01/07/13 第2回医師分科会医師臨床研修検討部会議事録 第2回 医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会 日時 平成13年7月13日(金)    10:00〜 場所 厚生労働省本館専用第21会議室 ○医事課長  定刻になりましたので、ただいまから「医療審議会医師分科会医師臨床研修検討部 会」を開会させていただきます。部会委員の皆様方におかれましては、お忙しい中をご 出席をいただきまして誠にありがとうございます。はじめに、本日の委員の出欠状況を ご報告させていただきます。本日は高梨昇三委員、高橋真理子委員がご欠席でございま す。また、本日もオブザーバーとして文部科学省から高等教育局医学教育課の村田課長 が出席してございます。それでは矢崎部会長よろしくお願い申し上げます。 ○部会長(矢崎)  おはようございます。お忙しい中、ご多用のところをご参集いただきまして本当にあ りがとうございました。議事に入りたいと思いますが、本日は、「臨床研修の現状につ いて」ということで、事務局で臨床研修病院のヒアリング等を準備していただいており ます。本日の進め方について、事務局からお願いいたします。 ○事務局  第2回の検討部会につきましては、第1回会議の後、部会長にご相談を申し上げまし た結果、「臨床研修制度の現状」につきまして審議を行っていただく上で、より具体的 にご理解をいただくため、臨床研修を行っていただいている施設からヒアリングを行う ことといたしております。ヒアリングの対象施設といたしましては、大学病院、臨床研 修病院からそれぞれ1施設、研修に熱心にお取り組みをいただいている東京慈恵会医科 大学及び名古屋第二赤十字病院にお願いし、それぞれ指導医と研修医の先生、それぞれ お1人ずつにおいでをいただいております。  それぞれの施設から研修の現状について、20分程度でご説明をいただくこととしてお ります。また、ヒアリングの後、前回のフリートーキングで話題に上りましたもののう ち、「臨床研修の改善に向けた取組み」の紹介といたしまして、福井委員からご説明の ご準備をいただいております。それぞれのご説明後、全体で意見交換を進めていただけ ればと存じております。  併せて資料の確認をさせていただきます。本日の資料につきましては資料の1として 前回の議事録、またヒアリング等にかかる資料として資料2、資料3、また、別に番号 をふってありませんが、本日ご欠席の高橋真理子委員から1枚紙の資料のご提出をいた だいておりますので、併せて配付をさせていただいています。以上ご説明申し上げまし た。よろしくお願い申し上げます。 ○部会長  どうもありがとうございました。前回の議事録はもう既にインターネットで公開済み ですので、これは省略させていただきます。  早速議題の1の「臨床研修病院におけるヒアリング」を行いたいと思います。はじめ に東京慈恵会医科大学の報告をお願いします。討論、あるいは事実の確認をしたいと思 いますので、説明時間20分ということを、お守りいただきたいと思います。よろしくお 願いいたします。 ○小林医師(東京慈恵会医科大学)  本来ならば本院の研修委員長の北原本院副院長が来るはずだったのですが、海外出張 のため、私、柏病院の副院長であります小林が代理でご説明をさせていただきます。  第2回資料、資料2−1、「東京慈恵会医科大学提出資料」に基づきまして、ご説明 させていただきます。  最初に施設・病院概要ですが、私どもの病院は4つの附属病院からなっておりまし て、全病院の病床数は2,744です。その内訳は本院が1,076床、青戸病院が390床、第三 病院が638床、千葉にあります柏病院が640床となっております。2000年度における1日 平均総入院患者数は2,389名、外来患者総数は7,807名でした。常勤の医師数は801名、 看護婦数は2,465名となっております。  剖検率ですが、そこに書いてある数字が間違っています。総数が296と書いてあります が、217の間違いです。296は1999年の数字です。全国的に少し剖検率は低下する傾向に ありまして、私どもの病院でもかなり不十分ではありますが、剖検率12%、剖検件数は 217となっております。各附属病院の内訳は資料に記載されたとおりです。  私どもの病院では、「初期臨床研修概要」という分厚いものを毎年発刊していますの で、この内容をベースにお話を進めさせていただきたいと思います。この冊子を皆様方 のお手元に配付できればと思ったのですが、部数が足りなかったものですから、その一 部をコピーして本日の資料とさせていただきました。  「初期臨床研修プログラム」に「総則」というのがあります。この「総則」をとりあ えず説明させていただきます。1項目は、研修医の身分ですが、附属病院長直属という ことになっています。研修期間は2年間。4の(1)の所で、「研修は原則として当院 の附属4病院で行う」ということになりまして、(2)の研修内容は原則として「総合 診療方式を採用している」ということです。3番目として、総合診療方式の期間につい ては、内科、外科、小児科、救急、麻酔科及び選択科をローテーションいたしまして、 この期間に必須科研修を行い、その後、志望科研修を行うというのが骨子です。  6番目といたしまして、「協議機関」として研修についての具体的事項を決定するた めに、研修委員会を置き、研修委員会は研修に関する企画・運営・管理に当たると定め ております。その1つ1つの細かい点について資料に基づいてご説明していきたいと思 います。  2年間の初期研修期間の臨床研修実習方法は、資料に示したとおりです。資料の基本 型が基本になっていまして、15カ月間の総合診療方式のうち、最初の5カ月間は志望科 に配属されます。その以降に必須科である内科、外科、小児科、救急、麻酔科を各2カ 月間ローテーションするのが基本になっています。必須科を志望している者に関しては 必須科部分、志望科と書いてある所を選択実習とすることが認められております。実際 に選択科としては内視鏡部、あるいは放射線科、産婦人科等が多く選ばれているようで す。  その後の9カ月間は志望科で研修を行うことになっていますが、必須科志望者以外の 者に関しては、最後の第2年目の7月、8月の所で選択科を選ぶ権利を有するという形 になっています。こういう形で現在行われていますが、研修医の先生方からは、非常に よろしいと言いますか、いろいろな所が回れて非常に有益であった、という評価を受け ています。  前の頁の裏側の所、「平成13年度臨床研修医定員」の所を見ていただきたいのです が、平成13年度の研修医の募集定員は合計117名でした。各科の募集定員の内訳は資料 に書いてあるとおりです。初期臨床研修医の募集対象は、1年時のみで、2年時は実施 していません。募集方法は医学部、医科大学等へ募集要綱、ポスターを送付しまして、 全国公募の形で行われています。  採用に当たっては、他大学出身者の場合には推薦状、成績証明書の提出を求めており ます。本学及び他学出身者を含めまして個別面接、小論文による採用試験を実施して選 考しています。ちなみに平成13年度の採用研修医数は97名で、内、他学出身者が13名と いう形になっています。総合診療方式の研修病院としては本院に47名、青戸病院に14 名、第三病院に19名、柏病院に19名が配属されていまして、その後の志望科研修につい ては、各病院をローテーションする形になっています。  「平成13年度、初期臨床研修のプログラム」に移らせていただきます。そこに目次が ありますように、全科からそういうプログラムが提出されていますが、時間の関係で一 部分だけ説明させていただきます。「研修到達目標」、「一般初年度臨床研修目標」が ありますので、そこを見ていただきたいのですが、一般初年度臨床研修目標は、初期診 療、いわゆるプライマリーケアが実践できる一般医の育成を目標として作成されていま す。即ち初期臨床の基本的臨床能力の修得、2番目として全人的医療の習得、3番目と してチーム医療における協調性、4番目、自分の能力の限界を判断して、きちんとほか の科、あるいは上級医に相談する能力、健康管理と社会福祉、社会復帰についての判断 能力、終末期医療、適正な記録作成の能力等を育成の目標として掲げてございます。  その後に、参考として、「内科初期臨床研修到達目標」がありますが、各科の目標に ついては、いわゆる一般目標(GIO)、行動目標(SBO)からなっています。ちな みに内科は、内科、各診療科に分かれていますので、内科、各診療科それぞれのGI O、SBOも収録されています。  「臨床研修のプログラム細則」ですが、臨床研修のプログラム細則といいますのは、 各科の研修医受入体制、週間予定表等を示したものでして、そこに内科、小児科の細則 を参考として資料に加えていますので、ご覧になっていただきたいと思います。特に小 児科の部分(141頁)、小児科を初めとしまして複数の診療科では、研修場所として関連 施設を掲げております。この関連施設というのは、それぞれの関連施設で扱う疾患の特 異性がありますので、そういう関連施設を研修の間に回るようにしています。それが 我々の病院の研修の特出すべき点と言えるかもしれません。  3番目として「研修委員会及び研修指導医名簿」があります。研修委員会及び研修幹 事会がありますが、その概要について説明いたします。研修委員会というのは学事部の 教務課が主幹しまして、前述のごとく、研修に関する企画・運営・管理を行っていま す。全体の委員長は本院の教育担当の副院長がこの任に当たることになっていまして、 資料のごとく研修委員会名簿の所には、研修幹事会の者が院長を含めて9名、その他の 研修委員全部を含めますと46名の委員によって構成されています。全体の研修委員会に は分院の責任者も出席して協議に加わる形になっています。青戸、第三、柏の各分院に もそれぞれ研修委員会がありまして、それぞれの研修委員会の委員長は、そこの病院の 教育担当の副院長が主宰する形になっています。  資料の中にはありませんが、指導医は診療科の総括責任者、一般的に教授ですが、教 授が指導責任者を務めていまして、診療医長以上、助教授、講師がこれに該当します が、これらが主任指導医、診療医員、助手が指導医として名簿に名前を連ねる形になっ ています。  ちなみに先ほどお話しました関連施設に関しても研修指導医体制、どういう医師が研 修指導医として当たるかということを明記しています。  資料の最後ですが、「評価表」について説明します。研修医の評価は全科共通の「初 期臨床研修医評価表」と、「各科評価表」の2つからなっています。初期臨床研修医評 価表というのは、前述の一般初年度臨床研修目標の達成度、並びに医師としての資質を 評価するものからなっています。