01/09/10 第2回福祉部会議事録 第2回福祉部会議事録 1 日 時 平成13年9月10日(月)14:00〜16:00 2 場 所 厚生労働省 省議室 3 出席委員:岩田部会長、大山委員、岡田委員、岡部委員、北野委員、京極委員、 佐口委員、鈴木委員、武川委員、中村委員、根本委員、長谷川委員、 村田委員   欠席委員:茨木委員 4 議事 (1)地域福祉計画に係る調査研究結果に関する報告及び質疑(全国社会福祉協議会地 域福祉計画に関する調査研究委員会(以下「全社協委員会」という。)からの報 告及び質疑) (2)地域福祉計画に関する自由討議 (3)その他    次回以降の部会の進行については、次のとおりとすることに全会一致で了承   ア 第3回部会(10月中旬に開催)    ・自治体関係者、関係団体から地域福祉計画に関するヒアリングを実施 ・(仮称)地域福祉計画策定指針の原案を取りまとめる委員を3名程度選出 (この委員により原案を作成する委員会を数回開催予定)   イ 第4回部会(12月目途に開催)    ・(仮称)地域福祉計画策定指針の原案の報告及び審議   ウ 第5回部会(来年1月目途に開催)    ・(仮称)地域福祉計画策定指針(案)のとりまとめ   エ 岩田部会長が不在の間、部会の進行は部会長代理である京極委員が行うこと 5 審議の概要 地域福祉計画に係る調査研究結果に関する報告及び質疑 (和田全社協委員) ○ 全社協では、これまで地域福祉の推進に係る様々な取組みを展開してきたが、この  度の社会福祉法の成立にあたり、地域福祉の推進が基本理念に盛り込まれ たこと、  地域福祉計画や社協が地域福祉推進役と位置付けられたことなどによ り、改めて地  域福祉計画の在り方、策定方法について研究を行う必要性を強く 感じた。このため  全社協としては、学識者の協力を得て、自発的に地域福祉計 画について調査研究を  実施してきた。本日は、全社協委員会の現時点での調査 研究結果として、市町村地  域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画のあり方 について報告する。  【地域福祉計画の理念・原則】   ・地域福祉計画は、社会福祉法の理念や趣旨を踏まえ、また、地域福祉という考えが   これまで議論されてきた様々な潮流、例えば、地域の組織化、住民参加、利用者主   体の福祉などが結節して作られたものであり、これからの福祉を考える上で非常に   大事な概念であることを踏まえ、   (1)地域の個別性尊重の原則(locality)、(2)利用者主体の原則(consumerism &     empowerment)、(3)ネットワーク化の原則(networking)、(4)公民協働の原則     (partnership & enabling)及び(5)住民参加の原則(participation & involveme nt)の5つを原則として掲げる。  【地域福祉計画がめざすもの】  ・地域福祉計画は、地域福祉の計画というだけでなく、20世紀後半の社会福祉の歴   史を総括した上で、21世紀初頭における新しい段階の計画として考えられべきで   ある。したがって、地域福祉計画の策定を通じて、(1)福祉分野における地方分権の   推進、(2)住民参加の福祉のまちづくり、(3)社会福祉に関する計画の総合化及び(4)   ポストゴールドプラン時代の社会福祉計画の4点が実現されることが期待される。    なお、(3)については、90年代に個別分野計画の策定が進められ、それぞれ一定   の成果をあげてきたが、地域福祉計画はその次の段階の計画として社会福祉に関す   る諸計画を統合して今後の福祉の在り方をリードするものとして策定されるべきも   のと考える。  【地域福祉の担い手とその役割】  ・地域福祉計画では、地域住民、事業者、自治体、民生委員、ボランティア、NPO   等の地域福祉の担い手が参画し、協働して、計画を策定することが重要である。  ・市町村は、地域福祉計画の策定、福祉サービスの基盤整備、福祉サービスの適切な   利用の促進、住民参加を促進するための基盤整備等についての役割・責務を負う。  ・市区町村社会福祉協議会は、住民を始めとする諸団体、諸機関が地域福祉計画策定   に参画できるように促進する役割、住民による地域福祉の活動計画を作成すること   が期待される。  