第2回社会保障審議会人口部会 | 資料1−2 |
平成13年10月12日 |
1.平成11年の総務省推計人口と平成4,9年将来推計人口の比較 2.新推計の基本的考え方 3.出生率仮定の設定方法 4.長期の目標コーホートの検討 |
1.平成11年の総務省推計人口と平成4,9年将来推計人口の比較
(注:平成12年国勢調査1%抽出結果は標本調査であり、標本誤差が含まれると考えられることから平成11年総務省推計人口と比較)
(1)比較結果
A 平成4年推計との比較
平成4年推計中位推計結果が実績人口を上回っており、一方低位推計は実績人口を下回っている。実績人口を100とした場合、
男子人口 | 女子人口 | |
中位推計 | 97.8〜116.9 | 97.7〜116.7 |
低位推計 | 97.1〜101.8 | 97.3〜101.7 |
(1)10歳以上80歳未満
誤差は、男子人口の25〜30歳を除き、おおむね0.5%前後であり、ほぼ推計結果と実績は同程度である。男子25〜30歳の誤差は、比較の対象となった人口が平成7年国勢調査人口をもとに推定された平成11年人口であるため平成2年国勢調査人口との間の誤差、すなわち、(1)平成7年国勢調査との年齢不詳の発生状況の違いの可能性と(2)国際移動数から発生した誤差の可能性を示唆している。
(2)80歳以上
平成4年推計結果が実績人口を下回っており、実績人口を100とした場合、
男子人口 | 女子人口 |
97.5〜99.7 | 90.6〜98.9 |
B 平成9年推計との比較
平成9年推計結果が実績人口を上回っており、実績人口を100とした場合、
男子人口 | 女子人口 | |
中位推計 | 101.1〜102.9 | 101.0〜102.7 |
低位推計 | 99.1〜101.7 | 98.5〜101.7 |
(2)4歳以上80歳未満
誤差はおおむね0.5%未満であり、ほぼ推計結果と実績は同程度である。
(3)80歳以上
平成9年推計結果が実績人口を下回っており、実績人口を100とした場合、
男子人口 | 女子人口 |
98.0〜99.5 | 98.8〜99.8 |
(2)平成9年推計の年齢別人口誤差要因
1. 出生数ならびに0〜4歳人口の誤差要因
(2)出生率仮定水準そのものの設定の問題から生じた誤差
(ii)その他、短期的変動や出生タイミングの調整など長期推計では表現できない要因から発生する誤差
2)国際人口移動(入国超過率)の仮定から生じた誤差
(2)女子の再生産年齢における入国超過率から生じた誤差
3)出生から4歳までの生残率の仮定から生じた誤差
2. 年齢5歳以上の人口の誤差要因
(3)平成9年推計の出生率の誤差要因の評価
外国人人口を考慮して、平成9年推計を再現すると、別表の結果を得る。これは、平成9年推計における出生率仮定(中位・低位)を、別途計算して得られた、日本人出生率を外国人を含む総人口の出生率に補正するための係数を用い補正し、新たに平成9年推計を再計算したものである。
その結果、推計出生数と人口動態統計に基づく総出生数との差は縮小する結果が得られた。出生率仮定に関連する年齢別人口の推計誤差は中位仮定推計において改善し、一方、低位仮定推計ではやや過小推計が多くなる。
一方、生残率による推計誤差は小さいが、国際人口移動、すなわち入口超過率の仮定による誤差が生じていた。
(2)出生率仮定水準そのものの設定の問題から生じた誤差について
外国人人口を考慮した出生率を用いても、中位推計よりも出生数はやや少なく、低位仮定よりも多い。したがって、結果の一部については、長期の出生率仮定である目標コーホート推定のモデルの背景となる結婚・出産行動の変化が起きつつあると考えられることから中位仮定の出生率仮定値が、若干高めに設定されたと考えられる。
より具体的に評価するために、合計特殊出生率を出生順位別に比較すると、第1子出生率は比較的に適合度が良かったのに対して、1999年の第2子の出生率に乖離が見られ、また、第3子以降についてもそれぞれ仮定値が高めであり、第2子以降の出生順位別出生率において誤差が発生している。
このような背景としては、近年、夫婦の出生行動に出生タイミングの遅れが出てきていることや、結婚と出生の結びつきにも変動が出ているなど、平成9年推計を行った当時とは長期の出生率モデルの設定や仮定に関する新たな状況が出ていることが考えられる。
(3)国際人口移動(入国超過率)の仮定から生じた誤差
平成9年推計では、平成2年から平成9年の入国超過率の平均値を一定と仮定し、推計に用いた。しかしながら、その後の入国超過率は、年次によってバラツキがあり、それが結果として、年齢別人口の誤差を生じている。
(4)生残率仮定から生じた誤差
80歳以上では、やや生残率の仮定が低かった。その結果、1%程度の過小推計が見られた年齢もある。実際の誤差人口数でみれば、高年齢で2,000人前後の誤差を生じていた。
以上のことから、新推計に当たっては、第一に外国人人口を考慮した将来出生率補正を行う改善を図る。第二に、長期の出生率の仮定設定を見直す。第三に、国際移動の影響がみられることから、入国超過率(国際移動)の仮定設定の方法を改善する。第四に、生残率の仮定について、より年齢の高い部分での精度改善を図る。
(1)平成12年国勢調査全数集計結果に基づく人口を基準人口とする。
推計の出発点となる基準人口は、平成12(2000)年10月1日現在の男女年齢各歳別人口である。この人口は平成12(2000)年の国勢調査の結果から得られる男女年齢各歳人口に基づいて、国勢調査結果に含まれる年齢不詳人口を補整した推計人口である。なお、補正にあたっては、都道府県別国籍別年齢別人口に基づいて、年齢不詳人口を按分補正する。したがって、国勢調査の公表数値と本推計の基準人口には若干の差異が存在する。
