審議会議事録  厚生労働省ホームページ

第2回 厚生科学審議会生殖補助医療部会
議事次第


○ 日時 平成13年8月15日(水)14:00〜17:00
○ 場所  厚生労働省専用第21会議室
(第5合同庁舎(厚生労働省)17階)

○ 議事

1.法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会における検討状況について

2.生殖補助医療の現状について

3.AID関係の調査について

4.検討事項の全体について

5.検討課題1について

6.その他

○ 資料

1.法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会における検討状況

2.我が国におけるAIDの現状 (PDF: 94KB)

3.精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療に関する制度整備の具体化のための要検討事項(案)

4.提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施及び精子・卵子・胚の提供の条件(検討課題1)

 −「生殖補助医療技術に関する専門委員会」報告書において提示された条件及びその具体化のための要検討事項(案)−

○ 参考資料

○ 御意見募集で寄せられた意見(平成13年7月11日〜8月10日)

○ 机上配付資料

(吉村委員提供)

1.大野虎之進他:AID児の知的並びに身体的発育のfollow-up.周産期医学,10(1):1317-1321,1980

2.Betty Amuzu et al.:Pregnancy Outcome,Health of Children,and Family Adjustment After Donor Insemination.Obstetrics and Gynecology,75(6):899-905,1990

3.久慈直昭他:非配偶者の人工授精により挙児に至った男性不妊患者の意識調査.日本不妊学会雑誌,45(3):219-225,2000
(参考添付「アンケート調査のお願い」)

(平山委員提供)

4.Mini Symposium:Follow-up studies of children born after assisted reproduction:part I

  • S.Golombok:Preface,Human Reproduction Update,7(1):21-22,2001
  • P.Serafini:Outcome and follow-up of children born after IVF-surrogacy,Human Reproduction Update,7(1):23-27,2001
  • V.Soderstrom-Anttila:Pregnancy and child outcome after oocyte donation,Human Reproduction Update,7(1):28-32,2001
  • J.Lansac and D.Royere:Follow-up studies of children born after frozen sperm donation,Human Reproduction Update,7(1):33-37,2001
  • A.Brewaeys:Review:Parent-child relationships and child development in Donor Insemination families,Human Reproduction Update,7(1):38-46,2001

(渡辺委員提供)

5.A.J.Turner and A.Coyle:What does it mean to be a donor offspring?The identity experiences of adults conceived by donor insemination and the implications for counselling and therapy,Human Reproduction,
15(9):2041-2051,2000(渡辺委員による抄録の邦訳添付:AID児であるとは本人にどのような意味を持つのか?AID児として成人に達した人のアイデンティティーとカウンセリング及び治療上の留意点について)

6.Claes Gottlieb et al.:Disclosure of donor insemination to the child:the impact of Swedish legislation on couples' attitudes,Human Reproduction, 15(9):2052-2056,2000

7.A.McWhinnie:Gamete donation and anonymity.Should offspring from donated gametes countinue to be denied knowledge of their origins and antecedents?,Human Reproduction,16(5):807-817,2001

(岸本委員提供)

8.ベンテ コンドラセン著 「デンマーク ターナーセンター」
 ベンテ コンドラセン・ヨハネス ニールセン著「デンマークの63人のターナー女性の追跡調査」

(鈴木委員提供)

9.A.キンブレル著 「ヒューマンボディショップ」(科学同人)p.120-p.129


照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課
03−5253−1111(代)
桑島(内線:7933)
小林(内線:7940)


資料1

法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会における検討状況


平成13年2月16日 第133回法制審議会総会

同年4月24日 生殖補助医療関連親子法制部会第1回会議開催

同年5月22日 第2回会議開催

同年6月26日 第3回会議開催

同年7月24日 第4回会議開催

同年9月25日 第5回会議開催予定

(参考資料)

 諮問第51号
 生殖補助医療関連親子法制部会委員名簿



諮問第五十一号

 第三者が提供する配偶子等による生殖補助医療技術によって出生した子についての民法上の親子関係を規律するための法整備を早急に行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。



法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会委員名簿


部会長
 学習院大学教授   野村 豊弘
委員
 最高裁判所事務総局家庭局長   安倍 嘉人
 東京都立大学教授 ○石井 美智子
 上智大学教授   石川 稔
 早稲田大学教授   岩志 和 一 郎
 法務省大臣官房審議官   小池 信行
 明治学院大学助教授   柘植 あづみ
 一橋大学教授   中田 裕康
 世田谷文化生活情報センター館長   永井 多恵子
 東京大学教授   樋口 範雄
 弁護士(千葉県弁護士会所属) ○福武 公子
 東京家庭裁判所判事   堀越 みき子
 評論家   松尾 龍彦
 国立国際医療センター総長 ○矢崎 義雄
 法務省民事局長   山崎 潮
 慶應義塾大学教授 ○吉村 泰典

 (注)○印は厚生科学審議会生殖補助医療部会委員を示す。



資料3

○ 精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療に関する制度整備の具体化のための要検討事項(案)


※ 本資料は、厚生科学審議会生殖補助医療部会における精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療に関する制度整備の具体化のための検討に資するため、事務局において、第1回生殖補助医療部会(平成13年7月16日開催)の際に提示した同部会における検討課題ごとに想定される要検討事項を暫定的に整理したものである。

検討課題1

○ 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施、精子・卵子・胚の提供の条件

(1) 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受けることができる者の条件 等

○ 「加齢により妊娠できない」ことの具体的な判定基準はどのように設定するか?

○ 「自己の精子・卵子を得ることができる」ことの具体的な判定基準はどのように設定するか?

○ 各々の提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受けなければ妊娠できないことの具体的な判定基準はどのように設定するか?

○ 精子・卵子・胚の提供(提供を受けることができる者)について優先順位を設けるか?

○ 「卵子の提供」を受けなければ妊娠できない夫婦も例外として「余剰胚の提供」を受けることができる「卵子の提供が困難な場合」の具体的な判定基準をどのように設定するか?

○ 「卵子の提供」が困難な場合に、「卵子のシェアリング」と「兄弟姉妹等からの卵子の提供」と「余剰胚の提供」をどのような優先順位で適用するか?

○ 「余剰胚の提供」の例外として「精子・卵子両方の提供によって得られた胚の移植」が認められる「余剰胚の提供が困難な場合」の具体的な判定基準をどのように設定するか?

○ 「余剰胚の提供」が困難な場合に、「兄弟姉妹等からの余剰胚の提供」と「精子・卵子両方の提供によって得られた胚の移植」のどちらを優先するか?

○ 「移植する胚や子宮」がどのような状況にあれば、胚を3個まで移植することを認めるか?

(2) 精子・卵子・胚を提供できる者の条件 等

○ どのような感染症について提供者の検査を行うか?

○ 卵子提供者の感染症の検査を行う場合、卵子凍結が技術的に確立していないため、検査により感染が判明しない期間(ウィンドウ・ピリオド)を考慮した感染症の検査が困難であるが、これについては、提供を受ける者のインフォームド・コンセントを得ればよいこととするか?

○ 感染症のほかに提供者について検査すべき項目はないか?

○ 上記の検査の結果を提供者に知らせるか?

○ 提供における無償原則の例外として提供者に支弁することが認められる「実費相当分」の具体的な範囲はどのように設定するか?

○ 「実費相当分」の金銭等のやりとりの方法はどのようにするか?

