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医薬品情報提供のあり方に関する懇談会
最終報告(要旨)

〜医薬品総合情報ネットワークの構築に向けて〜

平成13年9月27日


はじめに

 医薬品は、それがどんなに有効性の高い医薬品であっても、適切に使用されるための情報が備わっていなければ、医療に貢献することができない。医薬品は情報と一体となってはじめてその目的を達成できるものである。当懇談会は、主に医療用医薬品の情報提供のあり方について検討を行い、意見をとりまとめることができたので報告する。

1.医薬品情報提供の現状

2.医薬品情報提供をめぐる環境の変化とその課題

(1)国民の意識の変化と情報の社会的効用

(2)国民向けの信頼できる医薬品情報の不足

(3)医療関係者向け情報量の急増や情報源の散在

(4)医薬品情報の標準化

3.提言

(1)基本的考え方

○ 患者が医薬品を適切に服用するためには、医療関係者を通じて、患者1人1人の病状や体質等を踏まえた、必要十分な情報が提供されることが重要。そのためには、製薬企業、医薬品卸売業及び行政は、これらの医療関係者に対して、効能や副作用等の医薬品に関する情報を適切に提供するべき。

○ 患者や国民の医薬品情報に対するニーズは今後ますます大きくなっていくことから、製薬企業や行政等も、内容の分かり易さなど情報の質に十分配慮しつつ、こうしたニーズに適切に応えていくことが望まれる。あわせて患者や国民の教育・啓発に努めていくことが必要。

(2)具体的な方策

(1) 医療関係者向け医薬品情報の"階層化"による効率的・効果的な情報提供

(2) 患者への情報提供の充実

(3) 国民向け医薬品情報の充実

(4) 『医薬品総合情報ネットワーク』の構築

医薬品総合情報ネットワークの図

(5) 国民への教育・啓発

(6) 医薬品情報の標準化の推進

(7) 医療関係者向け医薬品情報の内容の充実

(8) 医療事故の防止

(9) 後発品の情報提供の充実

(10) 広告の規制

(11) 障害のある人への情報提供

4.おわりに

 患者1人1人の病状や体質等を踏まえた「生きた情報」が提供され、国民と医療関係者との対話を通じた適切な医療を実現するため、それぞれの医薬品情報の提供主体が、患者のための医薬品情報の重要性をより一層認識していくことが望まれる。



医薬品情報提供のあり方に関する懇談会
最終報告

〜医薬品総合情報ネットワークの構築に向けて〜

平成13年9月27日


はじめに

 医薬品は、それがどんなに有効性の高い医薬品であっても、適切に使用されるための情報が備わっていなければ、医療に貢献することができない。医薬品は情報と一体となってはじめてその目的を達成できるものである。
 したがって、これまでも、医療関係者に対して様々な医薬品情報が提供されてきており、また、最近のITの急速な進展・普及により、情報を提供しやすく入手しやすい環境整備が進んできたため、近年、医療関係者の受け取る情報量は一層増加してきた。
 また、薬理作用が強い医薬品や使用方法の複雑な医薬品の増加など医薬品の高度化に伴い、医療関係者に対する医薬品情報提供の重要性は日に日に増している。
 一方、情報の最終的な受け手である患者や国民の側では、今日、生活習慣病等の疾病や医療に対する意識の高まり等ともあいまって、医薬品情報に対するニーズが年々高まっている。また、書籍やインターネットのホームページの増加により、情報へのアクセスも容易になってきている。
 そうした中で、今日の医薬品情報提供の課題は、種類や量の充実はもとより、いかに分かり易く信頼できる情報を作成し、それを医療関係者にいかに使い易い形で迅速かつ確実に提供するのか、医療関係者もそうした医薬品情報をいかに評価して患者にきめ細かな情報を提供するのか、また、提供された情報に対する国民の理解を促進するような環境整備をいかに進めていくのか、といったことが課題となってきている。そしてこれらの課題に対して、医療関係者や製薬企業、医薬品卸売業、行政は、それぞれどのように対応していくべきかが問われている。
 当懇談会は、このような問題認識に立ち、「薬価制度改革の基本方針」(平成11年12月17日中央社会保険医療協議会了解)に示された「薬剤の効能・効果、副作用、価格等を比較可能な形で国民に提供できる体制の整備を図る。このため、製薬企業等の協力を得つつ、どのように提供するか平成12年度から検討を進める。」との方針も踏まえて、主に医療用医薬品1の情報提供のあり方について本年2月以降、計7回にわたって検討を行い、意見をとりまとめることができたので、ここに報告する。

