01/06/25 第3回保健医療技術情報普及支援検討会            第3回保健医療技術情報普及支援検討会            平成13年6月25日(月) 15:00 〜16:30                 厚生労働省省議室 1.開  会  【武末室長補佐】  では定刻となりましたので、ただいまから第3回「保健医療技術情報普及支援検討 会」を開催させていただきます。本日の検討会も公開でございます。それでは、これよ り高久座長に議事進行をお願いいたします。  【高久座長】 本日はお忙しい中、また週の初めにご出席いただきましてありがとう ございました。まず事務局から、資料の確認をよろしくお願いします。 2.資料確認、前回議事録について  【武末室長補佐】  それではお手元の資料を確認させていただきます。「第3回保健医療技術情報普及支 援検討会議事次第」という紙がございまして、1枚めくっていただきますと、委員のご 紹介、2枚目に座席表がございます。3枚目から、右肩に資料1と書いてございます 「第2回保健医療技術情報普及支援検討会 議事要旨(案)」というのがございます。 一応これは先生方に一度お配りいたしましてお目通し願っておりますが、何かお気づき の点がございましたら、あとで事務局のほうにご連絡をお願いいたします。  そちらのほうが3枚ございまして、3ページめくっていただきますと、今度は右肩に 資料2と書いてございます「診療ガイドライン情報センターの役割と動向−診療ガイド ラインの情報伝達と普及」と書いてございます資料がございます。これが10枚資料がご ざいまして、そのあとに8枚ほど、OHPの資料をプリントアウトしたものがございま す。これは久繁委員のほうからプレゼンテーションしていただきます資料でございます が、それに委員の先生方には「日本健康情報センターの構想」という紙を1枚追加させ ていただいております。お手元にございますでしょうか。  それと、今回、いろいろ別になっていて申しわけございませんが、最初の葛西委員よ りプレゼンテーションしていただく資料が、「医療白書」という白い紙がございます。 これが11枚ございますが、これも委員の先生のお手元にお配りしていると思います。こ れがまだ出版前のものということで、一応委員の先生だけにお配りいたしております。 その点、ご了承ください。お手元にございますでしょうか。  今回、ちょっと資料がバラバラになって申しわけございませんが、それと最後にもう 1つ、左側に「素案」と書いてございます「日本健康情報センター(仮称)構想に関す る日本医師会の提案」という4枚の資料をご用意しております。委員の先生のお手元に はもう配付してあると思いますが、そろってございますでしょうか。  一応以上が本日の資料となっております。 3.議  事  【高久座長】  どうもありがとうございました。皆様方のお手元に、事務局のほうから説明がありま した資料が行き渡っていると思います。本日は一応4時半までということになっている と思いましたが、最初に葛西委員から、英国のEBMの現状についてお話しいただきま して、続いて久繁委員から、わが国における診療ガイドライン情報センターの構想のご 説明をいただきます。最後に本日資料の提供されました櫻井委員から、情報センター構 想についての日本医師会からの提案をご説明いただきまして、あと全体的な意見の交換 に入りたいと思います。  最初に「実地医家の裁量権を広げる『クリニカル・エビデンス』と英国EBMの近 況」について、葛西委員からどうぞ。  (1)実地医家の裁量権を広げる「クリニカル・エビデンス」と英国EBMの近況                                  (葛西委員)  【葛西委員】  どうもありがとうございます。前回はちょっと欠席いたしまして、大変失礼いたしま した。今回は資料が先週までに間に合いませんでして、きょう持ってきましたので、別 になって、これも申しわけありません。資料の内容は2種類になっておりまして、最初 の「医療白書」というのから7枚が、これはもうすでに昨年出版されたものの、私の書 いたもののコピーでございます。その次から、小さい字になって恐縮ですが、「急性心 筋梗塞」というふうに書いてありますが、これがきょうお話しするクリニかル・エビデ ンスの、今、日本語版をつくっておりまして、そのまだゲラ刷りの段階であります。で すから、まだこれから訂正があるという可能性があるということと、それから出版前で すので、この取り扱いについてはご注意願いたいと思います。それではプロジェクター を使ってプレゼンテーションをさせていただきます。  昨日英国から帰ってきましたが、きょうお話しするクリニカル・エビデンスというも のはこのイギリスの医師会でありますブリティッシュ・メディカル・アソシエーショ ン、BMAにあります出版部でありますBMJパブリッシング・グループというところ が、2年前から始めた、EBMを支援する新しい出版プロジェクトというものでござい ます。それの私は編集委員をしておりますので、その編集委員の会議があって出てまい りました。ですから、クリニカル・エビデンスということを皆様方にご紹介したいとい うことと、それにともないまして、そこに集まってくる人たちというのは英国を中心と したEBMのエキスパートが多いので、そこから聞きましたイギリスを中心としたEB Mの最近の状況について、お話しさせていただきたいと思います。 *スライド1  これは皆様方よくご存じの96年のサケットの論文から、「EBMとは何か」というこ となのですが、もう一度確認したいことは、このEBMについての3つの要素でありま して、1つは個々の患者のケアについての意思決定、これが1つの大きな目的になるわ けです。そのために現在得られる最良の根拠を使うのだということと、もう1つ、良心 的、明示的、かつ思慮深い利用と。これは全部私が日本語に訳したので、適当な日本語 ではないかもしれませんが、意味を酌んでいただきたいと思います。こういうようなこ とが言われております。ですから私がこれをもう一度読んでみますと、最初からEBM というのは非常に人間的な判断を求めるものでありまして、最良の根拠というものを探 す、それを評価する、それだけではないということなのです。  その説明としまして、個々の技術書、これは主に医師になりますが、個々の医師たち の臨床専門の知識、技術、こういう医師の内なるもの、それにプラスして、外から得ら れる最良の臨床根拠、これを合わせていくところがEBMであるというふうに、最初か らこういうふうに書かれております。96年からまたいろんなことが、特にイギリスを中 心に行われてきましたが、やはり原点というのはこういうところなので、これから出発 するのがいいのではないかと、いつも考えております。 *スライド2  これはちょっと日本語にする時間がなくて恐縮なのですが、今、診療のガイドライン が当検討会でも話題になっておりますが、われわれがエビデンスをもとにどういうふう な臨床のアクションを起こすのかということを、ここに図にしているわけです。エビデ ンスというものがあった場合に、われわれはそのエビデンスがすぐにアクションにつな がるということではないということを、まずはっきりわからなければいけないと思いま す。ですから先ほどのサケットの定義のところでもありましたように、外からのエビデ ンスと内からのわれわれの部分−−医師が主になりますが、最近はナースの人とか、そ のほかのケアワーカーの人たちもエビデンスに基づいて行動するということですが、そ れは必ずしも、Aというエビデンスがあったら必ずAというリアクションを起こさなけ ればだめかというと、そうではない。ここに非常に人間的な部分があるというところが 大事なのであります。  もちろん、よく見ますとエビデンスというものにも、まずわれわれの問題としてエビ デンスをよく気づいていなかったということがあったり、エビデンスを間違って解釈す るという場合もありましょうし、エビデンス自体が悪かった、間違っていたという場合 もあるので、エビデンス自体ももちろん注意は必要で、ここをしっかりとチェックする 機構が必要ではあるのですが、エビデンスがあったとしても、それに対してわれわれの 部分というのを考慮してかなくてはいけないというわけであります。 *スライド3  そしてわれわれの心の中に、あるいは頭の中には、いろんなことがまた出てくるわけ でありまして、それはわれわれが診る患者さんのそれぞれの特徴によっても違いましょ うし、患者さん自身がどういうふうなものを望んでいるかということも問題になってき ますし、その地域地域でどういう治療なら治療、診断なら診断ができるのかと。例えば 日本では今、CTスキャンはほとんどどこにでもある状態ですが、私がトレーニングし ていた1999年のカナダのブリティッシュ・コロンビア州では、CTスキャンは日本の2.4 倍の面積の国に3つしかないというような状況ですから、診断機器あるいは治療の得ら れることがそれぞれローカルな条件によって違いますので、それもわれわれの気持ちの 中には反映されてくるというわけであります。 *スライド4  さらにわれわれの気持ちの中に反映してくるものはいっぱいありまして、私たち自身 がプロフェッショナルとして興味を持っているものもありましょうし、それから経済的 なものも当然考えなくてはいけません。自分自身、こういう治療を自分はやってきて好 きなのだという、そういう感じもありましょうし、何かを特別にしたいのだということ もありましょうし、いろんなことがあります。さらには、忙し過ぎてまだしっかりと話 ができなかったとか、あるいはあることを忘れていたとか、そういうようなことまでわ れわれの思いの中には入ってくるということです。  ですからここら辺が、臨床の非常に難しいところでもありますし、またいってみれば われわれの裁量権、あるいはプロフェッショナルな自立性といいますか、そういったと ころにかかわってくるわけだと思います。 *スライド5  そして、われわれはそこでコンクルージョン、結論を下して、それがアクションに行 くわけですが、この結論自体も非常にまた不確かなところが多いわけです。そしてアク ションにつながります。 *スライド6  アクションにしても、非常に広い範囲のことがありまして、必ずしもこのエビデンス があってわれわれの気持ちが定まっても、コンクルージョンができても、アクションに つながらないこともまたあるのは、日々の診療の中でもよく経験されることだと思いま す。ですから私、実地医家、毎日診療をして地域で患者さんを診ている者として考えま すに、このエビデンスというものをイコール・ガイドラインとしてしまうところは、や はり危険であると。このコンクルージョンというのは、まずわれわれが考えて、先ほど 出しましたいろんな条件からコンクルージョンを出してアクションを起こすわけです が、ともしますとガイドライン、特にナショナル・ガイドライン、その国に1つの例え ば決めたガイドラインとかというのがありますと、われわれの心を通り越してコンク ルージョンというところに行ってしまう。  ですから、よくEBMがガイドラインをつくることとイコールのように考えられます が、実際はあるエビデンスがあって、それに対して何らかのポリシーが加わって出てく る、それがガイドラインであろうと考えます。ですから、そのポリシーというのは、国 のナショナル・ガイドラインをつくれば国のポリシーが入るでしょうし、例えば私のい る室蘭市医師会でつくるのだということになれば室蘭市医師会のポリシーが入ります し、私のクリニックでガイドラインをつくるのだと、私の研修医が使えるようにするの だということであれば、私のクリニックのポリシーが入ってくると。それから1人の医 師がエビデンスをもとに自分のやり方を考えたい、ということも当然あることですが、 これもその人のポリシーが加わるのだということで、エビデンス・イコール・ガイドラ インではない。  エビデンスにポリシーが加わったところでガイドラインが出てくる。ですから、その ポリシーによってガイドラインというのはいろいろ出てくるのだということでありま す。 *スライド7  これはイギリスのEBMのエキスパートが使ったスライドをちょっと拝借してきたの ですが、EBMというのは、いってみたら車を運転するのを習うようなものだというわ けなんです。ですから最初、EBMは非常に、例えばコンピューターを使えなくてはい けないのではないかとか、メドラインを引けなければいけないのではないか、コクラ ン・ライブラリーを見られなければだめなのではないかとか、いろんなことが出てきま す。あるいは臨床疫学がわからなくてはいけないのではないかとか。  確かにあるものは習わなくてはなりません。それは車の運転を習うようなもので、わ れわれは確かに教習所ではいろいろと車の構造とかについて習ったり、あるいは道路法 規について習ったり、実地の訓練もするわけです。ですけれども、われわれはそれで車 修理のメカニックになるわけでもありませんし、交通法規の法律の専門家になるわけで もないわけです。ところがある一定の教習を経て運転免許証をとれば、非常に私たちの 生活は自由になると、行動範囲も広がると。それがまさにEBMだというふうに、英国 のEBMのエキスパートは言っているわけです。  もちろん、車の運転をしたがために、普通に歩いている生活だけをしていた人には考 えられないような事故ももちろん起こすわけで、それはEBMでも同じことで注意が必 要なのは言うまでもありませんが、ひとたびEBMの基本的なことを習ってできるよう になりますと、これは非常にわれわれ実地医家の裁量権を広げる有力なツール、道具に なるのだと考えたいわけであります。 *スライド8  これは、EBMというのはすべてではない、というのをひとつご紹介するために使っ た、ちょっとごちゃごちゃしたスライドで申しわけないのですが、私が専門としている 家庭医療学では、患者さんの問題をこのように図を使ってアプローチ法を説明するわけ ですが、細かいことは省略しますが、疾患というものを十分に探っていく段階で、われ われはEBMを使うということをやりますし、それを教育していきます。  それからその疾患を持って苦しんでいる人間の部分に関しては、最近出てまいりまし たナラティブ・ベースト・メディシン、NBM、これを使いながらやっていくと。この 2つを両方バランスよくやりながら、疾患とその苦しみを持つ人間を家族、地域の中で 全体的に理解して、共通の理解のもとに「何が問題か、何がゴールか、何を役割とする のか」を考えて進むと、こういうことなので。決してEBMができたから全部ができる ということではなくて、地域で実際に起こる問題、実地医家が対応する問題について も、EBMというのは1つの道具であるということを示したかったのであります。 *スライド9  で、クリニカル・エビデンスでございますが、これは半年ごとに出るエビデンスの集 大成というものなのですが、この6月ですからこれは出たばかりですが、これが第5号 になります。半年ごとに出まして、それが今度新しくCD−ROMなんかにもなるよう になりました。これは今、委員の皆様方に回覧しますので、ごらんください。  で、今までありますEBMのいろいろなものに比べて何が違うのかということなので すが、クリニカル・エビデンスというのは、こういう研究があるからその研究をまとめ て示すとか、そういうことではなくて、あくまでも臨床の現場の問題から出発している ということで、実地医家のメンバーがチームを組んで、われわれが遭遇する日常の問題 で何が大事なのだろう、何を知りたいのかということから出発しました。 *スライド10  そしてその問題に対して、臨床家のエキスパートとそれから臨床疫学のエキスパー ト、これがチームをつくりまして、情報を収集し、批判的な吟味を加えております。 *スライド11  そして現在知り得る最良のエビデンスを記載して、それをのせているわけでありま す。 *スライド12  大事なことは、特徴としましては、エビデンスの強さを示しているということであり ます。これは「エビデンスがどのような研究によって示されているのか」ということを 詳しく書いてありまして、そのエビデンスが非常に確からしいと、それをすることが有 益だと考えられると。あるいはその有益というふうにはもうちょっと、一歩手前だぐら いとか、あるいは今現在そういうものは知られていないとか、あるいは害になるかもし れないというような示し方をしております。 *スライド13  これも先ほど言いましたが、エビデンスがない、あるいはまだ研究が進行中であると いうようなことも書かれております。 *スライド14  そして大事なことは、「こうしなさい」、「ああしなさい」というリコメンデーショ ンを加えていないということであります。これは先ほど言いましたような、一種の裁量 権にかかわることでありますが、「こうしろ」と言っているわけではないですね。です から実地医家は、このクリニカル・エビデンスを使うことによって、何かをしなければ ならないと、こういう治療をしなくてはいけないのだというようなことではないわけで すね。 *スライド15  そして6か月ごとに、このトピックスは数もふえますし、それから今まで出てきたト ピックスもさらに新しいエビデンスを加えて改訂を繰り返しております。ですから今、 第5号が出たわけですが、もう4号から前の本は要らないんです。捨ててもらって構わ ないです。5号だけ持っていれば、最近の2001年6月現在でわかっていることがのって いる。 *スライド16  皆様方の資料のところに、今現在翻訳作業を進めて9月に出版する予定ですが、私が 委員長になっている日本クリニカル・エビデンス編集委員会というところが監修をし て、日経BP社で出版をするということですが、もちろんBMJパブリッシグ・グルー プが全面的にこれをバックアップしているわけであります。  例として急性心筋梗塞のページを抜粋してのせております。これはまだゲラですので 校正される可能性はありますが、このように最初の1ページに診療上の疑問がまず出て きまして、それに対して介入するオプションのエビデンスの強さが、その強さごとにま とめて書かれております。  ですからこれを見ると、有益であるというエビデンスは、アスピリンと血栓溶解療 法、ベータ・ブロッカー、それから壞死阻害薬とPTCAなのだなと。