○ 他の夫婦が自己の体外受精のために採取した卵子の一部の提供を受けて提供卵子による体外受精を行う(卵子のシェアリング)場合に、卵子の提供を受けた人が当該卵子を提供した人に対して負担する「当該卵子の採卵の周期に要した医療費等の経費」の具体的な内容はどのように設定するか?

○ 卵子のシェアリングの場合に提供する卵子の数(又は割合)はどうするか?

○ 卵子のシェアリングの場合に提供する卵子の選別を認めるか?

○ 兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供における公的管理運営機関の審査基準を具体的にどのように設定するか?

○ 精子・卵子・胚の提供者と提供を受ける者との属性を合わせるか?また、合わせる場合、どこまで合わせるか?

○ 属性以外の提供を受ける者の希望に応えるか?また、応える場合、どこまで応えるか?

○ 提供者が死亡した場合の精子・卵子・胚の使用について取り扱いを決めなくてよいか?

○ 提供された精子・卵子・胚の保存期間についても具体的に期間を決めなくてもよいか?

検討課題2

○ 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施、精子・卵子・胚の提供までの手続や実施医療施設の施設・設備の基準

(1) 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受ける者、精子・卵子・胚の提供者等に対するインフォームド・コンセント、カウンセリングの具体的な内容 等

○ 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受ける夫婦並びに精子・卵子・胚の提供者及びその配偶者に対して具体的にどのような説明を行い、同意をとるか?

○ 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受ける夫婦並びに精子・卵子・胚の提供者及びその配偶者に対して具体的にどのようなカウンセリングを受ける機会を与えるか?

○ 上記のカウンセリングを行うカウンセラーの要件(資格、属性等)をどのように設定するか?

○ 専門団体等による認定等を受けた専門カウンセラーが養成されるまでのカウンセリングの実施体制はどのようにするのか?

○ 同意を得るまでの説明やカウンセリングの手順を具体的にどのように設定するか?

(2) 実施医療施設の施設・設備の基準 等

○ 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を実施することができる医療施設の指定基準を具体的にどのように設定するか?

検討課題3

○ 管理体制

(1) 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療に係る公的管理運営機関の選定・業務の具体的な内容 等

○ 公的管理運営機関としていかなる機関を選定するか?

○ 公的管理運営機関にどのような業務を行わせるのか?

○ 各生殖補助医療の利用に関して、倫理的・法律的・技術的側面から検討を行い、必要な提言を行うとされている公的審議会を具体的にどのように設置するか?

(2) 実施医療施設等の監督体制 等

○ 実施医療施設にいかなる事項を報告させるか?

○ 実施医療施設の監督のあり方はどうするか?また、監督する主体はどことするか?

(3) 生まれた子が知ることができる精子・卵子・胚の提供者の個人情報の管理方法 等

○ 提供者を特定できない個人情報とは具体的にどの範囲の情報とするか?

○ 提供者からあらかじめどのような個人情報をどのように収集するか?

○ 提供者→実施医療施設→公的管理運営機関→生まれた子という提供者の個人情報の流れを担保するための公的管理運営機関を中心とした情報管理体制を具体的にどのように構築するか?

○ 実施医療施設や公的管理運営機関で提供者の個人情報をどのような保存方式でどれくらいの期間保存するか?

○ 近親婚の確認において確認する遺伝上の近親者はどこまでの範囲とするか?



資料4

○ 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施及び精子・卵子・胚の提供の条件(検討課題1)

−「生殖補助医療技術に関する専門委員会」報告書において提示された条件及びその具体化のための要検討事項(案)−


※1 本資料は、厚生科学審議会生殖補助医療部会における「提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施及び精子・卵子・胚の提供の条件」(検討課題1)の具体的な検討に資するため、事務局において、主要な検討項目と考えられる項目ごとに「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方についての報告書」(生殖補助医療技術に関する専門委員会報告書(平成12年12月28日とりまとめ。以下「専門委員会報告書」という。)の関係部分を抜き出し、それぞれについて想定される要検討事項を暫定的に整理したものである。

※2 p○○とあるのは、「「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方についての報告書」関係資料集」中の該当ページを示す。

※3 ゴシック体の部分については、専門委員会報告書における結論部分(四角囲みの部分)、明朝体の部分については、結論の説明部分(四角囲みの下)に記載されている部分である。

※4 「日本産科婦人科学会会告「「非配偶者間人工授精と精子提供」に関する見解」」とは、日本産科婦人科学会「非配偶者間人工授精と精子提供」に関する見解」(平成9年5月)及び「“非配偶者間人工授精と精子提供に関する見解”に対する考え方(解説)」を示すものである。
 また、「日本産科婦人科学会会告「「多胎妊娠」に関する見解」」とは、日本産科婦人科学会「多胎妊娠」に関する見解」(平成8年2月)及び「“多胎妊娠に関する見解”の解説」を示すものである。


1 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施の条件

(1) 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受けることができる者の条件

⇒(参考)日本産科婦人科学会会告「「非配偶者人工授精と精子提供」に関する見解」1.及び2.(p112、113)

● 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療全般に関わる条件

○ 子を欲しながら不妊症(※)のために子を持つことができない法律上の夫婦に限る。(p22)

※ 生殖年齢の男女が挙児を希望しているにもかかわらず、妊娠が成立しない状態であって、医学的措置を必要とする場合をいう。(p19)

○ 加齢により妊娠できない夫婦は対象とならない。(p22)

(要検討事項)

⇒「加齢により妊娠できない」ことの具体的な判定基準はどのように設定するか?
 (医師の裁量とするか?具体的な年齢制限を設けるか?)

○ 自己の精子・卵子を得ることができる場合には、それぞれ精子・卵子の提供を受けることはできない。(p22)

(要検討事項)

⇒「自己の精子・卵子を得ることができる」ことの具体的な判定基準はどのようにするか?

○ 医師の裁量とするか?具体的な判定基準を設定するか?
 (以下、具体的な判定基準を設定する場合)

○ 成熟した精子・卵子がそれぞれ精巣内・卵巣内に存在する場合に限定するか?精子・卵子の形成過程における受精能力を持った生殖細胞が存在する場合にも「自己の精子・卵子を得ることができる」こととするか?(これらについては、精巣や卵巣の生検によって最終判断するのか?また、この場合には、「受精能力を持った生殖細胞」とは、精子・卵子の形成過程におけるいかなる段階以降の生殖細胞(精母細胞、卵母細胞、精子細胞、卵子細胞等)を指すのかを具体的に定めるのか?)

○ 精子・卵子に受精を困難にする形態的・質的な明らかな異常があり、顕微授精などを数回実施しても、受精しない場合には「自己の精子・卵子を得ることができない」とみなすのか?(この場合、精子・卵子の提供を受ける要件として、それまでに受けるべき配偶者間の生殖補助医療の種類、回数等を具体的に定めるのか?)

○ 精子・卵子に受精の可能性を極めて乏しくする形態的・質的な明らかな異常(高度な奇形精子症、死滅精子症等)がある場合、顕微授精などを実施しなくとも、それだけで「自己の精子・卵子を得ることができない」とみなすのか?

⇒精子・卵子の提供を受けることができる者について優先順位を設けるか?
 (無精子症、ターナー症候群・卵巣機能不全などで物理的に精子又は卵子が存在しない者に優先的に提供することとするのか?提供を受ける者の年齢や既に何人子どもを有しているかなどで優先順位を設けるのか?)

