01/07/30 第4回保健医療技術情報普及支援検討会議事録            第4回保健医療技術情報普及支援検討会            平成13年7月30日(月) 13:30 〜14:30       日比谷松本楼2階 1.開  会  【武末室長補佐】  定刻となりましたので、ただいまから第4回「保健医療技術情報普及支援検討会」を 開催させていただきます。本日の検討会も公開でございます。また本日は、福井委員が 都合により欠席されております。  それではこれより、高久座長に議事進行をお願いいたします。  【高久座長】  本日はお忙しい中、また非常に暑い中をお集まりいただきましてありがとうございま した。まず事務局から資料の確認を、よろしくお願いします。  【武末補佐】  まず「第4回保健医療技術情報普及支援検討会議事次第」という紙がございます。1 ページめくっていただきますと委員の紹介がございまして、もう1ページめくっていた だきますと座席表がございます。さらにもう1ページめくっていただきますと、右肩に 「資料」と書いてございます「保健医療技術情報普及支援検討会 第3回までの論点整 理(案)」という資料がございます。そのほかに今回は別紙といたしまして「EBMを 円滑に実施するための流れ」という3枚の資料をご用意しております。 本日の資料は以上の2点でございます。 2.第3回目までの論点整理について  【高久座長】  お手元に資料があると思います。きょうは第4回目ということですが、第3回までの 論点を事務局のほうで整理していただいていますので、これにつきまして、資料に基づ いて説明していただけますか。  【武末室長補佐】  本日添付の資料に、3回までの議事を「論点整理(案)」としてまとめましたので、 簡単にご説明させていただきます。資料「保健医療情報普及支援検討会 第3回までの 論点整理(案)」とございます。  まず最初に、「診療ガイドラインの作成について」でございます。診療ガイドライン は、「EBMの手順に則っているか」、「作成されたものを利用して診療内容や患者の アウトカムが良くなっているか」という2つの側面から評価される。2番目としまし て、診療ガイドラインを作成するときには、専門学会の医師だけの構成ではなく、プラ イマリーケア医やコメディカルの関係者、さらにその疾患の患者も参画することが望ま しい。また、ガイドライン作成の専門家がグループの一員になることも重要である。○ 3としまして、診療ガイドラインは、いろいろなユーザーにうまく対応できる融通が利 いたものであることが望ましい。○4としまして、今後、「患者の目から見た」という 視点から、インフォームド・コンセントに役立つ情報も盛り込んで置く必要がある、 と。以上でございます。  「診療ガイドラインの利用法について」ですが、○1としまして、全国的に通用する レベルのガイドラインが、疾患ごとにただ全国で一つというのでは普及は難しい。○2 としまして、日常診療の中で良く遭遇する一般的な問題、複雑な問題、そしてさらに例 外的な問題という3段階に対して、それぞれどのツールを使って行えばいいのかという ところまで含めて検討するべき。○3としまして、ガイドライン最大のユーザーは日本 医師会会員であるから、会員からのフィードバックされる意見が学会に伝えられるよう な窓口的なことを医師会がやるべきだと思う。  続きまして、次のページにまいります。「その他診療ガイドラインの取り扱いについ て」でございますが、○1としまして、米国の場合、ガイドラインの取り扱いに関して は、1疾患について1つのガイドラインしかないというものではなく、たくさんのガイ ドラインがある。また、その中のどれか1つを使わなければならないというわけではな い。○2としまして、ガイドラインには著作権の問題が発生してくるが、今後有効にガ イドラインを機能させるためには、著作権を国に帰属させるような原則を立てておくよ う検討すべき。  次に、「診療ガイドライン情報などを発信するための健康情報センター構想につい て」でございます。○1としまして、わが国での健康情報センター構想に関しては、英 国のように国が全面的に支援を行っている国立電子健康図書館(NeLH)のようなも のがよいと思う。○2としまして、今後、健康情報センター構想を進めていくために は、財源と人材の問題もあるので、将来的な目標をしっかり立てて、システム準備の優 先順位まで付けて進めていったほうがよい。  次に、「健康情報センターの諸外国の情勢について」でございます。○1としまし て、米国では国立医学図書館(NLM)がEBM活動やシステマティック・レビュー、 または診療ガイドライン作成上で重要な位置を占めている。また、その機能の中には、 “MEDLINE plus”といった、“MEDLINE”の医学文献情報以外に も、一般の方々がいろいろな医学情報や健康情報にアクセスできるような仕組みを付加 しているものもある。○2としまして、英国では健康情報の普及・推進に国家戦略とし て取り組んできたため、国際的に最も整備されたシステムを所有している。その健康情 報戦略の中の一つに国立電子図書館(NeLH)があり、疾患ごとに専門医向け、一般 臨床医向け、患者向けといったように、いろいろな診療情報がある。また、これらの運 営経費に関しては多大な国費が投入されている。  次のページにまいります。「健康情報センターの運営のイメージについて」でござい ます。○1としまして、わが国で健康情報センターを運営していくには、「医学中央雑 誌」などを使いやすくし、外国の“MEDLINE”などにアクセスできるようなデー タベースと、診療ガイドラインデータベースといったような2つのファンクションが担 えるような機能が必要だと思う。○2としまして、「医学中央雑誌」は、日本の医学雑 誌・論文を網羅しているが、セレクションというプロセスはあまり行っていないので、 実際に運用するには第三者的なデータベース機構を作って、セレクトする機能をもたせ なければならないと思う。○3としまして、わが国における健康情報センター構想に関 しては、学会の先生のもとでやることが望ましいと思う。具体的には日本医師会が窓口 的な役割をもって、学会の先生方を中心に組織を作って運営するといったイメージであ る、と。○4としまして、また、運用面では医師、医療関係者もしくは国民を含めて、 だれでもアクセスできるような形のネット作りをして、作成者(評価者)と利用者が双 方向で情報交換できる仕組みを作っていくことも、医療の質の維持・向上を図る上で重 要である、と。  