01/07/27 毒性・器具容器包装合同部会議事録 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性・器具容器包装合同部会 議 事 録              厚生労働省医薬局食品保健部基準課 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性・器具容器包装合同部会議事次第 日  時  平成13年7月27日(金)午前10時〜午後1時 場  所  三田共用会議所大会議室 審議事項 (1)器具及び容器包装の規格基準の改正について (2)おもちやの規格基準の改正について 出席委員  井口泰泉、井上達、井村伸正、大隅昇、香山不二雄、河村葉子、       黒川雄二、品川邦汎、鈴木勝士、津金昌一郎、長尾美奈子、中澤裕之、       成田弘子、西島基弘、廣瀬雅雄、福島昭治、米谷民雄、三森国敏       (敬称略) 欠席委員  江崎孝三郎、林眞、丸山務(敬称略) 厚生労働省 尾嵜食品保健部長、石井基準課長、坂本補佐 参考人   谷村雅子(国立小児病院小児医療研究センター小児生態研究部長)       外海泰秀(国立医薬品食品衛生研究所大阪支所食品試験部長)       長谷川隆一(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター総合 評価研究室長)(敬称略) ○基準課長  それでは、定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会、毒性及び器 具容器包装合同部会を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、御多忙 のところ御参集いただきまして、心より厚く御礼申し上げます。  本日は林委員、江崎委員のお2人が所用により御欠席ということでございます。本日 の合同部会は毒性部会の委員12名中10名、器具容器包装部会の委員11名の先生方におか れましては、一部おくれておられる方がございますが、全員御出席ということで御返事 いただいております。 委員の出席数は過半数に達しておりますので、部会が成立するということをまず御報告 申し上げます。  また、本日は検討の内容から、臨時委員として文部科学省統計数理研究所の大隅先 生、また参考人として、まだお見えでありませんが、特に玩具の方でお手伝いいただき ました国立小児病院の谷村先生、それから、国立医薬品食品衛生研究所大阪支所の外海 先生、国立医薬品食品衛生研究所の長谷川先生の各先生に御出席いただいております。  それでは、最初に食品保健部長から御挨拶させていただきます。 ○食品保健部長  おはようございます。食品保健部長の尾嵜でございます。委員の先生方には本合同部 会に朝早くから御出席いただきまして、ありがとうございます。また、臨時委員、参考 人として御出席の先生方にも御礼を申し上げる次第でございます。本日、合同部会を開 催いたしまして、2つの案件につきまして御審議いただきたいと考えているところでご ざいます。  1つは、昨年6月に市販弁当からフタル酸エステル類のうちのフタル酸ジ(2−エチ ルヘキシル)(DEHP)が多く検出されまして、その主たる原因が可塑剤としてのD EHPを含有するポリ塩化ビニル製手袋の使用であることが判明し、当時の食品衛生調 査会の御議論をいただきまして、可塑剤としてDEHPを含有するポリ塩化ビニル製の 手袋の食品への使用につきまして控えるようにということで関係者への指導を行ったと ころでございます。その後、後ほど御説明を申し上げますが、厚生科学研究によりまし て、油分を含む食品がDEHPを含有するポリ塩化ビニル製の製品に接触する場合には DEHPが食品に容易に移行することがより明確になってまいったわけでございまし て、そういった事柄を踏まえまして本日、器具及び容器包装の規格基準の改正について 御審議いただきたいのが1点目でございます。  2点目でございますが、おもちゃの規格基準の改正につきましてあわせて御審議をお 願いいたしております。ポリ塩化ビニル製の玩具からのフタル酸エステル類の溶出等に つきましては平成10年度から厚生科学研究によります調査研究を行ってきたところでご ざいます。こういった研究等におきまして、乳幼児が物をしゃぶります mouthing 行動 の実態調査から、元来しゃぶることを目的としております「おしゃぶり」についてはか なり長時間口に含んでいる場合があること、また、フタル酸ジイソノニル(DINP) を含むポリ塩化ビニル製の試験片を成人がかんだ後の唾液中へのDINP溶出試験から 口腔内でのフタル酸エステル類の溶出のばらつきが大きく、多量に溶出する場合がある ことも判明しておりまして、得られたデータにつきまして御検討いただき、それを踏ま え、おもちゃの規格基準の改正について御審議をお願いしたいのが2点目でございま す。  いろいろな研究結果も含めまして、今日、資料を用意いたしております。どうか先生 方には2点につきまして御審議をよろしくお願い申し上げる次第であります。本日はど うもありがとうございます。 ○基準課長  それでは、本合同部会の座長につきましては、器具容器包装部会長でいらっしゃいま す井上委員にお願いしたいと思いますが、よろしくお願いします。 ○井上座長  座長を承りました器具容器包装部会長の井上でございます。委員の皆様におかれまし ては、本日は多少ゆるいだとはいえ、お暑い中御参集くださいましてまことにありがと うございます。  早速でございますが、まず資料確認を事務局からお願いいたします。 ○事務局  本日、先生のお手元に置かせていただきました資料としては、一番上に座席表を置かせ ていただいております。その次に、一番上に「写」という丸いマークがついております が、諮問書を置かせていただいております。そして、資料一覧という1枚紙、その次に 右肩に参考資料と書いてあります食品衛生法関係の抜粋の資料を置いてございます。そ れから、厚くファイルになっております。中身は一番上に議事次第ということで、その 後に名簿と資料1から10までがついておりますが、これにつきましては先生方に事前に 送らせていただいたものと同じものをもう一度お手元に用意させていただいておりま す。本日お手元にお配りしております資料は以上でございます。もし不足等がありまし たらお申し出いただきたいと存じます。 ○井上座長  ありがとうございました。資料はそろっておりますでしょうか。もしそろっていない 先生がおられましたら、お手を挙げていただければ届けます。よろしゅうございます か。  それでは、審議に入りたいと思います。  まず最初に、冒頭、食品保健部長からもお話がございましたように本日は、フタル酸 エステル類を可塑剤として含む塩化ビニル製の器具容器包装の件及びおもちゃの規格基 準の改正、この2つについて御審議いただきたいということでございます。本件につき ましては厚生労働大臣より薬事・食品衛生審議会に諮問されたものが本合同部会に付託 されているということでございますが、本諮問の概要等について、まず事務局から御説 明いただきます。 ○事務局  それでは、一番上に丸く「写」というマークのついております資料をごらんいただき たいと思います。本日付の諮問書でございます。「食品衛生法第10条第1項及び第29条 第1項において準用する第7条第1項の規定に基づき、下記の事項について、貴会の意 見を求めます」ということでございます。1番目が器具及び容器包装の規格基準の改正 について、2番目がおもちゃの規格基準の改正でございます。  1枚めくっていただきますと、器具及び容器包装の規格基準の改正につきまして、ま ず諮問の概要でございますが、フタル酸エステル類を含有するポリ塩化ビニルに関し、 器具及び容器包装の規格基準を改正することについてでございます。  諮問の背景といたしましては、平成11年度の厚生科学研究等により市販弁当にフタル 酸ジ(2−エチルヘキシル)、以下「DEHP」と言いますが、それが検出され、当該 物質の弁当への移行の主たる原因が可塑剤としてDEHPを含有するポリ塩化ビニル製 手袋であることが判明したことから、当該手袋の食品への使用を避けるよう、平成12年 6月14日に厚生省生活衛生局食品化学課長通知により指導したところでございます。  その後、平成12年度の厚生科学研究により、油分を含む食品にDEHPを含有するポ リ塩化ビニル製製品が接触する場合にはDEHPが食品に容易に移行することがより明 確になったことから、規格基準の改正について御審議をいただくものでございます。  もう1枚めくっていただきますと、おもちゃの関係がございます。諮問の概要は、フ タル酸エステル類を含有するポリ塩化ビニルに関し、おもちゃの規格基準を改正するこ とについてでございます。  背景といたしましては、厚生科学研究における乳幼児の mouthing 行動の実態調査か ら、元来しゃぶることを目的としている「おしゃぶり」についてはかなり長時間 mouthi ng する場合があることが判明したこと、フタル酸ジイソノニル、以下「DINP」と言 いますが、それを含むポリ塩化ビニル製試験片を成人が chewingした後の唾液中へのD INP溶出試験から、口腔内でのフタル酸エステル類の溶出のばらつきが大きく、多量 に溶出する場合があることが判明したことなどを踏まえ、おもちゃの規格基準の改正に ついて御審議いただくものでございます。  諮問の概要については以上でございます。 ○井上座長  どうもありがとうございました。  この問題は今御説明がありましたように2点、器具及び容器包装の規格基準の改正に ついて、おもちゃの規格基準の改正についての審議に入りたいと思います。いずれも御 説明にありましたようにフタル酸エステル類に関係する問題である。まず最初に、フタ ル酸ジ(2−エチルヘキシル)、あとは「DEHP」と申しますが、それと、フタル酸 ジイソノニルの毒性について御議論いただきたいと思います。  事務局から関係の資料の御説明をお願いします。 ○事務局  今回、フタル酸エステル類に関する毒性評価につきましては市販弁当中にかなりの量 が検出され、食品衛生上の問題になりましたDEHPと、本日2番目の議題にあります おもちゃに最もよく使用されているDINPの2種類について行っております。今後も 必要に応じ化学物質の毒性評価を実施していく所存でございますが、今回は優先順位の 高いこの2品目についての評価を行っております。  DEHPにつきましては、昨年6月の段階で評価を行っております。まず、資料1の 5枚目を開けていただきますと、左上に別添2と書いてありまして、DEHPの安全性 評価について(概要)がございます。こちらの方で昨年6月の段階で評価をいただいて おりまして、結論といたしましてさらに1枚めくっていただきましたところの真ん中 辺、耐容一日摂取量(TDI)ということでございますが、DEHPのTDIについて は精巣毒性及び生殖毒性試験におけるNOAEL3.7mg/kg/day及び14mg/kg/day から不 確実係数 100を適用して、当面のTDIを40〜140μg/kg/dayとすることが適当である となっているものでございます。  今般、資料2の方で、DEHPの毒性評価につきまして、昨年の評価にさらに追加い たしまして知見の整理を行っております。資料2の内容につきまして簡単に御説明いた します。  1ページから体内動態がございます。まず、吸収でございますけれども、消化管吸収 については大きな種差があることが言われているという整理を1ページの真ん中辺に書 いてございます。1ページの下の方に、DEHPの加水分解産物のmono(2-ethylhexy l)phthalate(MEHP)の経口のときのデータとして約80%の吸収といったデータが ございます。  2ページにいきまして、ヒトのデータが2ページの上3分の1ぐらいのところからご ざいますが、志願者に30mgのDEHPを経口投与したところ、24時間以内に投与したD EHPのうち約13%が代謝物として尿中に排泄されたというデータがございます。同じ 志願者に10mgを4日間投与した場合も同様の結果が得られている、ただし、彼らは糞中 への排泄量は調べておらず、胆汁中排泄も想定されることから、吸収率はこれ以上であ るという推定がございます。 この結果から、ヒトでのDEHPの消化管吸収はラットより少ないが、マーモセットと 同じ程度であることが示唆されるというまとめでございます。  その次のところで分布についての情報を2ページの真ん中辺から以下にまとめてござ います。 3ページに代謝がございますが、DEHPの代謝の最初の段階は主に腸内での加水分解 によるMEHPと2−エチルヘキサノールの生成ということでございます。その後の代 謝の過程はかなり複雑でございます。そして、代謝の関係ではグルクロン酸抱合体の尿 中排泄がヒトを含む霊長類では高いことがわかっております。ラットでは、このグルク ロン酸抱合体の尿中排泄等は認められておりません。  排泄につきまして、表1がございます。こちらは資料の後ろから2枚目の表でそれぞ れの動物のデータを整理してまとめてございます。経口投与されましたDEHPは速や かに尿及び糞中に排泄されますが、尿中からはDEHPはいずれの種でも検出されてお りません。DEHPそのものは検出されていないということでございます。  4ページに移りますと、マーモセットでは多くは糞中に排泄されまして、尿中排泄量 は4から30%と少なかったという情報がございます。カニクイザルのデータが真ん中辺 にございますが、こちらでも尿中排泄は20から55、高用量で4から13%、糞中排泄はそ れぞれ49から39%、高用量の場合は69から56%というデータがございます。ヒトに関し まして4ページの下の方、10行目ぐらいのところから志願者に30mg経口投与した結果が ございます。こちらでは11〜15%が投与後2〜3日のうちにMEHPあるいは多くがグル クロン酸抱合を受けた酸化体として尿中に検出されております。単回投与の研究では尿 中代謝物の99%がグルクロン酸抱合体というデータがございます。DEHPの血中半減 期はヒトで28分という報告もございます。  そして、5ページの上の方に新生児関係の情報として3カ月齡までグルクロン酸抱合 活性が成熟しないことに関しての情報がございます。このものにつきましては、精巣毒 性が前回の評価でも問題になっているわけでございますが、5ページの2番のところで 精巣毒性について、 (1)としてフタル酸エステル類の精巣毒性発現の構造依存性について整理しております。 こちらの表2は一番最後のページに載っております。フタル酸エステル類によるラット 精巣毒性の無毒性量及び最小毒性量という表がございます。こちらを見ていただきます と、真ん中辺にDEHPがございまして、無毒性量が 3.7、最小毒性量が37.6というこ とでございます。後ほど出てまいりますDINPにつきましては下から4番目にござい ますが、こちらで一番小さい数字が真ん中のF344ラット、2年間混餌の 307という無毒 性量のデータがございます。  5ページに説明を戻らせていただきますと、精巣毒性はDIBPからDHpPまでの フタル酸エステル類に認められているものの、その毒性強度は直鎖型のC4〜C6とい う構造のところで強く発現しております。明確な無毒性量が求められているのはDEH Pだけということでございます。   (2)の方でDEHPの精巣毒性の発現機構ということです。フタル酸エステル類はモ ノエステル体に加水分解された後、吸収されると考えられているため、この分野の研究 がモノエステル体(MEHP)を用いて行われているわけでございます。ここにござい ますように、MEHPの作用点は細胞膜またはFSH受容体そのものであるという文献 があり、その後、MEHPの作用部位はFSH受容体よりむしろG蛋白であろうという 推定が出てきております。6ページの方でさらに新しい知見といたしましては真ん中の ところにMEHPの作用機構について図2のBに示したような仮説を立てたという文章 がございます。 図2のBはこの資料の後ろから3枚目でございます。MEHPのセルトリ細胞への作 用による原生殖細胞のアポトーシスの推定作用機構ということでございます。メカニズ ムについてはかなりいろいろな検討がなされておりまして、この絵に示したようなメカ ニズムまで仮説として提示される段階まで検討が進んでいるわけでございます。  DEHPの精巣毒性評価につきましては6ページの下から、文章は7ページからでご ざいますが、先ほどのところでも申しましたように無毒性量3.7mg/kg/dayという報告が ございます。 