● 各々の提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療ごとに適用される条件

(1) AID(提供精子による人工授精)(p25)

○ 精子の提供を受けなければ妊娠できない夫婦のみが、提供精子による人工授精を受けることができる。

(要検討事項)

⇒「精子の提供を受けなければ妊娠できない」ことの具体的な判定基準はどのように設定するか?

○ 医師の裁量とするか?具体的な判定基準を設定するか?
 (以下、具体的な判定基準を設定する場合)

○ 成熟した精子が精巣内に存在しない場合とするか?成熟した精子のみならず精子の形成過程における受精能力を持った生殖細胞も存在しない場合のみ「精子の提供を受けなければ妊娠できない」こととするか?(これらについては、精巣の生検によって最終判断するのか?また、 この場合には、「受精能力を持った生殖細胞」とは、精子の形成過程におけるいかなる段階以降の生殖細胞(精母細胞、精子細胞等)を指すのかを具体的に定めるのか?)

○ 精子に受精を困難にする形態的・質的な明らかな異常があり、顕微授精などを数回実施しても、受精しない場合にも「精子の提供を受けなければ妊娠できない」とみなすのか?(この場合、精子の提供を受ける要件として、それまでに受けるべき配偶者間の生殖補助医療の種類、回数等を具体的に定めるのか?)

○ 精子に受精の可能性を極めて乏しくする形態的・質的な明らかな異常(高度な奇形精子症、死滅精子症等)がある場合、顕微授精などを実施しなくとも、それだけで「精子の提供を受けなければ妊娠できない」とみなすのか?

⇒精子提供についての優先順位を設けるか?
 (無精子症などで物理的に精子が存在しない場合に優先的に提供することとするのか?提供を受ける者の年齢や既に何人子どもを有しているかなどで優先順位を設けるのか?)

(2) 提供精子による体外受精(p25)

○ 女性に体外受精を受ける医学上の理由があり、かつ精子の提供を受けなければ妊娠できない夫婦に限って、提供精子による体外受精を受けることができる。

(要検討事項)

⇒「女性に体外受精を受ける医学上の理由がある」ことの具体的な判定基準はどのように設定するか?
 (医師の裁量とするか?具体的な疾患や必須の医学的検査とその結果などの具体的な判定基準を定めるか?)

⇒「精子の提供を受けなければ妊娠できない」ことの具体的な判定基準はどのように設定するか?(AIDの場合と同じ。)

⇒精子提供についての優先順位を設けるか?(AIDの場合と同じ。)

(3) 提供卵子による体外受精(p26)

○ 卵子の提供を受けなければ妊娠できない夫婦に限って、提供卵子による体外受精を受けることができる。

(要検討事項)

⇒「卵子の提供を受けなければ妊娠できない」ことの具体的な判定基準はどのように設定するか?

○ 医師の裁量とするか?具体的な判定基準を設定するか?
 (以下、具体的な判定基準を設定する場合)

○ 成熟した卵子が卵巣内に存在しない場合とするか?成熟した卵子のみならず、卵子の形成過程における受精能力を持った生殖細胞も存在しない場合のみ「卵子の提供を受けなければ妊娠できない」こととするか?(これらについては、卵巣の生検によって最終判断するのか?また、この場合には、「受精能力を持った生殖細胞」とは、卵子の形成過程におけるいかなる段階以降の生殖細胞(卵母細胞、卵子細胞等)を指すのかを具体的に定めるのか?)

○ 卵子に受精を困難にする形態的・質的な明らかな異常があり、顕微授精などを数回実施しても、受精しない場合にも「卵子の提供を受けなければ妊娠できない」とみなすのか?(この場合、卵子の提供を受ける要件として、それまでに受けるべき配偶者間の生殖補助医療の種類、回数等を具体的に定めるのか?)

○ 卵子に受精の可能性を極めて乏しくする形態的・質的な明らかな異常がある場合、顕微授精などを実施しなくとも、それだけで「卵子の提供を受けなければ妊娠できない」とみなすのか?

⇒ 卵子提供についての優先順位を設けるか?
 (ターナー症候群、早発卵巣不全などで物理的に卵子が存在しない場合に優先的に提供することとするのか?提供を受ける者の年齢や既に何人子どもを有しているかなどで優先順位を設けるのか?)

(4) 提供胚の移植(p27)

○ 胚の提供を受けなければ妊娠できない夫婦が、提供された余剰胚(※)の移植を受けることができる。

※ 他の夫婦が自己の胚移植のために得た胚であって、当該夫婦が使用しないことを決定したもの(p27)

(要検討事項)

⇒「胚の提供を受けなければ妊娠できない」ことの具体的な判定基準はどのように設定するか?

○ 医師の裁量とするか?具体的な判定基準を設定するか?
 (以下、具体的な判定基準を設定する場合)

○ 成熟した精子・卵子の両方がそれぞれ精巣内・卵巣内に存在しない場合とするか?成熟した精子・卵子のみならず、精子・卵子の形成過程における受精能力を持った生殖細胞も存在しない場合のみ「胚の提供を受けなければ妊娠できない」こととするか?(これらについては、精巣・卵巣の生検によって最終判断するのか?また、この場合には、「受精能力を持った生殖細胞」とは、精子・卵子の形成過程におけるいかなる段階以降の生殖細胞(精母細胞、卵母細胞、精子細胞、卵子細胞等)を指すのかを具体的に定めるのか?)

○ 精子・卵子の両方に受精を困難にする形態的・質的な明らかな異常があり、顕微授精などを数回実施しても、受精しない場合にも「胚の提供を受けなければ妊娠できない」とみなすのか?(この場合、胚の提供を受ける要件として、それまでに受けるべき配偶者間・非配偶者間の生殖補助医療の種類、回数等を具体的に定めるのか?)

○ 精子・卵子の両方に受精の可能性を極めて乏しくする形態的・質的な明らかな異常(高度な奇形精子症、死滅精子症等)がある場合、顕微授精などを実施しなくとも、それだけで「胚の提供を受けなければ妊娠できない」とみなすのか?

○ 精子・卵子の一方に、受精を困難にする形態的・質的な明らかな異常がないにもかかわらず、「提供精子による体外受精」又は「提供卵子による体外受精」により、受精しないとき(原因不明の場合)にも「胚の提供を受けなければ妊娠できない」とみなすのか?

○ 「提供精子による体外受精」又は「提供卵子による体外受精」により、受精卵は得られるが、提供を受ける者の卵子又は精子の状態が悪いため、受精卵の状態が悪く着床の見込みがない場合にも「胚の提供を受けなければ妊娠できない」とみなすのか?

⇒胚の提供についての優先順位を設けるか?
 (提供を受ける者の両方が無精子症、ターナー症候群・卵巣機能不全などで物理的に精子・卵子の両方が存在しない場合に優先的に提供することとするのか?提供を受ける者の年齢や既に何人子どもを有しているかなどで優先順位を設けるのか?)

○ ただし、卵子の提供を受けなければ妊娠できない夫婦も、卵子の提供を受けることが困難な場合には、提供された余剰胚の移植を受けることができる。

(要検討事項)

⇒「卵子の提供が困難な場合」の具体的な判定基準をどのように設定するか?
 (実施医療施設の判断に委ねるか?全国的な卵子の提供状況を勘案して判断するか?)
 ←(関連)公的管理運営機関の管理する情報の範囲(検討課題3)

⇒「卵子の提供」が困難な場合に、「卵子のシェアリング」(後述)と「兄弟姉妹等からの卵子の提供」(後述)と上記による「余剰胚の提供」をどのような優先順位で適用するか?