最後に「その他健康情報センターの運営主体について」ですが、○1としまして、諸 外国における健康情報センターの運営は、国もしくは医師会が中心となって運営をして いる例がほとんどである。また、システムの維持・運営に膨大な費用がかかることを想 定すると、公的な資金を投入することは不可欠である。○2としまして、英国は国営医 療であり、NHSのためのガイドラインであるが、日本の場合は保険診療のためのガイ ドラインということではいけない。(したがって、英国のような国主導の運営形態にす ることは問題)と。○3としまして、第三者的な機関でガイドラインの収集・評価・提 供・データベースのメンテナンスを行っていくべき。  以上が3回までの議事録からまとめました論点整理(案)でございます。  【高久座長】  どうもありがとうございました。今までの皆さん方のご議論を簡単にまとめていただ きました。どなたかご質問、ご意見、おありでしょうか。  【櫻井委員】  この論点整理(案)ということは、論点だということで、これを皆さん合意したとか そういう意味ではないと考えていいですね。そういう意見が出たということで。  【高久座長】  そういうことだと思います。  【櫻井委員】  要するに「こういう意見が出ましたよ」ということだけで、もちろんそれについては 反対があっても構わないわけですね。  【高久座長】  と思いましたが。  【櫻井委員】  論点の整理だから、そうかな、という気がするけれど、ちょっとそこのところがすっ きりしなかったのですが。  【高久座長】  そうですね。今までにこういうことが……。  【櫻井委員】  議論された、という整理だというふうに理解していいですね。  【高久座長】  そうだと思います。  【櫻井委員】  結論がそれについて出たということではないという。  【高久座長】  ええ。ということだと思います。  【櫻井委員】  いや、それでしたら発言しません。これが結論だとちょっと問題のところ、言いたい ことがあったんですけれどね。  【高久座長】  どうぞ、何か。よろしいですか。  【櫻井委員】  いや、これが「こういう意見が出た」という整理だということであれば。  【矢崎委員】  2ページ目の上の方に、「米国の場合、1疾患について1つのガイドラインしかない というのではなくて……」。これは結論は同じなのですが、例えば一般医向けのものと か、専門医向けとか、内容のレベルとか、含まれる範囲が違うということであって、お およそガイドラインの筋道はあまり変わらないのですが、これを見ていると、いろんな ガイドラインという、そちらのほうに理解されてしまうと問題かなと思ったので。  【高久座長】  これは矢崎先生のご発言だったですか。  【矢崎委員】  いえ、これは開原先生の。  【高久座長】  開原先生大丈夫ですね。  【開原委員】  そういうことだと思います。そのとおりで結構でございます。  【高久座長】  これは何とでもとれる発言ですな。  【開原委員】  ここは「1疾患について」というところを、「疾患ごとに1つのガイドラインしかな いというのではなく」というふうに直せばいいのではないですか。  【高久座長】  「疾患ごとに」ですね。  【開原委員】  そうすれば、今の矢崎先生の言われたような誤解はないのではないかと思います。  【高久座長】  この1ページ目の2つ目のポチのところ、「ガイドライン作成の専門家がグループの 一員になることも重要である」という所は、よくわからなかった。「診療ガイドライン を作成する専門家……」、何のグループの一員だったですかね。その前に「ガイドライ ンを作成するときには、専門学会の医師だけでなく」として、「その専門家はグループ の一員になることも重要である」、「グループ」というのが何のグループだったです か。  【医療技術情報推進室長】  正確な文言はちょっと記憶いたしておりませんが、どなたかの先生がご発言いただい たときに、厚生労働省のほうでは、学会のほうでガイドラインをおつくりいただくのを 研究費で支援させていただいているのですが、「その研究班ごとに、EBMがご専門の 先生がやっぱりお加わりになるべきではないか」というふうな趣旨のことを、どなたか 先生がご発言……。  【武末室長補佐】  福井先生です。  【医療技術情報推進室長】  あ、福井先生ですか。福井先生がご発言になったようでございますので。このグルー プの研究班のことというふうに、私ども、理解しております。  【櫻井委員】  異論という意味ではなくて、質問をさせてもらいますが、1つは2ページ目の2つ目 の○の、開原先生がおっしゃったのですが、「著作権を国に帰属させる原則」というの は、どういう意味でしたか。これは僕ははっきり記憶がなくて、「これはどういうこと でお聞きしたかな」という質問です。  【開原委員】  これは私ではないと思います。  【櫻井委員】  どなたのですか。こんな話、出ましたっけ。「だれでも利用できるように」という話 は出たけれど、「著作権を国に帰属させる」って……。  【久繁委員】  私もちょっと記憶にないのですが、これは恐らく「国の研究班のものは国のほうに」 という話。だれでも使えるような格好で、特に著作権を主張しないというか、国に帰属 させるということかもしれませんが。あとのガイドラインについては、一応各専門家、 もしくは集団でつくったものについては、利用の協力を願ってそれを利用してもらうと いう、承諾を得るという格好にしかならないと思うんですけれどね。  【櫻井委員】  そうですよね。どのガイドラインも国に帰属させてしまったら、ちょっと問題です。 こんな意見は出たような記憶はないので。さっき反論しようと思ったのだけれど、こい う意見が出たのかなと思って、質問という形で。  【矢崎委員】  これは、高血圧のガイドラインで、学会で随分利益が上がったんですね。だからそれ をどうするかという議論で、こういう趣旨の結論ではなくて、それをどうするかという 議論で。  【櫻井委員】  その話は僕もした覚えがあるんですが、「だから国に帰属させてしまえ」という意味 ではなかったですね。学会のものは、帰属は学会でいいと思うので。ただ、それをみん なが、料金も含めてフリーに利用できるようなものをつくる必要がある、という意見は あったような気がするんです。  【矢崎委員】  そうですよね。  【櫻井委員】  それは私も申し上げた記憶があります。  【高久座長】  そうですか。ほかにどなたか。  