01/09/03 「第2回医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会」議事録 「第2回医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会」議事録                        日時 平成13年9月3日(月)                10:00〜                        場所 厚生労働省省議室 ○総務課長  ただいまから第2回ヒューマンエラー部会を開会させていただきます。委員の先生方 におかれましてはお忙しい中をご出席いただきまして、誠にありがとうございます。本 日は12名、全員の委員のご出席をもって検討会議を開催いたします。まず、今回の会議 から委員が1名変更となっておりますのでご紹介申し上げます。國井治子委員に代わっ て、日本看護協会常任理事の楠本万理子委員でございます。 ○楠本委員  日本看護協会の楠本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○総務課長  インシデントレポートの収集等に関する専門事項について検討を行いますため、新た に専門委員として委嘱いたしましたのでご紹介いたします。国立長野病院副院長の武藤 正樹委員でございます。 ○武藤委員  武藤です。よろしくお願いいたします。 ○総務課長  この結果、部会の委員及び専門委員は、参考資料3に掲げているとおりですので、ご 了解いただきたいと思います。また本日の会合には、後ほど議題1で検討する患者安全 のための標語検討会委員の、三菱総合研究所の主席研究員である田上豊氏にもご出席い ただいておりますのでご紹介申し上げます。 ○田上委員  三菱総合研究所の田上です。よろしくお願いいたします。 ○総務課長  事務局のほうも異動等があって幹部職員が交替しておりますので、この場をお借りし てご紹介申し上げたいと思います。まず、8月31日付で、人事異動にともなって、医 政局長に篠崎が就任しております。ご挨拶申し上げます。 ○医政局長  本日は大変お忙しい中を委員の先生方、お集まりいただきまして誠にありがとうござ いました。私、8月31日付で伊藤前局長のあと、医政局長を拝命した篠崎でございま す。  私もこの医療の関係の分野につきましては、数年前に、昔の健康政策局におりました ので、大体の事情は承知しておりますが、昨今、医療安全が非常に大きな国民的な課題 、あるいは関心事になっております。医療事故につきましてはとにかくヒューマンの部 分がいちばん大事でございまして、関与する様々な医療関係職種1人ひとりが、その自 覚を持っていくことがまず第一でございます。医療の安全に対する国民の信頼がゆらい では、医療そのものが駄目になってしまいます。  今年度は、坂口大臣の提唱によって 、とにかく医療の安全の最大の年にするということでございます。この問題につきまし ては、国民あげて、なんとかしなければならないという、共通認識があるときでござい ますから、こういうときに、矢崎先生に部会長をお願いして、一気にその懸案を解決し たい、また、その知恵を拝借したいと思っておりますので、どうかよろしくお願いいた します。 ○総務課長  続きまして、これは7月ですが、人事異動がありまして、前任の青木に代わって、医 療安全推進室長に新木が就任しております。 ○新木室長  新木でございます。よろしくお願いいたします。 ○総務課長  事務局からは以上でございます。では、先生よろしくお願いします。 ○矢崎部会長  それでは、第2回目のヒューマンエラー部会をこれから開催させていただきたいと思 います。委員の皆様には、本日お忙しいところをご出席いただきまして、改めて御礼申 し上げます。まず事務局から資料の確認をお願いします。 ○新木室長  それでは、お手元の資料の確認をさせていただきます。  資料は、いちばん上に「第2回ヒューマンエラー部会議事次第」というのがあります が、その下に資料1−1「安全な医療を提供するための10の要点について」という報告 。これは議事の1に関連してございます。それの別添資料として資料1−2「安全な医 療を提供するための10の要点 参考資料」を付けております。次に、議事の2に関係す る「インシデントレポート収集等に関する検討会の検討状況について」というのが資料 2でございます。資料3は議事の3に関連するものですが、「医療安全推進週間につい て」というものでございます。その後ろに参考資料が3つございます。1が「平成14年 度概算要求の概要」、2が、「第1回目のヒューマンエラー部会の議事録」、3が、「 委員の名簿」でございます。  なお、前回6月28日の部会の議事録は、事前に委員の先生方にご確認いただいており ますが、この内容を、厚生労働省のホームページに掲載したいと考えております。今後 部会の資料は、先生方に最終的なチェックをいただいたあと、随時ホームページに載せ て、公表していきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。以上でござ います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。それでは議事の1番目から進めたいと思います。  最初は「安全な医療を提供するための10の要点」ということです。これは仮称ですが 、前回の部会においてご議論いただいた標語について、部会の下に設置した患者安全の ための標語検討会において、具体的な案を作成していただきました。、今日、皆様のお 手元に配付している「安全な医療の提供のための10の要点」がそれです。委員長を務め られた橋本委員からご説明いただいて、また、田上氏からも付け加えてご意見をいただ ければと思います。まず橋本先生から内容の説明をお願いいたします。 ○橋本委員  「安全な医療を提供するための10の要点」。仮称ですが、これについての標語検討会 というのを、ワーキンググループとして設置して、私が世話役をさせていただきました ので、その報告をさせていただきます。資料1−1で、1−2が参考資料として付いて おります。  まず6頁目、別紙3に本体部分がありますので、そこから説明するのが一番よろしい かと思いますが、その前に検討方法について1−1の1頁目に書いてありますので、そ こを簡単に説明させていただきたいと思います。  これまでも医療機関でいろいろな標語が作られているという認識はありました。それ をある部分集約して役に立てるようなものを作り上げよう、まず、これまでのものを収 集してみようということで、1か月ほどかけて収集いたしました。それが検討報告の1 に書いてあることです。「既存の標語を収集し、その分析、分類を行うことにより、標 語に盛り込むことが適当な内容をキーワードとして抽出した」。参考資料として1から 3までふっております。このために今日出席されておられる長谷川委員に、昨年度の研 究成果からご協力いただける病院を抽出して頂きお願いしました。そのほかにほかの団 体からも、いろいろな方法を使って標語を収集いたしました。その結果、82の医療機関 から800の標語が集まっております。  そのほかに先進国、あるいは他業界での取組みというのが標語として、必ずしも標語 ではありませんが、それも参考資料4としてつけております。そのようなことをある程 度頭の中に置きながら、一定の方法を取って作っていったということでございます。そ のプロセスで、この検討部会のいろいろな先生方からもご意見をいただいたことを、あ らかじめお礼申し上げておきます。ありがとうございました。  別紙3に基づいてお話申し上げたいと思います。6頁目です。  策定の趣旨としては、これは確認ですが、「安全な医療を提供するということは、医 療の最も基本的な要件の1つである」ということでございます。「このため医療機関に おいては、医療安全に関する職員の意識啓発を進めるとともに、医療安全を推進する組 織体制を構築していくことが大事である」ということです。そこで、「医療機関におけ る医療安全に関する基本的な考え方を、標語の形式で取りまとめた」「この標語を参考 に、それぞれの医療機関がそれぞれの特性などに応じて、より具体的な標語を作成する ということが望まれる」。書いてありませんが、そういった、1つ1つの医療機関がこ の標語をもとに、あるいは標語を参考に作り上げていくという、そのプロセスが大事な のだろうという認識が根本にあります。そのための標語でございます。  次の頁、10の要点の特徴ですが、3つの方針により作成しました。まず、「医療機関 で働くすべての職員を対象としたい」ということです。2番目に「業務を遂行するに当 たって、基本となる理念などをわかりやすく、覚えやすい簡潔な表現でまとめた」。し たがって、難しい表現というのは、概念を表す分には良い言葉があるのですが、難しけ ればそれは避けたという、そういう手法を取りました。3番目はもう1回確認ですが、 この標語をもとに、「それぞれの医療機関において独自の標語が作成できるように、各 標語には解説、具体的な活用方法などを記載」して参考にしていただく。解説では趣旨 とか狙いを記述しました。具体的な取組みとしては、それぞれの医療機関での取組みの 参考例を記述しました。具体的な方法は特性や状況に応じて異なるものだから、そのた め、それぞれの展開が必要であるということです。  8頁目。構成としました。800の標語を集めて、それを分類し、そこからいくつか構 造化していきました。重要なポイントとしてその過程はいろいろありますが、6分野を 挙げました。「理念」「組織的取組み」「患者との関係」「職員間の関係」「職員個人 」、それから、外側の「人と環境・モノとの関係」という、6つの分野を抽出しました 。