01/06/28 第1回医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会議事録 第1回医療安全対策検討会議 ヒューマンエラー部会                       日時 平成13年6月28日(木)                          9:30〜                       場所 厚生労働省共用第12会議室 ○大谷総務課長  ただいまから「医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会」を開会させていただき ます。委員の先生方におかれましては、大変お忙しい中ご出席いただき、ありがとうご ざいます。また総会と兼ねて、委員をしていただいている先生方もおられます。大変お 忙しいところ、度重なる出席に感謝申し上げます。  まず議事に入ります前に、私から委員の皆様方をご紹介させていただきます。   杏林大学保健学部教授の川村治子委員。   日本看護協会常任理事の國井治子委員。   東京医科歯科大学歯学部附属病院薬剤部長の土屋文人委員。   横浜市立大学医学部教授の橋本廸生委員。   国立医療・病院管理研究所医療政策研究部部長の長谷川敏彦委員。   日本医師会常任理事の星北斗委員。   日本大学医学部附属板橋病院看護部婦長の松月みどり委員。   武蔵野赤十字病院副院長の三宅祥三委員。   国立国際医療センター総長の矢崎義雄委員。   千葉大学医学部教授の山浦晶委員。  本日は、東海大学医学部付属病院副院長の堺秀人委員と、北九州市立大学文学部教授 の山内隆久委員は、ご欠席の連絡を受けております。  続いて事務局のほうを、紹介させていただきます。医政局長の伊藤でございます。そ れと医政局総務課医療安全対策室長の青木です。  最初に、伊藤局長からご挨拶を申し上げます。 ○伊藤医政局長  医政局長の伊藤でございます。本日は、大変お忙しい委員の皆様方に、ヒューマンエ ラー部会の委員をお引き受けいただき、誠にありがとうございました。  医療の安全対策については、近年、特に医療事故の報道が相次いでおり、国民の医療 に対する信頼を回復する上で、喫緊の課題であると認識しているわけです。私ども厚生 労働省といたしましても、今までにさまざまな対応を取ってまいりましたが、今までの 対策の上に立ちまして、平成13年は総合的かつ体系的な医療の安全対策を作っていくと いうことで、先般、「医療安全対策検討会議」を設置したところです。また大臣のご提 唱により、今年を「医療安全推進年」として、患者さんの安全を守るために、医療関係 者による共同行動を推進してまいりたいと考えております。  このような考え方から、私どもといたしましては、総合的な医療安全対策を進めてい く上で、医療安全対策検討会議を設置したわけですが、さらに各論的な問題点や技術的 な問題点を詰めていくためにヒューマンエラー部会と、もう1つ、医薬品や医療用具な どの物の要因にかかる安全対策について検討する、「医薬品・医療用具等対策部会」を 設置し、それぞれその結果を踏まえ、医療安全対策会議で総合的な医療の安全対策のグ ランドデザインを作っていただく、という考え方で進めさせていただきたいと考えてお ります。  委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい方ばかりでございますが、何とぞ本部 会の設置の趣旨をご理解いただき、委員の皆様方の高い見識に基づく、専門的視点から のご意見を賜りたく存じます。  以上、簡単ではございますが、ご挨拶とさせていただきます。 ○大谷総務課長  それでは、本部会の「設置要綱」について、事務局より説明させていただきます。 ○青木室長  お手元の資料1は、「医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会設置要綱」です。  1の「設置目的」は、医療安全の専門的事項に関する審議を行うため、医療安全対策 検討会議の下にヒューマンエラー部会を設置するものです。  なお、本日各委員のお手元には、これまで2回開かれた総会の資料が配付されている と思います。平成13年5月18日(金)の第1回目の総会の資料1に、親会議の医療安全 対策検討会議の設置要綱も添付しておりますので、併せてご覧いただければと思いま す。その中に、ヒューマンエラー部会を設置する旨、規定されております。  次に、2の「検討事項」ですが、部会の検討事項は、医療機関の人的又は組織的要因 に係る安全管理対策に関する事項としています。  3の「組織等」ですが、「部会の委員は、別紙のとおり」ということで、本日の部会 の委員名簿を次の頁に添付させていただいております。また、専門事項について検討を 行うため必要があるときは、この委員以外に、専門委員を置くことができることを規定 しております。部会長については、部会の委員の互選により、これを定めることにして おります。  4の「部会の運営等」として、部会は、審議の必要に応じ、適当と認める有識者等を 参考人として招致することができます。また、審議は、原則として公開とします。  5の「庶務」として、医政局総務課の医療安全推進室において総括いたします。  6の「その他」として、この設置要綱以外に、部会の運営について必要な事項は、部 会長が定めるということで、運営させていただきたいと思います。  なお、このヒューマンエラー部会は、総会の下に設置されているものですが、機能的 な運営を行いたいので、この部会は、できるだけ独立して運営していきたいと考えてお ります。その内容については節目節目に、総会の方に報告させていただくということ で、運営させていただきたいと考えております。また、この部会と併せて、、医薬品・ 医療用具等対策部会が設置されることになっております。こちらのほうは7月を目途 に、いま準備を進めているところですので、よろしくお願い申し上げます。 ○大谷総務課長  ただいまの点について何かございますか。よろしゅうございますね。  次に、部会長の選出についてお諮り申し上げます。先ほどの設置要綱の説明にもあり ましたとおり、部会長は委員の互選ということで、進めさせていただきたいと思いま す。部会長の推薦について、ご意見をいただけますか。 ○三宅委員  高い視野から見守っていただくということで、国際医療センターの矢崎総長にお願い したいと思いますが、いかがでしょうか。 ○大谷総務課長  ただいま三宅委員から、矢崎委員に部会長をお願いしたい旨のご提案がありました が、いかがでしょうか。 (異議なし) ○大谷総務課長  それでは皆様のご賛同を得ましたので、矢崎委員に部会長をお願いしたいと思いま す。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。 ○矢崎部会長  ただいま、このヒューマンエラー部会の部会長の重責のご推挙受けました。いまは医 療過誤、医療事故の防止というのが、国民から医療への信頼をいただく、一番大きな課 題の1つではないかと思います。先ほど局長が言われたグランドデザインを、是非決め ていきたいと思っております。  医療行為は複雑なプロセスと言うよりも、簡単な医療行為でも何人かの違った職種の 人が関与して、最終的に患者に行われるという特殊なところがあります。これはよく飛 行機の操縦に例えられますが、本質的には飛行機の操縦とは全く違う、大変難しい問題 を抱えているのではないかと思います。委員の先生方の英知を集めて、何か素晴らしい 方策を立てたいと、私自身も思っておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは議事に入らせていただきます。本日は第1回目ですので、事務局からこれま での厚生労働省における医療安全に関する取組、及びこれまで2回にわたり開催されて きた、医療安全対策検討会議の概要について、ご説明いただきたいと思います。 ○青木室長  まず参考資料1からです。これは厚生労働省の医療安全対策に関する取組をまとめた ものです。まず医療事故をめぐる最近の経緯ですが、平成11年1月11日に、横浜市立大 学病院における患者の取違い事故が発生し、入院目的とは異なる手術が施行され、2人 の患者に別々の目的の手術がされました。それ以降も大病院を中心として、医療事故が 続発したことから、昨年9月には森総理から津島厚生大臣に対し、医療事故防止の推進 を進めるようにという指示がありました。