それから有益で ある可能性が高い、ですから有益であるというよりエビデンスの程度が若干低くなるわ けですが、そこらには硝酸薬があると。それから無効ないし有害であるという可能性が あるというところには、カルシウム拮抗薬があると。そして細かいところでは、さらに そのキー・メッセージで個々のものについて具体的な内容が書かれておりまして、次の ページに行きますと、この急性心筋梗塞に関連する罹患率、有病率、それから病院、危 険因子、予後、介入目的、アウトカム、それから検索して批判的な吟味を加えたわけで すが、その方法が出ておりまして、そしてそのあと、それぞれの診療上の疑問について さらに詳しく書いております。  その詳しいところについては、本当にその研究論文のデータの数字を用いて書いてあ るわけであります。ですから最後のほうに出てきますこの参考文献は、ランダマイズド のコントロール・トライアル、それからそれを集めたメタ・アナリシスを含めてたくさ んの重要な文献が出てくると、そういうようなことであります。  ですから、実地医家のわれわれとしては、診療上の疑問に遭遇したらまずクリニカ ル・エビデンスを眺めて、自分の診療上の疑問がそこにあるかどうかを確認して、そこ にあれば「どういうエビデンスが、現在どの程度の強さでわかっているのか」というこ とを把握していく。もちろん時間があれば細かいところを読んでいくということになり ます。  このように半年ごとに大きくなっていきますので、スライドのほうにお示ししました が、1では600 ページちょっとだったのが、現在では1,480 ページということで、63の トピックスで、ここで150 ぐらいの診療上の疑問になるのですが。ですから例えば「心 筋梗塞」というトピックが1つで、そこにまたいろんな診療上の疑問が出てくるわけな のですが、トピックスだけでも63から134 にふえていると。これはイギリスのほうの家 庭医が行いました研究のほうで、大体400 のトピックスを網羅するとほぼ実地医家が診 療する8割から9割の診療上の疑問は解決できるということで、その400 を目指して 今、やっているわけです。最初のポケットサイズというところからはほど遠くなりまし たが、ただ、実地医家の診療室にこれが1冊あるというだけで大分違うわけで、われわ れ、車の運転を習ったのと同じように、これがあることで非常に自由になれるというと ころで、これをもとに自由裁量権を使って考えていこうと、そういうことなわけであり ます。 *スライド17  世界でどのようになっているかという状況であります。これが、クリニカル・エビデ ンスが今、世界のどのくらいの数、読まれているかということで、日本はこのアジアに 含まれて114 ということになっていますが、注目していただきたいのはイギリスの5万 3,000 、それからアメリカの50万800 という、この数であります。  これは最初にアメリカに起こったのですが、クリニカル・エビデンスはイギリスで出 版されたわけですが、アメリカで「これはやっぱり医者は使ったほうがいい」と。使っ たほうが自由に裁量権を持ってやれる。しかもマネージド・ケアの国ですから、マネー ジド・ケアに対していろいろと意見を言うこともまた、クリニカル・エビデンスのエビ デンスを知っていることでよりできるということで、非常に医者にとっていいものだと いうことが言われてまして、これはノンプロフィット・オーガナイゼーションで医師の 教育などに関しています、ナショナル……。あとで名前を出したいと思いますが、その ノンプロフィット・オーガナイゼーションで50万部を、BMJから買い上げて、全医師 に配っているということであります。もちろんまだ全米の全医師ということではありま せんが、いくつかの州でこれだけ、50万を配ったということなのです。  それからイギリスのほうでも最初は個々に買ってもらっていたわけですが、NHSの ほうで、やはりこれは重要であると、自分たちがもちろんつくりましたが、イギリスの 国にとって大事だということで、NHSのほうで買いまして、そしてイギリスの家庭医 に全員配った。それからNHSの職員にも配ったと。それからNHSで、前回も久繁先 生がお話になっていました、ナショナル・エレクトロニック・ライブラリー・フォー・ ヘルスにアクセスすることによって、このクリニカル・エビデンス全部が見られるとい う状況をNHSの職員にはそのように門戸を開いて、使うことになっております。  それからすでにフランスとドイツでは、それぞれの国の言葉のクリニカル・エビデン スの翻訳版が出ておりまして、現在スペインだとかイタリアとかそういう国で、それぞ れの翻訳をつくっているところであります。 *スライド18  このようにどんどん厚くなっていきますので、私たちが今回話し合ってきたのは、今 後どうするかというような話なわけです。6号が出る今年の12月には、これはかなりま た厚いものになってくるわけです。ですけれども、われわれの結論としては紙でできて いるものも必要であると。これはやっぱりそこに1冊あるということでかなり便利であ るということで、ただそれ以外に電子的ないろんな出版を考えていけるのではないかと いうことで、もう現在、インターネットのウェッブサイトから全文をとることができま す。これは購読した人が全文を読むことができます。それから購読した人が、今回から は安い値段でCD−ROMを買うことができます。CD−ROMに1冊が全部入ってお ります。そういったことで、徐々に電子出版も進んでいきます。もうすでに手で持て る、第1回で私がそうお話ししましたパーム型のコンピューターですね、こういったと ころに情報を入れておくということができるようになります。  それからこの電子出版ですと、6か月ごとに紙のほうは更新されますが、1〜2か月 でもう新しいトピックスが1回の更新を完了したら、もうそれを電子的にそれぞれの利 用者に配信するというようなシステムも考えてあります。ですから最近のトピックスと して、ナショナル・エレクトリック・ライブラリー・フォー・ヘルスは、最初にミュ ア・グレイさんが考えていたような、たくさんの個々のユーザーを開拓していって、そ れぞれの人が問題を登録しておくとそれに対して答えが返ってくるようなシステムをつ くるまでにはまだ予算の関係でいっていないようですが、むしろこのクリニカル・エビ デンスをナショナル・エレクトロニック・ライブラリー・フォー・ヘルスが取り込ん で、そこにどんどんアクセスして使ってもらうと、そういうふうな形に今なっていると 聞きました。  以上が私のスライドですが、そのほかいくつか細かいところもありますが、大体きょ うお話ししたかったことは、クリニカル・エビデンスの話を中心にしまして、EBMと いうものが日本で普及していくということにあたっては、そのEBMが実地医家にとっ て非常に使いやすいということが大事であると。それから、自分たちの裁量権を広げる ものだという認識を持って使うと、非常にわれわれとしては使いやすいものなのだとい うことであります。ですからガイドラインのことについても、それからデータベースを つくるということに関しても、それがわれわれのマインドを超えてコンクルージョンを 強いるようなものではなくて、われわれのマインドを自由に使ってコンクルージョンが われわれで導き出せると、そういう方向でやっていくべきだろうと考えております。以 上です。  【高久座長】  どうもありがとうございました。今の葛西委員のお話について、もしご質問が? B MJはプライベートな会社ですか。  【葛西委員】  英国医師会の中の出版部という形ですね。ですから政府との関係というのは、今私も よくは理解していません。  【高久座長】  ほかにどなたか? ないようでしたら引き続きまして久繁委員から「診療ガイドライ ン情報センターの役割と動向」ということで、よろしくお願いします。  (2)診療ガイドライン情報センターの役割と動向(久繁委員)  【久繁委員】  前回、健康情報センターの大きな枠組みのほうを少しお話しさせていただいたのです が、国際的にガイドラインに関する情報の収集、伝達、普及といいますか、利用促進と いうのはかなり急速に進んでいまして、そういう健康情報センターの中でもかなり重要 な位置を占めるということで、診療ガイドラインの情報センターというのが特別のユニ ットとして設定されて、かなり国際的に利用されている。しかもこの前も大分書いてい たのですが、医療技術の評価のほうでは、そういう各国のガイドラインの情報センター がネットワークをつくって、今後共同してそういう情報の普及、もしくは利用を進めよ うというような動きが急速に進められています。  それで、今回はそういう状況を踏まえて、それぞれの国でどんな診療ガイドラインの 情報センター、これは繰り返して申しますが、健康情報センターのごく一部の中身です が、そういうものがどういうふうに機能しているかということについて、お話をさせて いただければと思います。  お手元に資料をお配りしていますので、その表を見ていただければありがたいと思い ますが、こういう情報センターの国際的な動向、それから役割、どんなふうに機能して いるかということについて、お話ししたいと思います。  