○ また、胚の提供を受けなければ妊娠できない夫婦は、余剰胚の提供を受けることが困難な場合には、精子・卵子両方の提供によって得られた胚の移植を受けることができる。

(要検討事項)

⇒「余剰胚の提供が困難な場合」の具体的な判定基準をどのように設定するか?
 (実施医療施設の判断に委ねるか?全国的な余剰胚の提供状況を勘案して判断するか?)
 ←(関連)公的管理運営機関の管理する情報の範囲(検討課題3)

⇒「余剰胚の提供」が困難な場合に、「兄弟姉妹等からの余剰胚の提供」(後述)と上記による「精子・卵子両方の提供によって得られた胚の移植」のどちらを優先するか?

(2) 子宮に移植する胚の数の条件

⇒(参考)日本産科婦人科学会会告「「多胎妊娠」に関する見解」(p110、111)

○ 体外受精・胚移植又は提供胚の移植に当たって、1回に子宮に移植する胚の数は、原則として2個、移植する胚や子宮の状況によっては、3個までとする。(p43)

(要検討事項)

⇒「移植する胚や子宮」がどのような状況にあれば、胚を3個まで移植することを認めるか?
 (医師の裁量とするか?具体的な判定基準を設定するか?具体的な判定基準を設定する場合にはVEECK分類(※)によるか?)

 ※ 受精卵の形態的分類。受精卵卵割球における形態の均質性の程度と、フラグメンテーション(小さな細胞質の断片)の程度によってGrade1からGrade5の5段階に分類され、Grade1からGrade5の順に高い妊娠率が期待される。


2 精子・卵子・胚の提供の条件

(1)精子・卵子・胚を提供できる者の条件

⇒(参考)日本産科婦人科学会会告「「非配偶者人工授精と精子提供」に関する見解」4.(p112,113)

(1) 提供者の年齢及び自己の子どもの有無

○ 精子を提供できる人は、満55歳未満の成人とする。(p29)

○ 卵子を提供できる人は、既に子のいる成人に限り、満35歳未満とする。ただし、自己の体外受精のために採取した卵子の一部を提供する場合には、卵子を提供する人は既に子がいることを要さない。(p29)

※ 他の夫婦が自己の体外受精のために採取した卵子の一部の提供を当該卵子の採卵の周期に要した医療費等の経費の半分以下を負担して受け、当該卵子を用いて提供卵子による体外受精を受けることも認める。(p29)

(2) 同一の者からの卵子提供の回数制限

○ 同一の人からの卵子の提供は3回までとする。(p29)

(3) 同一の人から提供された精子・卵子・胚の使用数の制限

○ 同一の人から提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受けた人が妊娠した子の数が10人に達した場合には、当該同一の人から提供された精子・卵子・胚を提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療に使用してはならない。(p42)

(4) 提供精子の採取、使用に当たっての感染症等の検査

○ AIDの実施に当たっては、提供精子からのHIV等の感染症の危険があることから、そうした事態を未然に防ぐため、提供精子の採取・使用に当たっては十分な検査等の予防措置が講じられるべきである。(p25)

○ 提供精子による体外受精の実施に当たっても、提供精子からのHIV等の感染症の危険があることから、そうした事態を未然に防ぐため、提供精子の採取・使用に当たっては十分な検査等の予防措置が講じられるべきである。(p26)

(要検討事項)

⇒どのような感染症について提供者の検査を行うか?

⇒卵子提供者の感染症の検査を行う場合、卵子凍結が技術的に確立していないため、検査により感染が判明しない期間(ウィンドウ・ピリオド)を考慮した感染症の検査が困難であるが、これについては、提供を受ける者のインフォームド・コンセントを得ればよいこととするか?

⇒感染症のほかに検査すべき項目はないか?

⇒上記の検査の結果を提供者に知らせるか?

(2)精子・卵子・胚の提供に対する対価の条件

⇒(参考)日本産科婦人科学会会告「「非配偶者人工授精と精子提供」に関する見解」6.(p112、113)

○ 精子・卵子・胚の提供に係る一切の金銭等の対価を供与すること及び受領することを禁止する。ただし、実費相当分については、この限りでない。(p30)

(要検討事項)

⇒「実費相当分」として認められるものの具体的な範囲をどのように設定するか?
 (交通費、通信費のほかにどのようなものを実費相当分に含めるのか?)

⇒「実費相当分」の金銭等のやりとりの方法はどのようにするか?
 (医療施設が提供者に支払い、その医療施設が提供を受ける者から徴収するのか?提供者と提供を受ける者の直接のやりとりを認めるのか?)

※ 他の夫婦が自己の体外受精のために採取した卵子の一部の提供を当該卵子の採卵の周期に要した医療費等の経費の半分以下を負担して受け、当該卵子を用いて提供卵子による体外受精を受けることも認める。(p29)

○ 他の夫婦が自己の体外受精のために採取した卵子の一部の提供を受けて提供卵子による体外受精を行う場合に、卵子の提供を受けた人が当該卵子を提供した人に対して、当該卵子の採卵の周期に要した医療費等の経費の半分以下を負担することは、他の方法による卵子の提供に際して当該卵子を提供する人にかかる医療費等の経費を当該卵子の提供を受ける人が負担することと本質的に相違はないものと考えられる。(p30)

(要検討事項)

⇒他の夫婦が自己の体外受精のために採取した卵子の一部の提供を受けて提供卵子による体外受精を行う(卵子のシェアリング)場合に、卵子の提供を受けた人が当該卵子を提供した人に対して負担する「当該卵子の採卵の周期に要した医療費等の経費」の具体的な内容はどのように設定するか?

○ 卵子のシェアリングの場合に、卵子の提供を受けた人が当該卵子を提供した人に対して負担する「医療費等の経費」には何が含まれるのか?精子・卵子・胚の提供に対する対価の条件において認められる「実費相 当分」と同じとするか?

○ 卵子のシェアリングの場合に、卵子の提供を受けた人が当該卵子を提供した人に対して負担する「医療費等の経費」は実費とするか?標準的な医療費等の経費から経費を一律に設定するか?

○ 排卵誘発・採卵までの経費とするか?提供する夫婦の胚の凍結や胚移植にかかる経費も含めるか?

⇒卵子のシェアリングの場合に提供する卵子の数(又は割合)はどうするか?
 (採卵された卵子の数の半分以下とするか?提供者が決めることとするか?また、採卵された卵子の数が少なかった場合にはどうするか?さらに、卵子のシェアリングの場合に、卵子の提供を受けた人が当該卵子を提供した人に対して負担する「医療費等の経費」の額は、提供を受ける卵子の数(又は割合)に比例させるか?)

⇒卵子のシェアリングの場合に提供する卵子の選別を認めるか?
 (選別は認めないこととするのか(ランダムに選別するのか)?卵子の質などにより提供者が選別できることとするのか?また、卵子の質により卵子の提供を受けた人が当該卵子を提供した人に対して負担する「医療費等の経費」の額に差異を設けることを認めるのか?)