その中から、我々は、作業プロセスの中ではキーワードと呼んでいましたが、「安全 文化」というのが1つ大きいことで、2番目「問題解決型のアプローチ」。3番目「規 則と手順」。4番目「対話と患者参加」。5番目「職員間のコミュニケーション」。6 番目「危険の予測と合理的な認識」。7番目「自己の健康管理」これは独自の考え方だ と思います。8番目「技術の活用と工夫」。9番目「与薬」。10番目「環境整備」。こ の10が挙げられます。この10の要点は、この10項目についてわかりやすく、覚えやすい 標語としてまとめたものです。  その構成の考え方を9頁に図として載せております。いちばん外側に大きく取り巻く 理念があって、患者と職員の関係、組織的な取組み、職員と職員の間の問題、医療機関 と他機関との問題、人と環境・モノとの関係。それがキーワードとして申し上げたこと の中に分類されるものであります。  10頁目に、結果として我々が考えた10の要点を示させていただきました。以下1つ1 つについての解説と、「具体的な取組みに向けて」というのが11頁以降に載せておりま すので、それを標語検討会の田上委員のほうからお話いただきたいと思います。 ○田上標語検討会委員  それでは11頁目以降、それぞれの項目についてご説明させていただきたいと思います 。  11頁目。まず、理念にかかわる項目として「安全文化」というタイトルを挙げており まして、そこでの標語として「根づかせよう 安全文化 みんなの努力と活かすシステ ム」、というのを作っております。構造として、11頁目にまず解説、この標語の意図す る内容、趣旨とか狙いを書いておりまして、12頁目に「具体的な取組みに向けて」とい うことで、この標語を通じて、それぞれの医療機関で取り組んでいただきたいような内 容を記載しております。こういう構造ですべての標語についての解説を述べております 。  11頁目に戻っていただいて、「根づかせよう 安全文化 みんなの努力と活かすシス テム」ということですが、これはこの解説の1行目にありますように、患者の安全とい うのは何よりも優先されるべきものであるということです。2つ目の○として、医療に おける安全文化とは、医療に従事するすべての人が、患者の安全を最優先に考え、その 実現を目指す態度や考え方と言えるでしょう。この辺の安全文化という言葉については 、その説明を3番目の○に挙げてあります。4つ目に患者の安全を優先させるというこ とは、古くから医療に従事する者の、基本的な行動規範とされてきました、ということ です。今日改めてその重要性を再認識し、組織の全員で共有することが必要であろう、 医療安全に向けて、組織の職員1人1人が積極的に取り組むということと同時に、それ を促すためにも、その成果を組織全体で共有する仕組みを構築していく。職員1人1人 ということと同時に、組織全体でも取り組むことが必要だということを述べております 。最後に、人は間違えることを前提としてシステムを構築し、機能させていくことが必 要であろう。  12頁目は、具体的な取組みに向けてということで、管理者の方のリーダーシップの発 揮とか、委員会あるいはリスクマネジャーの設置、教育訓練といった、事故予防のため の体制づくりに取り組んでいくことが必要であろうということです。2点目として、個 人の間違いが重大な事故に結びつかないようにする、いわゆる「フェイルセーフ」の仕 組みを構築していくことが必要であろう。すべての職員の方は、安全を最優先に考えて 業務に取り組む必要があるということで、このために、安全に関する知識あるいは技術 を常に学び、向上していくことが必要であろうということです。  13頁目は、続いて、いわゆる組織的な取組みの1つ目のポイントとして「問題解決型 アプローチ」というのを挙げております。「共有しよう 私の経験 活用しよう あな たの教訓」という標語です。ミスが起こる要因というのは、ある程度共通しているとい うことですので、その要因を明らかにし、それを改善していくということが必要であろ う。そのためには、それぞれの職員の方の経験を報告して、原因分析に基づいて改善策 を導き出す、そしてそれを共有するということが、不可欠であろうということです。  効果的な安全対策を講じるために、個人の責任を追及するのではなくて、やはりシス テムの問題点を考え改善していく。他の産業の安全対策に関する知見も含めて、問題解 決への取組んでいく必要があるだろう。その具体的な取組みに向けてとして、「事故予 防のための報告システムを構築する」「報告された事例の原因分析をする」「得られた 改善策を明らかにし、それを職員全員で学び実践する」ということを挙げております。  14頁目には、組織的取組みの中の2つ目の要素として、「規則と手順」というのを挙 げております。「規則と手順 決めて 守って 見直して」。規則とか手順というのは 、やはり現実的でかつ合理的なものを、職員自らが考えて、話し合いながら文書として 作り上げるということが必要であろうということです。さらにそれらは必ず守らなけれ ばいけないということです。問題点とか不都合な点が見付かったときには、やはり躊躇 なく改善しなければなりませんが、その際、あらかじめ関係する部門同士がよく調整す るということが必要です。規則や手順、あるいは各種用紙の書式などを統一するという ことも、ミスを減らす上では大切ですということ。  具体的な取組みに向けてということで、「規則や手順については、文書として整備し 遵守する」「必要なときには、積極的に改善提案し見直す」「見直しの際には、1人で 勝手に見直すということではなく、関係者とよく話し合って、組織として見直していく 」ということが必要だということを記載しております。  15頁目、3つ目のポイントになりますが、患者との関係というのはやはり非常に重要 であろうということで、キーワードとして(4)「対話と患者参加」ということを挙げさ せていただいております。「安全高める患者の参加 対話が深める互いの理解」。解説 として、医療は患者のために行うものであり、その主役である患者が医療に参加すると いうことが重要でしょう。安全な医療を提供するためにも、患者が参加することが大切 です。患者と職員との対話によって、相互の理解を深めるということと同時に、患者自 身が医療内容への理解を一層深めるということにもつながるということで、具体的な取 組みに向けてでは、一方的な説明ではなく、患者との対話を心掛けるということを書い ております。また、患者が質問とか考えを伝えやすい雰囲気をつくるということです。  16頁目。4つ目の柱になりますが、職員間の関係ということで、「職員間のコミュニ ケーション」ということを挙げております。「部門の壁を 乗り越えて 意見かわせる  職場環境」。医療の組織は、多様な職種・部門が連携して、チームで医療を行ってい るという特徴があるわけで、そのためには部門や職種の違い、あるいは、職制上の違い を問わず、相互に意見を交わし合うということが重要だということでございます。特に 、チームで仕事を行うということにおいては、お互いが指摘し、協力しあえる関係にあ るということが不可欠です。さらに、ミスの原因として思い込みや過信ということがあ りますが、そういうのは誰にでも起こり得るもので、自分では気づきにくいことも、他 人の目により互いに注意しあえるということもあります。。  なお、1人の患者に複数の施設がかかわる場合も、最近では増えてきておりますが、 外部組織とのコミュニケーションも重要だということで、具体的な取組みに向けては、 「気づいたら互いに率直に意見を伝え、周りの意見には謙虚に耳を傾けましょう」。さ らに、「上司や先輩から率先してオープンな職場づくりを心掛けましょう」ということ を挙げております。  17頁目。これは職員個人に関する内容です。危険の予測と合理的な確認ということで 、「先の危険を考えて 要点押さえて しっかり確認」という標語を作っております。 解説として、確認というのは、医療の安全を確保するために最も重要な行為ですが、た だ漫然と確認するのではなく、やはり業務分析を行って、確認すべき点を明らかにした 上で、要点を押さえて行うということが重要だということです。正しい知識を学んで、 的確な患者の観察とか医療内容の理解により、起こり得る危険を予測、見通すというこ とで、事故を未然に防ぐことができます。さらに「いつもと違う」ということを感じた 場合は、これはいわゆるリスク感性のようなものですが、危険が潜んでいることがある ため注意が必要だということです。具体的な取組みに向けてでは、「決められた確認を しっかり行いましょう」「早期に危険を見付けるためには、正しい知識を身につけまし ょう」「何か変と感じる感性を大切にしましょう」ということです。  18頁目は、職員個人に関するものの2つ目ですが、「自己の健康管理」ということで 、「自分自身の健康管理 医療人の第一歩」としました。安全な医療を提供するために は、自らの健康とか生活を管理することが必要であるということで、このことは医療人 としての基本になる。具体的な取組みに向けてでは、「次の業務に備え、健康管理や生 活管理を心掛ける」「リーダーはメンバーの体調とか健康状態にも配慮する」というよ うなことを挙げております。  19頁目。ここは人と環境・モノの関係に関するものです。8番目の標語として、「技 術の活用と工夫」ということで「事故予防 技術の工夫も取り入れて」ということです 。安全確保のための取組みを、人間の力だけで行うにはやはり限界があるので、積極的 に技術を活用することで、人的ミスの発生を減らしていこうということです。特に、近 年発達を遂げているような情報技術の活用というのが、1つの手段として有効でしょう 。また、1つのミスが全体の安全を損なわないように、安全性というものに十分配慮し 、さらに、フェイルセーフ技術の活用、あるいは、ユーザビリティ(使い勝手)への配 慮が必要であろうということです。  