即ち人間像、協調性、責任感、積極性、診療、全体的 なコメントの評価の6項目からなっていまして、ローテイト各科の評価は漸次、配属科 に申し送られるシステムになっています。  この評価は、研修終了時の総合評価に反映されまして、私どもの所で行っています後 期臨床研修、レジデント制ですが、レジデント採用時の資料という形になっています。 なお、研修終了証は研修プログラム2年間の課程をすべて実習、終了した者に現在のと ころは交付される形になっています。  各科の評価表として、内科の評価表を参考に資料に加えましたが、こちらは医学知 識、技能を主体として自己評価する形式をとっています。以上が資料に基づく説明です が、それ以外の点について続けて説明をさせていただきます。  「診療内容に関わる研修医の裁量の程度」がどうなっているか、という問い合わせが ありましたが、初期臨床研修医につきましては、研修医の裁量により医療行為を実施す ることは原則禁止しております。必ず指導医の補佐が必要という形で研修制度を実施し ています。  「研修医の待遇」についてですが、1カ月5万円の奨学金が支給されています。私学 共済保険への加入とか、住宅手当、賞与、時間外手当等は支給されていません。ただ し、2年目からは当直手当が支給される形になっています。いわゆるアルバイトについ てですが、総合診療方式での研修期間中は禁止という形になっています。その後、各科 配属になりましてからは、各志望科の判断に委ねております。  「指導医の待遇」についてですが、指導医個人には指導費は払われていません。ただ し、各診療科に対して研修医1名当たり1カ月5,000円の研修医指導費が振り込まれてい ます。  「初期臨床研修必須化に当たっての課題・意見」ですが、研修医ならびに指導医の経 済保障が絶対条件と考えています。  2番目としまして、当院の研修プログラムでも前述のごとく、関連施設での研修が含 まれていますので、関連施設を含めた研修が可能な制度を是非立案していただきたいと 考えています。  3番目としまして、当院では130名から140名ぐらいの研修医を受け入れることが可能 な施設ですが、研修医定員の算定方式がどういう形になるのかということを明確にして いただきたいと思います。  4番目としまして、研修プログラムは卒前教育と一貫性をもって立案されるべきだと 考えますので、大枠の標準化は必要かと思いますが、細部につきましては、各施設の特 徴が生かせるようなものを選択できるような形にしていただきたいと考えます。  5番目としまして、研修終了認定は医師としての資質を評価することが非常に重要で すので、外部の客観評価のみでは不十分と考えます。是非、各施設の評価を含めた判 断・評価が下されるような形にしていただきたいと思います。  現状では全国マッチングプログラムの導入は、少し時期尚早ではないかなというふう に考えています。以上が指導医の立場といいますか、委員会としての意見です。続いて 研修医の菊池から研修医の意見を述べるという形にさせていただきます。では、お願い いたします。 ○菊池医師(慈恵会医科大学)  慈恵医大2年目研修医の菊池と申します。よろしくお願いいたします。今日のヒアリ ングの趣旨のところに書いてありますが、平成16年度から医師の卒後2年間の研修が必 修化されるということで、その具体的な在り方ということで今日お招きいただいたので すが、私が所属している慈恵医大では先ほど小林教授からお話があったように、スー パーローテートという形をとっています。  資料の4枚目になりますが、「臨床研修履修方法」が3つほどありますが、私事です が、私は小児科を志望していますので、志望がすべて小児科になります。最初の5カ月 が小児科、2年目の9月からまた小児科。志望科の部分はすべて小児科になるのです が、5つ診療科、いちばん上ですと麻酔科、救急、小児科、外科、内科と書いてありま すが、私の場合、志望科が小児科ですので、そこの部分は自分の選択科、私は実際には 産婦人科を選択したわけですが、そういう形で研修をさせていただきました。  研修医制度に関して率直な意見を述べさせていただきたいと思います。今回、私が話 させていただく根底にまず「研修医とは何か」という定義を、どのような形で皆さんが 捉えられているか。はっきりとした研修医という定義、あるいは資格、あるいは身分と いうものが、正直はっきりしていないのが現状だと思います。すべてそういったことを 基にいくつか話をさせていただきます。  まず、「研修施設の選択」についてなのですが、現在、我々の施設ではスーパーロー テートをとっていますが、なかには直接志望科、例えば小児科であればほかの外科・内 科等を回らずに一生涯ずうっと小児科を診るというシステムもあります。それが今後2 年の臨床研修が必修化されることによって、是正されることは経験した私としては非常 に良いかと思います。  「研修施設の選定」についてですが、どうしてその施設が研修指定病院になったのか という理由を明確にしていただいたほうが、実際にその病院で研修をしたいという人間 にとって、明確な位置付けになると思います。  「研修で身につけるべき内容」について、資料に各科によっていろいろ行動目標とか 書いてありますが、実際に、我々内科研修といいましてもたった2カ月です。2カ月の 間にすべての診療科を研修することは不可能であり、実際に私は血液内科のみを2カ月 間研修させていただきましたが、その間ほかの神経内科、消化器内科といった分野の研 修はしていませんので、「行動目標」と書いてありますが、その科を回らなければ実際 には行動目標を達成することもできません。  技術的なものとしては採血ですとか、腰椎穿刺、あるいは中心静脈等のことがありま すが、すべてこれは患者さんに対して我々がさせていただくことになりますので、患者 さんのほうにしても研修医の立場をしっかり理解していただいて、そういった医療行為 をしたほうがよいのではないかと考えています。研修医ということで実際にある手技を 断られたりとかいったことが数々ありますが、研修医が実際どういう身分で、どういう 立場なのかということをしっかり定義されたものであれば、そういったトラブルも回避 できるのではないかと思います。  「研修の環境」についてですが、何度も同じことになってしまいますが、研修医の立 場・位置付けがはっきりしていれば、例えば当直室の確保ですとか、あるいは先ほどお 話があったように生活の保障。現在、我々は大学から5万円の奨学金という形のみいた だいておりまして、基本的にはアルバイトは禁止。なかには月5万円で生活ができるわ けではありませんので、卒業をしたにもかかわらず親からの援助を受けている者とか、 あるいは禁止されているバイトを余儀なくされて生活を立てていく、ということを強い られている方もいらっしゃいます。  我々、実際に5万円で生活をしていくのは無理なので、健康保険とか、福利厚生、あ るいは家庭をもっている場合では家族の扶養ということに関して、かなり曖昧な制度に なっていると思います。我々の身分のことに関しては、一応、直属という形になってい ますが、健康保険を含めてそういった整備をしっかりしていただきたいと思います。  指導医に関しては、私は柏病院で研修をさせていただいたのですが、各病院によって 指導医の人数に差、バラつきがあるというのが実際問題です。外科ですと手術日になれ ば指導医の先生はすべて手術のほうに入られて、病棟は手薄になる。そういった状況で 果たして研修医の指導がしっかりできるのかどうか、こういったこともきちんと考慮し ていただきたいと思います。以上です。 ○部会長  どうもありがとうございました。少し時間がオーバーしておりまして、討議の時間が なくなるかと思いますので、この際事実の確認程度のご質問があれば受けたいと思いま すが、何かございますか。 ○星委員  確認したいのですが、志望科は最初に入る時にお決めになるわけですね。そうする と、一応病院長直属ということになりますが、その教授なりなんなりとは特別な関係が 発生することになるのでしょうか。 ○小林医師  一応、卒業時に志望科を表明する形になっています。ですけれども、これはあくまで 一時的なものでして、研修2年後に変更することは全くやぶさかではございません。で すから、クライネなどに関しましては、かなり取り込みということがありますが、内科 などですと、研修が終わった段階で当初の志望科が自分に合わないということで、変わ る研修医は非常に多うございます。 ○星委員  内科というのは例えば血液内科というような志望科で出すわけですか。 ○小林医師  一応、血液内科、消化器内科、神経内科というような形で出しますが、現実に表明し た科に行くかどうかということは、全く別問題です。内科が合わないということでほか の科に変わってしまう人もいます。 ○櫻井委員  他大学出身の研修医、13%と言われましたが、この数字は経年的なものですか、増え ているのですか、減っているのですか、それとも大体同じような数字ですか。 ○小林医師  これはなかなか難しいところですが、かつては研修医に定数は設けておりませんでし た。その当時はかなり他大学出身者が多くこちらのほうに来られていたのですが、現在 は定数を各科で設けているものですから、その分、どうしても受け入れにくくなってい るという部分が目立ちます。大体これぐらいの数字ではないかと思います。 ○宮城委員  2年間の臨床研修医にとって、プライマリケアを十分に修得してもらうというのが大 きな目標の1つだと思うのですが、スケジュールを見ますと2カ月間だけ専属の救急研 修を受けていますが、その研修が終わったらもう一切救急室には当直という形、あるい は夜間の勤務という形での配属はないのでしょうか。 ○小林医師  救急と書いてありますのは、あくまでも救急部です。各科当直はありますから、各科 における当直は救急を当然併せて診るという形になります。 ○宮城委員  その時は救急に来る内科の患者だけを診るわけですか。 ○小林医師  救急部に配属の時は当然すべての患者さんを診ますが、内科の場合は内科の患者とい う形になります。 ○宮城委員  そうしますと、かなり幅広いプライマリケアを学ぶというのには、少し少ない感じが するのですが。 ○小林医師  その辺はご判断にお任せいたしますが、少なくとも内科・外科という部分の志望科を 目指している者に関しては、大体初期の目標は達しているのではないかと思いますが、 眼科・耳鼻科というクライネに関しましては、なかなか全部把握するのは、ちょっと厳 しいかなとも思います。 ○菊池医師  いまのご質問で実際に研修をさせていただいた方の意見としましては、ご指摘のとお り救急部の場合ですと、すべての救急患者を初期対応、プライマリケアをすることはで きます。