また、その命を受けて医療安全対策連絡会 議、あるいは特定機能病院の院長さんにお集まりいただいた会議等も開催しておりま す。  本年3月には、第3回目の医療安全対策連絡会議が開かれ、そこで現在の坂口厚生労 働大臣から、医療関係者による共同行動の推進が提案されたところです。  2番目は、厚生労働省のこれまでの医療事故に関する取組や基本的な考え方を示した ものです。「医療事故の要因」としては、大きく2つに分けられます。1つが人に由来 するものです。これには個々の医療従事者の安全性に対する意識の欠如や、安全管理の ために組織的な取組の欠如が含まれます。もう一つは、人に由来するもの以外に物に由 来するものとして、医薬品や医療用具、例えば名称が似ているとか、容器が類似してい るといった要因があります。  (2)の「防止対策」については、この要因にそれぞれ対応して、従事者に対する個 別の研修を通じた意識の向上を図ることや、各医療機関全体における組織的な取組みを 進めることが必要です。これに対するものが、本日のヒューマンエラー部会における検 討事項です。また、物に関するもので、製造業者等における医薬品の表示の改良とか、 医療用具の使用の変更を行うといったことも、重要な対策です。  3番目が、これまでの厚生労働省の取組の状況です。ここにアからオまでの記載があ りますが、これについては別紙1に「厚生労働省のこれまでの取組み」の具体的な事例 が記載されております。まず1番が、「医療事故防止関連マニュアルの作成及び周知徹 底」です。平成11年5月に横浜での事故を受けて取り組んだもので、患者誤認事故予防 のためのマニュアルの中には、患者誤認事故だけでなく、その当時はあまり一般的でな かった、組織におけるリスクマネージメントの重要性や、それを構築していく上での具 体的な方策についても、併せて紹介しております。  2番目は、「国立病院等における安全管理体制の徹底」です。人工呼吸器の取扱いに 関するマニュアルや、国立病院等において医療事故予防手順書を作成するための「作成 指針」を作成し、国立病院・療養所に通知を発しました。  2番目は、「特定機能病院の安全管理体制の強化」です。特定機能病院と申しますの は、高度な医療、高度な研究開発能力、高度な研修を行うことを特徴とする医療機関 で、個別に厚生労働大臣が認可するものです。そうした病院においてもここ2年くら い、重大な事故が相次いでおり、また、こうした医療機関においては、一般の病院以上 の安全管理体制が求められるのではないかということで、(1)にあるような「安全管 理の確保のための体制の義務化」を行っております。これについては(2)にあります ように、12年4月に施行されておりますが、その後も取組の徹底をお願いし、現在では こうした体制が整っております。  3番は、「医療安全管理体制確保に関する調査研究」の推進です。医療事故対策につ いては、これまであまり科学的な取組みがなされておらず、非常に精神論に偏った対策 が中心だったわけです。やはり効果的な安全対策を作っていくに当たっては、その事故 を科学的に分析して、その原因を突き止めることが非常に大事になってきます。そこで 平成11年度から厚生科学研究費により、「医療のリスクマネージメントシステム構築に 関する研究」を開始しております。主要な成果としては、本日の委員である川村先生 が、約1万1千件以上の看護のインシデント事例、いわゆるヒヤリ・ハット事例を収集 し、それを集計・分析していただいております。特に1年目は、その中で最も多かった 注射や点滴に関する事例について、詳しく分析されており、その結果については、各医 療機関にも配布しておりますし、厚生労働省のホームページ等でもご利用いただいてお ります。  4番は、「医療関係者等への周知徹底」です。まず(1)の医療安全対策連絡会議 は、日本医師会、看護協会など全部で30数団体の代表の方にお集まりいただき、各団体 の取組み等をご紹介いただきます。現在までに3回開いており、3回目のこの3月に、 厚生労働大臣から、この1年を医療安全推進年として、「患者の安全を守るための医療 関係者の共同行動」の実施を表明いたしました。  (2)の特定機能病院の院長を集めた会議も、昨年9月に開催したところです。  (3)は、「医療の安全対策に係る報告書等の配布」です。本日、お手元にオレンジ 色の本がありますが、これに厚生労働省で策定したマニュアル類、川村先生の報告書、 または日本医師会等で作られたリスクマネージメントに関する手順書、マニュアル書を まとめ、病院等に配布しております。  5番は、本日の部会の主たる検討項目ではありませんが、医薬品・医療用具に関する 医療事故防止システムについても、これまでも例えば輸液ラインの誤接続防止のための 基準、医療事故を防止するための医薬品の表示の改良、人工呼吸器の基準の整備といっ たことを行っております。  これまで行ってきた対策は、以上のとおりです。続いて、別紙2が平成13年度、これ から行っていこうとしているものです。  まず、1の「組織」として、この4月より医政局総務課に医療安全推進室を設置する とともに、医薬局のほうには安全使用推進室を設置しました。  また2の(1)では、川村先生の研究の成果等から考え、やはり多くの事例を収集し て、それを分析し、改善策を策定するというのが、医療安全対策の基本的な手法であろ うということで、アにありますように、今年から医療の安全確保のための日常診療にお ける事例の収集体制を整備するということを考えております。この対象は特定機能病 院、国立病院・療養所です。そこからいわゆる「ヒヤリ・ハット事例」と言われるもの を収集し、それを数値化したデータをこちらにいただくことにより、その対策に役立て ていこうというものです。また、そうした対策を策定していく場として、このヒューマ ンエラー部会、あるいは医薬品・医療用具等対策部会といったものを整備していくこと としています。  (2)ですが、そうしたさまざまな対策等を具体的に活用する場として、ワークショ ップ等の開催を行うことを予定しております。  (3)は「調査研究の推進」です。12年度までは1,000万足らずの研究費で行っており ましたが、調査研究の重要性ということに鑑み、平成13年度からはそれを大幅に増額 し、2億1,000万の金額を確保しております。そのうち1億3,000万が、ヒューマンエ ラーに関するものです。  (4)の「院内感染」については、医療の安全ということは非常に重要ではあります が、今回の医療安全推進というスキームでは検討の対象とはいたしません。  次に別紙3です。「患者の安全を守るための医療関係者の共同行動」というもので、 第3回の医療安全対策連絡会議において、大臣よりご提唱いただいたものです。  趣旨としては、これまで医療関係者によって個別に、さまざまな対策を行っていただ いたわけですが、これを同じキーワードの下で、共同行動としてさらに進めていこうと いうものです。厚生労働省としても、そうした個別の団体の取組を、支援していきたい と考えています。  具体的には2001年を「医療安全推進年」として、各団体において、さまざまなイベン ト等を行っていただくことを考えております。  厚生労働省の取組については、先ほどご紹介したとおりですが、(2)にありますよ うに、各医療関係団体においても、これまで非常に様々な取組がなされているわけで す。これについては3頁目以降、日本医師会、歯科医師会、病院団体等の事例が紹介さ れておりますので、後ほどご覧いただければと思います。  また、医療安全推進年の提唱に合わせ、今秋を目途に、「患者安全確保週間」を予定 しております。この趣旨としては、医療関係者の意識向上と注意喚起を図るとともに、 その期間に集中的にさまざまなイベントを提供することにより、医療関係者の取組を国 民の方々に周知し、ご理解いただくということです。その具体的な事例として、シンポ ジウム等の開催に合わせ、「患者の安全を守るための十箇条」を制定してはどうかとい うことで、現在検討を進めているところです。この十箇条作りに当たりましては、本日 のヒューマンエラー部会の委員の方々のお知恵をいただくということを考えておりま す。  次に「PSA実施スケジュール」を付けていますが、例えばこの2月から日本医師会 の方で実施されている、医療安全推進者の養成講座や、看護の日のフォーラム、ホスピ タルショウ、日本看護サミット千葉、救急の日のイベント等を経まして、この秋に「患 者安全確保週間」を実施するということで考えております。