01/09/28 第4回医師臨床研修検討部会議事録 第4回医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会                 日時 平成13年9月28日(金)                    14:00〜                 場所 厚生労働省本館専用第21会議室17階 ○医事課長  ただいまから「医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会」を開会させていただき ます。部会委員の皆様には、大変にお忙しい中をご出席いただきまして誠にありがとう ございます。初めに、8月31日付で人事異動がございまして、伊藤前局長に替わりま して篠崎医政局長が着任いたしておりますのでご挨拶を申し上げるところなのですが、 交通事情によりまして到着が遅れておりますので、到着次第ご挨拶をさせていただくこ とにさせていただきたいと思います。なお、本日の出欠につきましては、井部委員、黒 川委員、櫻井委員、高梨委員の4委員からご欠席という連絡をいただいております。ま た、本日も文部科学省から高等教育局医学教育課の村田課長が出席をしております。よ ろしくお願いいたします。それでは、矢崎部会長、よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  本部会も4回目になりましたけれども、また委員の皆様の活発なるご意見を賜りたい と思います。本日は論点検討の第2回目が、前回、星委員からご紹介のあった「日本医 師会が臨床研修について実施した調査」について星委員より発言が求められております ので、最初にご紹介いただければと存じます。 ○星委員  お手元に資料を用意させていただきましたが、これは、10月1日に発行予定の日本医 師会雑誌の別刷りで、別刷りが先に出来たという形ですが今日に合わせて提出をさせて いただきました。  調査の内容が多岐にわたっておりますので、一つ一つご説明することは避けさせてい ただきますけれども、今回、議論を進めていくに当たり必要であろうと思われるいくつ かの情報が含まれておりますので、先生方のお手元に置いていただければと思います。 概略をご説明させていただきます。  開いていただきまして、「目的」は目的なのですが、調査の方法としまして3月30日 時点での研修指定病院、付属病院、合計512施設の病院からの教育指導責任者を選んでお ります。また、2000年度及び2001年度の医学部医学科の医科大学卒業者の510名と。これ は、医師会にございますデータベースを使って抽出した510名と、それから、研修指定病 院からの対象者が少ないということで、50の病院から無作為に選んだ150名を追加してお りまして、合計660名を対象に行っております。  そのまとめといいますか、折茂先生に次の頁の□の中にまとめていただいておりま す。実は、回答率が非常に低うございますけれども、全体像といいますか、研修医のい まの悩みあるいは指導医の悩み、あるいはこういう研修にしたいといったような中身に ついて比較的うまくまとめられているのではないかと思っております。2、3ご説明申 し上げますと、「アンケート集計を読んで」という所を見ていただきたいのですが、研 修医側から見た問題点として「研修の内容について、現状では救急医療および診療所、 老健などでのプライマリケアについての研修が少なく、その重要性が指摘されている」 と。(2)の「待遇」という点ですけれども、「アルバイト先は研修病院以外の施設が多 く、不十分な教育のまま第一線の診療現場でアルバイトをしている実態が浮かび上が る」というような指摘もございます。  また、研修指導医側から見た問題点としては、研修指導医には一定の資格が必要であ るという認識あるいは研修指導医の身分、経済的な保障が必要だという意見が多いと。 あるいは、指導医の質についての評価をしなければならないのではないかということで ございます。研修病院の側から見た問題点として「経済的な保障が必要だ」という意見 があります。  かいつまんでご説明しますと、次の右側ですが、Bの項目で「卒後研修はどこで受け ていますか」と。これが、大体、集団の属性を示しておりますけれども、先ほど申し上 げましたように、臨床研修指定病院は別個に対象者を設けておりますので、臨床研修指 定病院で研修を受けている者が44%ということで、いまの研修を実際にしている人たち のバランスとは若干異なる形になっているのをご注意して見ていただきたいと思ってお ります。  次の976頁のいちばん上のFの所ですけれども、k研修医に対する質問で「あなたが受 けている研修で不足していると思われるものは何ですか」というようなことがここに書 いてあります。次の頁をずっと見ていただきたいと思いますが、面白いところでは982 頁の「親からの経済的援助を受けていますか」と。「はい」という者が10%程度いると いうところもございます。その後、984頁ですが、DDという真ん中のグラフです。 「臨床研修必修化に際して改善すべき点はどこでしょうか」と。991頁、こちらは研修 指導責任者に対する同様の設問ですけれども、それと比較をして見ていただけると、研 修を受けている者、あるいは研修の指導をしている者の問題意識というものがご理解い ただけるのではないかと思います。  987頁、研修教育指導責任者への質問ということでございまして、冒頭に申し上げたと おり、「地域の他施設での研修の必要性を感じますか」ということに関して、実習の指 導をしている者の意見として「必要である」というのが、46%という数字が出ておりま す。「地域の施設での実習をコーディネートする第三者機関が必要だと思いますか」と いう問いの答えには34%の方が必要だというような意見を述べています。  992頁以降、自由意見ということで要旨をまとめております。読んでいただければと思 いますけれども、私どもの立場として強調したいのは、992頁の左側のコラムの下から9 行目の所ですけれども、「臨床医としての知識、技術を効率よく身につけるには、大学 病院よりもむしろ地域の第一線の総合病院内でのローテーション研修がよいと思われ る」といったような意見を初めとしまして、研修方式あるいは経済的保障、労働条件、 指導体制その他についての意見が出ております。時間をあまり取っては何でございます ので、詳細はご一読いただくことをお願いいたしまして、簡単ですけれどもご紹介をさ せていただきました。 ○矢崎部会長  日本医師会が実施された調査のまとめを星委員からご説明いただきました。何かご質 問あるいはご意見がございますでしょうか。 ○中野委員  975頁のB、先ほどのご説明で、たしか、1回目か2回目で拝見しました資料の分布と 少し違っているというのは、もう少しご説明いただけますか。これ、サンプリングなさ っていらっしゃるのですか。 ○星委員  サンプリングの方式が違いまして、サンプリングの基は、約510名の方は、実際に医師 会員になられている方の中からデータベースを使って抽出した500名の方です。その中で 臨床研修指定病院で実際に研修を受けていらっしゃるが少ないというようなことを考え まして、973頁の右側のいちばん下ですけれども、研修指定病院から50病院を無作為に選 んで研修教育指導責任者にそれぞれ3名分の研修医のアンケートを渡して自分の所の施 設で研修を受けている研修医に渡して回答をお願いするというような形で合計660という 数を選んでおります。母数としまして、どこに所属しているかわからないという所から の510名の抽出に加えて、臨床研修指定病院に特化して50掛ける3ということで150名の 調査対象を選んでいるということでございまして、そういう意味でのバランスが一般に 言われています例えば75%の大学病院で研修を受けているというようなデータからする と若干ずれていると、そういう意味でございます。 ○中野委員  そうしますと、確認しますけれども、これはかなりバイアスがかかったサンプリング であるということは間違いないですね。この中身ですけれども、種々の意向とか気持の 調査がありましょう。これはまた関係ないものと見といていいのですか。要するに、バ イアスがかかった上での話であるということですか。 ○星委員  もちろんそうでございまして、中に書いてありますけれども、その3つのカテゴ リー、つまり、どこの病院で受けているかと。言えば2つの病院なのですが、そこで受 けている場所によって、回答内容の違うものについてはそれぞれ別掲で掲げてございま す。ですから、その辺りのバイアスといいますか、母数のずれ、母体の抽出のずれとい うものについては補正をして、検証をした上でやっております。 ○中野委員  わかりました。ありがとうございました。 ○矢崎部会長  そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。サンプリングの点、ご指摘のと おりだと思いますが、指摘された問題点についてはいままでこの会で議論されたものが 集約されているように思われます。前回、研修医の処遇の問題についてディスカッショ ンがございまして、ここのアンケート調査でも、研修医の処遇の問題というのがいちば ん切実な問題のように思います。  整理しますと、私なりにポイントが2つあって、一つは研修に専念できる処遇を与え るということです。もう一つは研修医がそのプログラムを選択できるように、給与など の処遇については施設に固定せず、できれば柔軟な対応をお願いしたいということであ るかと思います。この問題については、さらに具体的にディスカッションを進めまして も時間を取って臨床研修必修化の全体像を描くのが難しいと思いますので、提案でござ いますが、とりあえず、最初のスケジュールに述べましたように、テーマを順々にご議 論いただいて、その上で皆様のご意見を事務局で整理していただいて、2回り目でもう 少し具体的な事項について決めさせていただければと思います。何とぞご協力をお願い したいと思います。  本日のテーマですけれども、研修目標及び研修プログラムについて検討を進めてまい りたいと思います。内容は非常に盛りだくさんでございますけれども、初めに、事務局 に資料を準備していただいておりますので、事務局から説明をお願いします。 ○事務局  事務局から説明させていただきます。説明に先立ちまして、すでに議事が進んでおり ますけれども、資料の確認を簡単にさせていただきます。次第等に引き続きまして、資 料1が前回の議事録でございます。厚生労働省ホームページにて既に公表をさせていた だいております。資料2−1以降が本日の具体的なご審議の資料で、資料2−1、資料 2−2、資料3、資料4でございます。併せまして、先ほどご説明をいただきました星 委員からご提出の資料、さらには福井委員、三上委員からも、それぞれ、資料を提出い ただいております。  「研修目標等の現状と問題点について」という今日の論点に関する資料につきまして 簡単にご説明をさせていただきます。はじめてに資料2−1でございますが、「卒後臨 床研修制度における研修目標等の位置づけとこれまでの改善の取組」という資料でござ います。第1回検討部会におきましても一部ご説明をさせていただいており、重複する ところもありますが改めてご説明を申し上げます。  現在の臨床研修制度は昭和43年に開始をされたわけですけれども、臨床研修に係る内 容、どのような研修を行うかということにつきましては昭和43年の研修制度の開始に当 たり定められた「臨床研修運用方針」にございます。これにつきましては、現在も引き 続きこの方針によっているというところでございます。  具体的な中身は2頁目の中段以降に書いてありますけれども、「適切な指導責任者の もとに、常に社会との関連において疾病を把握しつつ診療に関する知識及び技能を実地 に練磨し医師としての資質の向上を図ることを目的とする」ということでございます。  2の「方針」の所ですが、「臨床研修は、それぞれ各診療科に所属して行う」とこと でございまして、2以上の診療科について行う場合には、臨床研修連絡会という研修施 設内の組織に所属して行うものとすると。その上で、各診療科における指導責任者の下 に研修を行うことにされているところでございます。期間につきましては2年間。指導 体制として連絡会を設けるということ。さらには、臨床研修を行う病院については、臨 床研修の運営計画というものを定めて臨床研修を行わせる。入院、外来、救急の配分、 症例の選択等を合理的に配慮し、臨床研修が有効なものになるよう努めるという、内容 でございます。  3頁目、具体的なそれぞれの診療科における研修の目標といたしまして、2年間にそ れぞれの診療科においてどのような内容の研修を行うべきかということについて具体的 な目標を定めております。資料には、各診療科のうち、内科に関するもの、小児科に関 するものそれぞれについて、資料を付けさせていただいております。これが、この臨床 研修制度におけます当初の研修内容等にかかる規定ということです。  一方、5頁目ですが、これらの臨床研修の研修内容につきましては、昭和43年以降、 旧医師研修審議会、旧医療関係者審議会等におきまして研修内容等の充実についてのご 審議が重ねられ、それらの検討の内容を踏まえまして具体的な、充実・改善のための取 組みが今日まで行われてきたところでございます。大きなものといたしましては、研修 目標等につきまして、具体的な指針を参考として提示をしているということ、もう一つ は研修プログラムという考え方を導入したという大きく2つでございます。  具体的には、昭和48年の12月に医師研修審議会の建議書におきまして、研修内容とし てプライマリケアについて組み込むべきであると。各診療科、それぞれ、内科なら内 科、外科なら外科ということについて、深く研修を行うのはいいけれどもプライマリケ アというものが時代の要請であり、研修計画の中に組み込んでいくべきだというご意見 がございました。  これらを踏まえまして、救急医療、初期診療等、プライマリケアの研修が行われるよ うローテーション方式による研修を行うことが望ましい、ということを明示したところ でございます。  また、昭和53年には、幅広い臨床能力を持つ医師の育成のため、臨床研修の中でプラ イマリケアを修得させるための具体的方策(研修目標、研修方式、研修の評価)につき まして明示をいたしまして、それぞれの研修施設においてこれらの具体的方策を参考と して研修を行うように、という通知が出されているところでございます。  平成元年には、現在の研修内容の基本となっているものですが、患者の方々を全人的 に診る能力をつけるためにすべての研修医が達成すべき具体的到達目標として、「卒後 臨床研修目標」というものを定めて明示をいたしているところでございます。  一方、平成4年6月の医療関係者審議会の意見書におきましては、臨床研修の研修内 容等の状況を踏まえまして、それぞれの臨床研修病院において具体的な研修プログラム を定めて研修の推進を図る必要がある、という意見が出されたところでございます。こ れを踏まえまして、平成5年の臨床研修病院の指定基準を見直した中で新たに研修プロ グラムに関する基準というものを明示いたしまして、各臨床研修病院においては研修プ ログラムを作成して、それに基づく研修を進めるようにしているところでございます。  この研修プログラムということに関しては、あわせて、臨床研修のモデルプログラム というものを具体的に専門家の方々にご検討いただき、明示をさせていただいておりま す。それが参考2として11頁以降に付けております。以上がおおよその現在までの研修 目標等の概要でございます。 ○矢崎部会長  ただいま篠崎医政局長が到着されましたので、局長より一言ご挨拶をよろしくお願い いたします。 ○局長(篠崎医政局長)  遅れてまいりまして大変失礼いたしました。8月31日付で前伊藤局長の後、医政局長 になりました篠崎でございます。どうかよろしくお願いいたします。先生方もご案内の とおり、我が国の保健医療水準というのは、昨年のWHOの『ワールドヘルスレポート2 000』でも言われておりますように、世界一あるいはトップ水準ということになっており ます。いままでは、戦後、平均寿命が50歳を超えたのが昭和22年でございましたから、5 0年余りでこのような世界一の平均寿命、そしてまた、健康寿命を享受する国となったわ けでございますが、このような意味におきましても、戦後、医療関係者のご努力、ま た、研修の体制の充実などによって今日を迎えることができたのではないかと思ってお ります。  しかしながら、今後は少子高齢化の時代がまいりますし、また、医学、医術の進歩は 急速に進んでおります。さらには、国民の医療に対する関心といいますか、意識も大き く変容するのではないかと思っております。そういう中で、ついこの間、9月25日に厚 生省案として発表いたしました、叩き台として発表いたしました医療制度の改革試案と いうものがありますが、この試案の中でも医師、歯科医師の臨床研修の必修化につい て、医療の質の向上を図るという観点から記述がされております。  この改革案につきましては、委員の先生方、もう既にご案内の方もおられるかと思い ますが、3つの視点で成り立っております。1つは、患者サイドの視点でございます。 これは、いままでのようなパターナリズムではなくて、患者が医療に参加するといいま すか、必要な情報を得て医療に積極的に発言していけるようなことが今後必要であろ う、というのが患者の視点でございます。  第2が、その患者に対しまして医療提供体制。医師、歯科医師を含め、看護婦さんを 含めまして、医療提供体制の側の視点でございます。それは、一にも二にも、質の高い 医療を提供する。そのためにいろいろな施策が必要だということでございまして、その 1つにこの医師、歯科医師の臨床研修の必修化ということが掲げられております。  3番目の視点が、患者さんと提供側の間に立つ我々といいますか、関係団体を含めま して、その基盤をどうやって整備していくかということでございます。以上3つの視点 から21世紀の医療のビジョンというものを発表いたしたわけでございます。委員の先生 方におかれましては、このような視点に立ちまして21世紀の我が国の医療を担う医師の 養成につきまして専門的な立場からご議論をいただきたい、というように考えておりま す。どうかよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。篠崎局長には、医療制度改革等で大変ご苦労が多い かと存じますけれども、ぜひこの医師の臨床研修必修化の問題につきましても今後とも よろしくお願いいたします。  それでは、引き続き事務局から説明をお願いします。 ○事務局  引き続き事務局から説明をさせていただきます。資料2−2をご覧いただければと思 います。先ほど、いままでの臨床研修の研修目標等の改善の取組み等につきましてご説 明を申し上げたところでございますが、研修目標等の現状はどうなっているか、という ことについての資料でございます。  おめくりいただきますと、「平成6年度厚生科学研究」として、杉本委員が主任研究 者になられまして、平成6年度に実施された臨床研修の充実等に伴う諸制度の整備に関 する研究の関係する部分をご紹介させていただきます。  この研究は、資料のご説明でございますが、10の大学病院及び16の臨床研修病院の指 導医及び研修医を対象としてアンケートが実施されたものでございます。  1番目につきましては、指導医に対しまして、実際にあなたが指導した研修医はこの 卒後臨床研修目標を達成しているかどうか、ということについての問でございます。左 側が一般目標、右側が具体的目標ということですけれども、それぞれ、「全く達成でき ない」から「完全に達成している」ということまで5段階で評価をしていただいており ます。  また、(2)の「臨床研修目標についての意見」という所ですが、同じく指導医に対し、 卒後臨床研修目標というものが実際の研修医が研修を行うレベルの実情からして、内容 が高すぎるのではないか、もしくは、十分ではないのではないか、というそれぞれのご 意見を5つの設問としてお聞きしているものでございます。  3頁ですけれども、これは研修医に対して聞いたものでございまして研修の状況とい う所でございますが、下の(4)は「研修の場所」について、先ほどの585名のうちの研修 を実施した施設の割合をみたものでございます。  上に戻って(3)ですが、卒後臨床研修目標の中で、具体的に技術的到達度を示す21の項 目と Common diseases への初期診療能力10項目について自己評価で満点を155点として どの程度の評価を自分でしているかと。