01/06/12 「第1回臓器移植に係る普及啓発に関する作業班議事録」 第1回臓器移植に係る普及啓発に関する作業班            日時   平成13年6月12日(火)                 19:00〜21:15            場所   弘済会館                 「桜の間」  出席者: 秋山 政人  ○大島 伸一   金井  淳   菊地 耕三       篠崎 尚史   田中 秀治   貫井 英明   土方 仁美 ○ :班長  参考人: 大田原佳久   澤   充   長谷川友紀 1. 開会 2. 議題 (1) 臓器移植の現状と啓発普及の必要性について (2) 厚生科学研究費における取組みについて (3) 都道府県コーディネーター等の活動状況について (4) アイバンクコーディネーターの活動状況について (5) 日本臓器移植ネットワークおける普及啓発について  3.閉会 ○事務局  澤先生と貫井先生のご到着が遅れておりますが、定刻になりましたので第1回「臓器 移植に係る普及啓発に関する作業班」を開催させていただきます。本日はまず第1回目 ということもございますので、事務局より委員の先生方のご紹介をさせていただきま す。  はじめに、本作業班の班長をお願いしております名古屋大学の大島先生です。左から 順にご紹介さしあげます。  財団法人新潟県腎臓バンクのコーディネーター秋山先生です。  順天堂大学医学部金井先生です。  社団法人日本臓器移植ネットワーク菊地先生です。  東京歯科大学角膜センターの篠崎先生です。  杏林大学医学部の田中先生です。  次のお席が山梨医科大学の貫井先生になっておりますが遅れてご到着の予定です。  大島先生から向かって右手が、財団法人秋田県臓器移植推進協会の土方先生です。  本日は参考人ということで3人の先生方にご出席をいただいております。  浜松医科大学の大田原先生です。  日本大学の澤先生です。  東邦大学の長谷川先生です。  事務局でございます。  中央が厚生労働省健康局臓器移植対策室長の大澤でございます。  本日の座席表には富沢補佐とございますが、本日出席させていただいておりますのは 堀内補佐でございます。  最初に事務局で資料の確認を簡単にさせていただきます。お手元のクリップをとって いただきますと、一番上が議事次第になっております。次のページが座席表、後の2枚 が委員の先生方の名簿となっております。  最後に資料の一覧が載っております。本日の資料は資料1〜7までです。  資料1が、事務局で作成させていただきました臓器移植に係る普及啓発に関する作業 班についてでございます。以下が東邦大学の長谷川先生、新潟県腎臓バンクの秋山先 生、秋田県臓器移植推進協会の土方先生、浜松医科大学の大田原先生、東京歯科大学の 篠崎先生、日本臓器移植ネットワークの菊地先生からご提供いただきました資料がそれ ぞれついております。資料のほうはよろしいでしょうか。では以下の議事進行を大島班 長よろしくお願いします。 ○大島班長  第1回目の臓器移植に関する普及啓発に関する作業班をはじめさせていただきます。 こんな時間にお集まりいただきましてありがとうございます。  最初に大澤室長から、この班がどんな趣旨で、どういう経緯で、またどういう目的を もって作られたのかということについてご説明をいただきたいと思います。 ○大澤室長  大澤でございます。最初の会合でもございますので、ご挨拶を兼ねまして、この作業 班をお願いいたしました趣旨について、お手元の資料の1をご覧いただきなからご説明 方々ご挨拶をさせていただきたいと存じます。  本日は大島班長がおっしゃいましたように、大変に遅い時間にお忙しいところ、お集 まりいただきまして誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いを申し上げま す。  ではそこの趣旨のところをご覧いただきたいと思います。  皆様方、本日お集まりの先生方には既に十分ご案内のところと思いますが、総理府の 世論調査が先般行われました。その結果によりますと、国民の約3割が脳死下、あるい は心臓停止下での臓器提供をしたいという意向があるという結果が出ております。また カードの所持率も2年前の調査に比べますと、10%弱ではございますが、相当に向上は してきているのではないかと思われます。  しかしながら、平成 9年の10月に臓器移植法が施行されてから3年半が経過するわけ でございますが、脳死下での臓器提供は14例となっております。また心停止後の腎臓・ 角膜の提供数は、法施行後はむしろ減少傾向にあるわけでございます。これにつきまし ては2枚目にご案内の通りでございますが、平成 7年度から11年度までの腎臓、そして 角膜の移植件数及び提供者数を表すグラフを付けさせていただいております。一見して 明らかなように、平成 9年度、臓器移植法が施行された年ですが、この年以降、むしろ 移植件数及び提供者数ともに減少傾向をたどっているわけでございます。  国民一般に対する普及啓発の重要性、これについては制度の普及、周知度あるいは カードの所持率はそこそこ向上してきているとはいえ、その重要性は今後とも変わらな いと考えております。その意味では引き続き臓器提供意思表示カードの普及等の普及啓 発施策については推進をしていく必要があると考えております。  他方、多数の国民の皆様方が実は臓器提供の意思を持ちながら、それが移植に結びつ いていない理由としまして、いろいろあろうかと思いますが、その一つに医療従事者に 対する普及啓発が十分ではないのではないか、という面が指摘されているのも事実でご ざいます。