医療で用いられる機器とか器具などのモノに関する現場の意見や創意工夫というのこ とが、より安全な医療環境の実現のためにも重要です。具体的な取組みに向けてでは、 「機器や器具などの購入や採用に当たっては、安全面や操作性に優れた機器を選定しよ う」さらに「改善すべき点があれば、関係者に対して積極的な改善提案を行おう」とい う内容にしております。  20頁目は、人と環境・モノの関係の2つ目ということで「与薬」、薬に関する内容で す。「患者と薬を再確認 用法・用量 気をつけて」ということで標語を作っておりま す。医薬品に関するミスというのは、医療事故の中で最も多いと言われているというこ とで、この標語を作っております。特にこの誤薬というのを防ぐためには、医薬品に関 する「5つのR」というのが一般に言われている、それに注意することが必要です。5 つのR(Right)とは「正しい患者」「正しい薬剤名」「正しい量」「正しい投与 経路」「正しい時間」。具体的な取組みに向けてということでは、「処方箋や伝票など は読みやすい字で書き、疑問とか不明な点があれば必ず確認する」「患者誤認防止のた め、与薬時の患者確認は特に注意して行う」「類似した名称や形態・モノには特に注意 する」ということを挙げております。  20頁目。人と環境・モノとの関係の標語ですが、「環境整備」ということで、「整え よう療養環境 つくりあげよう作業環境」という標語を挙げております。療養環境の整 備というのは、患者の快適性だけでなく、転倒とか転落等の事故予防の観点からも重要 である。作業環境の整備も、手順のミスを防ぐなど事故防止につながるということでご ざいます。なお、作業する場所ということだけではなくて、記録や医療機器等も、作業 環境の一環として整備していくことが必要であろう。医療機器に関しては、その特性を よく理解し、安全に使用することが必要であるということです。具体的な取組みに向け てでは、「施設内の整理・整頓・清潔・清掃に取り組む」「他の人にもわかりやすい正 確な記録を心掛ける」「医療機器等は、操作方法をよく理解し、始業・終業点検や保守 点検を行った上で使用する」。以上、10の標語を作らせていただいております。 ○橋本委員  ありがとうございました。これは1か月ぐらいで標語として結実させたわけです。5 回の検討会で熱心な委員がそれぞれ、議論の結果出来上がったものです。キーワードを 作るところまでは理論的に進むのですが、その先はなかなか、感性の問題があって、標 語としての語呂の良さや強調性などを勘案しながら作り上げたわけでございます。いち ばん大事なのは22頁以降で、医療安全に向けた標語の活用方法です。それがいちばん大 事だろうと思います。個々の医療機関でどのように活用していくかということが、この 標語がどれだけ役に立つかということだろうと思います。  調査をさせていただいた医療機関には、アンケート調査で、標語だけではなくて作成 方法とか普及方法、効果というようなことも聞きました。そういうことを参考に、標語 作成への取組みの意義に、標語の作成方法、職員に対する周知の工夫についてまとめて みました。意義としては、標語をきっかけにして具体的な安全対策の取組みが推進され ていくだろうということであります。標語だけではありませんが、標語も1つの大きな きっかけになるということです。  次に標語の作成方法ですが、2つに分かれると思います。医療安全に対する基本理念 や原則の周知、あるいは、職員の意識啓発という大きい項目で、これはベースを作るた めには必要なことです。それから、具体的にそれぞれの部門の業務内容に応じたものが 作られるべきであろう。現場では役に立つ、これこそが役に立つという考え方もありま す。こういう2つの側面があると思います。それぞれの病院のいまの状態によって、い くつか組み合わせが違ってくるのだろうと思いますが、そういう大きな2つの役割があ るだろうということであります。  作り方としては、各部の職員から構成される検討組織で作成すること。病院にはいろ いろな職員が働いておりますが、それぞれの役割に応じた形で、安全を高めるために自 分はどのように寄与できるかという観点から、こういうことを進めていただきたいとい うことです。あるまとまった職種だけでやってしまうと、やはり全病院的な取組みとし ては、弱いものになってしまうかもしれない。具体的な手順やチェックポイントに関す る標語については、それぞれの部門で独自にやっていただくことが必要かと思います。  職員に対する周知の工夫。いちばん下ですが、「職員に標語を周知させる工夫は何ら かの形で必要である」。24頁に例示してあります。これでいいのかと言われると辛いの ですが、ポスター、パンフレット、ニュースレター、研修テキスト、カレンダー、パソ コンのスクリーンセーバー。こういうものを参考にしていただければということです。 いちばん大事なのはパンフレットなどだろうと思いますが、私は個人的には、研修テキ ストとして使うのがいいのではないかなと思っております。また、標語が陳腐化してい くようなこともありますので、職員が新しく入って来る、継続的な研修を行う、その節 目節目に応じて、この標語の持っている意味と具体的な展開というのを確認していく、 教育ツールとして用いるとなかなか良いと思います。研修で是非使っていただきたいと 書いているのが、ここの趣旨でございます。  私どもの検討会からの報告は以上です。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。医療安全に向けた標語と言いますか、10の要点を、 大変明確で語呂、語感の良い、立派な標語を作っていただきありがとうございました。 さらには、その活用方法と言いますか、取組みへの方針までも立てていただき、ありが とうございました。委員の皆様のほうから、いまのご説明に対して何かコメント、ある いはご意見がございますでしょうか。 ○堺委員  この10の標語をお作りいただく過程で、いろいろお知らせもいただきまして、私個人 的には、大変広くいろいろなことを網羅しておられるし、よく考えられた標語だと思っ ております。私自身には、もうこれ以上直す提案はできないのですが、自分にできない ことをあえて申し上げればと思い、2つ、要望を出したいと思います。1つは表現につ いて、もう1つが内容についてでございます。  まず表現についてですが、医療現場は20代の方々が大半を占めております。先ほど橋 本先生から、この標語は、各病院で自分たちの標語を作る、そのもとになるものだとい うご説明がありましたが、とは言え、やはり広く全国に流布されると、この標語をその まま使う現場も多かろうと思います。そういうときに、その現場の大半を占める20代の 人たちがどう感じるだろうかということです。病院の管理運営をやっていると、世代の 違いというのは、とても大事だといつも感じております。現場の人たちに、自分たちの 言葉だと感じていただくような工夫が必要かどうか、そのようなご検討はいかがでしょ うかということが1つでございます。  次は内容についてですが、私も医療関係者ですが、医療関係者の目から見ると、大変 妥当でよくできていると思います。それだけに逆に、杞憂かもしれませんが、医療関係 者ではない、我が国の社会のいろいろな方がこれをご覧になって、どう感じられるだろ うかと少し心配になりました。私ども医療関係者は、これからこうして我が国の医療安 全を高めようと思っているわけですが、社会全般からこの標語をご覧になって「あっ、 なるほど。日本の医療はこれからこういうふうによくなるのか」というような安心感を 持っていただくのに、何かまだ足りないところはないか、変えなければいけないところ はないか。この辺も橋本先生とメンバーの方々、非常によくご検討になられたと思いま すが、社会全般から見てどうかという検討が、必要かどうか。この2点を申し上げたい と思いました。 ○橋本委員  確かに20代がかなり占めていると、日常的な用語すら我々と違うことがあります。も う少し違う意味でも、医療人特有の言葉遣いにならないように気をつけたつもりですが 、我々の努力としては、こんなものかなという感じがしました。もう少し片仮名を使う と、20代の方にわかりやすいかなというところもあるのですが、それではそのほかの年 代の方たちや、社会に対してちょっとどうかなという、そういうトレードオフの問題と も絡んできますので、こういう形になりました。  内容について、社会全般という言い方も我々は考えましたが、やはり、患者から見て どうなのかなということには、かなり意を注ぎました。意を注いだというか、そちらの ほうが中心だったような気がします。決してお仕着せの、医療側の独善にならないよう にということが、まず第一の考え方でございました。いま一応、10個、表に出てきてい るわけですが、その後ろには300ぐらいの案がありました。その中から選んだ、その中 にはやはりちょっと問題のあるものがあるのではないかという、そういう絞り込みをや っております。  堺先生のご指摘、我々も意を注いだつもりですが、それがうまく生きているかどうか は、皆さんのご判断を仰ぎたいと思います。 ○星委員  2番目の問題について言えば、どんなものを作っても、現場はこの程度かと思われて しまう。その域からは出ないような気がしますが、それを怖がっていて、最終的に、や はり医療は独善的だと言われるよりは、どういう表現を使うにしろ、素顔を見てもらっ て、そういう現場での努力を評価してもらえるような方向に持っていくべきなのかなと 思います。  もう1つ申し上げておきます。まずは、大変にご苦労されたなという気がします。最 初に見た案と比べると、語呂の良さは格段に向上していると感じました。  ちょっと気になるところが1点あります。環境という言葉が3つ出てきます。