまうという可能性だってあると思うのです。
○品川委員
 雪印乳業食中毒のインパクトが強いというのは、2次汚染があって、なおかつ高温に保存されていた。高温といいますか、適温といいますか、そういうところに保存されていたというアクシデントが2つかかわっている。2次汚染という、そこでブドウ球菌が入ってきたアクシデントと、それがまた停電が原因で、またそれだけ長期間保存されていた。ここまですべてを考えて基準をつくるのか、ある程度その辺というのもこの基準の作り方の考え方で必要だけれども、資料1−1でみる貯乳は、先ほど小川先生が言われたように、私としては本当に確証がとれない限りは、10℃以下というのではなくて、グラフのところの1−1の2ページ目に貯乳というのがありますが、保存のところでこのぐらいできているならば、この貯乳というのはもうちょっと低いところでやるべきではないかという気はするけどね。多くのアンケートの結果では、プラマイの高いところでは10℃ぐらいですか、貯乳では20℃をしているところもある。この貯乳はもう少し低くすべきだと、ここはちゃんと規定すべきだろうと。
 その前の分離のところで50℃上がっているから、少しは菌はダメージを受けているけれども、それにしても冷却、貯乳というのは、この温度はもっと低く。増殖を考えて増殖しない温度ぐらいまで必要なのかなという気がしますけどね。今、増殖温度と毒素産生の温度が違っているから。10℃以下は、菌は増えるけれども、毒素産生しないのですか、全くないのですか、それをまた濃縮するから大丈夫ですかと言われたときに、それらの確証というのはなかなかとれないのではないか。そうすると増殖を許さなければ、貯乳の時間が、ここで貯乳というのが工場の平均が13℃、ちょっと高いですよね。アンケート調査の成績から見ていくと、この辺をきちんと規定しておく必要があるのかなという気はしますけど。
○熊谷部会長
 濃縮乳の貯乳の平均は44℃です。
○品川委員
 濃縮乳ではなくて、その前の分離後の貯乳。濃縮というのは、先ほどいいますように2次汚染の問題で考慮しているわけであって、その前の貯乳です。
○熊谷部会長
 分離後の貯乳は、10℃から50℃を避けるわけですから。
○事務局
 ですから、10℃以下は求めようと思っていますけれども、品川先生は10℃よりも5℃以下という。
○品川委員
 というぐらいのところにしないと、10℃というのは、極端に言うと8℃だったら菌は増殖しますよと。10℃から50℃ということは入っていないから10℃以下はいいですよということになるわけですね。8℃だったらうちはいいですよということを許すのか許さないのかということと、8℃だったら菌は増殖するという温度帯で。
○熊谷部会長
 1週間も2週間も置かれると確かに困りますね。
○品川委員
 時間帯としてはどのくらいでしたかね。最高120時間というのがあることはある。貯乳のところで120時間というのが。これが今の実態のところの成績。これ自体も平均して高いことは高いですものね。13℃だからね。
○事務局
 温度で管理をするか、時間で管理をするかのいずれかというふうに思いますが。
○品川委員
 実際に搾乳なり、時間の管理になると非常に難しいと思いますね。時間というのは、農家との連携というのを考えると、自社でコントーロールできない部分を、継続的にやるとすると、むしろ温度で管理すべき方が工場の中で、自分でやれるという形になるから、時間よりは温度の方がいいような気がするけれども。
○熊谷部会長
 ただ、エンテロトキシン産生は最低10℃と書いてありますね。
○品川委員
 先ほど質問があったけれども、本当に10℃以下は菌が増殖しても大丈夫だ。このデータというのは古いデータをこのまま載せられているから、先ほど言ったように、10℃以下は菌が増殖しているけれども、本当に毒素は産生していないのですかと。
○熊谷部会長
 最低5〜8℃ですよね。これは多分方法によって違うのだと思うのです。
○品川委員
 増殖する温度がね。
○熊谷部会長
 こういう温度帯でどのぐらいの速度で増殖するかですね。
○品川委員
 遅れるのは遅れるけれども。
○熊谷部会長
 120 時間というと3日間ですか。もっといっている。5日ですか。5日というのと結構増えるかもしれないですね。
○事務局
 これはあくまで最大数のところで、常に工場でもそれだけの日数を置いているというわけではありません。
○小川委員
 103が入ってきて3日、遅いとは思います。3日間あるとかなり菌数は増えますね。
○熊谷部会長
 現実、4℃というのは難しいんですか。
○小川委員
 製造からいくと難しいと思います。
○清水委員
 これを見ますと、5℃以下でやっているところもありますね。
○品川委員
 結構あるのですね。そこの貯乳はできるのではないかという気がするのだけれども、分離後の貯乳のところはできそうな気がする。
○熊谷部会長
 分離後、4から5℃以下というのがありますね。工場No.11にあります。
○事務局
 やれるところがあるぐらいですから、やれと言われればやるのでしょうけれども、やらなきゃいけないという理屈を、科学的なデータを最低限示してやることが必要ではないかという感じがします。
○熊谷部会長
 これは恐らくどのぐらいの時間でどのぐらい増えるかというグロスカーブがどこかにあると思いますので、それを見て判断するというふうに、それで3日で何オーダー上がるか言っていただくとありがたいのですけれども、つまり何オーダーまで許せるか。3日間で、例えば1オーダー上がるのは許されるような。
○山本委員
 それはもとの菌数によるんですけれども。
○熊谷部会長
 105 から106、毒素をつくるのは増え方という話です。
○山本委員
 その菌数だと思いますので。
○熊谷部会長
 そこから増えたという説明をいただきましたので。どのぐらいのグロスカーブになっているかというのはちょっと調べてみたいなとわかりませんので。ですから、かなり横ばいになっていたら、その温度でいいだろうという判断に当然なるわけですね。そのかなりが、1オーダーぐらい上るのはいいかというのか、それとも・・・。

○品川委員

 生乳を受入れるときに102/ml で、そして分離したときに少しかもしれなくて、それも102で、そこで104、2オーダーぐらいか。105 というのは今までの食中毒の1つのパラメーターだった。105 を認めるわけにはいかないような気はするのだけれども。
○熊谷部会長
 10の10倍の菌数増加だったら許せると。
○品川委員
 それは多分そのぐらいは増えているから、5℃から8℃という線が出てきていると思いますね。横ばいではないです。事実データがあるということは増えているという形だから、そこで何オーダーで、今のように初発菌量がなんぼの実験をスタートして、10個でやったのか、100 個でやったのかによってまた違うこともある。せいぜい2オーダーぐらいではないかと。