最も有名なのは、ここにありますように、表の1にありますが、アメリカの国立ナシ ョナル・ガイドライン・クリアリングハウスと。NGCと略称されていますが、これが 非常に有名でして、機能的にも非常にすぐれたものを持っている。ただ、それぞれの国 でそれぞれの設立の目的と背景がありますから、ガイドラインもセンターのこういうと ころに特徴を持っていて、ほかの国では別の特徴を持っているというようなこともあり ますので、そういう点を含めてお話ししたいです。  これがウェッブサイトの画面ですが、もし皆さんが見られれば、こういう画面が出て まいります。それで、ここにだれが組織を運営しているかという名前が出てきますが、 それからこれは検索の画面です。それからこういう疾患ごとだとか治療ごとでどういう 治療を選択すればどういうガイドラインがあるかというのがすぐ出てくる。それからあ とでもお話ししますが、そういうガイドラインを比較する機能もついているということ です。  もとに戻りますと、ここにありますように、後援はAHRQです。エージェンシー・ オブ・ヘルスケア・リサーチング・クォリティーという、前、AHCPRと呼ばれたと ころですが、医療の評価だとかそういう質の研究を積極的に支援する、厚生省の一部の ユニットですが、これにアメリカ医師会、健康保険協会が賛同して一緒に運営すると。 基本的には資金面も含めてほとんど国から出ているということです。目的は最新の診療 ガイドです。これはしかもエビデンス・ベーストの、科学的根拠に基づくものについ て、客観的で詳細な情報を医療関係者に利用できるようにすると、その普及と実行、利 用を促進すること、ということになっています。  中身ですが、1つは、「構造的要約」というのはガイドライン全文、利用できるのが 全文のっているのですが、基本的にエッセンスを、最多で50項目の内容についてかなり 要約をした内容をまとめてこの中へ入っています。そういうガイドラインの特徴を見 て、しかも自分が選択をすればその特徴を比較できる。それから主なガイドライン、非 常に重要なものについては、実際にそういう重要なものをまとめてその共通点だとか違 っている点、そういうことを明確に示してあります。で、ガイドラインで、それから電 子メールで情報交換ができると。それから、ガイドラインのビブリオグラフィーが利用 できるということになっています。  ガイドラインの選択基準ですが、この前も論議がありましたが、そういうシステマテ ィック、つまり系統的に情報を集めたものについて、なおかつ提言、リコメンデーショ ンがあるというもの。医療専門ラインの後援により作成されたもの。科学的な情報の把 握と評価についてちゃんと裏づけの文書が示されていて、それが確認されるもの。英語 で最新版で、しかも最近5年以内に出したものという。  で、登録がえは、この前アメリカへ行ったときにちょっとAHRQを訪問して担当の 人とも話したのですが、今はこれ、こういう疾患63、障害69になっていますが、大体2,0 00ぐらいにもうふえています。ですから毎年毎年、急速にガイドラインの登録内容はふ えているということがあります。  それで、具体的にどんな内容かというと、先ほど言いましたが要約する、もしくはそ の要点となる、質のチェックともつながるのですが、要約表というのがございまして、 これが大体50項目。これはその中からピックアップしているのですが、表題があって情 報源で、その利用可能性だとか付属文書がどれほど利用できるかとか、ガイドラインを だれが開発した、委員会はどんなメンバーで、目的は何で、勧告はどういうふうに検討 しているか、ですね。対象集団とか介入した診療行為だとか、費用などについても項目 があります。書いていないものが多いですが、費用分析ですね。利用法。それから根拠 の質と強度ですね。これの評点化、グレーディングですね。それがどうなっているか。 で、主要な勧告。勧告についてはそれをサポートするようなエビデンスが何であって、 種類はどんなものか。利益と害というものを、ちゃんと可能性を書いているということ になります。  そのガイドラインの情報センターでガイドラインの、これが簡約版ですが、簡約のサ マリーというのはこういう格好でざっと出てきます。これは腰痛のガイドラインです が、情報源とどういうふうな形で開発されて利用されているというのが出てきます。そ れからこれは簡約版ですが、完全版で、多分50項目になっていると思うのですが、50項 目すべてについてふれていると。となりますとこれが大体全部で、ここで7ページぐら いですね。こういう感じで7ページぐらいの内容です。先ほどの要約版は大体4ページ ぐらいですから、半分ぐらいが要約版で、少し詳しいものになりますと、7ページにわ たって概要がのっていると。  で、利用できるものについては、本文全文検索できて、それを自分のところへ利用で きるというふうになります。もう1つ、非常にすぐれた機能は、こういう50項目すべて のガイドラインについてチェックしていますから、自分が必要な、例えばがんならがん で、いろんなガイドラインをピックアップして、選択して見たものについて比較しよう と思いますと、こういう比較の表がすぐに出てきます。ですからタイトルが何で、だれ が開発して、それからこれはどういう情報を使ったかということですね。それから長 さ。だれが開発してだれが資金を出して、委員会はどんなもので、どういうグループ構 成になっているかというような話から始まって、これも完全版と同じように8ページぐ らいの中身が結構詳しい内容になっている。ですからすべてのガイドラインについて、 利用したものについてはすぐ一覧表で比較できるということです。そういう面で非常に 工夫してつくってあるということです。  それからもう1つは、非常に重要なガイドラインについては、ここにありますよう に、統合した内容を出すようにしています。ここにいくつかありますが、ディプレッシ ョンだとか乳がんだとか、さまざまな内容について。これも多分、話によるとこれを増 やしていくのだという話になっていますが、その中身は、先ほどガイドラインの比較と いうのがありましたが、それと似たようなものなのですが、ただ、これは乳がんのガイ ドラインの統合表ですが、どういうガイドラインが今あって、どういう目的でつくられ ているかということで、それぞれの内容について、ガイドラインの内容についてかなり 要約をして示すと。これも結構長いのですが、利益とですね。これは乳がんのスクリー ニング、検診の潜在的な利益ですね。これで、それぞれのガイドラインでどんなことが 述べられているかということがわかります。  こういう一覧表がずっと続いて、そのあとにガイドラインの中身の比較というのが、 このガイドラインのセンターでまとめたものが出ます。ですからこれは、例えば一致し ている領域と一致していない、異なっている領域というふうに意見が異なっているもの をちゃんと明記してあります。大体50歳から60歳はどのガイドラインも実施すべきとい うことになっていますが、40〜49の人は、これは意見が分かれていますが。ですからそ れについて説明があるということで、利用するときも、必ずしもガイドラインの内容が 一致するわけではありませんので、その内容についてかなり詳細に比較検討して、なお かつ簡単にわかるような、こういう統合表というのですか、そういうものを出していま す。  最近の状況ですが、そういうガイドラインを設立するときは、政策の委員会と技術専 門委員会、2つの委員会をつくって検討して立ち上げているわけですが、予算は初年 度、立ち上げのときに1億、約2億円ですね。それから年間大体1億3,000 万ぐらいを メンテナンスに使うと。利用度は大体週に3万点ぐらいです。ヒットしたのが77万件 で、何か要求でこういうのが欲しいという情報をリクエストしたのが、日本からは週に 2,000件ぐらいリクエストがある。大体8割はアメリカ国内で、ほかの国からもそれな りに、2割程度はアメリカのほかの国からもアクセスがある。  課題は、先ほども言いましたが、前回の委員会で健康情報センターのときに、イギリ スの国立の健康電子図書館の話がありましたが、あれはかなり機能的にいろんな情報を 統合して使いやすいようにやっているのですが、それが今後、このNGCでも課題で、 AHRQでいろいろ評価した情報なんかもかなり統合して使いやすいようなデータベー スにまとめ直して、それをもう一度提供できるような形にするというのが、今からの考 えだということがあります。  これはひな形みたいなもので、かなり詳細な内容のチェックとガイドラインの利用を 進めるということで、非常に特徴的な内容です。  それから次にもう1つ代表的なところでは、カナダの医師会がつくっていますインフ ォベースというのがありますが、ガイドラインの情報としてカナダ医師会が設立したの ですが、これはもともと「健康2000国民協力プログラム」というのを立ち上げて、その 中の一環としてこういうガイドラインの情報センターをつくったのですが、目的もちゃ んとわかっているわけです。