【開原委員】  2ページの「健康情報センターの諸外国の情勢について」のところの最初なのです が、これは事実関係だけなのですが、ここではNLMだけがあがっているのですが、N LMだけではなくて、ナショナル・ガイドライン・クレアリングハウスがやっているの は、あれはNLMではなくて、最近名前が変わったのでわからないけれど、エージェン シー・フォー・ヘルス・リサーチ・アンド・クォリティー、AHRQという、そういう 別な機関があって、そこがナショナル・ガイドライン・クレアリングハウスをやってい ますし、昔国がつくっていたのはそこですから、やっぱりその2つを入れておいたほう がいいかもしれないので。具体的には「国立医学図書館(NLM)とAHRQが」とい うようにしたらいかがかと思いますが。  【高久座長】  はい。よろしいですか。  【櫻井委員】  それではもう1ついいですか。それでは続きで質問ということで。1ページの2番目 の「診療ガイドラインを作成するときには、専門学会の医師だけの構成ではなく……」 のところの「プライマリーケア医」という言葉ですが、「プライマリーケア医」という ものについてはいろんな定義的な意味の反論があるように私は思うのですが、専門学会 の医師との対応であれば、「一般の臨床医」とか何かそういう言い方にしておいていた だいたほうがいいと思います。ただ、ご発言がこうあったということであればしようが ないのですが、もしご発言の方がそれでいいと言えば、そうしていただいたほうが。 「プライマリーケア医とは何か」ということが、また議論になるような気がするんで す。  【高久座長】  わかりました。  【櫻井委員】  これはご発言だと言われれば、そうでなくてはいけないと言われれば、論点整理だそ うですから、反論はしませんけれども。  【高久座長】  「実地医家」という表現もありますね。  【櫻井委員】  そうですね。「専門学会の医師」に対応する形の表現だと思うんですね。  【久繁委員】  2ページ目の「健康情報センターの諸外国の情勢」なのですが、これはちょっと誤解 があるといけませんので説明しておきますと、1つはその大きな固まりの健康情報セン ターと、診療ガイドラインの情報センターと、これ、構想というか大きさと、所属する 範囲もかなり違ってきているんです。  ですから例えばイギリスだとNeLHが健康情報センターの役割を担って、ガイドラ インについてはNICEだとか、その一部の機能としてはあるのですが。例えばカナダ なんかでは、カナダの健康情報センター(ヘスル・カナダ)というのがありまして、そ れが全体的な、いろんな情報の集約利用、普及を図るところで、ガイドラインの情報セ ンターは「健康カナダ」の中にもありますし、医師会のガイドラインのそういう情報セ ンターもあると。それからニュージーランドも同じように、ニュージーランドのヘル ス・オン・ラインという一般的健康情報センターがあって、その中の一部にガイドライ ンの機能。それからガイドラインのグループがつくったウェッブサイトがあるというこ とで、前にもお話ししたのですが、大きな健康情報センターの中で、どういう機能を個 別のサブユニットが担って、なおかつそれは、ガイドラインの場合はいくつか複数のと ころがあって、それをネットワークでつないでいるというようなことだと思っていただ いたほうがいいのではないかと思います。  【高久座長】  確か、そういう話が前に出ましたね。ほかにどなたか? よろしいでしょうか。第3 回目までの検討会の論点整理ということで、いろいろご意見を伺いました。そのご意見 に従って一部修正をして、3回までの論点の整理とさせていただきたいと思います。 3.議  事  (1)わが国の健康情報センター構想について  【高久座長】  それでは本日の議題に入らせていただきます。本日は前回の議論の続きとして、健康 情報センター構想について、いろいろご意見を伺うことになっていますが、全体的な意 見交換に入る前に、開原先生から、今お手元に資料があると思いますが、わが国の健康 情報センター構想についての提案についてご説明をお伺いしたいと思います。開原先 生、よろしくお願いします。  【開原委員】  実は、多少私の個人的な意見を申し上げるつもりはあるのですが、もう少しこの健康 情報センター構想というものを整理してみたほうがいいかなと、ちょっと思いましたも のですから、少し整理をしたと、そういうことでございます。  というのは、今の論点整理をずっと読ませていただいても、まさに櫻井先生がおっし ゃったように、この中には多少あい矛盾したような意見もあるわけでございまして、そ ういう違った意見があるということを理解した上で、それをどういうふうに整理するか ということ、そしてその上でどういうふうに決めていくかということになるのではない かと思うので、やはり多少、健康情報センター構想というものを整理してみる必要があ るかなと思いまして、それでちょっとこんな資料をつくったということでございます。  一番最初の資料は、これは実は私がつくったのではなくて、前にもこういう資料が出 ておりました。だた、大変うまくできた資料だということで、改めてそこにもう一度、 皆様に見ていただいたほうがいいかなということで付けたわけでございますが、要する にこのEBMを考えていく上では、「作る」という側面とそれを「伝える」という側面 と、それを「使う」ユーザーという、その3つの側面から、やはり考えていかないとい けないということで、その3つがうまく、スムーズに動かないと、決してうまくいかな いと、そういうことだと思います。  それで、「作る」ということは、当然そこは学会とか研究者というものが関与するわ けで、それに医学雑誌というものが関与するということになろうかと思いますが、さら にその基礎になるのは臨床研究というものでありますので、その臨床研究そのものもも ちろん大事であるわけですが、それがある意味では支えて、そしてそれを整理された形 で、最終的には医学文献のライブラリーというものができていくわけであります。  世界的に有名なのは、当然でありますが“MEDLINE”とか、その他、「EM ベース」とか、いろいろヨーロッパにもありますが、わが国に唯一あるとすれば「医学 中央雑誌」というのが、明治から続いてきた……、わが国の医学文献の集約的なものが わが国にも存在していると。そういうものがやはり基礎になっていることは確かだと思 います。