【地域福祉計画の内容】  ・地域福祉計画には、社会福祉法第107条に規定される事項を踏まえ、(1)福祉サー   ビス利用者の権利(「地域における福祉サービスの適切な利用の促進」)、(2)福祉   サービスの質(「地域における福祉サービスの適切な利用の促進」)、(3)福祉サー   ビスの充実(「地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達」)、(4)福祉   サービスの開発(「地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達」)及び   (5)住民参加(「地域福祉に関する活動への参加の促進」)の内容が盛り込まれるべ   きである。  ・法に明示されていないが、社会的な排除・摩擦・孤立等を背景にした福祉課題は、   いわば施策の「すきま」にあって顕在化しにくい。このような福祉課題への対応も   地域の実情に応じて地域福祉計画の中に位置付けていくことが考えられる。  【地域福祉計画と基本構想・既存の福祉計画3計画等との関係】  ・地域福祉計画は、地方自治法第2条第4項に規定される市町村の基本構想と社会福   祉の各分野計画との間を取り結ぶ、共通する理念を相互につなぐ役割がある。  ・既存の福祉関係3計画(老人保健福祉計画、障害者計画、児童育成計画)との関係   は、一定の調整を図ることが必要であるが、各計画の目標値を達成するための施策   は、市町村が各個別計画に基づき取り組むことが基本となる。既存の福祉関係3計   画が未策定の市町村にあっては、地域福祉計画策定を契機として、合わせて策定さ   れることが望まれる。  ・地域福祉計画は、既存の福祉関係3計画以外にも、医療・保健・介護関係の計画、   福祉のまちづくりの計画との連携、建築・住宅・教育・交通等関連分野との調整、   更には、防災計画等との調整も必要である。  【地域福祉計画の範囲】  ・これまでの点を踏まえると、地域福祉計画の範囲は、(1)狭義の地域福祉計画(福祉   分野の個別計画・施策を推進する上での共通理念とともに、地域福祉を具体化する   ための個別施策、地域特性に基づく福祉課題に対応した施策等により構成された計   画)、(2)広義の地域福祉計画((1)に加え、福祉関係3計画をはじめとする福祉分   野の計画を包含した社会福祉の総合計画)及び(3)最広義の地域福祉計画(福祉のま   ちづくり計画やその他関連領域の施策も含めた市民生活の総合福祉計画)のように   整理することができる。  【地域福祉計画と地域福祉活動計画との関係】  ・社会福祉協議会が策定する地域福祉活動計画は、民間による自主的、自発的な行動   計画であるが、地域福祉の推進を目指している点で地域福祉計画との関係が非常に   深い。地域福祉計画は、地域福祉活動計画を一部支援したり、一部を盛り込んだ   り、相互に連携を図ることが重要である。  【地域福祉計画における圏域】  ・人口規模や面積が非常に大きい自治体においては、人口、地理、交通等を検討の   上、一定の基礎圏域を設定することが必要。 そこを基礎にして、福祉サービスや   福祉活動への住民参加の体制を検討することが考えられる。  ・最近市町村合併に向けての動きが出ている。地域によっては近隣市町村との広域的   な調整が必要になる。  ・指定都市においては、区の位置付けを十分配慮し、計画を策定する必要がある。  【地域福祉計画の期間】  ・基本構想や他の社会福祉の各分野計画との整合性が必要。住民参加による計画策定   には、あまり短いと取り組みが難しいので、基本的には5年程度を目安とし、3年   次で計画の評価、見直しを行うことも考えられる。  【地域福祉計画策定における住民参加】  ・多くの住民が主体的に福祉のまちづくりに参加する契機とするため、できるだけ住   民自身で考えたり多様な意見をまとめたりする機会が必要である。具体的な例とし   ては、アンケートやヒアリング、ワークショップ(公募委員等による)、パブリッ   クコメント、インターネット等の新しい媒体を活用した広報等が考えられる。  【地域福祉計画の進行管理と評価】  ・策定された計画を具体化するために達成度を評価することが必要だが、進行管理や   評価の手法をあらかじめ明らかにしておくことが必要。計画策定委員会を評価委員   会として存続させる手法や、第三者機関で評価委員会を設置する手法、あるいは最   近開発されつつある様々な評価手法を活用することが考えられる。  【支援計画の役割】  ・支援計画は、市町村が策定する地域福祉計画の実現を補完性の原則に立って支援す   るための計画である。