01/09/28 第6回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会議事録    第6回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 議事録  1 日時 平成13年9月28日(金)14:00〜16:00  2 場所 中央合同庁舎第5号館専用第22会議室  3 出席者 [委員] 奥平委員、勝委員、菅野委員、吉川委員、齋藤委員、            桜井委員、笹川委員、佐藤委員、都村委員、中山委員、            長谷川委員、堀越委員、山路委員       [事務局] 奥田勤労者生活部長、南野勤労者生活課長 4 議 題  (1) 勤労者退職金共済機構の平成12事業年度決算の報告等について  (2) 特殊法人改革の動向について  (3) 一般の中小企業退職金共済制度の財政状況の今後の見通しについて  (4) 中小企業退職金共済制度の課題について 5 議事内容 ○部会長 第6回の中小企業退職金共済部会を始めたいと思います。本日の議題はお手 元の次第に書いてありますように、4つあります。順次やっていきたいと思いますが、 最初に議題1について、御説明をお願いします。 ○勤労者生活課長 議題1は勤労者退職金共済機構の平成12事業年度決算の報告等に ついてですが、資料1を御覧下さい。前回の審議会で概要を御説明しておりますが、決 算の形で貸借対照表、あるいは損益計算書として取りまとめております。これは8月末 に厚生労働大臣の承認を行ったところでして、併せて、官報で公告しております。  1頁目は、一般の中小企業退職金共済事業にかかわるものです。概要は前回の部会で 御説明しておりますので、ポイントのみ触れさせていただきます。まず損益計算書です が、いちばん右下にあるとおり、平成12年度の一般中小企業退職金共済事業の当期損 失金は、207億となっています。貸借対照表の右下を御覧いただくと、累積欠損金と して2,024億円ほどを計上しています。  2頁は、建設業退職金共済制度についてです。平成12年度は利益金が29億9,9 00万円を計上したところです。併せて、貸借対照表上で、平成12年度末までに、3 18億円ほどの累積の剰余金があります。  3頁は、清酒製造業退職金共済制度についてです。平成12年度は2,800万円ほ どの当期損失金を計上しております。累積剰余金として3億9,200万円を計上して おります。平成12年度単独で見ると損失金を計上しておりますが、年度末では、まだ 剰余金があるという状況です。  4頁、林業退職金共済制度については、平成12年度については3億5,100万円 の当期損失金を計上しており、累積欠損金として22億4,600万円を計上しており ます。前回もお話しましたが、昨年の7月に予定運用利回りについて、清酒製造業につ いては2.3%、林業については2.1%にそれぞれ引き下げたところでして、平成1 2年度については、両事業とも欠損金を計上しておりますが、平成13年度以降につい ては経済情勢によるところもありますが、それなりに収支の改善が見込まれるのではな いかと考えております。  5頁以下が平成12年度の事業報告の概要及びディスクロージャーに関する事項があ りますが、これらについても前回の審議会で御説明しておりますので、本日の説明は省 かせていただきます。  資料2の「行政コスト計算書」です。これは前回の部会の際に、内容、趣旨等につい て御説明したところです。特殊法人の財務諸表については、いわゆる官庁会計に基づい て従来から作成してきたところですが、それでは特殊法人の経営状況が分かりづらいと いう議論があって、民間企業として活動したと仮定し、民間企業と同様の会計基準で財 務書類を作成するという趣旨で、それぞれの特殊法人ごとに行政コスト計算書を作成し て、9月末までに公表するという段取りで作業を進めてきたところです。  端的に申しますと、特殊法人の運営に行政としてどのぐらいコストがかかっているか 、ということを表す書類とお考えいただければよろしいかと思います。行政コスト計算 書の体系は1頁にあるとおりでして、コストの発生原因ごとに、業務費用と機会費用に 区分して表示することになっています。その他添付資料として、民間企業仮定貸借対照 表及び民間企業仮定損益計算書があります。これらについては、個々の特殊法人等の特 性を捨象し、民間企業として活動しているとの仮定に立って、企業会計原則に準拠して 作成する財務諸表です。  その他キャッシュ・フロー計算書、民間企業仮定利益処分計算書、附属明細書等があ りまして、実際のボリュームとしては、何センチにもわたるぐらいの膨大な資料になる わけですが、今回はその中の主な資料について、提出させていただいております。  早速ですが、2頁目が行政コスト計算書です。企業の場合、連結決算が原則となって おりますので、それと同様に、1つの特殊法人が行うすべての事業を結合した形で表示 するのが原則です。しかしながら、勤労者退職金共済機構の場合、4つの独立した事業 を行っているという特質性に配慮して、事業ごとにそれぞれの内訳を表示しております 。  全体の構成をまず説明します。勘定名のいちばん上の業務費用は特殊法人の業務を行 うのに必要な費用を表わすものです。大きな項目として事業費、事業収益、事業外収益 がありますが、事業費から事業収益、事業外収益を差し引いたものが業務費用となりま す。収入については、事業から得られる収入を基本原則としておりますので、国庫補助 金についてはここに加えない、という整理になっております。  2つ目に機会費用があります。これは特殊法人であるが故に実際は負担していないが 、民間企業であれば当然負担すべき費用であり、新しい概念として分類がなされており ます。具体的には、政府出資等の機会費用というのがありますが、これは、例えば、国 有地等を無償で利用した場合に、実際は負担しないが、民間企業であれば本来負担すべ き土地代等を指しております。  この他に機会費用にあげられるものに、公務員からの出向職員にかかわる退職給付引 当金増加額があります。特殊法人には公務員が職員として何人か出向している場合があ るわけですが、これらの退職給付引当金は計上されていません。本来職員であれば、当 然こういった引当金も計上すべきものであることから、公務員からの出向者にかかわる 退職給付引当金についてもここに計上することになっています。  全体を逐一説明するのは非常に時間もかかりますので、ポイントだけ説明いたします 。勤労者退職金共済機構にかかる事業費がちょうど真ん中辺りです。仮定損益計算書上 の費用小計欄右の4,879億4,100万円が4事業の合計となっておおります。  一方、収入は、事業収入と事業外収入を合わせたものであり、業務収入小計欄右の4 ,448億円となっています。これを差し引いたものが業務費用合計であり、勤労者退 職金共済機構には430億5,200万円のコストがかかっている、こういうふうに読 めるわけです。  機会費用については、合計で857万円となっております。これを足し合わしたもの が行政コストであり、430億6,000万円が計上されております。細かく見た場合 には例えば、事業費の欄の下から3つ目に責任準備金繰入の欄がありますが、このいち ばん右の結合合計の欄の275億円という金額がいわゆる責任準備金についての平成1 2年度の増加分で、いわゆる積立不足にかかわるものです。この積立不足にかかわるも のとなっています。  先ほど申し上げたように、収益には国庫補助金が含まれておりません。国庫補助金は 平成12年度で約154億ほどあります。したがって、行政コストとして金額的には4 30億円という数字が出ており、その大半が責任準備金繰入額と国庫補助金額となって おり、両方合わせると、275億プラス154億ですから、ほぼ430億円になります 。勤労者退職金共済機構における行政コストは、そういう意味ではほとんどが責任準備 金の繰入と国庫補助金に相当するということが言えるわけです。  3頁の仮定貸借対照表ですが、これも民間企業の会計基準に置き換えた形での貸借対 照表でして、本来の貸借対照表とは資産の分類が若干異なります。主なものとしては、 1点目としては、売買目的の有価証券については時価評価をするといった資産評価の変 更に伴うもの、2点目としては、退職給付債務にかかわるものです。民間企業について は新会計基準に従って、期末に全員自己都合退職する場合の退職給付債務の必要額を計 上することになっているわけですが、それに合わせて負債の部分に退職給付引当金を計 上しております。  具体的にどこが変わったかということですが、例えば、資産の部の流動資産として従 来入っていない有価証券のうち1年未満で満期が到来するものについては、流動資産と して計上することになっています。また、金銭信託についても流動資産に計上するとい う分類がなされています。  退職給付引当金については、負債の部に、固定負債として退職給付引当金を約53億 円計上しております。この結果、損失金の合計は資本の部の右側にあるとおり、4事業 合計で1,795億円となっています。