自分が行った研修で自分はどれだけ研修の成果 を得たか、ということについて聞いているものでございます。  4頁目ですけれども、6をご覧いただきますと、同じく研修医に聞いたところでござ いますが、2年間の研修を終えた研修医が、自分が受けた研修を踏まえて、指導医につ いてどう評価しているか。また、研修内容についてどれだけ満足したかというものを評 価していただいたものでございます。  戻って、4頁目の上段の(5)ですが、指導医に対しまして研修方針というものの望まし いあり方はどのようなあり方か、を聞いたものでございます。以上、杉本委員が中心に なって行っていただきました研究の概要を通じまして、現在の状況ということについて ご紹介をさせていただきました。 ○杉本委員  いまのご説明に少しく補足あるいは訂正をさせていただきます。いちばん最初の所で 「10大学病院、16臨床研修病院の指導医」とありますが、これはまさにそうなのです が、この10の大学、16の病院を無作為抽出しまして、そこの病院長を経由して指導医に アンケート調査をしたということです。ただ、研修医はこれとは全く別でございまし て、臨床研修2年を終えた研修医を無作為抽出しまして1,964名に対してアンケート調 査をした結果でございます。  なお、この調査は平成6年に厚生科学研究として行われたものでありまして、当時は 臨床研修指定病院がおおむね研修プログラムが出来上がったころで、多くの大学病院に おいてはまだ研修プログラムを持っていなかった当時のものでございますので、現在の 状況とは少し違うということをお断わりしておきたいと思います。  1番の卒後臨床研修目標の達成度につきましては、いまご説明がありましたごとくで ありまして、大学、病院ともにほぼよく達成していると。臨床研修病院のほうは、これ は指導医の考えでありますが、より達成度が高いような数字になっているということで す。(2)の「臨床研修目標について」ですが、これは一般目標、具体的目標ともに適切で あろうという皆さんのご意見ですが、一般目標はよいとしても具体的目標についてはも う少し表現を工夫したほうがいいのではないか、という意見が班の方々の中にありまし た。  その次の(3)ですが、「研修成果について」、これはご覧いただけますように、総合診 療方式がいちばんよく成果が上がっておりまして、これにローテート式、内科系、外科 系が続くということです。今後の研修診療方式は可能ならば総合診療、少なくともロー テート型がいいのではないかというように思われるわけです。なお、ここにあります研 修成果というのは一般目標のうちいくつかの項目を書いてありますが、技術的到達度が2 1項目、Common diseases の初期診療能力が10項目、これは適当に班の委員の方々でこれ を抽出しまして、それに対する研修達成度を自己評価してもらったというものです。  いちばんいけなかったのは、技術面では正常分娩に立ち会えなかったというのがいち ばん多いものでありまして、妊婦の診察、その辺りです。眼底検査ならびに耳鏡、耳の 穴の検査、この辺が十分でなかったという反省があります。Common diseases に関しま しては、小児救急にタッチできなかった、急性心筋梗塞を診ることができなかった、交 通外傷を診ることができなかった。調査した範囲で5分の1から6分の1ぐらいの方に そういう方々があったわけでございます。その(4)が研修の場所でありまして、多くの方 が大学病院と臨床研修病院をローテートする形で研修を行っております。  次の4頁ですが、望ましいと考える研修方針。これはいまご説明がありましたよう に、指導医に対する調査の結果ですが、幅広い診療能力を持つところに臨床研修の意義 がある、というように90数%の方がそのようにお考えであるということです。  最後に(6)ですが、研修をどこでやるのがいちばんよろしいのかということになるわけ ですが、指導医の数で言うと大学病院は恵まれている。しかし、指導医の質は臨床研修 病院のほうがよろしいと。研修内容の満足度も、臨床研修病院のほうがよろしいという ことです。これは研修医に対するアンケート調査の結果です。これについて、指導医の 側からも、もう一つ別の表があるのですが、大学病院と臨床研修病院をともにローテー トする形の研修が望ましいのではないか、という方が66%になっておりまして、臨床研 修の形としてはそういう形がいいという皆さんのご意見でございます。  先ほど、総合診療方式ないしはローテート方式が望ましいという結果であった、とい うことをご紹介しましたが、2年間の臨床研修期間の間、将来、例えば耳鼻科とか眼科 とかというような方面に進むことが予定されている者については、例えば最初の3カ月 は耳鼻科で研修をし、おおむねローテートする先、あるいはローテートする先での研修 内容について、ある程度の問題意識を持った上で臨床研修に入り、最後の3カ月は再び 耳鼻科なら耳鼻科の診療に戻るという行き方があってもいいのではないかと。人それぞ れに、あるいは施設の特徴を活かした形のローテート方式というものがあっていいので はないかと。ローテート方式が画一的である必要はないのではないか、というご意見 が、当時、委員の方々の中にございました。以上、追加をしておきます。 ○磯野委員  いま参考にさせていただいたわけですが、指導医というのはどういう人を対象にして アンケートを取られたのか。あるいはまた、研修医が指導医と言っているものと同じレ ベルのものなのか。実際に指導はどういう形の指導を行っているのですか。 ○杉本委員  これは、それぞれの研修病院の研修委員長という立場の方です。研修の責任者という 方です。 ○磯野委員  今度は、研修医の立場からした指導医というのはその人ではなく、実際に指導するほ かの人に対する評価ですか。 ○杉本委員  そうだと思います。 ○磯野委員  このアンケートの指導医の資質とか内容というものがとられておりますが、実際に指 導した人ではないのですね。 ○杉本委員  同じではないと思います。 ○磯野委員  そうすると、どのように判定するか、この内容はだいぶ違ってくると思うのです。指 導医として答えられているのは、指導医として上におられて、実際の指導に当たってい ない人。実際に研修医が指導医と言っている人は、実際に指導している人に対するも の。これ、全然違うのではないかなという感じがしたのです。 ○杉本委員  全然かどうかは別として、少し違いますね。 ○横田委員  (5)の表なのですが、1番目と2番目に「専攻の関連領域を中心に」と。「専攻分野に 関わらず」という差が設けられていますが、この専攻というのは、例えば内科系、外科 系程度のものなのか。あるいは、内科の中の循環器であるとか悪性腫瘍であるとか、そ ういうような専攻を意味しているのか。それだけ教えてください。 ○杉本委員  耳鼻科、眼科とかいうような診療科を含めての専攻分野ということです。いまおっし ゃいましたような、血液とか腫瘍とか、そういうようなあまり細かな専攻分野というこ とではありません。 ○内村委員  先ほどの(5)の所ですが、これは、むしろ、臨床研修病院のほうがより専門志向的な指 導傾向ですかね。どちらかというと、大学病院と逆なような気がしたのですが、こうい う調査では逆なのですか。 ○杉本委員  早くから専門分野のトレーニング開始という方が、これは絶対数は少ないのですが、 比較しますと臨床研修病院のほうにより多くの方がそういうご意見であったということ です。確かに、一見、逆のような感じでございます。 ○辻本委員  (2)の5番目に当たると思いますが、「知らない」というのはどういう意味で答えてい らっしゃることなのでしょうか。 ○杉本委員  当然、一般目標、具体的目標を知っていなければならないのですが、指導医であって もご存じない。これは平成6年でございまして、いまの研修目標ができたのが平成4年 ですかね、知らない方があったということでございます。ただ、それを知った上でそれ ぞれの目標の達成度についてお答えいただいているものでございまして、上の(1)という のは(2)から知らなかった方を除いたものではありません。 ○矢崎部会長  資料2−1と資料2−2は、平成6年のアンケートですので、この間のタイムラグが あるので、いまは少し違った数字が出てくる。先ほどの医師会の調査にありますよう に、違う数字が出てくるかと思います。そこで、実際の臨床研修病院の研修状況を踏ま えた問題点について、昨年度医療研修推進財団が委員会を設置しまして、そこで実施し た臨床研修病院の研修目標とプログラム等に関する実情調査について、調査を担当され ました日本赤十字武蔵野短期大学教授の畑尾正彦先生に今日ご出席いただいております のでおよそ20分を目処にご説明いただけますでしょうか。 ○畑尾参考人  資料3、ただいま杉本委員にご説明いただきました次の頁でございます。昨年度、臨 床研修の現状について調査をさせていただきました。496病院にお願いいたしまして、29 5病院からご回答をいただいております。いろいろな項目について調べたのですが、関連 のありそうなところだけをここに抜き取っております。  募集人員と採用人員ですが、ご覧いただきますように、臨床研修病院では5名あるい は10名以内が合わせると83%です。その下の採用人員を見ていただきましても、いずれ も80数%の病院は10名以内の研修医を受け入れているという形になっております。それ に対しまして、大学病院の募集人員は40名以上が約7割という、現状であります。  その次の頁ですが、いずれも募集は全国公募している。大学のほとんどがそうです。 研修病院のほうは3分の2ぐらいが全国公募ですが、大学からかなり派遣を受け入れて いるということでありました。どういう所に募集をPR、広報しているかということに ついては、いろいろなツール、メディアを使っています。臨床研修病院ガイドブック、 これは、現在、医療研修推進財団でまとめて出していらっしゃいますが、これの利用が 研修病院では多いようです。それから、大学への依頼、この2つが多いということで す。  「選考方法」では、何らかの形で個別面接をやるのが多くて、そのほか、いろいろ組 み合わせているということでありました。 