以上が、これまでの厚生労 働省の取組のご報告です。  もう1つ、これまでに2回開催された医療安全対策検討会議について、総会資料の1 と2を後ほどご覧いただければと思います。その中で特に本ヒューマンエラー部会にお ける検討に資するものとして、参考資料3と参考資料4の2つを添付しております。  まず参考資料3ですが、いま医療安全に関する様々な言葉について、いろいろな使い 方をされております。やはり医療安全についての議論を進めていくに当たっては、言葉 の定義を決めておいたほうが、円滑な議論が進みますので、事務局として第1回目の検 討会議に提出したものです。  まず「医療事故」という言葉です。広義の医療事故と申しますのは、平成11年に作っ た厚生省の研究班の報告書のものです。これは医療に関わる場所で医療の全過程におい て発生する人身事故一切を含みます。例えば医療従事者が被害者である針刺し事故のよ うなものや、廊下で転倒したようなものについても含むことになっております。一方、 狭義の定義としては、患者が本来持っていた疾病や基礎的条件によるものではなく、医 学的な関与によって生じた障害のみを対象とする場合です。この2つがあります。今回 の検討について事務局としては、あくまでも狭義の事故を対象とし、針刺し事故のよう なものについては、対象としなくても良いのではないかと考えております。  なお、狭義の医療事故、IOMによる「有害事象」の中にあっても、医療従事者の過 失によって発生する場合と、過失によらない不可抗力によって発生するものとがありま すが、あくまでも安全対策、事故予防の対象になるのは、過失によって発生する事故で す。  (2)として、「エラーの種類」ですが、大きく「計画のエラー」と「実行のエラー」に 分けられるというのが、アメリカにおける医療事故対策の総論的な対策をまとめた、I OMの報告書に記載されています。今回の検討会議で主として検討の対象とするのは、 実行のエラーを想定しています。  (3)として、「アクシデントとインシデント」という言葉があります。これも非常にい ろいろな使い方がされている言葉です。「アクシデント」のほうは、医療事故に相当す る用語として用いられています。「インシデント」という言葉については、本来、実際 に健康被害を生じた場合も、生じなかった場合も含んだ包括的な言葉ですが、我が国に おいては医療事故対策について、アクシデント報告とインシデント報告は、それぞれ違 うルートで報告されることが多いことから、便宜上「インシデント」と言うと、アクシ デントでない、患者に障害を及ぼさなかった事例のみを指す言葉として使われていま す。  最後が「医療安全対策」です。これは本検討会議の名前ともなっているものです。こ の目的は、過失による医療事故の発生を可能な限り抑制することを目的としておりま す。そしてさまざまな予防措置を設定することで、すべての患者に安全な医療を確保す ることを考えております。  参考資料4は、総会の方で、当面の検討事項として考えられている事項です。総会の 目的としては、医療安全の体制を確保するに当たっての問題点の明確化、解決方策の選 択肢の提示及び実施に当たっての問題等を明らかにし、我が国の医療安全対策のグラン ドデザインを策定するということであり、あくまでも総論的な事項が中心です。  「検討すべき事項」としては、10項目。現在2回ほど開催されておりますが、1回目 はフリーディスカッション、先週開かれた2回目では、2番の「組織としての効果的な 医療安全対策の在り方について」に関して、武蔵野日赤の三宅先生より、総括的なご報 告をいただきました。 ○矢崎部会長  いままで厚生労働省が、医療安全対策にかかわってきた取組みの経緯などを、お話い ただきました。ちょっとお聞きしたところでは、やるべきことは大体やっているという 感じが、なきにしもあらずですが、我々の部会は、もう少し踏み込んだ具体的な行動を どう起こすべきかというのが、主に議論するテーマではないかと思います。委員の方々 から何かご意見、あるいはコメントはございませんか。  我が国は昔から、水と安全は一番安いものだということだったのですが、いまは水と 安全が、だんだん高いものとなっている時代に移ってきました。したがって、やはり昔 の対応とは違った切り口で、安全対策というものをいろいろな意味でやっていかなけれ ばならない時代になってきたと感じます。  川村先生、参考資料2について、何かコメントはございますか。事例の分析で気付か れたことが何かありましたら、簡単にお願いします。 ○川村委員  事例を収集しようと考えた理由の1つは、個々の病院がいろいろな問題にぶつかっ て、その都度対策を立てていくというところに、非常に行き当たりばったり的なものが ありましたので、私はどうしてもたくさんの事例から、問題を上から見たいと思ったの です。どのようなことが医療現場で、どういうプロセスの中で起きる得るのかというこ とを、俯瞰したかったわけです。そうすれば個々の問題も、優先順位などを決めていく ときに、非常にわかりやすいのではないかと思います。そこでエラーマップという形 で、業務のプロセスで事例を整理することにしました。実際に収集しましたら、ここ数 年の重大な医療事故のほとんどが、ニアミスの形で、全く似た形のものがこの中に存在 しておりました。大量に集めることと、個々の事例をどう使うかというのは、また別か と思いますが、やはりこういった全段階の事例を集めることは、大変役に立つものでは ないかと思いました。 ○矢崎部会長  最初に、2つのポイントを指摘されましたが、意識の問題と組織的な取組の問題とい う、2つの切り口があったかと思います。前回の総会で発表された三宅先生、組織的な 取組について、こういう点を一言で強調するならばというものが、何かありますか。 ○三宅委員  組織的な取組ということで言えば、やはり病院という医療の組織体が患者の安全、あ るいは医療の質を守るという意味で、どういう管理体制を取ればいいかというのが、私 は非常に大事だと思います。これは語弊があるかもしれませんが、基本的には責任体制 が明確でないということだと思います。特に大学その他の特定機能病院などの場合、責 任者が2、3年で全部代わっていくわけです。ですから責任ある体制というものが取ら れないし、何か1つやっても、責任の所在がわからなくなるという、構造的な問題があ るだろうと思います。我々のように独立採算でやっている病院は、そうではないのです が、おそらく官公立でも同じような体質があるのではないかという気がします。基本的 には、やはり病院の中の責任体制と、管理システムをきちんと作るということが、一番 大事ではないかという気がします。  もう1つ、個人の問題というのは、やはりかなり大きな問題があります。それについ て私は、大学医学部の教育の中に、かなり取り入れるべきであろうと思っております が、それは一朝一夕にはいきませんので、これも病院の管理体制の中で、人を育ててい くような仕組みを。いま個人的に私の病院で考えていることは、その病院が求めている 人間像はこういうものですという形での人事考課と言いますか、こういう形で病院は人 を評価しますということを明示して、医療人を育てていくことをしたいと思って、いま 作業をしているのです。現状において病院の置かれた立場としては、それしかないとい う気がしています。本来、私は医学部も看護婦も、卒前教育でやられるべきことではな いかと思っております。大きく言えば、おそらくその2つではないかという気がしてい ます。 ○矢崎部会長  私が病院の体制や組織をチェックしておりますと、例えば薬剤部とか、検査部とか、 看護部とか、各部局ごとの組織の責任体制や管理システムは、その部署ごとには結構ち ゃんとしているのです。いまは病院機能評価機構の機能評価というのが、各部署の評価 ですよね。例えば厚生労働省の臨床研修指定病院というと、1年間の剖検例が何例とい うように、比較的数値的なところなのです。しかし問題は、例えば外科で手術の標本が 出て、これが悪性かどうか本当に間違えずに短時間で返ってくるというシステムがどう なっているのか。あるいはその部局間の医療のケアのプロセスの評価、例えば誰かが医 療を立案して、それが実際に書式に移されて、それを実行に移すという医療のプロセス です。