ただし、その研修2カ月間終了しましたら、例えば内科に行きましたら、その 病院の内科に受診されている方のみですとか、あるいは外科ですと、その病院で手術を して、その後の例えばイレウスですとか、そういったことに関してのみの対応になりま すので、例えばこの表で9月、10月救急部を回った者のみに関しては、以後1年目、2 年目を通して、あらゆる分野のプライマリケアをすることは現状ではありません。 ○横田委員  各診療科の医療技術とは別な問題での研修医の共通項目、例えば危機管理の問題とか がございますね。そういうことの研修・指導というのは、どういう場面で行われるので すか。 ○小林医師  いわゆる災害時の対応ということですか。 ○横田委員  あるいは院内感染とか、医療事故の問題とかです。 ○小林医師  それについてのきちんとしたカリキュラムは、残念ながらいまのところ出来ておりま せん。 ○井部委員  研修医の方の説明の中で、医療行為を患者から拒否されることがあるということがあ りましたが、具体的にどのような医療行為を断られるのか。その時は「研修医ですけれ ども」、ということを名乗って医療行為をしようとされているのでしょうか。 ○菊池医師  技術的な未熟な部分は当然あります。例えばプライマリの部分では採血、あるいは点 滴、血管確保という部分ですが、4月、5月、6月、7月、8月、志望科の段階で実際 に我々の持っている技術というのは全くありません。ただ、その状況で病棟配属なり、 救急外来等を担当する際に、いままで書物だけの知識だけしかなかった我々に、血管確 保ですとか、採血の技術は当然ありませんので、例えば何回も失敗する場合ですとか、 そういった際にはやはり拒否されて「あなたはもうやめてください」ですとか、それは 実際にはあり得る問題だと思います。 ○黒川委員  先ほど各科の定員ということを言われましたが、その根拠は何かというと、いわゆる 関連病院とかいろいろな話で出てくるのではないかなという気がします。そうすると、 日本中の各科の要求定員を足すとどういうことになるのですか。つまりマーケットと か、パブリックの必要は何かということがあってやっているのか。今までは、医療提供 する側の各医局の要求であるわけです。  それをどうするかというのは、やはりある程度議論をしておかないと。例えば日本で は脳外科の医者は毎年どのぐらいいるのかなと。アメリカの脳外科学会でも毎年やって いますから、それをヒアリングをして、いまのところ毎年25人、その25人が7年間の研 修で、最初の5年間のレジデントだと500例の手術をしなくてはいけない。インデック ス・ケースはいくらというのは、毎年毎年検討をしてやっています。そういうことがな い限り、定員というのは自分たちの論理であって、パブリックの論理ではないなと。み んなが必要なものを全部、希望するものを足したら全国で何人研修医が必要かというの を是非1度調べたら、面白いのではないかなと思います。 ○相川委員  2件あります。1件は井部委員のご質問に関係するのですが、折角研修医の先生がい らっしゃるのでお聞きしたいのですが、仮に先生の白衣に研修医という身分証明を書い た場合には、先生は仕事がやりにくくなりますか、それともやりやすくなるでしょう か。個人的意見で結構です。 ○菊池医師  現在、慈恵医大のほうでいただいているネームプレートには「医師」という身分にな っています。先ほど私も発表の際に言いましたが、やはり研修医と言って名乗る場合は ほとんどありません。 ○相川委員  ほかの業種では名札にトレーニーとか書いている所がありますね。それと同じよう に、もし仮に2年間は「研修医」という名札を、更に身分証明の上に付けられたらば仕 事がやりやすいのか、やりにくいのかということです。 ○菊池医師  正直やりにくいと思います。 ○相川委員  ありがとうございます。もう1件は黒川委員のご発言と関連するのですが、先ほど全 国的なマッチングプログラムは、まだ時期尚早ではないかということを伺いましたが、 個人的なご意見でしょうか。その根拠というのですか、どうして時期尚早というのか教 えていただきたいと思います。 ○小林医師  それは各機関のいまの教育制度が必ずしも画一化されていない。最近コア・カリキュ ラムに関する答申が出ましたが、そういうものが全国的にきちんと評価されるところま でいけばよろしいのかなとは思いますが、現状ではかなりの差がありますので、そうい う点でなかなか難しいのではないか。これはあくまで私個人の意見です。 ○磯野委員  評価の問題をお聞きしたいのですが、志望科を志す場合、必須の2カ月ローテーショ ンをやった後の志望科、これをどういう形でやられているかということなのですが、た だ、本人の希望だけでやられているのか、あるいはその間に行われた指導や本人の評価 によって、ある程度これがサゼスチョンされたりするような形が出てくるのかどうか、 それが1点です。  もう1つは関連病院がここでたくさんありますが、関連病院の選択におきましても、 その点においては本人の希望に任せるのか、あるいはそれまで研修をしてきた指導医の 相談とか、あるいはサゼスチョンによって、そういう関連病院を選ぶのかという点で す。 ○小林医師  非常に難しい部分がございます。といいますのは、内科とか、外科とか、診療科に分 かれている部分があります。内科ですと内科講座と言いますが、8診療科でまとまって いる。外科も4つか5つぐらいだったと思いますが、診療科に分かれて外科という講座 を作っています。そういう所では、やはりきちんとした評価が研修医にとって必要なも のですから、評価されているのですが、クライネなどになりますと、現実に各志望科に なりますと、そのままずうっとストレートみたいな部分があるので、必ずしもしっかり した評価は行われているかどうか、ちょっと疑問な部分はあるかもしれません。研修2 年間というのは絶対に分けていますので、クライネと言いましても、研修終了の時には きちんとした研修終了証を出していますし、とりあえずの評価というのはしています。 ○磯野委員  私が聞いているのは、選択をされる場合に、その指導医というものがどの程度サゼス チョンを、評価によってされるのか、あるいは本人の希望だけでそういう選択をしてい るのか。関連病院というのも書かれていますが、関連病院に行くのも本人の希望だけな のか、あるいは指導医のサゼスチョンによって、評価によって何か指導されているのか ということをお聞きしているのです。 ○小林医師  基本的には本人の希望を優先するという形になっていますが、100%という形にはなか なかいかないのが現状です。 ○磯野委員  もう1点は、研修医というものがやりにくいという点もあるということなのですが、 研修医が1人だけでやる行為というのは、どの程度あるのですか。どの程度というのは 分かりにくいでしょうが、つまり1年上でもいいのですが、指導医が常に付いた形の中 で診療行為というものをやられているのか。それとも研修医だけでやっている範囲はど の程度あるのか、この点を聞かせていただければと思います。 ○菊池医師  具体的に言いますと、採血は1人でやらさせていただいています。点滴、血管確保も させていただきます。ただ、ちょっと踏み込んで腰椎穿刺ですとか、かなりの合併症を 伴うもの、中心静脈とかいったものは指導医の方に付いていただきますが、毎回毎回そ のたびに付いていただくわけではなくて、初めの数回、あるいは指導医の先生の判断 で、おまえなら大丈夫という、ある程度の評価をいただいた上で、1人でやらさせてい ただきます。 ○小林医師  そういう医療技術的な問題に関しましては、十分に研修医の判断で可能かと思いま す。問題なのは治療法の選択ですとか、そういうことに関しては、あくまで指導医の下 で行うというのが原則です。 ○部会長  どうもありがとうございました。だいぶ時間が過ぎてこのままいくと、福井先生のヒ アリングの時間がなくなってしまうのではないかと心配しておりますので、次の臨床研 修病院の名古屋第二赤十字病院のお話に移りたいと思います。おそらく質問が多いと思 いますので、ご説明は簡潔に時間厳守で、研修医の先生も含めて20分でお願いしたいと 思います。よろしくお願いいたします。 ○板津医師(名古屋第二赤十字病院)  現在、研修医教育委員会の委員長を拝命しております関係で、今日同伴しました2年 次研修医の村松ともども、本日の説明をさせていただきます。  資料の1頁目に名古屋第二赤十字病院の「理念」、「基本方針」を掲げてございます が、2番目の「高度医療の推進」、3番目に「救急医療の充実」、4番目に5の「教 育・研修の推進」、本日の検討部会のご趣旨に相応した内容が掲げてあります。このこ とが私どもの病院の特徴を一言で表しております。今後の「処遇」という意味でも7番 目の病院の「健全経営の維持」ということも関わってくる話題になろうかと思います。  2頁目、私どもの病院は大正3年に結核療養所として開設いたしまして、昭和44年、 ちょうど私が卒業した年から総合病院となりまして、昭和48年に救急病院指定を告示さ れております。昭和50年、名古屋地区でもっとも早い時期に集中治療のICUを開設し ておりますし、同時にその11月には臨床研修病院として指定されています。ここに当病 院の今日の基礎と位置付けが確立されたと申し上げてよろしいかと思います。昭和59年 には救命救急センターに指定されています、  3頁の2行目、平成元年ですが、新本館棟増改築の完成により、現在の定床数835床を 有するに至りました。「4」にもそのことが記載されています。  「5」ですが、診療科は24科です。したがいまして、後ほど出てきます評価・管理と いう意味では、教育委員会としては24科の部長、責任者が教育委員の委員として関わっ ているということです。このように高度先進医療を目指す総合病院として、専門医の認 定教育施設として、各種指定されています。その資料が5頁「10」、6頁にわたって表 記されております。  6頁「11」ですが、救命救急センターをはじめとする特殊診療部門も各種併設されて おります。 7頁の「14」の職員数、常勤医が200名ということで、日赤92施設の中でダントツに多 い。これは経営上、今後もう少しメスが入れられて削減を迫られる状況にありますが、 しかし、救命救急センターをこなすためには、研修医ともどもある程度の人員を擁さな いとこなさせないという現状でもございます。  「15」、過去3年間の外来受療者数は平均1日2,100余名ということです。以上の沿革 と施設の特性に基づきまして、次の頁、頁が明記されていませんが、これは大学の応募 学生に対する説明に使う資料です。