ただ、医学文献のライブラリーそのものでは、診療ガイドラインとかEBMに は、そのままではなかなか役に立ちにくいというところがありますので、当然その中か らこれに役に立つものを抽出して、役に立つような形に変形をしていくと、そういう作 業が必要になってくるわけでありまして、したがってその中の、そこでは「評価文献 データベース」と書いてありますが、それを改めてフィルターにかけて、少し形を整理 したようなもののデータベースを作っておくということが必要になってくる。  それをもとにして、診療ガイドラインというものができてきて、またそれが複数でき てくるわけでありますから、それがまたデータベースのような形になって、一般に提供 されるという、そういう形になるのではないかと思います。  利用者を考えるときには、利用者というのは3つあるわけでありまして、研究者と一 般臨床医と国民ということになるわけでありますが、今後の世の中で考えていくとき は、従来だと研究者、一般臨床医と。一番重要なのはもちろん一般臨床医なのでありま すが、国民というようなものも、外国などでは当然視点の中に入ってくるということ で、ある程度そこを考慮した上で、こういう問題も考えていかなければいけないだろう と。そしてまたそこの利用の、使いやすさとか内容とかいうものがまたそれを作るとい うところに必ずフィードバックされて、さらにいいものができていくと。  ですから、いったん作ってしまえばそれでおしまいだということではなくて、時代と ともに診療ガイドライン自身も変わってくるでしょうし、また使った上でそれが変わっ てくるという、そういうことにもなるわけでありますので、ある意味ではいったんこれ を始めたら止まるわけにはいかなくて、こういうサイクルをずっと流し続けていくとい うところに意味があるということになろうかと思います。したがって、これをどういう ふうに運営していくかということは、大変重要な問題でありまして、下手に始めてしま っても、あとで立ち行かなくなってもいけないということで、いろいろここの委員会で も議論があったところではないかと、そんなふうに思うわけでございます。  2枚目も今と同じようなことでありますが、今の「作る」というところを少し、さら に考えてみようと思います。今申し上げたように、医学文献データのライブラリー、こ の下のデータベースでありますが、こういうものが大変大事であるということも確かで ありますので、その医学文献ライブラリーというもの自体を育てていくということが、 わが国では比較的十分ではなかったような感じもするのでありまして、米国などの例を 見ても、国立医学図書館というようなものがあるわけでありまして。それは国立である かどうかというのは別として、要するに医学図書館というものが、中央的な形で全医学 文献を集めているような、そういう場所があると。しかし、残念ながらわが国にはまだ そういうものがないということでありますので、今からそういうものを作るということ も大変でありましょうが、しかしそういう文献、ライブラリーというものを整備してい くということも、非常に大事であると。  そしてそれをさらに、今度は評価して、ガイドラインを作りやすい形にするという、 そこの作業をして、そういうデータベースを作ると、そういうことも当然必要になって くる。そしてさらにその上にガイドラインがあるということで、今、診療ガイドライン のことが非常に議論になっておりますが、診療ガイドラインを作る上では、診療ガイド ラインというのは一番氷山のてっぺんみたいなもので、底辺にはいろいろ、さらに重要 な、かなり大きな、氷山の下に隠れているようなそういう部分もあるということを忘れ てはならないというような、そういうことでございます。  それで、それをどうやって作っていくかと。さっきのサイクルをどうやって回してい くかということが、大変大事な話になってくるわけでありますが、その次のページを開 けていただきますと、これは今までいろいろ議論が出たことを整理してみたものであり ます。いろんなご意見があったように思いますが、上からその表にしたがって、櫻井先 生のほうから日本医師会のご構想というのがあったわけでありまして、これは日本医師 会が運営主体になってやっていったらどうか、そういうことになります。  それで運営ということになると当然、財源が必要になってくるわけでありまして、お 金がなければこれだけの大きなシステムはなかなか運用できないということになります が、櫻井先生のそのときのご構想がどういうことであったか、もしかしたら違っていた かもしれないのですが、私の理解するところでは。医師会のほうは「自主事業としてや ってもいいよ」というふうにおっしゃったようにも受け取れましたので、一応そこのと ころは「医師会の自主事業」という形で書いてございます。  それから今度は一番下のほうは、「公設民営」というようなことが書いてあります が、これはきょうのこの論点整理の中にも出ていたわけでありますが、こういうものを 国が作ってはどうかと、そういう考え方もあるわけであります。ただ、国が作るといっ ても、国自体がああいうデータベースを作ったり、それから診療ガイドラインを作った りということはできないわけでありますので、当然のことでありますが、それをつくっ ていくのは学会であり、またその運営をするのは医療界の人たちであると。そういう意 味では、国が作るけれども実際に運営するのは民間であるというような、そういう形に なるということかと思います。ですからそういう意味では、この場合には、国が作ると いう意味では国費が費やされて、それに民間が委託されてその事業にあたるという、そ ういう形になるかと思います。  それでその中間的な形というようなものがあるわけでありまして、日本の場合には大 変便利というか、逆に批判もされているわけでありますが、公益法人という組織がある わけでありまして、これはちょうど国と民間の中間にあるような、そういうものだろう ということであります。したがって、国のものと医師会のようなご構想、純粋に民間で やるというものの中間的な形として、公益法人を使ったらどうだという考え方が、当然 あるわけであります。そうすると、公益法人の場合も、いろいろたくさん医療関係の公 益法人はあるわけでありまして、今、私がしておりますのも、その公益法人の1つでご ざいますが、別に私の財団を想定するという意味ではなくて、既存の公益法人というも のを使うということもあってもいいのではないかと、そういう考え方が1つあると思い ます。  それから、なかなか既存の公益法人というのは、やはりいろいろ、それぞれ定款にあ たる寄付行為というものがございますが、その寄付行為と呼ばれるものによって、それ ぞれ目的が決まっておりますので、なかなかいいものがなければ、そういうものを新し く作ってはどうだという、そういう考え方も当然あるわけだと思います。  