その後、104週間混餌投与発がん性試験の結果も報告されておりまして、その結果の無毒 性量は5.8mg/kg/dayが適切と判断されるという情報がございます。新生児ラットにおけ るDEHPの精巣毒性感受性は若齢ラットと同程度であることを示唆しているという データも出ております。  一方で、カニクイザルに関しましてはDEHPを500mg/kg/dayで14日間投与しても精 巣に変化の見られないことの報告がございます。また、マーモセットにおきましても精 巣毒性が発現していませんことから、ヒトにおいて精巣毒性が出る懸念は低いと考えら れております。  しかし、サルで精巣毒性の発現しないメカニズムが十分解明されていないことから、 現時点ではDEHPのTDIの根拠としては無毒性量3.7mg/kg/dayを用いることが適切 と考えられるということでございます。  その下、生殖・発生毒性につきましてはこの頁の真ん中辺にございますが、NOAE Lが 14mg/kg/dayという情報がございます。生殖毒性のNOAELとしてはこれをとる ことが適切という判断ができるということでございまして、結論といたしましては昨年 と同様、DEHPのTDIは精巣毒性試験及び生殖発生毒性試験における無毒性量 3.7 〜14mg/kg/day を踏まえて安全係数 100をとり、40〜 140μg/kg/dayとするという整理 をしてございます。  資料3に続けてよろしゅうございますでしょうか。続きまして、資料3の説明をさせ ていただきます。  資料3はフタル酸ジイソノニル(DINP)の毒性評価について概要をまとめたもの でございます。  まずDINPにつきましては、その構造と製品というところでございますが、製品と しては3種類ございます。実際には2つのものしか現在使われておりませんが、DIN P−1と呼ばれるものとDINP−2、DINP−3というもの。DINP−3につい ては現在製造されていないようでございます。DINPはいろいろなものの混合物とい ことでございます。アルコール側鎖には多くの異性体がございまして、混合物としてD INPということになっております。  体内動態につきましては、吸収については約2,500mg/kgをラットに経口投与したとき の結果では72時間以内に85%が糞中に、12%が尿中に排泄されております。糞中排泄の ほとんどが24時間以内に認められましたことから、経口での吸収率は大体12%という推 定もございます。 消化管吸収に関する報告の中から代謝には飽和があることが考えられるという報告もご ざいます。  DINPはモノエステル体へと脱エステル化された後にエステル基の側鎖が酸化を受 けるか、あるいはさらに加水分解されてフタル酸に変換して、用量が高くなると酸化体 の割合が上昇してフタル酸への加水分解が低下します。  分布につきましては、ラベルをしたデータ等がございますが、蓄積性は認められてご ざいません。  このものの排泄、主たる排泄経路は尿と糞ということで、低用量では両者ほぼ同程度 でございますが、用量が高い場合には糞中排泄が多いということでございます。  3の一般毒性及び発がん性でございます。2ページの真ん中辺でございますが、まず 雌雄F344ラットにDINP混餌食を2年与えた結果でございますが、その結果から出て きますNOAELは15mg/kg bwということでございました。DINPによる肝ペルオキ シソームの増殖作用が3ないし13週間の試験では 0.6%以上の投与量で認められており まして、その作用には代謝物である monoesterが関与しているということでございま す。  2ページの下の方にございますように、腫瘍性病変が 1.2%投与の雄で肝細胞がん、 雌雄で肝細胞腺腫の発生頻度が有意に増加といった情報もございます。  3ページに移りますが、真ん中辺でございます。DINPは Ames assayやラットの初 代培養肝細胞を用いたUDS試験等、そういった試験でいずれも陰性でございました。 マウス骨髄を用いたin vivo の染色体異常試験では最高用量が5mg/kg bwと低いもので すが、陰性でございますので、非遺伝毒性発がん物質と考えられております。  一般的にペルオキシソーム増殖剤による肝発がんにはペルオキシソーム増殖に基づく acyl CoA-oxidaseの誘導といったものがございます。そして、DINPによるプロモー ション作用はこれまでの情報から証明されておりません。  4ページでございますが、上から6行目ぐらいのところでペルオキシソーム関係の結 論としましては、ペルオキシソームの増殖によって発生する種々の毒性や発がん性はヒ トには外挿できないということをここで考察しております。  このもののホルモン受容体関連反応性、3ページにも同じような記載がございます が、ここでまとめてございます。エストロジェンのリセプター結合試験においてはDI NPはこれに結合能を認めておりません。組換え酵母を用いたレポーター反応について は、DINPは 100万倍希釈の estradiolに対しこの15%程度の反応性を持つ弱いエス トロジェン様作用が検出されております。  哺乳動物細胞系では、ヒトの乳がん細胞由来のMCF−7を用いたE−スクリーンの 結果によればDINPは反応しておりません。  それから、Gal-4ルシフェラーゼレポーター導入による一過性形質導入系の試験でも 陰性、Hela細胞へのGal-4安定形質導入系でも陰性という結果でございます。  個体動物試験系でも子宮肥大(子宮湿重量)や膣上皮角化反応が認められていないと いうのがホルモン受容体関連反応の情報でございます。  このものの精巣毒性につきましては4ページの真ん中辺、5としてまとめてございま す。結論のところですが、霊長類の試験でもいずれも精巣に対する毒性は認められてお りません。DINPは通常の暴露ではヒトに対しても精巣毒性を発現する可能性は極め て低いと考えられます。  4ページの下の方、6の生殖毒性につきましては、SDラットにおける1世代試験で 生殖指標への影響は認められておりません。DINPの生殖毒性に関してはいずれの試 験でも毒性発現は認められていないということでございます。  5ページから発生毒性がございます。発生毒性の無毒性量はSDラットでの試験から 100mg/kg/dayという結論が出ております。そのほかの試験として5ページの真ん中より 下の辺でございますが、母体毒性及び発生毒性の無毒性量をともに200mg/kg/dayと結論 としている試験もございます。こういったことをあわせますと、5ページ、発生毒性の 最後のところですが、以上の情報からDINPの発生毒性の無毒性量は100mg/kg/dayが 適切であると考えられるということになります。  結論といたしますと、毒性が一番強く出ているものは2年の混餌投与試験でございま して、その無毒性量15mg/kg/day を踏まえて、安全係数として 100をとって、TDIを 150μg/kg/dayとするのが適当ということが結論でございます。  資料2と3の説明は以上でございます。 ○井上座長  どうもありがとうございました。  DEHPにつきましては以前まとめたものに新しい資料を加えた形での内容になって おりますし、またDINPについては今回新たに御説明いただいたわけでございます が、この毒性評価に参加していただいた長谷川先生に、御追加があったら少し説明して いただこうと思います。 ○長谷川参考人  今しっかり説明していただきましたので、特に追加する内容はございませんが、昨年 からこの1年間で新しい資料が数件出ておりますけれども、その資料によって新たな解 釈といいますか、安全性のレベルを変えるだけの資料はないということで、昨年の評価 をそのまま踏襲したいと考えております。 ○井上座長  DEHPにつきましてはそういうことですけれども、何かつけ加える点など知見をお持 ちの先生、あるいはただいまの事務局の御説明内容等についてわかりにくいところとか 不明の点がございましたら、どうぞお願いいたします。 ○福島委員  一つ確認ですが、資料2の3ページ、 (4)の排泄で確認したいのは、「DEHPは速 やかに尿および糞中に排泄されるが、尿中からはいずれの種でも検出されていない」と いうところは理解が。 ○井上座長 文章的にですか。 ○福島委員 ええ。「尿」というのとか、片一方で「排泄される」、片一方では「検出されていな い」というのはどういう意味かということは、表を確認してみないといけないと思いま すけれど。 ○井上座長  これはどうなりますか。 ○長谷川参考人  私の担当分ではないのですが、これは、いわゆる糞中排泄はDEHPそのもので、尿中 排泄は吸収される前に加水分解されて、かつその後、代謝され、抱合体となるというこ とで、今おっしゃられたようにこの文章は適切ではないと思いますけれども、内容的に は糞中排泄はそのまま、尿中排泄は加水分解され、代謝され、抱合体等になって尿中に 出てくるという意味でございます。 ○井上座長  では、そういう内容で御理解いただいて、修文の方は事務局にお任せいただきたいとい うことでよろしくお願いいたします。 ○福島委員  承知いたしました。 ○井上座長  ほかにそういった点も含めてお気づきの点はございませんか。 前回御討議いただいたことにつけ加えることが余りありませんでしたから、これはこれ でよろしかろうと思います。  それでは、DINPの方にまいりましょう。長谷川先生、DINPについてもいかが でしょうか。 ○長谷川参考人  DINPのことについて、まずDEHPは精巣毒性が非常にクリアに出ているという ことで同じようにDINPについても検索いたしました。ここに載っているレファレン スの数は少ないのですけれども、実際にはヨーロッパの企業内データも非常にたくさん ございまして、全部で十数件のラット、マウスの精巣を精査した試験がございます。い ずれの試験においてもDINPは精巣毒性を示さない。さらに、霊長類の2つの試験に おいても精巣毒性が認められておりません。構造活性相関といいますか、側鎖の長さ等 を踏まえましても、精巣毒性に関しては発現する可能性はほとんどないと理解してよろ しいかと思います。  続きまして、一般毒性の発がん性試験でNOAELを15mg/kg/day と判断させていた だいておりますが、実際には上のドースで認められておりますもの、上のドースといい ますのは約10倍高いドースでございますが、ここで肝臓及び腎臓の比重量の増加が約10 %程度ございます。 「一時的な」というのは、2年間の試験で6カ月とか18カ月の途中の段階で一部で40% 程度のGOT、GPTあるいはアルカリフォスフォターゼの増加が認められたケースが あります。 さらに、これは統計学的には有意ではございませんが、肝臓での限局性壊死とか細胞肥 大が幾らか認められております。程度は軽微と判断いたしました。しかしながら、全体 的に上のドースではごく軽度の肝障害を示していると考えております。  一方、この動物はF344ラットですが、単核球性白血病が有意に増加しております。こ の白血病に関してはF344ラットに特有の病変であるということで、ヒトには外挿できな いと考えられております。この実験者はこれらの肝臓での変化がこの白血病から二次的 に起きているのではないかと判断しておりますが、我々はそれを確実に分けることはで きないだろうということで、この肝臓への変化を採用して下のドースの 15mg/kg/dayを NOAELといたしました。しかしながら、上のドース、約150mg/kg/dayで認められた 変化もごく軽微でございますので、この15mg、すなわちTDIといたしますと 150μg/k g/dayを実際にはある程度以上上回ってもそれほど有害な影響が出る可能性は少ないの ではないかと考えております。  以上でございます。 ○井上座長  どうもありがとうございました。  それでは、DINPにつきましては新たな資料とその説明をいただいたわけでござい ますので、少し時間をかけて御議論いただきたいと思います。もちろんDEHPについ ても御一緒に御討議いただいて結構ですけれども、どなたか御発言はございませんか。  今の御説明のようにDEHPとDINPは毒性の点で異なっておりますし、標的臓器 (ターゲット・オルガン)も違っておりますし、その強さも違っておりますけれども、 いかがでしょうか。 ○三森委員  長谷川先生にお伺いしたいのですが、今のフィッシャー344 ラットでの発がん性試験 で資料3の2ページの下から4行目に「雄の 0.6%以上で腎腫瘍の増加がみられた」と 書いてあり、これについて腎腫瘍が alpha2u-globulin沈着による二次的な影響と判断 されておりますけれども、今までのフタル酸エステル類系でそういう腎腫瘍が出てきて いるものは見かけないんですね。それと alpha2u-globulinがこのようなフタル酸エス テルでたまってくるという情報もここで初めて見せていただいたのですけれども、その 辺について文献を読まれてお感じになったことを教えていただけたらと思います。 ○長谷川参考人  その種の情報は二、三ございます。フタル酸エステルの側鎖が長くなりますと、どう も alpha2u-globulinとの結合での沈着ということで腎障害、腎腫瘍が発現するという 文献が実際に二、三ございます。私は担当ではなかったので直接この文献を精査してお りませんが、そういう事実はございます。 ○井上座長  今の点についてつけ加える点はございませんか。よろしゅうございますか。 ○福島委員  長谷川先生にもう一度確認したいのですが、今の2ページのフィッシャー系ラットの 発がん性試験で単核球性白血病がフィッシャーラットに特有の病変であり、ヒトには外 挿できないと考えられるというところをもう一度御説明いただきたいと思います。とい うのは、このことでもってリスク評価したときにヒトでほかの白血病が発生する可能性 はどのようにしてできるかということなのですが。 ○井上座長  今の御質問の意味の了解はよろしいですか。 ○長谷川参考人  ちょっとわかりにくかったのですが、すみません。 ○福島委員  このフィッシャー系ラットに単核球性白血病が特有の病変であって、そしてヒトには 外挿できない。それで、要するにヒトに白血病が起こる可能性はないだろう、この単核 球性白血病が出る可能性はないだろうということですね。ですけれども、こういう白血 病が出るということから見ると、ヒトに単核球性白血病以外の、もっとポピュラーな白 血病が出る可能性はどうなのか。そこで、これは特にフィッシャー系ラット特有だから 白血病は問題ないと言っていいのかどうかということですが。 ○井上座長  いかがですか。 ○長谷川参考人  それについて私はお答えできないのですけれども、廣瀬先生、いかがですか。 ○井上座長  難しい質問ではありますね。 ○廣瀬委員  そうですね。 ○井上座長  長谷川先生、単核球性白血病についてはペルオキシソームプロリフェレーションとリ ンクさせて理解するんですか。 ○長谷川参考人  ここでは別です。この実験ではペルオキシソームの増殖もほとんど認められていない という理解でございます。 ○井上座長  ですから、単核球性白血病についてはフィッシャー特有だというところだけですね。 福島先生、これは割とフィッシャーにリンクして出ることはむしろ先生の御専門です ね。 ○福島委員  実は悩んだんですね。 ○井上座長  フィッシャーについてはいかがですか。 ○香山委員  私もそのことは聞いてはいたのですけれども、自然発症でどのくらいのパーセンテー ジで起こるかということを併記したらいかがでしょうか。 ○井上座長   100%出ますからね、それは確かに。 ○香山委員  そういうふうに何年間、自然の状態で飼っていても何%ぐらいに起こるということを 併記した上で評価の参考にするというのはいかがでしょうか。 ○井上座長  長谷川先生、今の香山委員からの御提案はいかがですか。フィッシャーはライフタイ ムスタディをやると、ほかの病気で死なない限りはこの種の白血病が 100%出ますね。 それがある意味ではこのケースでは早く出るわけですね。そのことを評価に入れます か。  その前に長尾先生の御意見はいかがですか。 ○長尾委員  これは発症時期がコントロールに比べて早いんですか。 ○井上座長  増加は認められなかったということだから、早くない……。 ○長谷川参考人  雌では死亡率の増加が認められておりますので。細かい解析は今すぐにはお答えでき ないのですか。 ○井上座長  各委員から出たお考えを総合すると、フィッシャー特有の単核球性白血病であること は皆さんもよく御存じで了解の上の問題で、その事実を示して、それから速く増加して いるのを文献との関係で事実関係を正確に記載し直すことにいたしましょうか。そうい うことで今御発言のあった先生方はよろしゅうございますか。  フィッシャー特有の疾患としてヒトに外挿がやや困難な疾患であるという理解という ことがよりわかりやすい文章に修文すると御理解いただきたいと思いますが、実験動物 学とヒトへの外挿というのは根本的な問題がどうしても残りますから、そこはいたし方 ないのだろうと思いますけれども、多少わかりやすくしようということでございます。 事務局、よろしゅうございますか。 ○事務局  はい。 ○井上座長  さて、ほかにはいかがでしょうか。  鈴木委員あたり、お気づきの点はございませんか。 ○鈴木委員  まず、ちょっと不正確なものではないかと思うのですが、2ページから3ページにか けてフィッシャーの慢毒というか、発がんのあれがあるのですが、3ページの一番上の 行で「最低用量の 0.05 %(36.4mg/kg/day)雄でも」となるけれども、2ページの「 Mo oreら」の話からすると、36というのは雌の方の話になるんですね。これはどちらがどう いうふうになっているのでしょうかという単純な疑問が一つあります。 ○井上座長  一つ一つやりましょうか。だれかに答えてもらうわけにもいかないけれども、事務局 でお答えになりますか。 ○廣瀬委員  ここは文献にまで戻って確認しないと。 ○井上座長  そうですね。長谷川先生は何か記憶にありますか。 ○長谷川参考人  これは廣瀬先生が担当のところですので。 ○井上座長  いきさつまでは正確にはつかめないようですが、ほかにございませんでしょうか。あ とは毒性の専門にかかわらない率直な御質問とか、そういったものもあってよろしいか ろうと思います。 ○鈴木委員  がんのことではないのですが、いいですか。発生とか生殖の方の話ですが、一応3 ページあたりにエストロジェンリセプターとの結合等々でDINPがネガティブである ということが書かれていまして、精巣毒性に関してもアダルト、もしくは比較的若いと ころから投与した場合には影響はないとなっているのですけれども、5ページの Waterm an の実験のところが若干気になるかなというところがあります。  8の結論の前のところですけれども、妊娠14日から分娩後3日までで 750mg/kgで低頻 度ながら雄の子供に精巣の萎縮その他、どちらかというとアンティアントロジェニック なのか、エストロジェニックなのかよくわからないのですが、またAGDの短縮がさら に高濃度で認められているというので、この辺がどういう機序なのでしょうかというの が問題としては残るのではないかと思うのですけれど。 ○井上座長  この点についてはいかがですか。江馬先生あたりを参考人としてお呼びいただいてお くとよかったかもしれませんけれども、このドースは機序の問題は正確にはわからない と思いますけれども、ドースが非常に高いというのが恐らくこれまでの議論の中では、 前のDEHPの方でさえもそれほど強くないけれども、まだ少し低いドースが精巣毒性 に引っかかっていたわけですけれども、これに至ってはそういう意味では弱いというこ とが明らかですね。井口先生、機序について何かありますか。 ○井口委員  難しいところですね。ちょっとよくわかりませんが、全く反対の現象になっているの で、どちらとも言えないです。 ○井上座長  そうですね。あるいは両方が拮抗した形で起こっているのかもしれませんけれども、 正確にはわからないようですね。むしろ鈴木委員も御専門で何かお考えがあれば記録に 残しておいていただければと思いますけれども、ほかにはございませんでしょうか。 ○福島委員  3ページの真ん中から下のところですが、「一般的にペルオキシソーム増殖剤によ る」というカラムのところです。そこで御検討いただきたいのは、そのカラムの5行目 のところで「また、プロモーション作用もDINPでは証明されていない」と書いてあ りますけれども、これは誤解を招くような文章ではないかと思うんです。  上に書いてありますように Peroxisome proliferatorは一般的に細胞増殖作用を持っ ていて、それがプロモーション作用と関連しているという理解でこの発がんは解釈して いるわけですが、確かに実験的にプロモーション作用がDINPについては本当にそう いう実験があるのかないのかというのが1点と、実験があってもプロモーション作用が ないと証明されていないというのはないという意味なのかとか、いろいろな意味が入っ てくると思うんです。 ですから一般論にしておきまして、「また、プロモーション性もDINPでは証明さ れていない」というところを削除した方が理解しやすいのではないかと思うんですが。 ○井上座長  なるほど。では、これはそういうふうにいたしましょうか。 事務局、「前がん細胞の成長(プロモーション)作用など」の「プロモーション作用 もDINPでは証明されていない」という文章を削除する。「また、」以降ですね。よ ろしくお願いします。 ○事務局  はい。 ○井上座長  ほかにはございませんか。 ○河村委員  私は毒性の専門ではないので素朴な質問ですけれども、DEHPのTDIですけれど も、前回も今回も40から 140という幅があるわけですけれども、摂取量の方から考えた ときに40から 140というのはどういうふうに解釈したらいいのか。これは40の方に若干 重みを置いて考えさせていただいてもいいものなのかどうかということをお聞きしたい のですけれど。 ○井上座長  この問題はお答えがやや難しいのではないかと思うんです。というのは、毒性評価の 方は忠実に元資料が、文献から出てくる数字がそうなっているんです。そういうふうに しか評価のしようがない形になっていますので、それをどう扱うか、どう考えるかとい うのはむしろここの委員の先生方にお考えになっていただくことだと思うのですけれど も、長谷川先生、それはどうですか。 ○長谷川参考人  意見はありますが個人的になってしまいますので、委員の先生方で御判断していただ きたいと思いますが、この前も廣瀬先生もお話しされたと思うのですが、根拠になって いるNOAEL3.7 というのがございます。その上のドースはその10倍で、37という数 字です。そこで起きている変化は精巣での変化、精細管萎縮は全く認められておりませ ん。セルトリ細胞における軽度の液胞化が見られている。これをとりあえず毒性ととり ましょうと。ただ、病理の関係の方の中でも必ずしもこれは毒性としてとらなくてもい いかもしれないというところが10倍上のドースである。だからそういう意味で、それが 情報ですということでございます。 ○井上座長  そうですね。その両方をとりあえずとる立場でとったということです。ですから両方 にまたがってしまったのですけれども、廣瀬先生、何かコメントはありますか。 ○廣瀬委員  ありません。 ○井上座長  そういうことですね。では、それはそういう理解をしていただいて、ウエートの問題 は各委員の先生方の御判断ということで、結果的には安全の側にウエートを置けばとい う考え方がそこに入り込んでくる。毒性の問題と直接関係なくなるんですね。そういう 理解をしていただくのがいいのではないかと思いますが、井口委員、どうぞ。 ○井口委員  細かいことですが、資料3の4ページの4のホルモン受容体関連反応性についての3 行目あたり、「Harrisらによれば」という文章がわかりにくいと思うんです。だから文 章を変えた方がいいかと思うのですが、 100万倍希釈のestradiol に対してその15%程 度ということを言われても、実際にどれぐらいの濃度で反応があったか。これは 100% に対して15%なのかという反応の強さを言っているだけだと思うんです。ですから、濃 度が振ってあっても何で……。 例えばここに濃度を書き込んだ方が。 ○井上座長  直接濃度を入れるということですね。 ○井口委員  はい。 ○井上座長  事務局、そのようにお願いいたします。  それでは、大体御意見、質疑応答していただいたと思いますので、次に河村先生から も出ましたDEHPのTDI40〜140μg/kg/day、DINPのTDI 150μg/kg/dayを前 提にして次の議論に進むことになるわけですけれども、こういう理解で議題1の器具ま たは容器包装の規格基準の改正についてどういうふうに進めるかという審議に移ってい きたいと思います。  事務局は資料がございますか。 ○事務局  それでは、器具または容器包装の規格基準関係の資料を順に御説明させていただきま す。  一番最初の資料1をごらんいただきたいと思います。その最初のところですが、そも そも冒頭御説明しましたように、平成11年度の厚生科学研究の概要というところがござ いますが、特に市販の弁当からDEHPがかなりの濃度で検出されたということがこの 問題の端緒でございます。そして昨年御審議いただきまして、DEHPを含有するポリ 塩化ビニル製手袋の食品への使用を避けるよう指導をしているところでございます。  資料4を見ていただきたいと思います。資料4は結果が図表でまとまっていてわかり やすくなっておりますので、そちらを見ていただくのがよろしいのではないかと思いま す。右下の方に11と書いてあるところからが図表がまとまっているところですので、そ ちらを開けていただければと存じます。  まず Table1でございますが、ポリ塩化ビニル製の手袋の中のDEHPについてAか らEの5つの機関で測定してみた結果でございます。かなりきっちりと測定できている という、ばらつきが余りないデータでございます。手袋(1)がDEHPを40.4%、手袋 (2)が20.5%含むということでございます。  その次の12ページのFig.1 でございますが、こちらはn−ヘキサンにDEHPがどれ だけの時間で移っているかということを示したものでございます。1時間でn−ヘキサ ン中にDEHPがほとんど溶出しているということでございます。  その次は測定の検量線が13ページにございます。  14ページが切り干しダイコンをDEHPを含むポリ塩化ビニル製の手袋でつかむ時間 と移行したDEHPの濃度との関係ということで、接触時間が多ければ移っていく量も 多いという情報でございます。  15ページでございますが、こちらは手袋(1)が40.4%のDEHPを含むもの、それから 20.5%のDEHPを含む手袋それぞれについて3秒間切り干しダイコンをつかんだとき の結果でございます。切り干しダイコンの方に手袋(1)、黒い棒の方ですと、平均43.9pp m 、それから白い方、手袋(2)ですと、切り干しダイコンに平均28.0ppm のDEHPが移 行しているということでございます。  その次、16ページはFig.5 でございますが、コロッケについて、つかんだときのデー タを整理しております。表面の温度を35から40度にしまして、このポリ塩化ビニル製の 手袋でつかんでみたところ、手袋(1)ですと平均0.48ppm 、手袋(2)ですと平均0.27ppm のDEHPが移っております。 コロッケという油物なのに余り移っていないという感じのデータでございますが、そ の次の17ページを見ていただきたいと存じます。これはコロッケを1回触りまして、そ れからもう一回別のコロッケを触ってそちらへ移っているのを見たものであります。1 回目はこちらにありますように余り移っておりませんが、2回目ですと左の方ですと9.0 ppm、右の方ですと4.8ppm。 1回コロッケを触ることによって手袋についた油が2回目にコロッケを触るときに、そ の油を経由してDEHPが食材に移行したことをうかがわせるデータでございます。  その次、18ページでございます。こちらはおにぎりについて2回手袋で握ってから40 から50度に冷却したご飯を2〜3回つまんで軽く握ったものをサンプルとして測定した ものでございます。一番左の方が40.4%のDEHPを含む手袋(1)でございます。こちら の方は平均0.076ppm、余り移っておりません。その次にアルコール処理をします。これ はかなり濃い消毒用の約70%のアルコールを噴霧した場合でございます。そうします と、平均で1.45ppm とかなり移っております。その次、20.5%の手袋(2)も最初は 0.069 ppmでございますが、アルコール処理をいたしますと平均で 0.55ppmまでおにぎりの方 に移っております。  しかし、次の19ページですが、手袋とアルコールの関係も、アルコールを噴霧してか ら30秒間置いて乾かしますと、おにぎりへのDEHPの移行量は大きく減少しておりま す。この研究報告では脂肪性の液体である媒体を経由して極めて短時間のうちにDEH Pが移行する。それから、コロッケのデータから油で移行量が飛躍的に増加することが 判明したわけでございます。  続きまして、資料5を御説明させていただきます。こちらは2つの報告がございま す。最初に前半の方を御説明いたします。  まず前半の方でございますが、市販のお弁当等、いろいろな食品についてフタル酸エ ステル類の濃度を測定していただきました。1ページの研究要旨の上から4行目ぐらい に書いてありますが、平成12年度に測定していただきました市販弁当の結果は平均値で 平成11年度調査時点の約22分の1に減少ということでございます。そして、いろいろな 食品、計 177検体を測っていただきまして、この中で濃度として最も高く検出されたの は惣菜中のアジピン酸ジイソノニルが最高20.2μg/g ということでございました。DI NPに関しましては下から3分の1よりちょっと上ぐらいのところですが、2000年5月 に製造されたベビーフード1検体で4.25μg/g というデータがございました。しかし、 この製品のほかのロットにつきまして測りましたところ、2000年9月から12月製造では 同じ製品でも痕跡量〜 0.099μg/g のDEHP濃度ということで、このものが高かった 原因としてはDEHPを含有するポリ塩化ビニル製手袋が製造に使用されていた時期に 汚染されたものと推定されております。  後ろの方にまとめたデータを載せていただいております。まず、20ページを見ていた だきたいと存じます。20ページが問題になりました塩ビ手袋の規制前後の市販弁当中の フタル酸エステル類の調査の結果でございます。DEHPが右から4番目にございまし て、一番下の平均値がわかりやすいかと存じますが、括弧の下のところが 4,420ng/g、 上が 198ng/gということで、先ほど要旨のところにありましたように約22分の1に減少 しているということでございます。  その後ろ、table6に各種の測定をしていただいた結果が載っております。先ほど言い ました惣菜が高かった情報が22ページにございます。  DEHPでやや高い値が出ておりますのは23ページ、 136のレトルト食品、 139のフ リーズドライ、 146のレトルト離乳食、 156のレトルト離乳食、 165のフリーズドライ 離乳食、こういったところで高い値が散見されております。  こちらは厚生科学研究の報告書の方で24ページ以降に摂取量に換算したデータという 整理もしていただいております。その情報が24ページ以降に載っております。  その後27ページ以降、これまでに報告されている各食品中の濃度ということで、これ までの報告についても整理していただいてございます。そちらにつきましてはDBP、 DEHA、DEHP、DINAといった濃度はレトルト食品のDEHPが高かった一例 を除きまして既に報告されている濃度より高い値ではなかったということでございま す。ただ、DINPについては既に報告されているものが余り少ないので、比較できな いということを本文の8ページに記載していただいてございます。  本文の8ページの今後の研究の方向というところでも書いていただいておりますが、 この調査ではポリ塩化ビニル製の手袋以外に極端に大きいフタル酸エステル類の混入源 はないと考えられるということをコメントとしていただいております。しかし、今後の 研究の方向の頁の左の方を見ていただきますと、PVC製配管からのDEHPの移行と いう項目がございますが、レトルト及びフリーズドライ食品などで一部高い値があった 原因として、製造設備にまだ一部PVC製配管が使用されていることによる混入ではな いかという考察もしていただいております。  この資料は2つの構成になっておりまして、前半が今のものでございますが、34ペー ジから別の分担研究報告書になっております。