現在どのような「研修目標」を置いて研修をやっているかということですが、先ほどの 資料の中に入っておりました1989年に厚生省でお示しになられました研修目標と全く同 じものを目標としているのが、研修病院では13%、大学では10%。それに病院独自のも のを加えている、あるいはそれを基本にして診療科の判断で何か加えているという所が 病院も大学も多いという現状です。  国立大学臨床病院共通カリキュラム、これは大学病院ではこれぐらいの数があるわけ です。当然かもしれませんが、研修病院のほうはあまりご存じないということでした。 今後、必修化されたときの研修目標はどうか、ということにつきましては「このままが よい」というのが4分の1ぐらい、「新たな目標を示してほしい」というのが3分の2 ほどです。「各施設に任せてほしい」というのが数パーセントというところです。多く の病院が、この部会に期待しているのかもしれませんけれども、新たな研修目標を示し てほしいという考えを持っているようです。「現在の研修方式」につきましては、総合 診療方式、ローテート方式、ストレート方式、ほぼ同じ30%あるいは30数%というとこ ろです。このようなところが主だったご回答を整理したところでございます。  3頁に行かせていただきます。そのアンケート調査とは別に、全国の大学病院、研修 病院を眺め渡しまして、比較的よく研修をやっていらっしゃるところ、あるいはそれぞ れの大学なり病院なりがお考えを持って特色のある研修をやっていらっしゃると思われ る病院を選びまして、今年の春に私どもの委員会のメンバーが2名ずつ、一部1名の所 もありましたけれども、現地に赴いてそこの病院の研修責任者、あるいは研修担当者の 方に実状のヒヤリングをさせていただきました。  病院によりましては、3年目、4年目辺りのドクターになると思いますが、研修指導 の実務に当たっている指導医と研修医自身からも実状をお聞きしております。病院は、 国立、公立、私立の病院、国立大学、私立大学というような所にお邪魔しております。 選んで行かせていただいた所でしたので、概して望ましい研修が行われている。研修医 の満足度も比較的高いと受け取れたのですが、その一方で次のような問題点が指摘でき るかと思います。  (1)ですけれども、その研修病院あるいは大学病院はともにカリキュラムはできており ます。先ほどご説明がありましたプログラム等が確かにありますし、研修目標、到達目 標もできているのですが、その到達目標を念頭に置いた研修が現実に現場では行われて いない。プログラム、目標はある。だけれども、それと現場でやっているの研修との間 にはギャップがあるところが多いように思いました。  ローテーションをする目的、幅広い基本的臨床能力の修得のはずでありますが、むし ろ、それよりも専門的診療、将来の専攻に必要だから、あるいは将来に専攻するときに そっちを勉強しておくとためになるよ、ということでローテーションしているという実 状が多いように思われました。先ほどの杉本先生の表の最後のほうでしたか、関連する 領域という所の考え方が出ているように思われました。  研修修了後に、その後のレジデントと申しましょうか、後期研修に入っていく体制が 不十分。特に、これは研修病院ですけれども、3年目以降の受け入れが不十分です。定 員の関係で、残りたい研修医がいても「いっぱいだからやめてください」という所があ ります。一方では「ぜひ、残ってほしい」とか、ほかの病院からも「受け入れたい」と いう病院ももちろんあります。ありますが、概してきちんとした形で、中期〜後期研修 につながるというシステムが不十分、未成熟という感じがいたしました。  研修医の評価は不十分であります。特に、形成的評価が不十分です。研修修了の認定 も明確な評価に基づいているとは言いがたいというのが現状のように思われます。カリ キュラムとかプログラムの評価が系統的に行われておりません。研修医に感想を聞く程 度のことはやっている所があるのですが、システマティックなプログラム評価というも のはほとんどの所で行われておりませんでした。ただ、どこの病院もどこの大学も、や らなければいけないという考えは持っているように思います。大学病院はプライマリケ ア、あるいは救急疾患の教育をするのに適していない所が多いのではないか。システム として整備されていない所が多いように思われました。  そのヒヤリングの結果以外で、我々が通常見聞きしたり、全体のアンケート調査の中 からどんな問題点があるかということをその後に少し拾ってみております。一部の臨床 研修病院や多くの大学病院は、研修医の育成ということよりも、むしろ、それぞれの専 門領域や診療科を支える人材医として研修を受け入れている。したがって、ストレート 研修が主体になる。ローテーションするとしても、先ほど上段にありましたように、関 連の深い科のローテーションというような形が多いように思います。  4頁にまいります。研修病院のほうは大学の講座とか医局の関連病院として位置付け られていて、大学のストレート研修の一端を担っている場合が多いです。大学の講座 は、大学で不十分だったプライマリケアの研修、幅広い研修ということを願って研修病 院に出ているのかもしれませんけれども、どうしても大学、医局とのつながりが強いよ うな感じがいたしました。  独自のカリキュラムを持っているのですが、医局人事の一環として来た研修医は病院 独自のものではなくて大学と関連した部分の研修をしたいという気持になっていること が多いと思われます。大学から独立して、人事も大学に依存していないという研修病院 を少なくないのですが、最初のアンケート調査の結果のように実際の研修医の絶対数は 大学のそれから見るとはるかに少ない。必修化された場合に、大学病院またはその関連 の施設で研修をする者が多いということが予想されますので、大学病院でも幅広い研修 という視点をぜひお持ちいただかないと改善しないと思います。  それから、全般に指導医の数、質が不足である、不十分である。特に、研修病院、関 連病院でそれが言えると思います。多くは、診療に追われてしまっているという現状の ことであります。研修医の募集をするけれども応募が少ない研修病院もあります。もち ろん、たくさんの研修医が応募をする病院もありますけれども、少ないという病院があ りました。研修医が大学を離れて研修病院で研修をしようと思っても、将来、2年経っ て、3年目から入局したいと思っている講座でそれを許してくれないというような現状 もあります。  認定制度との整合性が明らかではない。これは学会の問題かもしれませんが、昔に比 べればずいぶん変ってきているのだろうと思いますけれども、まだ整合性が明らかでは ない学会があるのではないかと思います。以上のような問題点があって、これからの研 修がどうあるべきかということを我々なりに考えてみます。皆様のお考えとあまり変わ らないかと思いますが、以下のとおりです。  読ませていただきますと、卒後臨床研修においては、将来、どの専門領域に進むにし てもすべての臨床医に求められる基本的な臨床能力を幅広く身につけた医師となること を目標とするのが望ましいと思います。1970年代から一貫してプライマリケア能力の修 得を提唱してこられました厚生労働省が1989年にお示しになった卒後臨床研修目標は必 修化の際には現代社会の要請に応じ見直されると予想されますが、その新たな卒後臨床 研修目標をすべての研修医が身につけることを保証できるプログラムがすべての研修施 設で用意され、かつ、実践できる仕組みが整えられることが必要だと思います。プログ ラムはあるけれども実践が保証されていないというのが現状のようなので、そこを何と かしなければいけないと思います。基本的な臨床能力としての minimum requirement が 確実にカバーされた研修を受けられる。それと同時に、将来の多様な進路に対応して選 択できる弾力的なプログラムが各臨床研修施設の特色としてプラスアルファというのも 大歓迎でありますけれども、基本的な研修がクリヤーされているということが前提でな ければならないであろう、というように思っております。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。ただいま畑尾先生並びに先ほど事務局からいただ き、また、杉本委員から補足説明がありましたけれども、この問題について委員の方々 からコメントあるいはご意見がございますでしょうか。 ○磯野委員  先ほど、目標、カリキュラムの到達というような形式で進まれていて、厳しい評価と いうことが必ず出てきて、評価をしなければいけないということで評価をされるのです が、いつも最終的には、評価をした結果がどういうようなことにつながるのか、という ことに関してのその先が出てこないのです。先生にお調べいただいたところで、研修の 評価を厳密にやっているところではよろしいのですが、研修評価をやってこれで到達し ていないというような方がもし出た場合には研修を延期する、というような方針をとる のか。  私が聞いたところでは1つぐらいあるように聞いたのですが。こういった場合にどの 程度そういった処置をとられているのか。そしてまた、それに対しては、そういう方は 1年延ばしをする形をとれば給与の面とか病院の負担というものが出てくるだろうと思 うのです。必修化に向かって、今度、評価をかなり厳しくやってくるとこういった問題 が非常に大きな問題になってくるだろうと思うのです。  それからまた、非常にいい成績を取った場合はどうするのか、というような点はどの ようにされているのか。何か行われているところがあったら教えていただきたい。こう いうものが評価の評価だけで終わってしまって、いつも議論がその先に進まない。もし 具体例がありましたら、お教えいただければと思います。 ○畑尾参考人  修得不十分という研修医をどう扱うかということについて、どういう具体的な方策を 実際にやっているかということは調査の中からはわかりませんでした。具体的に挙がっ ておりません。ただ、私の直接関係している施設では、研修修了証を出しません。それ だけです。 ○徳永委員  一般論で申して恐縮なのですが、評価は今ご指摘のあったような形で後で研修を再研 修させるとか、あるいは修了証を渡すとかということもありますけれども、目的の一つ として本人にフィードバックする、「あなたは2年間研修したのだけれどもこの辺はだ いぶ抜けていますよ」とか、そういうことでその後の中期あるいはその後の研修につな げるという、そういう意味もかなりあると思うのです。