これは それなりに使い分けをされて意味を持っているのですが、特に職場環境という言葉は、 これは厚生労働省になったからでしょうか、労働省の用語だったような記憶があり、我 々の現場からすると少し違和感があります。それにしても、私自身は非常に良いものに なったと思っています。特に「これはお仕着せのものではない。これはそのまま貼って すむというものではないんだ」というところのご説明、かなり強調されていました。こ れを普及させていただくときには、そのことをメインに、やはり「自分たちの周辺の危 険をまず認知する」というところからスタートし、それに見合ったそのキーワードを抽 出して、その対応策を言葉にまとめていくという作業を、できればすべての医療機関に 、それぞれにやってほしいというメッセージを、もう少し明確に、冒頭に書き込んでい ただく。これはあくまで参考なんだということを言っていただく。  1つ付け足すとすれば、どこに危険が潜むのか、ということをきちんと見極めましょ う、そのプロセスを大事にしましょうというところが、後ろの解説の所でも若干弱いよ うな気がしますので、そのあたりをきちっとしていただくと、良いものになるのではな いかなと私は感じました。 ○橋本委員  標語として世の中に出て行く部分と、それぞれの取組みとか狙いとかいう部分がある と思います。いま星委員が言われたことを受け止めて、具体的な取組みについての所を もう少し丁寧に書く。メッセージとしてはきちっと、自分たちのものを作るべきである ということを強調したいと思います。 ○矢崎部会長  いま堺委員と星委員からいただいたことを、この標語の中に組み入れることが可能か どうかわかりませんが、そういう視点から、例えば解説とか取組みの方針とかでいまの ご意見が強調されるように、手を加えていただければ大変ありがたいと思います。 ○三宅委員  私もこれに参加しましたが、やはり、あまり具体的になっても困るし、そしてやはり 、全体的なメッセージを伝える。そういった意味で橋本先生や、三菱総研の田上検討会 委員もご苦労なさったと思うのです。私は、非常に良いものにまとめられたと思います 。確かに星先生がおっしゃるように、現場ではもっと具体的なものがほしいということ はあると思うのです。それはやはり橋本先生がおっしゃったように、各施設でもっと具 体的なものを、例えば年度の標語として使うとか、そういった取組みをすることで生か されてくるのではないかと思います。ですから、妥当な線ではないかと私は思っていま す。 ○山内委員  国民がこれを日本中の病院で見たときに、あの病院に行ってもこの病院に行っても、 同じようなものがある、なんか取り組み始めたんだ。これまで、マスコミを通じてごく 限られた情報しか得ていない、なにか怖い所になってしまったのではないか、それに対 しての具体的取組み、何をしているのかが国民に見えてこなかった。そういう中で、本 当はいろいろなことをやっていたのですが、それが目に見える形で市民の側に伝わって いくということになるのではないか。  私、こんな格好をしているから、皆さん奇異に思っていらっしゃるかもしれませんが 、実はいま私自身が患者なのです。それで、例えば9番に「患者と薬を再確認」という のがあります。いま実際に、看護婦やドクターと一緒に薬を確認したり、検査を確認し たりしていますが、やはりこういう、みんなでやりましょう、日本全国でやっているよ というものがあると、患者がこんなことを言っていいのだろうか、というような人たち がしゃべりやすいのではないか。朝昼晩、いろいろなことがあるときに、毎回、山内隆 久という者を、検査が仮に6本あった、6本とも確認するということを、本当にやれる かということがあるわけです。でも、そういうときに、こういうことを日本全国でやろ うではないかというような標語が、どこかに貼ってあると、お互いにやりやすいのでは ないか。  そういう気がしますので、私、この標語委員になったときに、実質的にインターネッ トでしかやり取りできなくて、本当に不十分な参加だったのですが、出発点としては本 当に、こういうことで始めたいなと思います。 ○長谷川委員  質問のようなコメントのようなことですが、2点あります。  まず大変ご努力されて、10の非常に良いポイントをまとめられたと思うのですが、原 点に返ると、医療事故というのは、本人の注意だけではうまくいかない側面があります 。病院の経営者、病院の組織のあり方ということが非常に重要かと思われます。したが って、今後そういう方に対する標語等もお考えなのかなということ。また、いまご指摘 がありましたように、患者自身も、この安全文化システムの中に入ってチェックをする 。役割はすごく大きいと思うのです。医療従事者がこういうことをやっているというこ とを、全国で見れるということが非常に心強いという山内委員のご指摘で、なるほどと 感心はしたのですが、もう一歩踏み込んで、患者の役割に関する標語、あるいはキャン ペーンというのお考えかどうかということが第1点目です。  2点目は、これは標語という形で表現されていますが、その前に、理念という非常に 良い図が9頁に掲げられています。また、日本国全体の病院から集まった800ほどの 標語をキーワードで集約していくと、この10になったということです。そこで、例えば 理念的には9頁の、安全文化に関しては1という集約された標語ですが、それに関連し たテーマがこれだけありましたよというようなことを、ワンパッケージにして病院に提 供する。別に今回選んだこれが悪いというわけではありませんが、ほかにも良いのがあ るなとか、うちの場合はこの全国統一のものより、こういうのが合っているというふう に、選択肢が増えるということで、9頁の概念図とか3頁以降の他の例などを、うまく 資料にまとめて提供されるおつもりはあるのかなということでございます。 ○橋本委員  この標語を、それぞれの団体で取り込んでいただくときの工夫があるというふうに、 期待しておりますが、我々が頭の中に持っているイメージとしては、この10の要点につ いて、説明の後に、収集したものを、付録の形で付けて、お示ししようと思っています 。きっともっといい表現で、この中に入っていない標語を、それぞれの病院でお持ちで すので、そういう新しい標語を集めるようなことが、今後またあってもいいのかなと思 います。プランとして考えるならば、そういう標語のコンテストみたいなものもいいの かなと思います。いずれにしても我々としてはそういうものをパッケージとして用意す るつもりでいます。  患者の役割云々というお話、我々もそのことは十分に承知しておりました。表現がな かなか難しいということで、結局このような形になりましたが、解説の所で少し強調し たいと思います。言葉としては患者の役割というよりも、患者と医療者のパートナーシ ップというような表現にしていきたいと思っております。以上です。 ○三宅委員  いまの関連ですが、私は個人的には、この集めた資料を配布することは必要ないよう に思うのです。やはりここからそれぞれの施設が、どこに問題があるのかを考えて、新 たにその施設で別の表現の標語を作るなら作る。そのプロセスが大事だと思うのです。 そうでないと、いわゆるお仕着せのものからなにか拾い上げて、それで使えばいい。私 は、そういったものではないと思うのです。ですからあえて私は、集めた資料は配らな いほうがかえっていいのではないかと思います。 ○松月委員  私もこの標語の委員会に参加させていただいて、その中で先ほどご指摘があった、組 織の管理者のリーダーシップというところに働きかける標語ということは、私は意見と して強く言いまして、その結果反映されたのが、1番の安全文化という所なのです。お 読みいただければおわかりになると思うのですが、この具体的な取組みに向けての1行 目の所に、それを文章として入れていただいています。これにはそういうプロセスがあ ったということを付け加えさせて頂きます。 ○矢崎部会長  私もこれを読ませていただいたときに、まずそれを感じましたので、どうもありがと うございました。 ○山浦委員  この案の最初の1行目に安全文化が出てきますね。「安全文化」というのは、医療人 にはピンときますが、もしこれが国民、あるいは患者に投げかける言葉であったときに は、必ずしもピンとこないのではと思います。例えば、この資料の1−1、1頁を見る と、「医療を提供するための」とあり、前文の1行目に「医療従事者のための」とあり ますので、これはたぶん、我々にピンとくればいいのではないかと、私自身納得したの ですが、これまでディスカッションがありましたように、私どものやっていることに、 国民や患者が共感するような言葉であればもっといいわけです。そういった意味で私は 、はじめに拝見したときに比べて、今日のほうがかなり洗練されていて、私の思うとこ ろにも沿ってきていると考えています。  1つ感じますことは、やはり「患者の参加」を、もう少し目立つような形で表現した い。廊下に貼ってある標語を見て、患者が同じ作業に入っていくというような、患者の 参加をもう少し訴えていいのではないかという印象を持ちました。以上です。 ○武藤専門委員  私も全くそれはそのとおりだと思いました。なんとなく病院とか組織とか、そういう もののための安全ということで、患者中心性というか、その視点がここからはちょっと 読み取れない。だからもう少し、例えば、「根づかせよう 患者中心の安全文化」とか 、患者中心性とか患者参加型とか、そんなものをもう少し入れ込んだらいいのではない かと思いました。  もう1つは情報公開。例えば、情報を共有することによってリスクを抑止できるとか 、そのような視点というのはいかがなものでしょうか。 ○楠本委員  私も逐次この経過を見ておりました。最初は本当に、小学校の黒板に書いてあったよ うな、手はきれいに洗いましょうみたいな標語という感じで、誰に見せるためのものな んだろうと、いつも意見を出し続けてきたのです。