1つの資料の中で2つに分かれておりま して、34ページから食品用ポリ塩化ビニル製品からのフタル酸ジ(2−エチルヘキシ ル)溶出挙動に関する研究がございます。  こちら後半部分につきましては35ページの左の真ん中よりちょっと下のところにこの 趣旨をまとめた形で記載していただいておりますが、DEHPを異なる比率で含有する 食品用器具・容器包装の溶出試験を行い、DEHP含有量と溶出量の関係を検討した。 その際、2つの異なる機関でほぼ同じ試験を行い、結果の再現性を確認していただいて いるものでございます。  結果につきましては後の方、42ページにまとめていただいております。横長になって いる表でございますが、今回測っていただきましたのはDEHPの含有量が表示で41、2 1、15という3つのものでございます。ホースが2つ、フィルムが1つでございます。フ ィルムにつきましてはDEHPの含有量が15%と比較的少ないものでございます。その ものにつきまして溶出の試験をしていただきました。その結果が下でございます。  こちらを見ておわかりだと思いますが、エタノールや水や4%酢酸では余り出てきて おりません。しかし、油とか脂肪あるいは油脂を想定した有機溶媒でございますヘプタ ンを使った場合、ホース1、ホース2などにつきましては一番右のμg/cm2 単位で表示 されたところ、接触面積を基準とした方がわかりやすいかと思うのですが、そちらを見 ていただきますと、1cm2 の表面積から4けたのμgオーダーの溶出があるということ でございます。DEHPの含有量が15%と比較的少ないものでも、有機溶媒ヘプタンで ありますと2けた、1cm2 当たり13〜14μg、あるいは1cm2当たり24μg溶出している という結果でございます。  この結果から、本文の40ページに戻っていただきたいのですが、まずアルコールの問 題がございます。20%程度の濃度のエタノールにつきましてはポリ塩化ビニル製品中の DEHPに対して消毒用アルコール、68%エタノールのような大きな溶出力は持たない ことがわかっております。  少しさかのぼる形で恐縮でございますが、先ほどの15%のものにつきまして、39ペー ジに材質中DEHP含有量と溶出量の関係がございます。ホース1、ホース2、フィル ムのDEHP含量比は41対17対13でしたが、ヘプタン溶出の比で見ますとフィルムから は余り出ていないことになります。これは溶出防止措置が施されている可能性があると いうことでございますが、試験片に含まれていたDEHP全体で見ますと、その3%程 度は有機溶媒で出てきているということでございますし、その濃度も決して低いとはな かなか言いにくいところがございます。  この研究の結論といたしましては41ページに書いていただいてございますが、実測値 で12〜41%含有する3種のポリ塩化ビニル製品について溶出試験を行ったということで ありますが、n−ヘプタンによる溶出試験においてはTDIを超える溶出量が得られ、 今回試験した製品はいずれも油性食品への使用には適さないと考えられるという結論を いただいております。  資料5までは以上でございます。 ○井上座長  どうもありがとうございました。  ただいま資料4並びに資料5について続けて御説明いただいたわけですけれども、こ れは資料をごらんのとおり厚生科学研究の研究報告という形になっている資料でござい ます。主任研究者の方の追加の御説明をいただこうと思いますが、まず中澤先生からい ただきましょうか。 ○中澤委員  それでは、資料4について補足説明をさせていただきますと、御存知のようにフタル 酸エステル類の分析は、分析する方としても分析の非常に厳しい対象物であります。そ の一番の理由は、試料を調製したり、あるいは分析したりする段階、あるいはサンプリ ングの段階においてコンタミするということでございます。したがいまして、我々の使 っている試薬あるいは水とか有機溶媒というものから当該物質が混入してしまうことが 分析する方としては非常に神経を使うところでございます。  今回のポリ塩化ビニル製手袋のものについては、平成11年度だったと思いますが、外 海先生方が報告された結果で非常に高濃度のものが溶出するということで、昨年度、厚 生労働省からクロスチェックをかけて複数の研究機関で同じサンプルを研究してどうな のかということで行った実験でございます。先ほど事務局から御説明がありましたよう に、ともかく油性あるいは脂溶性の食品には非常に移行しやすいこと、アルコールで消 毒した手袋をすぐ使うとこれまた移行が非常に激しいということであります。あるい は、接触時間に比例して移行していくということであります。  コロッケなどは私どもも最初はかなり移行するではないかと思ったのでありますが、 先ほど御説明いただきましたように、最初はそれほど移行しないのですが、その手袋を 変えないで、つまり油分がついた状態でコロッケを触りますと濃度がかなり高くいくと いうことであります。 縦軸のスケールを見ていただきますとわかりますように、Fig.6 の場合はppm オーダー で移行します。おにぎりは予想していたよりも移行しないということであります。  私どももまだどういう状態でフタル酸エステル類が手袋の中に入っているかというこ とに関して余り情報を持っておりませんで、表面の解析なども昨年度から少し始めてお りますが、DEHP、可塑剤が非常に強固に高分子の中に結合しているのではなくて、 簡単に抽出されるような状況で存在しているのではないかと想定しております。今回出 てきた結果は実験によっては4機関あるいは5機関が同じものを分析しまして、どの程 度のデータのばらつきがあるかということを含めて行った実験でございます。  以上でございます。 ○井上座長  どうもありがとうございました。  先生のお話の中では油脂、脂肪食品への移行が非常に高くなるということ、また測定 に当たってコンタミがどうしても出やすくなるので、技術的に気を使ってこれらのデー タが出されたということかと思いますけれども、外海先生の御報告について御説明の追 加をお願いいたします。 ○外海参考人  それでは、資料5について御説明したいと思います。  平成12年度の厚生科学研究でやりましてわかりましたことは、平成12年6月14日にD EHPを含むPVCの手袋を使用自粛ということになったわけですが、そのわずか2カ 月後、8月にコンビニ弁当を再調査いたしました。そうしますと、この報告書にもあり ますように22分の1という極めて低い値になっておりました。このことからも汚染原因 が手袋に由来していたことがわかるのではないかと思います。  平成11年度ではコンビニ弁当と病院食と一部のレトルト食品しか調査していなかった のですが、平成12年度になりまして、もっと広くほかにも高濃度のものがあるのではな いかということで 177品目について調査しました。その結果、バターとか一部のレトル ト食品等、高いものが幾つか見受けられましたけれども、それらはどちらかというと脂 肪性食品にそういう高い数値が見られたという結果であります。  後半の方に移りますと、食品の製造に使われる配管、ここにはホースと書いてありま すけれども、そこに一部PVC製の配管が食品製造に使われているということで、その ホースからの溶出がどうかということで4種の食品疑似溶媒で溶出試験を行いましたと ころ、材質のDEHPの含量、パーセントにかかわらずn−ヘプタンを用いたときに極 めて高く溶出したという事実が証明できました。そのほかの3種、4%酢酸、水、20% エタノールではほとんど溶出されないということで、やはり油性の食品に対してDEH Pを含むPVCが接触した場合には容易に溶出が起こることがわかったわけです。  以上です。 ○井上座長  どうもありがとうございました。  お二人の主任研究者からの追加の御説明をいただいたわけですけれども、これら全体 について御質問あるいは御意見がございましたらお出しください。 ○長尾委員  多分聞き落としたと思うのですが、切り干しダイコンは違う実験ですか。 ○中澤委員  実はこれは参画していただいた研究者のところでつくってもらいまして、市販のものを 買ったわけではございません。 ○長尾委員  3秒間手袋で、ほかのものに比べてものすごく高いですね。 ○中澤委員  非常に油分の高い汁が多いといいますか。 ○井上座長  これは油揚げか何かが入っているんでしたか。単に切り干しダイコンではなかったで したね。 ○中澤委員  切り干しダイコンの中に少し入っていると思いますけれども、ともかく汁が多いんで すね。 これは外海先生方が平成11年度におやりになったデータで、やはり非常に高い値が切り 干しダイコンで出る。おにぎりと切り干しダイコンとコロッケを見たときに切り干しダ イコンが非常に高いということで、サンプルは全く同じものを想定して考えました。 ○長尾委員  ただ切り干しダイコンと書いてあって、そういうお話ですと、油物がどうというお話 にどうしていくのかがよく理解できないんですが。 ○井上座長  外海先生、たしかお話がありましたね。油との関係があるという認識でよろしいんで すね。 ○外海参考人  ええ。ただ、今おっしゃったのは名前のつけ方が「切り干しダイコン」という表現で は油の関係が理解できないのでということではないかと思うんです。 ○井上座長  そうですね、どうしましょうか。 ○外海参考人  「油揚げを含む切り干しダイコン」というか、そういう注釈が要るということでしょ うね。 ○井上座長  検討している段階では入っているものだったということか。 ○長尾委員  切り干しダイコンを油揚げと一緒に煮たものを3秒間つかんだということですね。 ○外海参考人  そうです。私の場合は市販のものを使いました。 ○井上座長  注釈か何かを表につけていただくことにしたらいかがですか、名前まで変えると大変 でしょうから。 ○谷村参考人  炒めてから煮ているのでは。 ○中澤委員  おっしゃったとおりだと思います。そこは確認させていただきますけれど、炒めてや っていると思います。 ○井上座長  なるほど、そうですか。 ○三森委員  油も使用していると書いてありますね。 ○谷村参考人  ただ切り干しダイコンといいますと、材料のようにも見えてしまうので。 ○井上座長  三森委員が今御指摘くださったのですけれども、本文の方には書いてあるのですけれ ども、場合によっては表にも注釈をつけますか。いかがですか。事務局はどんなふうに お考えですか。 ○事務局  厚生科学研究の報告書として既にいただいているものですので。 ○井上座長  訂正する性質のものではないわけですね。 ○事務局  こちらの議事録としてそういう整理をさせていただければと思います。 ○井上座長  わかりました。どうもありがとうございます。ほかにございますか。 ○米谷委員  教えていただきたいのですが、外海先生の御報告書で39ページの右上にホースと延伸 フィルムの結果についての解釈をされていますけれども、延伸フィルムの場合にここに は何らかの溶出防止措置が施されている可能性と、もう一つは非常に薄いといいます か、そういうものの形状のために出てこなかったという2つの可能性を書いておられま すけれども、その後、報告書を出されてから後、溶出量が少なかった理由はどちらかと いう、よりサポートするような情報は何か出てきましたでしょうか。 ○外海参考人  それ以後、情報は得ておりません。理由は今でもまだはっきりわかっておりません。 ○米谷委員  延伸フィルムでなかなか出てこなかったというのは、どちらの理由かによりまして今 後どう対応するかも変わってくるかと思うのですけれども、これは外海先生ではなくて 事務局にお願いしたいのですが、その辺は業界の方でどういう措置を施しているのかと いう情報を集めていただければと思います。 ○河村委員  うちの方で実はこれとは別途実験しておりまして、私の方ではDEHPを含有するも のはなかったものですからアジピン酸を使った溶出試験をしておりますけれども、ヘプ タンと菜種油を用いまして溶出試験をしております。その結果で見ますと、単に薄くて 量が少ないから見かけ上低くなるだけで、こちらは低く書いてありますけれども、うち の方でやりました結果では含有量当たりの比率は98%出ております。フィルムの方が溶 出率は高くて、若干厚手の手袋とか玩具よりもフィルムの方が溶出しやすいという結果 が出ております。恐らく薄いということで表面が溶出しにくくなっているかもしれない のですけれども、溶出防止の措置がとられているとは考えていないのですけれど。 ○井上座長  そうすると、この問題はどういうふうに整理すればよろしいですか。 ○米谷委員  一応、業界の方に聞いていただいて、別に何もしていない、単に薄いということだけ だと思いますけれども、その辺の情報がもし手に入れば非常に参考になるかとは思いま す。 ○井上座長  いかがですか。 ○事務局  このものについては申し訳ございませんが、サンプルをもらったところから先ほど外 海先生が御指摘のように、そういう情報は特に得られておりませんでした。どういうふ うにというところまでの情報提供はいただいておりません。また今後、本日の議論も踏 まえてそういう情報が必要であれば当然、業界の方にも情報を求めることも考えたいと 思っております。ただ、いただいたデータからは外海先生の方にありますように事務局 側として読んで見ますと、低いと言いながらも食品衛生上はかなり問題になる量が出て いるのではないかと感じております。 ○井上座長  ということで。 ○米谷委員  それで結構だと思います。 ○井上座長  皆さんもそう思っていらっしゃいますね。  ほかにはいかがですか。ございませんですか。  それでは、これで議論が尽くされているかどうか、油製品、脂肪食品に対しての溶出 が非常に高くなることがある。消毒用のアルコールに関する限りは高いわけですね。 パーセントをずっと下げていくとどんなことになりますか。 ○中澤委員  先ほど事務局から御説明があったと思うのですが、たしか外海先生のお話でもありま したように、たしか67%ぐらいの消毒用アルコールで2回ぐらいスプレーして、すぐ触 った場合とある程度乾燥してから触った場合とでも著しく違ってしまうということで、 先ほど申し上げましたようにどういう形でフタル酸エステル類が手袋の高分子の中に存 在しているかというのは固体NMRを使ったりいろいろやって研究しているのですけれ ども、ちょっと浮いているような感じのところです。ですから、簡単に溶け出してくる と考えられます。先ほど米谷先生がおっしゃったように、出てきにくいものはもしかす ると何か処理されているのかもしれませんけれども、私どものレベルでは解析できない 状況です。 ○井上座長  どうもありがとうございました。  そういった諸点を念頭に置いてということになろうかと思いますが、一通りの御意見 をいただいたようでございますので、先生方からいただいた御意見もあわせて、事務局 の方ではそれなりにまとまった規格基準の改正案をお出しいただけますか。  これまでの議論に予想外の御意見がつけ加わったということはないようですので、用 意していただいたものについて御検討いただきたいと思います。                  (資料配付) ○井上座長  資料が2種類回っているようです。回ったら事務局の方で御説明いただきます。  それでは、お願いいたします。 ○事務局  それでは案でございますが、フタル酸エステル類を含有するポリ塩化ビニルに関する 器具及び容器包装の規格基準(案)という1枚紙をまず御説明させていただきます。  食品衛生法第10条第1項の規定に基づき「食品、添加物等の規格基準」中「第3 器 具及び容器包装 A 器具若しくは容器包装又はこれらの原材料一般の規格」に以下を 規定ということで、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)を含有するポリ塩化ビニル製を もって油脂、脂肪性食品の器具及び容器包装を製造してはならない。ただし、フタル酸 ジ(2−エチルヘキシル)が溶出又は浸出して食品に混和するおそれのない場合はこの 限りではない、という案でございます。  ここで言う油脂及び脂肪性食品とは既に通知にて示してございまして、食品中又は食 品表面の油脂含量がおおむね20%以上であって、乾燥した固形食品以外の食品をいう、 ということでございます。 ○井上座長  どうもありがとうございました。これは局長通知の形ですか。 ○事務局  こちらは告示でございます。この1枚紙の内容を告示して、法律の規定に基づいて食 品の規格基準として告示してはいかがかという案でございます。 ○井上座長  わかりました。