アメリカの病院機能評価というのは、このように医療のプロセスを評価している のです。  組織のあり方が、各部局間での取組をもう少しきっちり評価するシステムが、必要で はないかと思います。私もちょっと点検していると、その間のいろいろな意思や行為の 流れが間違いなくいっているかを、どこで誰が評価するのかと。先生の言われる曖昧さ が、そういうところにもあるのではないかと思いました。 ○三宅委員  組織を横断的に管理するというところが、非常に弱いような気がします。結構そこに いろいろな落とし穴があって、そういうところで何か問題が発生するような気がしてい るのです。 ○矢崎部会長  よく「省庁の縦割り」ということを言われますが、病院の中でも結構縦割りの組織に なっていて、連絡が十分いかないところで、いろいろなことが起こっているような感じ がします。 ○星委員  この部会でどこまで議論するかという話は、これから絞り込みをしていくのだろうと 思いますし、総会もありますから、繰り返しになるのも良くありませんが、いま現場は 非常に苦労しております。苦労と言いますのは、それぞれが努力を、大変なところでや っているというのは事実だと思うのです。責任追求型から原因追求型に変えていって、 個人の責任は問わずに、いろいろなことを報告させて、分析して原因を追求し、それを 繰り返さないような対策を練っていくということが、よく御題目のように唱えられてい ます。とは言いながら現実を見ると、いまの責任体制の話もそうですが、誰の責任なの かというところに、やはり帰着してしまうのが現状ではないかと思います。  そういう原因追求にしていくためには、制度的にも届出の話とか、その他いろいろな 問題があります。今日、そこまでここで議論するつもりはありませんが、そういった問 題まで踏み込んで考えていくのか、踏み込むとすれば、ここではなくてどこで考えてい くのかということは、一応明らかにしていただかないと。もう現場は本当に大変なこと になっているので、「やろう、やろう」という話だけだったり、現場の努力が足りない のだというところに押し付けられたり、精神論に押し付けられたりするのは、かなり厳 しいのではないかと思います。  もう1つお願いしたいのは、大きな病院で、専門のリスクマネージャー的な方を置け る所は、「推進をしていく」と言っても格好が付くわけですが、そうでない中小の病 院、あるいは診療所のような所でも、同じように事故の可能性のある行為はなされてい るわけですから、これをどうしていくかというところにも配慮いただかないと、リスク マネージャーを育てて、その人たちが病院の中で頑張ればいいのだということもかなり 難しいものがあるのではないかと、私は思います。  一番の問題は、ヒューマンエラーを削減するために、組織的な取組をする、教育をす るとなったときに、とは言え、やはり人間はミスを犯すものだという視点で見ていきま すと、その危険性のあるものは排除しよう、つまりそういう医療行為はやめよう、そう いうチャレンジはやめようという雰囲気が、病院や医療機関、あるいは医療界全体に蔓 延することは、一番気を付けなければいけないことです。それは「ミスを犯してもチャ レンジすべきだ」と申し上げているのではなく、「ミスを犯すからチャレンジをやめよ う」と言ったときに、医療の進歩は止まるだろうと思います。ですから、その辺のとこ ろをどうやってバランスを取っていくのかということに、常に配慮しながらこの議論を 進めていかないと、うまくいかないのではないかと感じております。  お願いは2点です。1点目は、中小医療機関に対する配慮をお願いしたいということ です。2つ目は、そうやって萎縮的になってしまう医療界全体に対する配慮をして欲し いということです。  また、やはり患者側にも知っておいてもらわなければならないことです。これはこの 検討会議の議題にも出ておりますが、医療機関はこんなに一生懸命やっているので安全 ですよという患者への周知徹底なのか、やはり医療というものにはある危険性があっ て、そのことはきちんとしたコミュニケーションの中で、お互いに納得しながらやって いくというものも含むのか、そういったことも考えてほしいと思います。つまり現場で 行われている医療というのは、必ずしも安全なものだけではありませんし、何か手を打 てば100%回避できるものでもないという説明が先ほどありましたので、そういったも のを患者に対してどうやってお知らせし、治療に一緒に参加してもらえるかということ も、考えていかなければならないのではないかと思います。  そういうことを考えると、大変大きな問題を抱えることになるのではないかと思った りもしますので、その辺は部会長に是非、うまいこと舵取りをしていただきたいと思い ます。結局、いま申し上げたような話をすると、キリがないのです。キリのないことは 我々も知っているわけですから、部会長にはこの委員会をどのように切り盛りしていく のか、明確に目標を定めていただきたい。それ以外のところは別にやるということであ れば、そのように決めていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。 ○矢崎部会長  貴重なご意見をありがとうございました。今までずっと厚生労働省で取り組んでお り、その中で明らかになった、いろいろな問題点がありますから、この際それを見直し て、焦点を絞った対応を立てようと。少なくとも医療従事者だけに努力を任されるよう な、責任問題のみにならないようにもっていきたいと思います。また国民の皆さんに、 やはり医療というものを理解していただかないといけないという点もあります。それは 患者や家族とのコミュニケーションの問題とか、いろいろあると思います。そういうも のも含めて、できればあまり雑駁にならないようにやっていきたいと思います。部会を 進行していくうちに、またご意見をいただければ、大変ありがたいと思います。そのほ かに何かご意見はございますか。 ○松月委員  私は現場で毎日仕事をしておりますので、そこからのお願いです。私の病院には、リ スクマネージャーはおりませんが、5年ほど前に比べますと、取組は180度理想的な形に 変わっています。事故が起こりますと、その勤務部署で分析しますし、この投薬のやり 方では問題があったから、このように変えようということを、実際に行っています。し かしその中には、やはり看護部門だけでは解決できない問題もたくさんあります。その ときにいつも壁にぶつかるのは、私の病院は特定機能病院ですので、各部門間の壁はか なり高いものがあります。看護部門は非常に熱心に取り組みますが、他部門はまだなか なかそこまでいっていないし、なかなかそういう意識にならないというジレンマがあり ます。  また、今ぶつかっておりますのは、そういう対策を取って見直しを始めたけれど、そ れで事故が減っているのか増えているのかという評価に、非常に迷っております。意識 が高くなりましたから、「ミス」とも呼べない、「ニアミス」とも呼べないものもあ る。例えば決まった時間に投与できなくて、1時間後になったというものまで、最近は 報告書に上がるようになりました。そうなってきますと、数では評価できないわけで す。では質で評価しようかと思いますと、非常に難しいものがあります。実際に一生懸 命取り組んでいるけれど、それで事故が減っているのか増えているのかも、また、その 取組が良いのか悪いのかも、よく分からないというのが現実です。  私の期待するところは、このようなプロフェッショナルな会議で、評価の方法につい て検討していただけると、非常にうれしいのです。また現場のシステムを見直すときに は、ヒューマンエラーに属するところが非常に多いので、それを防ぐために何とかチェ ックしようということで、チェックに埋もれているような状況です。ですから最近はそ れをシンプルにするため、現場では何回もするのではなく、できるだけ1回を確実にし ようという取組を今しております。そのためにはどういうモデルがあるのか、どういう 概念があるのか、そのシステムを整理していくためにはどうしたら良いかというあたり を、具体的に現場に提示していただけると、現場は非常に変わるのではないかと思いま す。もちろん組織的に取り組んでいく部分も、必要だと思いますし、それはとても重要 なことだと思います。しかし、ヒューマンエラーを防ぐためには、具体的にこんなふう にすれば良いという、何かモデルみたいなものが、現場では必要とされていると思いま す。 ○矢崎部会長  看護婦の皆様は、非常に真面目に検討されているわけです。ですから1つのシミュ レーションを作って動きを見るというのも、具体的な1つの訓練になるのではないかと いう気もいたしますね。 ○國井委員  いま看護婦は熱心ということでしたが、実際にすごくさらされているのです。いくら チェックをしていても、やはり最終の看護婦の行為は本人がしっかりしないと、もうそ こで駄目になるわけです。しかし最先端でサービスを提供している看護婦というのは、 いろいろな課題をいくつも持っています。やはりいくら個人の問題といっても、あっち もこっちも認知していると、どうしても抜けてしまうというか、ヒューマンエラーは避 けられないような実態にあるわけです。今いろいろな病院で統計を取っていますが、薬 剤の事故が一番多いですよね。少なくともそういうことを何かシステムで支えられない か、そういった具体的な方策の検討も、是非できれば良いのではないかと思っていま す。 ○矢崎部会長  結局は最終的な医療行為者に責任がいってしまう、というところがありますので、シ ステム作りですね。 ○土屋委員  こういったところでいろいろなモデルが出てくると、やはり病院とかそういう所は、 どうしても組織的な対応ということになってしまいます。例えば注射薬ひとつ考えて も、納品から患者施療までを一連の流れとして、それぞれの施設によってそれを担当す る人は違うと思うのです。ところがここで、ここは薬剤部だ、看護部だというような対 策が出ますと、どうしてもそこが合わないということで、これは自分たちではないので はないかと思うところがあると思うのです。  ですから、こういう所で出す話は、一連の行為を出して、その役割はそれぞれの施設 でちゃんと確認しなさいと。いま行われている部門別の対策は、おそらく部門を超える ところで、またかなりの落とし穴が出てくると思います。行為そのものや規模というと ころでは、全く変わりがないけれど、その担当者が違うということが、まさに規模や機 能などによって違ってくると思うのです。そこら辺の表示の仕方と言いますか、注意の 仕方というところを、どうしても部門という目で見てしまうと、やはりヒューマンエ ラーというのは、全体的にまずいのかなという気がいたします。 ○橋本委員  私は横浜市大に行って10カ月程ですが、医療安全管理の現場を預かってきました。私 は病院の第三者評価も行っていますので、そういう観点からいろいろ見てきて、現場の 方ともいろいろ接するわけです。我々の所は少し先に進んでいたということもあります が、現場の人たちと話をすると、特に婦長さんたちと話をすると、「総論はもう分かっ た。どこでどんなことが起こるかも、何となく分かる。でも私たち個々の看護婦は、ど うしたらいいのかという具体的なツールを獲得できないでいる」と言うのです。まずは そういう現状にあるということです。  そこでこれから始めようとしているのですが、個人の危険予知能力を高めるトレーニ ング方法はないかと考えております。要するにいろいろな状況を見て、看護婦は情報を 認知して処理していくわけですが、その処理系の単純化とか効率化といったところでス トレスがかからないようにして、危険を予知できる能力を獲得できる方法論だと思うの です。ただし私もそれ以上、具体的な方法が頭に浮かばないので、今日も午後から看護 婦さんたちといろいろ検討するのです。そういうことが喫緊のことではないかと思いま す。  それからもう1つ。組織から言うと、安全管理のシステムをモニターするものが、そ ろそろ必要ではないかと感じています。こうやったら良いとか、ああやったら良いとい うのは、わりに定性的な言い方ですが、ある危ない状態を管理していくためには、何か モニターが必要です。それを先ほどの対比で言うと、「個別の予知」と「システムの予 知」という、2つの局面があると思います。そういうシステムが必要ではないかと思い ます。簡単に考えてみますと、例えばインシデントレポートというのは、かなりいいシ ステムです。情報が正しく上がってくるという前提で申し上げますと、種類と危なさ加 減のレベルの組合わせで、それらが起こってくる頻度を見ていくと、おそらく危なさ加 減が手前で予知できたとか、防止できたというところが大きくなってきて、もうちょっ としたら危ないところだったというのが減ってくる、そういう1つのモニターの指標が 考えられます。  そう考えた上でなお、大丈夫かなと思う点が1つあります。おそらく医療の大きなミ スというのは、そういう平均的な像から出てくるのではなく、ある種の統計論で言うと 1,000分の1、10,000分の1というところで、ポワッソン分布的に起こってくるものを、 平均値論的な管理手法でいいのかどうかが心配です。そこはもうちょっと詰めなければ いけないだろうと考えています。 ○山浦委員  インシデントレポートの研究が進んで、こういった面に注意しましょうというもの が、どんどん増えてきます。限られた数の看護婦が、年々増える「こうしなければなら ない」に囲まれて医療をやっているというのは、非常に危険なわけです。この部会の名 称は、ヒューマンエラー部会ですが、私はヒューマンを増やすのが、まずあるべきでは ないかと思っております。しかしこの部会は、「限られた人的資源の中でできるだけ安 全に」ということで、それは結構なのですけれど。  もう1つは、ヒューマンをエラーから救うのは、これからはコンピューターではない かと思います。コンピューターをもう少しうまく活用して、やはりヒューマンの注意能 力に代わるようなシステムを作っていくべきではないかと思います。これは大きな病院 に共通することかもしれませんが、かなりの予算をコンピューターに費やしています が、コンピューターの安全機構への関与というのは、各施設に任せきりです。おそらく 国としても、こういったことをすればコンピューターは安く、効率を上げる仕事をし、 安全にも役立ちますという取組みは、ないのではないかと思います。21世紀はコンピ ューターに安全管理を任せるような仕組みが、もう少し必要ではないかと思っておりま す。  3つ目は、「安全と質に十分に踏み込んだ評価機構」が、残念ながらまだ稼働してい ないと思います。確かに評価機構はありますが、私の知識では安全にまで、あるいは医 療の質にまで踏み込んだ評価は、十分になされていないと理解しております。ヒューマ ンの数、コンピューターを関与させる、評価機構にもう少し工夫が要るのではないか、 というこの3点について申し上げました。 ○星委員  このヒューマンエラー部会で私たちが一番考えなくてはいけないのは、とにかく医療 機関個々の取組を、あるレベルまで引き上げたいということがあると思います。とにか くそのレベルまでみんなで行きましょうというのが、私は一番の目標だと思っておりま す。そのことを支援するために、どのようなことが出来るのか。つまり個々の病院の中 で、あるいは個々の診療所の中で行われている努力が、あるレベルに達するために、私 たちは何ができるのかという感覚でいかないと。先に進んでいる人がその先に行こうと いう話は、全体のレベルを上げていくために、1つの必要な行動ではありますが、もっ と全体をお尻から押し上げるような形が必要だと思います。そのためにまずどのような ことが出来るのか。  インシデントレポートやアクシデントレポートを保管しておくと、証拠書類として押 収されるみたいな話も、一方では出てきています。そういう問題もあるのかもしれませ んが、とりあえずそういう法的な問題を横に置けば、いろいろな病院でやっているいろ いろな取組み、今どういう状況になっているかということを、すべての病院や診療所が 気付き、とにかくそこまで行こうという目標を決めると。それに対して私たちはどのよ うな支援ができるのかを、この場で考えて、そこまで行こうというのをメインテーマに していただけないかと思います。  というのは、先ほど中小の話を申し上げました。大きな所でコンピューターを入れ て、それによる対策が出来る所は、極めて特殊な所です。いま先に先にということで議 論していきますと、後についていく所はお手挙げになってしまいます。ですから、そう いう人たちも安全対策に、もう一歩でももう一歩でも前へ行こうという気持にさせるよ うな、そういう部会にしてほしいと思います。そうでないと私たちのここでの議論は、 やはり散乱してしまうのではないか、ということを強く感じます。