(3)精子・卵子・胚の提供における匿名性の条件

⇒(参考)日本産科婦人科学会会告「「非配偶者人工授精と精子提供」に関する見解」5.(p112、113)

(1) 精子・卵子・胚の提供における匿名性の保持 (p31)

○ 精子・卵子・胚を提供する場合には匿名とする。

(2) 兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供 (p31)

○ 精子・卵子・胚の提供における匿名性の保持の特例として、精子・卵子・胚を提供する人が兄弟姉妹等以外に存在しない場合には、当該精子・卵子・胚を提供する人及び当該精子・卵子・胚の提供を受ける人に対して、十分な説明・カウンセリングが行われ、かつ、当該精子・卵子・胚の提供が生まれてくる子の福祉や当該精子・卵子・胚を提供する人に対する心理的な圧力の観点から問題がないこと及び金銭等の対価の供与が行われないことを条件として、兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供を認めることとする。

○ 兄弟姉妹等から提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を行う医療施設は、その実施内容、実施理由等を公的管理運営機関に申請し、当該生殖補助医療が上記の要件に則して行われるものであることの事前の審査を受けなければならない。

(要検討事項)

⇒兄弟姉妹等からの精子・卵子・胚の提供における公的管理運営機関の審査基準を具体的にどのように設定するか?

(4)精子・卵子・胚の提供者と提供を受ける者との属性の一致等の条件

⇒(参考)日本産科婦人科学会会告「「非配偶者人工授精と精子提供」に関する見解」4.(p112、113)

○ 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を行う医療施設が当該生殖補助医療を受けることを希望する夫婦に説明すべき具体的な事項としては、当該生殖補助医療に係るリスクの可能性、当該生殖補助医療の成功の可能性、当該生殖補助医療に要する費用、当該生殖補助医療により生まれてくる子の血液型などを当該生殖補助医療を受ける夫婦に合わせることができない場合もあること、当該生殖補助医療により生まれてくる子の法的地位、当該生殖補助医療のために精子・卵子・胚を提供する人の匿名性、当該生殖補助医療により生まれた子は、公的管理運営機関への申請により、自己が当該生殖補助医療により生まれたことを知ることができることを含めた当該生殖補助医療により生まれてくる子の出自を知る権利などが考えられるところである。(p38)

(要検討事項)

⇒精子・卵子・胚の提供者と提供を受ける者との属性を合わせるか?また、合わせる場合、どこまで合わせるか?
 (血液型(ABO式血液型、Rh式血液型等)等)

⇒属性以外の提供を受ける者の希望に応えるか?また、応える場合、どこまで応えるか?
 (第2子や第3子も同じ提供者から提供してほしい等)

(5)その他の条件

⇒(参考)日本産科婦人科学会会告「「非配偶者人工授精と精子提供」に関する見解」4.(p112、113)

(要検討事項)

⇒提供者が死亡した場合の精子・卵子・胚の使用について取り扱いを決めなくてよいか?

⇒提供された精子・卵子・胚の保存期間についても具体的に期間を決めなくてもよいか?

(参考)

「第三者の配偶子提供等による生殖補助医療のあり方に関するたたき台」(抄)
(生殖補助医療技術に関する専門委員会ワーキンググループ作成)
(平成12年6月6日作成。同年10月3日最終改訂)


B 本論

1 第三者の配偶子提供等による各生殖補助医療の是非等について

(4)配偶子の処分

  • 精子並びに卵子は本人の死亡により廃棄される。

(5)胚の処分

  • 配偶子の由来する両者の合意により、余剰胚を提供することができる。提供胚の保存期間は5年か10年とする。提供した胚は、使用前であれば配偶子の由来する両者の合意により提供の撤回ができ、いずれか1人の申し出があれば廃棄できる。


参考資料

御意見募集で寄せられた意見(平成13年7月11日〜8月10日)


受付番号:25
受付日:平成13年7月11日
年齢:58歳
性別:男性
職業:会社役員
氏名:原 彰
所属団体:なし
この問題に関心を持った理由:
 1 知人に不妊に悩む人がいること
 2 本来他人に迷惑を掛けない事柄については政府は極力個人の行動を規制すべきではないと信じていること

御意見

 (私の意見)

 不妊治療の対策のうちで所謂代理母についての意見を申します。
 結論を申しますと、私は代理母は一定の条件を付けて認めるべきだと思います。本来国民は他人に損害(迷惑)を与えない範囲で極力それぞれの幸福を追求する権利を有するべきだと考えます。その意味で不妊に悩む夫婦の為に善意で代理母を引き受ける女性の行動を政府が規制すべきではないと思います。
 現在代理母を規制する理由の一つとして、無事出産後子供を引き渡した代理母が精神的にダメージを受ける事例があると言うことがあるようです。しかし全員がそのようなダメージを受ける訳ではなく、又判断力を持った大人の女性がそのような危険性を認識した上で代理母を引き受けるのであれば、その行動を国が規制するのは出過ぎた真似だと思います。従って代理母を引き受ける意志を持つ女性に対し、過去の事例としてこの様なトラブルがあったよ、と教えて上げることは有意義だと感じますが、それ以上は個人の判断に任せるべきだと思います。
 また同じく規制する理由として、産まれてきた子供が成長後出産の経緯に悩むことがあるという話も聞きました。これは難しい問題で私も簡単な解決法を思いつきませんが、もし理性的に話が出きるのであれば、あなたという存在はこの方法以外ではあり得なかったのだよ、と教えて上げたいですね。一方、幼児のうちに養子縁組で貰われて行った子供は生みの母とは別な母に育てられることになります。代理母の場合は生みの母ではないが、血は完全につながっており養父母に育てられるよりは不自然さが少ないと思います。
 更に女性を道具として扱うので反対だ、と言う意見があるようです。これは感情的な反対論という印象を受けますが、確かにそう感じる人もいるでしょうね。しかし、そう感じない人もいて当然ではないでしょうか。自分は道具と感じるから反対だ、あなたもそう感じなさい!、と言うのは僭越な発想だと思います。最初にも言いましたが、国民は本来自由であるべきで、余程の事がなければ行動を規制されるべきではありません。代理母の行動は他人に迷惑を掛けることではなく、むしろ不妊に悩む夫婦に大きな喜びを与える立派な行動です。
 更に言えば、代理母はその動機は完全な善意であるべきですが、妊娠期間中生活面その他でかなり大きな犠牲が要求されるでしょう。従って依頼主が代理母に対し最低限の補償と若干の謝礼を行うことまで禁止すべきではないと思います。
 以上が私の意見です。


受付番号:26
受付日:平成13年7月11日
年齢:不明
性別:不明
職業:不明
氏名:不明
所属団体:不明

御意見

 実際に長年、不妊治療を受けた側からの意見を述べさせていただきます。
 我が家は幸いにも、体外受精で子どもを授かる事ができました。しかし、中には第三者の協力を得なければ子どもを授かる事ができない人もいるでしょう。
 私は生殖がビジネスとなってしまうことは、倫理上からも許されない事であるとは思いますが、日本ももっともっと幅広く欧米並みに認めるべきです。
 何の問題も無く、子どもを授かった人たちに子どもが欲しくてもできない人の気持ちが分かるでしょうか?確かに決まりは必要でしょう。でも、有識者なんぞに私達の気持ちはわからない。また、高額な治療費も問題です。
 不妊は病気です。なのに、なぜ自費治療なのか。
 不妊治療は若いほど成果があります。しかし、払えるような年齢になると高齢になってしまう。私達も経済的な問題で、二人目はあきらめました。
 不妊は世間からも、正しく理解されていません。不妊で苦しんでいる人が、一日も早く我が子を腕に抱く事ができる日がくることを願ってやみません。


受付番号:27
受付日:平成13年7月13日
年齢:31歳
性別:女性
職業:主婦
氏名:匿名化希望
所属団体:なし
この問題に関心を持った理由:
 自らも不妊治療を経験し(3年)たことから。(結局子供はできず、治療は中止した)