○熊谷部会長
 毒素の産生が同じ10倍といっても、105 から106に上った場合と102から103、しかも、それはグロスカーブの同じところをとった場合、比較した場合にどうかという話。
○品川委員
 増えたってちょっと遅れてくるというならば、102からなったとしても遅れてスタートするというのだったら、やはり対数増殖期の中ごろからは急激に毒素も立ち上がると考えれば、5℃〜8℃でグロスカーブがどういうような形になって、時間との関係になるのでしょうけどね。3日ぐらいというのは対数増殖期に入っているのか、その辺で。
○熊谷部会長
 対数増殖期に入る前だったらよろしいと、そういう話になりますか。
○品川委員
 入口を検査すれば考えられるのではないか。
○熊谷部会長
 そんな調子のいいデータがあるかどうかわかりませんけれども、一応グロスカーブのデータを少し調べて、次回にそれも同時にお示しして、ここの部分を何℃に設定するかということも次回までに、事務局と座長で相談して用意して次回にお示ししたいと思います。
 それからその他の点につきましては、この事務局メモに回収乳の部分がありました。回収乳の部分を加えた形で考え方を整理させていただくという、つまり、回収乳のこれも時間と温度ですよね。
○丸山委員
 閉鎖系で全部できないのであれば、何かの対策というものをしなければいけないのではないか。

○熊谷部会長

 製造基準というのはどこまで示すのかということにもなるのだと思いますけれども、丸山先生の言われたのは、例えば取り扱いとか2次汚染を防ぐ手立て、そういうのも製造基準の考え方の中に盛り込んだ方がいいだろうと、そういうお考えですか。
○丸山委員
 そうです。というのは、回収乳での本当のラインだけでやっていたらばほとんど事故が起きないだろう。やはり1つは、回収乳の扱い方ということでの問題というのが雪印のときにも指摘されていたわけです。ですから、そこが今の事務局提案の6番の中に何も入っていない。どこかで読めるのかわかりませんけれども、きちんとそういうものを、項目を挙げて回収乳対策というものをやった方がいいだろうというのが、具体的にどうしたらいいかというところまで今ここで提案できないのですけれども、回収乳対策というものを盛り込むべきだろうということです。
○品川委員
 それは今ここで外部からの細菌汚染がないよう閉鎖系で行えばいいんだよということを書いたけれども、閉鎖系というのができないとすると、違ったものに変えなければいけないかということなのですね。
○丸山委員
 実際の工場を見させていただいて、閉鎖系というのは全部それをするというのは無理というような感じがしたものですから、例えば1つの工場では、粉乳になったものをこっちの方まで持っていってやっているわけですね。そんなのは閉鎖系でできるわけではないので、そういうことも含めて考えた方がいいだろう。より現実的に考えた方がいいだろうと、こういうことです。
○熊谷部会長
 それでは、今の御意見も含めた形で製造基準の考え方というタイトルに報告書はなるのですか。製造基準を設定にするに当たっての・・・。
○事務局
 製造基準設定に当たっての部会の報告という形になります。ですから、その報告書の中から製造基準にピックアップするもの、あるいは、そのほかの指導要領でやるもの、前回の腸炎ビブリオと同じようなイメージでの報告書を考えております。そんな感じでまとめて、より網羅された報告書にしたいというふうに考えています。
○熊谷部会長
 ということでよろしいですか。
○品川委員
 ここの考え方の中の3番以降が製造基準のようなものにできるかどうかということなんじゃないですか。3番、4番、5番、6番ぐらいに考え方が示してあるけれども、こういう書き方で製造基準というのはこういうことをしなさいよという形に、考え方としては。今6番のところが、これではどうもできないとすると違ったものにするか。そのとき2次汚染まで認めることを入れて考えるか。我々の部会として、2次汚染はありき、ブドウ球菌も汚染することが頻繁に起こるとするならば、それをここにきちんと入れておかなければいけない。2次汚染は当然注意しながらやっているという考え方をとっていくならば、事故は確かに起こったという事実があるけれども、あれはアクシデントのアクシデントが2つ重なっているものであって、それまで考慮したものにするかという考え方だと思いますけれども、そこを部会としてはどこに合わせるか。汚染があったときは、さらにセーフティーをかけるために6時間というのをもう一回かけている話ですよね。もしあったとしても6時間では、それも10の何乗個の汚染というのは、大量にどかっと汚染は/mlですから、そんな汚染はないだろうなと考えたときには、この6時間というのは一つの線ではあるかなと思うけれども、製造基準にそれまで全部入れて作るか。
○熊谷部会長
 雪印乳業の事故のときには、2次汚染の汚染源は何ですか。
○品川委員
 フィルター交換のところが一番疑わしい。濃縮乳の1つが目詰まりを起こしたとか、そうでしたね。
○熊谷部会長
 そのときに、その黄色ブドウ球菌はどこ由来なんですか。
○山本委員
 そこが特定できなかったのですけれども、環境由来ではないかという。
○品川委員
 環境由来もあるし、人も当然持っていますから。
○熊谷部会長
 人が持っている場合は菌数が非常に高い場合がありますよね。
○品川委員
 触ってすぐそこに汚染を、しかし、/mlとしたら相当汚染しないと、今までの話は/mlの汚染だから、人が105 汚染したって、タンクでやるといったら、1リッターにしたとしても希釈されますからね。片方は/mlの話で、汚染のときには何個という話だから。
○熊谷部会長
 106とか107とか人の膿はそんなものではないんじゃないですか。
○品川委員
 タンクでしょう。109個で1mlの膿が汚染したと、1億なりの菌が1ml膿が入ったとしても、タンクの中はトンの話になる。トンといったら、mlにしたら10の何乗個になるのか、それで割っていけば、/mlの話になるのだけれども、そういう可能の問題もあるかもしれないけどね。
○小川委員
 閉鎖系の一番難しい問題は、フィルターが詰まって交換する時ではなかったですか。
○山本委員
 あの場合は開放系です。
○小川委員
 もう一つの工場は、開放系にしないで取りかえることができたのではなかったですか。良く考えてやっていしたね。ちょっとその方法は確認して頂きたい。何かトラブルがあったときは開放系にして処理しなきゃならないでしょうけれども、何もなければ開放系にしないでできるわけでしょう。
○品川委員