1 医薬品には、医療用医薬品(医家向け医薬品)と一般用医薬品(大衆薬)があり、医療用医薬品が医薬品市場全体の9割弱を占めている。


1.医薬品情報提供の現状

 医薬品情報としては、まず厚生労働省や製薬企業等から医療関係者向けに提供される情報があり、次に、医療関係者がそうした情報を評価して患者に提供する情報がある。また、製薬企業等がホームページや電話相談等により国民に直接提供する情報もある。
 このように、医薬品の情報提供の現状を、医薬品情報の流れに沿って、情報の受け手別に整理すると次のようになる。

(1)医療関係者向けに提供される情報

 医師や歯科医師、薬剤師等の医療関係者に対して提供される医薬品情報としては、

(1) 医薬品の使用に当たっての基本情報等

(2) 安全性に関する情報

(3) 副作用が疑われる症例報告に関する情報【厚生労働省作成】

(4) 新薬の承認に関する情報

(5) 医薬品等の回収に関する情報【製薬企業作成】

(6) 医療用医薬品品質情報集5(いわゆる日本版オレンジブック)【厚生労働省作成】

(7) 薬価基準6【厚生労働省作成】

1 薬事法で「用法、用量その他使用及び取扱い上の必要な注意」を記載することが規定された、医薬品には必ず添付されなくてはいけない文書。
2 製薬企業が添付文書を補完するものとして、個々の医療用医薬品に関する正確かつ総合的な情報を医療関係者に伝達し、その製品の適正な使用を図ることを目的として作成する印刷物。日本製薬工業協会では、製品情報概要審査委員会を設けてその内容を審査し、監視している。
3 製薬企業が添付文書を補完するものとして、薬剤師等の医療関係者にとって日常業務に必要な医薬品の適正使用や評価のための情報あるいは医薬品情報提供の裏付けとなる情報等を集約した総合的な医薬品解説書。
4 Drug Safety Update
5 再評価制度等により医療用医薬品の溶出性に係る品質が適当であることを確認しているもの等をとりまとめた資料で、厚生労働省から各都道府県へ送付されているもの。
6 医療保険により行われる療養の給付で使用できる医療用医薬品の範囲を定めるとともに、使用された薬剤の費用の額を算定するための価格表として厚生労働大臣が定めるもの。

等がある。このうち「添付文書」については、薬事法によって医薬品に添付されることが義務づけられた基本的な情報であり、平成9年に新記載要領が整備されている。
 これらの情報は、従来から、製薬企業のMR1、医薬品卸売業のMS2及び行政等によって文書により直接提供されているが、平成11年から医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構により管理が行われている『医薬品情報提供システム3』(http://www.pharmasys.gr.jp/)により、インターネットでの提供を始めた。
 医薬品卸売業には、上記のほか、医療関係者からの要望に基づき、取り扱う医薬品の情報を分類整理するなど、幅広くきめ細かな情報提供を行っているところもある。

1 Medical Representative、医薬情報担当者
2 Medical Marketing Specialist、医薬品卸販売担当者
3 ホームページの最初のページ

(2)患者や国民向けに提供される情報

(1) 医療関係者を通じて提供される情報

 医師又は歯科医師は、上記以外の情報に加えて、必要に応じて、学会報告や学術雑誌、文献等も収集した上で、患者1人1人の病状や体質等を踏まえながら、安全性、有効性、品質、患者負担等を総合的に判断して、患者に医薬品を処方する。あわせて、薬袋に記載される各医薬品の用法・用量や保管法に関する情報のほか、適宜、服用意義や薬効、効果発現時間、食事や嗜好品の影響、副作用などの情報も提供する。薬剤師は、医師等の処方せんに基づき、医薬品の調剤及び服薬指導等を行うが、薬剤師法において調剤に関する医薬品情報の提供が義務づけられており、大衆薬も含めた情報提供及び服薬指導を行う。
 また、医療機関、薬局では、医薬品についての患者とのコミュニケーションを補完するため、「お薬手帳4」や、製薬企業の団体である日本RAD-AR協議会が作成した「くすりのしおり1」、(財)日本薬剤師研修センターが編集した「医師・歯科医師・薬剤師のための医薬品服薬指導情報集」等を活用している。
 なお、こうした患者に対する医薬品情報提供を推進するため、健康保険等の診療報酬において、薬剤情報提供料が設けられている。