これは医師会ですから、「医師の指導性を発揮し」という ふうに書いていますが、「健康と保健医療の最高の水準を促進すると、こういう使命を 満たす」と。で。これは「ガイドラインの活動を促進と調整をほかの組織と協同して進 める」と。  ここでも、ガイドラインの選択基準というのがここに4項目あります。適切な保健医 療について、患者の医師の判断を支援する情報を含む。保健医療の専門団体によりカナ ダで作成された、あるいは国外で同上の団体により作成されカナダで公認されたもの と。公認というのがどういう手続きになっているか、ちょっとよくわかりませんが、そ ういう内容。カナダ中心の話になります。これも5年以内に開発あるいはもう一度更新 されたものです。で、文献検索、そういう把握をちゃんとやっている根拠があるという ことで、40を超える組織で400 。これももう今、ふえている。これは2000年の終わりご ろの段階ですから、もう今、これをはるかに超えて、たくさんの情報が入っておりま す。  特にカナダの場合は、アメリカのNGCのガイドラインのクリアリングハウスのとき は、多分半分ぐらい、全文検索ができると思うのですが、これはかなり多いと思いま す。全文を利用できる可能性は非常に高い。  これがウェッブサイトの画面ですが、こういうわけですね。で、開発者だとか、最近 追加されたものとか、いろいろな方面から検索ができる。ただしこの場合、アメリカの ガイドラインのクリアリングハウスでやっていますように、それぞれのガイドラインに ついて要約ですね。実はあの要約というのは、エステート・オブ・メディシンというア メリカのガイドラインを率先して支援してきた機関、そこでガイドラインの質のチェッ ク項目というのを結構つくっているのですが、そういう項目が50項目、実は要約表にほ とんど入っているんですね。カナダの場合はそういう要約表だとか、それを比較すると いう機能は全くありませんので、どういうガイドラインがあってどういう形で全文が引 けるかどうか、というような部分が中心になっていますので、そういう意味では機能的 にはまだまだ十分でない面があるということです。  それから次は、ドイツに飛びます。ドイツにもガイドラインの情報センターというの ができています。これは「医療の質局」という翻訳がいいかどうかちょっとわかりませ んが、主催はドイツ医師会と公的健康保険医師の国立協会というのがありまして、それ に共催でドイツ病院協会、ドイツの健康保険ですね、生活者の側も入っている。で、目 的はドイツの場合は入院医療が害でなく利益をより多くもたらすように、根拠・合意に 基づくガイドラインの文化を導入することを目的とすると。で、ガイドラインの承認で すね、普及、実行、評価を行うということになっています。  ガイドラインの質が、ここにありますが、99年、700 以上。ドイツはガイドラインが 開発されているのですが、勧告の根拠がないとか、開発過程支援、実行の情報がなく て、非常に質が問題があるということで、質は再評価もしくは評価して、それをちゃん と使うということが非常に大きな課題になっています。ドイツにおけるガイドラインの 場合は、つまりガイドラインのミッションといいますか、使命だとかどういう形で使う かというような、マニフェストですね。そういうものがちゃんと。これはカナダでも同 じように「ガイドラインのガイドライン」というのがつくられていますし、その利用に 向けてハンドブックみたいなものがつくられていますが、同じような形。これはガイド ラインの質を評価するためのツールですね。そういうものも開発すると。  それから実際にドイツで開発されたガイドラインの、このツールを使った評価です ね。質を評価したレポートもちゃんと掲載されている。で、ガイドラインの情報サービ スだとか情報センターをこれと並行してつくって、利用促進を図るということになりま す。彼たちも、この前の医療の技術評価の段階で2つ、特別のセクションといいます か、ワークショップとシンポジウムがあったのですが、その中でかなり積極的に報告し ていたと。画面はあまりきれいではないのですが、これがドイツのガイドラインのクリ アリングハウスとか、こういうふうなガイドラインを使ってこういう内容が入っている ということです。  最近の報告によりますともう少し、医師向けだけではなくて患者向けのガイドライン の情報センターといいますか、情報のデータベースみたいなものも順次展開していこう と考えられて、進められています。情報の利用ですが、こういうふうにガイドライン・ インフォメーション・サービスというのがありまして、ああいう情報基地とは別に具体 的にガイドラインのどういう形で普及されているかとか、それから基準だとか、実際に 開発されたガイドラインの中身と、これも全文掲載されて利用できるようなものがある 形になっています。これがドイツです。  それから次に、少しイギリスに近くなりますが、地域は離れていますがニュージーラ ンド、もしくはオーストラリアでもかなりこういうガイドラインの情報センター化とい うのが進んでいまして。ニュージーランドはちょっと違いまして、ですから政府がや る、もしくは医師会がやるという以外に、実際に国民健康委員会、これは政府の委員会 ですが、これが後援する形で、ガイドラインの開発と普及活動の専門家とそれの関連者 の非公式のネットワーク型、それを主導とした形で運営されているということです。 で、最善の診療ガイドラインを開発、実行すると。ですからここはかなり、ガイドライ ンの情報としてよりも開発した情報を普及提示するということが。で、専門の保健医療 従事者だけでなく、消費者も利用のためのトレーニング、訓練をちゃんとやると。で、 そういうガイドラインが利害関係者の中で広く利用されるような文化の開拓を進めると いうことが大きくなっいます。  根拠のあるガイドライン情報源。これも概要版と全文版に分けてあるのですが、全文 版では目的、概要、情報、参照材料、こういう記述があるかどうか。標準化がどれぐら い進んでいるのかですね。それから伝達と評価。変更があったようなときに。これもチ ェックをして、外部の委員会で評価されたような形でその情報を使うと。  で、このニュージーランドのガイドラインのグループが実際ガイドラインを34、開発 していますが、これも主要な疾患ごとにやっているのですが、そのほかに厚生省のガイ ドラインが10ありますから、こういうものを登録して利用するような形で進めていると いう形です。これがウェッブサイトのイメージですが、こういうふうな、ここにいろい ろなトピックスだとか、どういう内容があるかというようなことが書いてあります。  特にニュージーランドの場合に非常に特徴的なのは、先ほども申しましたが、消費者 向け、コンシューマー向けの対応というのをかなり重要視されていまして、それに対す る情報提供というのがかなり進んできていると思います。そういうことでございます。 これも中身を詳しく見ますときりがないのですが、こういうコンシューマーのエビデン ス・ベースト・アクティビティーというもので、1つのセクションをつくりまして、ど ういうものが実際今新しく起こっているか、こういう根拠に基づく発想はどうするかで すね。それから資源ですね、情報源。それから実際に意見交換のための窓口というもの が作られて、行われています。  次はイギリスですが、イギリスの場合に、前回お話ししましたNELHですね。国立 の電子健康図書館。特にあそこはガイドラインを取り扱うわけではありませんので、ガ イドラインは実際にはナショナル・へルス・サービスですね。今、積極的な評価だとか 利用促進のNICEという、ナショナル・インスティテュート・オブ・クリニカル・エ クセレンスという、そこはもう膨大な形で、この間かなりの数のガイドライン、しかも 経済的評価も入れたような形のガイドラインをつくって、今動かしています。これにつ いては今回はふれませんが、それ以外にスコットランドの、これは大学の専門の研究家 が進めるガイドラインで、スコットランドを中心として、王認医科大学のガイドライン です。で、臨床医、保険医、専門家の、これもネットワークです。どちらもスコットラ ンドですが。  で、最新の根拠に基づく効果的な診療の勧告を含む診療を開発、普及ですね。これ も、先ほども専門家のネットワーク型は大体開発を、かなり中心的な役割を担っている ということで、この場合も開発とその複合をかなり意図的に考えています。で、診療と 結果のバラツキを減らすと。で、患者の医療の質を改善するということです。  ガイドラインの開発の方法論をかなり細かに、実際にどうやって開発するかというの を、かなりモノグラフでまとめて出しています。これはどうやって情報を継続的に管理 するかとか、チームとしてどういう方向の中身が必要であるか、科学的な根拠ですね。 ガイドラインの関係の結びつき。これはいろいろなことをやっていますが。それから、 これが実際に地域の臨床医によってどうやって使われるか、というようなことも出てく ると。  で、ガイドラインの開発。45ぐらいです。これも質は結構高くて、エビデンス・ベー ストの形で、かなり注意深く開発されているということになります。