出来上がったものを見ると、やはり 、国民の皆様がこれを見て、医療の世界というのはこうなんだなと、改めて驚かれるの ではないかなと思うのです。  まだこのレベルでできていない、私たちはこれからこういうことをやりますよという ものを出していく段階で、患者中心だ、情報開示だというようなことを、私たちはまだ 言えないのではないか。まずこの10の要点をきちんと職場に根づかせていく。いつも私 たちが心掛けてやっていくことだという、その姿勢からでよろしいのではないかと私は 思いました。 ○星委員  冒頭に、こんなものかと思われる危険性があるだろうということを申し上げましたが 、まさにそうだと思うのです。いまおっしゃったように、そこまでとにかく上がってい くという努力をすることが先で、あまり格好のいいことで、できもしないことを並べて みてもいけないのだろう、本当に実のあるものにするためには、やはり、その辺の割り 切りが必要だろうと思うのが1点。  キャンペーンに使うということがありましたが、もしそのキャンペーンを組むのであ れば、この標語は標語として医療従事者向け、あるいは医療機関の中に掲げてください 、これをみんなで考えてください。そのときに患者向けのメッセージ、患者に対するメ ッセージはもっと別な次元で、そのキャンペーンの標語というか、1つのメッセージの 中に、患者向けのメッセージ、あるいはその病院の経営者、あるいはそういう人たちに 対するメッセージみたいなものを盛り込む。そういう方法でないと、誰に向けて、どう いうふうに使うのかがはっきりしないで、そのうち、どこに貼るんだ、駅の構内にでも 貼るか、みたいな話になってしまっても拡散してしまうと思うので、私はそういう解決 法を提案したいと思います。 ○山浦委員  情報開示の話題が出ましたけれども、この標語をもとにして、さらに現場の標語を作 るということであれば、私は患者の参加、あるいは情報開示が必要だということを、医 療人へのメッセージとして、やはり入れる意義はあると思うのです。ですから10の内に 入れるか、先ほどカレンダーに盛り込むというような意見がございましたが、そうする とまだ2つ余裕がございますので、患者の参加と情報開示などを考えていただいたらい かがかと思います。 ○山内委員  自分でいま体験していて思うのですけれども、俗にインフォームドコンセントと言い ますが、これはいわゆる治療計画、あるいは治療目標と、そういうものを何かいまみん なイメージしているのだと思うのです。日々の医療行為ですね。今日は点滴があります 、輸血があります、これを事前にきちんと、誰がいつどこで何をという5W1Hの、こ れを事前に説明をきちんとするというか、何かそういうインフォームドコンセント、何 かそういう概念が日本に広がると、きっと上手くいくのだというように私は思って、い まいろいろなところで提案しているのです。これが1つ。  それと、もう1つは先ほどから言っているように、これは管理者がすべきことではな いか。例えば安全な機器を使うということでいえば、現場の人たちは、けっこう昔から こういうのを使いたいとか、ああしたいというように思ったけれども、自分たちには権 限がないということで改善できずにいる。その中で事故にまみれていくというか、結果 的に自分が加害者になるという、それでつらい目に遭っているというのが、現場の医療 者たちだったと思うのです。  だから、組織の失敗を日々探すのは経営者の仕事です。何か、そういう標語でもほし かったところなのですけれども、今回はそういうのはとにかく、まずおいておくという ことなので、私もそれは提案しなかったということもあります。ただ、何か医療事故が 組織事故だというイメージが、まだ十分日本に広がってないというように私は思います 。いまからでも何かそういう文章というか、個人の失敗ではなくて、組織の失敗なのだ という、そういうところをどこかに入れていただくとありがたいと、そういうふうに思 います。 ○三宅委員  これは橋本先生からお話になったほうがいいかもしれませんが、初めは12項になった のですよね。それを何とか削って10項ということになったのですけれども、これは例え ばリーダーシップのこととか、それからいま山内先生がおっしゃったようなシステムの 問題とか、そういうのはやっぱりこの1番の中に含めたのだと思うのです。  ですから、確かにリーダーシップが必要だということは、どこかでもっと強調したほ うがいいとは思うのですが、この1行の中にいくつかのメッセージが入っているという ように読んでいただいたほうが、私はいいのではないかというふうに思っているのです 。 ○橋本委員  議論の過程でいちばん最初にあったのは、要するに第1項目の安全文化ということに ついてなのですね。それを入れようかどうしようか、もう少しこれを具体的な形で展開 していこうか。例えば情報公開という言葉は、そのときは出なかったと思いますけれど 、もう少しリーダーシップとか、そういうことに具体的なものを展開していこうかとい う議論はあったのですが、それよりもむしろ安全文化という大きな傘を、まず大きく作 って、その下に具体的なもの・個別的なものを挙げていくという、そういう方法を取っ たのです。  ですから、いま三宅先生がおっしゃってくださったように、安全文化の中を、少し説 明の中で、狙いの中で、あるいは解説の中で展開していって、いまのような具体的なこ とも、医療機関の特性によっては取り組んでほしいということにさせていただければと 思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。この標語に関して1時間以上、いまディスカッショ ンしていただきましたけれども、この10というのは私もキリがいいと思います。、これ は1つのモデルであって、各施設でいろいろ工夫していただくということ、それからい まいろいろリーダーシップの話もありましたし、情報開示の問題もありました。山内委 員がおっしゃられたように、カルテ開示とかそういう意味より、むしろ個々の医療行為 がどれほど患者に説明され、納得されているかということが、患者側から見た満足度の 大きなポイントではないかと思います。そういう意味から4番目に、そういうポイント が込められているのではないかというふうに思います。あと星委員から言われた「環境 という言葉は、少し固いのではないか」というお話でしたが、その辺も橋本先生のほう で少し、また考えていただけるかと思います。  本日の標語案は、医療安全対策の在り方全体を整理した上で作成された案で、大変優 れた案ではないかと、検討委員会の方々に深く感謝申し上げたいと思います。  この標語は、この部会そのものの今後の議論にも深い関係があるのではないかと思い ます。また、活用については本日の議題となっております資料3の「医療安全推進週間 」の内容とも、大変密接に関係してくるところであります。したがいまして、本日の議 論をもとに必要な訂正を行い、来たる9月11日の医療安全対策検討会議の総会でもご意 見を賜りまして、その結果を踏まえて、部会として最終的に決定したい。もし委員の方 々で、また「さらにこの点を、ぜひ」ということであれば、ファックスで事務局のほう にご連絡いただきまして、橋本先生のほうにフィードバックして考えていただくという ことにしたいと思います。  そこで、11日の総会において、先ほど申しましたようにご意見を賜って、それを踏ま えて部会の名のもとで公表したいと存じます。時間もございませんので、その扱いにつ いては部会長であります私にご一任いただくということでよろしいでしょうか。 (異議なし) ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。それでは、そのようにさせていただきたいと存じま す。  それでは事務局において、今後そのように橋本委員ともよく連絡をつけながら進めて いっていただきたいと思います。 ○新木室長  それでは、いま部会長からご指示がございましたように、準備を進めさせていただき たいと思います。なお、本日の傍聴に来られている方にお願いでございますが、いま部 会長からご説明がございましたように、本日の案は11日の総会でのご意見を踏まえて正 式に決定されるという見込みです。したがって、報道の際には広く誤解を招かないよう に、取り扱いには十分注意をしていただければと思いますので、お願い申し上げます。 ○矢崎部会長  それでは、くれぐれもその点をご留意のほど、よろしくお願いします。  それでは、少し時間が過ぎてまいりましたけれども、議事の2「インシデントレポー ト収集等に関する検討会の検討状況について」ということであります。資料のほうに戻 りますけれども、本部会の検討事項の1つである、医療安全に資する情報の収集・分析 ・評価等につきまして、部会のもとに設置されましたインシデントレポート収集等に関 する検討会において、具体的な検討を行っておられます。そこで、検討会の座長を務め ておられます武藤専門委員から、簡単にご説明をよろしくお願いします。 ○武藤専門委員  では、お手元の資料の2です。インシデントレポート収集等に関する検討会の検討状 況です。本検討会は、このヒューマン部会の下部のワーキンググループとして発足して おります。8月8日に第1回の検討会を持ちました。このインシデントレポート収集等 に関する検討会、略して検討会のメンバーは2ページの表のとおりです。国立病院から 4箇所、特定機能病院から7箇所のご参加を得ております。このメンバーを選んだ理由 は、国立病院、それから特定機能病院も、双方ともいまインシデント、あるいはアクシ デントレポートの報告システムが、割と完備してきたのではないか、整備しつつあるの ではないかということで、私が座長を務めております。  1ページに戻りますと目的、検討の事項、この3番目ですけれども、(1)インシデ ント事例を収集するための報告様式について検討しております。