一般の中小企業退職金共済事業については、仮 定貸借対照表では2,083億円の累積欠損金となっていますが、本来の貸借対照表で は、2,024億円となっており、差し引き60億円ぐらいの差が出ています。その主 たる要因は、先ほど申し上げたとおり有価証券の評価にかかわるもの、資産の評価の変 更に伴うもの、退職給付債務の計上にかかわるものとなっています。  4頁が民間企業の仮定損益計算書です。具体的な説明は省きますが、考え方は先ほど の説明と同じで、当期損失金は4事業合計で261億円となっています。一般の中小企 業退職金共済事業で言えば、267億円が計上されていますが、本来の損益計算書で言 いますと、207億円となっており、仮定損益計算書との間に約60億円の差が出てき ていると思います。  5頁はキャッシュ・フロー計算書で、実際の現金のやり取りを中心に見たものです。 業務活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動に よるキャッシュ・フローと分かれていますが、この辺の説明は省略いたします。  6頁、7頁が実際の貸借対照表と仮定貸借対照表との差がどこにあるかを簡単に整理 したものです。いちばん大きいのは、有価証券の評価の方法が変わった部分です。満期 保有目的の有価証券等については、償却原価法を適用して評価することになっています が、これはどちらかというと、簿価に近い形での評価になります。売買目的の有価証券 については、時価評価をするということになっています。これによって有価証券の評価 が全体としてプラスになった部分もあれば、マイナスになった部分もあるわけです。  その他に、若干の資産の移動による増減があります。負債については、新たに退職給 付引当金、賞与引当金といったものを計上しております。その結果の差し引きが先ほど 説明したような金額になるわけです。  貸借対照表で見るとちょっと分かりづらい所があるのですが、次の単年度の収益と費 用を整理した損益計算書で見ていただくと、有価証券については、償却原価法を適用す ることによって増加する部分と、金銭信託について、時価評価をする部分についての減 少分等があるため、当期利益金について、仮定損益計算書と本来の損益計算書の間に約 80億円の差が、4事業合計で出てきているわけです。その差は、ほとんどが右上の内 訳の所に書いている金銭信託の時価評価の減によるもので、これが平成12年度は一貫 して右肩下がりで、株価が減少したことによるところが大きいわけです。金銭信託の時 価評価減は約84億円あり、有価証券の評価増が約4億6,000万円あり、これらの 差が80億円の大部分を占めていると言えます。  実際は、金銭信託については、平成12年度において時価評価による評価損が出てい ますが、勤労者退職金共済機構の資産運用の考え方として、時価評価で見てもあまり大 きな評価損が出ないような形での運用を行っています。一般の中小企業退職金共済制度 で見ると、資産総額約3兆1,000億円のうち3割強の1兆円弱を金銭信託に投入し ていますが、平成12年度における株価の大幅な下落にもかかわらず、評価減はあるも のの、84億円に止まったということが言えるのではないかと思います。そういう意味 では、時価で見てもあなり大きな評価減は出ていないと言えるのではないかと思ってい ます。以上です。 ○部会長 どうも御苦労様でした。ただいまの平成12年度の決算につきまして、何か 御意見なり御質問がありましたらどうぞ。 ○委員 先ほど国庫補助金についてはここに入っていないというお話でしたが、なぜ入 れないのかということ。もしこれを入れたら、赤字が減るということですかね。 ○勤労者生活課長 あくまでも行政にかかるコストとして計算するという考え方による ものでして、民間企業であればどうかという前提に立っての計算ですので、民間企業で あればそもそも国庫補助金はないという前提で、業務収入の中には国庫補助金を計上し ない、こういう考え方で整理されたものと理解しています。 ○委員 支出も計上しないということですか。 ○勤労者生活課長 支出は計上しております。国庫補助によって賄われている事業費は 計上しております。 ○委員 欠損金がそれだけカバーされる、と解釈してよろしいわけですか。 ○勤労者生活課長 はい。国庫補助は150億円ほどあるわけですから、その部分は当 然国庫補助で賄われます。しかし、この行政コスト計算書は、あくまでも民間企業に置 き換えた場合に、コストがどのくらいかかっているかという観点からの資料です。 ○委員 154億円というお金は、バランスシート上はどうなるのですか。この中に入 っているのですか、それとも別扱いですか。 ○勤労者生活課長 貸借対照表や損益計算書上は、国庫補助金収入も入れて計算する、 という整理になっています。 ○委員 この中には入っているわけですね。 ○勤労者生活課長 貸借対照表と損益計算書上は、国庫補助金収入は入れ込むような形 で計上しております。ただし、1枚目の行政コスト計算書には国庫補助金収入は入れな い、という整理です。 ○委員 分かりました。 ○委員 いまの点で、行政コスト計算書の作成についての1頁の(3)には、「国庫補 助金等の明細」という項目があるではありませんか。ですから行政コスト計算書の中に も入っているということではないのですか。 ○勤労者生活課長 これは、附属明細書の中身でして、これにはいろいろな事項につい て添付して整理することになっているのですが、1枚目でいう行政コスト計算書の中に は、国庫補助金収入は入れないという整理の仕方になっています。要するに、この特殊 法人を運営するために、行政上のコストとしてどのくらい費用がかかっているかを出す ためのものですので、そういう意味では国庫補助金収入を除外する、というのが1枚目 の行政コスト計算書の計上の考え方になります。 ○委員 行政コストについては、他の特殊法人と比較して、何か著しい特徴があるので しょうか。それから、平成11年度以前についても、時系列で見て何か変化があるので しょうか。 ○勤労者生活課長 実は勤労者退職金共済機構の行政コスト計算書も出来上がったばか りでして、すべての特殊法人について9月末までに公表となっておりますが、他の特殊 法人の行政コスト計算書まで入手しておりませんし、そこまで分析するだけの余裕がな かったため、平成12年度分のみとなっております。平成13年度以降も作成していく ことになっております。 ○委員 これは監査といいますか、監査役がおられますね。外部監査みたいなものはあ るのですか。内部監査だけですか。 ○勤労者生活課長 行政コスト計算書の作成は、監査法人に委託するような形できちん とチェックした上で、作成をしております。 ○委員 そうすると、監査証明があるわけですか。 ○勤労者生活課長 正式な監査を必要とするようなものではないものですから、監査証 明という形での証明書はいただいておりませんが、これを作成する段階で、監査法人に 中身はチェックしていただいております。 ○委員 要するに、正確かどうかだけを伺っているだけです。 ○勤労者生活課長 今後、当然のことながら財務諸表等については、内部監査ではあり ますが、勤労者退職金共済機構にも常勤監事が1名と、非常勤監事が2名おりますので 、その監事の監査を受けることになります。 ○委員 分かりました。 ○部会長 よろしいでしょうか。それでは次の議題は特殊法人改革の動向についてです 。 ○勤労者生活課長 資料3と4になりますが、特殊法人改革の動向について、前回の審 議会以降の動きについて説明いたします。資料3ですが、これは8月10日時点で公表 されたものです。特殊法人改革を担当する行政改革推進事務局からそれぞれの特殊法人 について、事務事業の見直しについての事務局(案)が提示されました。それに対する それぞれの所管省庁の意見を並記する形で整理をしております。  まず事務局案ですが、一つ目は情報公開の指摘です。「現在は特殊法人にかかわる情 報公開の対象となっていないが、実態的には国の代行機関と位置づけられることから、 対象法人と同様の情報公開を行う」とあります。これは何を言っているかといいますと 、国の機関にかかる情報公開については、関係の情報公開法が今年の4月から施行され ており、併せて、特殊法人にかかる情報公開についても、法律案がまとまっております 。特殊法人の情報公開法については、勤労者退職金共済機構はその対象になっておりま せんが、なぜかと言いますと、勤労者退職金共済機構そのものは中小企業退職金共済制 度の加入者に対する情報公開は当然のことながら必要はありますが、国民一般に対する 説明責任はほかの法人に比べて、それほど重要ではないのではないかといったような判 断があって、法律を所管している総務省の整理で、対象外となっておりました。ところ が、行政改革推進事務局からは、実態的には勤労者退職金共済機構は国の代行機関と位 置づけられることから、対象法人と同様の情報公開を行うべきではないかという指摘が なされています。  情報公開については勤労者退職金共済機構もこれまでいろいろと取り組んできている ところです。