都道府県が地域福祉計画の策定の推進、支援を図ることによ   り、福祉における地方分権を大きく前進させることが期待される。    支援計画において都道府県は、市町村との関係で(1)地域福祉の推進及び地域福祉   計画の策定・実施・評価に向けた支援、(2)都道府県と市町村の協議の上で、市町村   において取り組む地域福祉推進のための施策や事業への支援及び(3)地域の福祉ニー   ズに基づく福祉サービス等で市町村だけでは実施困難な広域圏における施策や事業   の実施、の3点の役割を果たすべきである。  【支援計画の内容】  ・社会福祉法第108条に規定されている事項の他、市町村が直接権限や予算を持っ   ていない地域福祉に関する事項、市町村だけでは対応できない福祉ニーズへの広域   な対応が考えられる。  【支援計画策定のプロセス】  ・まず、都道府県は、市町村に対して地域福祉計画策定指針等を示す。その後、各市   町村の地域福祉計画の策定と並行して、市町村との十分な協議の上で、支援計画の   内容を確定することが必要である。  【支援計画と都道府県社会福祉協議会との関係】  ・都道府県社会福祉協議会は、支援計画の策定に参画するとともに、都道府県レベル   で行う広域的な事業や、住民参加等の手法の蓄積・情報提供等を通じて、支援計画   の実施に大きな役割を果たすことが期待される。  【国の役割】  ・国は、地域福祉計画、支援計画の策定・実施・評価にあたって、技術的支援、財政   的支援、情報提供を行うことが求められる。 (長谷川委員) ○ 地域福祉計画の理念・原則として公民協働の原則が掲げられているが、公民 とい  う表現とそれが目指す内容、これについては先の社会的援護を要する人々 に関する  検討会でも議論のあった点であるが、今まさに新しい公あるいは公共 をどう創出し  ていくかという時代に入っている。公民協働という場合、公を民 と対立するものと  見るのではなく、民とともに新しい公ないし公共をつくる、 そういうものが住民参  加のまちづくりのある意味では基本理念になると思う。 全社協委員会では、その辺  についての議論がなされたのか。 ○ 地域、地域福祉を議論する場合、福祉文化をどのように創造していくのか、 また  歴史的に形成された福祉文化の継承発展という問題が出てくるかと思う。 全社協委  員会では福祉文化の問題について議論がなされたのか。 (和田全社協委員) ○ 公的部門と民間部門がそれぞれ役割分担を踏まえ、協働して地域福祉の実現に当た  っていくべきとの議論をした。その場合でも、基本的には市民が自分たちでやれるこ  とを行い、それをサポートするような形に組み立てること、地域の自主性、自立性と  いう考え方で全体をできるだけ整理しようと考えている。 ○ 地域福祉を考える場合、福祉文化というものが決定的に大きな役割を果たすと思  う。福祉文化を創造する上では、一人ひとりの住民、市民の役割が変わっていくこと  により、大きなことができるのではないかと思っているが、その場合、学習活動も重  要だが、やはり実践にできるだけ参加し、それを通じて文化をつくるということが大  事ではないかということが基調にあると思う。 (京極委員) ○ 地域福祉計画の理念・原則として掲げられている5点について、趣旨には賛成だ  が、その横文字に関しては学問的に検討する必要がある。例えば、イネーブリングと  は、権限を下に下ろすという意味であり、公民協働という意味ではないのではない  か。 ○ 実際の地域社会を考えると、子ども、幼児のときからの福祉教育、あるいはリタイ  アした方々の地域に参加する教育、ボランティアとしての教育のレベルから、相当突  っ込んでサービスの一翼を担うようなレベル、計画策定に参加するレベル等、様々な  レベルがある。地域福祉の担い手を少し広めにとり、それぞれのレベル毎に整理する  と、現場においても市町村、都道府県で自分たちができることがはっきりするのでは  ないか。 (和田全社協委員) ○ 地域住民という形で広めに書いているが、地域によっては例えば中学生が地域福祉  計画の委員になり、そのために委員会が非常にわかりやすく、皆さんがいい意味の緊  張関係を持たれているという例も聞いている。広くいろいろな方が参加できる可能性  があるものとして考えていくことが重要であると思う。 (根本委員) ○ 国や都道府県の支援策ということで財政的支援をあげられたが、地域福祉計画を策  定するに当たっての財源の在り方についての検討はされたのか。 ○ 福祉文化についてはどのようなものを想定しているのか。