これもウェッブサ イトはこういう感じで、サインというふうに略称になっていますが、ガイドラインにつ いて何があたっているか、実際のガイドラインの検査をするという中身が出されて、利 用できるわけです。  それからガイドラインは、実際上はこういう形で開発されたガイドラインですね。こ れは95年ですが、こういう形でずっとあげていて、これも患者向けのクリック・レファ レンス、患者向け、それから実践の臨床関係の非常にこういうパンフレット型1枚か2 枚ぐらいだと思うのですが、こういうものと、実際全文のガイドライン、両方とものせ るような形で、情報をのせています。  これがスコットランドですが、イギリスは何といっても先ほども申しました国立の電 子健康情報図書館ですが、これはこの前お話ししました。これも実際に、これは古い バージョンで、多分設立のときの経過のものだと思うのですが、ガイドラインだけでは なくさまざまな、だからナイスの助言のガイドラインです。これもデータベースがあり ますし、システマティック・レビューと。系統的にある問題について評価した内容です ね。先ほど葛西先生のお話で、クリニカル・エビデンスですね。これもリンケージで す。それからエビデンス・ベースト・オン・コール。これは実際に電話をかけていくと いうような形。それから『バンドリアー』という情報誌です。2か月にいっぺんぐらい 出していますか。トピックスを選んで、一般の人にもわかるような形で情報誌をやって います。そういうようなデータベースです。それからR&Dプログラム。これは系統的 な評価といいますか、各テーマを選んで、イギリスの厚生省が支援した研究のデータ ベースがありますが、そういうものともすぐつながるような形になっていると。  ですから、ガイドラインは主にナイスという機関を中心としてまとめて発信している と。ただ、そこはナイスを中心のガイドラインの情報なので、ほかのところで開発され ている情報のガイドラインと、また別の形でまとめるということになっています。  各国のそういうガイドラインの情報センターの動きを見ていますと、先進諸国でやっ ぱり日本が一番そういう情報化、IT化に立ち遅れているという面が非常に強いわけで す。ですから評価の機関も、まだ日本では専門の独立した機関ができていませんが、も う先進諸国だけではなく、東南アジア、中国を含めて、そういう評価の機関ができて、 EBMの基盤になるような研究活動がかなり進んでいます。そういう意味では、そうい う基礎になるような研究機関、もしくはそれで使うようなEBMのセンターと、それを もっと日常的に促進するためのガイドラインの情報センターとか、そういうような一連 の情報化が非常に日本では遅れていて、それをやっぱり早急に改善する必要があるので はないかと思われます。  実際にガイドラインの情報センター、そういう各国の動きを見てどういうふうなこと が考えられるかといって、前回の健康情報センターと同じように、要約をここへ書いて おりますが、良質な医療の提供を促進すると。で、このガイドラインを把握して評価し て、利用、普及、調整を進めるということが1つあって。  組織ですが、主催はだれにするか。先ほど、世界各国でさまざまな歴史的背景、もし くはその地域地域の状況によって主催する機関が違うわけですが、国全体でやる場合は 厚生省を中心にやっておりますし、医師会が主催するようなカナダ型もありますし、そ れから研究機関に置く場合もありますが、広範囲な場合はやっぱり国、もしくは医師会 が中心としてそういう検討を進めていると思います。  先ほど言いましたように、ガイドラインの情報センター、アメリカ型のNGCでも、 当初大体2億ぐらい投入してデータベースの設立をして、それから1億から2億の間で 運営費がかかるようですから、かなり膨大な費用がかかるわけです。ですから、こうい う公的な資金をかなり利用しながらやらない限りはとても維持運営ができないと思いま す。で、AHRQ、アメリカのNGC、ナショナル・ガイドラインというのは、ややも すると実際に運営しているAHRQも、実際のウェッブサイトの維持とか、個別に開発 されたガイドラインの評価については、ECRI、エクリと呼んでいますが、民間のシ ンクタンクですが、そこに委託をして実際の作業は進めるということをやっておりま す。  運営については、先ほども出ましたが、委員会を設置して、それから実際の事務局に ついて、これはアメリカの場合はそれこそ民間のそういうシンクタンクを使ってやると いうことですが、これもどういう形でやるか。それから共催、後援ですね。これも社会 的な機能ですから、特別どこの機関が独占してやるというわけではなくて、社会的に国 民が共有できるような情報をみんなが協力してやるという、一部の利害関係者がやるの ではないということはそれぞれの機関で当然考えられたのですが、そういうのをどこま で広げるか。それから先ほどの財源ですね。こういうものをちゃんと考えてやらなけれ ばいけない。そういうことが恐らく今後、検討課題になるのではないか。  それから活動ですが、最初はまず第1番目。非常に重要なのは、ガイドラインの利用 の提言と指針。だからどういう目的で、どういう使命を持ってガイドラインの利用を進 めるか。そういう質の評価の問題ですが、最終的には開発の段階まで立ち入って、そう いうことをちゃんと提言するということが非常に重要なのではないかと思います。それ から「ガイドラインのガイドライン」と称していますが、そういうようなマニフェスト をちゃんとつくって、そのもとでガイドラインの情報提供をやる。これもガイドライン のデータベースをつくるわけですが、どこまで収支を考えるか。だから日本の場合、日 本だけでやると非常に限られていますし、しかも国際的で質の高いガイドラインや情報 が扱えないわけになりますから、そういうものをどこまで広げるか。  ですからある場合には、外国のガイドラインの全文の、先ほど言ったガイドライン同 士の、センター同士のリンケージというのは可能ですし、ガイドラインに直接のリン ケージも可能なのですが、恐らくそれだけでは日本が利用できない可能性があるので、 その要約ですね。例えばアメリカのNGCの要約版について、あれと同じぐらいの、完 全版とはいかなくても簡略版ぐらいの内容については、2,000 ぐらいですから、翻訳し てもそれほど量が多くないわけですから、初期で投資してそういうのを翻訳して、日本 のガイドラインと対応できるぐらいの形でちゃんとセットアップするというようなこと が非常に重要なのではないかと。  それから評価です。実際にガイドライン、ドイツでもかなり数は多いけれども質が悪 いということが問題になっていますが、こういう基準の設定と評価ですね。これはアメ リカの要約、収載するためのチェックポイントがありますが、そこまでいかなくても、 評価をしてどういうことが問題かというようなことをやる必要があるかもしれない。  それから登録。先ほどもアメリカだとかカナダの選択基準というのがございました が、そういうものをちゃんと設定してあるということです。中身は、利用情報は、先ほ ど言いましたが、簡易簡略版と全体の完全版みたいな要約も入れて、ガイドラインの比 較だとか全文利用だとか統合みたいな形を、やっぱり機能としては置いておいたほうが いいのではないかと思います。繰り返しますが、これは対応する国際的ガイドラインの 翻訳等々を含めてやらないといけないかもしれません。  問題は、ガイドラインの情報センターはガイドラインが中心なのですが、その根拠と なったシステマティック・レビューとかメタアナリシス、こういうものについてどこま で入れるかというのがまた、健康情報センターとの構想との絡みですね。どこまで範囲 を制限するかということが問題になってくる。で、こういう情報センターをつくったら ば非常に活動を国民に知らせると、もしくは医療機関に知らせると。センターのニュー スみたいなのを定期的に発行して。特にプライマリー・ケアと患者向けですね。そうい う情報発信をやると。  それから今までは情報センターとしての機能ですが、もう1つ、研究です。研究面 も、これも余力と財源ですね。そういうものがあればの話ですが。具体的にガイドライ ンの開発の方法だとか、実際にどれほど普及して利用されているか、普及状況ですね。 それからニーズだとか、ガイドラインの実際使って効果があるかどうかというようなこ ともですね。もしくは、開発も委託もしくは自主財源を開発するようなこともしないと いけないだろうと思います。そういうガイドラインに関する研究というものも非常に大 きな。  もう1つは、こういうガイドラインを実際にどうやって使うか。教育訓練ですね。そ れを支援する。こういうものが非常に今後の活動にとっては非常に重要な課題になるの ではないかと思われます。ですからそういうものをちゃんと構想の中に入れて、設立当 初はなかなかそういうふうにいかないかもしれませんが、そういうものを移行させて、 将来的に発展させていくというようなことが必要なのでははないかと思います。  