例えば、財務諸表については、5年間事務所に備え付けて、一般の閲覧に 供するとか、本日お出しした財務諸表に関する資料は官報に公告する、あるいは、情報 誌やホームページでも財務状況等について、公開をしてきたところではありますが、こ ういう指摘を受けて、今後ともその充実強化に努めていきたいというのが私どもの考え です。  2つ目は、資産運用にかかわるものです。「明確な運用目標の設定、適切な事後評価 、運用管理・チェック体制の充実強化を実施する。また運用内容や結果について、適切 に情報を公開する」という指摘です。これについては、運用目標の設定等についても、 勤労者退職金共済機構に資産管理運用委員会を設けて資産運用の基本方針を作ったり、 あるいは、一般の中小企業退職金共済制度で言えば、基本ポートフォリオを策定して、 運用目標というものを設定しながら進めてきたわけですし、事後評価や管理・チェック 体制についても、取り組んできたところですが、今後ともその充実強化に努めていきた いと考えています。  3つ目として、中小共済とありますが、これは一般の中小企業退職金共済制度につい ての指摘で、「経済・金利情勢に的確に対応した制度設計が可能となるよう、予定運用 利回りを弾力的に設定できるような仕組みに改め(法律事項を政令事項に変更)、計画 的に積立不足を解消する」ことについてです。平成12年度末に2,000億円を超え る累積欠損金があるというようなことから、経済・金利情勢に的確に対応した制度設計 が可能となるよう、予定運用利回りを弾力的に設定できるような仕組みに改めてはどう かというものです。現在、一般の中小企業退職金共済制度については、予定運用利回り は法律で定まっており、特定業種退職金共済制度については法律ではなくて、政令で定 まっているわけです。そういった点に着目して、法律事項を政令事項に変更してはどう か、計画的に積立不足を解消してはどうかという御指摘です。  これに対して私どもとしては、これまでも経済・金融情勢に対応して、予定運用利回 りの見直しを行ってきたところでありますが、最近の激しい経済・金融情勢の変化を踏 まえ、さらに機動的な対応が可能となるような仕組みについて検討を行うとの回答をし ております。この点については、今後この審議会でも議論をいただきたいと考えていま す。  また、積立不足の解消については、制度の安定的運用を図る上で重要な課題であると 認識しておりますが、やはり、短期間で解消するということになると、その期間加入し ている加入者の方々に過大な負担をかける面もありますので、そういう意味で加入者間 の負担の公平性を確保しつつ、中長期的観点から解消を行う必要があると考えておりま す。  次の指摘事項ですが、特定業種について言われておりまして、「資金運用体制を強化 するため、一般の中退も含めたすべての共済事業の資金を一括して運用する体制を整備 する」ということです。勤労者退職金共済機構は退職金の共済事業を行っておりますが 、4つのそれぞれ独立した事業を実施しているため、4事業本部体制を敷いており、資 金運用についても、それぞれの事業本部で実施しているところです。これを一括で運用 したほうが効率的ではないか、という指摘です。  これについては、各共済事業は独立した事業として実施しているわけでして、それぞ れの勘定間の資金の融通というものが、法律上も禁止されております。区分経理が法律 上義務づけられているわけです。そういうことからしても、また特に特定業種退職金共 済事業については、業界退職金という性格を持っております。それぞれの業界を引退す るときに退職金を支払うという性格を持っておりまして、それぞれの業界に対する運用 責任というものを明確化していく必要があると考えており、一括運用することによって 、それぞれの業界の事業主に対する運用責任が不明確になるのではないかと懸念されま す。  それから、それぞれの事業ごとに運用利回りや成熟度も異なるために、用意すべき流 動性資金等についてもかなりの差が出て来ます。資産運用規模についても、一般中小企 業退職金共済制度については3兆1,000億円ほどあるわけですが、いちばん規模の 小さい清酒製造業については、88億円と、それぞれの事業によってかなりの違いがあ ることから、一括運用を行うということについては適当ではないと考えております。  最後に融資事業については、前回も説明しておりますが、融資の件数が年々減少して おりまして、平成12年度においては、一般の中小企業退職金共済制度が23件、建設 業退職金共済制度、清酒製造業退職金共済制度がそれぞれ1件ずつということで、勤労 者退職金共済機構全体でも25件という状況です。一時200件を超えているような時 期もあったわけですが、実績がかなり少なくなっていることもあって、この事業は廃止 してはどうか、という意見です。  これに対しては、融資事業そのものは中小企業者への還元融資として、加入促進とい ったような観点からしても重要な役割を果たしてきているということは言えるわけです 。ただし、最近の実績が減少しているということも事実ですので、これを踏まえつつ、 そのあり方について検討するいう回答をしたところです。  資料4は、9月4日付で公表された「特殊法人等の廃止または民営化に関する各府省 の報告」です。道路公団とか石油公団については、民営化すべきといったような議論が なされておりましたが、小泉総理の方針によって、特殊法人については原則廃止か民営 化で検討するよう指示が出されたわけです。そういう指示が出たことを前提として、行 政改革推進本部のほうからそれぞれの特殊法人について、廃止の可否、民営化の可否に ついて意見を出すよう依頼があり、これに基づいて、私どもから提出した資料です。  これは公表するという前提ですので、できるだけ一般にも分かりやすい表現で、なお かつ簡潔にまとめるということで、1枚紙として整理をしております。廃止の可否につ いては、次の理由により廃止は困難であると考えています。まず事業を純粋に廃止する ことについては、まだまだ退職金の導入状況であるとか、給付水準について見ると、大 企業と中小企業との間で大きな格差があるため、国の支援と関与の下で、中小企業でも 導入しやすい中小企業退職金共済制度のような外部積立型の退職金制度を設けることは 必要であり、その必要性は、いまも変わっていないと回答しております。  事業を他の運営主体に移管した上で勤労者退職金共済機構を廃止することについては 、中小企業が退職金制度を導入するためには、制度の継続性ですとか資産管理の安全性 、あるいは給付の確実性といったようなことを確保する必要があるため、国または国に 準じた主体、特殊法人のような国に準じた主体が行うことが適当であって、地方公共団 体、民間企業において実施することは適当ではないと考えています。国又は国に準じた 主体が運営することについては、効率的な事業運営等の観点から、国が直接実施するの ではなくて、国の支援および関与の下で国に準ずる主体が行うことが適当であると回答 しております。民営化の可否についても、同じ理由により困難であると回答しています 。  今後のスケジュールですが、先週、行政改革推進本部のヒアリングがありました。そ れを踏まえて、現在行政改革推進本部のほうで見直し案を検討しているところでして、 最終的には12月中に政府としての特殊法人の整理・合理化計画を策定するというスケ ジュールは変わっていないと承知しております。以上です。 ○部会長 ただいまの御説明について、御意見なり御質問はありますか。 ○委員 8月10日には、かなり具体的な項目について言っているわけで、的確な回答 をされていると思うのです。いまのお話ですと、小泉首相が特殊法人は廃止か民営化し ろと言ったから、9月4日については、廃止か民営化のどちらかの選択肢があるのでし ょうが、その間の飛躍が大き過ぎるように思うのです。これは行政改革推進事務局との 間では、どういう関係になっているのですか。 ○勤労者生活課長 当初の予定であれば、最初はそれぞれの特殊法人について、事務事 業の見直しについてまず詰める。その上で組織形態について整理すると、事務的にはそ ういう段取りになってきたわけですが、どうもその動きは政治的ないろいろな問題もあ りまして、やや動きが変わってまいりまして、組織形態についても、ある意味では同時 並行的に議論をするような形になっています。したがって、最初の資料はあくまでも当 初のスケジュールに従った形でのやり取りになっているわけですが、その後、そのよう な動きに従って、9月4日付の民営化ないしは廃止の可否についてのコメントを出し、 それについてのヒアリングを行ったという状況です。 ○委員 9月4日の回答も、ここの審議会でこれまで議論をされた内容で的確な回答を されていると思うのですが、行政改革推進事務局は、廃止、民営化といった場合、例え ば、廃止したらどうするのか、民営化したらどうするのか、そういう中身まで言ってい るのですか。 ○勤労者生活課長 行政改革推進事務局としての考え方は、まだ一切示されておりませ ん。ヒアリングやこちらのほうから出した意見を基に、行革本部のほうで今後具体的に どういう組織形態に見直していくかという検討を行うこととされており、現在その検討 を行っているところであると理解しています。 ○委員 先ほどの中で、政治的ないろいろなという発言がありましたが、いまこういう ことを一生懸命やって、あと中小企業退職金共済制度の議論もするにしても、場合によ っては行革事務局なり、政府決定ということで、閣議決定でもって廃止ないし民営化す ることはあり得るという理解をしていいのですか。 ○勤労者生活課長 私どもとしては、そういうことがないものと期待をしているところ ですし、私どもの考えている意見をきちんと行革事務局のほうには伝えたつもりです。 ○委員 いまの回答でいいと思うのですが、非常によくまとめられて、私たちの考え方 をちゃんと伝えて見えるわけですので、政治的な場所になればいろいろなプレッシャー もあることと思いますが、そういった問題もそれなりに私たちに話しにくいことかもし れませんが、必要なら今後のことで結構ですから、おっしゃっていただきたいと思いま す。時間的に言うと12月ですから、あまり時間がないわけですね。押し切られてしま う可能性もなきにしもあらずということを心配しますから、よろしくお願いします。 ○委員 いまの質問の続きですが、商工会議所等で特退金をやっております。こちらで 中小企業退職金共済制度ということで、いままでずっと同時並行で行われてきたわけな のですが、その辺の線引きといいますか、なぜそういうものが民間と国の制度と2つあ って、今後どうしていくかというようなことに対する考え方は、どう理解していらっし ゃるのでしょうか。 ○勤労者生活課長 退職金についてはいくつか制度があるのですが、特退金というのは あくまでも税法上の制度でして、税法上特退金の要件に該当するような制度を設けた場 合に、一定の税制上のメリットが受けられるというものです。一方、中小企業退職金共 済制度については、同様の税制上のメリットもあるわけですが、これはあくまでも中小 企業退職金共済法という法律に基づいて国が作った退職金制度です。単独では退職金制 度を設けることは困難な中小企業向けに、国が作った退職金制度ということでして、そ ういう意味では、制度としてはそれぞれ異なるものと理解しております。 ○委員 特退金のほうは、大体生保の関係でいろいろ運営されていると思うので、利率 などもずいぶん違います。中小企業退職金共済制度を知らないとかいろいろな事情で、 そういうものに入っている中小企業があると思うのです。その辺が行政改革推進事務局 にしてみれば、そういうものがあるのにどうしてなのかみたいな考え方も出てくるので はないかと、ちょっと考えたのです。 ○委員 厚生労働省の所管ではないと思いますが、小規模企業共済制度というのがあり ます。あれについて、行政改革推進事務局はどう言っているのですか。 ○勤労者生活課長 小規模企業共済制度については、経済産業省の所管になりますが、 私どもが承知している範囲では、それほど細かい指摘は受けていないと聞いています。 詳細を承知しているわけではございませんけれども。 ○委員 先ほど委員から御指摘があったように、勤労者退職金共済機構に関しては、廃 止か民営化という二分法では対応できない部分がある、つまり、中小企業に対する政策 的な対応や、勤労者の社会福祉の向上といった面では、この二分法では必ずしも当ては まらないだろうと思うのは、そのとおりだと思うのです。ただ、それでもいろいろな問 題を抱えているのは確かであって、今回の特殊法人改革の目的は、無駄な財政からの流 用を極力削減する、というのが1つの目的であるわけです。  その点から言うと、今回の小泉さんの改革において、特殊法人に対しての一般会計か らの拠出金を、1兆円ぐらい減らすというような報道がありましたが、今日の資料で見 ますと、資料1の5頁の所に「勤労者の退職金共済機構のディスクロージャー」という のがあって、国からの補助金が一般会計からは46億円、特別会計からは108億円出 ているわけですが、これがどの程度減らされていて、これによって勤労者退職金共済機 構がどのように対応しているのかということを聞きたいのが1点です。  もう1点は、8月10日の事務局案の所の(2)ですが、事務局案では「法律事項を政令 事項に変更」となっていますが、先ほどの御説明ですと、特定業種退職金共済制度につ いては政令事項になっており、既に2.3%と2.1%とかなり低くなっているわけで す。こうした弾力的な変更というのはどのようなプロセスで金利が決められているのか というようなことを、ちょっと2点教えていただきたいのですが。 ○勤労者生活課長 まず最初の御質問です。資料1の5頁にございます補助金額は、平 成13年度の補助額です。現在は、財務省に対しまして平成14年度の要求を提出いた しているところです。先ほどお話がございましたように、特殊法人関係の補助金は、1 兆円の削減といったような方針もございまして、要求としましては一般会計にかかる人 件費と事務費については、人件費は前年度よりも若干増で要求しておりますが、事務費 については、省の全体の方針もございまして1割減という形で要求を出しているところ です。それから掛金助成については、ほぼ前年並みとなっています。108億に近い数 字で要求を出しております。  2つ目の点です。特定業種退職金共済制度については、予定運用利回りは当初から政 令事項でして、業界退職金という性格から、特定業種ごとに法律上明記されている運営 委員会というものを設けております。その運営委員会には、業界の関係者の方々に加わ っていただいており、ここでまず議論をしていただき、業界での合意を取りつけた上で 、この部会にも御報告させていただいて予定運用利回りを変更するというプロセスを経 ております。  したがって、一般の中小企業退職金共済制度の退職金額についての規定を仮にその法 律から政令に移したとしましても、この審議会でこれまでのように御議論いただくプロ セスは従来と変わりはないと考えております。審議会で御了解をいただいた上で、予定 運用利回りの変更となるというプロセスについては、仮に法律を政令に変えたとしても 変更はないものと考えております。 ○部会長 ほかに、何かございますか。 ○委員 1つ伺いたいのですが、個々の内容にというよりは、もっと一般的な行革事務 局についてですが、何名ぐらいでこの事務局案を作っていて、その検討期間はどのくら いあったのか、ということがおわかりになれば教えていただきたいのです。と言います のも、新聞発表を見ていまして、事業内容についてそれぞれどのくらい深く分析をされ たのかなということを感じました。将来の日本の経済とか社会を考えた場合に、当該法 人の存在意義についてどのくらい認識されているのかと。  もちろん特殊法人の役割が終わったとか、そういうのもあると思うのです。それが一 律に、先ほどおっしゃったように命令で特殊法人について原則廃止か民営化すべきとい うのは、教育の領域などの発表の見ていまして、日本の将来の高等教育について考え方 というのがなくて、すべて役割が終わってしまった法人と、一律にとにかくやってしま うのかなと感じるので、どのくらいの期間をかけて何名くらいの方でこの事務局案など を作っておられるのか興味がありますので教えていただきたいと思います。  それから、どこから特殊法人の見直しをしていくかということについて、何らかの考 え方があるのでしょうか。 ○勤労者生活課長 行政改革推進事務局は去年の年末の閣議決定に基づいて設置されて います。実際には、今年の1月ぐらいから人が張り付いているというふうに思います。 人数は、正直申し上げまして何人ぐらいいるのかはわからないのですが、各省庁からの 出向者と、それから民間からの出向者から成り立っております。正確にはわかりません が、50名以上でやっているのではないかと思います。  これまでに何回かヒアリングを受けておりますし、またその資料もありまして、相当 膨大な資料を提出していまして、それらも十分検討した上でということではあるのだと 思います。今後の事務事業の見直しですとか組織形態の見直し、プロセスですが、そこ はまだ正直申し上げまして、どういう形で進められることになるのか我々もわかってお りません。 ○委員 もし私の記憶が違っていなければ、たぶん加入者というのは10%を切ってい るというふうに前に聞いた記憶があるのですが。そうなったときに、だから廃止してい いという極端な考えではないですが、1割未満である中でこれを存続させていくという 意義というものを何かもう一歩、加入者をどういう形でか増やしていくとか、もう少し まんべんなく皆さんに利用していただけるような方向に努力していかないと、1割未満 だったら民間でほかでやってもいいのではないか、という考え方が自ずから出てきてし まうような気がするのですが、その辺はいかがでしょうか。 ○勤労者生活課長 統計的に見ますと大体、1割程度ということですが、我が国の中小 企業は数でいうと非常にたくさんあるわけです。一般の中小企業退職金共済制度の加入 労働者が約270万人います。特定業種退職金共済制度まで合わせますと、500万人 の方がこの制度に加入しております。母数が非常に大きいものですから、加入率からす るとたしかに1割ですが、実数から見るとこれはかなりの方が加入されて、十分活用し ていただいているということが言えるのではないかと感じています。  