 こっちに回すときには、これはパイプのつなぎもやらなければいけないのではないか。回収乳をやるときには、パイプはつなぎ直すから、どうしても開放系のところでつなぎ直すのではないのか。
○事務局
 回収乳の閉鎖系は無理だと思いますので、開放系を前提にした管理の仕方というのを求めることになろうかと思います。
○熊谷部会長
 確かに雪印の事故がそういうことであれば、2次汚染を前提にした温度と時間管理、貯乳の部分でこれはすべきだと思いますね。あとは2次汚染の部分を回収乳については何らか言及するということで、そういう方向で先ほどのグロスカーブを含めた形で次回お示ししたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
○小川委員
 あと、ドライヤーの部分ですが、あれはCIPではなく人が機械内に入って掃除するようなことを言っていたと思います。そうすると、ここでの2次汚染は必ずある。だから、これは製造基準ではないけれども、2次汚染があるという前提で保存を考えなければいけないのではないかと思うのです。
○熊谷部会長
 そうしましたら、その部分も含めて製造基準には含まないかもしれないけれども、それもこの考え方の中に含めるということで報告書を準備したいと思います。
 それでは、この件はこれで終わりにします。時間もかなり差し迫っていますので、次の議事、「乳等の殺菌基準について」、これをまず事務局の方から御説明いただけますか。
○事務局
 資料は2−1から2−2、2−3、2−4という4種類の資料を用意させていただきました。前回Q熱のデータを、山本先生のところで行っていただきました厚生科学研究の概要について御説明いたします。
 その中では、諸外国では62℃から63℃、現在は63℃が主流だということで、アメリカも随分以前になるのでけれども、華氏でいきますと143度から145 度に上げたという、その検討経緯の中で、Coxiellaの耐熱性に関する知見をもとに改正をしたということがございます。それのレビューをした文献がございますので、2−1で用意をさせていただきました。これは1990年以前からのアメリカにおける乳の殺菌の変遷を概略したペーパーでございます。
 関連部分につきましては、64ページの括弧に掲げてある部分でございます。原文は字が細かくて読みにくいため、この部分を訳したものを69ページについてございます。具体的には、1950年から1975年の中で、まず1つは、南カルフォルニアで確認された多数のQ熱の感染者はCoxiella burnettiiに汚染された生乳の使用が原因であるかもしれないと示唆をされています。その製造に関する殺菌効果につきましては、一番最後の段落の中で、Coxiellaが生乳中に存在する場合は、華氏143 度(61.7℃)30分の殺菌では生存するかもしれない。調査研究の結果は、殺菌の時間の関係を華氏145 度(62.8℃)30分に増加させることを推奨しているという記載がありました。アメリカはこれをもとに現在の華氏145 度に製造基準を設定しているということでございます。
 それから、最近の国際的な動きでございますが、先々週CCFH、コーデックスの食品衛生部会がアメリカが議長国でやっておりますが、タイで開催されまして、そこに議題の1つとして、乳及び乳製品の衛生取り扱い規範の案が出されております。これはステップがこの時点でステップ3で、審議未了でステップ2に差し戻されております。ステップ的にはまだ初期の段階ですけれども、この中でも乳の殺菌(Pasteurization)についての記載がございましたので、御参考までに資料2−2で出しております。
 この中で、言葉の定義の中で72ページにございますが、Pasteurizationは、どういうことを意味するという記載がございます。一番後段最後の行でございますが、Pasteurization conditions are designed to reduce the number of Mycobacterium tuberosis and Coxiella burnettii by at least a factor of 105 (5乗のレベルをリデュースすることで設定をされなければいけない。その対象菌としては、結核菌とQ熱病原体、Coxiella burnettiiである。)という記載になってございます。
 具体的にはどういう温度帯かというのは、これの77ページ、Process criteriaという記載でございますが、ここの中で連続式のPasteurizationである場合は、72℃で15秒、バッチ式のPasteurizationの場合は、63℃(30分)でやらなければならないということでございます。すなわち言いかえますと、この温度条件では、Coxiella burnettiiも105 のレベルで減らすことができるというふうに読み取れるわけでございます。
 それから現在62℃(30分)でもできるわけですけれども、Q熱を食品から摂取して、実際にQ熱に罹患する可能性があるのかどうかということでございますが、直接それを摂取試験によって示したようなデータはございませんが、疫学的に食品由来ではないかということが示唆された文献が幾つかありました。これは平成5年に熊谷先生のところで、厚生科学研究の中でQ熱リケッチアによる危害の文献調査をいただいたときのサマリーでございます。その中の幾つかから、これはいずれも生乳(生の乳)を摂取していた。そういった集団で抗体が高い、あるいは、集団発生の中で疫学的に生乳が病原体であるということが推定をされたようなケースが幾つかあったということでございました。食品の関与が全くないといことではないのではないかということでございます。
 それから、2−4の資料でございますが、前回、山本先生のところで取りまとめていただいた研究報告の中で、62℃(30分)あるいは63℃(30分)の低温殺菌の市販乳でQ熱の病原体が生き残る可能性が示唆をされておりますが、63℃(30分)の条件のものは、いわゆる通常のバッチ式ではなくて、連続式スパイラルで63℃(30分)きっちりかかっている、前の立ち上げの段階で徐々に熱が加わるような方式ではなくて、4℃あるいは10℃以下からすぐに63℃に上がって、それが30分保留をされているというような条件では、Q熱は完全には死滅しないのではないかというデータでございました。通常どのようなやり方でバッチ式の加熱が行われているのかということを示したのが、2−4のフローチャートございます。これは横軸に時間、縦軸に温度をとった、釜の中の品温のチャートでございます。右の方から左の方に温度が時間的に流れていくという図でございます。このケースで見ますと、65℃(60分)の殺菌を行っておりまして、立ち上げに、このケースですと、大体1時間ぐらいかけて65℃まで立ち上げて、65℃で保持をして、その後冷却をして徐々に下げていくというような加熱殺菌の方法をとっている。山本先生の研究報告の中では、立ち上げのところで20分保っていれば大丈夫だ。15分では完全ではないということでございましたので、このようなケースはそもそも65℃(60分)ですから十分なのですが、立ち上げに1時間ぐらいかけていれば十分と。次のページも63℃(30分)の殺菌ということでございますが、これにつきましても、30分ぐらいの立ち上げの時間をかけている。それから通常のバッチ式であれば、63℃(30分)でもQ熱は死滅するような条件が担保されているのか。2例だけですけれども、そういうことがうかがえるわけでございます。