2年間の間で全部できると考え るべきなのか否かです。  次は質問ですが、例えば研修プログラムというのは絶対にそれをしなければならない ものとして位置付けるのか。あるいは、コアオプションみたいなものが組み合わされて いて、その後、自立して自分で技術を磨いていける、そういうものを付与するのが目的 であってもよいかという、その辺のことを今後議論したほうがいいのではないかと思う のです。その辺、どうでしょうか。  もう一つ、ついでで恐縮ですが、4頁の12の所にありますように、学会のほうがプロ グラムと整合性がないと書いていらっしゃっること。私は知らないのですが、これは整 合性があるべきだということなのですか。ベストレジデントとして表彰するなどで。 ○畑尾参考人  すみません。先ほどの磯野委員のご質問ですが、よくできた人をどうやって誉めてい るか。誉めるだけです。特別にボーナスが出るというようなことはやってないようで す。徳永委員のご質問の初めのほうですが、これは私が先ほど述べさせていただいた3 頁の問題点の(4)でありまして、形成的評価が不十分。つまり、「あなたの出来具合は ここがもう少しだよ」ということのフィードバックが思いつき程度で、その場ではある のかもしれませんがシステマティックにはなかなかなっていない。  磯野委員がおっしゃった総括的評価よりも形成的評価のほうが本当はオン・ザ・ジョ ブ・トレーニングでは大事だと思っております。どうすると良い形の形成的評価がシス テマティックにできるようになるか、ということについては今後考える必要があると思 っております。我々の委員会の意見としては、観察記録の雛型みたいなものをつくろう かとか、研修医手帳を工夫してそれを電子化したもので活用できるといいのではないか と考えております。つまり、やった実績をどんどん入れていくとそれが積算されて、彼 はどこまで何ができているか、何が不足か、ということが直ぐわかるような仕組みをつ くるといいのかな、というようなことを視野には入れております。  それから、学会との整合性ですね。これは、専門医になりたいという研修医の希望は 高いと思います。何らかの専門医になりたい。その学会のほうが、専門医になるにして も、うちの学会の専門医になるときのベースとして基本的な幅広いものを身につけてお いてほしいということを抜きにして、「この学会で必要とするこれだけできるようにな りなさい」ということがポンとメインに出てしまうと好ましくないだろうというふう に、卒後はじめの2年間にそういうことが影響してくるのは好ましくないだろうと思っ ているということでございます。 ○磯野委員  いまのことに関連してよろしいですか。私、評価は最終的だけの問題ではなくて2年 間を研修されているわけですから、指導する人と指導医と。先ほども私が説明しました が、実際に指導している人とその上に立って全体を見渡しでは指導がどう行われている かということを見る、これの関連が非常に大事だと思っているのです。そうすると、2 年間のうちだけではなくて、こういうできの悪い人は評価がどんどん出てくるわけです ね。その2年間のうちにどういうように対処するか、ということが大事だと思うので す。最終的に免許をやらないのだということになったら、これは2年間何のために研修 をやったのだということになるだろうと思うのです。そこの過程においてどのように研 修医をほかの方向に向けるのか。あるいは、ほかの職業を選ばせるのか、というような 方式に変えていくシステムが大事であって、ただ評価が最終的に云々というものではな いと私は思うのです。 ○畑尾参考人  職業に向いていないから変わったらどうかというのは、実は、研修に来た25歳、26 歳、27歳になってから言うのでは、人生の3分の1を使ってから言うのではかわいそう ですので、できればそれは卒前に教えていただきたいとお願いします。研修に見えてか らの2年間の中でも、それはとても大事なことでして、私どもの病院ですと、少なくと も1年目には必ずその1年間の振り返しをしなさいと申します。場合によっては、1年 ごとの契約更改で研修医を続けるかどうかということを双方が選び合いますので、そこ で進路変更を勧告するというようなことができる仕組みにはなっております。 ○磯野委員  医師の職業にはいろいろなものがあります。いろんな科があったり、いろんな専門が ありますから、そういう方向に向けてあげるとか、いろいろあるだろうと思います。い ちばん欠落しているのは、指導医という本当の上の指導医と実際に指導をしている人と のコネクションがあまりないのではないかなと思うのです。ただ1年上が指導医になり その1年上が又指導医になり、という形で指導をしているけれども、本当の指導医とい うものが全体を見渡していて、合わない指導者と研修医というものもあると思うので す。そういうものもきちっと上の人がコンタクトをとってそれを指導してあげるぐらい のものがないと、ただ「評価、評価」と言うだけで終わってしまうのではないかと思い ます。 ○宮城委員  私、この臨床研修必修化の導入でいちばん気になっているのは、この2年間で教育す る非常に基礎的な臨床医療の内容というものが、大学であれ臨床研修病院であれどこで あれ、グローバルスタンダードに基づいた教育がなされることがいちばん大事だと思う のです。日本の臨床教育の中でいちばん欠けているのはそこではないかと思うのです。 例えば、ある病院でチームの1人1人に聞くと、皆、指導医の意見が違うというような ことでは臨床の教育の内容としては非常に問題だと思うのです。  グローバルスタンダードというのは1つですから、誰に聞いても指導医の答えは1つ でないといけない。そういう方向付けをしていくのもこういう調査の中ではとても大事 だと思うし、この病院ではグローバルスタンダードをきちんと守って教育をしています か、というような調査もぜひほしいと思います。私は、いつも、初期研修にはペイシャ ント・エクスポージャー、できるだけたくさんの数にエクスポージャーすることが大事 だと言っていますけれども、ただエクスポージャーするだけではなしに、エクスポージ ャーした患者さんについてのグローバルスタンダードを1つ1つ身につけていく。こう いうことを2年間にきちんとやっていく。  しかも、Aという病院で研修を受けた内容とBという研修病院で受けた内容と、1人 の患者さんについての扱い方が全く違うというようなことでは必修化する意味はあまり ないのではないかと思うわけです。ですから、516科ある臨床研修は初期研修においては それぞれの分野における、あるいはそれぞれの Common diseasesでも構わないのです が、教える内容はグローバルスタンダードを基礎として教えていく、こういう姿勢が大 事なのではないかと思います。 ○堀江委員  調査していただいた内容は、大変参考になると思いますし、また、私達が問題と感じ ている点とも一致するところがあり、具体的な調査として意味のあるものだと思いま す。ただ、既に設定されている研修目標に基づいて2年の研修が行われて、結果として 評価につながっていくのだと思いますけれども、具体的にその研修目標に基づいての評 価項目が設定されている施設はどのぐらいあったのでしょうか。評価基準に基づいてチ ェックされていたのかどうか。その辺はいかがですか。 ○畑尾参考人  それが不十分だと思います。ヒアリングに行って研修医に「研修目標を知ってるか」 と聞くと「そんなものあるのですか」ということがかなりあり評価するほうも「うん、 よくできるよ」というけれども、研修目標をきちんと落とし込んだ評価表の中で評価す るというところが必ずしもきちんといっていない。  具体的な研修目標、行動目標レベルは全部抜きにしてしまって患者さんへの対応能力 というように大きく括って「よくできる」とか「できない」とかという評価はできる。 そういうことはやっていると思います。 ○堀江委員  具体的に、個々の研修医が研修手帳を持って、その研修手帳の中に評価項目が書いて あって、それに対して自己評価や指導医が評価するということが設定されている所はそ んなになかったのでしょうか。 ○畑尾参考人  今回はお示ししませんでしたけれども、研修病院では4分の1の病院で研修手帳を用 意しております。大学病院では49%が用意をしております。しかし、それが先生のおっ しゃったようなきちんとした使い方ができているかどうかまでは調査の中ではよくわか りません。 ○堀江委員  例えば、自己評価するレベル設定、指導医によって評価するレベル設定がされている 研修手帳であるのか。 ○畑尾参考人  申し訳ありません。内容までは見ておりません。今度考えております電子化のほうで はそういうことをきちんとできるようにしたいなと思っています。 ○中野委員  これは医学教育学会でのご活動と考えていいのですか。 ○畑尾参考人  いや、違います。 ○中野委員  それとはまた違う仕掛けですね。そうすると、むしろ、医学教育学会のご専門として のご意見かもしれませんが、3頁ですけれども、要するに、質問の趣旨は今日の特化課 題が研修目標とか内容とかいうことで、おそらく、先ほどの部会長の話ではリフレイン するかもしれないと、こういうお話をしていましたので、これから討論をしていく上で の参考になればという、こういうスタンスです。5番目のカリキュラムプログラムの評 価はほとんど行われていないと、これは確かにそうでしょう。結構です。  一方では、2番目に「幅広い臨床的能力の修得のためではなく」と、これは目的事項 が明示してあるのですね。次の4頁の最後の「必修化に対する」というものの第2パラ グラフの2行目ぐらいから「おそらく、これを考えるにはこの委員会では現代社会の要 請に応じて見直さなければいけない」と書いていらっしゃる。この3つの3大話を結合 いたしますと、先生方の中では、例えばいま目標に従ったカリキュラムプログラムがな いのだと、こう結論付けていいのでしょうか。  つまり、いまからこの社会情勢を調べた上で目標時期を決めてプログラムを書くとい うのは膨大なことであって、既にこの10何年、20年にわたって持っていますものを見直 しながら進むほうがよほど合理的であると。