医薬品情報提供ホームページの図

4 薬局等が、重複投与や相互作用等のチェックを行うことを目的として作成するもので、患者ごとに、調剤日や医薬品名など処方内容、患者の体質、副作用歴等に関する情報を記載した手帳。

(2) 直接提供される情報等

@)国民への直接の情報提供としては、医薬品の安全性情報等に関する国民からの電話相談窓口となる、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構に「消費者くすり相談室」が設置されているほか、薬剤師会や製薬企業においても、医薬品の電話相談窓口として「くすり相談室」の設置・整備が進んでいる。また、製薬企業は疾病や健康に関する患者用啓発資材を作成し、ホームページでも情報提供を行っている。
 さらに、街の書店では医療用医薬品について分かりやすく解説した書籍も多数販売されており、インターネットの普及に伴い、医療や医薬品関係のホームページが増加している。

A)また、国民が広告の情報に接した際、それがどの程度正確で、どの程度根拠があるかなどを判断することが容易ではないため、国民の保健衛生上の危害を防止する観点から、薬事法により、虚偽又は誇大な広告、承認前の医薬品等についての広告、医療用医薬品の一般消費者への広告が禁止されている。なお、治験2については、治験薬の名称や治験記号等を表示しない範囲において被験者募集についての広告が認められている。

1 製薬企業が、医療関係者の服薬指導を支援するため、添付文書の記載事項のうち、主な事項を患者への説明のために平易な表現で記載した印刷物。日本RAD-AR協議会では、医療関係者向けにインターネットで提供している。(http://www.rad-ar.or.jp/
2 薬事法の承認を得るため、企業等が医療機関に依頼して実施する臨床研究。


2.医薬品情報提供をめぐる環境の変化とその課題

(1)国民の意識の変化と情報の社会的効用

 近年、国民の医薬品情報に対する意識は大きく変化してきている。
 高齢化の進展による生活習慣病の増加など疾病構造の変化やインフォームドコンセントの普及、生活の質(Quality of Life:QOL)の追求等に伴い、自分の健康や医療に強い関心を持つ国民が増えてきた。
 こうした状況の中で、国民の医薬品情報に対するニーズが高まっており、効能・効果、副作用、服用方法等について分かり易い情報の提供が求められている。また、近年の国民医療費の増大や患者負担の増加により、価格への関心も高まってきた。
 こうした情報は、当事者にとってのみ効用をもたらすのではなく、多くの国民が十分な情報を持つことにより、患者のニーズにより合った医薬品の開発や情報提供が促進されたり、後発品の安定的な普及が国民医療費の増加を抑制したりするなど、社会的効用をもたらすことが期待される。

(2)国民向けの信頼できる医薬品情報の不足

 アメリカでは、国立衛生研究所1の国立医学図書館2が、医療関係者や学者等の専門家向けのホームページ(メドライン)に加えて、誰もがアクセスできるホームページ(メドラインプラス)3を作成し、一般国民向けに信頼できる医薬品情報を提供している。具体的には、9,000以上の処方薬やOTC薬4について、「銘柄名」、「分類」、「製品概要」、「この薬を使う前に」、「適正使用」、「使用上の注意」、「副作用」といった情報を国民にも分かり易く掲載しており、薬の名前の頭文字で容易に検索できるシステムとなっている。
 日本では、医薬品についての基本的な情報を求めている国民が増えている中で、医療用医薬品については、これまで国民一般に直接的に提供することが想定されていなかったこともあり、言葉が専門的で、分かり易く信頼できる情報が不足している。

(3)医療関係者向け情報量の急増や情報源の散在

 医薬品の増加や副作用等に対する社会の関心の高まり等により、医療関係者向けの医薬品情報の絶対量は年々増加してきている。しかしながら、ITの普及で情報へのアクセスが容易になってきてはいるものの、実際必要とする当事者にとっては、情報が氾濫して使い勝手が悪い、あるいは、そもそも情報が届いていないなどの指摘がある。特に、添付文書については、大量の情報が記載されていて読みにくいといった指摘や、医療関係者に確実に届けられていないといった指摘がある。
 今後、オーダーメイド医療5やEBM6の進展が期待されており、患者の病状や体質等の差異を反映したきめ細かい情報がさらに増えていくことが予想される中で、医療関係者に必要十分な情報が確実かつ効率的に提供できる体制の速やかな整備が求められる。