例えば住民意識の変革に  よる新しい文化の創造、また、地域福祉の在り方からほかの行政分野を変革していく  こと、さらには、福祉から地方分権を実現していくこと等いろいろな内容が福祉文化  との関係であると思うのだが。 (和田全社協委員) ○ 財源の在り方については十分な検討はしていない。しかし、まず財源ありきという  発想ではないやり方を考える必要がある。これは今後の民間の財源も含めての大きな  課題だと思う。 ○ 福祉文化については根本委員のご意見のとおり広い内容を含んだものであると思う  が、全社協委員会では、福祉文化については余り議論はしていない。 (村田委員) ○ 地域福祉計画では、やはり住民参加が最も重要であり、それを実現させるためには  情報公開が欠かせない。報告中、インターネット、パブリックコメント等があげられ  たが、地域福祉計画策定における住民参加と情報公開のような、もっとインパクトが  強く、訴えるような議論はなされなかったのか。 (和田全社協委員) ○ 情報公開がなければ住民参加が十分にはかれないという議論はあったが、地域福祉  計画と情報公開のような項目を設けるところまでの整理はしていない。 (中村委員) ○ アメリカの野球と日本の野球、アメリカの野球はまさに文化である。やはり文化と  は連帯、広範囲がポイントと思う。福祉文化についてもいかに連帯、広範囲に広げて  いくかということが重要であると思う。そのように考えると、村田委員のお話のよう  にやはり情報公開による共通の考え方をどのように育てていくかというのがポイント  だと思う。 (武川委員) ○ 京極委員の言うように、通常、公民協働はパートナーシップと考えられているが、  民間と行政が協力して新しい方向をつくり上げていくというコンテキストの中で考え  た場合、行政には民間に対して果たさなければならない条件整備のような役割が残っ  ていると考えられる。そこで全社協報告では単純にパートナーシップということだけ  ではなく、行政に固有の役割という意味でイネーブリングという言葉が付いた。 ○ 地域福祉については、地方分権化の中で考えていくことが重要。地域福祉における  地域というものは、あくまでも住民の生活圏という単位として考えることが重要。こ  のような視点に立って考えると、おのずと地域福祉計画がどのような内容になるとい  うことが明らかになってくると思う。 (鈴木委員) ○ 全社協委員会では、福祉関係だけではなく教育について、学校教育、学校と社会教  育との連携等についての議論がされたのか。 (和田全社協委員) ○ 既存施策だけでは対応できない新しい問題がいろいろ起こっているが、子どもに関  連する分野についても非常に大きな課題となっている。児童分野の計画のない自治体  が相当あり、また、児童分野の計画がある場合でも保育が中心であることから、委員  会では、教育なども含め児童福祉という点からもっとダイナミックな計画が必要との  議論や、福祉の視点から今までになかった広い視点で児童の問題が提案される必要が  あるとの議論がなされた。 (大山委員) ○ 報告中、地域福祉が狭義、広義、最広義となっており、社会福祉が最広義の地域福  祉の更に上位概念ととれるので、社会福祉と地域福祉の言葉の意味についてお尋ねし  たい。 ○ 地方自治体には、大きいもの小さいものがあり、ヒト、モノ、カネ、情報など基本  的な要素、条件がそろっているところとそうでないところがある。更に、社会福祉法  上では地域福祉計画は義務規定ではない。この場合、これを策定しようが策定しまい  が自治体の勝手という姿勢で臨むのか、また、ガイドラインの戦略、目標としてはど  のような自治体のレベルに向けるのか。   この部会ではガイドラインを示すこととなっており、部会の議論の方向性にも関わ  ってくることであるが、全社協委員会では、どのような自治体のレベルに何のために  ガイドラインを示すかという点について議論されたのか。 (和田全社協委員) ○ 社会福祉と地域福祉については、社会福祉の大きな流れ、課題等が結節し、総合化  され、地域福祉が成立していると思う。広い意味では社会福祉の在り方としての地域  福祉と考えていいと思う。   地域福祉が広いか狭いかという点、あるいは社会福祉と比べてどうかという点につ  いては議論はされていないが、法律上に規定されており、どうしても最低限これだけ  は内容として含まなければならないという狭義のもの、分野計画を内包した広義のも  の、まちづくり条例や福祉のまちづくりの取り組みをも含めた総合的な市民福祉とい  う視点で実施しているところもあるので、通常の広義よりも更に広いので一応最広義  というふうに便宜的、操作的に整理したもの。 ○ 自治体については、特に焦点を当てたというよりも、それぞれの生活をしている基  礎圏というものをベースにし、自治体との関係をどう考えながらつくっていくのかと  いうこと、現実には小さな町村ではなかなか難しいということはあると思う。隣接と  の連携等も含めたことも当然出てくると考えている。 (京極委員) ○ 地域福祉の広狭について、これはあくまでも地域福祉計画がカバーする範囲を議論  するという文脈の中で理解すべきであり、地域福祉そのものの範囲、概念というとら  え方をすべきではない。   地域福祉計画の範囲について整理することは必要であるが、ガイドラインには計画  に規定すべき最低限の事項のみを示すに止め、後は市町村が自由に地域の実情に応じ  て必要な事項を加えればよいのではないか。 (北野委員) ○ 地域福祉計画がめざすものとして最初に地方分権化の推進を掲げているが、国と地  方自治体の役割分担をどう考えるのか。国が憲法25条の健康で文化的なミニマムな  生活を支援するという部分のナショナルミニマムはどこまでやるのか、コミニュティ  はコミニュティミニマムをどこまでやるのか。 ○ 地域福祉計画がめざすものの3点目として掲げられている社会福祉に関する計画の  総合化に関する説明の中で、各個別分野計画が「それぞれ一定の成果をあげてきた」  という表現があったが、財政措置の差などにより、老人計画、障害者計画、児童計画  に大きな格差があることから考えると、この表現は非常に不満である。 (岩田部会長) ○ 社会福祉法の文言を見ると推進計画というニュアンス、事業計画というよりはそれ  を進めていくソフトとして計画を立てるというイメージが非常に強いが、全社協委員  会の報告はむしろそれを少し出て、附帯決議などでいわれている統合化、総合化にか  なり踏み込んでいるが、共通理念のようなものを置こうということなのか、それとも  地域ごとにここが足りないからもっとここを優先するというようなプライオリティの  議論などはされたのか。 (和田全社協委員) ○ 市町村における地域福祉に関する計画や分野毎計画についての調査を実施してお  り、各分野の格差等については認識している。ここでは、全く実態がない時期からす  れば一定の成果をあげているものもあるということでこのような表現としたもの。 ○ プライオリティの議論については、地域ごとにどう考えるのかということで進めれ  ばいいと思っている。ただし、各分野ごとの計画をただ合わせるだけでなく、もっと  そこを乗り越えていく新しいものが必要ではないかと考える。 (佐口委員) ○ 計画の策定と実際の執行、実行とは非常に関係を持っている。実際に現に地域の福  祉の中でそれぞれの住民、団体がどういう役割、責任を担うかを踏まえ、どういう形  の計画への参画の在り方があるかということも同時に議論しなければならない。担い  手が広がっていくのはいいが、新たな担い手が現実に責任を持って本当に執行できる  のかということを踏まえてプランの策定や参画の在り方というのを考えなければなら  ないと思う。全社協委員会では、役割分担や責任の問題、実際の執行との関わりなど  について議論されたのか。 ○ 先ほど策定委員を公募してワークショップで計画を策定するという事例の紹介があ  ったが、このような方式と全体の総合性というものとは、どのように整合性を図るの  か。 (岡部委員) ○ 地域福祉計画により施策のすきまにある福祉課題に積極的に対応する、そして福祉  分野の個別計画が未策定の場合には地域福祉計画の中で合わせて策定されることが望  まれるとの趣旨が含まれた報告があったが、これを挙げていただいたというのは積極  的に評価してよい。非常に意味のある報告であると考える。 ○ 地域福祉計画を何故作るのかということ、そして地域社会における新たな社会福祉  の創造のようなものをこの地域福祉計画の中に含めていることについて是非計画に入  れていただきたいと思う。 ○ 人材計画、財政計画、組織計画等については、今後考えなければならないと思う  が、全社協委員会では、これらの点についてどの程度議論されたのか。 (和田全社協委員) ○ 地域福祉計画に関する各地の取組みを見ると、公募委員のような形の広がりによ  り、今までとは違う新しい提案がいろいろ出されており、大いにやっていただければ  と思っている。