 御意見

 題名 「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療に関する意見」

 きちんとした法整備の下で、できる限り数多くの選択肢を、子を望む夫婦に与えて欲しい。
 また保険適用を認めるなど経済的負担も軽くして欲しい。今の状態では高すぎる。(私はAIHをしていたころは月額7万円もの医療費を負担していた。IVFになると70万円に跳ね上がる)借り腹になると渡米して1000万円の費用がかかるという。
 もし日本国内でできるようになっても治療費があまりに高額であればあきらめる夫婦も多いだろう。なぜなら、治療の段階として、初期の検査や排卵誘発剤の使用等による自然妊娠への挑戦を経てAIH、体外、顕微へと進めると、医療費は相当な金額である。
 最初から高度な治療に進む場合ばかりではないということも考慮して欲しい。
 また特に女性は、治療を受けようとすると、現実には少なくとも正社員の仕事を辞めざるをえない。時間的にも拘束され、肉体的にもつらく、なおかつ仕事を辞めて治療にかけざるをえない
 患者は精神的にかなりの負担を抱えることから、安心して治療に専念できる環境の整備を早急にしていただきたい。


受付番号:28
受付日:平成13年7月14日
年齢:不明
性別:不明
職業:不明
氏名:不明
所属団体:不明
この問題に関心を持った理由:

御意見

 自力で出産までこぎつくことができる人にとっては一生かかっても理解できない事なのでしょうが、不妊で何年間も苦しめられる人にとっては一人でいいからどうしても子供が欲しいんです。
 第三者の精子、卵子、胚が認められればいままで何回体外受精してもだめだった人でも希望の光が見えてきます。例えば私の例ですが、精子は異常無し、卵子も妊娠できない範囲ではないが、質の悪さ、また分割が遅いとなかなか妊娠にこぎつくことができません。その間に高額な医療費に苦しみ、1年のうちに何度も繰り返すことができないためどんどん年齢ばかりとっていって次第に諦めなければならなくなるのでしょう。子宮はあるので、生めるんです。こんな悔しい事ってありますか?
 私は夫の血をうけつでいれば卵子は第3者でもかまわないと思っています。ただ、これがビジネスにはけっしてなって欲しくないとも思います。代理出産については私の周りの友人にも意見を聞いてみました。子供がいる人は10ヶ月もお腹にいて生んだら”ハイ!さようなら。”は絶対できないし、してはいけないことだと思うとほとんどの方がいいました。不妊の方に聞いたときは口を揃えて認められるべきだ!!といいました。わかりますか?これほどまでに、意識が違うということ。子供が欲しくてたまらない人はどんな手段でもそんなこといってられないんです。悩むことなくできてしまった人達には絶対に理解は得られません。
 先日あるTVで『仕事が忙しいから代理で生んでもらうっていう人が出てくるかもしれない』といっていた人がいましたが、まったくバカじゃないかと思いました。そんな人がもしもいたら絶対に授けて欲しくないです。不妊で悩まれた方は誰でも命の大切さを理解していると思います。そういう方にだけ、代理出産でも卵子・精子・胚提供の理解をして欲しいです。
 しかし、こんなに意見かいててもどこまで気持ちが伝わってるんでしょうか?いまのところ、医療費にしろ市からでる助成金にしろ何にも変わってないですものね。よろしくお願いします。


受付番号:29
受付日:平成13年7月15日
年齢:不明
性別:不明
職業:不明
氏名:不明
所属団体:不明
この問題に関心を持った理由:不明

御意見

 厚生労働省 様

 こんにちは。はじめまして。私は茨城に住んでいる者です。
 不妊治療を6年近く続け、現在は体外受精を受けています。
 今回、厚生労働省で、非配偶者間の体外受精や代理出産について、専門部会で審議を始めること、それにあたり一般の意見も募集していることを知り、お便りさせていただきました。
 私は、これらの治療について、率直に言って賛成です。治療の選択の幅が広がるのは、時として受ける側は翻弄される場合もあるかもしれないけど、最終的に受ける受けないを決めるのはそれぞれの夫婦です。その方法でなら子供を授かれるのであって、本人達がそれでもいいから受けたいと納得した上であるなら、希望の道・選択の幅があってもいいと思います。 少なくとも、これらの事はそれぞれの夫婦の問題で、第3者にどうこう言われることではないと思うのです。
 不妊治療は本当に辛いです。肉体的・経済的負担も大きいけど、何より精神的辛さはそれらに比するものではないほど大きいです。
 先の見えない治療、周囲のプレッシャー、頑張っても頑張っても成果が出ず報われなかった時は、生きてる意味も見失いそうになりますが、それでも諦められない人達に共通する思いは純粋に「子供が欲しい」であって、そこには法も倫理も存在しません。
 不妊に無縁の方達は、「何もそこまでしなくても・・」「子供のいない人生を選ぶこともできる」と言う人もいるけれど、現実に欲しいと思ってる我々は、それらの言葉でさえ傷つき、そこまでしてでも・・というのがどれ程の「子供が欲しい」気持ちから来てるかなんて、想像つかないと思います。
 また、非配偶者の精子または卵子を使ったり、代理出産したりするくらいなら、養子を貰えばと言う人もいるようだけど、これも夫婦それぞれの考えがあるのだし、当事者が決めることだと思います。
 今回このような法の規制を話し合うきっかけとなったのは、長野の根津八紘先生が、3年前に非配偶者間の体外受精、今年に代理出産を、それぞれ日本で初めて実施の公表をなさったことが発端ですよね。
 私は、3年前日本産婦人科学会をルール違反で除名されようとも、自分の立場も顧みず患者の希望を第一に考えてくれた根津先生を尊敬しています。不妊治療に携わる医師がたくさんいる中で、根津先生のように、あそこまで患者の気持ちを優先して思って下さる先生は、日本に何人いるでしょう。私は、根津先生のような医師ばかりだったら、精神面だけでも救われる人が増え、不妊患者は今より減るのではないかと思います。
 それなのに3年前、日本産婦人科学会は、根津先生が問題提起したことに対し、ガイドラインの見直しより先に、先生の除名を決めたのには、直接の患者でなくても激しい憤りを感じました。学会に抗議もしたけど、受け入れられることはなく、悔しい思いをしました。
 その後成り行きを見守っていましたが、専門委員会ができて、非配偶者間の体外受精が容認される運びになったと去年知った時は、正直言って、思ったより早かったと感じました。(過去に、慶応病院が戦後から実施してた非配偶者人工授精が法的に認められるまで半世紀かかったり、根津先生が公表実施した減胎手術が容認されるまで10年以上かかったことを思えば、です)
 そして、根津先生がなさった事は、当時は波紋を投げかけた形にされたけど、決して無駄にはなってないんだと思ったら、嬉しい気持ちでした。
 今回、非配偶者間体外受精と代理出産について、新しいガイドライン・法の規制を話し合って下さるなら、ぜひ前向きな検討をして頂きたいと願います。
 現代の世の中で少子化が叫ばれる中、世間は子供を産みたがらない人を非難し、既に子供のいる人ばかり支援してるように見えるけど、我々のように、産みたくても産めないで自分なりに頑張ってる人もいることをわかってほしいです。まして、非配偶者間体外受精や代理出産という方法を使ってでも子供を欲しいと思う人に対して、意思を尊重し、可能な限り道を広げてほしいと希望します。
 非配偶者間体外受精にしても、非配偶者の人工授精は認められているのに体外受精は認められないというのは矛盾してるし、代理出産にしても、アメリカへ渡って高いお金で受ける分には構わないのに国内では認めないなんて、納得が行かないです。 ただ勿論、どちらも第3者が関わるのだから、商業的であってはならないし、生まれた子供の人権も守るなど、ある程度の規制は必要だとは思います。でも少なくとも、親のエゴで生まれた子供とは、考えてほしくない。
 普通に生まれた子供だって、親から愛情をもらえず虐待される子は、悲しいけどたくさんいるのですから。どうか、人間一人一人を尊重したガイドラインを作って下さいますよう、期待しています。宜しくお願い致します。
 今回の事に関連して、厚生省に日頃からお願いしたいと思ってる事がありましたので、書かせて頂きます。それは、不妊治療費の保険適用を認めてほしいということです。
 現在、体外受精以上の治療については全額自己負担ですよね。私は、体外受精を受けていますが、1回40万の治療費がかかります。これは普通のサラリーマン家庭にとっては、決して小さい金額ではありません。1回何十万もかかるのに成功率は30%前後という、かなり割の悪い治療なのに、それでも何回も受けている人がたくさんいるのが現実なのです。普通なら考えられないような賭けみたいなものなのに、それでも受けるのは、ただひとつ「子供が欲しい」からです。
 少子化が問題視される中で、いつも支援策として考えられるのは、保育園の数を増やしたり、子供のいる女性が社会復帰しやすくしたりということで、我々不妊患者の存在はいつも無視されているような気がしてなりません。私達だって、できることなら何人でも子供を産んで、国に貢献したい気さえしています。
 でも実際に治療費が高いから、治療を断念してる夫婦も多いと思います。
 肉体面・精神面だけで充分きついのに、あの治療費はあまりにも高すぎて、経済面でのダメージも本当に大きいです。
 国の医療費の予算にも限界があるとは思いますが、どうかせめて一部でもいいから、保険を適用し、受ける者の負担を小さくして下さいますよう、お願いしたいと思います。宜しくお願い致します