ただ、そうは言ってもこれは任意加入の制度ですから、いかにその制度を安定的に維 持・継続するかというのは今後、加入者をまた増やしていくという努力が必要であると いうことは当然のことです。そういう意味では、今後ともいろいろな方法を通じて努力 をしていきたいと考えております。 ○勤労者生活部長 ちょっと補足します。一般の中小企業退職金共済制度に入っている 事業場の1事業所当たりの加入者数を見ますと6.5人なのです。ですから、いわゆる 零細な企業がこの制度に加入しているということです。仮にこの制度がなくなってしま いますと、そういった零細企業の退職金制度というものがなくなってしまう可能性もあ ります。 ○委員 この10%程度の加入率は、人数でなくて会社の数の比率ですか。 ○勤労者生活課長 会社の数、それから中小企業で働く労働者の方の数、どちらで見て も大体1割です。 ○委員 どっちという意味ではないのですが、逆に自分が行政改革担当であったとした ら、そういう判断をしないとも限らないので、発言させていただきました。 ○部会長 それでは、まだ議論があるかもしれませんが、これはこのくらいにしておき まして、次は財政状況についてです。前回もたしか御議論いただきましたが、それに引 き続いてお願いします。それでは、説明をお願いします。 ○勤労者生活課長 それでは、資料の数が多いのですが資料5から資料11まで、最後 の資料まで併せて御説明をさせていただきたいと思います。  まず、資料5ですが、前回の部会で委員から平成10年の法改正時の推計資料を出す ようにという御要請がありました。この関係資料は全体ではかなり膨大なものになりま すので、今回その中心的な資料をお出ししております。まず1頁目です。当時は予定運 用利回りが4.5%だったわけですが、これがずっと継続した場合という前提での推計 資料です。その推計に当たっての金利水準は、注3の所にございますように、平成9年 11月現在の金利水準が今後とも継続するという仮定を置いての推計です。内訳は、こ こにあるとおりです。ただし、その金銭信託については、平成9年度の実績がまだ出て おりませんので、平成8年度の実績をそのまま横伸ばしするという前提で推計をしてお ります。  ポイントを御説明しますと、平成8年度から4.5%の予定運用利回りが適用されて おります。したがって5年ごとの改正、5年待つとすると、平成12年度まで4.5% が続くということになるわけです。そうしますと、いちばん下の欄です。平成12年度 末には、その累積の欠損金が2,473億に達するという推計が出ております。こうい うような推計を前提に前倒しで改正をするかどうか、という御検討を審議会でいただい たわけです。  2頁目以降がその2年前倒しで、すなわち平成11年度から予定運用利回りを変更す るという前提での推計です。かなり細かく切っておりますが、これらの推計はいずれも 平成9年11月現在の金利水準が続くという仮定を置いてのものです。2頁が4.0% で、3頁が3.5%、かなり細かいきざみで数字を出しております。4頁が3.3%で 、5頁が3.2%、6頁が3.0%、ここまでの推計を出しているわけですが、途中を 省略させていただきまして、6頁の3.0%の所を見ていただきたいと思います。  平成11年度から3.0%に予定運用利回りを変更したわけですが、当時の推計でい きますと平成11年度においては単年度で、真ん中の欄ですが「当期純利益」と書いて ある欄をご覧いただきたいと思います。平成11年度については113億の黒字が出る 、年度ごとに若干黒字は減っておりますが、5年後の平成15年度においても単年度で 85億の黒字が出るであろうという推計です。  1点御注意いただきたいのは、注4にあるとおり10年度以降もその付加退職金の支 給率を0として計算しております。すなわち、単年度の剰余金はすべて累積欠損金の解 消に当てるという前提となっています。  こういう推計、一定の仮定を置いたその将来推計を基に審議会でも時間をかけて御議 論をいただいた結果、最終的にはその3.0%という予定運用利回りの水準に設定をし たと承知をいたしております。7頁以降ですが、前回、委員からも御指摘がございまし たが、これはあくまでも参考資料という形ではありますが、金利が今後上昇するという ような推計も併せて審議会のほうに提出されております。  具体的には、その注3の所にございますが、今後景気が回復すると仮定してそれぞれ の試算について、平成10年度から平成13年度まで、平成14年度、平成15年度と 若干上向きの水準を設定して推計をいたしたものです。  当時の審議会の議論の中では、その使用者側の委員の方の中には、もっと厳しめに見 て3.0%よりも下げるべきではないかという御意見の方もいらっしゃったわけですが 、当時はどちらかと言うと、金利はこれ以上下がることはないのではないかという、あ るいは、金利もこの辺りが底で、その後徐々に回復するのではないかというような見方 がどちらかというと多かったように見受けられます。  そういう前提で、金利の上昇の推計というものも併せて出しておりますが、これはあ くまでもその参考資料という形で出しておりまして、この前の現行水準が継続すると、 こういう前提での推計を基にその推計を中心に御議論をいただいたと承知をしておりま す。この推計の説明は、省略させていただきたいと思います。  次に資料6です。当時の推計と実績はどう乖離が生じているかを簡単に整理したもの です。1頁の真ん中の欄の「運用利回り」をご覧いただきたいと思います。推計結果と 実績とに分けております。平成10年度を見ていただきましても、推計が3.83%の ところ実績が3.23%ということで、かなりの差が出てきておりますが、実際にその 予定運用利回り3.0%は適用されました。  平成11年度につきましては、当時の推計が3.66%のところ、実績が3.08% となっております。推計では113億の黒字が出るとの見込みだったわけですが、実際 は、僅か9億の黒字に留まっております。  平成12年度につきましてはさらに大きな乖離が生じておりまして、推計ではその3 .57%、97億の黒字を見込んでおりましたが、実績は2.33%で、207億の赤 字ということです。このように、かなり大きなギャップが生じてきてしまっているとい うことです。  次の頁は、それぞれの試算ごとに推計の水準と実績がどう変化をしてきたかというも のを簡単に整理したものです。一部、実績が想定を上回っている部分もありますが、ほ とんどが想定を下回っています。  次はちょっと推計資料とは異なりますが、前回、委員から御要請があったもので、勤 労者退職金共済機構の方で取れるデータをまとめたものです。資料7と資料8です。退 職者の年齢別、あるいはその退職事由別の構成比、あるいは事業主とか労働者の、加入 者の方々の脱退状況について、統計として整理したものです。  資料7は、退職者についての年齢別、あるいはその退職理由別の構成比です。実は、 これは平成10年度からしかデータはございません。これよりも古いデータはありませ んので、3カ年だけ付けさせていただいております。1頁は平成10年度でして、次が 平成11年度、さらに平成12年度とあります。傾向としては大体同じでして、上が退 職者の年齢区分別の構成比ですが、傾向としてはやはり50歳までの若い世代の退職者 が比較的多いということが言えます。  下の年齢別の退職理由別構成費を見てまいりましても、29歳以下を見てみますと自 己都合退職が圧倒的に多いわけですが、年齢が高くなるにしたがってその自己都合退職 の比率が少なくなりまして、事業主都合が多くなるという傾向が見て取れます。  続いて資料8です。加入者の脱退の状況です。これもなかなか企業の倒産によるもの かそうでないのかというような数字は、厳密に言えば取るのは難しいのですが、脱退の 内訳として、全員退職か全員解約かというデータがございます。全員退職というケース は、おそらく倒産などによるケースが多いのではないかと見受けられます。全員解約と いうのは、経営が厳しいといったようなことなどで例えば掛金の納付を滞納したり、あ るいはやむを得ない事情があって解約をしたいというものと思われます。中小企業退職 金共済制度の加入者がその解約をする場合については法令上一定の制限がございまして 、そう簡単に解約ができないような仕組みになっておりますが、経営状態が厳しい等の 理由によりまして、掛金の納付が困難になるといったようなケースが、この全員解約の 理由として挙げられるのではないかと思います。  これを見てまいりますと、脱退の合計でいきますと、事業主ベースで見れば件数とし ては年々増加する傾向にあるということが見て取れます。また、その内訳としましても 、全員解約よりは全員退職の方が増えているという傾向が見て取れます。  では、その被共済者の方はどうかということですが、これはかなり年によって増減が ございまして、一概にその傾向がどうかというのは言いづらい面はございます。年度に よって若干増えたり減ったりということです。ただ、内訳を見てまいりますと、解約者 よりは退職者が増えるという状況にあるということは見て取れます。  