この案に対しまして御質問、御意見はございませんか。 ○河村委員  お尋ねしたいのですが、今回対象になっているのは油脂、脂肪性食品のみということ かと思います。先ほどの切り干しダイコンですけれども、これはとても20%もの脂肪は 含有していないものだと思います。わずか数%の油だと思うのですけれども、非常に大 量のDEHPが移行しているのですけれども、これらのものに関しては対象とならない ということでしょうか。 ○井上座長  さて、油は本当にそんなに低くなりますか、いかがですか。何か考え方がおありです か。そんなに低いですか。 ○河村委員  低いと思います。 ○井上座長  ただ、実際にこの報告書の記載によりますと油で炒めている段階の問題ですね。 ○河村委員  ですけれども、炒めた後に水を足していますから、最後に調理するときにつかむのは 水が入った状態ですから、炒めるときには油ですけれども、あとは水を大量に加えて煮 上がったものを手袋でつかんでおりますので、そこでの脂肪含量は非常に低いと思いま す。 ○井上座長  そうしますと、この20%というのは不適当だということですね。 ○河村委員  この20%というのは既に通知で、食品衛生法で油脂・脂肪性食品はこういうものであ るという定義がされていますので、この定義はもう変わらないと思うのですけれども、 これ以外のものでも移行する場合があるということですので、この油脂・脂肪性食品だ けを対象にしたのでは不十分ではないかと思うのですけれども。 ○井上座長  そういう御指摘ですね。事務局はこれはどういうふうにお考えになりますか。 ○事務局  我々の方が今までいただいていたデータを理解しますと、先ほど先生方からも言って いただきましたように、基本的にああいうものも含めて油分があるから移行していると いう学問的な解釈といいますか、そういうことであるという理解でございましたので、 基本的に水とか薄いアルコール分では余り移行していないという情報もありますので、 整理しますと、今までの食品衛生法の整理としても油脂・脂肪性食品という整理がござ いましたから、ここに当てはめるのが一番妥当かということで整理したものでありま す。 ○井上座長  そういうわけですが。 ○基準課長  私どもも基本的には切り干しダイコン、先ほどのダイコンそのものでは問題ないと思 うのですが、油を含ませたダイコンの場合には問題がある。まさにそこを何とかしたい というつもりでこの提案をしております。しかし、水だけの容器包装とか水しか接しな い器具については余り問題がないだろうという前提で、どの範囲までをやるのかという 前提で、それも含めたつもりでこの油脂・脂肪性食品と規定しました。  これはたまたま昭和48年に別の器具及び容器包装の試験を行う際に用いた用語とその 解釈通知ということで事足りると考えてこの提案をしておりますので、そういうものも 含めたものも入れるべきであるということであるとすれば、改めてここで言う油脂・脂 肪性食品−−言葉がこのままでいいのかどうか、誤解もあるかもしれませんが、その範 囲で今問題になっている食品も入るような表現の通知を改めて出すということで対応を とらせていただきたい。  これはまだ告示の文章として御提案しているわけではございませんで、こういう趣旨 の告示改正をしたいということで御提案しておりますので、この場合の中には今問題に なっております食品も含まれるような範囲を拡大するといいますか、そういうふうにし てやりたいと思います。そういう趣旨として御審議いただければと思います。 ○井上座長  ありがとうございました。  あくまでもこれまで各委員に御議論いただいた内容に沿う形で進めるということで御 説明いただきましたけれども、河村先生はよろしいですね。 ○河村委員  内容的にはそうしていただければ十分かと思うのですけれども、もう一つの問題点 は、手袋をはめている場合に例えばお弁当を詰める場合ですといろいろな食品がありま すけれども、これは脂肪が若干でも入っているからはめかえようということをしていた だけるのかどうか。脂肪が入っていない食品はこういった手袋でするけれども、そうい うときはつけかえてということができるのかどうかということで、実際に運用上に難し い問題があるのではないかという懸念はあります。 ○基準課長  その点は、いわゆる米だけをつかまえる手袋であるということが明確にされるとか、 そういうことであれば今の先生の御懸念が明らかだというものについては問題ないと思 うのですけれども、基本的には食品用の手袋ですと販売されることは何でもつかむこと ができるわけです。 たとえ現場で使い分けておられようとも、それは可能性のあるものとして供給されます から、供給されるものには何でも使える可能性があるものがあれば、それは規制をかけ るというふうに考えておりますので、混乱は出ないようにしたいと思っております。 ○井上座長  そういうことですが、その点についてはよろしいですか。 ○西島委員  中澤先生か外海先生に教えていただきたいのですが、切り干しダイコンのとき、水分 を取った場合は20%になりますか。よく分析するときにそういう考えをしますね。水分 を飛ばしたものは油が20%になるのか、それを教えていただけますか。 ○外海参考人  油含量は測っておりませんので、何とも申し上げられないのですけれど。 ○西島委員  感覚的にそうなりそうとか、そんなことはないとか、そういうことはありますか。 ○外海参考人  感覚的にはかなり油っぽい感じがしましたけれども、その油が何%かは測っていない ので、それは言えません。 ○井上座長  今の点については先ほどの課長の御説明にもあるように、それから外れるようであれ ばこの表現を別の形にするという御説明ですので、このままでいいかどうかはむしろ皆 さんの御議論に沿って文章そのものはおつくりいただくというふうに御理解いただきた いと思います。  この案につきましてお気づきの点、今のようなことを含めてほかにございませんか。 ○井村委員  つまらないことを言って混乱させて申し訳ないのですけれども、例えばどういう表現 にお変えになるかわかりませんけれども、ともかく油が多いような食品でなければ使っ てもいいという形になっておりますと、その容器を家庭でそのまま別の食品に使う可能 性はありませんか。  そういうことは考えなくてよろしいのでしょうか。そういうことになりますと、二度 目に入れたものが油分を非常に含んでおりますと、そこには当然溶出してくることにな ってしまいますから、それが心配なのですが。 ○井上座長 事務局、御質問の趣旨はおわかりになりますか。 ○井村委員  もしそういうふうになさるのでしたら、はっきりと「これはほかの食品に使用しない でください」と書いてあれば別なのですが、何かまた使える形であればほかの食品をそ こに入れる可能性がある、それを考えておいた方がいいのではないかという気がするん です。 ○基準課長  消費者の手に渡った後に容器に別のものを入れる場合にどうするか、いわゆる二次的 な状況の中でどうするかという点については、食品衛生法で直接どのように規制するか はなかなか難しい問題でございます。私どもも今そこまで考えていなかったものですか ら、こうと断定できるものはないわけでありますが、そういったリユースするような容 器包装が実際にあるかどうか。いわゆる容器包装にDEHPを含有するようなものがど のくらいあるかということももう一方で、よろしければこれからパブリックコメントと か関係者からいろいろな意見を聞くということで、その後最終的に御議論をいただいて 結論ということになりますので、それを踏まえて考えてみたいと思います。場合によっ てはそういうものに対して何らかの表示、いわゆる油脂性の食品を入れてはならないと か、そこまでいけるかどうかは私どももわかりませんけれども、そういう面でのやり方 を検討させていただきたいと思います。 ○井上座長  では井村先生、今のような回答で。 ○河村委員  たびたびで申し訳ないのですけれども、DEHPを含有する手袋に関して食品用途に は使用してはならないという通知が昨年出されたわけですけれども、今回の規格改正で は油脂・脂肪性食品に限って、その範囲が今後もう少し広げられるとは期待しておりま すけれども、限ることになりますと、油脂・脂肪性食品を含有するというのはどの辺で 線が引かれるか、どうやって判別するかということも出てくるのですけれども、今まで の定義とは違い、もっと広げなくてはいけないという問題もありますし、従来の通知と 同じように食品用途に使用してはならないという形にすることは不可能でしょうか。 ○井上座長  その点はいかがですか。 ○基準課長  今回のものは法律に基づく告示になりますので、法律規制の対象になります。したが って、これに従わない場合には罰則なり何らかの処分もあります。そういった点で昨年 の通知による指導とは局面が違うものですから、私どもはできるだけ科学的な根拠に基 づいた範囲できちんとやりたいという考えでこれを提示しました。その上でさらに昨年 と同じような形での指導的なものとして何らかの方法も一緒に合わせて、さらにこうい う場合には注意してほしいという指導通知を合わせてこれにかぶせて出すようなことが できるかどうか。その辺については、それができれば先生が御心配の点は少しはなくな ると思いますけれども、考えさせていただきたいと思います。 ○井上座長  どうもありがとうございました。  それでは一応御意見をいただいたと考えまして、今見ていただきました案に沿ってこ の内容、ただいま事務局からの回答を全体として当合同部会の結論といたしたいと思い ますが、よろしゅうございますか。  ありがとうございました。 ○事務局  事務局の方から確認させていただきます。  まず、いただきました規格基準(案)の注釈につきましては、こちらの定義の問題が ございますのでここはとりあえず落とします。これがない形といたしまして、要は油 脂・脂肪性食品の範囲の問題は事務局で検討させていただきます。  お配りした資料をもう一つ御説明しておりませんでしたので、そちらの説明をさせて いただいてよろしいでしょうか。  この規格基準(案)はごらんいただきましておわかりのように、特に溶出の基準値を 決めるとかそういう形ではございません。基本的には製造してはならないということで 規定しております。したがいまして、これに関しては特別に告示での試験方法は考えて おりませんで、材質の試験とか、ただし書きにありますように食品に溶出とか浸出して 食品に混和するおそれがない場合に関しましても、その試験方法については課長通知で 示すことを今考えております。そして、その際に必要な試験方法ということで国立医薬 品食品衛生研究所食品添加物部で検討していただきました資料がお配りした4枚紙の資 料でございます。  基本的には材質の試験で、使ってはいけないというところを担保しようと思っており ます。 材質の試験方法としては抽出法と溶解法という2つの試験法を検討していただきまし て、いずれも良好な結果が出ていることが2枚めくっていただいたところに出てござい ます。  もう一つ、ただし書きで溶出ということがございますので、溶出の試験法につきまし ても検討していただいております。こちらにつきましても良好な結果が出ております。 結果は先ほどの3ページにございます。  事務局からは以上でございます。 ○井上座長  どうもありがとうございました。ただいまの御説明で全体として御了解いただくとい うことでよろしゅうございますか。 ○西島委員  この試験法の件ですけれども、これが外に出るとなるとコンタミとか、そこら辺は中 澤先生、外海先生が非常に御苦労されたのではないかと思うのですが、その辺を前面に 出していただかないと、ただこの試験法でやればデータが出るということになると混乱 しないかということです。 ○井上座長  少し加えるということですね。 ○西島委員  そうですね、誰しもこのとおりにやればいいというのではないと思うんです。いろい ろなコンタミとか試薬とか、どういうものを使うとか、そういう条件は余り必要ないで すか。 ○井上座長  ただいまの点はどうしますか。 ○河村委員  試験法を検討させていただいた立場から報告させていただきます。材質試験に関しま しては、製造してはならないというのがどこまで検出するかということにかかってくる わけで、そのあたりがまだ出ておりませんのでわかりませんけれども、こちらの方で考 えておりましたのは、例えばEUの方で 0.1%とかそういう値ですと材質中の試験に関 しては普通の実験条件で行ってもこれでコンタミ以上の値になる。溶出試験に関しまし ては一応こちらの方は1ppm 程度を想定しているのですけれども、このあたりですと普 通のガラス器具を特別に焼くということでなくてもできるのではないかと思っていま す。1ppm 以下になってきますと、溶媒のコンタミ等がありまして厳しいかと思ってい ます。 ○井上座長  よろしゅうございますか。 ○西島委員  わかりました、ありがとうございました。 ○井上座長  それでは、この試験法についてほかにございませんか。  よろしいようでしたら、ただいまの議事を含めて全体的に御確認いただくということ でよろしくお願いいたしたいと思います。  事務局、今後の取り扱いについてお願いします。 ○事務局  今後の取り扱いといたしましては、まず本日いただきました結論ということで、この 規格基準(案)の先ほどの注を除いたところにつきましてパブリックコメント、それか らWTOの国際条約がありまして、その義務の履行がございますので、そちらへの通報 等の手続がございます。そちらの手続に基づいて意見等の提出の機会を設けることにな ります。それで意見等がいろいろ出されたような場合にはその内容を検討いたしまし て、それから分科会に上程して御審議をお願いすることになります。 ○井上座長  どうもありがとうございました。では、そのように御了解くださいますようにお願い いたします。 ○河村委員  事務的なことですけれども、この規格基準が第3のAの器具若しくは容器包装又はこ れら原材料一般の規格に規定するということですけれども、例えばFの器具及び容器包 装の製造基準よりもこちらのAの方が適当な場所なのでしょうか。 ○事務局  基本的には原材料一般の規格の方が場所としてはいいのではないかと今は考えており ますが、先ほど言いましたように、特にこれで告示しようというきっちりした詰めはま だといいますか、考え方としてこういうことでということでございますので、表現が仮 に変わるようなことがあれば、別の場所の方が適当になることもあり得るとは思ってお りますが、現段階では使用してはならないということでありましたら、やはり最初の一 般規格の方がよいと思っております。 ○井上座長  よろしいですか。 ○井村委員  この試験法の案でございますけれども、これはこのまま通達として出るんですか。そ れとも、ちゃんと文章に書き直すのでしょうか。 ○事務局  はい。これはあくまで検討のための資料の段階ですので、当然通知するときには通知 のスタイルもございますし、そういう整理はもう一度し直すことになります。 ○井上座長  井村先生が危惧なされる点は特にありますか。 ○井村委員  このままでは格好悪いかなと。格好悪いというのは言葉も統一されていないし、数値 も小数点があったりなかったりするし、そういうことはみっともないかなということだ けです。 ○井上座長  その点は気をつけていただくようにお願いいたします。 ○食品保健部長  河村委員にお尋ねいたしますけれども、先ほど言われました原材料一般の規格のとこ ろで告示として対応するという私どもの案でありますけれども、それをFの製造のとこ ろで告示する。 私どもの考え方は先ほど御説明申し上げましたように、材料にこういうものを用いては ならないという考えからそこで告示するという整理でありますけれども、それをやるこ とによって、あるいは先生が御指摘のようなFでやらなければいけないということは、 御心配の趣旨が何かございますでしょうか。 ○河村委員  これはすごく難しいところですけれども、Aに関してはどちらかというと非常に古 い、以前あった規格がそのまま残っている部分が多いものですから、新たにつけ加えて いるものはFで規格しているものが多い。そういう事務的な部分だけですけれども、今 回の問題は製造上の問題にかかわるものですから、製造基準の方がふさわしいのではな いかと考えただけです。この辺は私も行政上どういう扱い方が一番適当かはよくわかり ませんので、そちらの方で御検討いただければ結構だと思います。 ○基準課長  内容について先生方の御意見はほぼ一致して、私どもが御提案しております趣旨につ いてもおわかりいただいたと思います。ただし、具体的なやり方についていろいろ意見 がございますので、これはパブリックコメントを求めた後、そのまま分科会の上にいく のではなくて、まとまった段階で整理して本部会にもう一度おかけする。その際に先ほ どから今の製造基準がいいのか原材料の規格がいいのかも含めて、趣旨はこれで御理解 していただいて、とりあえず私どもはパブリックコメントとしては原材料として使うな という趣旨で公表いたしますが、その後どのようにやるのが一番いいのかというのはそ の間また関係の先生方とも御相談させていただいて、改めてこの部会におかけして、そ の結果をもって分科会に上げるというやり方にさせていただきたいと思います。 ○井上座長  取り扱いについてただいまのような形にするというお話でございますが、そういう内 容でもって御了解いただけますか。 ○中澤委員  確かに塩ビの手袋を分析しましても、DEHPが既にほかの物質に変換しているとい う状況だと思います。つまり関係業界の動きは、行政の方からこういう化学物質の使用 は自粛しなさいという話が出ますと、直ちに変わっていってしまうのが現状だと思いま す。ただ、今回のように塩ビ製の手袋だけではなくて食品の容器ということになります と、関連の業界に対してはできればそういう告示なりがあってからの猶予期間を行政と して設定していただければと思います。 ○井上座長  その点については、そういう御意見があったということで御了解いただきたいと思い ます。  それでは、この問題につきましては先ほど来確認している点を全体として御確認いた だくことにいたしたいと思います。  2つ目の議題のおもちゃの規格基準の改正に移りたいと思います。皆さんもコンセン トレートして御議論いただきましてお疲れのことと思いますが、休憩を入れる余裕がご ざいませんので、引き続き御審議くださいますようにお願いいたします。  それでは、事務局お願いいたします。 ○事務局  それでは、おもちゃの規格基準関係の資料は資料6以降でございますので、こちらに ついて順次御説明させていただきます。  資料6が平成10年度の厚生科学研究でございます。この内容は大きく3つのものから なっております。順番に、1ページからが mouthing 行動ということになっています が、実際に小さい子供がおもちゃをどのくらいかむかといったデータをとっているもの でございます。この1ページの左の真ん中から下の方、研究目的の2段落目ぐらいのと ころですが、 mouthing 行動は育児環境により異なる可能性があるため、我が国におけ る3〜12カ月児の mouthing 行動の実態を把握するため、ビデオ記録による調査とオラ ンダと同じ方法による観察調査等を行ったということでございます。  ビデオによる記録の仕方はここにございますが、時間を決めてビデオを撮りまして、 その内容を見て子供が何を何秒口に入れているかを記録しましてそれを実際の子供の活 動時間に外挿といいますか計算して、それぞれのものを口に入れている時間を計算する というやり方で検討されております。  3ページにこの年度の結論がございます。3〜12カ月児50名を対象として、母親によ る15分ずつ10回の家庭での観察記録から、1日当たりの mouthing 時間は平均 180±87 分、活動時間の32%、中央値が 161分、最小28分、最大 389分と推計されたということ です。このときの調査でもここにありますように最小28分で最大 389分と非常に幅のあ るデータが出ております。  引き続きまして、この資料の10ページから次の研究の分担報告書になっております。 年度ごとにまとめておりますので、1つの年度の報告書が大体3つとか2つの分担研究 報告書からなっております。10ページからがおもちゃからのフタル酸エステルの溶出で ございます。フタル酸エステル類とかアジピン酸エステル類がおもちゃの中にどのくら いあるかといった分析等を行った研究でございます。  こちらにつきましては、16ページを開けていただきますと、ポリ塩化ビニル製おもち ゃのフタル酸エステルの含有量がございまして、DEHP、DINPなどがかなり入っ ておりました。 「歯がため」とか「おしゃぶり」といったところではDINP、おしゃぶりで58.3%と いう数値もございます。あと、先ほどから話題になっているDEHPについてもボール などで30%を超える量が入っているというデータもございます。  18ページのまとめの最後のところで含有量につきましても 0.2〜58.3%と幅があるわ けですが、フタル酸エステル類としてDBP、DEHP、DNP、DINPがこの年度 の調査で検出されております。  その後、試験管の中、 in vitro でフタル酸エステル類がどういうふうに出てくるの かとか、ヒトがかんだときにどういうふうに出てくるのかという検討がなされておりま す。この辺につきましては、平成12年度の研究の報告書がまとまっていると思いますの で、この資料でのご説明は、時間の関係もあるかと思いますので先に進ませていただき たく存じます。  資料7に説明を移らせていただきます。資料7は平成11年度の研究でございます。  まず、 mouthing 行動の研究が1ページでございます。その前の年の研究で6〜10カ 月児の mouthing 時間が長いことがわかったということで、より正確に把握するため、 6〜10カ月のお子さんを対象にして25名の mouthing 行動をビデオ記録して解析してお ります。  そして、1ページの右下の方に研究の結果でございます。1日の活動時間は平成 615 分± 100.5分、これは前回と同じくらいではないか、外国の報告とも同じぐらいではな いかということであります。1日当たりの mouthing の推計時間は平均 105.3分±72.1 分、活動時間の17.1%で、前回の平均活動時間の31.5%より短時間でありましたが、オ ランダの報告よりは長いということでございます。  2ページの右下の方でございますが、対象物による mouthing 行動の相違をまとめて いただいております。このときの調査でおしゃぶりとほかのものでは mouthing 行動が 異なることが判明したということでございます。おしゃぶりは多くの場合はぐずってい るときなどに親が口に加えさせ、親が口から外すまで子供はおしゃぶりを加えたまま で、手は別の動作を並行して行っている。その一方で、ほかの対象物に対しては子供が 自発的に手で持って口に入れ、手で持ったままなめたりかんだりしたり口から出したり している。周囲で音や動きの変化があると、それに気をとられて mouthing 行動が中断 されているけれども、おしゃぶり使用時は周囲の変動に対しておしゃぶりを加えたまま 視線を動かすのみのことが多く、 mouthing の中断に至ることは少なかったということ で、おしゃぶりがほかのものをしゃぶっているときと違うということがこのときに判明 したということでございます。  そしてその後、実際にどのくらいの分布かといったことについて6ページに活動時間 の分布、おしゃぶり以外の mouthing の分布等を整理していただいております。  同じ資料の8ページからがポリ塩化ビニル製玩具からのフタル酸エステルの溶出に関 する研究でございます。こちらの方もまず材質の検討、人口唾液を使いまして試験管の 中、in vitro でどのくらい出てくるかといった検討をしていただいております。  17ページからヒトの chewingによる乳幼児玩具から唾液へのフタル酸エステル類の溶 出−移行という検討をしていただいております。  19ページにそれまでの予備的な検討との比較もございます。19ページの左の方に表題 がございます。ヒトの chewingによる口腔内唾液のDINP溶出−移行量、右の2行目 ぐらいからでございますが、平成10年度の予備試験での結果と比較すると、本年度の結 果は 2.8分の1量に減少していることがわかったということでございます。そして、考 察といたしましては注意深く chewingし、DINPが唾液へ良好に溶出−移行するよう に行ったため、結果として本年度の結果との差が開いたものと考えられるということで ございます。かみ方といいますか、口の中の含み方によって溶出の仕方がかなり違うの ではないかということがこのときに出ているわけでございます。  20ページでほかの要因に関して唾液のpHにつきましては 6.9〜 7.4とほぼ中性であっ て、DINP溶出−移行量とは直接関係していないと考えられるということでございま す。  DINP58%を含有する試験片についてもここにございますが、こちらについても平 成10年度の結果と比較しますと 3.1分の1量に減少ということでございます。  溶出のデータにつきましては平成12年度の報告によくまとめていただいておりますの で、詳しい説明はそちらの方に移らせていただきたいと存じます。  そのほか、24ページからも溶出の方でございますが、どのくらい出てくるかという検 討をしております。こちらについては、26ページのCの研究結果の真ん中から下の方で ございますが、数値が示されておりますが、いずれの実験においても被験者間におよそ2 0倍の違いがあったということでございます。実際ヒトがかんだ場合、ヒトが chewingと いいますか、口に含んだ場合に出ている量にはかなりのばらつきがあったということで ございます。  その一方で27ページの方で in vitro の溶出法の検討がございますが、27ページの右 の下から2割ぐらい、数行目のところでございますが、それぞれのばらつきについて約1 9〜30%であったということで、ある意味で当然でございますが、試験管の中でやった実 験ではかなり精度の高いといいますか、ばらつきの少ないデータが出ております。  28ページの考察でございますが、左の下の方にございますように単位時間当たりの唾 液の分泌量とDINPの総溶出量の比較とか、ともに唾液分泌量とDINPの溶出量に 関連性は見られなかったということで、特にどういう状況でよく出るという情報はつか めておりません。28ページの右上の方にございますが、実際の使用状態を想定して歯が ため全形を mouthing した方が約2倍高い溶出を示したということ。こういったことは オランダのグループでもあるということで、実際にヒトが行ったときの溶出は幅のある データが出ているということでございます。 mouthing の方法や強さ等によって溶出す るDINP量に若干の差が生じる可能性が示唆されたということもこの報告の中で述べ られております。  資料8に移らせていただきます。資料8は平成12年度の厚生科学研究でございます。 こちらの方は2つございます。最初は溶出とmouthing 時間から暴露の算定をしていただ いております。  1ページにまとめがございます。こちらを見ていただきますとわかりますように、幾 つかの過程を置いて Monte Carlo法というシミュレーション手法で mouthing 時間と溶 出量の結果からDINPの1日推定摂取量を算出していただいております。そのほか、 点推定法とかほかの方法でもやっていただいておりますが、点推定法による推定値とし ては平均14.3μg/kg/day、Monte Carlo法による平均値が14.8μg/kg/dayでございます。 フタル酸エステル類1日摂取量の95%タイル値も計算していただいておりまして、そち らでは35.7μg/kg/dayということであります。そして、この計算でありますと40μg/kg/ day以上となる可能性が 3.1%であるという推定が出たということでございます。ここで は前の年にありました mouthing のデータが25例、フタル酸エステル類の方では一つの もので一番多かった37例のものを chewingのデータとして使って算定されております。  データのまとめが後ろの方に出てございます。先ほど申しましたようなことの表は12 ページに出ております。 mouthing 時間の分布等は13ページに出ております。13ページ の図1の(1)を見ていただくとおわかりのように1〜20分のところから 340〜 360分 というところまですごく幅のある分布がございます。  14ページを御覧いただきますと、1日の mouthing 時間の分布をおしゃぶり乳首、こ れはこれまで言っていたおしゃぶりと同じことと思っていただければ結構でございます が、それを除いたときの分布として、それを除きますと最大で 136.5分、最小で11.4 分、平均で73.9分ということでございます。  もう一つばらつきが非常に大きいデータですが、15ページからはヒトが実際に試験片 をかんだときに唾液にDINPがどのくらい出てくるかという情報を整理してございま す。これは同じ玩具を機関Aと機関Bという2つの機関でやっております。図3の (1)を見ていただくとわかりますように、平均は(1)ですと 109μg/10cm2/hでござ いますが、最小は13.7μg/10cm2/h、最大で 240.4μg/10cm2/hでございます。(2)で すと、最大は 137.3μg/10cm2/hですが、最小は13.2μg/10cm2/hというばらつきがござ います。  16ページは別の玩具、これはDINPを58%含むものの試験片でございますが、こち らも図4の(1)を見ていただきますと、一番出ている場合には 267.3μg/10cm2/hとい うことでございます。最小は40.6μg/10cm2/hです。  その下の(2)の平成11年度は人数も9名ということですが、これは比較的まとまっ ておりますが、それでも最大で99.3μg/10cm2/hというのが出ております。  そしてその次、17ページの図5ではもう一つの玩具、DINPを38%含有しているも のの試験片について行ったところ、最大では 248.7μg/10cm2/hということでございま す。最小は10.5μg/10cm2/hと、これも非常に出ていない例と出ている例との差が激し いデータが出ております。  18ページからは玩具の中の可塑剤の分析をしております。  23ページにその結果がございます。基本的にソフトトイというところとかボールを見 ていただいても、30%入っているような可塑剤はDINPが多く、その次にDEHP。 DBPは 0.0何%ぐらい可塑剤として入っているのものが少し散見されるという状況で ございます。そして、24ページではアジピン酸エステル類とかその他の可塑剤でござい ますが、そういうものがどのくらい玩具に検出されたかという情報で、DINAとかD EHA。DEHAは高いパーセントはないようでございますが、DINAは20.5%とい った数字もこの中で出ているという情報でございます。  25ページに玩具の中の可塑剤の2つの試験というか、1998年10月に入手したものと200 1年1月に入手したものの比較ということでこういう形での整理をしてございます。  続きまして、資料9に移らせていただきます。  資料9は基準課で作成した資料でございます。資料8の厚生科学研究では海外で既に 報告されている論文と同じような手法によって検討を行ったと我々は聞いております が、その後、本日お越しの谷村先生から、厚生科学研究とは別途 mouthing のデータ、 同じように足し合わすことができるデータが15例あるということをお聞きしまして、そ の15例のデータをいただきまして、 chewingデータにつきましては同一施設でもって参 加数の多いデータを用いて再検討したものでございます。 chewingのデータは資料8の 15ページの一番上の25名が該当します。このデータは chewingとして背景が一番そろっ ているだろうと思われるデータ、 mouthing については例数を追加し多くしたというこ とで再検討を行いました。  再検討においては、データ数が mouthing データが40例、 chewingデータが25例と少 ないこと、その一方で、長時間 mouthing する例や chewingによりまして多量にDIN Pが溶出する例があることに注目しまして、統計の専門の先生のお知恵も拝借しまし て、探索的な検討ということでこういう検討をしてみたものでございます。  暴露の推定に当たっての前提といたしまして、まずこちらにありますように先ほど言 いました25例と15例の mouthing 行動のデータを使ったということがこの資料の1ペー ジのIの1)でございます。   chewingによるポリ塩化ビニル製品からのDINPの溶出につきましても先ほど説明 したとおりでございます。