そういうふうになった場合は、これも、お金の使い方としては、最後のその公設民営 と非常に似た形になるわけでありますが、その場合には国費を直に使うということでは なくて、国庫が補助をするという形になるとは思いますが、実質的には、国がお金を使 うという意味では同じ。そして、それにまたその公益法人自体も努力をしてお金を集め たりして、その両者を合わせて運営をしていくと、そういう形になるのではないかと思 います。  日本の国のいろんな組織のあり方を考えると、要するにここの機構では4つの運営主 体というのをあげたわけでありますが、このどれかを選定するということしかないので はないかなというふうに今、思っておりますので、こんな形で整理した上で、どれがい いかということをいろいろご議論をいただくのがいいのではないかと思いますが。  あとは、ここから先は多少蛇足として聞いていただいても結構なのでありますが、私 の個人的な感想みたいなことを申し上げるとすれば、日本医師会がおやりいただくとい うのは大変すばらしいことだと私も思ったのでございますが、この問題というのはかな り大きな財源が必要となると思いますし、またそれを医師会だけにお願いをするという のも、医学界全体として見たときには大変申しわけないような、そんな感じがするので ありまして、当然その医師会も十分な形でご参加をいただく程度のものを、ほかも大い に協力をするような形というものを考えていったほうがいいのではないかと、そんなふ うに思います。  最後のその公設民営ということは、確かに1つの選択肢としてはあり得るのではない かとは思うのですが、今の段階として、国費によって新しい組織を作るということ自体 は大変難しいことであろうかと思いますし、また国自体がこういうことを設置するとい うことが、はたしていいのかどうなのか。やはりこれは学会の話であり、医療界の話で ありますから、もしできるのであればそこで、「中立的」という言葉が適当かどうかよ くわかりませんが、国にももちろんいろいろご援助はいただくわけでありますが、その 運営自体はその中立的な形のもののほうが望ましいということになるのではないかと、 そんなふうに思っております。  そうなると、その真ん中の中立的機関のほうがいいのかなということでありますが、 公益法人、一方で今、世の中が公益法人に対する大変批判もあるところでもありまし て、新たに作るということは、それ自体がいろいろまた議論を呼ぶ可能性もあるという こともありまして、そういう意味では既存の公益法人というものの中で、何か適当なも のがないかなということを改めて探してみるということも、私はいいのではないかと、 そんなふうに思っているわけでありまして。  ただ、くれぐれも誤解のないように申し上げておきたいのは、決して私どもの財団が 適当だということをいうつもりは毛頭なくて、私どもの財団はこの場合、あまり適当で はないのではないかという感じもしておりますが。要するに広く、そういう公益法人を 今改めて見直してみて、その中で適当なものをうまく育てていくという、そういうとこ ろが一番いい方法かなというふうに、私は個人的には思っておりますが。  最後のほうは私の個人的な蛇足でございますが、前半は整理ということで、ちょっと 意見を申し上げさせていただきました。どうもありがとうございました。  (2)フリートーキング  【高久座長】  どうもありがとうございました。今、開原委員のほうから、「EBMを円滑に実施す るための流れ」ということで、ご説明いただきました。どなたかご意見、おありでしょ うか。  この「使う」の場合、「研究者」というよりは「専門医」ですかね。  【開原委員】  これは「研究者」というふうに書いてあるのは、確かにガイドラインというふうにな ったときには一般臨床医だと思うのですが、ただ世の中に提供されるのは多分、医学文 献ライブラリーとか、評価文献データベースとか、それも多分伝えるというものも対象 になると思うので、そうなってくると、一応研究者というのもそこに入れておいたほう がいいかなということでございます。  昔は、“MEDLINE”というのは研究者が扱うものだと思われていたのですが、 最近は随分話が変わってきて、一般臨床医で、さらには国民だという話に、アメリカで はなっておりますが、しかしだからといって研究者がなくなったというわけではない と、そういう意味でくっついているということでございます。  【高久座長】  わかりました。ほかにどなたか?  【櫻井委員】  1枚目、2枚目のところで、2枚目の紙の三角のものには、「ガイドラインの評価選 定」という矢印が入っているので、もしそういう意味であれば、ここは「ガイドライン データベース」というのが、下の言葉をそのままとれば、評価済みというか、評価ガイ ドラインデータベースという意味なのかなと思ったのですが、そういう意味になるとす ると、今度は1ページ目のところはここに、この三角の「評価」の部分のところが、も ともとのオリジナルのデータベースのところは評価文献になっているのですが、診療ガ イドラインのものは、そこからできたものがそのまますぐ伝えられてしまうようにも読 めるのでね。まあ2枚目を見れば、そうではないかなというふうに読めるのですが。  やっぱり、診療ガイドラインはいろいろな形でできるでしょうが、それを、評価とい っていいかどうかわかりませんが、何らかのフィルターを通してある程度、前にもお話 が出ましたように、一般に非常に使いやすくするとか、あるいは国民向けとか、そうい う何か、評価という言葉が良いかどうかはわかりませんが、少なくとも何かのフィル ターを通したものがデータベース化されるのではないかと。できたものは何でもガイド ラインとしてデータベース化されて、それがすぐアクセスできるというのは、ちょっと 問題があると思うのですが、その辺はどうなのでしょうか。  【開原委員】  確かにそうだとは思います。そういう意味で、確かにそこに評価選定という言葉を使 ってあるのですが、その点……。  【高久座長】  1ページ目も、先生、「評価文献データベース」よりも「診療ガイドラインデータ ベース」の方が小さくなっていますね。  【開原委員】  ですから本当のことをいうと、評価文献データベースの次に診療ガイドラインデータ ベースがそこからできてきて、さらにその下に、今度はその評価された診療ガイドライ ンデータベースのほうが伝えるということなのかもしれませんですね。  