次に今後の収支見通しということで、これも前回、委員と委員から、もうちょっと具 体的な推計資料をという御指摘を踏まえたものです。実は推計はかなり手間のかかる作 業でして、数字がちょっと動いただけでその責任準備金の積算額等が大きく変わってく るものですから、時間を要したわけです。本日お出しした推計は、7月初めの金利水準 が今後も継続するという仮定を置いた場合の推計です。具体的には注2の所です。平成 13年7月2日現在で金利水準を設定しております。そのうち金銭信託については、平 成12年度の実績の利回りをそのまま横に伸ばして推計をいたしたものです。  これをご覧いただきますと、予定運用利回りは平成11年度から3.0%に移行した わけです。5年間継続するということになりますと、平成15年度までということにな るわけですが、そうなりますと、平成15年度末の累積欠損金が3,049億と、平成 12年度の末の水準のおよそ1.5倍にまで達してしまうことになります。  次に資料10です。これは、1年前倒しで平成15年度に予定運用利回りを変更した 場合の推計です。前提はあくまでも前の資料と同じように、7月初め現在の金利水準が 継続すると仮定した場合の推計です。予定運用利回りにつきましては切りのいいという ところで、2.0、1.5、1.0、それぞれに変更した場合で推計を行っております 。この推計も注3にございますように、付加退職金の支給率を0として積算をいたして おります。すなわち、各年度ごとのその剰余金についてはすべて累積欠損金の解消に向 けるという前提での推計です。これを見ていただきますと、予定運用利回り2%の場合 、1年前倒しで改正したとしても、初年度からかなりの欠損金が出るという状況です。  1.5%にした場合ですが、初年度の平成15年度は102億の黒字と、単年度の黒 字となります。しかしながら、年々の黒字額が減ってまいります。これは前回もちょっ と御説明しましたが、運用資産の約7割を占めます債券につきましては、金利が高い時 代に購入したものが順次償還を迎えておりまして、これが低い金利の債券に置き換わる ということによりまして、当面は債券部分の平均利回りは低下していくということが見 込まれるわけです。そういうことによって当期の利益金も、年度を追うに従って減少が 見込まれるわけです。  5年後の平成19年度につきましては、1.5%に下げても当期利益金は15億ほど に留まるという見込みです。ちなみに、平成19年度の累積欠損金は2,376億でし て、平成12年度末の水準を300億以上上回ると、こういう推計になっております。  次の頁です。これは、前倒しで改正をせずに5年経つまで待った場合、どのぐらいの 差が出てくるかという推計です。これは、平成16年度の1.5%の欄をご覧いただき たいと思います。一例をお示ししますと、平成16年度から1.5%に下げた場合です 。平成16年度の累積欠損金が2,971億です。これに対して、前の頁ですが、1年 前倒しをして改正した場合は1.5%で、平成16年度が2,498億の累積欠損金と いうことですので、500億近くの差があるということです。そういう意味では、1年 前倒しする効果はかなりあるのではないかということが窺われます。  ちなみに、今回の推計はあくまでも7月初めの金利水準が今後とも継続するという仮 定での推計ですが、別途、構造改革などの経済シナリオを織り込んだ推計を行っており 、もし間に合えば、次回の審議会にはお出ししたいと思っております。  最後の資料です。資料の説明が長くなって恐縮です。「中小企業退職金共済制度の課 題」ということで1枚紙で資料をお出ししております。このような推計も踏まえまして 、とりあえず現時点で、事務局としての問題意識を整理したものです。本日も含めまし て今後、審議会で御議論いただきたいと、事務局が考えているポイントを簡単にまとめ たものです。  最初の1です。中小企業退職金共済制度の安定的運営について、「景気低迷が続き、 金利や株価が低水準で推移していることから、一般の中小企業退職金共済制度において は実際の運用利回りが予定運用利回りを下回り、責任準備金の積立て不足が拡大し、厳 しい財政状況となっている。今後2、3年は聖域なき構造改革を行う日本経済の集中調 整期間と位置づけられており、低成長が予想される中どのように中小企業退職金共済制 度の財政の安定化を図っていくか、早急に検討を進める必要がある」というもので、い くつかの項目を整理しております。  まず、現在の予定運用利回りのままでは、今後とも安定的に制度を運営することは困 難ではないか、2つ目に、責任準備金の積立不足の解消をどう図っていくか、3つ目に 、予定運用利回りを引き下げた場合という前提ですが、単年度の剰余金が発生した場合 、累積欠損金の解消と付加退職金の原資にどのように配分すべきか、金利情勢、責任準 備金の積立て不足の状況、付加退職金を考慮した上で今後、安定的に制度運営ができる 予定運用利回りをどう考えるか、どのように資産運用の効率化を図っていくべきか、退 職金額の設計のあり方、退職金カーブ、退職金・付加退職金のあり方等についてどう考 えるか、予定運用利回りについて法律事項を政令事項に変更すると、経済・金融情勢を 踏まえた機動的な対応が可能となるような仕組みについてどう考えるかについてです。 それから2のその他としまして、特殊法人改革の動向や社会経済情勢の変化を踏まえ、 中小企業退職金共済制度の運営主体である勤労者退職金共済機構の事業のあり方につい て検討を行うべきではないかということについてです。  これらの点について今後、審議会で御議論をいただきたいと考えております。以上で す。 ○部会長 ありがとうございました。何かありますか。 ○勤労者生活部長 いまちょっと課長から御説明をさせていただきましたが、最後に中 小企業退職金共済制度の課題ということでお話をしたペーパーがございます。この中の 1の最初のマルに関連して私のほうから、私どもの運用の考え方を申し述べたいと思っ ております。  現在の予定運用利回りのままで、今後とも安定的に制度を運用することは困難ではな いかということです。これは、法律では第90条で少なくとも5年ごとに検討をすると 書いてございますので、ぎりぎりその見直し期間を延ばすとしますと、先ほど見ていた だきましたように16年度から改正をするということになり、具体的な検討を始めるの は来年のいまごろということになるわけです。いま、私どもの説明資料では、それで大 丈夫か、ということをお話をしてきたわけです。1年見直し時期が遅れることによりま して、先々の責任準備金の不足というものが相当膨大になってくる。またそれを今後解 消するためには、さらに時間がかかるような計算になります。そういう観点からしまし て、私どもとしましては、内容をどういうふうにしていくかということについて、まず 皆様方にいろいろ御議論をいただくことになりますが、いつこの検討をするかというこ とについては、5年を待たずに、いまの段階から検討を開始させていただき、来年の通 常国会にこの中小企業退職金共済法の改正法案を提出する方向で、皆様方の御検討をお 願いできないかと考えております。  先ほどの資料を見ていただきますと、昨年のいまごろの数字は3.02%でしたか、 予定運用利回り3%のほんの少しプラスということもあり、昨年については見直しとい うことについてはちょっと、私どもからの提案ができなかったわけですが、数字がここ まで固まってまいりましたし、今回の同時多発テロの影響で世界経済が相当より深刻な 状況になってきていること、また、日本経済の見通しにつきましても、先ごろIMFが 示したものにおいても今年はマイナス成長になるというような、相当大幅な下方修正が されております。経済がすぐ回復するということもなかなか見込みにくいというような こともございますので、1年前倒しということになるわけですが、皆様方の御検討を是 非お願いしたいと思います。 ○部会長 それでは、部長の御発言を踏まえながら少し議論をしたいと思います。今日 提出されました資料等について、何か質問等はございますか。 ○委員 先ほど課長さんのほうから御説明がございましたが、前回のとき、私がちょっ と金利が上がるのではないかという話をしたというような御説明だったのですが、私は 、そういうことは言ったつもりはないと思います。むしろ労働側のほうから、すぐ景気 が上がれば少し良くなるのではないかというような話が出てきて、多分私は、金利が少 し上がっても過去の高い金利のものが借り替わっている部分が大きいので、そこは安全 サイドを見て考えた方がいいということで楽観論に立つよりは制度の安定的な運用が重 要なので、むしろ現実的な水準に金利を設定して、付加退職金制度をうまく活用しなが ら利益が出たときにはその利益の一定比率を還元するといった、その辺の考え方を整理 しておくということがいいのではないかと申し上げたと思います。予定運用利回りに係 る運用を楽観論に偏することなく、両方向にバランスのとれたものにする。付加退職金 制度というのはそのために作った制度ではないかという話をちょっと申し上げた経緯が あります。  現実には、やはりそういう状況になっているのだと思うのです。