その裁きは部会長 に、是非ひとつよろしくお願いします。 ○矢崎部会長  確かにここの資料にもありますように、特定機能病院という高度先進の比較的複雑な 医療を行っている所と、我が国の医療を広く支えている部分との安全対策は、少しニュ アンスが違うのではないかと思います。そういう意味では星先生、是非ドシドシ意見を 出していただければ、大変ありがたいと思います。  いくつかご意見が出まして、本当にありがとうございました。人間はミスを犯すもの であるといっても、個々の患者にとってはオール・オア・ナッシングですから、ミスは あってはならないというのが、医療の大前提です。そういう大前提の上で理想に近づけ る方法を、いろいろなレベルで検討していかなければいけないのではないかと思ってお ります。これはいろいろなレベルの病院での問題、各部局での問題、組織全体としての 問題、個々の人の意識を含めた問題、それから被害を受けるのは患者ですから、患者に も協力していただき、医療事故がなくなる運動に一緒に加わっていただくということ も、重要ではないかと思います。  また医療の実態というのは、非常に複雑だからこういうことが起こるという、パイロ ットのミスなどとは全く違って、極めて単純な医療行為でもミスの起こる可能性はあり ます。そういう特殊なところもあるので、医療はこういうプロセスで、実際に患者に行 われているのだということを、患者自身、あるいは国民の皆さんにもよく分かっていた だき、そこをどういうようにしたら良いかということを、少しキャンペーンしていかな ければいけないのではないかと、私どもは思っております。順々に具体的な項目なり言 葉として、あるいはシステムとして、提言していきたいと思っております。  先生方のご意見は大体いただきましたが、まだ資料がありますので、事務局からご説 明いただけますか。 ○青木室長  資料の2から6までですが、本部会における当面の検討事項ということで、事務局と して考えているものを、ご説明していきたいと思います。その前に先ほどの議論の続き で、事務局のほうから一言だけ伝えたいと思います。先程、委員のほうから、例えばイ ンシデント事例等の報告については、免責規定等の議論が必要であるというお話があり ました。そうした総枠における問題点については、現在総会のほうでご議論いただいて いるところです。本来でしたら、そうした事項の整理が付いた後で、こうした各論の話 というのが、1つの考え方ではあろうかと思いますが、医療事故対策については非常に 緊急性が高いわけで、やはり当面は、いま出来るものは何かというところから、議論を 進めていただければと思います。  資料2は「検討の目的」と「検討事項」ということでまとめさせていただいておりま す。「検討の目的」は、「医療機関の人的又は組織的要因に係る安全管理体制を確保す るために必要な対策の企画、立案及び関連事項の検討を行い、もってヒューマンエラー に起因する医療事故を低減することを目的とする」ということで、ここで個別具体的な ご提案等をいただければということです。  「検討事項」としては、大きく1と2に分かれております。1が「医療従事者のため の患者安全十箇条」です。これは「簡便な標語集」という趣旨で、この秋に予定してい る患者安全確保週間に向けて、こうした十箇条作りをするということです。そうした検 討の際に、このヒューマンエラー部会の各委員の方々に、現場の意見としてお知恵をい ただくことを考えています。  2番目として、「人的、組織的要因に係る安全管理体制の確保方策について」という ことで、これがこの部会の最も基本的な部分です。これについては大きく2つありま す。1つが「個別分野における医療安全対策の推進方策について」、2番が「医療安全 に資する情報の収集、分析、評価等について」です。  まず1番の「医療従事者のための患者安全十箇条」について、資料に基づいてご説明 したいと思います。まずこの十箇条の「目的」としては、医療安全の推進を目的とし て、事故の防止に向けた医療従事者の意識啓発を図るとともに、組織としての医療安全 体制の確保に向けた活動を推進するため、簡便な標語をとりまとめます。  「想定される事項」としては、意識啓発に関する事項、コミュニケーションに関する 事項、基本的な手技、手順に関する事項、組織管理に関する事項ということです。これ は、すでにこうした十箇条に相当するものをお持ちの医療機関で作られたものを分類し たところ、こうしたものが出てきたわけです。  3番の「今後の作業スケジュール」については、今日が初めてですので、いろいろ自 由なご議論をいただき、その後これから事務局を中心に、すでにこうした標語をお持ち の医療機関等の情報を集めまして、次回までに叩き台を作成し、ご検討いただくことを 考えております。  その「活用方法」としては、今秋に予定しております、患者の安全を守るための医療 関係者の共同行動(PSA)の中で発表して、全国の医療機関等に対し、広く周知して いくことを考えております。  想定される事項の具体例は、別紙1にあります。すでにこうした安全に関する標語を お持ちの所で、事務局として把握できた6つの医療機関について、例としてここに提示 させていただいております。まず厚生労働省国立病院部が策定した、13年度医療事故防 止カレンダーの中に、月毎に具体的な手順の事項を出しております。  3頁は、大阪府が策定した医療事故防止対策ガイドラインです。先ほどの国立病院部 のものが、具体的な手順が中心だったのに対しまして、こちらのほうは、意識やコミュ ニケーションに関するもの、または組織としての取組といったものが書いてあり、各論 があまり含まれていないという特徴があります。  4頁は、国民健康保険診療施設協議会で作られた、「医療・看護のリスクマネージメ ント・ブック」からのものです。これは十二箇条となっております。ここにありますよ うに、コミュニケーションや意識、管理に関するものが中心で、各論のものがあまり含 まれていないという特徴があります。  次が、本日ご出席の三宅委員が所属しておられる武蔵野赤十字病院のマニュアルに含 まれているもので、九箇条となっております。ここも意識、コミュニケーションといっ た総論的な事項を中心にまとめられております。  5頁は、大学病院の例です。1つが神戸大学のもので7つの事項です。冒頭から患者 中心の医療という意識啓発から並べております。ここもやはり具体的な手順というより も、総論的な事項が中心です。  最後が横浜市立大学です。ここは十箇条で、やはり意識やコミュニケーションといっ た、総論事項が中心になっているという特徴があります。  6頁は、参考として非常に個別具体的な事項について、アからンまでのカルタの様式 を取って、具体的に注意事項をまとめるという取組をされている、公立富岡総合病院の 例です。  別紙2は、先ほどの6つの医療機関の事項について、どういうものが含まれているの か、事務局のほうで類型化をしたものです。一般的な意識啓発に関する事項、具体的な 実施手順に関する事項、コミュニケーションに係る事項、病院の管理に係る事項という ように、大きく4つの事項に分けております。ここにありますように、個々の医療機関 によって、それぞれ特徴があります。おそらく対象者や使う目的によって、内容が異な っているということでしょうけれど、若干の違いがあります。一番下の行は、分類ごと にその数字を足し上げたものです。一般的な意識啓発に係る事項が22項目で37%、具体 的実施手順に係る事項が13項目で22%、コミュニケーションに関する事項が13項目で22 %、病院管理に関する事項が12項目で20%となっております。  続いて、2の(1)は「個別分野における医療安全対策の推進方策について」という 事項です。これが本部会の主たる検討課題になると思います。まず考えなければならな いのは、「個別分野における」と言った場合、その個別分野をどういうように切り分け ていくのか、またはその個別分野を切り分けた後に、どういう優先度を付けて、どうい う順番で議論を検討していけばいいのかということです。  本日はそうした議論を進めていく上での参考資料として資料4−1を提出していま す。これは、本日ご出席の委員が所属する5つの病院の、医療事故防止マニュアルの中 から各論、分野別の事項について抜き出し、これをまとめたものです。分野を切り分け るに当たりましては、いろいろな観点がありますので、ここでは大きく3つの観点で集 計を行っております。