病院名、名古屋第二赤十字病院というふうになって おりますが、その中ほどに強調して紹介していますのは、救急医療と高度先進医療に取 り組む総合病院であるということ。また、その文の中に総合診療方式を採用して、現在 1年次、2年次合わせて36名の研修医を受け入れる、臨床研修指定病院であるというこ とです。  研修方式につきましては、またお話していきますが、指定当初、すなわち昭和50年当 時から1年次研修は全科、総合診療方式のローテイトをしています。2年次は各専門領 域、内科、外科などに若干シフトしまして、所属研修いたします。より専門の先進医療 に触れるという形で研修をする一方で、2年次にあってもこの資料の6頁に戻ります と、救命救急センターということで、7頁の上段5、6行目に書いておきましたが、日 勤帯が32名、当直帯が62名の1年を通して1日の平均の救急患者を受け入れておりま す。したがいまして、2年時になりましてもICUを含めた救急医療の研修として、8 週間が組み込まれております。概要に関してはそういうことです。  「研修医教育委員会開催のお知らせ」をご覧ください、具体的に研修内容、方式につ いてお話していきたいと思います。1頁目は、こういう形て大体2カ月に1度、教育委 員会の開催案内をしています。先ほどの24科の各部長以外にも時々話題によりましては 研修1年時、あるいは2年時の代表者をオブザーバーとして参画させまして、内容につ いて見直す、あるいは要望に応えるべくいろいろ検討をするという形をしています。  2頁、(必修科)というのは内科、外科、小児科、婦人科、整形、ICU、救急外来 という所が必修科になっています。内科は7科ありまして、場合によっては3週間を2 科、複科で研修をしていました。これは非常に研修医にとって不評でしたので今年から 選択にいたしまして、「7科のうち5科、3週、単科の研修という形」に改編いたしま した。  外科に関しては腹部外科を中心に4週は必修です。整形外科は3週。そうしますと、 総合診療方式から言いますと足りませんので、脳外科、胸部外科、移植外科のどれかを 2ないし3週選択するということで、最終的には外科は7週以上を研修する形になって います。   小児科が8週間、救急外来とICUを含めて8週間というのが基本研修になっていま す。 それ以外に4科を選択できるという形になっています。  具体的なローテイトの様子は3頁の1年次、現在1年時のローテイト表です。19名の 内容が示されています。4頁、これは今日出席しております村松君の学年のローテイ ト、2年次のローテイト表です。  全く別に厚生省からコピーをしていただきました。「臨床研修記録」、これは自己評 価表です。到達目標、それは自分で3段階。A、B、Cで評価するという資料がありま す。これが各科研修中、あるいは1年次後に、それぞれ自己評価をして、部長のチェッ クを受けて各科の終了内容を確認する。到達度を確認する資料です。  「評価方式」について移らさせていただきます。5頁、あくまで指導医から研修医を 評価すると同時に研修医が指導医もしくは研修科を評価する、総合評価方式をとってい ます。 資料5頁から7頁にわたっていますが、5頁には態度を中心とした指導医の研修医評価 が書いてあります。特にNo.2の、数年前から取り入れています看護婦長の評価も参考に して科としての総合評価が提出される形になっています。  6頁、研修医からの研修先の科、あるいは指導医について、あるいは研修先のカリキ ュラムについての評価がされています。また、先ほどの指導医評価と同じ項目につきま して、態度、技術、知識に関する自分自身の評価も提出する。これは後日指導医からの 評価と自己評価を照合するという形で、より評価を確認していくと、総合評価的に検討 をしていく資料にしています。  6頁に波線で書き込む場所が書いてありますが、これは研修した時に、研修医から科 に対する要望あるいは改善すべき内容が匿名で自由に記載できるようにしてあります。 自筆ですと大体その人の名前が特定できてしまいますので、できればワープロで分から ない形で科に対する要望を書き込む。その内容は途中もしくは、その年度の終わりに各 科に必ずフィードバックしまして、匿名の形で各科にこういう要望がある。カリキュラ ムや行動目標についての見直しをするようにということで、委員会からフィードバック をかけるという形をとっております。  8頁、例えば腎臓内科の所を見ますと2つ欄がありまして、左側が指導医からの研修 医に対する評価の点数が書いてあります。右側は研修医自身の自己評価という形で数字 が書き込まれています。このような形で集計してチェックをかけるということです。個 別の履修指導に関しましては、各科の指導医が実際現場でタッチして指導をする場合も ありますが、むしろ1年上の、あるいは2年上の、3年上の上級医が直接指導をするこ とが多いわけです。患者さんに関しては、主治医の1人として必ずペアで指導医の監督 の下に主治医として診療に当たるということです。  いろいろな指導医といいますか、上級医がいますので、場合によっては標準化されて いない内容については、Aの指導医とBの指導医が若干展開が違うということで、戸惑 う状況もあるようには聞いています。そして、患者さんとかスタッフとの対人トラブル 的な問題が多い研修医に関しては、研修医教育として個別に対応する場合がたまにある ということです。  診療に係る研修医の裁量の程度は、「あくまで指導医の監視の下で主治医または救急 外来での当直医として診療に携わる」というのが原則となっています。各診療部の研修 実施状況については、先ほどの協議会で開催のつど話し合われ、見直しをされるという ことです。  10頁、中程に当院の毎年の募集人員、6番目に身分、待遇について書いてあります。 身分としては、研修医(常勤嘱託)として採用する。そして給与は1年次で約35万、2 年次で約46万、ほかに諸手当を支給する形です。白衣は全部病院から貸与するというこ とです。時間外の手当は1年次は支給いたしません。2年次からは一定の限度内におい て支給する。学会出張も1年次は認めない、2年次は本人が学会で発表するという場合 は年に1回、学会参加は認めるという形をとっています。  最後に指導医の待遇につきましては特別ありません。全くのボランティアです。ボラ ンティアというよりも教えるということは、指導医自身が学ぶということですので、お 金ではない形で得るものは得ているということで今日に至っています。  「必修化に当たっての課題・意見」ですが、各科ローテイトは、ご覧になりましたよ うに慈恵医大以上に、非常に細切れの研修になっているというのが当院の欠点でもある し、長所でもあるということです。それから、堀江先生がおられますけれども、総合診 療科がないということです。2年次になりますと、一般内科として外来診療に携わって おりますが、専ら救急外来の一次から三次までの救急患者さんを診るということで総合 診療の研修として補うという形をとっております。指導医が非常に多忙で、なかなか専 任の指導医は置けておりません。コミュニケーションのスキルにつきましては、指導能 力の点で、まだ若干問題があるということで、そういう点はグレードアップしなければ いけないと思っています。やや専門領域に偏りすぎる研修内容になっているかというの も、1つ問題点です。  人事の問題で、名古屋大学と名古屋市立大学ですが、関連大学の医局が受け皿になっ ておりますけれども、今後、大学で医局講座制が再編成されてきますと、これの絡みで 2年研修、各科のスタッフの配属が微妙に変化してくるのではないかと思います。最後 に、指導医の再教育の場、ワークショップとか、院内での自己研鑽の機会が必要かと考 えています。以上、うちの病院の必修化に当たっての問題点、意見として述べさせてい ただきました。いまから研修医から発表させていただきます。 ○村松医師(名古屋第二赤十字病院)  名古屋第二赤十字病院研修医2年の村松と申します。よろしくお願いします。先ほど 慈恵医大の菊池先生のほうから、いくつかの項目についてお話がありましたが、私から も同様の項目について、簡単に発表させていただきます。  まず、「研修施設の選択について」なのですが、先ほど当院の板津のほうから話があ りましたように、当院における2年間の研修システムというものは、1年次の全科スー パーローテイト方式、マイナー科は従来からありましたけれども、内科は本年度より選 択制に変更されております。並びに2年次の専攻科ローテイト。基本的に内科以外は研 修医各々で、基本的に自由な選択が認められておりますが、その2年の研修システムか ら構成されております。また、当院の基本姿勢として、全科参加型、すべての科が参加 するタイプの救命救急医療、および高度先進医療を実践しておりまして、現実として入 院患者の半数以上が救急外来からの急性期疾患により入院となっております。2年間の 研修終了後は、例年研修医の半数以上が当院各科のスタッフとして採用されておりまし て、研修2年の終わったあと、専攻科においても、それぞれ先進医療の修得が可能な状 態となっております。  当院での研修を選択した理由は、研修医の意見を総合しますと、おおむね2つに大分 されると思います。1つは、医学部卒業時に、自分の専攻科というものが決定していな い状態で、2年の全科スーパーローテイトをはじめとした研修をしたうえで、専攻科決 定をしたいと望んで、当院を選択した者もいます。もう一つは、あらかじめ卒業時に専 攻科が自分の中で決定しておりまして、研修終了後のスタッフを見据えたうえで当院を 選択した場合と、おおむね2つに大分されます。いずれにしても、どの科に行くという ことを問わずに、救命救急医療を軸としたプライマリーケア、および基礎的臨床能力の 習得を目指して、当院での研修を選択しているという点では、大体共通しております。  2番目としまして、「研修で身に付けるべき内容について」ですが、当院の特徴から して、特に救急手技がメインとなるとは思うのですが、各科における基本手技、並びに 各科の特に頻度の高い疾患に関する知識、診断治療は言うに及びませんが、それ以外に 社会人としてのマナーや、チーム医療に必要不可欠なコミュニケーション、倫理感、情 報収集能力なども、研修で身に付けなければならない基礎的臨床能力に含まれると考え ております。  3番目として、「指導医の指導について」ですが、先ほども話がありましたが、当院 の研修においては、基本的に研修医が主治医を任されることはありません。研修医が受 け持つ患者、各々の主治医が指導医となっております。それゆえに、研修医1人に対し て指導医1人という、完全マン・ツー・マンの方式ではなくて、研修医1人に対し数人 の、それぞれ年齢であるとか役職の異なる医師が指導医として付くことになります。