10 cm2のものを1時間 chewingした場合に数値を換算してご ざいます。 それらの表につきましては後ろの方、5ページから mouthing 行動のデータ、6ページ は25例と15例を分けてみたもののデータでございます。 chewingにつきましては7ペー ジにデータがございます。  1ページにも書いてありますように基本的には体重当たりに換算する必要がございま したので、6〜10カ月児の男児、女児の平均体重のデータがありましたので、それを単 純な算術平均した8.37kgを用いております。その後いろいろな仮定を置かなければいけ ませんので、とりあえずすべての玩具は塩ビ製である、DEHPの溶出は chewingのD INP溶出データと同じ挙動を示すことを仮定として置いております。  まず検討いたしましたのは、おしゃぶり等でございます。歯がためとかおしゃぶりは ポリ塩化ビニルが用いられていないという情報もございましたが、その一方で実際にあ るという情報もございます。基本的には多量にあるということではないと思われます が、元来おしゃぶりは mouthing されるようにつくられたものでありますし、長時間 mouthing されることが想定されます。今回のデータを見てみましても40例中11例がお しゃぶりを使っておりました。そして、一番長い例ですと 314.1分ということです。最 短は 0.6分、これは非常に短くて入れてすぐ出したということなのかもしれませんが、 平均は73.9分で、30分以上mouthingしている例は5個ございます。成人の chewingによ る溶出試験の平均値が 109.3μg/10cm2/hrということでございますが、それからは 183.8分以上で、また、溶出試験での最大値は241.04μg/10cm2/hrということがござい ますが、こちらからは83.3分以上 mouthing しますと先ほど出ておりましたDEHPの TDIの下限値40μg/kg/day以上の暴露が想定されるということでございます。  また、溶出試験の最大値241.04μg/10cm2/hrからは 312.5分、実際に 314.1分という 例がございますが、312.5分以上の mouthing によってDINPのTDI 150μg/kg/da y以上の暴露が想定されるということでございます。おしゃぶりの mouthing 行動が違う ということを注釈として書かせていただいております。  それから、玩具等ということでございます。それぞれのものの mouthing 時間につい ては先ほどの5ページを見ていただくとおわかりいただくように何を mouthing してい たかということで分けてデータをとっております。おしゃぶり、玩具、合成樹脂、その 他、指ということでございます。そして、それぞれの mouthing 時間の平均値を見てい ただきますと、おしゃぶりを長時間 mouthing する子供はいるのですけれども、平均値 的には 20.33分ということでございます。このデータからは玩具が一番長いということ でございます。また、玩具の mouthing 時間の最長例は69.2分でございます。この値と 成人の chewing試験でのDINPの溶出の最大値、それから試算される暴露量というこ とでありますと33.2μg/kg/dayということでございます。  それから先、総 mouthing 時間が長い例があるとか、いろいろな仮定を頭に置いて検 討してみたものがその次、IVの特定の仮定をおいた場合についてでございます。  総 mouthing 時間の最大値が 351.8分です。おしゃぶりの mouthing 時間を除外した 総 mouthing 時間の最大値はおしゃぶりの行動が違うということで除外しますと 136.5 分ということで、かなり長時間 mouthing する場合があるということ。それから、成人 の chewingによりましてもばらつきがあり、多量に溶出する場合があるということです ので、その両方の場合が生じたことを仮定して検討を行ったのがこれでございます。  やり方といたしましては、 mouthing 時間については3つに分けております。要は上 の方、4分の1をとっております。40例の中から mouthing 時間が長い10例を長時間群 としてとっております。そのものの時間について検討を行いました。  8ページに検討その1の関係の表がございます。上位25%、40例の中の mouthing の 長い10例についてそれぞれとってみたものがこういう形になっているわけでございま す。おしゃぶりの mouthing 時間を除外した総 mouthing 時間、おしゃぶりは行動が違 うということですので、それを除いた総 mouthing 時間は単純に総 mouthing 時間から おしゃぶりの mouthing 時間を引いたものですけれども、これで計算したということ は、先ほどの資料6及び7中の谷村先生の御報告の中にありましたように、通常は玩具 以外のものをしゃぶっているけれども、それは手近にあるので、それをしゃぶってい る。ですから、手近に玩具があれば玩具をしゃぶる可能性があるだろうということで、 その間、玩具をしゃぶったとみなすことになることを想定していると考えております。  3ページの説明に移らせていただきます。3ページでも唾液への溶出のデータにつき ましても基本的には同様に四分位数相当の上位24%ということで上位6例とり、そちらで 平均をとっております。そのデータにつきましても8ページの一番下の表でございま す。平均すると184.43μg/10cm2/hrと、かなり溶出しているということでございます。 そして、それが重なった場合を想定していろいろと計算しております。玩具の mouthing 時間と合成樹脂の mouthing 時間のそれぞれの長時間群の平均値の合計から推定します と31.63μg/kg/dayという暴露になります。おしゃぶりを除く総 mouthing 時間の長時 間群の平均から推定しますと 40.68μg/kg/day、総 mouthing 時間からの推定ですと61. 85μg/kg/dayということになります。それをDEHPのTDIの下限値と比較します と、それぞれ79.1%、101.7%、154.6%ということでございます。DINPのTDIと 比較しますと、それぞれ21.1%、27.1%、41.2%ということでございます。  今回用いることができるデータは先ほど申し上げた mouthing の40例と chewingの25 例ということでございます。そのまますべての組み合わせが 1,000通りできますので、 それをやってみてどういうふうになるかということを単純に計算してみたのが検討その 2でございます。  検討その2の1)のところにございますように、玩具の mouthing 時間と合成樹脂の mouthing 時間の合計で計算上の暴露が40μg/kg/dayを超えるのは1,000分の7というこ とでございます。おしゃぶりの mouthing 時間を除外してみますと1,000のうち35、総 mouthing 時間では 1,000のうち95で、150μg/kg/dayを超える例は1例ございました。   chewingによる最大溶出例241.04(μg/10cm2/hr)は、先ほど申し上げましたようにほ かの試験から見ますと、ほかでも 200(μg/10cm2/hr)を超えているものが出ております ので必ずしも高いということはないようにも思われますが、このデータの分布だけを見 ますと少し外れている感じもございますので、仮に外して計算してみたのがこの例でご ざいますが、40μg/kg/dayを超えるのが玩具と合成樹脂の合計時間では 960例中の5 例、おしゃぶりの mouthing 時間を除外した総 mouthing では20例、総 mouthing 時間 では75例ということで、 150μg/kg/dayを超える例はございませんでした。  検討その3といたしまして、先ほどのやり方をさらに無作為に値を抽出する形で積を 1万回求めて試算してみました。そうしますと、それぞれ玩具と合成樹脂の合計では1 万のうち88回、おしゃぶりの mouthing 時間を除外しますと1万のうち 361回が40μg/k g/dayを超え、総 mouthing 時間では40μg/kg/dayを超えるのが1万のうち 988回で、1 50μg/kg/dayを超える例は1万のうち12回ということでございます。  これまでの試算等は暴露を過大に見積もる幾つかの条件を置いて試算しているわけで すが、先ほど来、器具の方でも議論していただきましたようにDEHPは油分によって 極めて容易に溶出するとか、口腔内でのDINPの溶出は非常に大きいばらつきがある ということで、そして唾液への溶出が増す要因はよくわかっていないということがあり ます。そして、DINP含量が38%、39%、58%の試験片を用いた口腔内溶出試験では 各試験の溶出の最大値が 240.4μg/10cm2/hから 267.3μg/10cm2/hということで、含量 が58%と増えても溶出量が増加しなかった例と見るべきなのかどうかということがあり ますが、こういう情報がありまして、なぜこういうことが起こるかという原因も不明で ございます。  一方で in vitro の溶出試験では試験片のDINP含量と溶出量とに用量相関的な データがございまして、in vitro の試験結果と in vivo での実際の溶出には乖離があ ると言わざるを得ないと感じております。  それから、先ほどの外海先生の食品をいろいろ測っていただいた情報から見ても実際 の総量的な評価は難しいのですが、数μg/kg/day程度のフタル酸エステル類の暴露はほ かのところからもあるのではないかと想定されるということでございます。  この資料のまとめとしては、 mouthing 時間が長くなる傾向のある元来しゃぶること を目的としているおしゃぶりといった玩具がDEHPを含有する塩化ビニル製であった 場合には、理論的にはDEHPのTDIの下限値を超える暴露が生じる可能性があると いうこと、DINPについてはおしゃぶりに使用されたとしてもTDIを超える暴露は 現実的にはまず生じないものと考えられるが、極端な条件を想定するとTDI近くの暴 露が生じる可能性は否定し切れないのではないかという点、それから、通常は玩具以外 のものをしゃぶる行動をとる乳幼児が玩具ばかりをしゃぶると仮定した場合には、その 玩具がDEHPを含有するものであれば暴露量はTDI値の下限値近く、場合によって はTDIを超える可能性が懸念されることになるのではないかということの、整理でご ざいます。  資料10は海外の状況でございます。欧州連合(EU)では平成11年12月に3歳未満の 子供が口に入れることを目的とするDEHP、DINP等6種類のフタル酸エステルを 含有する塩化ビニル製の玩具、保育用品については期限付きの暫定的な措置を講じてお ります。この措置は3カ月毎に更新されていて、現在得ている情報では本年9月5日ま での期限付きの措置ということでございます。アメリカの方では平成10年12月に法的な 規制ではなくて、3歳未満の子供が使用するフタル酸エステルを含有する玩具を流通さ せないよう業界団体に要請したという情報がございます。  以上でございます。 ○井上座長  どうもありがとうございました。  委員の先生方も必ずしもファミリアでない mouthing というおもしろい膨大なデータ を御説明いただいて、興味深くお聞きいただいたと思います。このデータも厚生科学研 究であるわけですけれども、これを担当してこられた先生方のこれについての御説明を 付加的につけ加えていただく点などがありましたら伺いたいと思います。 mouthing の 検討をなさいましたのは谷村先生とおっしゃいます。先生、どうぞ。 ○谷村参考人  詳しく御説明いただきましたので追加はそれほどございませんが、おしゃぶりの使用 時間は非常にばらつきがありまして、資料7の7ページの図3に被験児ごとに何をどの くらいと分けて示しておりますが、その8カ月のところでおしゃぶりを非常に長く使っ ている例があります。 これが今回のデータで三百何分という長い例ですけれども、オランダでも6カ月〜12カ 月児14名の中で1名、このぐらいの長い子供が含まれておりました。そのようにおしゃ ぶりは差があって、非常に長時間使用する子供がいる可能性があるということを念頭に 置いてこの問題を考えなくてはいけないと思っております。 ○井上座長  大事な点を御指摘いただきまして、ありがとうございました。単なる平均で子供と乳 幼児の生態についてかたがつかないということかと思います。この点については統計的 手法についてのいろいろな問題があります。今の点なども考慮に入れた形になろうかと 思うわけでありますが、統計の専門家として大隅先生のお話を伺いたいと思います。 ○大隅委員  統計数理研究所の大隅と申します。今日はここに臨時の委員で御参席させていただい ております。実は基準課から初めにこの話を持ち込まれたときに大変困りまして、率直 に申し上げますが、果たしていわゆる統計的手法が適用できる範疇にあるかという非常 に根本的な問題があります。  しかしながら、初めにお断りを申し上げますが、最先端の統計学といいますか、既に 最近は統計学と言わないで、我々は統計科学とかデータオリエンテッドということで データサイエンスと言っているわけですが、データに依存してどこまで何がわかるかと いう観点からアプローチすることも非常に重要であると考えております。そういう例と して非常に顕著な例だと考えているわけでして、したがいまして、いわゆる古典的な統 計理論で言う母集団を想定したり云々ということではありません。  しかしながら、統計理論がどの程度利用できるかということで言いますと、今風の言 い方で言いますと、いわゆるコンピュータ・インテンシヴ(計算機集約的)といいます か、コンピュータを駆使して、 Monte Carlo法という名前が出ましたが、シミュレーシ ョン的なやり方で現実のデータ、取得したデータの持っている性能の範囲でどのくらい のことが議論できるか、という見方もあります。  したがいまして、私はシナリオと呼んでおりますが、資料9で事務局から説明いただ いたものが3つありますが、1つのソリューションではアプローチできないだろう、し たがってデータが持っている特性の範囲で記述できる範囲のシナリオを幾つか用意して シミュレートしてみてはいかがですかということをサゼスチョンさせていただきまし た。その結果が事務局から資料9で御説明いただいたことでありまして、これはその前 の厚生科学研究費で行われた研究の多くの情報がなるべくその中に含まれて、その情報 がなるべく使えるようにという前提のもとで、かつ先ほどから出ておりますように安全 性というか、最大限安全性に配慮するようなやり方はないかということで考えさせてい ただいたシナリオです。  事務局に的確に御説明していただきましたので、その内容について私の方から特に指 摘することはございませんので、従来ない方法ということでいろいろ御意見、コメント がありましたらお答えしたいと思います。  以上です。 ○井上座長  谷村先生を初め大隅先生、どうもありがとうございました。中澤先生もこれには関与 しておられるのですけれど。 ○中澤委員  この研究は、平成10年度から国立医薬品食品衛生研究所でこの膨大な仕事がなされて きました。私も班会議でお話を伺っておりましたときに、ともかく食品と同じような扱 いができないということが1点と、赤ちゃんが対象ですから赤ちゃんにしゃぶらせるこ ともできなくて、大人がやらなければいけないということが1つ。それから先ほど事務 局から御説明がありましたようにin vitro、in vivo のデータの乖離が非常に大きいと いうこと、 chewingの時間を見ましてもものすごく分布しているということで、本当に 最新の統計科学を駆使しないと結論を導き出すのが非常に難しいような事象ではないか と感じるわけです。 ○井上座長  いろいろ御苦労のあった背景についてお伺いしました。時間がなくなってはおります けれども、ぜひ大事な未来を担う乳幼児の問題、安全性の問題にかかわっておりますの で、このことについて御質問をどうぞ。 ○津金委員  乳児は40例に基づいて、溶出試験は25例に基づいて、それですべての組み合わせでシ ミュレーションされているのですけれども、ということはこの40例、25例のデータは極 めて重要な位置を占めると思うのですが、この40例のサンプリングは実際にどのように 行い、対象にしたのかということ。  