そうなった場合、ここに書いていらっしゃ る評価というシステムがないと。ついでに見てみますと、「実際に幅広い基本的臨床 の」云々というのはローテーションなどで動かせていないではないかと。ということ は、いま持っているプログラムは不備であると。こういうところまでお考えになってい らっしゃるのかどうか。  それは、私たちが今度ここで書き上げていこうとする目標に対して、具体的に言いま すとSBOにしろGIOにしろというものを領域と水準に従って書き連らねるわけです けれども、それを定性的に表現する場合と定量的に表現する場合がありますね。定量的 な場合ですとものすごく限られてしまいますね。何をどう評価するかという具体的な記 述に問題があるとか。  あるいはまた、国家試験のあり方、水準等々によってコントロールしながら卒前教育 をクオリフィケーションしていくとか。あるいは、いま検討中、実施中のコアプログラ ムみたいに卒前教育とリンクする。いろいろと視点が広がっていくと思うのです。それ から言いますと、いま持っているプログラムは悪いのだと、こういうようなご報告を今 日いただいたと理解をしてもよろしいのでしょうか。 ○畑尾参考人  プログラムができていないとかプログラムが悪いというようには思いません。プログ ラムとは一体何なのかということなのですが、最初に(1)で申し上げましたように、大変 立派なカリキュラム、プログラムがあります。臨床研修病院においては、平成6年でし たでしょうか、厚生省からの通達でプログラムを一斉にお出しになったわけです。それ がそのとおり行われていることを保障する、それを検証する、そこを評価する。そこが ないと。 ○中野委員  いや、よく理解しています。今日の発言が全部そのまま議事録に載るというのは怖く てしょうがないのですが、我々はお飾りをつくってしまっているのではないか、という ことが常に自分に対する批判といいますか、反省点があるわけです。したがって、本気 でやれる部分というものと必ずしも一緒ではないのではないか。それが現在我々が持っ ているプログラムなりカリキュラムではないかとこの辺りの問題にお気付きなのか。あ るいは、それをご指摘していらっしゃるのかと。こういう質問です。 ○畑尾参考人  気づいております。指摘しているつもりです。今日はそこまで踏み込まなかったので すが、例えば大学によりましては2本立てのプログラムを持っている所があります。 「総合診療方式を希望する研修医はこのプログラムでやりなさい」と。「ストレートで 来る研修医はうちの場合はこれでやるよ」というのがある。それで並走しております と、ある診療科に両方の研修医が行ったときに、総合診療方式に乗って行った研修医と ストレートで来ている研修医と、どちらのほうがその診療科でよりが手厚く研修される かというと、これは明らかなのです。  ですから、そういうことが起こらないようなそもそもの仕組みがないと、いくらいい プログラムがあっても地に着いたといいますか、実効のあるものにはなっていかないだ ろうということで、プログラムをつくることと同時にそういうことが起こらない仕組み が大事だろうと思います。そして、そのプログラムが本当にうまくいっているかどう か、ということを時に臨んで検証するといいますか、評価する。これのことを私どもは プログラム評価と言っているわけです。これがいま現状ほとんど行われていないので、 何らかの形でしっかりとやるべきだと思います。極端な場合は、それがきちんとできて いない所は研修を取り消すというぐらいのことを、どこが評価するかわかりませんが、 大学に対してさえもそういうことができるようになるとすごいだろうなと思います。 ○山口委員  折角こんないいものをおまとめいただきましたので1、2教えていただきたいので す。先生がおっしゃったように、ここに問題点あるいは今後の課題、いろいろと書いて ございまして、本当にこのとおりだろうと思います。特に、幅広い視野というような、 そういう視点でそれにふさわしい能力を持ったお医者さんを育成しなければいけない。 しかし、現在のこの臨床研修のあり方を見ると、どうしても自分の専門領域に近い分野 で、ということを先生も書いていらっしゃいます。私もそうだと思うのです。自分が将 来何になるか、どんな専門医になるか、という視点からローテート方式の中で選択をし ていく。そのようなあり方が大学でも研修指定病院でも起こっている、現在行われてい ると。先生がおっしゃるとおりだと思います。  もう一つは、大学の医局制度に関係していることを先生が書いていらっしゃいます。 非常に勇気が要ることだなと思うのですが、よく現在の問題点をここに把握していらっ しゃる。医局制度と関連病院とのあり方、こういうものが臨床研修医を研修して人材を 育てる場合にプラスになっているのかマイナスになっているのか、こういう点もいろい ろ検討されたと思います。  そこで、教えていただきたいのは、ここに「今後、必修化される場合の望まれる卒後 臨床研修」と書いてあります。ここで「高度先進医療、地域医療、救急医療」云々と書 いてありますが、この地域医療を検討されたときに、例えば在宅医療の問題とか老人医 療の問題とか、あるいはいま介護保険がもう動きだしていますけれども、こういう問題 とか、こういうこともご検討になられましたか。その点を教えていただければと思いま す。 ○畑尾参考人  この地域医療の内容としてはいろいろなとらえ方があると思います。すべての患者さ んは、病院に入院していらっしゃったとしても地域に根っこがあるわけですから、その 地域への視点を抜きにした医療はあり得ない、というような考え方で言いますと、地域 医療というのは特に取り出して特化した特殊なものではなくて、通常の研修のプログラ ムの中にきちんとはめ込まなければいけないものだと思っております。  その中でも、例えば離島であるとか、普通の病院のすべてがそれをやらないかもしれ ないけれども、ある研修病院ではそこに特化して「うちに来るとこんな地域医療の研修 ができる」という、そういう特色のある研修病院もあっていいのかなという意味です。 そういう病院であったとしても、先ほどのグローバルスタンダードは大変大事なご指摘 だと思いますが、そのグローバルスタンダードのコアは必ずクリヤーした上で、その上 でそういう特色がはめ込まれた弾力性のある、そういうことを志向する研修医が魅力を 感ずるプログラムを持っている、そういういろいろな病院があっていいと考えておりま す。 ○山口委員  先生のおっしゃるとおりだと思うのですが、今後、いま先生がおっしゃった離島医療 の問題、あるいは前回も出ましたが、へき地医療の問題、そういうことをきちんと認識 したお医者さんが必要だろうと。将来、専門医になるにしても、そのベースには患者さ んといいますか、住民の皆さん方を人として診れる、そういうお医者さんが必要だろう と。そうすると、医療というか、イコール治療だけをいままで我々は考えてきましたけ れども、今後は健康づくりの問題から福祉の問題、介護の問題、そういうところにお医 者さんがどんどん関与していける、そういうお医者さんを。将来、専門医になってから はもうできませんので、この2年間の臨床研修の中で必修化されるとすればそういうカ リキュラムを組んでいく、そういうことについて先生のご意見をもう一回お教えいただ ければと思います。 ○畑尾参考人  そこのところは大変大事だと思いまして、必修化されるときに望まれるというところ で先ほど指摘させていただきました現代社会の要請に応じてという部分が、まさに、そ ういう地域とか介護とかの視点であり、現在要求されていると思います。それは特別な ものではなくて、コアのグローバルスタンダードの中に入るのが望ましいと思います が。 ○山口委員  ありがとうございました。折角ですのでもう1点発言させていただきたいのです。先 ほど、星委員から日医のデータについてご報告がありました。救急医療の問題、地域の 施設の問題、ターミナルケア、そういうところがかなり高い数字が出ているというご報 告がありました。私も、いまはこれが国民が望んでいる、我々医者に対して望んでいる 内容なのかなという感じで星委員の報告をお伺いしたのですが、今後そういうことにな りますと、今後ずっと議論を詰めていく中で研修施設群というものの選別をどうしてい くのかということが、指定基準も含めて、非常に大きな問題になってくるのかなと思い ます。  ただ単なる大学病院の関連病院だから研修施設指定群になるよ、ということではなく てそれなりの機能を持った所、そこで研修をすることが非常に意義があると認められる ような施設群。そういうものを、今後、我々ここで議論をしていくべきなのではないか なと。というのは、仕組みといいますか、複数の研修指定施設群を考えていくときの仕 組みを考える場合に、ぜひ、今後何回かそういうことを議論する場があろうかと思いま すが、研修目標ということを考えたときにはそういうことがいま望まれているのかな と。  また、国民が我々医師に対して何を望んでいるか、ということを考えると必然的にそ ういうような問題点。我々は病気治療ということは非常に重点的にやってきましたけれ ども、人を診る医療というものが、私自身少し反省をしているのですが、欠けていたの ではないか。福祉はもう関係ない、というように考えていた時代もありましたし、介護 もそうですし、そういうことにきちんと関与できて適切なアドバイスができるような、 そんなお医者さん像を国民の皆様は望んでいらっしゃるのではないか、こんな感じがい たします。  もう一つは、現場に行ってわかるのは、おそらく、研修医の皆さんも保険医になる、 登録すると思います。保険診療をやるわけです。ところが、この保険診療に関しての教 育の場がほとんど何もない。見様見真似で、病院へ行って先輩から聞かされてくる。審 査会などでレセプトを見ますと、抗生物質、その他、検査とかいろいろな問題で問題点 が出てきて査定を受ける。こういう点も研修カリキュラムの中で短期間でもいいから何 か研修をしていただく。そのような場が必要なのではないかな、という感じがしており ます。  それから、私、前回にも言いましたけれども、この卒後研修だけではなくて、今日は 文部科学省の課長さんもいらっしゃっているので重ねてお願いをしておくのですが、医 学部教育の中でもこのようなカリキュラムが必要なのではないかなと。