そ の指導医により、治療方針などが異なって、研修医としては困惑する点も多々あるので すけれども、個人的には選択肢も増えることとなり、良いことであるとは思っておりま す。ただし、その評価に関しては、カンファレンス並びに文献検索などを通して、自分 なりの評価をしなければならないとは思っております。  また、当院では、救急外来において、自分が最初に診て、担当した患者さんの診断や 治療などに関しても、研修医の依頼箋というものがありまして、そういったものである とか、研修医だけではなく、スタッフもそれぞれイントラネットと言いまして、病院内 のネットが張られておりますので、それなどを通じて、その患者の当該科の医師より適 切なアドバイスであるとか、フィードバックが適宜得られるように、一応配慮はされて おります。  4番目として「研修環境について」ですが、当院には基本的に研修医のための宿舎と いうものは用意されておりません。ただ、希望があれば斡旋はしていただいているとい う状態です。下宿する際は、最高で2万7,500円が支給されることにはなっております が、個人的にはプライバシーの面であるとか、生活のQOLなどを考えて、病院が研修 医に対して下宿を強制するべきではないと私は考えております。  また、院内においては、研修医1人に対して、机やロッカーやイントラネットのLA N用のジャックが1つずつ支給されており、その他、仮眠室であるとかシャワー室など も完備されておりまして、当直時などは特に不自由しない環境はしっかりと整っており ます。 ただし、実際のところ当直時に十分な睡眠がとれることはめったにありません。  今後、臨床研修必修化に当たっての課題並びに意見を、研修医の立場から述べさせて いただきますと、当院では以前から全科スーパーローテイト方式、特に当院は名大中心 の関連病院ですので、名大方式と言われておりますスーパーローテイト方式を昭和50年 代から導入しております。新たに研修必修化となっても、さほど大きなトラブルを起こ すこともなく、おそらく自然に受け入れられるものと思っております。ただ、個人的に 興味があることとして、当院のように1年次と2年次に分けて、例えば1年間の全科 ローテイトと次の1年の専攻科ローテイトというように研修プログラムを組むのか、そ れとも1年次と2年次を分けずに、2年一貫制の研修プログラムを組むのかという点 が、個人的には興味があります。  それと、研修医が自分の専攻科に対して、2年間の研修期間中に、どれだけ自分の専 攻科に対して重点を置くかによって、どちらのプログラムが自分に対して適しているの かというのは、おのずと決まってくることだとは思いますけれども、2年間の研修終了 後、専攻科のスタッフとして、戦力として業務をこなしていかなければならないという 当院の現状がありますので、そういった点では前者のほうがより実際的で有利ではない かと思っております。  また、たとえ2年次に専攻科のローテイトを選択したとしても、救急の現場では他科 の疾患も、例えば内科へ行くにしても、小児科のことであるとか、産婦人科のことであ るとか、何科の疾患でも扱わなければいけませんので、決して専攻科ローテイトとなっ たとしても、ハンディキャップにならないであろうというのが共通した意見です。今 後、高齢化社会の進展化に伴いまして、プライマリーケアが特に重視される現状におい ては、研修の必修化、特に全科スーパーローテイト方式による研修は非常に有意義であ ると思っております。 ○部会長  どうもありがとうございました。名古屋第二日赤病院の研修ということで、ご質問を お願いします。 ○堀江委員  確認させていただきます。1年次に約20名の研修医が入ってくる。この人が2年目を 終わったあとのあり方というのは、どのようになっているのでしょうか。 ○板津医師  2年の研修中に専攻科が決まれば、関連大学の医局に入局の手続をとります。 そして、科によっては、先ほどご紹介しましたように、200名近い上級医師という膨大な る数を抱えておりますので、原則医師の増員はない。そういう点では、上級スタッフの 欠員が生じたときに採用していく。 ○堀江委員  そうすると、ほとんどの方はどこか別の所へシフトしていくということですか。 ○板津医師  ほとんどというか、いまのところは外科も含めまして、8割方は上級スタッフになっ ています。 ○堀江委員  2年終わったあとですか。 ○板津医師  2年終わったあと、上級スタッフになっています。 ○堀江委員  その場合に聞きたいのは、スーパーローテイト方式の研修は、1年目にはそれがわか りますけれども、2年目はスーパーローテイトでなくて、むしろ専門領域を決定したう えでのカリキュラムという印象がありますが、研修指定病院のようなあり方として、ど ちらかというと大学のカリキュラムに似たような、フルローテイト2年間でないカリキ ュラムを組んでいる、その根拠と言いますか、理由と言いますか、そういったところが ちょっと理解しにくかったのですが。 ○板津医師  先ほど村松のほうからもちょっと触れたかと思いますが、3年目、スタッフになりま すと、外来から検査からフル稼働させられますので、ある程度その科の専門領域のスキ ルを上げておかなければいけない、という状況があります。したがって、主として内科 系、主として外科系の中で、先ほど1年次は選択しましたけれども、2年次は内科系で すと、全科必ず研修するという形で、内科のスキルを上げるということになります。 ○堀江委員  そうすると、2年間に、いわゆる研修医としてフルローテイト形式でいろいろな領域 のということよりも、むしろ専門性というものに連動させる形を図るということで意識 していらっしゃるということですか。 ○板津医師  そうですね。途中からパーシャル・ローテイト的に連動している。しかし、救急関連 で言えば、2年間で16週かかわっていくという形が、うちの病院の特殊性です。 ○山口委員  いまの堀江委員のご質問に関連するのですが、1年目のスーパーローテイトはよくわ かるのですが、2年目は大体自分の志望する診療科。最初からこれは決まっているので しょうか。それとも、2年次に入るときに決まるのでしょうか。これが1点です。 もう一つは、それは本人の希望だけで病院が受け入れられるのか。しかし、それだった ら、非常に偏った場合にどうされるのか。この2点をお教えいただきたいと思います。 ○板津医師  あとのことからお話しますと、研修医の希望に沿って決められると。ですから、外科 なら外科、内科なら内科ということで大体決められます。ただ、このごろ非常に多様化 しておりまして、先ほどの慈恵医大のお話の中でもありましたように、選んだのですけ れども、研修中に気が変わって、ほかの科にコンバートすることもままあります。そう いう場合のコーディネート、調整は教育委員会で行います。希望が強く出て、内科の研 修をしていたのだけれども、途中から耳鼻科へ行きたいとか、そういう場合には教育委 員会とその関連の科が調整役をして、なるべく研修医の希望に沿って認めていくという 形をとっております。 ○山口委員  研修医の方にお聞きしたいのですが、1年目はスーパーローテイト、2年目は大体自 分の希望で診療科を選んでいく。大学での研修方法によく似ているのですが、そういう 場合に、例えば大学病院と地域の第一線の病院、高度医療その他をやる、機能的な面は 似ているにしても、例えば地域医療の面だとか、在宅医療の面だとか、そういう面を研 修したいという考えというのは、研修医の中にありますか。ありませんか。 ○村松医師  あります。 ○山口委員  そういう場合に、名古屋第二赤十字病院では、いまはどうなのでしょうか。 ○村松医師  特に在宅医療に関して、例えば患者さん各々、往診であるとか、特殊なリハビリ施設 であるとか、そういった所に行く。病院の中で業務をするというのが基本の姿勢になり ますので、病院の外に出て業務をするということは、赤十字関連の病院ですから、献血 とかそういった業務はありますけれども、基本的にはカリキュラムとしてもそうです し、デューティ・ワークとしてもそういうことは特にはありません。 ○井部委員  スーパーローテーション方式というのは、2週間ぐらいで代わっていくわけですが、 病棟の婦長にとっては、次々と研修医が代わること、はっきり言って未熟なオーダーに もとづいて仕事をしなければならないわけです。これに関しては、婦長、あるいは病棟 側からの意見というのは、どんな形で出ていますか。 ○板津医師  日常業務的な点では、先ほど言いましたように、指導医とペアで診療するという形を とっておりますので。(重大な問題にまで至ってはおりません。) ○井部委員  医師の指示というのは、指導医が出すわけですか。 ○板津医師  もちろん、指導医も出しますし、指示内容によっては、研修医自身が指示すると。 ○井部委員  そうすると、短期で研修医が代わっても、病棟の業務に関してはあまり影響はないと いうことですか。 ○板津医師  上級のスタッフは変わりません。ペア主治医制ですので、上の主治医は同じで、研修 医だけが変わっていくということですので、患者さんにとってはさほど不安感はないと 思います。先ほど主治医が研修医であることに対する不安はないのかという質問があり ましたが、そういう点はあまりない。1人だけで単独診療はありません。また、評価の 中でお話しましたが、3週間、4週間研修した態度、技能、問題点、そういうのを婦長 が必ず書き込みますので、そういう点でフィードバックされる形になって、修正をかけ る部分も時々あります。特に態度の悪い場合には、婦長さんからの厳しい意見を参考に して、修正をかけるということが時々必要な場合があります。 ○井部委員  態度だけではなくて、医療内容そのものもなのですが、病棟側の婦長などからみた困 難点というのがないのだろうかと思います。 ○板津医師  私から見てはあまりないのですけれども、当事者はどうでしょうか。 ○村松医師  正直言って、先ほど板津のほうから話がありましたけれども、当院は最初30床の結核 病棟から始まりまして、徐々に病棟を増やしていったものですから、病棟がタコ足のよ うになっていて、病棟が非常にたくさんある。1つの病棟にベッドがたくさんあるので はなくて、結構病棟が細切れで、比較的少ないベッド数しかない病棟がたくさんありま すので、その病棟によって、看護婦サイドのやり方というか、その病棟特有のやり方が あります。しかも、こういう短い期間でコロコロ代わるローテでは、研修医としても、 例えば前の病棟で通じていた病棟のやり方が、今度代わって次の病棟に行ったときに通 用しなくて文句を言われるとか、そういったことはあります。