これは後でまたご説明 しますけれども、コード表を用いて、いま現在、そのコード表の修正作業をやっている ところです。  それから(2)に、収集したインシデント事例の集計・分析報告についてです。これ は実際、各施設に電子媒体を用いて、入力をしていただいて、それを集計するという、 入力システム、あるいは収集システムになると思います。コード化して集めた情報を分 析するという作業です。  分析した結果の解析もこれもなかなか難しいのです。例えば、たぶんかなりの施設か らいろいろな情報が集まってきます。そうしたものを集めまして、例えばどういう分野 がいちばんいま現在重要なのか、それに対する介入をどうしたらいいのか。あるいは、 その各施設にそれぞれの情報を、また還元して、例えばベンチマークをどうして取った らいいかとか、そのようなことを検討するつもりでおります。それの概要が4ページ、 参考の1というところに出ております。  目的は、いまお話したようなことですけれども、対象の施設としては、将来的にはこ れを国立病院、療養所及び特定機能病院に広げていきたいと考えています。  収集の対象事例としてはインシデント事例を考えております。間違ったことが患者に 実施される前に発見された事例、事前回避した事例とかです。実際に間違ったことが実 施されましたけれども、患者に影響を与えなかった事例、有害事象が起こらなかった事 例、このインシデント事例について情報をコード化して収集するという方法でおります 。  方法としては、そのインシデント事例について先ほど申し上げました入力システム等 を通じまして、各医療機関からインシデント報告が医薬品機構に集まるような、そうい うシステム構成を考えております。  4ページにまた戻りますけれども、期待される成果といたしましては、インシデント の発生傾向とか、あるいは重要性の高い事例の把握、それから各医療機関での改善や国 の対策立案に要する事例の把握、そのようなことを目的としてあります。  それで肝心な、そのインシデントレポート・コーディング表の話なのですけれども、 6ページをご覧下さい。6ページからずっと、15ページまでです。これが現在検討して いますインシデントレポート・コーディング表です。このコーディング表は、もともと 東海大学の堺先生のところでご検討いただいたものと、それから国立病院のリスクマネ ージメントマニュアルの中のコーディング表と、構造的には非常に似ております。  構造は最初の7ページを見ていただきますとわかりますけれども、1から5の大項目 、インシデントの発生時間に関する情報、それから2番目の患者に関する情報、3番目 の発見者に関する情報、4番目の当事者に関する情報、5番目のインシデントに関する 情報、この大項目と、それぞれに中項目がありまして、全体で大体450項目、現在検討 しているのは450項目ぐらいということです。  こういう構造は、1つは分析を目的にして構造を作っております。4M4Eを一応、 想定しております。それと、あとコーディングをちょっと見ていただくと、アルファベ ットの英字表記と、それから下のアラビア数字の表記で、大体そういう構成になってい ますね。ICD−10のコーディング体系と、非常によく似ております。  このようなことで、現在この原案を現在検討会のメンバー11施設にお配りしまして、 これを実際に入力されるリスクマネージャー、あるいは情報管理士とか、現場の方に実 際の事例でコード化に使って頂いて、本当に何か困ったことがないのかとか、あるいは 矛盾点、あるいは戸惑いがないのかということのご意見を集めております。  現在、250ページ分ぐらいのご意見を頂きましたので、いまそれのまとめ作業をやっ ております。いろいろなご意見が出ています。そのご意見をもとに、コード表を修正い たしまして、次に入力システムの検討、そして実際にその入力をしていただいて収集す るという、そういう作業手順になっております。  全体の日程表、予定表は3ページに掲げております。8月3日に第1回の検討会を行 いました。そして現在、コーディング表の試案の見直しを行っています。9月7日、今 週ですけれども、第2回の検討会で集まったご意見をもとにコード表を修正するという 、そういう作業を行いたいと思います。10月初旬、第3回検討会でコーディング表の確 定と、それから報告様式の確定及び、入力システムの検討。それから、さらに重要な、 実際にそれをどうやって利用するか、その分析方法の検討等を予定しております。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。インシデントレポートの情報をきっちり把握するに は、やはりこのコーディングシステムを完備するというのが必要不可欠ですけれども、 武藤委員のもとでの検討会で、このような素案で進められているというお話をいただき ました。何かこの件につきまして、ご意見はございますでしょうか。 ○星委員  質問がございまして、実は過去の資料で医療安全対策ネットワークの整備事業という ことの資料が、いまのものと若干違っておりまして、情報収集・集計センターが医薬品 機構となっていたところが、いまはMEDIS−DCと入っておりまして、形はよく似 ていていますが、いずれにしてもこれはどのような考え方の変化があったのか、事務局 からご説明をいただけると大変ありがたいのですが。 ○新木室長  それでは事務局からご説明申し上げます。武藤先生がご説明になりました5ページ目 の紙をご覧ください。そこで情報収集センター、医薬品機構と並んでMEDISと入っ ておりますが、ちょっとこれは言葉足らずで、狭い欄に書いておりますので、言葉が尽 きておりません。MEDIS−DCで行いますのはソフトの開発であるだとか、分析方 法をどうやっていくべきかのノウハウの開発であるとか、そういう部分でして、あくま でも収集・集計するのは医薬品機構です。入力システムのソフトの開発などは、医薬品 機構だけではなかなかできないので、その部分をお手伝いするということです。 ○星委員  医薬局のやっている医薬品・医療用具等対策部会でも、やはり物に起因するもののデ ータを集めたいということで、それは広く一般からというような議論もあったように聞 いております。これを見る限り、そういう区別をしないで、ここにとにかくインシデン トとして集めてもらおう。そして、その中から分析評価をしていこうということのよう ですが、その辺を教えてください。 ○新木室長  星委員ご指摘のとおり、物の部分も合わせまして、インシデントレポートシステムと して医薬品機構で集める、ということでやっております。 ○土屋委員  確認でございます。このコーディングはよろしいのですが、特に私も医薬品・医療用 具等対策部会の委員も兼ねておりますので。具体的な物の名前などが明らかになりませ んと、おそらく個々の製品改良要請とか、そういったことができないと思いますが、全 体像についての説明がなかったものですから、そこら辺はどのようになっているのでし ょうか。 ○新木室長  ここは、あくまでもヒューマンファクターのほうを、このコーディング表に載せてお りまして、その他に必要な部分があろうかと思います。それは別途検討中でして、その 部分も案ができてまいりましたら、当然その案を作りまして、同じシステムで載せなけ ればならないと思います。具体的なところは、医薬局の方からご説明します。 ○安全使用推進室長  医薬局の安全対策課の伏見です。これは基本的に、この同じスキームを使わせていた だきまして、例えば医薬品の販売名が似通っているものがあったというときには、そこ から、では具体的にどういう販売名であったのかというのを書いていただくようなソフ トを考えております。 ○星委員  こちらのコーディングは、ここの部会の下にあるところで検討されているように、こ れは医薬品・医療用具等対策部会の中にそういったものを作ってやる、というようなお つもりなのですか。 ○安全使用推進室長  基本的に全体のシステムといいますか、スキームというのは、こちらで考えておられ るのがございまして、その中で医薬品でありますとか、医療用具に関わる部分が一部あ ろうかと思います。それで基本的に、こちらのスキームを使わせていただいて、その中 で医薬品なり医療用具に特化した部分を少し詳しく書いていただくようなことを考えて おりますので、基本的にはこちらの検討会で、本来の検討事項ではないけれども、少し 合わせてご議論いただいているという、そういう状況です。 ○矢崎部会長  ヒューマンエラーの部会と、そういう医薬品・医療用具等の安全対策と、密に連絡を 取ってやっていただければ大変ありがたいと思います。 ○川村委員  分析された結果の情報提供ですが、例えばこのコード化された要因が何パーセントだ ったとか、今年は何の領域で、原因はこれが何パーセント、そういった形で医療現場に フィードバックされるのでしょうか。 ○武藤専門委員  実際に入力してくださる現場も、やはり利用して利用価値の高い、そういうフィード バックをしてあげないと、誰も入力してくれなくなってしまうと思います。  ただし、やはり領域別にどのくらいの時間サイクルでお返しするかは、ちょっと問題 ですけれども。フィードバックして、そして施設のほうは自分のポジションがわかると いうようなことを考えています。 ○川村委員  私はたくさん事例を定性分析した経験から言いますと、現場に役に立つデータという のは、先ほどの標語にもありましたけれど、「共有しよう 体験」のような、「こうい うことは自分たちにもあり得る」とか、具体的に感じる何かがなければ、なかなか役に 立ちづらいと思うのです。  こういうふうにコード化されますと、抽象的な言葉になって、概念としては「なるほ ど、そうだ」と思うのですが、ではマニュアルにどう生かせばよいか、といった話にな ると思うのですけれど、具体的なデータというのは収集しないのでしょうか。 ○武藤専門委員  かなり抽象化されております。しかし、多数量を集めることによって、また見えてく るものも、やはりあるのではないでしょうか。まだ実際に集めてみないと、見てないも のですからわかりませんけれども、そちらのほうに期待しております。 ○川村委員  私は個々の施設で、このコードを用いて整理するのはよいと思うのです。それは生の 事例をお持ちだからです。ですけれど、これが全国的に集まって、病院の規模も違って 、国立病院と大学病院の中にも、かなりバリエーションがあります。その中で自分たち の問題としてフィードバックされて役に立つ情報に、どうかしていただきたいと思いま す。  それからもう1つ、自分たちがマニュアルを作ろうとしたときに、どういうことがど ういう状況で発生しているかを知りたいと思います。それで、自分たちの事例だけでは 情報が少ないですから、そのコンサルティング的なことを要求された時、具体的に答え にくいと思うのです。 ○武藤専門委員  私もその点は非常に重要だと思いますので、検討会の中で考えたいと思います。 ○山内委員  おそらく、いま日本でインシデントレポートの使い方というのは、揺れていると思う のです。報告にしろ、その利用にしろです。  私は今回のこのお話を、まだ十分理解していないのですけれども、いわゆる航空業界 のインシデントレポートの使い方に、かなり近くなったのではないか。すなわち個々の 病院とか、個々の施設で、「あなたたちはこんな失敗をしていますよ。何とかしなさい 」ということではなくて、まさにそのシステム。「こういうシステムを使うと、こうい う問題がありますよ。だから医療機器をこういうふうに改善しましょう」、「この薬品 を使うとこういうトラブルがあるので、その部分を改善しましょう」と、まさに飛行機 が事故を減らしていったプロセスに、かなり近いものになりつつあるのではないか。  その問題と、おそらく川村先生が言われた、個々の病院で自分たち自身がどうするか という問題の、2つあると思うのです。インシデントレポートにしろ、あるいは事故報 告書にしろ。でも、今回は、かなり本格的なインシデントレポートの本来の在り方とい うか、それに近いもののスタイルが出掛かっているのか。何か、そんなような気がしま す。  これまでインシデントレポートを、医療の場合は上司に上げて、そして「さあ、明日 からどうしようか」。そうではなくて、やっぱりこの器具を日本中でいろいろ使ってみ て、どうも不具合があるのではないか、この薬品は不具合があるのではないか、何とか しようじゃないか、個々人が少々の注意をしても駄目なんだ、何かそういうものを見付 ける1つの動きができているのか。そういうのと川村先生が言われた、個別の病院で自 分たち自身がすぐに今日使えるというか、そういうものとちょっと分けて、かつ両方上 手く併存できたらいいなと、そんなふうに思っています。 ○長谷川委員  いまのに関連して2点コメントしたいと思います。両方とも外国の事例で大変恐縮な のですけれども、日本ではこういうのがないから、どうしても外国の例から学ぶところ なのでしょうけれど、たしかにヒヤリハットを集めてみても、最初はいいかなと思うの ですけれども、それから次にどうしたらいいかということを、こういう項目をすべて抽 象化して、定量的にしても、あまり意味がないかなということになります。  事実、アメリカのDCOとか、たしかNASAもそうだと思うのですけれども、出た データをそこで止めておいて、またフィードバックをして、さらに詳しいことを聞いて 、NASAの場合はフォーマットを変えて聞いているようですし、DCOの場合にはル ートコーダを現場でしていただいて、それを付けてもう一遍報告していただく。つまり 、こういう定量的なフォーマット化されたデータを、定量的に統計を取るというのでは なくて、実際の定性的な分析のデータも集めていただくということでやっているような ので、そういう工夫がないと、これだけではあまり意味がないのかなという感じがいた しました。そのためには、いわゆる情報の保護とか、プライバシーとか、その辺の問題 、かなり突っ込んだバックアップをしないとできないのか、というように思っておりま す。  第2番目に、もし定量的なもので意味があるとすれば恐縮ですが、3週間前にオース トラリアに行って見てまいったのですけれども、オーストラリアの場合は、ニューサウ スウェルズ州では、ほとんどすべての病院、400病院全部から、データが上がってきて います。医療の質に関するデータが上がってくるのですが、その中で約20項目ぐらい安 全性に関するデータがありまして、それは全部定量的に分析をしてベンチマークとする 。例えば救急室に入ってから、患者が医者に診てもらうまでの時間が何分かとか、理由 がない24時間以内の手術場へのリターンとか、院内感染の率とかというようにして、安 全性に関する項目を20ぐらい集めて、報告をしています。そして、それをここへ集めて きて、各病院に「あなた方は何番目ぐらい」というフィードバックする。  インシデントレポートの場合には、そういう意味での基準値というか分母がはっきり しませんので、データをもらってももう1つよくわからないというような感じがいたし ます。現場にとって、かつ最初はこういうことをやることは意味があるのですけれど、 長期的にこれをどう使うかというのはかなり工夫する必要があると思います。 ○武藤専門委員  1つは、この集まったデータから何が生まれてくるかというです。まだ実際に集めて ないですからわかりませんけれども、やはり、いくつかの問題領域が浮かび上がってく るのではないかと思うのです。それに対する優先順位の決定に使うとかです。あと、も う1つは長谷川さんが言われたような、何かここから重要なインディケーターを見付け るときも、その作業の基礎資料にできるのではないかとか、いろいろなそうしたことを 検討会の中で時間を掛けてやっていきたいと思います。 ○星委員  私どもで、いま考えていることについて、少しご紹介をさせていただきたいと思いま す。いまご発言がございましたとおり、私はインシデントとして川村先生が一生懸命お 集めになったあれ以上のものが、今回出てくるというような期待はあまりしていないの ですが、いまやられていることが方法論として、今後のいろいろな活動に役立つという ことで、私は価値があると思うのです。一方で、現場でどんな努力をしているのかとか 、そういったものが上手くいっているのか、いかないのかというようなものも含めて、 もっと定性的なもの、深く突っ込んだもの、あるいは場合によってはアクシデントに至 ったものをきちんと分析するということが、我々にとって必要なことです。  いま長谷川委員からあったように、そのためには情報の保護、あるいは個人のいろい ろな責任の保護というのも必要になるのでしょうけれども、私どもとしては、いま日本 医師会で1年掛けてリスクマネージャー、医療安全推進者というのを作っておりますけ れども、この修了者を中心として、いわば同じ言葉が話せるリスクマネージャーに評価 をしていただいて、その結果をいただこう。つまり個々の事例は上げなくて結構です。 自分たちの病院の中で起こっていること、その結果、それに対して自分たちがどういう 対応をとったのか、そしてどんな問題点が残っているのか、こういったものを出してい ただけるような仕組み、そういう場を日本医師会を中心にいろいろな方々にご協力をい ただきまして作っていこう。  ただ、やっぱり最後に問題になるのは、「では、その出てきたデータの保護をどうす るのだ」ということです。そこはいままさに検討事項なのですけれども、これは国の組 織でやってしまえば、出てきてしまったものはもう公のデータですから、もう逃げも隠 れもできないのでしょう。ですから、お互いの情報交換というレベルで言えば、隠すと いう意味ではなくて、お互いの責任をきちんと明確にすることは必要ですけれども、今 はそういったものの保護がない以上、やはり民間の、私どものようなところが音頭をと って、情報を集めたり、情報を交換したりというような場を設定する。国でやられるそ ういう技術開発的なもの、あるいはベンチマークになるようなものの抽出というような ものは、ぜひやっていただく。私はその両輪だと思っています。ですから、それはいき なり全部に広げるのではなくて、まずは国立病院で、あるいは特定機能病院という限ら れたものの中で、技術論的に、あるいはその方法論として確立していただく、私はまだ そういうプロセスだろうと思います。  先ほどから武藤専門委員は非常に正直で、集めてみなければわからない、とおっしゃ いました。まさにそうだと思うのです。ですから、そういうことをきちんとしていただ く一方で、現場は現場の努力をしていくということを双方、いま両輪でやっていく。い つかはお互いにいろいろなことが見えてきたところで、そのゴール地点に巡り会えるの かなと思っております。ですから、そのことを一応紹介させていただくことと、その現 場での努力がもう始まっているということは、お伝えを申し上げたいと思います。 ○土屋委員  私、多少危惧感を持ちますのは、特に医薬品についてです。このコーディングをやっ たとき、これはおそらく病棟とか、そういうところでの予約違いとか、そういうことに ついては、ある程度カバーはしているのだと思いますけれども、通常いちばん扱われて いる医薬品の薬剤部内の話というのは、ほとんど抜けているのだろう。おそらく、この 対象施設が特定機能病院、国立病院、療養所ということになりますと、いわゆる調剤薬 局とか、そういうレベルで、いちばん薬を扱っていて間違えたとか、そういう例が集ま りやすい部分については、これが対象外になっています。  