 実際に検出された例のものを、実際のチャートはなかったのですが、工程を聴取いたしましたところ、3ページ目、82ページに書かれているような製造方法が行われていたということでございます。ここにありますように、真ん中のあたりで殺菌入口・出口というふうにありますが、63℃で、実際は今65℃ぐらいに上げているようでございますけれども、問題になった製品の場合は63℃で1,800 秒、これをきっちり守っている。前の予熱の段階は3分ぐらいですぐ上げて、殺菌後のものも速やかに温度冷却をしているということで、熱量としては、ここの30分間で終わっているというようなものでございました。実験結果からすると、ここを63℃(30分)でやるとQ熱を死滅させるには完全ではないのかなと。ですから、こういったものは従来のバッチ式の方法でやっていただく必要があるのかなということで、御参考までにお出しをしたということでございます。
 資料的には以上でございます。
○熊谷部会長
 ありがとうございました。今の御説明で御質問等ございますか。
 このスパイラル殺菌機でしたっけ、それでやろうとするときは、65℃でやれば問題はないということになるんですか。
○山本委員
 そう考えています。
○熊谷部会長
 この間のデータから。
○山本委員
 ええ。
○熊谷部会長
 そうすると、現行の基準の62℃(30分)又はそれと同等以上という基準を63℃(30分)又はそれと同等以上、バッチ式という言葉は入らなくていいのですか。
○事務局
 基準の中に入れるか、あるいは63℃(30分)の条件として、通知の中で示すかをしたいとは思っていますが、基準の中で示した方がいいのかもしれませんね。「63℃(30分バッチ式)」ということで書いて、そのバッチ式とは具体的にどういうことをいうのだということを解説した方がいいのかもしれません。
○熊谷部会長
 そういうふうに基準を変えるという考え方ですけれども、その考え方につきましては、バッチ式を加えるかどうかというのは、製造基準の文章の中に入れるかどうかはさておいて、今のような趣旨でよろしいでしょうか。このことによって、今現在はほとんど63℃(30分)相当で現状はやっているんですか。
○事務局
 そうですね。問題になった62℃のところは今65℃に上げておりますし、62℃(30分)でやっているのは、今のところないのではないないかと思います。
○山本委員
 私が調査した段階では、実際の表示に「62℃(30分)殺菌乳」というものがあったのです。それは検出されておりますので、やはり62℃30分はまずいのではないかと考えおります。それとバッチ式を基準の中に入れるかどうかは別にしまして、やはり熱量を確保するという意味では、どこかに記載して、そのやり方を採用するような方向でいかないと、きっちり63℃(30分)だけということですと、やはり危険性は残るというふうに考えております。
○熊谷部会長
 それでは、基本的な考え方として、以上のような考え方で進めさせていただきます。この議事につきましては、これで終わりにしまして、次に進みたいと思います。
 乳等の種類別分類について、これも事務局の方から御説明をいただきたいと思います。
○事務局
 資料3でございます。乳等の種類別分類の検討をお願いいたしましたのは、去年の事故の後、農林水産省の方で検討会を開きまして、消費者にわかりやすい分類にすべきだというようなことから、部分脱脂乳を部分脱脂牛乳にする、あるいは脱脂乳を脱脂牛乳だとか、無脂肪牛乳にするとかいくつの提案がされております。それとあわせまして、前回御説明をいたしましたけれども、膜処理乳というような加工で新しい技術が出てきたというようなことも踏まえて、現状の乳の処理技術、そういったものに合うような形で乳等省令上の種類別の分類を再構成してみてはいかがかなということを御説明したわけでございます。
 国際的な動きの中でも、コーデックスで1999年、今回資料3として用意をさせていただきましたが、乳のタームですから乳という言葉の使い方に関する一般規格というのが1999年に既にでき上がっておりまして、このコーデックス規格との整合性という観点からも若干の手直しが必要なのかなということで、今回コーデックスの資料を用意させていただきました。各国によって乳・乳製品の実態は、国々の御国の事情を反映して流通、製造、販売をされておるわけでございますけれども、基本的な考え方はコーデックスの規格に基づいて考えられております。その中で下線を引いた部分ですが、定義の中でまず一番初めにミルクというのが出てまいります。この下線を引いた部分ですが、ミルクというのは、1行目の後ろの方にありますが、「1回あるいは、それ以上のミルキングですから、搾乳で得られた搾乳動物の正常な乳腺分泌物であって、それへの添加またはそれへの抽出のいずれも行わないものであって、液状の乳として消費をされるもの、あるいは、さらなる加工をされるもの」というふうに定義をされております。現在の乳等省令上の牛乳と申しますのは、このミルクがそれに相当するのかなというふうに考えますが、加熱加工用のものについては、現在、乳等省令上で明確な定義がございません。種類別の定義がございません。したがいまして、最近、直接消費用ではなくて、さらなる加工用に殺菌をした乳が用いられるケースがありますけれども、そういったものには規格基準がかからないというようなことになっておりまして、それへの手当が必要ではないかというのが1つあります。コーデックスの中でも、加工乳をそういったミルクの中に包含をして分類をしているということでございます。