それも、それで看護婦で あるとか、その病棟のシステムに慣れるということも1つの勉強だと思いますので、そ の点は受容しています。 ○杉本委員  外来診療のことでお伺いしたいのですが、先ほど総合診療科がないので救急医療の研 修でカバーしているというふうにおっしゃったのですが、これは外来には研修医は出な いということですか。 ○板津医師  1年次はありません。2年次の内科には、一般内科という診察場がありまして、そこ で内科研修中だけ、内科医の1人として一般内科、外来部門が1つあります。 ○杉本委員  2年次には外来に出るということですね。総合診療科的な研修というのは、おそらく そういう所で可能なのではないかと思うわけなのですが、その場合には、2年目になり ますと研修医は1人で患者さんを診て、処方箋を書き、注射の指示をしということです ね。 ○板津医師  そうです。 ○杉本委員  慈恵の場合には、やはり同じように外来には出ないわけですか。 ○小林医師  研修期間中は、外来には一切出ません。 ○杉本委員  2年間全然出ないわけですね。私は、臨床研修のいちばん核になるものは、いままで 入院に偏りすぎていたのではなかろうかと。外来での診療研修というものは非常に大事 なのではないかというふうに考えるものですから、お尋ねしたわけです。 ○板津医師  おっしゃるとおりです。内科の選択化をしたというのは、単科になりますとその科だ けですので、いま外来にちょっと面白い症例があるとか、外来の診療も研修に参加でき るという形になった。複科ですと、あっちでこっちで呼ばれますので、病棟業務だけで も錯綜しまして、とても外来まで出向く状況はなかったという点で、若干改善したとい うところです。  研修医だけで任せていいのか、というご質問があるかと思います。なかなか分からな い、判然としない場合は、各科の専門医にトリアージしなさい。専門科は断ってはいけ ない。 研修医から依頼が来た場合は、「これは自分の科じゃないよ」というようなものでも、 受け取って、然るべき科へ責任を持って受け渡しなさいという形で、なるべく研修医1 人で完結的に責任をとらせるということはさせない。あくまで専門医がバックアップし て、それを全部引き取るという形で対応していますので、大きな混乱はない現状です。 ○花井委員  私は労働条件の所に関心があります。名古屋第二赤十字病院では1年次と2年次の給 与が出ていて、各種社会保険制度となっていますが、これは具体的にどういう保険制度 なのですか。それから、先ほどの菊池さんからは、奨学金が月5万円で健康保険に入っ ていらっしゃらないというご報告でしたが、現状はどのようにされているのかをお聞か せいただければと思います。 ○板津医師  嘱託常勤医ですので、健康保険で保障すると。それと救急でかなりしぼられます。一 睡もできない日がままありまして、なかなか周知徹底できておりませんけれども、原 則、教育委員会としては、当直明けは半日仕事をしたら、半日は休ませるようにという 形で指導しております。しかし、科によっては四六時中働かせているというような所が ありまして、そこには院長のほうから指導・徹底していくという形で、健康を害するこ とのないように配慮しているということです。 ○菊池医師  先ほどお話がありましたように、実際に建て前上は大学のほうからは5万円、私個人 としてはまだ親の扶養家族ということになっております。 ○三上委員  いまの質問に関係して、研修医の給与について、名古屋第二赤十字病院の場合には、 これは月額35万ということですね。 ○板津医師  そうです。 ○三上委員  一般的に、他の施設に比べたら、給与としてはかなりいいと思います。そういう面で は、研修医の労働力というものをどういうふうに評価しているのか。おそらく、それが こういう給与の面に関係しているのだと思いますし、あるいは先ほどの慈恵医大の場合 の5万円というのは、研修医をどのような労働力としてみなしているか。そのことにつ いて、お二方に質問したいのです。 ○板津医師  1年次は、半年間は見学的で、戦力としては当てにできない。しかし、10月ぐらいか ら、救急医療の中で鍛えられていきますし、各研修をひと当たりしてきますと、かなり 力が付いてくる。12月を越しますと、もう任せてもいいぐらいの力量はできていますの で、病院としては常勤スタッフと同様の戦力として評価する。だから、こういう給与体 系で承認するという形です。 ○小林医師  慈恵の場合には、原則論的に言いますと、研修医は労働者ではなく、あくまで研修医 であるという判断です。ですから、労働力として頼ってはいけないというのが原則で す。現場では、必ずしも言葉通りではない部分は確かにあると思います。 ○三上委員  その点に関しては、最近の新聞でも、関西医大の例の研修医の過労死の問題に対し て、労働基準局を含めて、研修医は労働者であるという考え方をはっきり出しているわ けです。これから大学が研修医をどのようにみなすかというのは身分の問題とも関係し ますけれども、そういう面では労働者ではないということでは通用しないのではないか と思いますが、どうでしょうか。 ○小林医師  現実問題として、労働者であるという規定をすれば、それに見合うだけの給与を払わ なければいけない、ということになります。ですけれども、なかなかその財源を生み出 すことができないという観点から、そういう立場をとらざるを得ないというのが現状で す。 ○黒川委員  名古屋の場合は特殊な事情があるのではないかと思うのです。ほかの大学は卒後研修 で自分の病院に行く人が多いけれども、名古屋大学は2年間、その地域の外の病院に行 く人が多いと思うのです。だから、そういう病院に割合に人が集まっているだけの話 で、大学に行くというような伝統があればそうではないけれども、紛争からそうなって しまったわけですね。 ○辻本委員  村松さんと菊池さんにお尋ねしたいと思います。2点あります。1つは、1年目の研 修のときから先生と呼ばれ、そしてこういう場でも大変ベテランの方からも先生と呼ば れているのですが、そのことによって、お気持の中で何が育まれていくか。もう一つ は、2年目という、いま現在で、もし挿管の必要な患者さんがいらしたときに、どれぐ らいの自信がおありなのか。何パーセントぐらいということでお答えいただけたらと思 います。 ○村松医師  まず、最初の質問なのですが、正直なところ、学生時代、学生でも先生と呼ばれるこ とが多々あったのですが、そのときは、はっきり言って馬鹿にされているとしか思えな かったのです。いまは、もちろん法的にも医師として医師免許を取得して、登録され て、年齢や役職は違いますけれども、法律的には医師として認められる範囲のことは何 でもやっていいという状況なわけでして、呼ばれることによってどうということはない のですが、やはり学生時代とは責任感という点で、圧倒的に違います。それは実感しま す。 ○辻本委員  挿管が必要な患者さんへの対応については、どうですか。 ○松村医師  気管内挿管ですか。研修医のときに挿管を主にする機会というのは、救急外来で、例 えば心肺停止の状態で運ばれてきた患者さんに対応する場合と、麻酔科で全身麻酔をか けるときに挿管する場合の、主に2種類に分けられると思うのですが、特に1年目でI CUというか、麻酔科を回って自分で麻酔をかけるときになるまでは、正直言って怖い です。ただ、基本的に当院のICUは研修医にどんどん手技とかをやらせようという熱 意がこちらとしても伝わってくるものですから、そういう場でもまれて、2年目になれ ば100%とは言わないまでも、90%以上は自信があります。 ○菊池医師  まず先生と呼ばれることに関してですが、最初、自分のことを呼ばれているとは思え ませんでした。数カ月経つうちに、自分がそう呼ばれるということ、あるいはもう学生 ではなく、そういう身分であるという自覚はだんだん出てきます。ただ、場合によって は病棟に行っても、先生ではなくて研修医の人、名前ではなくて、私なら菊池ではなく て研修医の先生という扱い。ですから、何度も言いますけれども、研修医の捉え方が人 によってはさまざまである。先ほど外来の話もありましたが、もし皆さんが研修医とい うバッチを付けた外来医の所に受診された場合に、どのようにお感じになられるか、そ ういう感じです。  挿管のことに関しては、村松先生がおっしゃったように、麻酔科のローテーションが 終わらない限り、はっきり言って私は自信は全くありませんでした。 ○櫻井委員  名古屋第二日赤の件なのですが、先生の病院は大学の附属病院でないわけなのです が、お話を聞いていて、研修内容が大学とかなり同じような制度で、しかもかなり大学 と同じような影響を受けた制度というような印象を受けたのですが、その理由は何です か。もっと独自のシステムを作って、また持っていいのではないかという感じがしたの ですが、理由は何かありますか。 ○板津医師  昔から、むしろ大学に先がけて独自にカリキュラムを作っております。それを真似 て、いま名古屋大学がさもという形で表現されているので、「何だ、大学と同じじゃな いか」と言われるのですが、それは評価されているのか、誤解されているのかわかりま せんけれども、これはあくまで、私どもが十数年前に分厚いカリキュラムを作りまし た。それは大学にもフィードバックして、こういうものを作ってやっておりますという ことを参考にされ、最近、大学も提示されているというご理解をいただきたいと思いま す。  先ほど黒川先生からもちょっとお話がありましたが、名大系なのですが、実際は母体 としては名古屋大学、名古屋市立大学、保健衛生大学が医局からの人を派遣していま す。実際、採用の研修医は過去これまで名大が32名、他大学が63名、つまり3対1。3 分の1しか名大の学生は研修医として採っておりません。ということで、かなりいろい ろな大学が混じり合う形、ますます全国公募的にしていかなければいけないというふう に考えております。決して名古屋大学だけに偏在して募集してはおりません。そして、 第一内科とか、関連の医局に所属しないけれども、採用するかどうかという質問がよく ありますけれども、第三内科の老年科へ行きたいけれども、2年間はここで研修したい というのは区別しないで受け入れるという形をとっております。 ○黒川委員  第二赤十字病院はそうなのだけれども、名古屋大学としては、外の病院で最初にやっ てくださいという話がインターン闘争のあとからのしきたりになっているからというこ とを言ったのです。 ○徳永委員  先ほど名前が出ましたのでコメントになりますが、私の所の個別の問題は、短時間で はできませんので申し上げられませんが、私は偶然2年前に部会委員として名古屋第二 日赤に視察の機会がありました。