それで、今年の春の 決算状況は出ていないということで、今年度は厳しくなりそうだという話があったとき も、もう多分去年末からの景気の下降局面で、しかもいまのマクロの経済運営を見てい ると、やはり金利情勢というのは今後3、4年低水準が続くということが避けられない ので、早く見直しをされたらどうかということを申し上げたと思うのです。  そういう意味ではやはり、安定的に、いわゆる零細企業に働く従業員の方々の制度と して維持していくためには、逆に言えばこの臨時国会で法案を提出するというぐらいの ことがあってもよかったのではないかなと思います。いずれにせよ、少なくとも通常国 会への提出は不可欠ではないかなと思っております。  あと、実際にいままでの法改正などですと、周知徹底期間ということで半年ぐらい、 またはその法律が成立したあと施行まで間を置くのだと思うのですが、そこは政令ベー スに落とすということが私はやはり、そのほうがもっと機動的な対応ができるという意 味で、いちばん望ましいのだと思います。  仮に法律で今回のところはしないといけないということになった場合でも、周知期間 というのはもっと弾力的に考えていいのではないでしょうか。というのは、加入者が直 接制度変更に伴って影響を被るわけですから、加入者に対して個別に通知をするという ことで周知が図られるわけです。あと、新しく加入する人は今度、新しい制度に変わる ことがわかって加入するわけですから、そこの期間はもっと弾力的に考えるということ で少しでも早い施行が望ましいと思います。  次回の改正はいずれにせよ法律改正による制度変更が伴いますから、政令に落とすに しても同じような問題が出てくるのだと思うのですが、そこはもっと制度設計として機 動的に、公布から施行までのタイムラグをあまり大きくしないような対応を考えていた だいたらいいのではないかという気がいたします。 ○勤労者生活課長 最初の点ですが、ちょっと私の説明の仕方がまずかったのではない かと思いまして、反省しております。私が申し上げたのは、前回の改正の中で、使用者 側の委員の中で、3.0%ではなくてもうちょっと厳しめに見るべきではないかという 意見をおっしゃる方もいらっしゃいましたということでして、ただ、大勢は、やはり今 後少し良くなっていくのではないかという見方が一般的であったと、こういう趣旨で御 説明いたしましたので、誤解があれば恐縮です。 ○委員 委員は既に結論めいたことまでおっしゃったのですが、私は最初、この問題の 審議の始まりに、慎重に審議してほしいと申し上げておりますが、退職金を受け取るの が労働者であって、当然運用利回りが下げられて、そういうベースで計算されれば退職 金額は減ると、そういうことは明らかなわけです。そういう重要な問題でいまや退職金 というのは、法律上の規定はないものの、日本では労働債権としてもう確立している。 そういう意味から言うと、このような相次ぐ引下げというのはなかなか中小企業労働者 は認めがたいだろうと思います。だから余計慎重に審議をしてほしいと思います。  1つ、2回ほど申し上げましたが、こういう運用しかできなかった責任は誰にあるの ですか。そんなことを言っても始まらないと思いつつも、課長は、国にありますとおっ しゃいましたから、今度の問題について予測を下回るような運用しかできなかった責任 については、どのようにお感じか、まず、そこまでお願いします。あと一言、言いたい ことがあります。 ○勤労者生活課長 前回の制度改正のときには先ほど御説明したような、一定の仮定を 置いた上での推計資料を基に御議論をいただいたわけです。なかなか、いまから振り返 ってみますと、当時の推計は甘かったのではないか、ということは言えるのではないか とは思いますが、やはり当時の状況を考えるとなかなかこれ以上厳しい金利水準を設定 するのは難しい面があったのではないかと思います。あくまでも一定の仮定を置いた上 での推計を出して、それをベースに審議会で御議論いただき、でこういう3.0%とい う水準になったと我々は理解しているところです。  そういう意味で将来における金利がどう変わるかを見通すというのは非常に難しいわ けですし、今後、実際金利や株価がどうなるのかというのはなかなか見通せないわけで す。そういう状況の中での一定の仮定を置いた将来推計に基づく議論というふうに、私 どもは理解をいたしているところです。 ○委員 たぶん予定運用利回りをいくらにするかというのは、前回の改正時もこの場で 随分議論して個々意見があったのだと思いますが、最終的には、個人的なところはべつ にして、ここの場での議論の結果として3.0%というのを了承したわけです。その時 点での判断として、行政庁だけではなくて我々審議会委員としても、そこはそれでやろ うということだったのだと思うのです。  それでやはりマクロ経済情勢とかが、不良債権処理などがこれまで尾を引くと思って いなくて、経済市場もあの当時はたしかに実態経済面や、生産とか何とかが上向いてき ていたわけですから、それがまた昨年末から急速に悪化しているということで、今度は 暫く不良債権が表に出てきて長引きそうだということなので、そういう状況変化に合わ せて、やはり機動的に見直しをしていくということしかないのではないかと思っていま す。  いずれにせよ、金利予定利回り率3.0%がいいのかどうかというようなところで議 論は随分したと思うのですが、最終的には、やはりいろいろな意見があった中で最大公 約数ということで、この場でもそういうことで了承したわけなので、それの責任問題は どうこうしても、やはり皆様の知恵を出して、それでしょうがなかったということだと 思います。むしろいまの時点で、またどう考えるのかということを真剣に、議論をする ことがここの課題なのではないかという気がいたします。 ○委員 あたかも今日の会議で配られたいろいろなシミュレーションなどを見ながら、 運用利回りを引き下げなければいけないという結論は、まだまだちょっと時間がかかる のではないかと私は思います。委員がおっしゃいましたように、退職金というのは私ど もは賃金の後払いだと思っておりまして、中小企業の労働者にとっては非常に大切な賃 金なわけです。今日の統計資料にもありますように、何らかの形で倒産だとか、企業の 運営上脱退しなければならないということは、この数字で全部読み切るかどうかという のはなかなか難しい数字ですが、やはり少し増加傾向にあるということも事実だと思う のです。  そういう中で、この退職金制度を使っていて退職金を得る労働者にとっては重要な生 活の糧だということは、これは皆様、お互いに認識できる話だと思うのです。その退職 金がきちっと労働者の手元に渡るのかどうなのか、ということが非常に重要な課題であ りまして、今日示されたシミュレーションの中でも、例えばこの退職金制度の運用利回 りをどうするかというときに、このままの現状の270万規模でやっていくということ が前提なわけです。では例えばもっと規模を拡大するとか、そういう努力がされたのか どうなのか。ずっとこのまま270万の規模でいくのかどうなのか、という議論はされ ていないわけです。明日にでもただちに270万がやめるわけではないわけですから、 そのときに規模がどうなのかとか、長期的な運用の仕方についてもう少し研究していた だきたいと思います。  それと委員もおっしゃいましたが、私どもとすれば、ではあの当時の審議会、私は当 時の審議委員ではないわけですが、やはり当時どういう議論をしたのか、お互いに経済 見通しをどう立てたのか、そういうことに対する責任はやはり感じなければいけないの だと、私は思うのです。  それと同時に、私は今回初めて委員になったわけで、当時下げるときにどういう議論 をされたのか、どういうことが確認されたのかということについてもきちっとわかって おりませんので、できたらば次回、過去のことを遡って責任追及をしようという話では ありませんが、これから何らかの形で新たなものにしていかなければならないとか、改 正しなければいけないということであるならば、前回のときにどういう議論がされたの か、お互いにどういうこと、労働者側が、使用者側が、また公益の先生方が、そして労 働省がどういうふうに意見を述べたのか、どういう確認をされたのか、そのことも少し きちっと明らかにしていただきたい。  この中小企業退職金共済制度の資金運用方法について、私は運用のプロではないわけ ですので、もう少し運用の専門家からそういう運用についてのお話もお聞きしてみたい と思いますので、少し慎重なと言いますか、検討会を何回か開いていただいて、それで 次は機動的な対応をする方策などについても、そういう所でもう少し御議論をしたほう がよろしいのではないかなと。  そういう意味では労働者側としては、今日の経済情勢がどういうふうな状態にあるか ということは十分に認識しつつも、慎重にやって対処していただきたいというのが私の 意見です。 ○委員 委員が御発言になっていることも十分理解しているつもりです。でも結果的に こういうことになって、また下げなければならないと。そういう議論をするのは非常に 辛いことですよね。責任の一端は、委員である私も感じてはいます。そこで、実際これ を所管される厚生労働省の責任や如何にと一言、言いたいと、そういう気持ちがあると いうことを申し上げておきたいと思います。  