1 NIH(The National Institute of Health):健康福祉省(DHHS)所属
2 NLM(The National Library of Medicine)
3 MEDLINEplus:(http://www.medlineplus.gov/
4 over-the-counter medicines 大衆薬
5 遺伝子レベルで個人の体質の違いを把握し、個人の特性にあった診断・治療・予防・薬の投与を行う医療のこと。
6 「根拠に基づく医療」(Evidence-based Medicine):近年の医療技術の高度化・複雑化に対応するために各種の文献を幅広く収集し科学的に分析・評価を行って得られたものを活用して医療を行うこと。

(4)医薬品情報の標準化

 医薬品情報を正確に効率的に提供するためには情報の標準化が必要である。医薬品の中には適応症等の書き方が異なるものがあるため医療関係者に混乱を与えたり、似通った医薬品名や剤形、色などは医療事故にもつながりかねない。
 また、医療機関、製薬企業、医薬品卸売業それぞれにおいては、DI室1を設置するなど、組織の内部においても、それぞれの目的に応じて、情報の収集、整理、評価及び提供が行われているが、特に、コンピューターとネットワーク技術の進展により、膨大な情報をデータベースとして整理・分析し、提供することが多くなってきている。コンピューターは非常に小さな違いでも、それを違ったものとして認識するため、名称等の統一が必要であり、また、情報をデータベースとして整理するためには欠かせない医薬品コードは、現在、医薬品の承認、市販後調査、副作用報告、流通、薬価などの目的別に10種類を超えているため、医薬品コードの統一も課題となっている。

1 医薬品情報室(Drug Information室)


3.提言

(1)基本的考え方

○ 患者が医薬品を適切に服用するためには、医薬品を処方する医師や歯科医師、調剤する薬剤師といった医療関係者を通じて、患者1人1人の病状や体質等を踏まえた、必要十分な情報が提供されることが重要である。そのためには、製薬企業、医薬品卸売業及び行政は、これらの医療関係者に対して、効能や副作用等の医薬品に関する情報を適切に提供するべきである。

○ 医療に対する関心の高まりやインターネットの普及等に伴い、患者や国民の医薬品情報に対するニーズは今後ますます大きくなっていくことから、製薬企業や行政等もこうしたニーズに適切に応えていくことが望まれる。ただし、人の生命に関わる医薬品は正しく理解されることが不可欠であることから、患者や国民に直接、情報を提供する場合には、内容の分かり易さなど情報の質に十分配慮することが必要である。また、あわせて専門性の高い医薬品情報を正しく理解できるよう、患者や国民の教育・啓発に努めていく必要がある。

(2)具体的な方策

(1) 医療関係者向け医薬品情報の"階層化"による効率的・効果的な情報提供

 情報量の急増や情報源の散在に起因する問題を解決するためには、重要度に応じて情報を"階層化"することが必要である。
 まず、基本的な情報に関する文書があり、そして、それを補完するような詳細な情報は、例えば、ITなどで最新の安全性情報を手軽に入手することができるといったように、情報に重み付けを行い階層的に整理し、ユーザーのニーズの多様性に応えられるよう、情報の提供対象者ごとに伝えるべき情報の範囲や情報伝達手段等を整理していくべきである。
 さらに、これらの情報は、必要とする当事者に届かなければ全く意味をなさないため、ITや医薬分業の進展を踏まえ、情報の種類別に、確実に当事者が触れられるような手だてや届け方について、ITの積極的な活用を含めて検討していくべきである。
 このため、情報の階層化という観点から、短い時間で読み易く理解し易い基本的な情報は、迅速かつ確実に提供するとともに、詳細な情報が必要な場合にはインターネットの活用等により入手できるといったように情報の使い易い仕組みを検討するなど、医療関係者、企業、行政の役割の明確化を図りながら、基本的な情報である添付文書をはじめとした医薬品情報全体の提供のあり方について見直していくことが必要である。