【葛西委員】  EBMを円滑に実施するために、「伝える」というところに恐らく入ってくるのだと 思うのですが、これらのものを、私の、一般臨床医が使うという立場でお話しします と、これがうまく使えるような「教育」というところが入ってくるともっといいのでは ないかと。ですから、ただ「ガイドラインができました」というのがホームページで見 られるというわけではなくて、それが、どういう状況のときにどういうガイドラインを 見るようにするとか、そのガイドラインをどう使うのだというような教育も、卒前・卒 後、それから生涯教育の中に入ってくるといいのではないかと。  そうしますと、われわれ、一般的な問題、複雑な問題、それから例外的な問題という 段階に応じて、あるときはガイドラインですむ。あるときは評価文献データベースまで いかなければいけない。あるときは“MEDLINE”までいかなければだめだ。そう いうときに、場合に合わせて、ではどこのところを調べたらいいのかということを教育 として伝えるような、そういう仕組みも、この「EBMを円滑に実施するための流れ」 に入れていただいたらいいのではないかと思います。  【開原委員】  全く賛成でございます。それからさっきちょっと申し上げたことに付け加えると、ア メリカの場合には、ここでも随分話題になったナショナル・ガイドライン・クレアリン グハウスは、あれに登録できるのはすべてのでき上がった診療ガイドラインだけではな いですね。確か、あそこで1つフィルターがかかっていて、ある条件のもとのものしか 登録できないということにはなってはおりますので、そこで1つ、評価というのが確か にあそこではかかっているのだと思いました。ですから日本の場合には、診療ガイドラ インというのがまだ少ないわけですから、できればそれが非常に貴重なものであるとい うことで、すぐ伝えるということに、一応今のところはなっていると思いますが、櫻井 先生のおっしゃるように、将来はそのできたものをもう一度改めて見直して、どういう ふうに使うかというところでは何らかの評価というか、そういったものが必要なのか と。  【高久座長】  使いやすさの評価が、一番下に入っていますね。それはそのことではないのですか。  【開原委員】  そうですね。これはですから国民のところに入っていますが、それだけではなくて、 もう少し全体のほうに入れたほうがいいと思います。  【高久座長】  私は、これは全体にかかっていると理解をしていました。ほかにどなたか?  「双方向性の確保」と書いていますから良いのですが、この矢印をもう少し双方向的 に書くと良いでしょうね。  【久繁委員】  先ほどから論議が続いていますが、恐らくこの「伝える」というところは、先ほども 出ましたが、基本的にガイドラインだけを伝えるのではなくて、この評価文献データ ベースというのが、いわゆる系統的評価といいますか、システマティック・レビューと かそういうガイドラインに特化しなくても日常的に非常に使えるもの、国民も臨床医 も、まあ研究者も使うかもしれませんが。そういうことで、この全体で、非常に実際の 利用度からいうと、ガイドラインは高いのかもしれませんが、二次的、もしくはその目 的に応じた形で。これ、「伝える」というところは、このシステム全体を伝えるという ことが1つと、それから前にもお話ししましたが、やはりこういう健康情報をいかに適 切に使う、もしくはそれを効率的に利用できるという、その管理、支援ですね。  だからそういうのが、健康情報センターの構成要素で必ず入っていますので、その辺 をこの全体の中でどういうふうに機能としてインプットしておくかということを、やっ ぱり明確に書いておいたほうがいいと思います。それは、ウェッブサイト上もありまし ょうし、実際にセンター機能で教育、トレーニングもありましょうし、患者向けのそう いう双方向性の情報交換というのもありましょうし、そういう多様な機能を持った形 で、訓練、支援といいますか、そういうことが非常に重要なのではないかと思います。  【高久座長】  そうですね。ほかにどなたか?  1枚目、2枚目について、いろいろご議論いただきましたが、確かに久繁委員が言わ れたように、評価文献データベースが重要ですね。一般の方が使うときに、診療ガイド ラインだけではなくて、データベースにも必要に応じて簡単にアクセスできるようにし ておく必要がある。私もそう思います。  この3枚目の「データベースの運用主体について」ということで、先ほども開原先生 からご説明がありましたが、これにつきましてどなたか?  【櫻井委員】  日本医師会の名前が出ましたから。医師会の実施事業ということで、お金がかかって 大変だろうというご配慮をいただきまして大変ありがたいので。別に、これは医師会と しての考えですが、口は出さないでお金だけ、国のほうからくれるというのならいただ きますので、別に医師会だけでなくても結構なのですが。われわれとすれば、日本医師 会も、ここには書いてありませんが、社団法人日本医師会ですから、公益法人ですか ら、既存の公益法人のわけですから、本当をいうと、「既存の公益法人を想定した場 合」の「国庫補助+民間」、つまり国の補助プラス医師会の予算でやるということも入 るかなと、われわれは思うのですが。一応それはそういうことで申し上げておくだけに します。  現実問題としては、開原先生がおっしゃったような、この辺のところで検討を進める ということで、私もよろしいかなと思っております。ただ今申し上げたように、われわ れとすれば、「既存の公益法人という1つには、日本医師会もあるじゃないか」と思っ ているということだけは、一応申し上げておきます。  【高久座長】  どうもありがとうございます。これは先ほどの論点整理の1ページ目の一番最後です ね、「最大のユーザーは日本医師会会員であるから、会員からフィードバックされる意 見が伝えられる、うんぬん」。その意味では、医師会の事業の中に重要な事業として入 れていただくと、スムーズに会員の意見が反映されるのではないかと思います。  ご質問があるのですが、中立機関というか、第三者機関でも何でも良いのですが、国 庫補助+民間経費といった場合、ある程度、例えば研究者や一般臨床医がアクセスをす る場合に、内容によってはお金をとるということを考えているのですか。開原先生、そ うですか。  【開原委員】  なかなか微妙な問題なのですが、私は情報そのものは無料であるべきだと思っている んです。