このような方式をとった場合の総合性・全体性の担保については、例  えば策定委員会が策定したものがそのまま計画になる自治体もあるが、策定委員会の  報告を消化して整合性を持たせた最終案を自治体の責任でつくるというやり方をして  いる自治体もある。ここは、工夫がいろいろあり得るのではないかと思う。 ○ 計画のほか、更に、計画に合わせた実行計画のようなものが必要との指摘はそのと  おりであると思うが、それについて突っ込んだ議論はまだしていない。ただ、これか  らの各地の取組みを通して私どももそれを学び、整理ができるものはするという形に  していこうと思う。 地域福祉計画に関する自由討議 (岩田部会長) ○ 地域福祉計画についてまとめていく上で討議する必要があると思われる点を案とし  てお示しする。 +---------------------------------------------------------------------+ |1 地域福祉計画の意義及び期待される役割は何か。 | |2 地域福祉計画の範囲についてはどう考えるか。 | | ○ 狭義の福祉 | | ○ 広義の福祉(保健、環境、まちづくり、就労、その他) | |3 地域福祉計画と既存計画等関連分野との関係 | | ○ 福祉関係3計画 | | ○ 保健計画等関連計画 | | ○ 防災計画 | | ○ 市町村の独自計画 | |4 住民参加のあり方 | |5 地域福祉計画の内容 | | ○ 期間 | | ○ 圏域 | | ○ 数値目標 | |6 その他 | +---------------------------------------------------------------------+ ○ 本日は1を中心に、1に関連付けながらご意見をいただきたい。なぜ地域福祉計画  をつくるのかということは、社会福祉法に規定されていることが基盤としてあるわけ  だが、もう少し進んで一番最初に我々が確認し合っておくべきことであると思う。 (武川委員) ○ 地域福祉計画が地域の社会福祉を実現するためのもの、地方分権化の中で策定され  ているものであるということを考えた場合、市町村地域福祉計画と都道府県地域福祉  支援計画との関係を整理することも重要である。 ○ 従来の社会福祉関係の計画の場合、市町村計画を積み上げて都道府県計画にする  か、あるいは都道府県計画を下ろして市町村計画にするかという違いはあるが、市町  村レベルの計画の相似形を都道府県レベルに拡大したというような印象が強い。 ○ 地域福祉計画は、市町村が策定主体であり、政令市であっても人口数千の村であっ  ても地域福祉計画の策定であるが、あくまでも生活圏としての地域が中心になって作  られるべきである。 ○ そのように考えた場合、都道府県の支援計画は、従来の社会福祉関係の計画のよう  に市町村計画の都道府県版のようなものをつくるという発想がいいのか、市町村が計  画を策定するときの都道府県の支援の在り方に焦点を定めるのがいいのか。この点も  重要であると思うので論点に付け加えてほしい。 (岩田部会長) ○ 都道府県の支援計画と市町村の地域福祉計画をそれぞれのものとして議論し、かつ  両者の関係をきちんと位置付けることは大変重要と思う。国の問題としても、事業計  画と考えるか、推進計画と考えるかによってかなり変わってくる。 (京極委員) ○ 予算化を考えた時、どこにどういう費用がかかるかが大事な論点。既存の政策の中  にすべてが含まれる事業と、含まれないため予算の裏づけはないが重要なものがいく  つかある。他の省の施策を含めると、まちづくりに関するものがたくさんあるので、  それを地域福祉の中に取り込み、予算をまとめて実行上使うということができればよ  いのだが。 (北野委員) ○ 地域福祉計画を策定するなかで、これまで個別に展開されてきた高齢者、障害者、  児童等のサービスの統合についての議論がでてくると思うが、同一サービス、同一シ  ステムによって展開が可能なもの、可能でないものを整理する必要がある。 (岩田部会長) ○ 縦割りに対する批判があり、一番基礎の自治体レベルで横につなぐという役割が非  常に期待されている。その時に、どれぐらいまで地域という点で整理できるのか。 (鈴木委員) ○ 策定委員の教育をどう行うのか、その後の評価をする手順、それらに係る予算をど  うするのかといった具体的で現実的な議論を行ったほうがいい。策定委員の公募の案  もあるようだが、行政や福祉の関係者以外の一般住民、特に中年女性などを活用でき  る仕組みが期待される。 (大山委員) ○ 自治体の側から見て、特にガイドラインは具体的に何を検討しなければいけないの  か。