いま議論になっている慈恵医大さんとは私立大学はほ とんど共通ですが、もし必修化が浸透したら、お金の手当が付いたら名古屋第二日赤み たいになるだろうと。だから、印象では、理想的な段階にいらっしゃるのではないかと 私は思いました。そういうことで、もしこういう部会で議論されるには、いま大学、そ れも国立、公立、私立の大きな格差、それから厚生省の指定病院の場合には、研修プロ グラムの問題もありますけれども、やはり手当の問題があります。手当等は、地域性に 非常に強くリンクしていますので、その辺のことを一緒に考えないと、非常に難しい問 題が起こると思います。 ○部会長  どうもありがとうございました。この問題については、またあとで議論するというこ とで、本日はだいぶ時間が迫ってしまって、大変恐縮ですけれども、福井先生に前回の フリートーキングで話題に上がったもののうちから、臨床研修の改善に向けた取組みの 紹介として、国立大学卒後研修共通カリキュラムについてのお話がありましたので、そ の内容についてご説明いただけますか。 ○福井委員  お手元に2種類の資料があると思います。2頁の「卒後臨床研修必修化に向けての検 討状況」という要約したものと、最後に34頁の数字を振ってある「卒後臨床研修共通カ リキュラム(案)」というものです。2頁のサマライズしたものについて、お話させて いただきたいと思います。  32頁と33頁に、この検討を行いました委員会名と委員の名前、18名がリストアップさ れております。国立病院医学部附属病院長会議の中にあります常置委員会の中の教育研 修問題小委員会で設置しました、「卒後臨床研修必修化に関する検討部会」での中間報 告の案です。以前よりこのテーマについてはディスカッションを行ってきておりまし て、平成10年に既に共通カリキュラムを出しております。今回は必修化が正式に決まっ たということもありまして、昨年の10月以来、もう一度、研修カリキュラムを見直すこ とと、「卒後臨床研修体制の確立」など、運営面についての検討部会としての案を作成 しました。  研修カリキュラムの説明を簡単にさせていただきます。内容は4つに分かれておりま す。 最初が「研修目標」で、「日常頻繁に遭遇する病気や病態に適切に対応できるよう、卒 前教育との接続性に配慮し、体系的に臨床各科に共通して求められる基本的な臨床能力 を身につける」という大きな目標の下に、1から16のテーマについて一般目標を設定し てあります。これはもともとは平成元年に厚生省の医療関係者審議会のほうで発表され ました案を、平成10年の時点で、モディファイしたものを今回はさらにもう一度検討し て、項目数も増え、4の「安全管理面」なども取り入れた形になっております。全体像 につきましては、厚い資料の3頁から、具体的な行動目標も一緒に示してありますの で、参考にしていただきたいと思います。  4頁の下のほうを見ていただきたいと思います。小児科、産婦人科のローテーション をどうするかという議論のときに必ず問題になるのですが、委員には平成10年とは異な った先生方に入っていただいたのですが、4頁の下の産婦人科的な診察、5頁の3行目 の小児の診察についても最初の2年間で全ての研修医が研修すべきであろうという結論 になりました。  「経験すべき症状・病態」につきましては、厚い資料の10頁と11頁のように、「緊急 を要する疾患・病態」については16項目、最も頻度の高い重要なものと思われたものを 挙げてあります。「頻度の高い症状」につきましては全部で34項目、どちらかというと 一般外来で経験してほしい症状です。  ローテーションのモデルを提示する予定でしたが、中間報告ではまだ意見がまとまっ ておりません。平成10年の案では、2年間のうちの1年間半を内科、外科、小児科、産 婦人科、救急ないし麻酔科を全ての研修医がのローテーション、残りの半年間をイレク ティブでローテーションという案を出しましたが、今回の委員会では、まだ意見がまと まっておりません。  このようなカリキュラムを研修医に達成してもらえればいいわけです。ローテーショ ンは研修のプロセスであろう、2年間終わった時点で、どういうことができるのかアウ トカムであります。研修の評価をアウトカム評価にするのか、プロセス評価にするの か、というところが評価の仕方を考える上での大きな分かれ目になると思います。アウ トカム評価を厳しくする方針であれば、プロセスとしてのローテーションプログラム は、決めなくてもいいし、アウトカム評価がかなりいい加減なものであれば、必須ロー テーションをきっちり決めるという方針で行かざるを得ないと思います。平成10年と同 じローテーションのモデルを示すかどうかは、われわれの検討部会としましては、今の ところは分かりません。  以上のようなカリキュラムを作りまして、次に研修体制の案を考えました。第1に 「研修医は特定の診療科に属さず、各大学におかれる卒後臨床研修センター」、これは 臨床研修委員会みたいなものでもいいかもしれませんが、そこで一元的に管理・運営す る。「大学附属病院は、外部の関連病院・施設とグループを形成して、卒後臨床研修を 一体的に実施する」。実際、小児科、産婦人科のローテーション、救急部もそうです が、大学病院によっては全員の研修医を受け入れることができない診療科もあるようで すので、どうしても病院群を形成する必要があると思います。研修プログラムは、全体 的な視点から、大学病院での卒後臨床研修センターが作成し管理することになると思い ます。  先ほど杉本先生がおっしゃいましたけれども、今後は外来での研修を、是非、入れて ほしいと思っています。研修指導体制を充実させる必要があります。管理・指導体制を 明確にするということと、先ほどのお話にもありましたように、指導医、私たちの報告 書では指導助手という名前を使ってありますが、研修医の1年上、2年上の医師も指導 するということにして全ての指導に関わる医師の資質を向上させる試みを恒常的に行う 必要があると思います。  次に、「大学附属病院における臨床研修の質の保証」は第三者評価システムを構築す る必要があるということです。大学附属病院は、大学の附属病院であるというだけで、 研修を行うことができるわけですが、第三者評価システムによってフィードバックをか けないと、高いレベルの研修が維持できない可能性があります。全国レベルないしは地 域ごとに、研修内容や方法について、客観的な評価を行って、すべて公開する必要があ る。  そのこととも連動しておりますが、研修プログラムの質を高め、これから研修を行お うとする医学生、医師のために公平性・透明性の高いセレクションのプロセスを確立す るために、私たちとしては今回、全国マッチングプログラムを導入するのが好ましいと いう結論に達しました。最後の「前提」という所に書いてあるテーマにつきましては、 これから検討しなくてはならない点も含まれております。例えば適切な研修医数という のは、大学病院でいったいどれぐらいなのかということも含めて、まだ検討されていな い点もありますが、最低限このような臨床研修の必修化を行ううえでは、給与の保障が 絶対に必要ですし、さらに「有能な指導医を確保し、養成する」というプログラムが連 動して動かないと駄目だという結論になっております。以上の点につきましては、6月 に行われた国立大学医学部附属病院長会議で、承認されておりますので、この方向で最 終報告を作って、国立大学附属病院は、できるだけ早期に準備をに取りかかる必要があ ると考えております。 ○部会長  どうもありがとうございました。大変短い時間に制限して申し訳ありませんでしたけ れども、福井先生の「卒後臨床研修共通カリキュラム」について、コメントないしはご 質問、あるいは内容の確認などはありますか。 ○内村委員  前回のときに、プライマリー・オリエンテットの方向で考えていると福井先生は言わ れましたが、大学病院というのは特定機能病院で、非常に高度の医療をやるというふう に指定されているわけです。全く逆の方向のプライマリーの所を、具体的にはどういう ふうな形でそういう所をオリエントしていくというふうに思われているのですか。 ○福井委員  この中で言いますと、できるだけ一般外来の所での研修をするというのが1つです。 それから、救急での研修も必ず組み込むということで、最低限のプライマリーケアはカ バーできるのではないかと考えております。これから先は私の意見ですが、実はプライ マリーケアというのは各診療科を回ればできるようになるものでは全くありません。 しかも、救急だけではプライマリーケアとは私は思いません。一般内科を主とする外来 と、開業医の先生が行っているような、地域医療の両方がきっちり研修されないと、各 専門の科を何カ月、何週間ごとに回ったからと言って、プライマリーケアの研修を行っ たことにはなりません。そのような部分をどうやって組み入れていくかということが重 要だと思います。ただ、大学病院として、現在のところ、このカリキュラムでもプライ マリーケアのを指向したプログラムになってきているのではないか、という意味で申し 上げました。 ○内村委員  私たちはインターンの時代なので、インターンの時代は大学でする人はいなかったの です。というのは、面倒を見てもらえなかったから、ほとんど全国に散っていったわけ です。大学は非常に規模が大きいから、研修医の人格的なものを全部トータルに世話し ていってもらえるというのは、どういう形でそれをしようと思っておられるのですか。 ○福井委員  研修医は特定の診療科に属さず、卒後臨床研修センターで研修プログラムコーディ ネーターとでもいった専任の方を、できれば置いてほしいというのが希望ですが、いま の状況ですと、併任になるかもしれません。事務の人は1人か2人最低限専任の人を置 いて、できたら半分ぐらいの時間はその仕事をするようにし、教授レベルの方がそこで コーディネートして、一人ひとりの研修医の心理的な問題も含めて、研修の達成度にも 目配りできるような、そういう体制をつくる必要がある、というふうに考えておりま す。 ○井部委員  先ほどのアウトカム評価かプロセス評価かというのは非常に興味深い点だと思うので すが、アウトカム評価を重要視するとなると、ローテーションはさほど重要ではなくな るというのは確かにそうだと思うのです。でも、実際にアウトカム評価で行った場合の 臨床研修というのは、どのような形で行われることになるのでしょうか。 ○福井委員  例えばこのカリキュラムでやりましょうということになりますと、ある病院では小児 科は1週間でいい、ある病院は小児科は2カ月やろうということで、ローテーションの 期間は自由に変えられるということにあります。