ただ、だからといって、ここから先は全く私の個人の意見ですが、例えばさっ き言ったガイドラインの使い方の、例えば講習会をやるとすれば、例えばそれは有料で あってもいいし、それからそのガイドラインの例えば本を出版したとしたら、これはた だで配ってしまえばどんどんマイナスになりますから、そういうものは実費プラスアル ファぐらいの形で売ってもいいとは思いますし。それから、そういうガイドラインの使 い方の解説本みたいなものを公益法人がつくるとすれば、それは売ってもいいと思いま す。  ですから、あくまでもガイドラインそのものは無料であるべきだけれども、それに付 随するいろんなサービスというものは有料であってもいいのではないかと、私は思って おります。  【高久座長】  わかりました。ほかにどなたかご質問?  新しい公益法人をつくるということは、昨今の情勢から難しいと思います。またつく るとしても、時間とお金がかかりすぎる気がいたしますので、先ほど開原先生からもお 話がありましたように、もしも適切な既存の公益法人があった場合、これは大きな仕事 になりますので、既存の公益法人の母屋を取ってしまう可能性がないわけでもないと思 うのですが、客観的に見て適切と思われる既存の公益法人に依頼をするといいますか、 業務委託をするというような形で進めるということで、皆さん方のある程度のご納得が いただければそういうふうな形にしていただきたいと思います。  日本医師会のほうも、いろいろご計画がある様ですので、先ほども申し上げました会 員からのフィードバックという形で、この第三者機関の運営に積極的に関与していただ ければと思います。それから当然、学会のほうも、これは主にソフトの面になると思う のですが、この運営機関に対して積極的に協力をするという形をとらせていただけれ ば、データベースの作製についてもある程度の方向性が見えてくるのではないか。そう いうふうに考えていますが、いかがでしょうか。もし何かご意見がありましたら。  よろしいでしょうか。  【矢崎委員】  少し、また蛇足になるかもしれませんが、一番この中で重要なのが、この文献検索 で、評価文献データベースをどう構築するかというのが、極めて重要だと思います。 で、学会、あるいは専門家が診療ガイドラインをつくる場合には、恐らくもとにかえっ て全体的な文献から新たに評価し直して、それで独自の(独自というと語弊があります が)ブラッシュアップした診療ガイドラインを作ると。  そうしますと、先ほど久繁先生が言われたとおりだと思いますが、一般の臨床医は、 ガイドラインで物足りないときには評価文献データベースにアクセスして、自分の考え をまとめるわけであります。したがいまして、この評価文献データベースというのは、 ユーザーを視野に入れた評価ということになるかと思いますので、その点、ちょっと文 献評価のところが、ガイドラインを作成する文献データとは必ずしも一致しない可能性 があるのではないかと思います。  この1ページの図がちょっと私、気になったのは、そういうところにありまして、学 会のつくる診療ガイドラインのデータベースまで、この機関がつくるということはあり 得ないので、むしろ矢印はこのユーザーのほうに向いたほうがいいかなという感じがし ます。ですから、この評価文献データベースをどう構築するかということが、それが ユーザーの方のガイドラインをどういうふうに臨床で有効に使うかというふうにもつな がりますので、ユーザー向けの評価文献データベースをどう構築するか、ということ で、データベースの運営主体というのを考えていただければ大変ありがたいと思いま す。  【高久座長】  そうですね。診療ガイドラインのデータベースをつくるときに、評価文献データベー スに頼らざるを得ないわけですね。  【矢崎委員】  むしろ専門学会が、この一般的な文献をサーベイして、そこで改めて評価し直して診 療ガイドラインをつくるのが通常ですので、文献検索も、“MEDLINE”とか「医 中誌」を使ってピックアップはしますが、別にそれぞれ作るのではないかと思います。  【葛西委員】  この評価文献データベースを、高久先生が言われたように一般臨床医、あるいは国民 が使いやすいような形にもってくると、ユーザーフレンドリーな評価文献データベース というものの一例がこの前ご紹介した英国医師会出版部のクリニカル・エビデンスなん です。ですから、あそこでやっているノウハウとかを、われわれも参考にしたらいいの ではないかと考えております。  【櫻井委員】  我田引水になりますが、前回、「日本医師会の構想」で出させていただいたものに は、今の点は入っています。現在あるガイドラインは評価済みデータベースというのが あるわけではないわけですから、その辺にあるデータを使って、いろんなところがどん どん作ってしまっているわけですから、それをもとにした診療ガイドラインというのは もう何百もあるわけです。今後もそれはあるだろうし、もちろん評価文献データベース を使って作られてもそれは自由なのだろうし、ということもあって、前回の日本医師会 のお示しした図では、それがどちらでも矢印がいくようになっています。これは簡略化 されたのだと思うので、その辺は前回の日本医師会の図と組み合わせて図を少し書き直 していただければと思います。  【高久座長】  そうですね。  【久繁委員】  この「作る」というのが、「医中誌」の文献だけ「作る」になっていますが、実は医 学文献のこのライブラリーのもとになるものを「作る」も入りますし、評価文献の系統 的に評価したのも「作る」なんですね。ガイドラインも「作る」なんですね。ですから 「作る」はこの3つの方向性があって、なおかつそのデータベースを今度は使う側のと きにどういうふうに考えるか。ここで矢印をやっぱり大きく、使う人によって優先順位 も違ってくる。流れの大きさが違うんですね。ですから、例えば評価文献データベー ス、これ、作る場合は医学文献から作ってくるわけですから、ほかのデータベースも使 うのですが、それが矢印で入りますし、ガイドラインのときは、恐らくは、主には医学 文献のデータベースを使って、その評価文献データでも最近は簡略するために使うこと がありますので、この矢印はこちらへ2つ、「作る」側のほうへ入ってくるんですね。  ですから過程を、もう少しクリアーにしたら、流れをクリアーにしたら、もっと明確 に「作る」側も「伝える」側も違ってくると思うんです。ですから、ガイドラインの使 い方と、また評価して、コクラン・ライブラリーとかクリニカル・エビデンスとか、そ ういうものを使う場合とまた違ってくると思うんです。