これはもちろんいま薬剤師会であるとか、病院薬剤師会が独自で情報収集をしている わけで、それとすり合わせていけばいいのかなという気はいたしますけれど、そこら辺 が少しデータが上がってこないのかなということが、少し危惧感としてございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。貴重なご意見をいただきまして、いままでのご意見 を踏まえて、武藤検討委員会に今後も検討を進めていただけますように、お願いしたい と思います。  最初の医療安全の標語のところにございましたように、1つはデータベースといいま すか、我が国の実態を知るということと、個々の問題についての具体的な検討はその上 で行っていただくということで、今後も進めさせていただきたいと思いますので、武藤 先生よろしくお願いいたします。  それでは、次の議題の3番目です。医療安全推進週間について、事務局からご説明を お願いします。 ○新木室長  それでは、資料3について簡単にご説明申し上げます。1ページ目をご覧いただきま すと、去る3月26日に厚生労働大臣から、本年を患者安心推進年として、重点的に患者 の安全確保のための各種の施策取り組みを行おうということを提唱いたしましたが、そ の中でこの秋に、医療機関、医療関係者に重点的に取り組んでいただくための週間を設 けようということで、お話を申し上げたところです。これにつきまして、本年度11月の2 5日から1週間、これは医療関係者が取り組みやすいという意味で、各種の学会等が終 わった後と、それからまた年末、あまり押し迫まりますと取り組みにくいというところ もあると思いますので、11月の25日から1週間、設定をしたいと考えております。  この内容ですが、大きく分けまして2つあります。1つは我々厚生労働省自身の事業 です。もう1つが、この趣旨にご賛同いただける各種の団体の方によります事業です。 厚生労働省自身の事業としましては、1つは国民向けに各種のシンポジウムを行いたい と思っております。  また、この部会が設けられております親の総会といいますか、検討会議自身を大阪で シンポジウム形式で行うことを考えております。さらに、医療関係者向けに各種のワー クショップを行っていきたいと思っております。  なお、この内容につきましては、先ほどご議論いただきました10の要点を中心とした 標語の活用等によりまして、ポスター、パンフレットを作成していきたい。また、さら にそれを印刷物、それからインターネットなどで提供すると同時に、各種の媒体を通じ て皆さんに知っていただく努力をしたいと考えております。医療安全推進週間について は以上です。  それから続きまして、予算のほうを簡単にご説明させていただきたいと思います。厚 生労働省から財務省への要求の案ですが、医療安全に関するものとして本年度は17億6,6 00万円。昨年度は4億5,900万円ですから、かなり額としては増えております。  内容としましては、この医療安全対策の検討といたしまして、法制の検討、それから 改善方策、個々の改善をどうやっていくのか、それを検討する場所を設けるというよう なものを新しく入れております。さらに、先ほど申し上げました患者安全推進のための 各種の事業を行っていくと、これも新規で要求しております。その他、教育研修の臨床 、調査研究の充実等になっております。  なお、金額が大きく伸びましたのは、国立病院部で要求しておりますリスクマネージ ャーの人件費の部分が多くございまして、その部分が12億3,600万円ほどになっており ます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。ただいまの説明に、どなたかご意見はございますで しょうか。この事業内容について、もう少しご説明いただけますか。 ○新木室長  資料3のほうを詳しく、もう少し詳細を申し上げますと、1ページ3の(1)をご覧 ください。シンポジウムの開催でございます。これは一般国民を対象に、東京で開催す ることを考えておりまして、医療安全に関する医療機関の取り組みの紹介等を通じまし て、国民に医療安全はどんなことを実際に問題としてて取り組んでいくのか、これをご 紹介するようなシンポジウムを考えております。  それから2番目は、「医療安全対策検討会議の大阪での開催」と書いてございますが 、これはこの部会の親となります検討会議、これまで3回ほど開催してまいりました。 大阪で11月30日に予定しておりますが、そこで医療と、その安全文化。今日、標語でも 出てきた言葉ですけれども、安全文化をどう根付かせていくのか、そういうことについ て他部門、他産業の知見も取り入れたようなシンポジウム形式での開催を考えておりま す。これは大阪でございます。  また詳細等が決まりましたら、ご参加いただくためにいろいろと広報をしたいと、こ れも、一般国民を対象にと考えております。なお、東京でやらないのは、いままで東京 中心で行ってまいりましたが、いろいろな地域で行ったほうが広がりが出るという、こ の検討会議の座長のご意見もございまして、こういう開催にしております。  また、(3)医療安全に関するワークショップの開催ですが、これは医療に従事してい る医療従事者のほうを対象としております。これにつきましては、特定機能病院にご参 加いただくことについて検討しているところでして、これについては、もう少し事務局 のほうで詰めをしたいと思っております。  なお、(4)に書いております各種の広報ですが、ポスターやパンフレットを作ってい きたいと思っております。また、厚生労働省のホームページだけでなく、政府広報のよ うなものも活用して、広報をしていきたいと思っております。  なお、賛同団体事業といたしましては、このような我々の取り組み、また大臣提唱の 患者安全の理念にご賛同いただける、各種の団体の方にお願いをしているところですが 、そういう団体の方から、自分の団体の会員に向けまして、例えば雑誌やニュースのよ うな形で情報提供していただく。また各種の研修会におきまして、今年はこういうもの を、患者医療安全に関するものを取り上げていただく等をお願いしたいと思っていると ころです。以上です。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。そうしますと、(1)と申しますのは、いわゆる市民 公開講座みたいなことをイメージしてよろしいわけです。 ○星委員  3つ発言をさせてください。いま医療安全推進週間の話が出ましたが、先ほど申し上 げたように何か、キャッチフレーズと言うと大袈裟なのかもしれませんけれども、国民 向けにもし開催するというのであれば、やはりメッセージがないと、医療安全推進週間 をやりますよと言ってもピンとこないのかもしれないなと思うので、その辺のご検討を していただけるかどうかということと、それから概算要求の紙がございまして、改善方 策調査検討ワーキンググループをこの部会の下に設置する、と事もなげに書いてありま すけれども、こういうやり方はまさにこれまでの行政手法なわけです。本来ならばこの 部会でどういうワーキンググループが必要なのか、どういう検討が必要なのかという話 があって、そしてでは、来年の概算要求に載せましょう、というのが筋です。  それから最後でありますけれども、実は先月の終わりに、日本医師会では医療安全対 策委員会というのがございまして、そこのレポートがまとまりました。今日できればお 持ちする予定だったのですが、増し刷りがまだ間に合っておりません。詳細に1年半に わたって検討した結果のものですので、事務局を通じまして皆様方にもご参考にしてい ただくために配付をさせていただきたいと思います。以上です。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。いまのことに関して、ご質問はいかがでしょうか。 ○新木室長  星委員ご指摘の3点ですが、1つ国民向けのメッセージですが、これはたしかに漠と するのではなく、何か明確な意思が通じやすい、ここの検討の場での趣旨が伝わるよう な言葉を考えて、やっていきたいと思います。  それから2番目、概算要求の件ですが、これにつきましては申し訳ございませんが、 こういうことで来年度、具体的に検討の場として何か必要なのではないか、ということ で要求させていただいております。この場を借りましてご了解いただければと思います 。  それからレポートは、事務局のほうより配付させていただきますので、よろしくお願 いします。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。この予算を組み立てるときに、やはりこういう項目 を立てないと予算が獲得できませんので、そういうことでご了承いただければ大変あり がたいと思います。  それと、国民に伝えるメッセージ。私は、この標語の10というのは非常にわかりやす くて、国民に「こういうふうに患者とともに取り組んでいくんだ」という、私は大変に いいメッセージになるかと思いますので、ぜひこの標語を活用していただいて、メッセ ージを大々的に伝えていただければと思っていますので、よろしくお願いします。  それでは予定の時間がそろそろまいりましたので、本日の部会はここで終了させてい ただきたいと思います。本当にお忙しい中、幅広い視点からこの問題を討議していただ き、貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。  それでは次回の日程につきまして、事務局のほうからお願いします。 ○新木室長  次回の日程につきましては、委員の皆様方のご都合を調整させていただきながら、部 会長と相談して決めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。 ○矢崎部会長  それでは、本日の部会はこれで終了させていただきます。ありがとうございました。 (照会先) 医政局総務課医療安全推進室企画指導係 電話 03-5253-1111(内線2579)