まず1つ目は、基本的な手技や処置等に関して切り分けるという ものです。例えば輸血、注射・点滴、与薬については、すべての医療機関でそれに該当 するマニュアル、手順書ができております。あと、人工呼吸器、転倒・転落といった事 項については4つですので、かなりの医療機関でそういうものを作っていることが分か ります。  2つ目の切り分け方としては、各部門とか場所であり、例えば看護部、薬剤部、中 央・検査部といった切り分け方です。これで見ますと、看護部、薬剤部、中央・検査 部、輸血部といった場所については、3つの医療機関でそれぞれのマニュアルを作って おられます。  3つ目の切り分け方としては、診療科というのがあります。これは個々の医療機関が 持っている診療科によって、非常にバリエーションがあるわけです。  これらは5つの病院の事例ですが、今後の検討に際し、まずどういう切り分け方でど ういう順番で、それぞれの対策を検討していくかが、議論の第1であろうと考えてお り、それを考える上での参考資料としてご提示したわけです。  資料4−2は海外の事例ということで、IOMの報告書の診療システム、管理システ ムの中で、議論すべき重要プロセスの例示として挙げられているものを、参考までにお 付けしております。薬物投与、手術室と手術実施過程、救急の診療部門、診断に関する 試験、スクリーニング等々、ICU、NICU、虚弱高齢者に対するケア、医療におけ るシミュレーションとシミュレーターの利用、医療におけるチーム訓練とCRMといっ たキーワードで、個別分野の安全対策について、具体的に示されております。  続いてインシデントの収集分析についてです。  資料5−1「医療安全対策ネットワーク整備事業」は先ほど予算のところで若干ご説 明した、インシデント事例の収集制度の概要です。  内容を少し説明させていただきます。まず対象医療機関として具体的には、特定機能 病院、国立病院・療養所を想定しております。そうした所からインシデント、いわゆる ヒヤリ・ハット事例を、一定のコーディングに基づいた数値化されたデータとして、報 告していただきます。これは自主的な報告です。収集場所としては、医薬品機構を考え ております。そこで収集したものは、集計結果を医療安全対策検討会議、具体的にはヒ ューマンファクターに関するものはヒューマンエラー部会、物については医薬品・医療 用具等対策部会に報告していただき、そこでご議論・ご検討いただき、その結果を医療 機関等に情報提供することを考えております。併せてワークショップの開催とか、シス テムの開発といったものも考えていきたいと思います。また、物については、例えば類 似の名称や形状がありますので、各業界にも情報提供し、製品の改良等に役立てていた だくことを考えています。  資料6は、ヒューマンエラー部会の進め方のスケジュールです。左側に親会議の医療 安全検討会議総会について示してあり、現在、検討会議のほうは1回、2回が終わった ところです。次回はまだ未定です。ヒューマンエラー部会については、本日が第1回目 です。本日のフリーディスカッションを経て、9月ぐらいに予定している第2回目で は、本日はご紹介だけに留まった、患者安全十箇条についての叩き台、そのほかの2つ の事項についても、ある程度具体的な形で取りまとめまして、さらに議論を深めていた だくということを考えております。 ○矢崎部会長  ただいまのご説明で、まずは何か行動に、あるいは目に見えた形で何か提案するとい うことで、標語みたいなものを作ってはどうかというご意見ですが、これはなかなか難 しいですね。例えば厚生労働省がお好きな言葉として、「指さし確認」というのがあり ます。交通でも「出発進行、ドウ進行」と指さしをやっていますが、この間の京福電鉄 のように、正面衝突してしまったりするわけです。ああいうように簡単に信号だけを指 さしするだけでも、なかなか難しいのです。かつATS(自動制御装置)を備えてい て、事故が起こったのです。  例えば人工呼吸器の指さしと言うと、十数カ所も指さししなければいけません。我々 の所なら二十台ぐらい動いているので、それだけでも大変なことになっているし、全部 終わったら、また最初からやり直さないとできないような状態になってしまうわけで す。十箇条ということでなくても、やはりこういうポイントは大事です、ということが 伝わるようなご意見を、今日たくさんいただいたので、それをまとめれば、結構いいも のが出来るのではないかという気もしますが、何かご意見はございますか。 ○長谷川委員  標語というのは、わりと安易に使う行政的手法なのです。常に2つ気になっているこ とがあります。まず第1は、オーディエンスです。実際の標語集を見ましても、随分内 容が違います。おそらく、ここは医療施設の管理者に対するメッセージだと思います。 ほかの病院の方は、当然職員ということです。職員だって看護婦と医師に対するメッ セージとでは、若干違うと思うのです。ですから、こういう標語を作るときには、やは りどの方を想定するかということで、内容を決めていくということが、まず第1に重要 であると思います。  第2に、標語というのはしゃべって終わるものではなくて、行動変容を促すことです ので、いわゆるソシアルマーケティング、社会的なマーケティングをすることだと思い ます。今日はメディアの社会ですから、いろいろなメディアがあります。例えばイン ターネット、テレビ、雑誌、学会、行政的措置、保険者の行動、さまざまなインセンテ ィブがあるわけですし、媒体もあるので、この標語がどういうように使われるのかとい うことを、かなり想定して、いろいろなことを組み合わせて考えるべきではないかと思 います。  お聞きしながらその2点を感じました。後者に関しては、ある程度作戦を作って、ど ういう場でどのように発表して、どのように使っていくのか。端的に言うと、小さな紙 に書いて医療従事者に配るのか、インターネットで流すのか、テレビで報告するのかと いう類のことです。そのキャンペーン全体の作戦と関係で決めるべきであるということ です。 ○星委員  こういうものを作るときに、多分この病院では相当の回数集まって、あるいはインシ デントレポートを検討した上で、どういう標語を作ってみんなで意識を高めていこう か、ということをなさると思うのです。実はそのプロセスが、私は非常に重要だと思い ます。例えばここで、病院でこの標語を掲げてくださいというものを作って、みんなが それをコピーして壁に貼ったところで、本当に価値があるのかということも考えなけれ ばならないだろうと思います。  国立病院の悪口を言うつもりはありませんが、国立病院・療養所では、スタンダード マニュアルというものを策定されて、それを病院の名前だけが一括変換されて、レポー トにして綴じて置いてある、それで「うちにはマニュアルがありますよ」とおっしゃる のでしょう。しかし私は、それには全く価値はないと思います。ですから、どういう人 たちに対してどういうメッセージを伝えたいのかということを考えながら作っていくと 同時に、それぞれの病院の中で、それぞれの医療機関の中で、自分たちの問題として自 分たちの言葉で置き換えていくという作業が前提となるようなものでなければ、私は価 値がないのではないかと思います。 ○山浦委員  安全というものは、医療側だけが頑張っても駄目です。先ほどもどなたかが、ある程 度の患者の協力ということを発言されましたが、患者と一緒に安全をつくっていくとい う精神を盛り込むかどうかが、重要だと思います。 標語が壁に貼ってありまして、そ の標語が医療従事者のための標語だと思ってしまえば、患者は注目しません。しかし 「部屋に入るときに、あなたの医師は手を洗いましたか」というようなものが、アメリ カにはすでにありますよね。「医者を選ぶ十箇条」などがあるらしいのです。そのよう に患者のほうに目の向いた要素を念頭に置いて作るというのも、1つの努力なのです。 ○大谷総務課長  安易にと言われれば、そういうことですが、標語というのは、今年の秋に患者安全週 間をするときに、1つの行動のシンボルとして考えてみたわけです。しかし、中身を見 てみると、確かに相手もいろいろな種類がありますし、患者サイドをどうするかという こともあります。  患者との関係では、今年はまだ初年度ですから、患者に語りかける前に、まず医療の 世界のほうからということになります。