受付番号:30
受付日:平成13年7月17日
年齢:41歳
性別:男性
職業:公立中学校教員
氏名:匿名化の要否不明
所属団体:なし
この問題に関心を持った理由:代理出産が禁止されそうな様子だったから。

御意見

 III 代理出産の禁止に反対。

 子供を持つという人権を国家が強制的に奪うことになるから。また、法律で禁止された場合、海外で行うことになり、より望ましくないから。(安全性や費用の問題)
 国内で実施できるように認めておいて、安全性関しての規制等を行うべきだ。この問題はあくまで個人個人が考えて判断すべき問題で一律に法で規制すべきではない。


受付番号:31
受付日:平成13年7月28日
年齢:不明
性別:不明
職業:不明
氏名:不明
所属団体:不明
この問題に関心を持った理由:不明

御意見

募集テーマとは違いますが、こちらがもっともふさわしいあて先と思い送信します。(匿名ですみません)

 体外受精を実施し、夫婦では戻す受精卵は2つと決めていたのに医師の判断で3つ戻し、3つ子になりました。
 医師は責任をとって減胎手術を実施すべきだと思います。減胎手術も3つ子出産も自分のところではできないのに、3つ子などを発生させる可能性のある不妊治療をしている施設が多すぎます!責任のとれないことを平気でやっているわけです。
たまたまこんな経験をすることになって初めて気づきましたが、患者は頼るものを一気に失い、精神的に破綻しそうになります。全国にそういった人は意外に大勢いるのです。
 ちなみに、もう一つ経験して気づいたことがあります。
 減胎手術を実質的にほぼ独占しているSマタニティークリニックの言動から危機感を持ったものです。
 実質独占状態なので患者はみな従順のようです。そういった人をSクリニックでは「困っている人」として助ける対象にしているとのことです。ただし、私のように事前手続き等で指摘を行ったりする人間は「困っている人」の態度ではないということで診ないそうです。「情にほだされて技術的にできることはやっちゃおう!」とか「気に入らないから、やーめた。」なんて・・・ことは医者という職業にはあってはならないと思います。
 かのクリニックを独占状態にしているのも、不妊治療実施機関が責任をとらないのも、「減胎手術」についての法的整備ができていないからでしょう。必要な人に手を差し伸べられる枠組みを作ってください。
 減胎手術をやらないのであれば、多胎が起きる可能性のある処置は一切して欲しくない。そのバランスが大変崩れています!不幸のしわよせがくるのは我々です!


受付番号:32
受付日:平成13年8月8日
年齢:42歳
性別:男性
職業:会社員(化学)
氏名:匿名化希望
所属団体:匿名化希望
この問題に関心を持った理由:生殖医療は、次世代を作る最も重要な医療だからです。

御意見

 まず、表題に対する賛否を記します。
 私は、精子・卵子・胚の提供による生殖補助医療について、借り腹を含め、全面的に賛成です。
 以下、主に借り腹の禁止に対する私の意見をまとめました。

1.”借り腹の禁止”ガイドライン(案)に関して

(1)社会は”借り腹”を受容できるか?

 私は、この案件について考える時、”体外受精”が可能になった時の事を思い出します。
 この時も、全世界で反対運動が繰り返されました。一時は、”神の摂理に反する”といった宗教団体の著しい反対行動も見受けられました。その混乱も、体外受精が一般化するに従って緩和され、極端な反対を唱えていたキリスト教国のアメリカでは、いつのまにか、精子バンク、卵子バンクが登場し、精子ビジネスが激増する始末です。この状況が、必ずしも良い状態とは思いませんが、不妊の夫婦に対する絶大な福音となった事は確かです。
 現在の日本では、生殖医療に反対する宗教勢力はほとんど無く、倫理的な問題も無いと言えます。一部の識者に、反対論者が居ますが、確たる倫理的背景も無く、”時期尚早”という意味の無い反対を繰り返しているだけです。
 日本では、識者の倫理観を”正”とする権威主義・教条主義がありますが、倫理観とは、一般大衆が作るものだと思います。一般大衆は、借り腹を受容できるのではないでしょうか。

(2)私の個人的倫理観から

 倫理的な観点からも、精子や卵子の提供が認められているのに、借り腹だけが認められないというのは、バランスを欠くと思います。
 借り腹は、身体を提供する女性の自由意思に基づくものであり、問題は無いと思います。 (監視するシステムは必要だと思います。)

(3)生殖医療を加速した社会的背景

 生殖医療を加速したのは、必ずしも不妊夫婦の要望だけではありません。”遺伝子”という”血筋”の元が”確実に存在するもの”として、科学が証明した事により、それまで暗黙のうちに感じていた”血筋”という考えが強化された事による部分が大きいのです。即ち、科学そのものが”血筋”という思想を強化したのです。
 科学が一方的に”血筋”という思想を強化しておいて、技術的に可能なのに、それを禁止する、というのは、江戸時代の幕府が科学の研究を禁止した事と同じで、大事な技術は国が管理し、民衆には与えない、という封建的な考え方が根本にあると考えます。

(4)ガイドライン(案)中の”子供の心理に配慮して”の項に関して

(1)借り腹について

 子供の心理に配慮して借り腹を禁止する、というのは、全くナンセンスな話です。もし、子供の心理を本当に尊重するのであれば、”養子”や”AID”は全て禁止になって然るべきです。何故なら、子供にとって、現在の親が実の親かどうか、という点は小学校高学年以上の子供には必ず存在する不安なのです。養子やAIDが許されて借り腹が許されないというのは、全くナンセンスな話です。
 借り腹の女性から、実の両親の卵子と精子で子供を出産し、実の両親がその子を育てる事が最も子供の心理に配慮した内容になると思います。遺伝的な実子を両親が育てる、これほど完全な配慮は他に無いと思います。借り腹は、子供の心理に最も配慮した医療行為なのです。