(2)推計期間
推計の期間は、2001年から2100年の期間である(2051年以降は参考推計)。
(3)推計方法は、コーホート要因法(前回、前々回推計と同じ)
推計の方法は従来同様コ−ホ−ト要因法,(cohort component method)である。この方法は、基準年次の男女年齢別人口を出発点とし、これに仮定された女子の年齢別出生率、男女年齢別生残率及び男女年齢別人口移動率を適用して将来人口を求める方法である。すでに生まれている人口については、男女年齢別基準人口から出発して将来年次の男女年齢別生残数及び移動数を求め将来の人口を計算する。また、新たに生まれる人口については、将来の男女別出生数を計算し、その生残数及び移動数を求め将来の人口を計算するという方法である。総人口は男女年齢別人口を合計することによって得られる。
なお、コ−ホ−ト要因法に必要なデ−タは、(1)男女年齢別基準人口、(2)女子の年齢別出生率の仮定値、(3)男女年齢別生残率の仮定値、(4)男女年齢別人口移動率の仮定値、(5)出生性比である。
(4)推計の種類:高・中・低の出生率に関して3つの将来仮定値を置き、三種類の人口推計を行う。
(5)出生率仮定
出生率の仮定は、コーホート出生率を推定し、仮定する。出生率の仮定方法については、別途説明する。
(6)生残率仮定
前回の死因別推定方法から、死亡率のリレーショナルモデル(修正リ−・カーター法)によって将来生命表を作成し、将来の生残率仮定とする。死因別死亡率を用いない理由は、死因コード分類の変更によるデータの時系列的安定性に欠けるためである。
(7)国際移動の仮定
近年の国際移動の実態から、日本人の国際移動に関しては国際間の入国超過率を用いる。外国人の国際移動に関しては、過去の趨勢から外国人の純移動数(入国超過数)の総量を推定し、仮定する。
(8)出生性比の仮定
過去の趨勢から今後の出生性比を仮定する。
(1)コーホートの年齢別出生率の推定方法
(1)コーホートの生涯未婚率、(2)完結出生児数、(3)平均初婚年齢および各出生順位の平均出生年齢など、ならびに(4)初婚年齢の分布(分散と形状)および各出生順位別出生率の分布(分散と形状)などをパラメータとして、一般化対数ガンマ分布モデルを用いて推定する。
(2)適用する推定方法と適用対象コーホート
モデルによる実績への適合性が良好なコーホートに関しては、モデルにより仮定値を統計学的に推定する。
(2)1985年出生コーホート(2000年で15歳)
将来の結婚・出生過程について仮定を設け、モデルパラメータを推定し、コーホート出生率を仮定する。このコーホートが出生率仮定設定のための目標コーホートである。
目標コーホートのパラメータは、平均初婚年齢や年齢別初婚率の分散、さらに生涯未婚率や出生順位別出生率の過去のデータに依拠して推定する。ただし、目標コーホート自体も変化の途上にあるため、最終的に実現されるコーホートの数値ではない。
(3)1986年以降の出生コーホート(2000年で15歳未満)
推計仮定の最終年次で再生産過程を終える、すなわち、2050年で50歳に達する2000年出生コーホートまで、過去の趨勢を延長し、この出生コーホート以降パラメータを一定とする。なお、ここでは、推計最終年次に再生産を終える2000年出生コーホートを最終コーホートと呼ぶ。
(4)1965年以降から1984年出生コーホート(2000年で16歳から35歳)
(1)と(2)の中間のコーホートに関しては、目標コーホートと(1)で推定されたコーホートのパラメータを推定し、コーホート出生率を推定する。
(5)直近の年齢別出生率は、時系列的傾向を加味し、コーホートモデルの仮定値を補正する。
(6)前回推計からの変更点
平成9年推計では、目標コーホートと変化が収束する最終コーホートを同じコーホートとした。新推計では、変化の持続性を加味し、1985年目標コーホートに至る変化の勢いが、2000年出生コーホートまで持続し、以後一定と仮定した。
(1)長期の目標コーホートの仮定設定の考え方
(2)最終的に実現される出生率水準、すなわち長期のコーホート合計特殊出生率を仮定するには、目標となる出生コーホートについて、年齢別初婚率(平均初婚年齢とその分散)、ならびに生涯未婚率によりコーホートの年齢別初婚率を推定する必要がある。
ただし、目標コーホートも変化の途上にあるため、推計期間の最終年次に再生産活動を終えるコーホートを最終コーホートとし、目標コーホートの各パラメータが最終コーホートに向かって収束するものとする。
(3)そして、推定された年齢別初婚率と過去の出生動向基本調査から得られた初婚年齢と完結出生児数の経験モデルから出生コーホートの既婚女子の平均出生児数が推定できる。
(4)ただし、結婚したのち離婚や死別によって出生率は若干の影響を受けるため、離死別の影響効果を係数として指標化し加味する必要がある。以上を考慮すると、長期のコーホート合計特殊出生率は、次の算定式によって求められる。
コーホート合計特殊出生率=(1−生涯未婚率)×夫婦完結子供数×離死別効果係数
注:生涯未婚率は50歳時の未婚者割合で、年齢別初婚率の15〜49歳の合計値(50歳時既婚率)を1からの余数として求めた値である。夫婦完結子供数は50歳時の既婚女子の平均子供数である。また、離死別効果係数は離婚や死別によって出生率が影響さる度合いを示す係数で、過去のコーホート合計特殊出生率と出生動向基本調査によっ得られた夫婦出生児数から推定して求められる。 |