カリキュラムの内定を達成できると判 断すれば、各大学病院、各病院で、自由にローテーションを組めるという意味です。 ただ、カリキュラムの内定を達成しないと、最後の所で評価されますから、達成できて いない研修医はそこで研修が終わったと認められないということになります。 ○井部委員  私はもっと研修医の選択の余地が広がるのかと思ったものですから。 ○福井委員  アウトカム評価では、カリキュラムの内定をマスターできる期間をどれぐらいに設定 するかによって、イレクティブの期間は自由に各病院が設定できるということになりま す。 ○黒川委員  確かにこれは非常によくできていると思うのですが、1つは例えばいま盛んに言われ ているクリニカル・クラークシップと、本質的にあまり違わない気がするのです。 つまり、クラークショップがちゃんとできていないからこういうことをやっているわけ です。そうすると、アウトカム評価でも、医学教育のことを盛んにやっていますが、ア ウトカム評価、どう学生を評価するかは、いま国家試験しかないわけです。だけど、カ ナダでもやっているように、マルチプルチョイスとオスキーの評価というのはマッチし ないということは、両方やってわかっています。そうすると、マルチプルチョイスとク ラークシップの成果というのは、全然相関はないわけですね。アウトカム評価をするた めには、私がしょっちゅう書いているように、研修プログラムと学生をマッチさせるよ りしょうがないのではないか。そうすれば、どんなプロダクトを作ったか、みんなに分 かってしまうので、どこの大学もいずれ、毎年卒業してくる8,000人の学生に比べられる わけです。卒業させるほうも、8,000人の学生を出して比べてもらっているわけで、そう しない限り良い質になるわけないわけです。  確かにいままで全体が同じにならないと言って、マッチングはまだできないかとおっ しゃったけれども、それはどこの業界でも同じことを言っているわけです。明治維新か ら日本はこれで140年来ているのだから、なかなかできないのは分かりきっているわけ で、できない理由は100も200もある。だけど、今やらない限り、10年経っても、20年経 っても同じだと思います。それをいまの企業でも、行政でも、政治でも、求められるわ けで、いま言っているのはすべて「サプライ・サイド」の理屈で言っているわけです。 それがいま情報公開とかいろいろ言われたら、「ディマンド・サイド」は何を必要とし ているのか、ということに答えるのがこの委員会の問題であるし、医師を育てる側の 我々の責任ではないだろうと私は思います。だから、あくまでもディマンド・サイドが 何か。 実は先週、医学教育振興財団のもので、イギリスとアメリカのお二人が話した のですが、イギリスとアメリカというのは教育のリフォームも斬新的にすごく考えてい るのですが、基本的に言っていることはこういうことです。パブリックはいったいどう いう医師を望んでいるのかということに、我々は答えているのだろうかということを繰 り返し言っていたのです。医師を供給する、研修指定医、病院も大学も、日本では、そ ういう意識があるのかということを、いま問われているのだと思います。そのためには 何をすればいいのか、というのをここで議論すればいいのではないか。そうしない限 り、財源、財源と言ったって、パブリックは絶対承知しません。それがいちばん大事で す。  つまり、プロセス、プロセスと言ったって、教える人は同じなのだからそんなに変わ るはずがないわけで、どうすればパブリックが納得するようなお医者さんを作れるのか ということを一生懸命考えるべきで、それには痛みを伴う。今まで140年来た人たちが痛 みを伴う、それはある程度当たり前です。先ほどおっしゃったように、みんなが必要と する研修医の数を全国で足したら、何人になるだろうかということを、一度是非調べて もらいたいと思います。毎年8,000人で足りるでしょうか。 ○宮城委員  今度のこの委員会が推し進めているというのですか、審議している臨床研修必修化の 根底は何かというと、いまの日本の臨床医の動向というのはスペシャリティ志向で、い や、むしろスペシャリティを通り越してスーパースペシャリティ志向で、いろいろな問 題を起こしている。したがって、最終的には各臨床医というのはスペシャリストないし はスーパースペシャリストになっていくにしても、そこへ行く前に非常に幅広いジェネ ラルなプラクティス、ジェネラルなメジスンを体得してもらうということが国民の要求 ではないか、というようなことが根底にあるのだろうと思うわけです。  ですから、先ほどの福井先生のカリキュラムの中でも、私が是非考えてほしいのは、 臨床研修というのは患者から学ぶというのがいちばん大きいと思うのです。患者から学 ぶためには、たくさんの患者に接触する必要があると思うのです。私は、たくさんの患 者接触は、たくさんの知識と技術につながっていくと思います。したがいまして、今日 お二人の研修医が来られておりますが、それぞれの病院で研修医が、1年間にどれぐら いの患者の主治医になったのか。何通のディスチャージ・サマリー(退院要約)を書い たのか。私たちの病院では、いつも言うように大体1年間に200〜300人の主治医、200〜 300人のディスチャージ・サマリーを書く、そういうペイシャント・イクスポージャーを 努力しているわけです。もちろん、患者にイクスポージャーするというだけでは実現し ませんので、そのイクスポージャーする上にちゃんとした指導医、指導医の質というの が問われなければならないと思うのです。それ以外にやはりプライマリーケアというの は私は反射だと思うのです。理論ではない。  ですから、スペシャリティに行く前に、医者としてのプライマリーケア、あるいは救 急に対する反射を醸成できる、そういう医療環境こそ、私は臨床研修の根幹でないとい けないと思っているものですから、臨床研修をしている病院は、非常にアクティブな救 急室を持った病院、そういった所を推薦し、充実していただいて、研修医の神経反射を 作ってもらいたい。どんな医者になるにしても、基本的な神経反射を作ってもらいた い。頭でっかちにならない、脊髄神経反射を作る、そういう教育をしてほしいと願うも のです。 ○堀江委員  既にいままで提示されている臨床研修医に対する目標設定というのは、その目標に沿 って、実際にカリキュラムが組まれていれば、成就されていたのだと思うのです。 ところが、目標は提示されていながら、フルローテイトだけではなくて、ストレート研 修も認めていたわけです。ストレート研修、例えば皮膚科だけしか研修しないというよ うな研修方式を認めながら、目標と矛盾している研修をやっていたというところに問題 があるのだと思うのです。それを直していくのには、黒川先生がおっしゃるような、是 正していくための方策として、我々は何をやるか。そうすると皆さん、たぶん共通の認 識としては、一科ストレートでは駄目なのだ。かつ、2年間の必修化の期間において、 いろいろな領域を経験するというカリキュラムを、どこでも構築するということをやっ ていかないと駄目なのだろうと思うのです。  そういう意味でここに示されている研修医は、ある特定の所に所属しない。これは共 通の認識としては持たれているだろうし、それに沿って専攻科を既に決めてしまってい るということでなくて、2年間については専攻科ということに関係なくやるのか、そう いうことをきちっと決めていただく必要があるのではないか。少なくとも外科系とか内 科系という、多少の専攻性というものは認めるかもしれませんけれども、そういう点を これからきちっと作っていただく必要があるのではないか。それがまた我々の役割でも あるのだろうと思うのです。 ○福井委員  8年ぐらい前になりますが、厚生省から研究費をいただいて、全国の研修指定病院と 大学病院で、研修医がどれぐらいの数の患者さんを受け持っているかというのを調査し たことがあります。その結果、内科については、大学病院では、1時点で1人平均5人 しか受け持っていないのです。臨床研修指定病院は大体10名です。ですから、ちょう ど2倍の差があります。一方、指導医の数については、圧倒的に大学のほうが多い。た だ、全員が研修医の指導をしているかどうかはわかりません。研修医と指導医の数のバ ランスをどう設定していくかということは、非常に重要なことだと思います。 ○部会長  どうもありがとうございました。大変貴重なご意見をいただきました。福井先生のカ リキュラムの案ですが、先々週、3日間泊まり込みで全国の大学から来られて、大学の 先生の意識も随分改革されて、黒川先生が研修カリキュラムも140年変わらないとおっし ゃられた、診療科の積み上げの研修から、何を学んでもらいたいか、何が必要なのかと いうことをベースにして、研修を積み上げていくという方向にすごく大きく転換しつつ あるのだ、というのを感じました。ただ、小泉首相の言うように、抵抗勢力というのは まだありますので、いかにそれを排除していくかというのが課題ではあるかと思います が、いま本当に改革の時期ですので、そういう意味では実際にはこれから実現されるの ではないかと思います。それについても、いま2人の研修医の方がいらっしゃってお話 いただいたように、研修医に対する環境整備はいろいろな問題を含んでいるので、それ に対するアプローチも必要ではないかと思います。  本日、臨床研修の現状と問題点につきまして、私どもの理解を深めるお話をいただき まして、東京慈恵会医科大学の小林先生と研修医の菊池さん、そして名古第二赤十字病 院の板津先生と研修医の村松さんに厚く御礼申し上げます。  本日の審議はこれで終了させていただきたいと思います。事務局に今日議論された論 点を改めて整理していただいて、提示を行った上で、次回は実質的な論議に進んでいき たいと思っています。  なお、本日のような臨床研修病院のヒアリング以外に、先生方でヒアリングをすべき 事項、あるいは各委員の方々からお手持ちの資料でご発表いただける事項などがありま したら、事前に遠慮なく事務局のほうにご連絡をいただければ大変ありがたく存じま す。  次回の検討会の日程について、事務局から連絡をお願いします。 ○医事課長  次回の日程につきましては、8月22日の水曜日、14時から16時までということで予定 させていただいております。会議室等の詳細につきましては、改めて後日ご連絡を申し 上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○ 部会長  それでは、本日の審議会はこれで終了させていただきます。本当にお忙しいところ、 貴重なお時間を割いていただきまして、ありがとうございました。 照会先  厚生労働省医政局医事課   代表 03−5253−1111   内線 2563,2568