これがガイドラインの国際的な状況と、日本で考えるとしたらどういうことが考えら れるのかということをお話ししたのですが、もう一度最初に戻りまして、日本健康情報 センター。  【高久座長】  すみません、もう1つ報告が。4時半までになっていますので、そろそろ。  【久繁委員】  あ、そうですか。ではそれで。  【高久座長】  それでは今の久繁委員の御報告については、櫻井委員から「日本健康情報センター (仮称)構想に関する日本医師会の提案」をお聞きして、久繁委員と櫻井委員の両方に ご意見、ご質問等お伺いします。櫻井先生、よろしくお願いします。  (3)「日本健康情報センター」(仮称)構想に関する日本医師会の提案(櫻井委 員)  【櫻井委員】  前回の委員会のときに高久先生から、日本医師会がどんなことを考えているか発表し ろという指示をいただきましたので、資料を用意してまいりました。EBMに基づく診 療ガイドラインというようなことに絡むいろんな問題については、日本医師会も非常に 関心を持っています。第1回の委員会のときに厚生労働省から、旧厚生省の時代からい ろんな委員会があり検討会があって、いろんな報告書が出ているというところも、日本 医師会からも参加させていただいて、日本医師会独自としてもいろんな検討を行ってき たわけです。  ちょっとこの題が悪かったかなと思うのですが、「『日本健康情報センター』(仮 称)構想に関する日本医師会の提案」というよりも、「『日本健康情報センター』(仮 称)に関する日本医師会の構想(案)」というような意味におとりいただければいいか と思います。で、「日本健康情報センター」といっても、これはこの間の検討会のとき に久繁先生からレクチャーというかご説明があったので、ここはその言葉を借りたよう な形になっています。  時間がありませんから、1番の「EBMに沿った診療ガイドラインの役割」というと ころは、要約だけ言いますと、こういういろんな情報が氾濫していて、その中から適切 なものを選んで、日常診療に反映させなければならない。そういう努力はしているわけ で、そこで診療ガイドラインというようなことが出てきているわけだけれども、先ほど 葛西先生からお話もあったようなことで、それが「代表的な状況に対処するための標準 的な一方の指針というようなことなのであって、それがいろんな意味の位置付けを逸脱 した形で使われるべきではない」というようなことを、日本医師会としても考えている のでございます。  2番目の「わが国の現状と課題」というところは、実際にわが国において最近、各学 会等からいろんなガイドラインが出ているわけで、ちょっとインターネットで診療ガイ ドラインというようなキーワードで引いても、200 も300 も出てきてしまって、いろん なものがあって、すごい混乱状態にあるというような気もするわけです。学会等がきち っといろんなエビデンスに基づいておつくりいただくということは非常にいいことであ ると評価はしながらも、当然それが、どうやって使っていくのかというような問題もあ ると同時に、「実際に1つ1つが客観的な指標によって選ばれたり評価されているのか どうか。それをまたどうやって普及させていくか」というようなことで、いろんな問題 があるのではないかと思います。  この辺のところは意見という意味で、次のページに書いています。2番目に、そうい うことで久繁先生の言葉を借りて、日本健康情報センターみたいなものを設立するのだ ということを書いて、4番目のところですが、日本医師会としてはそのセンターは、実 際にいろんなことを評価をしたりいろんなことをするのは学会の先生方がやるのだと思 いますが、実際に動かしていく事務運営とか組織づくりみたいなものを日本医師会が担 当させてもらったらどうかというようなことが、ここに書いてあります。  5番の「センターの機能」というところは、やや羅列ですが、その日本健康情報セン ターでは、ここに書いてあるようなことで、ちょっと順番が、あちこち行っているので すが、診療ガイドラインの客観的評価のためのもともとの指標、「ガイドラインのガイ ドライン」今、久繁先生からお話がありましたが、そのようなこととか、いろんなガイ ドラインに対してニーズの把握とか優先順位、これは厚生省の委員会のほうでもあった ようですが、どういう疾患に対して優先的につくっていくのかとか、そういうようなこ ととか、これもあちこち行ってしまいますが、エビデンスそのものの収集と評価とか、 それからでき上がった既存ガイドラインの収集と評価。それからまた、評価したガイド ラインを再評価という意味で、これはあとでも述べたいと思いますが、利用者というの も広い意味に考えていますが、いろんな意見が出たり、それから時間的な流れも当然あ るのだと思います。そういうことも含めた再評価とか、個々のガイドラインの関連付け と体系化とか、ガイドラインそのものをデータベース化すること、それからそれを普及 するにはどうするか、さらに、それがどうなっているか調査したりする、それからそう いうデータベース化されたものが双方向性の情報交換システムとして、これは開原先生 からもお話しがありましたが、「こういうものが電子化されて、だれでも使えるような 形にしなければいけない」というようなお話しもありましたが、そのようなこととか、 さらに、これはすぐということではないですが、新規ガイドラインの作成、新規という 意味は、例えば高血圧学会が血圧のガイドラインをつくったものをまた別個に、血圧の ガイドラインを新たにつくろうというのではなくて、多くの学会等でつくられているガ イドラインの中で、分野としては網羅できないような、例えば一番単純なのですが、い わゆる風邪症候群の診療ガイドラインなどというのは、風邪学会というのがないとすれ ばあまりできないのだろうから、その辺はこういうところで、医師会が音頭をとって、 もちろんいろんな分野のご専門の先生のお力を借りてそういうものをつくるというよう な意味で、「新規ガイドラインの作成」というふうに考えています。  で、この6番の「2001年度センターの実施する業務」というのは、これは日本医師会 の考えとして、日本医師会がつくっていくとすればこういうものが、2001年、今年中に やれるのではないかというようなつもりで書いているわけです。前のほうにも書きまし たが、いっぺんにいろんなものができるわけもないわけですから、前で大きく分けた診 療ガイドラインの部分、今、久繁先生から「日本診療情報センター」という構想があり ましたが、そういうような診療ガイドラインの事業部門と、次のページですが、この 間、いろんなオリジナル文献のデータベースというのは福井先生からお話しがありまし たがそういう事業というようなものを考えていかなければいけないので、2001年という 意味では、日本医師会が取り組むとすれば、診療情報センター的な既存ガイドラインの 評価ぐらいはできるのではないかということを、日本医師会としては書いたわけです。  その全体像が最後のページ、4ページですが、図としまして、さっき申しましたよう に頭の題名は久繁先生のこの間ご発表になった「日本健康情報センター」ということに なっています。実際にはこの左の、この二本線の枠の外に出ているところで、このメド ラインと『医中誌』とアイミックを並べるというのはちょっと問題があるかもしれませ んが、とにかくオリジナルないろんな文献データベースを使って、いろんなガイドライ ンというのはすでにもうできてしまっているわけです。もちろん、太字で書きました が、ガイドラインをつくる中心は各学会であろうと思いますが、先ほど葛西先生のお話 しがあったように、医師会でもつくろうと思えばつくれるだろうし、病院団体とかそう いう各種団体でつくられるわけです。現実にそういうものがいっぱいできているわけで す。  それに対して、その二本線の中のことを日本医師会が運営を担当しながらやりたいと いうことで、本部委員会とか、やや思いつきの羅列で申しわけないのですが、まず健康 情報センターというものの基本方針を決め、全体の運営を管理し、各種委員会の設置と か委員の選定をして、エビデンスに基づく文献の評価をして確立していくとか、診療ガ イドラインの理念を確立していくとか、さっき言いましたような再評価的な仕事もして いくということです。それから最後のほうには「利用・普及」とか、いろいろ書いてあ りますが。  その下に、これもやや例示的で申しわけないですが、さっき申し上げたような内容 を、委員会という形で落としているわけです。テーマの選定委員会だとか既存ガイドラ インの評価のための評価委員会だとか、さらにそれを再評価するための委員会だとか、 エビデンスそのものを集める委員会だとか、さっき言いました新しいガイドラインをつ くるような委員会とか、そういうようなものをいくつか考えています。  その下にというか、2つの大きなデータベース、診療ガイドライン部門のデータベー スと、左のほうの「評価済オリジナル文献」という意味は、これはこの間福井先生から だと思うのですが、医中誌や何かのデータは、外国のメドラインなんかに比べると、い ろんな分類等がきちっとできていないとかそういうようなことがあるので、この言葉が いいかどうか知りませんが、選別とか評価とか整理とかというようなことを行う。