それと、次の回に資料を出されると言いましたが、この経済財政諮問会議が6月に出 した骨太方針というのがありますね。あの人気の経済財政大臣は、この6月22日の読 売新聞のインタビューに答えて、「2、3年の間0〜1%程度の低成長に陥るが、構造 改革が進めば、潜在的な成長能力は2%半ばから3%程度まで高まる」と述べて見える のですね。公然と発言して見える。これを発表されて、小泉自民党さんは大勝なさった わけです。国民に責任があるわけです。  不良債権の処理の問題が出ている。不良債権の処理は中小企業に集中して非常な倒産 が出るだろう。失業者も中小企業に集中する、大手もたくさんリストラしておりますが 。非常に厳しいのはここ2、3年で、皆さん、痛みを分かち合いましょうと。その先は かなり明るい展望がありますよということを言っているわけですよ。  先ほどの、こういう資料のほかに出されるというのは、この基本方針、骨太方針に沿 った資料を出すと、そういう意味ですか。 ○勤労者生活課長 こういった骨太方針と言いますか、構造改革の考え方も取り入れな がら、ある程度の経済シナリオというものを描いた形での幅を持たせるような推計にな るかもしれません。比較的構造改革期間が終わったときに少し順調にいくケースと、い ま同時多発テロが起きて株価もドンと下がってますし、今後、世界経済もかなり低成長 が続くのではないかというような意見もあるわけです。そういう意味での少し悲観的な 見方も加えたシナリオといったようなものも、両方お出しするような形でできればいき たいと考えております。 ○委員 私は、今回の同時多発テロということでまた一段と冷え込んでいるということ はあるのですが、今年度の4〜6月期のGDPの速報が、前期比△0.8ということで 、かなりの落ち込みになっているのですね。その後の、7月以降の指標もそういう厳し い数字が多くなっている、つまり、同時多発テロの発生以前ですらあまり良い数字は出 ていないわけです。だから、そういう意味では、中期的に見ても、財政経済担当大臣が 言っているほど楽観できないマクロの経済情勢ではないかと思います。  したがって、政府の考え方はそれを努力目標にということなのかもわかりませんが、 やはりいろいろな制度設計をする上では、もう少し我々が現場で、委員の気持は全く同 じですので、やはり働く人の安定ということも考えなくてはいけないということだと思 います。然るがゆえにやはり、安定的な制度として維持していくということを、もう少 し現実的なレベルで考えないといけないのではないかなという気がいたします。 ○委員 そういう意味でも、私も少しやはり日本経済の状況をどんなふうに見るかとか 、現実的にどんなふうに見るかとか、それから、こういう中小企業退職金共済制度の運 用というか、安定的な、効率的な運用というふうな言い方をしていますが、どういう運 用が相応しいのか、そういうことについて専門家からお聞きしながら私たちも、やはり 認識を深めて次の課題へ向かうということが必要なのではないかと思っています。今日 の経済の厳しい状況については、私どもも非常にそこは認識は同じだというふうには思 っております。  もう1つ質問なのですが、中小企業退職金制度の課題の資料の11に出ているその他 の所で、勤労者や退職金共済機構の事業のあり方について検討を行うべきではないかと いう表現があります。事業のあり方というのは、具体的にここは何を指すのかというの をお聞きしたいと思います。 ○勤労者生活課長 総論的に少し御議論をいただく必要があるとは思っておりますが、 例えば特殊法人改革の中では、融資事業について廃止すべきではないかというような意 見が出されているわけです。そういう意味で、やはりいろいろなそういう指摘も踏まえ て勤労者退職金共済機構の事業のあり方について考えていくべきではないかと。そうい う趣旨でございます。 ○委員 建設業についてはいま団体の中で建退共問題委員会というのがあるのですが、 そこでは運用利回りの話などは問題ではありません。、法人の民営とか廃止かという問 題をどう解決するかということが結局課題になっております。12月にその政府の方向 、提案があるということですが、その間何か情報が、この問題について細かい情報が入 り次第厚生労働省さんのほうから情報を出せるのでしょうか。そういうものをちょっと 私たちは非常に気にしているのです。  これは民営化の話になりますと、公共の事業の民営化って何かよくわからない。勤労 者退職金共済機構の民営化というのは何なんですかね。もっと問題が大きいような気が しますね。特に大事なものだと思っています。その辺はどうなのでしょうか。先ほど、 エージェンシーの話がありましたね。あれはどう考えておられるのですか。 ○勤労者生活課長 エージェンシーというのは独立行政法人です。当初の整理としては 、特殊法人を廃止するか、民営化するか、独立行政法人化するか。あとその他というの がありましたが、もういまはほとんどそのその他というのは、例外的なケースとして考 えているようです。ですから、大きな流れとしては3本あるわけですが、先ほどの私の 御説明の中では総理の考え方として、すべてが独立行政法人ということではなくて、ま ず廃止か民営化ということを前提に検討を進めろと、こういうような方針があったわけ です。ただ、その独立行政法人というルートがなくなったということではございません ので、それはまだそのそれぞれの法人の行っている業務の特性等を配慮してどれかに振 り分けるということになるわけです。 ○委員 どれかに。 ○勤労者生活課長 ええ、どれかに振り分けるということでして、私どもの意見として は最初の2つ、廃止と民営化というのが勤労者退職金共済機構の場合は困難ではないか と、こういう意見を行革事務局のほうに出しているということです。 ○委員 だけど、道路公団については差し戻しになっています。非常にシビアにこの問 題を深刻に受け取っておりますが、果たして何かこう、ちょっと私はこの会で形だけの 分け方のような気がしますが。民営化すらどうなるかとか、もっとなんでできないかと かいう話を。12月と言ったらあと2カ月後ぐらいです。 ○勤労者生活課長 先週、行革事務局のヒアリングがあったと申し上げましたが、その 際には廃止できない理由、民営化できない理由、これをかなり詳細にこちらのほうから 説明をして、こちらの意見は十分聞いていただいたというふうに思っています。 ○委員 ちょっと関連してですが、前回、この一般の中小企業退職金共済制度と建設業 退職金共済制度の問題が出ましたね。巨大某省が民営化論で走りまくったわけです。そ のように、私は認識しているのです。  今回、これは厚生労働省の所管の事業ですから、当然厚生労働省が回答される。それ で正しいと思いますが、あの巨大某省と折衝はなさっているのか、どういう意見を述べ ているのか、それがわかれば教えてほしいと思います。 ○勤労者生活課長 これは適宜こちらの意見を、行革事務局に対してはこういう意見を 出すということを国土交通省のほうにはお伝えをしております。 ○委員 それだけ、何も言っていない。向こうが何かを言っているか、と聞いているわ けです。 ○勤労者生活課長 いや、特段意見という形ではいただいておりません。 ○部会長 では、その辺の情勢はいろいろ変化がある度にまたこの部会でも御説明をお 願いします。今日はもう予定の時間ですから、とりあえずこれくらいにさせていただき たいと思います。 ○委員 これから見直しをすることなので、また次の回なのかもしれませんが、やはり 1つ考えていかなければいけないことは、ほかの、先ほど特退金の話も出ましたが、特 退金などでやられている所などで見ましても、やはり厳しい状況の中でも1.5ぐらい になっている所が多いと思うのです。したがって、試算のレベルで2とか1.5とか1 .0という試算などがされていますが、やはり国がやっているもので特退金よりも下回 るということは、あり得ないのではないかとは思うのです。逆に、そうすると1.5は あまり切れないということで考えると、先ほどの試算で言うと平成15年度、16年度 、速やかに法改正をした場合でも黒字というのは100億とか86億とか、そういうく らいのオーダーですね。ですから累積している積立て不足の額からすると非常に小さい 、収益構造は黒には転じますがそういうことなので、やはり速やかにやるということが 非常に不可欠だということなのではないかと思うのです。ですからその辺も是非、スケ ジュールとか何かを考えられる際にお考えいただければと思うのです。 ○部会長 それでは、次回はまた御都合を伺って調整させていただきますが、今日の御 議論を踏まえて適宜資料等を出していただいて、またこの件についての議論を深めてい きたいと思います。今日は、これで終わりにさせていただきます。どうも御苦労さまで した。 (注) 配付資料については多量のため省略しておりますが、厚生労働省(大臣官房総 務課行政相談室又は労働基準局勤労者生活部勤労者生活課)において供覧しております 。 照会先 厚生労働省労働基準局勤労者生活部勤労者生活課     担当:河野・武村     03(5253)1111(内線5376)