 それから、抽出も添加もいずれもしないものが牛乳であるということでございます。最近、牛乳として売られているものには、ほとんどが成分については無調整のものでありましたが、昔は少し脂肪含量を調整した、いわゆる調整乳みたないものがございました。それも牛乳の範疇の中で販売をされておりましたが、このコーデックスの考え方をそのまま準拠すると、何も足さない、何も引かないものが、いわゆる成分無調整のものが牛乳として定義づけられるべきではないかというような考え方にもなろうかと思いますので、そのような考え方で、現状の乳等省令の分類を再考してみる必要があるのかなということでございます。そのほか前回お示ししましたような膜処理乳に代表されるように、原料には生乳100%なのですけれども、その一部の成分を抜いたもの、成分を調整した、これも後ほど下の方の4.1.2 、4.2.1 のあたりで、これもミルクとして呼ぶことができるというふうになっておりますが、そういった調整した乳も1つのカテゴリーとして、今は膜処理乳は加工乳のジャンルで販売されておりますけれども、それも成分を調整した牛乳、その中には、当然従来からあります脱脂乳だとか部分脱脂乳も含まれるかと思いますけれども、そういったジャンルとして整理するというのも1つの考え方かなというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、幾つかの点でコーデックスの規格あるいは現在の製造技術に対応した形での種類別の定義の検討をお願いしたいなというふうに考えております。今回は、コーデックスの資料だけしか用意をしておりませんので、できますれば、先ほどの議題ともあわせまして、次回に少したたき台になるような部会報告の案をお示しできればなというふうに考えております。
 以上でございます。
○熊谷部会長
 御質問あるいは御意見はありますか。コーデックスのいうローミルクというのは、加熱殺菌していないミルクのことですか。
○事務局
 これは4.2.1 にあろうかと思いますが、ミルクの中にもローミルクが当然入るというふうに思います。そういった場合はローミルクとして販売をしなさいというのが、4.2.1 のところで書いてあろうかと思います。加熱殺菌をしない生のミルクということでございます。
○熊谷部会長
 コーデックスのいうミルクというのは、加熱殺菌したものも、成分を調整していないものは全部ミルクと呼ぶわけですか。
○事務局
 加熱殺菌に関する記載は、この用語の中では具体的に出てまいりませんので、そのあたりは不明確な部分はあるんですが、ここも定義の中では何も足さない、何も引かない、直接飲むもの、あるいは加熱加工用のものを含めてミルクというふうに呼ぶというふうになっております。
○熊谷部会長
 それでは、これはよろしいでしょうか。
 特に御異議がありませんでしたら、次の議題、乳等の容器包装の基準について、これは事務局の方からお願いします。
○事務局
 これも今回、資料No.4といういう形で1枚お出しをさせていただきました。乳等省令上は、乳あるいは乳製品を入れる容器につきましても、乳等省令上の中で規定をしているということ。それからその規格に含まれない種類のものについては、個別に厚生労働大臣の承認を受ける必要があることという枠組みの中で、乳の容器について規制を行っているところでございますが、例外承認で一旦承認されたようなものについては、規格化を図るというのが規制緩和推進計画の中で盛り込まれておりまして、現在までにペットでありますとか、ポリプロピレン等について例外承認の実績が出てまいりましたので、今回これを基準化するのをお願いしたいということで、前回こういうような種類のものが承認をされていますという御紹介をしたところでございます。今回はそれぞれのものについて、承認時のデータ、どういう規格をクリアしていたのかということをお示ししたのが資料No.4ということでございます。
 大きく分けまして、1群とか2群とかというふうに書いてあります。真ん中から左ぐらいのところに二重の枠線で示してありますが、「例外承認時のデータ」ということで、1群と申しますのは、下の方の注意書きで書いておりますが、牛乳等々のものでございます。2群は発酵乳、あるいは乳飲料、乳酸菌飲料。限りなく乳の本体の部分と少し嗜好性の高い、あるいは清涼飲料水に近い部類のものというふうにお考えいただければいいかと思いますけれども、2群という形で容器の規制も大きく分けてその2つの種類について規定を設けております。
 1群についての牛乳等の容器につきましては、これまで例外容器として認められておりますのがナイロン、それからポリエステル、ポリプロピレンのものでございますが、これはいずれも内容物に直接接触する部分の材質ではなくて、中間層もしくは外装、容器の外だとか中間層、内容物に直接接触する部分でない部分に使用する合成樹脂について例外商品として認められたケースがあるということでございます。2群につきましては、現在ポリエチレンとかポリスチレンの規格化がされておるのですが、これ以外の材質のものを、今回御検討をお願いするのはポリプロピレンあるいはペット、この2種類のものが例外承認をされておりますので、これについての基準化をお願いして、これは内容物に直接接触する部分の材質ということでございます。
 真ん中に乳等省令上の規格、1群、2群、それから調整粉乳も含めているのですけれども、それぞれについて、こういう規格が現在設けられておりますということと、一番右の方に食品等の規格基準ということで、これは食品衛生法の告示の方で規格を設けております。一般規格と材質別の個別の規格ということでそれぞれ設けております。
 例外承認時のデータということでございますが、1群のものにつきましては、直接内容物に接触する部分ではないというようなことから、一般の告示、一般食品の一般規格あるいは個別の規格に合うような材質のものであれば問題ないだろうという判断のもので、一般の食品の告示にある項目についてデータを提出していただいて、その基準を満たしているということを基本的に確認した上で承認をしております。
 それから、2群のものにつきましても、これは内容物が清涼飲料水に近いような乳飲料等々でございましたので、これにつきましても、少なくとも一般食品の告示の規格項目については検査をしていただき、そのほか付加的に乳等省令でほかの材質で定めているような項目についても追加的に確認をした上で承認をしているというような状況でございます。これにつきましても、今後こういった過去の実績も踏まえて、必要な部分について乳等省令上の基準化を図っていきたいということでございます。
○熊谷部会長
 どうもありがとうございました。という御説明ですけれども、御意見あるいは御質問ありますでしょうか。
 この2群のPET 、それのn-ヘキサンというのがありますけれども、これは乳等省令の方の調整粉乳のところのPET は75になっているんですけれども、これはどういう意味なんですか。意味はないのかもしれないのですけれども、この数値の違いは。
○事務局