気持としては、患者とのコミュニケーションだ ったら、来年ぐらいに患者の安全のテーマに送っていって、今年については医療の内側 の方でというのが、当初の考え方だったのです。患者との関係でいけば、今年は、医療 の当事者が、今こういうことをポイントにしているということを通じて努力をしている ところを国民に見ていただき、信頼感を回復する程度のところまでかなと思います。そ れが過ぎてから、今度は患者に対する働きかけというくらいの、一連の刻みで考えてみ たいとは思っておりますが、いかがでしょうか。 ○山浦委員  はっきりと年度によって、今年は医療従事者、来年は患者のためにというのは、なか なか難しいと思います。十箇条もあるわけですから、そのうちの二箇条か三箇条は、患 者も目を引くような標語を入れるというのも、手ではないですか。 ○三宅委員  私は前回の全体会議で、ちょっとお話しましたが、全日空が職員に配っている、「7 つのポイント」というのがあります。これを私は3年くらい前に見たのですが、これは そっくり医療管理に置き換えられると思っています。どういうことか。医者も看護婦も 医療従事者も、安全ということに関しては、こういう注意をしましょうというもので す。それは共通のポイントですので、そういう意味でこういう標語を作ることは、意味 があると思います。  星先生がおっしゃったようなことは、航空業界でもアメリカでかなり言われていると いうことで、私は驚きました。「コスメティック・コンプライアンス」ということが、 航空業界でさえ言われているのです。見かけだけ形を作って中身がないというのは、非 常に危険なことなのだと。しかし一方では、いま医療界も同じような動きがあるのでは ないかという危機感を持っているのです。形だけを作っても、中身がなくては困るわけ です。そういった意味では星先生がおっしゃるように、そういうプロセス、それぞれの 機関が自分たちで考えて作るということが、私は一番大事だと思います。ただ私がいま ここで話したようなことは、我々医療界でみんなが気を付けなくてはいけない共通のポ イントという意味で、標語というのは、非常に意味があると思っております。 ○松月委員  標語に関して私は、あまり概念的なものではなくて、具体的なものであれば、医療従 事者向けに作ったとしても、それを読んだ患者やご家族の方は、なるほど、こんなこと に気を付けながらやっているのだというPR効果は、かなりあると思います。今年は医 療従事者向けに作ったとしても、それだけの標語や対策ということではないと思いま す。ただ、それはやはり誰が読んでも良く理解できるような、普通の人が読んでも理解 できるような、できるだけ具体的なものにしたほうがいいと思います。その内容の検討 をしていけば、意味はあるのではないかと思います。 ○矢崎部会長  三宅先生が言われた、全日空の7項目ですが、私は最初、パイロットのミスと、医療 行為におけるミスとは、本質的に随分違うのではないかと話しました。実は私は今年、 研修医を受け入れたときにみんなを集めて、「まず第1に、医療事故を防ぎましょう」 と言ったときに、全日空の7つの標語を出して説明したのです。ちょっと安易かもしれ ませんが、あれは言葉も短いですし、具体的ですから、あれに患者のものを3つ入れれ ば、10という計算になるのではないかと思います。  例えば院内感染の問題も、厚いマニュアルを作ると、もうみんな安心してしまうので す。マスコミの方も何かあったときに聞くのは、「マニュアルがありますか」というこ とです。そのマニュアルを見せますと、それでもう感心して帰られるのです。しかし医 療というのはマニュアルどおりにはいかないので、やはり大きな基本理念をきっちりし て、みんなが頭に入っていくようなものを作り、医療関係者だけでなく、やはりマスコ ミの方にもアピールしていく。すなわち国民に、我々はこういう考え方でやっていると いうことを理解していただくには、一番良い方法ではないかと思います。標語を作って 行動変容を起こすといっても、それだけでは駄目です。やはりいろいろなレペルの病院 に合った具体的な対策を、どういうように取っていくかということを、実際に詰めてい かなければいけないのではないかと思います。  随分ご意見をいただいて、本当にありがとうございました。いろいろな幅広い視点か ら、また少し違ったベクトルで、それぞれご提案いただきましたので、今日いただいた ご意見をまとめまして、事務局とも相談して、また先生方に議論していただこうと思っ ております。  今日は忌憚のないご意見を伺いましたが、ご専門の先生方、あるいは思いの深い先生 方もいらっしゃるので、今後の検討に当たっては、各委員の先生方から、もし必要な資 料の提供をいただければ、大変ありがたいと思います。  星先生には是非、こういう病院ではこういう対策が重要ではないかというものを、項 目別でもいいですし、またはフローチャートみたいなものを書いていただいても結構だ と思いますが、是非そういうお考えをまとめていただいて、それを踏まえて議論を行っ ていけば、さらに充実した、少し焦点の絞られた議論になっていくかと思います。  委員の先生方には是非、これはという思い入れのあるものを、標語そのものでも結構 ですから、事務局のほうにご連絡いただければ、大変ありがたいと思います。その上で 次回に検討していきたいと思いますので、よろしくお願いします。次回の日程はどうし ましょうか。 ○青木室長  次回の日程については、今後、委員の皆様方のご都合を調整させていただきたいと思 っております。検討内容については、今日ご説明した3つの検討事項の中で、特に患者 安全十箇条には、様々なご意見が出ておりますが、それらを十分に踏まえ、叩き台のよ うなものも作成し、議論を進めていただければと考えております。あと、それに関連し て、こちらのほうから各委員の方々に、個別にいろいろアドバイスをいただくというこ とも考えておりますので、その際には是非ご指導、よろしくお願いしたいと思います。 ○矢崎部会長  このままいきますと、事務局ペースでまとまっていく可能性もありますから、もし先 生方で医療の現場ではこうだというご意見がありましたら、是非資料として出していた だければ、事務局としてもそれを求めていらっしゃると思いますので、是非よろしくお 願いしたいと思います。 ○三宅委員  こういう十箇条を作ることも、非常に大事だと思います。ただ、いろいろな施設がい ろいろな工夫をされているとは思うのですが、やはり私はヒューマンエラーを防ぐ具体 的ないろいろな仕組みを持ち寄って、具体的な提案をしていくことが大事だろうと思い ます。 非常に簡単なことですが、例えば病院での薬剤の供給は、どういうようにやれ ば最も安全なのかと。看護婦が注射をするときに間違うというのは、看護婦の問題です が、そこへ至るまでの病院としてのプロセス、管理体制と言いますか、そういうものが どうあるべきかというのは、私はどこでも共通だと思います。例えば横浜市大の患者誤 認の問題も、非常に重大なことです。アメリカの整形外科学会とか、カナダの整形外科 学会では、もう学会として決めていると言われていますが、手術をする場所に、主治医 が必ず名前を書けと。たったそれだけのことで全部解決するわけです。非常に簡単なこ とです。日本の医療機関でもこういうことをやりましょう、そういうことを私はこれか ら提案していくべきだと思います。 ○矢崎部会長  これは標語を作って終わりということではなく、それを手始めに、そこを出発点に、 それをファーストステップにして、その後でいろいろな創意工夫があると思うのです。 モニターするシステム、医療プロセスをどうモニターしたら、最も効率よくエラーが発 見できるか、間違いを少なくするかという具体的な方法の中でも、すごく金をかけた場 合と、それほど金をかけないでやった場合と、いろいろあると思います。ですから、そ ういう可能性を。そこへ記入するというのは、全く金のかからないことですが、その威 力はコンピューターを用いるより、ずっと威力があるということもあるかと思います。 そういう具体的なことも、各委員の先生方にそれぞれ情報をご提出していただき、その 上で具体的な方策を練っていきたいと思っております。  大変お忙しいところ、今後ともご出席をお願いしなければならないとは存じますが、 何卒よろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました。 紹介先 医政局総務課医療安全推進室 宮本、石原 内線 2579、2580