それ を「評価済」というような言い方にしてあります。この言葉のニュアンスはまた変える 必要があるかもしれませんが、そういうオリジナル文献みたいなものをきちっと整理す る。これは高久先生が確か、「第一線の先生がデータベース機能をつくらなければいけ ないのではないか」とおっしゃったようなこととも絡んでいるのですが、そういうもの をここへ考えています。  それで両方のデータベースがインターネット上で、下のほうに書きました「利用 者」、われわれとすれば、診療ガイドラインというような意味であれば、やっぱり一番 の利用者というのは一線の医師、われわれにとっては医師会の会員が一番の中心だろう と思いますが、研修医であるとか研究の方とか、もちろん広い意味では医師だけではな くて、そうでない医療関係者とか、あるいは実際に医療を受ける側の国民という意味も 含めて、開原先生がおっしゃったような、だれでもアクセスできるような形のネットづ くりをし、それが双方向性の意見交換ができるという形の確保ができるようなものをつ くって、最終目標は、一番下のそれによって「医療の質の維持、向上を図る」のだとい うようなことを考えているということです。  先ほど申し上げましたように、日本健康情報センター(仮称)に関して、日本医師会 の構想案というようなことで提出させていただきました。どうも、ちょっと急いで舌足 らずでしたが。  【高久座長】  いいえ。どうもありがとうございました。久繁委員と櫻井委員の両方からご説明いた だきましたが、このお2人のお話につきまして、ご質問あるいはご意見がありました ら。久繁先生、何かもう少し追加されますか。  (2)診療ガイドライン情報センターの役割と動向*補足  【久繁委員】  簡単に、すみません。それで、医師会の方からも健康情報センターということで構想 が出て。最初に私、先月申し上げたときも、健康情報センターというふうにお話しした のですが。基本的にこれ、最初にも申し上げたのですが、これはいくつかの要素がある と思うんです。ですからガイドラインの情報センターというのは、これの鍵になるかも しれませんが、それから先ほどから出ていますが、知識、情報のデータベースですね。 これもいろいろレベルがありまして、コクランだとかクリニカル・エビデンス、かなり もうまとめた内容を、これはわが国オリジナルの情報をつくるということも1つはある のですが、恐らく国際情報をそのまま翻訳したものを多分契約してウェッブサイトにの せるとかいうような形で使う。  もう1つ、EBMの2次情報ということで、実際にクリティカル・アプレイザル、批 判的に吟味している情報を要約したものが、国際的には『EBMジャーナル』などとい うのがありますが、これも同じような形で利用できるような格好にする。それから1次 情報でわが国のデータベースの改善。先ほど『医中誌』のキーワードとか構成を今後改 善していかない限りは、ほとんどわが国の情報というのは混沌とした情報に近いので、 そういうことを変えると。それからパブメドのリンケージということで、これは3レベ ルぐらいがありますので、そういう情報データベースをどうするかということですね。 これが1つの要素だと思います。もう1つは、知識管理で図書館などを中心とした情報 システムの確立だとか、利用実行なんかの能力開発をかなりしないと、つくっても使わ れない可能性がありますので。そういうことが3番目の柱です。  4番目は、こちらの1、2、3が進んでくると、糖尿病なら糖尿病、がんならがん で、主要な疾患だとかもしくは治療法でも抗生物質の治療だとか、そういう特定のテー マに基づいてこういうものを網羅して、使いやすいような格好にすると。それから5番 目に、今まであまり出ていないのですが、もう国際的にはかなり患者、国民向けのそう いう情報提供というのが大きい内容になっていますから、5つの柱の中で、診療ガイド ラインの情報センターというのはかなり主要な位置も占めるけれども、必ずしも全部で はないと。ですから今後、情報の普及委員会として、こういう全体構想を立てて、その 中で短期的に、それから中長期的にどう考えるかということで検討を進めたらよろしい のではないか、というのが私の意見です。すみません、長くなりまして。  (4)意見交換  【高久座長】  どうもありがとうございました。久繁委員から、前回はイギリスでしたが、きょうは アメリカ、ニュージーランド、スコットランド、ドイツなどの状況をご紹介いただきま した。それから日本医師会のほうから櫻井委員が、提案ということでご説明いただきま した。で、「実際にでは日本で健康情報センターあるいは診療情報センター、名前をど うするか。どういう機構で運営をしていくのか」ということについては、きょうは4時 半までになっていますので、次回にいろいろまたご議論いただきたいと思いますが、少 し時間がありますので、久繁委員あるいは櫻井委員のご説明にどなたかご質問はおあり でしょうか。  【開原委員】  久繁先生にちょっと質問なのですが、お金の話をして申しわけないのですが、要する にガイドラインをつくる費用とそれから運用の費用というのは、当然これは必要になる と思うのですが、それは国によってだれが出しているのかということに違いがあるの か。または具体的にはどうなっているのか。その辺のところをもしご存じでしたら教え ていただけないかと思いますが。  【久繁委員】  ガイドラインの開発は、これは国が研究費を出す場合と、各専門学会が独自にやる場 合が2通りありまして、必ずしもどちらが多いというわけではないと思います。で、ア メリカの場合は、先ほどのAHRQ、その前のAHCPRというところが、1つのガイ ドライン、これもボランティアの時間だとかそういうのを大体あまり払っていませんか ら、1本つくるのに6.000 万から1億ぐらいかかっています。ですから安いところだ と、この前のシンポジウムだと数千万か数百万というのもありましたが、やっぱりそれ は中身と範囲によってかなり違ってくるものだろうというふうにですね。質のいいもの をつくろうとすると、やっぱり数千万から1億ぐらいかかるのではないか。  それは大きいものをつくろうと思う場合は国が出していることが多いと思うのですが そこでも国もしくは地域の状況によってかなり大きく違ってきていると思います。  【開原委員】  カナダなんかはどうなんですか。  【久繁委員】  カナダは、国が予算を出している場合もありますし、学会が中心としてつくっている 場合もあります。あそこはちょっとさまざまですね。国の、ああいうAHRQみたいな ものはカナダはありませんので、ですから国がそのままお金を全面的に出すというのは ないと思いますが、ただしファンディングとしては、研究費として出しているというの が結構あるのではないかと思っています。それは開発の費用ですが、運営のほうは、先 ほども出ましたが、これもガイドラインの情報センターによってかなり違っていきま す。ですからカナダの医師会の場合は恐らくかなり医師会のお金。ただしその場合、か なり範囲は限られて、評価項目とかそういうのは入らないのですが、アメリカの場合は ほとんどいわゆる国のお金で運営、開発がやられているということで、それは先ほど言 いましたように維持費が1億円から2億円、実際のセットアップに2億円ぐらいかかっ ているわけですから、かなり膨大なお金がかかるだろうと。  ドイツなんかの場合は、あれは医師会だとか保険協会だとか、それから保険者です ね。シックネス・ファンドとかそういうところがお金を出し合ってやっているというこ とで、かなり社会的なニュアンスが強いという。ただし、そういう意味では医師会はか なり積極的にやっているという感じです。大学機関の場合も、恐らく国からの支援でし ょうが、多くはボランティアも含めて学会も一部負担しながらやっているような感じだ と思います。  イギリスの場合のナイスというガイドラインを作成・普及させる、あれはナショナ ル・ヘルスサービスの一環ですから、もう全く国のお金でやっています。電子健康図書 館も厚生省中心ですから、国のお金でやっているということで。ですから国の保健医療 システムの違いによってかなりその辺は、ニュアンスは違ってくるだろうと思います。  ですからガイドラインの情報センターと健康情報センターの構想があると、かなり莫 大になってくる。だからアメリカでも、ガイドラインのクリアリングハウス以外の、N LHだとかそういったほかのものを入れると莫大なお金で、とても想定ができないぐら い大変な額だというふうに思っています。  【開原委員】  わかりました。  【高久座長】  きょうご提案がありましたセンターについて、次回具体的にご討議いただければと思 います。きょうはプレゼンテーションが主になりましたが、葛西委員、久繁委員、櫻井 委員、ご用意いただきまして、御礼を申し上げます。  どうもありがとうございました。                                       (了) 照会先 厚生労働省医政局研究開発振興課  医療技術情報推進室  (担当)武末、高橋  (代表)03−5253−1111 内線2589,2588