医学部卒業まで は文部科学省ですから、卒業してから厚生省となっておりますけれども、そこの連携プ レーは必要なのではないかなと思っておりますので、この際、申し上げておきたいと思 います。 ○矢崎部会長  いまご指摘の点につきましてはまた今後の議論の上で活かしておきたいと思います。 ○星委員  2点、質問というか、教えていただきたいのです。1つは、人員、1カ所で何人ぐら いの研修医がいるかということをお尋ねになっておられますね。これと、その結果とい いますか、例えば満足度とか評価の度合とか、人数が多いほうがいいのか少ないほうが いいのかわかりませんけれども、相関があるのかどうかと。例えば、1病院当たり何名 という考え方がいいのか。あるいは、どのぐらいの先生がいる所に何人ぐらいが行くの がいいのかとか、あるいは外来の患者数がどのぐらいかとかベッド数とか規模とか、い ろいろな話があると思うのですが、そういったことに関しては何らかのお考えがおあり かどうか、というのが1点。  これは、むしろ、私は素人なものですから皆様にお伺いしたいのですが、例えばどこ で研修を受けてきたかわからない2年経過した人間を10人集めて、その10人に何かテス トをやるとか何かをすることで、どんな研修をしてきたか、という検証ですね。つま り、「あなたは60点」とか「あなたは80点」とか「あなたは0点」とかいうことが可能 なのかどうか。技術的に、あるいは先生方のご経験の中で可能なのかどうか。この2 点、お伺いしたいと思います。 ○畑尾参考人  先のご指摘ですけれども、今度の調査は現状の調査でありまして、研修医個々に満足 度はどうかという、杉本委員のときのようなことは一切やっておりません。研修病院で 研修医の数が少ない所のほうが満足度が高いか、低いかということについては全くわか りません。病院の規模とかベッド数とかも調べてありますが、当然、300床から700床が 圧倒的に多い。外来患者数は1,000人以上あるいは2,000人という病院が多いということ でした。  研修医の数は、ベット数と指導医数、どっちで決めるかというと私は両方を考える必 要があると思います。いくらベッドがあっても指導医がきちんとしていない所ではきち んとした研修ができないでしょうし、指導医がしっかりしていらっしゃったとしても患 者さんにかかわるチャンスが少ないと不十分になるかもしれませんから、両方を見据え て、研修医の数の目安を割り出す必要があるのではないかと思います。  それから、テストですね。それはやろうと思えばできると思います。ただ、そこにか かる労力とそれで得られた結果をどう活用するかということを考えると、実際に行われ るようになるとはちょっと思えませんけれども。レベルは違いますけれども、研修医に なろうとする卒業生に学力テストをやっている病院があります。学力検査だけをやって いる病院は、先ほどの表にもありますように、ないのですが、組み合わせて学力検査を やっている所はあるのです。そうすると、大学によってどうかということの比較はでき ます。そこにオスキーを入れると、実技がどうかということもできるとは思います。 ○星委員  なぜそんなことを申し上げたのかといいますと、例えば学生が自己評価をする。それ を研修施設の指導医が評価をする。しかし、それはお互いにどこからどういうように見 えて何点なのかわからないですよね。そうすると、第三者が、どんな形であれ、1,000人 のうち、1人でもいいのですが、ピックアップをして評価をしたときに、その3者の評 価が本当にそろっているのかどうかということが、プログラムの是非、良し悪しという ものと、評価の良し悪しというものを客観的に評価するための第3地点というものが必 要ではないかなと思うのです。  そういうものが技術的に可能なのか。何も、7,000人全員やってくれ、ということは申 し上げるつもりありませんけれども、そこで行われている研修の内容あるいは評価が本 当に信用に足るものかどうかということが検証できるかどうか、ということを知りたか ったわけです。技術的には可能と理解をしてよろしいでしょうか。 ○畑尾参考人  これは何の調査結果でもないしどなたかのご意見をまとめた話でもないのですが、全 くの私見ですけれども、2年間の研修修了認定は各研修施設、病院、大学に任せるとし て、その病院できちんとした研修と評価ができているかどうか、ということを誰かが検 証する、評価する、これは必要だと思うのです。そのときの方式として、私が個人的に 思っているのは、無作為に選んで複数の病院から、1人ではかわいそうですから、数人 ずつの研修医を一堂に集めて一律テストをやって比較する、あるいは検討するというの ももしかするとあるのかな、ということです。できるかどうかはわかりません。 ○辻本委員  少し余分な話になるかもしれません。現在、私どもCOMLで大阪府下の臨床研修指 定病院の研修医の方が1人ずつ1日、電話相談にどういう声が届くか、ということで研 修にいらっしゃっております。朝9時から夕方の大体6時ぐらいまでですが、2人で来 るときもあれば1人で来るときもある。私ども、電話相談のボランティアの方も含めて 5、6人の大人の目で彼らを、たった1日ですが、評価というよりもいろいろな話を聞 いたり、その人の対患者さんたちにどのようにコミュニケーションをとっているか、そ ういうことを客観的に見せていただくと、質の違いが非常によくわかる。院長が送り出 してくるときに「どうにもならん奴ですから、COMLさんよろしくお願いします」と おっしゃるのです。私たちはそういう機関ではないと思うのですが、本当にそういうよ うに送り込まれてきた人はどうにもならなかったりするのです。この人がお医者さんに なって私たちエンドユーザーの患者の前に現れるかと思うと「やめてくれ」と叫びたく なるような人もいます。そういう意味で、いま第三者評価ということをおっしゃったの ですが、どこかにエンドユーザーということでかかわりたいなということは常々考えて おります。もう一つは、研修医として預かって引き受けて教育して、言ってみれば、世 に送り出す研修指定病院ないしは大学病院、そこの責任もどう取っていただくのか、評 価していただくのか。その辺りということはどのようにお考えになっていらっしゃるの でしょうか。 ○畑尾参考人  そんな恐ろしいことはあまり考えていませんけれども。 ○辻本委員  感想レベルで結構でございます。 ○畑尾参考人  どうしてこんな学生が卒業してきたのかしら、という研修医が何年かに1人、2人紛 れ込んでくることあります。私どもの病院は、全国公募でそれなりのセレクションをさ せていただきますが、15分、20分間の面接だけで、6年間見てくださった大学とは比べ ものにならない評価資料しかないわけで、来られてから「どうして卒業できたのかな」 などということが正直あることはある。それと同じことが研修を終わった後に起こる可 能性がある。それは、いまおっしゃったような、きちんとした基準のきちんとした評価 ができているかどうか、ということをシステムとしてプログラム評価をしないと。ある いは、評価の評価をしないといけないかなと思います。  その前に、それぞれの施設が社会に対する社会的責任として、彼が一人前の医師とし て国民の健康に預かる専門職になっていくことを認定するかという、そこのところを自 覚していただくことが前提になるかなと思います。概念的な言い方をすると、そういう ようになります。それと、第三者機関というような、特別な機関ができないかもしれま せんが、何らかの評価の仕組みは必要だろうと思います。 ○矢崎部会長  予定の時間を過ぎておりますので、研修プログラムの問題と研修の目標達成について はそれなりのスキームは書けると思うのですが、いま言われたような、本当にその人が 患者さんに対して責任を持った医療ができるかどうかというのはまた一つ加わる点があ ると思うのです。それは、責任を持って研修の結果をフィードバックするシステムをき っちり構築するということがいちばん重要なポイントではないかと思うのです。  ですから、終わった後の結果ではなくて日々の研修の間にきちんとチェックするシス テムをしっかりつけないと評価といっても、それこそ、辻本委員から言われるとエンド ユーザーとして突然商品が出てきて「これ、いただけない」ということになると時間も 経済的にも浪費ですので、そういう臨床研修というのは幅広い視点からしっかり責任あ る体制を持っていかなければいけないということですので、それも貴重なご意見だと思 います。  大変恐縮ですけれども、事務局で必修化後の研修目標等のあり方についての資料と福 井先生からいただいた資料もございますので。 ○高橋委員  一言だけよろしいですか。この調査は現地のヒヤリング調査をされているので、アン ケート調査とは全然違う質の高いご提言が入っていると思うのですが、今度の目標は底 上げ、全体をよくすることが大きな目標だと思うので、卒後臨床研修がよく行われてい ると思われる11病院の調査だけでは非常に不十分だと思うのです。よく行われていない1 1病院を選んだ調査がないと目的をかなえられない。それをあからさまに言うのは何でご ざいましょうから、もう少し幅広い現地ヒヤリング調査をもう少し続けていただいて、 その結果をここでご報告いただけたら大変いいと思います。 ○矢崎部会長  そうさせていただきたいと思います。それで、この資料ですが、目標等のあり方につ いて、これは委員の先生方にずいぶんディスカッションしていただいたので、事務局か ら少し簡単にまとめてお話しいただけますか。 ○事務局  資料4でございますが、「必修化後の研修目標等の在り方」ということにつきまし て、既にご議論に入っておりますので簡単に資料の概要をご説明申し上げます。この資 料につきましては、第1回の資料でも付けさせていただいたものですが、これまで必修 化というものが議論をされ、法制化に向け、研修内容、研修プログラム等に関して医療 関係者審議会等におきまして議論をされた報告書でございます。それらを参考として付 けさせていただいております。詳しい説明につきましては割愛をさせていただきます。  また、4頁目以降ですけれども、臨床研修、さらには医学全般にかかわりますさまざ まな団体から卒後臨床研修についてさまざまな要望をいただいておりますので、その要 望書の全文を付けさせていただいております。