それから、40例のデータを見ていると、その人たちのそばにおしゃぶりがあるかどう か、玩具があるかどうか。特におしゃぶりが総時間をものすごく決めていて、おしゃぶ りの時間が長いと玩具の時間が極めて少なくなるという関連も見られるので、もっと数 を増やしたりすると、このシミュレーションでは考えられないようなちょっと違った データが出てくるような可能性もあるのではないかということです。  溶出試験は子供にはできないので大人にしかできないのですけれども、実際に子供と 唾液の構成とかそういうものはかなり違うような気がするのですけれども、そこら辺は どうなのかということ。  それからもう一つは統計で、これは結局ノンパラメトリックですべてのものをやって いるのですけれども、例えばパラメトリックなもので分布を考えて例えば95%上限の部 分とか、そういうものを入れてのシミュレーションということは考えられないのでしょ うか。これらは質問ですけれど。 ○井上座長  津金先生の御質問は3つで、最初のものが谷村先生、その次が中澤先生、最後に大隅 先生にお話しいただこうと思います。いろいろ検討なされてきた内容がありますので、 どうぞよろしくお願いします。 ○谷村参考人  mouthing行動は、手で物をつかめるか否か、一人で移動できるか否かなどの赤ちゃん の発達状況によって大きく異なりますので、各月齢児同数ずつランダムにお願いしまし た。 ○津金委員  ランダムといっても全くランダムというわけではないですね。ある特定の、例えば知 り合いの方とかになりがちですよね。難しいのはわかるのですけれども。 ○谷村参考人  1つは育児サークルにお願いして、あとは周りの人たちの近隣に住んでいる方です。 ○津金委員  都会に住んでいるのですか。 ○谷村参考人  育児サークルの方は全国です。 ○津金委員  マンションとかいろいろあるわけですね。 ○谷村参考人  両方含まれておりました。家族構成もいろいろですので、兄弟がいると mouthing が 少ないとか、そういう観察がされています。  それから、人数を増やしたらどうかということでございますが……。 ○井上座長  おしゃぶりのウエートが占める比率についてです。 ○谷村参考人  御指摘のようにおしゃぶり以外のものの行動はそんなに大きな違いはないと思いまし た。それは周りのものにどんどん関心が移っていきますので、それが自然な状態だと思 います。  おしゃぶりにつきましては親が口にくわえさせて、子供は自分では外さないで親が外 すまで口に入れていまして、先ほどの御説明にもありましたように口にくわえたままほ かのことをします。それが特徴でしたので、その家庭のおしゃぶりの与え方によって大 きな違いが出る。この長時間の子供は活動時間から食事と睡眠時間を除いた時間で、そ の大体半分ぐらいを使っています。子供の行動から考えまして、そのくらいならば妥当 ではないかと思いました。 ○井上座長  おしゃぶりを増やした場合のシフトについては。 ○津金委員  おしゃぶりが傍にあるかどうか、おしゃぶりを与えるかどうかがものすごく決定的に なりますね。総時間にしても玩具のしゃぶる時間の両方に対してものすごく決定的な力 があるので、おしゃぶりがある症例が幾つあるかによって随分違ってくるのではないか と感じたのですけれど。 ○谷村参考人  おしゃぶりの使用の割合はよくわかりませんが、外国から比べると日本は少ないけれ ども、育児様式が欧米化しておりますので、これから増える可能性もありますので、お しゃぶりが多くなる可能性はあると思います。 ○井上座長  それでは、中澤先生。 ○中澤委員  唾液の構成成分といいますか、そういうことで私どもが一番危惧するところは、先ほ ど来出ておりましたようにジ体からモノ体に変換されるのではないかということで、こ れにつきましてはちょうど一昨日に私どもの研究班の前期の班会議を開いたのですが、 この研究を実施されております国立医薬品食品衛生研究所の先生方からの中間報告の中 でジ体からモノ体に代謝変換されており、これは酵素によるのだと思いますが、起こり 得ると考えられます。ただ、少なくとも私は赤ちゃんと大人でどうだということに関し ての知見を持っておりません。山田先生にかわって担当される米谷先生が今日いらっし ゃっておりますので、もし米谷先生の方で補足されることがあればお話しいただければ と思います。 ○井上座長  米谷先生、今の点はいかがですか。あと、人工唾液ではいろいろなものはつくられて いるのですか。 ○米谷委員  唾液に関しまして例えば人工唾液、そういうものはございます。ただ、先ほども事務 局からの御説明で強調されていましたように in vitroでやりますと非常に細かな分布、 狭い分布をするのですけれども、in vivo の実験結果はすごくばらついているんです。 ですから、 in vitroからそのままin vivo にはなかなか解釈を移していけないのではな いか、外挿していけないのではないかと思っています。  ほかに、唾液に関しまして先ほど中澤先生からもモノ体に分解されるという話もあり ましたけれども、もう一つpHの影響がどうかということですが、pHのいろいろな影響は 余りなかったというのが我々の古いデータでございます。その辺が私たちが持っている データです。 ○井上座長  この点に関連して河村先生は特にないですか。よろしいですか。  それでは、大隅先生お願いします。 ○大隅委員  なかなか難しい質問で、回答に困ってしまうのですけれども、率直に申し上げます が、我々が一番重視することは先ほど申し上げたように基本的にはデータのとり方であ るわけです。先ほど御指摘があったようにデータのとり方がどうあるかということでも あるのですが、同時にデータをとるとり方の環境が、統計的に母集団が云々とか、より 精密に書こうとしてもできないこともあるわけです。  したがって、そういう範疇でどの程度の仮説というか、これは統計的な意味の仮説で はなくて、もっと緩やかな意味の What-ifという程度のものを考えてシナリオを幾つか 用意して検証すべきではないかという提案をしたわけです。ノンパラメトリックな方法 という言い方が正しいかどうかはわかりません。ただ、正規分布、いずれの分布を見て いただいても、これ自体が正規分布になっているということは、特におしゃぶりの場合 は非常に問題がありまして、これはむしろテクニカルな話になりますが、多分おしゃぶ りをしているかしていないかというのは別データのように扱って、さらに別のモデルを つくるべき問題だと思っています。しかし、これは検討するだけのバリッドなデータが あるかということで考えなければならないことです。 したがいまして、パラメトリック的な検証も行ってみてはいるわけです。  それと比べますと、全体に安全性ということから考えたときにどちらを選ぶかという ことを言いますと、例えばいい例が平均ですが、平均をとるとスムーズ化されますか ら、このような例では安全性に対して多分甘くなるわけです。であれば、現実のデータ をもって一種の疑似母集団と見て、その標本から発生させてシミュレーションで推定す る方が望ましいのではないかという案を提案させていただいたわけです。 ○井上座長  ただいまの御提案は、際立ったケースの子供の玩具ということを中心にした特徴に対 しての御見解が中心になっていますので、各委員の先生方もその点を特によく御討論い ただくことが肝要かと思いますけれども、ほかにございませんでしょうか。 ○大隅委員  続けてよろしいですか。したがって、結果を見ていただくと、おしゃぶりを含めた場 合をやっているわけです。同時にシナリオとして提案させていただいた、事務局から説 明のあった2番目は3番目に含まれますから、一種の Monte Carloシミュレーションを やっているわけですけれども、その回数を繰り返すことによって現実的にこのデータか ら見たときにどの程度の発生頻度で起こり得るかということを推定しているわけです。 ○井上座長  津金先生はいかがですか。よろしゅうございますか。 ○津金委員  よろしいです。 ○井上座長  ぜひいろいろ御討論いただきたいと思いますが、ほかにございませんか。  それでは、コンセントレートした御討議をいただいたものと考えさせていただきまし て、一通り御議論いただいたと考えまして、ただいまの御討論の内容を含めまして、事 務局からの規格基準の改正についての提案を配っていただきます。ただいまの御議論を 組み入れて加筆訂正等をする必要があるとお考えの場合は積極的に御発言いただきまし て、それで修文していく形になろうかと思います。                  (資料配付) ○井上座長  それでは、御説明をお願いします。 ○事務局  最初に恐縮ですが、参考資料の2枚目を見ていただいた方がわかりがいいかと思って いるのですが、食品衛生法が対象としておりますおもちゃにつきましては2枚目にござ います。4通りに分かれておりまして、その一に紙、木、竹、ゴム、革、セルロイド、 合成樹脂、金属又は陶製のもので、乳幼児が口に接触することをその本質とするおもち ゃがあるわけでございます。  先ほど配らせていただきました1枚紙の説明に移らせていただきますが、これも告示 で規格基準を定めたいという考えでございまして、食品衛生法第29条第1項において準 用する第7条第1項の規定に基づき「食品、添加物等の規格基準」、この中におもちゃ の規格基準もございますが、「第4 おもちゃ B おもちゃの製造基準」に以下を規 定ということで2つの案を書いてございます。  1つ目は、合成樹脂製のもので、乳幼児が口に接触することをその本質とするおもち ゃの製造には、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)あるいはフタル酸ジイソノニルを含 有するポリ塩化ビニルを使用してはならないというものでございます。もう1つは、合 成樹脂製のものの製造には、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)を含有するポリ塩化ビ ニルを使用してはならないということでございます。これに関する試験につきまして は、先ほど器具の方でお示ししました材質試験を考えております。御議論の中にもあり ましたように in vitroの溶出試験から in vivo の溶出が想定できないということで、 こちらに関しては溶出での規定は考えておりません。  以上でございます。 ○井上座長  ただいま御説明いただいたとおりでございますけれども、あらかじめ作ったものでご ざいますから、先ほどの議論の点を含めてこれにつけ加えたり訂正する必要があれば御 提案いただいてよろしかろうと思いますけれども、いかがですか。特にこの内容でよろ しいですか。  では、この内容でよろしいと判断させていただきまして、この案をもってこの部会に おける結論とさせていただきます。  そうしますと、今後の取り扱いをお願いいたします。 ○事務局  今後、先ほど同様パブリックコメント、WTO通報等の手続を行います。それらの手 続に基づきまして、意見等が提出された場合にはその内容を検討し、それから分科会で の御審議をお願いすることとなります。 ○井上座長  そういうことでございますけれども、御確認くださいますようによろしくお願いいた します。 今日、2つの案件について御討議いただいたわけでございますけれども、全 体を通じてさらに言い残した点、御質問を残した点はございませんか。 ○福島委員  これは今までの議論にどうこうということではなくて、今回こういう措置をして、先 ほどの話で例えば手袋の場合でもDEHPを既に使ってはいない。 ○井上座長  そういう指導でございますね。 ○福島委員  現実的に。要するに、これを禁止すると手袋にしても、例えば可塑剤というか何かほ かにまた使うわけです。そうすると、新しく出てきたものに対する安全性は一体どうな っているのか。 結論的に言うとそこら辺がわからないですから、かえってDEHPの方がいいような気 がするわけで、そんな気もしたんですね。  そこら辺は現実的にこれにかわってどういうものが使われる可能性があるのか、使っ ているのかということを一遍調べる必要があるのではないか。また、それに対してそれ らがどうだったかということについても考えていく必要があるのではないかという気が しました。 ○井上座長  私の方でも御挨拶しようと思っていたところでありますけれども、事務局から今の福 島委員の御発言に対する御回答はございませんか。 ○基準課長  先生の御意見はまことにそのとおりな部分がございます。ただ、すべてのものにつき まして事前に安全性のデータという形での許認可制になっていないところから来る問題 だろうと思います。こういう化学物質は日本だけで使われているわけではございません で、先ほどヨーロッパの状況とかアメリカの状況も御披露させていただいたりしまし た。そういう点では広くアンテナを広げて、いわゆる問題があることが示唆されれば、 直ちにその部分に対して議論もしていく。データを集め、あるいはデータをつくり議論 していくという形でやっていかざるを得ないと思います。  ただし、どんな使用実態になっているのかという点についてはこれからも実態調査は 定期的にといいますか、毎年というわけにはいきませんけれども、しかるべくタイミン グでやっていき、実態を把握する必要があるだろうと思っております。ただ、おもちゃ について言えば、塩ビそのものにつきまして日本の玩具業界が、徹底しているかどうか はともかくとして、塩ビそのものは使わないようにしましょうという動きでいるようで ございます。それはあくまでも自主的な行動でありますので、今回私どもが科学的に見 て、まず2品目についての法的規制をかけたいと思っておりますし、そのほかのフタル 酸類等についても必要なデータをさらに集め、検討していく必要があるだろうと思って おりますが、実態につきましてこれからどういうふうになっていくのかは調べてみたい と考えております。 ○井上座長  他の化学物質についても御検討を進めていかれるという回答でございます。  これで本日の予定された議事はおかげさまで十分な討議を含めて進行したことになろ うかと思います。フタル酸類の討議につきましては、この部会は容器包装部会と毒性部 会が合同の形でもって開催されてまいりましたが、フタル酸類については私が座長とし て取りまとめさせていただいてまいりましたけれども、黒川部会長、何か最後にお話は ございませんか。 ○黒川部会長  ちょうど時間ぴったりにすばらしい座長なので何もないのですけれども、おもちゃの 方で前に事務局の方とディスカッションしたときに、暴露量や何かが余りに極端にとり 過ぎているのではないかという批判が出るかもしれないということでいろいろ考えてい たのですけれども、かつて環境庁のときに土壌中のダイオキシンの暴露ということがあ って、特に砂場で乳幼児が砂遊びをするときに口からどのくらい入るか、それを想定し ての規制値ということで非常に極端な例を積み重ねていってやった。つまり、安全性の 極端といいますか、究極的な数字をもってして規制値を決めたということで、それに似 たようなことで安全性ということであると、統計とかデータサイエンスとかいろいろお っしゃったのですけれども、そちらの方とも絡み合わせて問題もあるかもしれませんけ れども、安全性ということで結論としては使用してはならないということに持ってきた のは結構だと思っておりました。  以上です。 ○井上座長  それでは各委員の先生方、御協力いただき、ありがとうございました。また、事務局 は大変膨大なデータの御説明をありがとうございました。議事をお返しいたします。 ○基準課長  どうもありがとうございました。予定どおり2つの案件につきまして規格基準の案と その趣旨について結論をいただきまして、ありがとうございました。これから先ほど申 しましたような手続を進めていき、また御注文のあった点がいろいろございますので、 まとまりましたところでもう一度本部会を開きまして、全体の結果がこういうふうにな ったということ、あるいはこういうことでいかがかという点をもう一度御議論、御審議 いただくことがあろうかと思いますので、その節はよろしくお願いいたします。  本日はどうもありがとうございました。                                     −了− 照 会 先 :厚生労働省医薬局食品保健部基準課 坂本・平川        電   話 03−3595−2341   内線2483,2487        ファックス 03−3501−4868