(2) 患者への情報提供の充実

 患者に医薬品を正しく理解され診療に協力してもらうためには、患者に対しても医薬品の説明書を渡すことが有効である。今後、医薬品に対する正しい知識の国民への普及啓発等に努めながら、患者への医薬品情報の提供を推進する観点から、患者向けの説明書の具体的な内容や方法について速やかに検討を行い、必要な措置を講じていくべきである。
 「お薬手帳」は、患者に投与されている他の薬が分かるとともに、患者とのコミュニケーションを図るためにも有効な方策の1つであり、このような薬歴管理について、将来的にはITの活用が考えられる。
 また、早期における初期症状の情報の収集・分析による重篤な副作用の早期発見に資するため、患者が理解しやすい自覚症状・副作用等の用語の標準化と医療関係者による情報提供体制の整備を行うことが必要である。

(3) 国民向け医薬品情報の充実

 国民向け医薬品情報の提供にあたっては、自覚症状・副作用等の用語の標準化等については行政も関与しつつ、医療関係者向けの情報を分かり易い形に直した上で情報提供を行うべきである。特に、副作用情報については、現状では添付文書の全ての情報がそのまま患者に伝達されると、患者の服用に影響を与える場合があるため、副作用の情報提供の仕方や言葉の使い方について検討する。

(4) 『医薬品総合情報ネットワーク』の構築

 医療関係者や患者・国民に、医薬品情報を分かり易く信頼できる情報として、使い易い形で迅速かつ確実に提供していくため、現行の『医薬品情報提供システム』を拡充・強化し、ITを活用した下記の3つのコンセプトによる『医薬品総合情報ネットワーク』を構築することが有益である。

(1) 医薬品の安全性、有効性、品質、患者負担等についての総合的な判断に資するよう、添付文書等基本的な情報をはじめ、品質や価格に関する情報も網羅的に掲載するほか、詳細情報等が活用できるよう各関係団体のホームページとリンクする。

総合的な情報提供の図

(2) 常時、最新の情報を提供する。

最新情報の提供の図

(3) 医療関係者向け情報とは別に新たな患者・国民向け情報も掲載する。

国民への情報提供の図

医薬品情報ネットワークの図

 また、将来的には、『医薬品総合情報ネットワーク』による情報提供の実施状況を踏まえながら、医薬品情報提供について、紙媒体中心から電子媒体中心の情報提供に移行していくことについて検討することが必要である。

(5) 国民への教育・啓発

 教育については、学習指導要領1 で、医薬品の正しい使い方について記載され始めるのは高等学校からである。そのほか、小学校から特別活動で教えられているところも多い。なお、生活習慣病や感染症の予防が大切であることや、喫煙、飲酒、薬物乱用などの行為が健康を損なうことなどについては小・中学校の学習指導要領から記載されている。
 医薬品を適切に服用するためには、医薬品の正しい使い方について、より早い段階から教育を受けることが望まれる。また、治験の国民への理解を進めることも必要である。画期的な新薬は、難病の克服、手術や長期入院を不要にするといった点で医療への貢献が高いが、その治験の意義等について、若い時から理解を深めていくべきである。
 また、健康保険の保険者や行政機関等で取り組まれている健康教育等においても、医薬品の意義や正しい使い方等について、啓発活動が実施されることが望まれる。

(6) 医薬品情報の標準化の推進

 統一された医薬品コードがあれば、標準化された医薬品情報の収集・共有が可能となり、医薬品の適切な使用や安全性の確保、医薬品の流通・在庫管理業務の効率化に寄与するほか、患者にとっても電子カルテとの連動により誤投与防止、重複投与防止、また薬歴管理の高精度化につながると考えられる。
 このため、コンピューターによる情報システムの活用を前提とした情報の標準化(名称、コード、分類、用語、形式の統一)及び二次元シンボル2等のコードの表示形式の標準化3を徹底的に推進する必要がある。

1 全国のどこにいても一定の教育水準の教育が受けられるようにするため、学校がカリキュラムを編成する基準として学習指導要領が定められている。
2 情報単位を直線的に並べて情報化している一次元シンボル(いわゆる「バーコード」)に対し、情報単位を縦横に("二次元的に")配置したシンボルを二次元シンボル(又は二次元コード)という。二次元シンボルは最大情報量が約1KBで、英数字なら約2000字、数字なら約3000桁まで表示可能で情報表示密度がバーコードの10倍から100倍あるほか、6mm四方の極小シンボルの作成も可能な情報技術である。二次元シンボル等の活用により、例えば現在のバーコードには入っていない使用期限や製造番号等も記載することが可能となる。
3 医薬品コードの標準化については、厚生労働省の委託を受けて財団法人医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)により、流通、薬価、レセプト処理など、各医療機関で利用頻度が高いと考えられる4つのコード体系の対応テーブルとして位置付けた永久不変・欠番を維持する管理番号(HOT番号)が設定されている。また、最新の情報を常に提供できるよう、全国医薬品卸78社が設立した株式会社メディコードが、MEDIS-DCから委託を受けてHOT番号の保守・メンテナンスを行っている。