ですからまたそれぞれ使い方の 方法が違いますので、その辺、整理すれば、少し矢印とか流れ図を変えればほとんど改 訂できると思いますので、櫻井先生がおっしゃったように、いろいろ意見を取り入れて やったらいいのではないかと思います。  【高久座長】  医学文献ライブラリーにはここにあるような「医学中央雑誌」とか“MEDLINE ”などを使うと思うのですが、評価文献データベースを作るのは専門家ですね。ですか ら学会に協力していただくことになりますね。ですからこれを作るのが、一番大変です ね。あとはそれをどの程度利用するかは別の話になる。そうすると、評価文献データ ベースをつくって、それを皆さん方に使いやすいようにするというのが、この第三者機 関の一番大きな仕事になりますね。  ほかにどなたか、ご意見があるでしょうか。  【葛西委員】  使いやすさの評価ということが国民一般に生じ、それから研究者、専門委員からいく わけですが、その診療ガイドライン作成について、1つはその作成されたものを利用し たら、診療内容や患者のアウトカムがよくなるのかどうかということで評価しなくては いけないというので、恐らくこれ、日本でEBMが本格的に使われだす、この仕組みが 動いたあとにどうなるかということの評価の手順とか方法を、今のうちからある程度考 えていく必要があると。これはなかなか難しいと思いますが、できたら、一般臨床医が それをどう評価したのか、一般診療医の診療がどうアウトカムがよくなったか、それか ら国民がどういうふうに満足したか、国民のアウトカムがどうなったかというあたり は、かなり全国的にこれを研究しなくてはいけないのではないか。  この仕組みを作るのはなかなか大変だと思いますが、やはりやっていくような方向で いったらいいのではないかと思います。  【久繁委員】  それにつきましては、ガイドライン開発の段階から、質と使った結果がどうするかと いうのは、開発班に説明のときもワークショップを開いてやっていますし、実際に研究 班でそういう、具体的に……。まずニーズがあるかどうかというところから始めなけれ ばならない。どういう形でニーズがあるのかですね。それから、それを使ったときにど ういうふうに医療内容が変わって、質がよくなるか。それから最終的に患者さんがよく なる。これは研究班で、恐らくガイドラインの情報センターだけではない、健康情報セ ンターをつくるときも、そういうのは機能としてはかなり問題になっていましたし、恐 らく医師会の構想の中でもそういうのは入っているわけですから。  その研究費をだれが出すかというのは、国が支援してそれを厚生科学研究みたいな形 でどんどんやるというふうには思うのですが、そういうものを実際にフィードバックし て、それこそウェッブサイトに「具体的にどうなのだ」ということをのせて、患者、も しくは利用者に、臨床医を含めてフィードバックしてやっていくということは、考えら れてはいるのですが、それをどれだけ構想の中で具体的に予算化したり、方向性とし て、機能として組み込むかというのを、将来、5年か10年計画で立てるときにはステッ プ・バイ・ステップでやっていくというようなことをやったほうがいいのではないかと 思います。  【高久座長】  そうですね。診療ガイドラインが、先ほどからもお話にあります様に、いろんなとこ ろからいろんなものが出たときに、そのフィードバックを、全部にしなければならない ことになりますかね。なかなか大変ですね。  【久繁委員】  恐らくそれも優先順位があると思いますので。  【高久座長】  それはそうですね。  【久繁委員】  ですから、重要なところからやればいいですが。  【高久座長】  利用の頻度に応じてですね。  【矢崎委員】  この1ページ目の絵も少し工夫していただいて、ユーザーとガイドラインデータベー スで双方向の矢印を書きますね。で、データベースから、ユーザーのほうは使いやすさ の評価で、逆の方向で臨床での評価というふうにすれば、両方がフィードバックしてで きるということのイメージがわくと思うんです。これだとちょっと、何を言っているの かわかりにいくので、ユーザーは3つに分けないで、1つにまとめてしまったらどうで しょうかね。いろんなレベルのユーザーがいるということは、何かほかのことで工夫し て図にあらわせばいいのではないかと思います。  【高久座長】  わかりました。よろしいですか。だれかにうまい図を作っていただいて。  【開原委員】  少し私のほうもご相談にのって。今、大変いろいろ、いい意見をたくさんいただいた ので。1ついい絵を作っておきますと、非常にあとでわかりやすいので。  【高久座長】  そうですね。皆さんに理解しやすいという事で、開原先生、よろしくお願いします。 医師会のほうでも、うまい図を作っていただけると思います。  ほかにどなたか? もしほかにご意見がないようでしたら、少し早めですが、開原先 生のご意見を、ご説明くださったような形で、この検討会の方向としたいと、そういう ふうに考えていますので、よろしくお願いします。 4.その他  【高久座長】  次回の日程等については、いつごろになりますか。事務局のほう?  【医療技術情報推進室長】  次回の開催につきましては、お許しをいただけますか。 8月はさすがに先生方も大変お忙しいようでございますので、9月に入りまして、事務 局のほうからもう一度日程調整をさせていただければと、かように考えておりますが、 いかがでございましょうか。  【高久座長】  よろしいでしょうか。それでは次回は、健康情報センターの役割をどういうところに していただくのか、具体的なことについて議論を進めていただければと思います。本日 は一般論的なことについてある程度の皆さん方のご承認を得たと思います。本日はどう もありがとうございました。  【櫻井委員】  ちょっと先生、よろしいですか。さっきの論点整理の書き直し部分と、この絵の書き 直し部分というのは、もういっぺん次回の委員会に出るというふうに理解してよろしい ですか。  【高久座長】  そうですね。そのときにも直していただきます。  【医療技術情報推進室長】  これが最後ではございませんので、また今からよい案をいただきまして。  【高久座長】  そうですね。ぜひそうしていただけましたら。  【開原委員】  わかりました。  【高久座長】  それでは、どうもありがとうございました。 (了) 照会先 厚生労働省医政局研究開発振興課  医療技術情報推進室  (担当)武末、高橋  (代表)03−5253−1111 内線2589,2588