個別のことにつきましては説明は省略さ せていただきます。 ○矢崎部会長  大変恐縮でございますけれども、この各団体からの要望について、もし先生方でまた 目をとおしていただければ大変ありがたいと思います。では、福井委員から、資料に基 づいて。福井委員にはいつも時間が迫って急がしてしまいますけれども、大変恐縮で す。よろしくお願いします。 ○福井委員  5分以内で終わりたいと思います。「卒後臨床研修カリキュラム案」と書いた資料で ございます。いま事務局からご説明がありました資料の2頁の中に「研修の到達目標に ついては『卒後臨床研修目標』や『国立大学付属病院卒後臨床研修共通カリキュラム (平成10年)』などを参考とする」と書いてありますが、この共通カリキュラムをさら に改訂している検討部会でございます。前回も簡単にご説明申し上げたのですが、私た ちのカリキュラムを、今後のこの部会での検討を進めるに当たってぜひ参考にしていた だきたいと思っております。  サマライズしたものが1頁にございます。具体的なカリキュラムが10枚程度のホッチ キスで綴めたものでございます。一般目標と行動目標の言葉の使い方は少し問題がある かもしれませんけれども、目標自体は16項目からなっております。現代社会の要請とい うことにつきましては、前回も申し上げたのですが、4.の「安全管理」が入っていま すし、12.の「診療計画」には括弧内ですが、先ほどからディスカッションがありまし た「在宅医療」、「介護を含む」、「社会福祉施設の役割についても理解する」、「地 域保健・健康増進について理解する」などといった文言が入っております。13.の項目 「救急医療」も最初の2年間では非常に重要なところだと考えております。15.の緩和 終末期医療」と16.「医療の社会性なども今回新たに入ってきたところでございます。  次の「経験すべき症状・病態」が「緊急を要する疾患・病態」と「頻度の高い症状」 に分かれております。この緊急を要する疾患・病態については、2年間で最低限80%は 経験する、としたいと検討部会では考えておりますが、頻度の高い症状については2年 間で必ずすべての症状を最低限経験してほしいものです。3番目が「経験が求められる 疾患・病態」、今度は疾患名で挙げておりますが、これについては研修を行う場所によ ってかなり凹凸が出る可能性が強いものですから、検討部会ではこの疾患の中から最低 限60%程度は2年間のうちに経験してほしいという形でまとめようかと考えておりま す。  最後の「研修ローテイション(モデル)」につきましては、前回も申し上げました が、大学病院のいろいろな問題もありまして、検討部会としての最終的案はまだまとま っておりません。ここから先は私の個人的な意見ですけれども、先ほどから議論があり ましたような研修医のアウトカムをどうするかという評価はアメリカなどでもまだ検討 中のところであります。簡単に1、2年でアウトカム評価のシステムは作れないのでは ないかと正直なところ思っております。  ただ、アクレディテーション・コミッテイ・オブ・グラジエート・メディカル・エデ ュケーションではいま本気にその検討を行っておりますので、そこでの検討事項は参考 にすることができるかと思うのですが、私としては、研修のプロセスのところである程 度の枠をつくらないと、研修目標を示しただけでは拘束力はないと思います。例えば 「消化器内科に2年間いたのですが目標は全部達成した」と言われる可能性もあります ので、ローテーションのコアのプログラムはぜひ入れるべきだと思っております。  例えば、内科を4カ月、外科を4カ月、救急を4カ月、小児科と産婦人科を2カ月ず つとか、何か、そういうような形でのローテーションプログラムをつくる必要があると 思っております。いままでのご議論と、カリキュラムの内容の話とカリキュラムを達成 したかどうかという仕組みについての話がゴチャゴチャになっているような気がしま す。2年間終わったらどういう能力のある研修医をつくりたいのかという話とそれを達 成するための仕組みを作る話と少し分けて考えたほうがいいのではないかなと思いま す。 ○矢崎部会長  精力的に検討を進めておられ、このような整理の仕方が正しい到達目標を明示してほ しいという要望に応える方向で検討されているようにも思われます。また議論を次回以 降進めたいと思います。三上委員より新しい資料が配られていると思いますけれども、 これについて簡単にお願いします。 ○三上委員  「医師卒後臨床研修の改善のために」ということで、21世紀の医療をつくる若手医師 の会という、この卒後研修に関して長年研究をしてきたグループ。それから、地域医療 研究会が全国組織であるのですが、私自身がその代表世話人をしているもので、この 間、医師の卒後臨床研修をどのように考えたらいいかということを我々として考えてき ました。まだ不十分な点もあると思うのですが、我々の全体的な考え方を知っていただ くと言う意味で読んでいただければと思っております。  先ほどの議論の中にもありましたが、例えば研修指定病院ないしは研修病院には研修 委員会というものがあるわけですけれども、その研修委員会を誰が統括していくのかと いうこともありますし、先ほどらい話になっていました研修医の研修状態、その辺は研 修委員会がチェックすることになるわけですけれども、指導医に対してはどこがどのよ うに教育し助言をしていくのかということについても全然決まっていない。いままで厚 生労働省で指導医の育成をある程度やられていることは知っていますけれども、その辺 のところはこれから義務化の中で研修の状態、指導医の状態、研修施設に対する評価も 含めてどのようにしていくのかという辺りの仕組みについても我々の考え方を述べてい ます。  その中で、先ほどの議論の中になかった1つの点だけ言わせてもらいますと、いまま で私大及び研修指定病院に対する補助金、文部省から出ていた国立大学での研修医に対 する人件費というのはあくまでも施設基準と人員基準に基づいて施設に対して出されて いたということがあるわけです。それに対して我々が思っていることは、そういう施設 とか人員基準ではなくて、研修プログラムに基づいた、つまり、個人とともに動く、社 会的及び身分的保障の確立ということを主眼に置いていると。そうしなければ、実際に 先ほどらい話にありました病院群による認定とかということをいくら言っても実際には それは非常に難しいことになるわけです。  だから、研修プログラム、つまり、主体的につくられた研修プログラムでも認定する 所があって、それが認められた場合には、それを第三者が認定した場合には、その研修 プログラムに基づいて例えば6カ月間は大学でやって、後の6カ月間は離島でやる。つ まり離島の指導医に指導してもらえる所でやるというようなことも認めているのではな いか。離島での研修プログラムを含め、それ自身が病院群ないしは施設群を構成する と。  それはきっちり枠組みはつくらなければなりませんけれども、そういう考え方をしな いと、実際には先ほどらい話になっていた診療科を回るという発想だけで、それ以外の ことができなくなるということがあるわけです。そういう意味で、研修プログラムに基 づいた認定というか、認可というか、それを評価する機構というか、そういうことを考 えないと、この前から出ていたいろいろな幅広い臨床研修と言いながら実際にはほとん どそれが不可能になっていくのではないかと思います。研修内容とプログラムのあり方 についても是非ご検討いただきたいと思っております。そういう意味で、我々が基本的 に考えていることですのでまた一度読んでいただければありがたいと思います。よろし くお願いします。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。そろそろ時間がまいりましたので本日の議論はこれ で終了させていただきたいと思います。問題点は、研修のプログラムと内容である到達 目標、福井委員からはこれを別個に考えるべきだというお話がありました。プログラム は研修をする場を与える所でありますので、少なくとも、プログラムを作成する場合に は従来の診療科によって組み立てるプログラムではなくて、もう少し包括的な視点から プログラムを作成していただきたい。  その場合には、いま三上委員からご指摘の研修医の処遇の問題もあって、研修医があ る程度選択できるような余地を残していただきたいと。到達目標に関しては、指導体制 が重要であって、おそらく、研修医も指導医も、どういうようにこの臨床研修の必修化 に組み込むかということが重要なポイントになるかと思います。プログラムに関しまし ては、先ほどお話があった診療科の組み立てということではなくて、ある程度コア・カ リキュラムを決めて、それを中心にして発展させるようなプログラムができれば大変素 晴らしいのではないかなと思われます。  本日ご討議いただきました研修プログラムあるいは研修目標のあり方などについて大 変貴重なご意見を伺いましたので、事務局において改めて整理をして、論点メモみたい な形でまた先生方にご討論いただければと思っております。本日は、畑尾先生には、ご 多忙の中、ご説明いただきましてありがとうございました。次回以降の検討についてで すが、事務局からよろしくお願いいたします。 ○事務局  本日も熱心なご議論をいただきまして誠にありがとうございました。次回の検討会に つきましては、論点検討の3回目ということで臨床研修病院等の施設基準のあり方につ きまして主として検討を進めてまいりたいと考えております。日程につきましては、日 程調整をさせていただきました結果、10月31日水曜日の14時から16時までということで 予定をさせていただいております。会議室等の詳細につきましては改めて後日連絡をさ せていただきたいと思います。どうもありがとうございました。 ○ 矢崎部会長  この議論につきましては順々にテーマごとに分けておりますが、おそらく、内容は重 複するところがありますので、議論が行ったり来たりというところがまたあるかと存じ ますがよろしくお願いいたします。本日は大変お忙しいところ、貴重なお時間を割いて ご議論いただきましてありがとうございました。 照会先 医政局医事課 代表03−5253−1111 内線  2563 染谷      2568 手島