アイデアを凝らして福祉で雇用、就労の場を作ろうとする自治体もあるが、財政  的に厳しくて福祉どころではなく、まちづくりや地域の活性化を優先する自治体が大  半であり、そういった自治体を刺激して地域福祉計画を策定してもらうためのガイド  ラインが求められているのではないか。 (岩田部会長) ○ 経済状況が悪化している中、財源の問題についても何らかの支援を検討する必要が  あるのではないか。 (岡部委員) ○ なぜ地域福祉計画を策定するのかについては社会福祉法に書かれているが、それを  理念的に一つの哲学的な形の部分として抜き出して、かつ法的根拠を与えていくこと  が必要。その時に、社会連帯というものが公と民という形で新たなものを創造する、  その中の一つの重要な柱が地域福祉計画であるといったニュアンスで理念・目的を前  面に出し、その点について地域の中でどう考えていくかの議論をしてほしい。その上  に立ってガイドラインに示すことにより、計画に広がりが出てくるのではないか。 (中村委員) ○ 地域福祉の考え方を20世紀型から21世紀型にしなくては、そのためにも地域福  祉を担っていく人材をどう発掘し、育成していくかがポイントである。現在までの地  域福祉は、市町村社会福祉協議会が担っている部分が大きいが、住民に密着した市町  村社協と市町村財政を逼迫させるのみで、旧来の官主導に終始している市町村社協が  ある。みずみずしい21世紀型にしていくには現状の把握が必要である。 (岩田部会長) ○ 地域資源というのは一朝一夕には増えないので、既存のものをどう位置付け、再活  性化するかということは当然課題になってくる。 (岡田委員) ○ 社会福祉基礎構造改革においては、わが国が将来どのような社会を目指すべきなの  かほとんど示されていない。例えば、アメリカ型社会を目指すのか、北欧型社会をめ  ざすのか、あるいはわが国独自の社会を目指すのかといった議論が国民の間であって  然るべきではないかと思う。また、福祉とは一体どのようなものかという点について  も共通の認識がないのではないか。かつて、福祉とは「社会的弱者に対する補完的   サービスである」と考えられた時代がある。しかし、今日これは明確に否定されてい  る。少なくとも社会的弱者といわれる特定の人たちに対するものではなく、すべての  人を対象としているはずであり、その方向は、一人ひとりの自己実現を目指すものと  されている。福祉のなかで私たちが歩んできた道のりは、かつては我がままだとか贅  沢だといわれたことがらを徐々に実現するという側面があったと思う。こうした理解  が果たして全 国の市町村のいずれにも浸透しているかというと、ためらいをおぼえ  る。この審議会は、具体的な問題を検討することも重要であるが、同時に、基本理念  とでもいうべきものも議論する必要があると思う。 (京極委員) ○ 各計画で縦割りの場合いろいろな事業を行うが、住民の福祉意識の啓発は、21世  紀を考えたときに地域福祉計画に組み込んでやっていく必要がある。今やっていると  ころとやっていないところでは、差が出てきている。 (長谷川委員) ○ 地域福祉の思想や理念はノーマライゼーションの考え方に立つものがあると思う  が、ノーマライゼーションを共生という考え方で語る場合、日本や東洋の共生の発想  とキリスト教文化圏の発想とは異なる。そういう意味で、ノーマライゼーションとい  う基本概念を福祉に用いるとき、日本の社会に定着させるため、どう溶け込ませてい  くかが大変重要である。 (大山委員) ○ 地域福祉計画を策定する場合、また、これからの公と民のパートナーシップ型を展  望する場合、社協と自治体との関係、社協の役割というものがかなり重要になる。市  町村社協は、これまで伝統的に行政からの委託事業が大半を占めているが、NPO、  ボランティア、コミニュティビジネス等多様な団体も登場してきており、市町村社協  の役割、存在意義が問われている。社協と自治体との関係、社協が策定した計画と地  域福祉計画との関係等、全社協報告にも多少触れていたが、もう少し突っ込んで整理  する必要がある。 (佐口委員) ○ 先ほど大山委員の意見は非常に気になる。つまり地域福祉が本当に機能する条件と  か基盤がどれぐらい今、地域の中にあるのか。雇用問題の切り札が社会福祉の雇用に  あると安直には思わないが、地域が自力で再生する点において、いかに福祉がコアの  役割を持つか、どういう意味でのコアを持つかを検討しながら議論していきたい。 【照会先】  厚生労働省社会・援護局総務課 堀  03(3595)2612(直通)