 この数字の根拠はすぐ出てこないのですが、調整粉乳ですから、中は固形状のものですから、溶質はさほど問題にならないという観点から、恐らくこのような高い値になっているのではないかというふうに考えております。食品の方では30以下という規定がございます。今回、例外承認のときに認めた際には、これよりもさらに低くて5以下というようなデータがついておるということで、いずれも、食品の告示あるいは調整粉乳は比較になるかどうかわからないのですけれども、それよりも低いデータのもので確認をしたということでございます。
 このあたりにつきましても、部会報告の中に盛り込みたいと思っているのですが、内容的に器具・容器包装の規格ということになりますので、器具・容器包装部会の専門家の先生方に、こういうことで問題ないかどうかというのを器具・容器包装の立場から少し御意見を求めて、確認をした上で報告の中に盛り込んだ形で次回お示しをしたいというふうに考えております。
○熊谷部会長
 お願いします。それでは、これはこれでよろしいですか。それから資料No.5というのは。
○事務局
 これは審議事項の中には入っておらなかったのですが、その後、諮問後に国際的な動きがございましたので、あわせて今回の乳等省令改正の中に御議論いただければということで、ナチュラルチーズの定義についてということで追加的に資料をお出ししております。
 今年の7月にコーデックスの総会がございまして、チーズの定義の改正がございました。現在の乳等省令のチーズの定義はそのままコーデックスの定義を引用してきておりまして、今回このコーデックスのもとになっていたチーズの定義が変わりましたので、それにあわせて乳等省令上の定義を変えるべきかどうかということを御議論いただきたいということで、参考までにお出しをしたということでございます。
 要点は、これまでチーズの定義の中で、原材料のお話も一部あるのですが、特に今回チーズの定義の中で2.1 の(b)にありますが、真ん中あたりに「たんぱく質の凝固」という形で定義が入りました。これまでは単に凝固をしたものでもチーズというふうに呼べる。概観がチーズのような特性を持っていればチーズというふうに呼べるということだったのですが、そもそもチーズというのは、乳酸菌でありますとか、あるいは酵素を用いて乳のたんぱくを固まらせてつくったものがチーズだと。最近そういったチーズまがいのものが出てきたということも踏まえて、コーデックスの場で、チーズというのはたんぱく質を凝固したものなんだと、そういう基本的な考え方に立ち戻って定義も改めるべきだということになりまして、たんぱく質の凝固というのが入ったのが大きな特徴になっております。我が方の乳等省令上のチーズもその下に書いてありますが、二にありますが、乳、バターミルク又はクリームを原料として、凝固作用を含む製造技術を用いて製造したものであって、チーズと同様の化学的、物理学、官能的特性を有するものということで、極端ないい方をすれば、凍らせて固めたものまで含まるような定義になっておりますので、それはチーズの本質あるいはコーデックスでの約束事を踏まえた形での整合性を図りたいんだということでございます。
○熊谷部会長
 恐らく特に問題はないと思いますけれども。
 それでは、そういう方向でお願いします。
 最後になりましたが、BSEの厚生労働省の対応ということで御説明いただきたいと思います。
○高谷監視安全課長
 それでは、9月10日以降、大変世の中騒いでおりますBSE問題について概要を御報告申し上げます。
 資料No.6−1と6−2になりますが、まずは資料No.6−1、経緯でございますが、経緯の方は新聞等で先生方、既に御存じだと思うんですが、9月10日に千葉県で飼育されていた牛がどうもBSEの疑いがあるというのが農林水産省より公表されております。これは大体夕方の6時過ぎだったと思うんですが、私どもが農林水産省から聞いたのは夕方の4時ころに聞いております。この問題については日本で初ということもございまして、国際レファレンス研究所であります英国獣医研究所において確定診断をしていただいていた。それが9月21日に陽性という結果の報告があった。これの公表が9月22日の未明に行われております。
 それ以降の厚生労働省の対応でございますが、ここに書いてございますように、まず9月11日に「牛海綿状脳症に関する研究班」及び「狂牛病に係る食肉安全対策本部」というのを設置いたしました。研究班の方は本年に入ってからつくってある研究班でございますが、これの班会議を開催したのと対策本部を設置したということであります。
 9月19日に第2回の研究班会議及び第2回の対策本部を開催いたしまして、厚生労働省としてどのような対応をするかというのを決定したのが(ア)と(イ)に書かれていることでありまして、ここで打ち出されたのは、14か月齢以上の牛のうち、運動障害、知覚障害、反射又は意識障害等の神経症状が疑われるもの及び全身症状を示すもの全頭について検査をするということと、神経症状が疑われない場合であっても、30か月齢以上の牛については全頭検査をするということが決定しております。
 91ページに入りまして、9月の27日に、これらの件について都道府県の担当課長会議を開催いたしまして、ここでは、1つは、検査をするというふうに決定はしたものの、検査の準備がまだできていないということもございまして、まずは、30か月齢以上の牛にかかわると畜場の使用の一時的制限というのを衛生サイドの方で行った。一方、農林水産省の方では出荷制限を行っている。農水省と厚生労働省が相互を協力してこういう対応をとったと。これは本来検査を受けなければいけないものが、検査をせずにと畜場を出ていくということを阻止しようということの1つであります。
 もう一つは、よく言われております特定危険部位(SRM)については生後12か月以上の牛の頭蓋、これは本来は脳と目でありますが、及び脊髄並びにすべての牛の回腸遠位部を除去して焼却するよう、まずはここで指導を行ったということであります。
 10月3日に至って、スクリーニング検査の開始日を10月18日に全国一斉に実施するよう都道府県に協力を要請した。10月5日には、この後になりますと、新聞紙上等で牛を原料、特に牛の特定危険部位を原料としたような製品、加工食品が世の中に大変氾濫しているのではないかということで、消費者の不安が大分募っているということもございまして、10月5日に牛由来原材料の点検、保健所への報告、特定危険部位の使用又は混入を認めた場合の原材料の変更、当該食品の販売中止を関係団体及び都道府県知事を通じて食品の製造者及び加工者に要請をしたところであります。