(2)現行AIDについて

 現行のAIDは、多人数の精子を混ぜたり、精子提供者を完全匿名にするなど、”実の父親を特定できない”という、全く非人道的な状況にあると言えます。AIDのこの様な処置は、子供の心理を考えて、”匿名性を重視”と述べられていますが、これでは全くの逆効果です。勿論、子供の希望無しに提供者を発表する事は避けなければなりませんが、子供は自分の遺伝的な親を求めるものなのです。現に、精子バンク先進国アメリカでは、”実の父親”を求める子供達が増えています。(探すのは勿論大人になってからです)彼らの情熱は相当なもので、中にはせっかく探し当てたのに、提供者は死去していた、という状況も存在します。
 ここで重要なのは、精子を混ぜようが、匿名にしようが、”いつかは子供が気付く”事です。
 顔が違う、仕草が違う、という事によって、いつかは本人が気付くのです。”子供のうちだけダマしていれば良い”、というのは、そういう経験をしていない人々の意見であり、本当にそういう経験をされた方の何割かは、人生をかけて、親探しに奔走します。何故なら、”血筋”というのは、人間のアイデンティティの一つだからです。我々、普通の人々は、親と同じ血筋を持つのが当たり前で、特別に感じる事はありませんが、”それを持たない”人にとっては、人生存続の危機なのです。本当に、AIDで生まれた子供の心理、その人が成長した後の心理を大事にするなら、今までの無意味な匿名性を廃止し、子供の意思により、提供者をきちんと特定する事が重要です。(勿論、関係者以外は極秘にすべきです)

(5)ガイドライン中の”専ら女性を道具として”の項に関して

 生殖医療では、借り腹を提供する女性には、妊娠のリスクが生じますが、それは本当に”道具”なのでしょうか? 道具かどうかは、借り腹を提供する女性が決めるべき事で、他人がとやかく規制する問題では無いと思います。借り腹が道具であるのなら、脳死移植は、人を”物”として扱い、死を冒涜するものに他なりません。脳死移植は許されて、借り腹が許されないという事は非常におかしな状況です。
 例えば、最近、骨髄バンク登録が人気ですが、あれこそは、他人にリスクを強要するものではないでしょうか。健康な人間の背骨にドリルで40もの穴を開け、骨髄を吸い出し 、患者に提供するのが骨髄移植です。これは、時に提供者の生命に関わる手術であり、人間を物として扱っているにもかかわらず、禁止されておりません。また、骨髄移植が背骨にドリルで穴を開けるという事も一般の人には知らされていません。これはどういう事でしょうか?
 また、十数年前には、衛生状態の悪い病院で、骨髄提供者がMRSAに感染して、死亡しました。こういう事例があるにもかかわらず、骨髄提供は美談として語られ、”借り腹は女性の身体を道具”だと言い分けているのは、おかしな状況だと思います。
 問題は、”医療行為への協力はリスクを負う”、という事だと思います。”女性の体を道具として扱う”という表現は、旧来の日本の家の思想に基づく発想であり、もとより、現在の日本には無い状況で、時代錯誤の感すらあります。必要なのは、医療機関が骨髄提供者や借り腹提供者に”リスクの情報”を与える義務があるという事だと思います。借り腹の実施にあたっては、ここの所を入念に整備しなければならないと思います。
 私は、骨髄提供者と同様に、借り腹提供者も、”生命を救った”美談として語られるべきと考えます。生殖医療は、生命を育む医療であり、これまでに無かった医療です。そ れ故に誤解と偏見の多い分野ですが、医療関係者にあっては、偏見を持たずに向き合って欲しいと思います。

2.医療問題を議論する上での組織の問題

 これまでの生殖医療に関する、様々なフォーラムや議論は、”専門家”と呼ばれる人々で行われてきました。その場には一番肝心な患者、即ち”子供に恵まれない夫婦”の意見が全く欠落しています。日本のほとんどの審議会がこのパターンで運営されています。患者は密室で行われる審議会からの”命令”を一方的に受けるだけです。ハンセン病患者が不当な差別を50年に渡って受け続けたのも、患者の意見を全く聞かなかった点に事件の根源があります。
 様々な医療行為を最終的に決断するのは、患者であって医師ではありません。専門家だけに決定権がある、という封建的な組織がある限り、患者は不利益をこうむり続ける事でしょう。
 アメリカでは、様々な審議会発足の前に、”公聴会”が必ず開かれ、患者の声を聞いたり、被害者の声を聞いたりして、”当事者”の意見を必ず集めます。こういう公聴会を日本にも導入すべきだと思います。
 最近、生殖医療について、NHKの番組でもフォーラムが開かれる様になりましたが、専門家と称される出席者の態度を拝見する限り、あたかも自分が王様であるかの様に振る舞い、患者に命令する様な口調を平気で用いています。こういう命令的な態度は、”患者は命令に従え!”という封建的な図式を守り続ける人々に共通するものです。この悪癖は、医師の特権意識から生まれるもので、エイズ事件、ハンセン病事件を起こした医師に共通するものです。こういう、悪癖を持ち続ける人々は、審議会から排除すべきです。

3.借り腹を実施する際の心理的な対処法

 借り腹は、確かに複雑な側面を持っています。しかし、その複雑な側面を無理無く解決する事も可能です。その為に、心理的な側面も重要です。
 例えば、母親は出産して赤ちゃんと24時間一緒に過ごすと、母親の赤ちゃんに対する親密度も、赤ちゃんの母親に対する親密度も、非常に大きくなります。お互いの声だけで相手が判る程です。従って、借り腹で出産した場合には、赤ちゃんを取り上げた後、速やかに遺伝的母親に引き渡す事が重要となります。これを怠ると、出産母と赤ちゃんの間に絆が生まれてしまい、後に子供を奪い合う係争を引き起こす事につながります。
 アメリカの場合は、こういう心理的側面から、生まれた瞬間に赤ちゃんを遺伝的母親に引き渡しています。この事は、”何でもない”事の様に思えますが、実際は”借り腹”を実施する上で、最も重要な事です。心理学をないがしろにする日本の医療機関では、最も注意すべき項目だと思います。

4.最後に

 最後に、生殖医療の個別の手法について、私の賛否を記しました。

(1)人工受精

(1)配偶者間人工授精(AIH)⇒賛成

(2)非配偶者間人工授精(AID)⇒現行、何の議論も無く行われていますが、”借り腹が子供の心理を考えて禁止”するのであれば、こちらの方を禁止すべきです。子供の心理を考えれば、賛成ではありませんが、両親の希望があれば同意します。最後の選択肢とすべきだと思います。

(2)体外受精・胚移植(IVF-ET)

(1)配偶者間体外受精⇒賛成

(2)非配偶者間体外受精⇒AIDに準じます。

 1)提供精子による体外受精⇒AIDに準じます。

 2)提供卵子による体外受精⇒AIDに準じます。

 3)提供胚の移植⇒AIDに準じます。

(3)代理懐胎(代理母・借り腹)

(1)代理母⇒AIDに準じます。

(2)借り腹⇒全面的に賛成

以上です。



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