(7) 医療関係者向け医薬品情報の内容の充実

 添付文書や製品情報概要等の内容については、小児等に対する有用性や薬物相互作用に関する事項等について市販後に得られた知見に基づき適宜改訂を行うなどその内容の充実を図る必要がある。
 提供される情報の内容については、薬物療法の現状を踏まえ、医療関係者の医薬品情報提供を支援するために、医薬品の相互作用や溶出性・添加物等に関する情報や、患者向け情報提供に資する情報も、より一層提供されることなどが望まれる。
 なお、医薬品の溶出性に関する情報については、日本版オレンジブックがあり、例えば患者の胃酸の状態等にも配慮した処方・調剤が行えるよう、この活用を推進していく必要がある。
 また、情報提供とは、情報が一方的に届けられることだけを意味するのではなく、受け手側の評価がフィードバックされ、情報の質が改善されていくことも必要である。
 今後も、医薬品情報の質を高めていくためには、医薬品情報学、薬剤疫学、薬剤経済学等の研究が望まれる。

(8) 医療事故の防止

 医薬品の表示、剤型・色、容器等については、医療事故防止の観点から、これまでも可能な改善措置をとってきたところであるが、今後とも患者側の立場に十分配慮して、一層の対応を進めていく必要がある。
 また、医薬品の誤使用による事故を防止するため、患者に対して間違った使い方をすればすぐ警告が出るなどの情報システムの活用も検討するべきである。

(9) 後発品の情報提供の充実

 安価で良質な後発医薬品については、その使用が促進されるよう、安全性に関する情報をはじめ価格や日本版オレンジブックによる品質の情報等が、医療関係者等に使い易い形で適切に提供されるべきである。
 後発品企業においても、常に品質の確保に努め、医療機関や薬局に対する安全性情報の提供、非汎用規格や小包装品も含めた安定供給について一層の努力が求められる。

(10) 広告の規制

 広告の規制については、規制緩和の時代とはいえ、医薬品は国民の生命・健康に重大な影響を与えるため、医療用医薬品の適正広告基準は最低限の基準として必要である。今後とも常に、その基準が医薬品情報提供という観点から時代の変化に即した基準として適切かどうか検討していく必要がある。

(11) 障害のある人への情報提供

 障害のある医療関係者や患者に対しても、点字の活用等により、医薬品情報を確実に提供するべきである。

4.おわりに

 医薬品情報はどんなにその量や質が充実し、どんなに効率的なシステムが整備されようと、最終的には人から人に提供されるものであり、患者1人1人の病状や体質等を踏まえた「生きた情報」が提供されなくては意味がない。また、国民も医薬品情報の正しい知識を持ってはじめて、医療関係者との対話を通じた適切な医療が実現される。したがって、医師、歯科医師、薬剤師、MR、MS、行政に携わる者など医薬品情報の提供主体が、患者のための医薬品情報の重要性をより一層認識していくことが望まれる。



医薬品情報提供のあり方に関する懇談会名簿


   板倉 ゆか子 国民生活センター商品テスト部調査役
   井堂 孝純 日本歯科医師会常務理事
(座長)井原 哲夫 慶応義塾大学商学部教授
   岩崎 研太郎 日本医薬品卸業連合会常任理事
   上田 慶二 東京都多摩老人医療センター名誉院長
   開原 成允 (財)医療情報システム開発センター理事長
   亀井 昭宏 早稲田大学商学部教授
   全田 浩 星薬科大学教授
   中井 理史 日本製薬工業協会流通適正化委員会委員長
   西島 英利 日本医師会常任理事
   福島 龍郎 健康保険組合連合会副会長
   堀 美智子 日本薬剤師会常務理事
   堀内 龍也 群馬大学医学部教授・医学部附属病院薬剤部長
   宮城島利一 日本製薬団体連合会安全性委員会委員長
   山口 輝夫 医薬工業協議会薬事・安全委員会委員長


≪照会先≫
医政局経済課 梶野
(内線 2527)
(直通 3595-2421)


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