 そうこうしておりまして、10月9日に至りまして、消費者の方々とか生産者の方々から、10月18日以降、検査をした牛と検査をしない牛が出てくるということから、検査をしないという牛の取り扱いについていろいろなことが憶測されておりまして、こういう不安を解消するために、スクリーニング検査の対象をすべての牛に拡大する方針をしております。このような検査は、今でも農林水産大臣が言っておりますけれども、世界中で初めてではないかというふうに思っておりますが、そういたしますと、年間130 万頭日本で牛が処分されますが、年間130 万頭の牛の検査を行うということになります。これを受けまして、12日に担当課長会議の第2回目を開催いたしまして、再度全頭検査の実施について改めて周知をしたということであります。この検査そのもの自体は、スクリーニング検査で使う検査法は、エライザによる簡易迅速検査法でありますけれども、少なくとも最低5時間はかかるということから、今までかからなかった時間が検査にかかるわけですので、スムーズな検査体制を実施するという意味からも、計画的な出荷であるとか、その辺のことを生産者サイド、また農林水産サイドと連絡調整をするようにということで、この会議で指示をいたしております。
 それから10月16日には、BSE感染牛の公表時期の話でありまして、これについては、結果の公表ということからすると、スクリーニング検査の時期からやるべきではないかということではあったのですが、実際にはスクリーニング検査でプラスになったとしても、それがBSE感染牛というのを確定診断には至っていないということもございまして、これは確定診断の結果が出た段階で公表する。これはBSEかBSEでないかというのは、確定した段階で公表するということを公表しております。
 こういうことで、10月2日から18日の検査開始に向けて10日間にわたって都道府県のと畜検査員を対象にスクリーニング検査の技術研修を終了したところでありますが、今回導入しておりますスクリーニング検査は、フランスの会社が開発しております迅速検査法でございますが、まだ日本では未承認の体外診断薬でございまして、まだ日本では市販されておりません。したがいまして、厚生労働省がこれを輸入いたしまして、それを全国に配付をするという方式をとっております。承認が下りれば、当然のことながら国内で販売ということはあり得るのですけれども、今のところ、国内での販売はないということでありまして、国が一括して輸入はする。それを都道府県にそれぞれ配付をするということであります。
 92ページにいたりまして、先ほどの特定危険部位のSRMでありますが、これは9月27日に指導で除去をして焼却するようにということでございますけれども、これは法的にきちんと位置づけるということで、17日にと畜場法の施行規則の一部改正をいたしまして、17日に公布をし18日から施行しております。これによって少なくともと畜場では、特定危険部位は除去をする義務が生じたということであります。18日から全国の食肉衛生検査所117 か所においてスクリーニング検査の一斉開始をしておりまして、このときを期して「厚生労働省大臣及び農林水産大臣より牛海綿状脳症の疑いのない安全な食品の提供について」という談話が発表されております。それまでは、このスクリーニング検査でプラスとなったものについては、次のステップのウエスタンブロットの検査で、陽性・陰性を判定しているわけですけれども、今まではウエスタンブロットで陰性のものは、そのまま陰性という判断をするということで、専門の方々の同意を得ておったわけですけれども、10月26日にBSEの検査の判定方法について、念のため以下のように変更する方針を決定されております。それはなぜかということでありますが、ここの理由は、1つは、人のCJDの孤発例の話と家族性の問題がございまして、人のCJDの孤発型のものについては、ウエスタンブロットでマイナスであったものが、免疫組織化学的な検査でプラスになるということはない。ただし、家族性のものについては、ウエスタンブロットでマイナスのものも免疫組織化学検査でプラスになる場合があるということでございます。これと牛との関係ですけれども、少なくともBSEそのもの自体は、1つの株に由来するとすれば、こういうことがないだろうと。人の家族性CJDのようなケースはないだろう。すべて孤発例と同じような形になるのではないかということでありますけれども、今まで調べている検査の結果では、30か月齢以上の検査の場合、ウエスタンと免疫組織化学の検査が違ったという例はないと。しかしながら30か月齢以下のものについてはデータがない。少なくとも国際的には、どこの国でも30か月齢以下で神経症状のないものの検査をやった実績がないわけですから、そのデータの集積がないということから、多分違わないと思うのだけれども、きちんとそのデータを確認するためにも、違わない、ウエスタンでマイナスのものが、免疫組織化学的でプラスになるということはないんだということもきちんと確認する必要があるということで、ここの場合はウエスタンブロット法又は免疫組織化学検査の結果のいずれかが陽性の場合はBSE陽性と判定するということで、陰性の場合は両方とも陰性でなければだめだという判定方法に変えたということであります。
 今後の対応としては、厚生労働省のホームページ等を活用しながら正確な情報を提供したいと思っておりますが、昨日現在のデータを載せております。98ページでありますが、10月29日現在で、今まで1万8,948 件の陰性が確認されております。約2万頭程度の確認をしておりまして、この中でウエスタンブロットに回ったものは、今のところ5件ございます。5件については、私どもの方は陰性という判断をしておりますが、直近でウエスタンブロットに回ったものが、北海道のものがありますけれども、これは免疫組織化学の検査をしておりまして、そちらもマイナスという結果が得られております。
 そのほか、資料6−1については以上であります。
 続いて、資料6−2でありますが、10月24日現在で世界における海綿状脳症の国別及び年次別発生頭数がこの一覧であります。英国が圧倒的に多くて現在まで18万頭のBSEの確認がされております。続いて多いのがアイルランドの748 、続いてポルトガルの605 ということであります。
 次のページに、EU加盟国によるBSE対策でありますが、先生方も御承知のようにBSEそのもの自体は、大変歴史が浅いためによくわかっていない部分があるというのは当然でありますが、BSEの発生状況はここに書いておるとおりでございまして、次に2のサーベイランスでありますが、サーベイランスのやり方としては、(1)、(2)にありますように、受動的サーベイランスというのと能動的サーベイランスというのがあるということでありまして、ごく最近までは、EU側も受動的サーベイランスを行っていた。これは臨床的にBSEの疑いのある牛が検査対象。それ以外は検査対象にしていなかったというのが受動的サーベイランスでありますけれども、最近、能動的サーベイランスになってきて、だんだんその実態がわかりつつあるということでありますが、能動的サーベイランスの考え方は、30か月を過ぎた牛で、と畜場で病気が発見された場合、又は農場で死亡した場合、なお本年の4月1日からは、これはEUの話ですけれども、検査によるサーベイランスが強化されて、対象年齢が30か月から24か月に引き下げられたということと、満30か月を過ぎた健康な牛についても検査をする。この30か月というのは、一般的にEUで知られているのは3歳で一般的に発症する。36か月で発症するというふうにわかっておりまして、6か月から異常プリオンの検出が可能ということで6か月前の30か月齢のものから検査を始めるというのがここの趣旨であります。
 次の109 ページでありますが、今年10月25日現在の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の発生数でありますが、1996年に至ってイギリス及びWHOの方で、BSEと変異型クロイツフェルト・ヤコブ病、バリアントのCJDとの関係が疫学的には関連性が認められるということから大変この問題が大きくなっているわけですけれども、vCJDの世界的な発生例は今世界で111 例ございます。これは10月25日現在であります。
 以上、簡単ですが、BSE関係の御報告を終わりにさせていただきます。
○熊谷部会長
 どうもありがとうございました。BSEについて御質問ありますか。
 変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の発生数ですけれども、111 例でイギリス106で香港が1例なのですけれども、これはOIEじゃなくてどこだったか・・・。
○高谷監視安全課長
 これは出典がヨーロッパCJD症例報告というところで出ておりまして、一般的には、どうもイギリスが101例ではないかとか、それからフランスで3でアイルランドが1で、香港の例はなかったと思うんですけれども、出典のヨーロッパCJDでは、このような数字が出されている。
○熊谷部会長
 出典によって少しずつ違うんですか。
○高谷監視安全課長
 どこで誰がどういう、vCJDと診断したかどうかというのも1つあるだろうと思うんですが。
○熊谷部会長
 診断の違いによるんですか。それからEU加盟国における能動的サーベイランスの迅速検査というのはエライザのことなんですか。
○高谷監視安全課長
 ヨーロッパでは3種類の迅速検査法を使っておりまして、1つはウエスタンブロットの迅速検査法と、あとエライザでもサンドイッチ型のものを、私どもが使っているものと、もう一つエンファが開発しているエライザを使っております。この3種類の組み合わせでそれぞれ使っておりまして、多分一番使われている国が多いのは、私どもが採用したバイオラゾのエライザだと思います。
○熊谷部会長
 どうもありがとうございました。
○丸山委員
 と畜の検査、あるいは、と畜方法は何か検討されていらっしゃるんですか。
○高谷監視安全課長
 すみません。大分省略をしてしまいましたけれども、97ページのところにございますが、参考の3ということで「食肉処理における特定危険部位管理要領」のところに書いてございまして、特定危険部位をどう扱うかというのがありますけれども、1つは、と殺時のワイヤーによるピッシングの問題がございまして、これについては極力やめるようにということですが、と畜従事者のことを考えると直ちにやめられないのかなと。ただ日本では3か所ピッシングをやっていないところがございますので、全くできないということはないのではないかということが1つございます。これは4番のピッシングのところでありまして、5番目の脊髄の管理のところですが、これについては、うわさだけが先に飛んでしまって、背割りをしたときに脊髄が飛び散るという話で、基本的に軟組織である脊髄がチェーンソーで切ったときに飛び散るかというと、飛び散っているのは、脊椎の脊柱の方が飛び散っている話で、脊髄は飛び散っていないのでけれども、その印象が大変強くて、今回はスイスでは、背割りをする前に脊髄を吸引するということをやっている。フランスとスペインは来年の1月から脊髄を吸引するというのを義務づけるということもございまして、我が国もなるべくそのような方法がとれるのであれば、早急にそれを検討したいということで、今その検討に入っているところでして、できることなら、そういうことが先に、先に脊髄を吸引してとれてしまうのであれば、そういうこともやらなければいけないのかないうことで検討を始めている最中であります。
○丸山委員
 ピッシングはディスポーザルみたいなものというのは考えられるんですか。
○高谷監視安全課長
 ただそのときに、ピッシングはディスポーザルなものにしたとしても、今の検査をやるときに、延髄を破壊されてしまうと何もあと病理組織の検査ができないものですから、なるべくなら後々の検査のことを考えると、ピッシングというのはやめていただく、ディスポーザルがなくてもやめていただくというのが一番いいのではないかというふうに思っております。
○熊谷部会長
 この間、新聞を見ていたら、どこかのメーカーが押出式の脊髄を除去する方法を開発したとかいう。

○高谷監視安全課長

 大阪の方で1頭200 円だかなんぼだかでできるよというのはあったと思います。ただ、神奈川の食検の所長も、うちの方でも、下水管とかそういうところの詰まりを取り除くものがあって、それも水圧でできるんだよと。いろいろなアイディアが出てくるのではないかと思います。

○熊谷部会長

 どうもありがとうございました。
 それでは、ほかにございますか。
 では、事務局の方からお願いします。
○事務局
 本日御議論いただきました点を踏まえまして、次回までに部会報告のたたき台を熊谷先生と御相談をさせていただきながら事務局の方で作成させていただきたいというふうに思います。次回はそれをもとに御審議をいただきたいというふうに考えております。
 なお、次回の部会は順調に作業が進めば年内あたりを考えております。あるいは年を越すことがあるかもしれませんけれども、そのあたりで開催をしたいというふうに考えておりますので、各委員の先生方におかれましては、大変お忙しいところとは存じますけれども、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○熊谷部会長
 それでは、どうも長い間ありがとうございました。これで閉会します。

(終了)


照会先:医薬局食品保健部基準課 滝本・鶴身
   電話:5253−1111(内線2444・2488)
ファックス:3501−4868

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