こういう医療従事者への普及啓発などを担っていただくべく、臓器移植コー ディネーターの皆様方の役割というものも、今一度検討してはどうかということが言わ れているわけでございます。  そこでこの作業班では、先ほど申しました近年減少傾向にございます心停止後の腎 臓、それから眼球・角膜の提供を中心にしまして、国民の臓器提供の意思を生かして、 これを移植につなげるために、きょうも先生方の中にいらっしゃいます臓器移植コーデ ィネーターのそれぞれの役割を明らかにして、腎バンク、アイバンク、提供病院、さら には社団法人日本臓器移植ネットワーク、それぞれの有機的な連携を図るための必要な 方策についてご検討をお願いしたいと考えた次第でございます。  なお冒頭に申し上げましたように、国民一般に対する普及啓発の重要性は依然として あるわけでして、これまでの施策が必ずしも十分とは考えておりません。ただ、必要が あれば、ここにお集まりの先生方に加えて、さらに幅広い観点からの検討をしていただ くことがむしろ望ましいのではないかと考えまして、これについては厚生科学審議会疾 病対策部会の臓器移植委員会において、こういう点での検討がもし必要であるというこ とであれは、そちらのほうで検討をしていただき、限られた時間でもございますので、 この作業班ではどちらかといいますと、医療従事者に対する普及啓発というものを中心 に、既存の社会資源としての臓器移植コーディネーターの皆さん方、あるいは提供病 院、臓器移植ネットワークというものをいかに有効に活用するか、ということを中心に してご検討いただければと考えている次第です。  ちなみに事務局として想定しております検討事項として、2の(1) に上げております ように、臓器移植コーディネーターの皆さん方の役割。(2) 腎バンク、アイバンク、提 供病院、社団法人日本臓器移植ネットワークの有機的な連携。(3) その他改善するべき 事項等がありましたら、ぜひとも忌憚のないご意見を頂戴しまして具体的な施策に反映 させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  参考までに3枚目には臓器移植法施行後の臓器移植の実施状況について、数字を整理 しておりますので、必要に応じてご参照いただければと思います。どうぞよろしくお願 い申し上げます。 ○大島班長  ありがとうございました。本作業班の目的、あるいは趣旨等についてはご理解いただ けたと思います。とにかくシステムができ、法の整備がきちんとできたにもかかわら ず、従来から行われている腎・角膜については、むしろ減少傾向にあって、一般啓発普 及については、それなりに進んでいて、30%の国民が提供をしてもいいと、そのうちの 10%がドナーカードを持っているにもかかわらず、その計算でいけば、ある一定数が、 臓器提供に結びついていいはずが結びつかないということを考えると、これはシステム 上で何か欠陥があるのではないか、あるいは何か問題があるのではないか、あるいは提 供現場での問題が何かあるのではないか、ということが次に考えられるわけです。  その辺のところを煮詰めて、一体問題は何かということを明確にさせ、具体的にここ で提言をまとめあげて、それを施策につなげていくということが目的であるというお話 をいただきました。  きょうは第1回目ですので、問題は何かという問題を共有するところから、フリーに ディスカッションをしていきたいと思います。また今日、結論を出すわけではありませ んので、フリーにディスカッションしていただきたいということです。  現在、どういう取組が行われているかということにつきまして、厚生科学研究でド ナーアクションプログラムの科学研究が進行中でありますが、これに直接関与しており ます長谷川先生からご説明いただけますか。 ○長谷川参考人  お手元の資料2をご覧いただきたいと思います。ドナーアクションプログラムに関す る研究報告書と題しまたものです。これは厚生科学研究に大島先生が班長の研究班があ りまして、その中で一つの分担研究ということで澤先生を分担研究者として行われた、 そこでの活動内容がその主体を占めます。  ページをめくっていただきます。これは日本での献腎等の実績です。すぐお気づきに なると思いますが、献腎移植に関しましては89年がピークで長期低迷傾向にあります。9 5年にネットワークが設立されまして、97年に臓器移植法が施行されておりますが、むし ろ低迷傾向は止まらずという状況です。  ページをめくっていただきます。どこに問題があるのかということです。私どもの研 究班でのディスカッションを踏まえた問題の所在という認識です。すると95年のネット ワークの設立、97年の臓器移植法の施行という二つのイベントがあります。まずネット ワークの設立において、当初は当然円滑な移植医療の実施を目的としたものですが、い ま振り返ってみますと、提供現場で移植医が中心になってやっておられたのがコーディ ネーターに移行するということで、移植医がどうも前面に出るのが望ましくない、臓器 移植の任意性を担保するという観点からは望ましくないのではないかという主張が強か ったと思われます。  これは一つの当然合理的な理由はあるわけです。ただ移植医からコーディネーターへ の移行、臓器提供へのドナーアクションあるいは提供現場でのいろいろな形の啓発普及 という業務の移行が必ずしも十分でなかったということが、おそらくあり得るのではな いか。  それに伴ってネットワークができたということで、地域のいろいろな資源があるわけ です。それは例えば腎バンクであるとか、都道府県のコーディネーターであると、そう いうものと中央のネットワーク、あるいはブロックセンターとの役割分担がどうも明瞭 にされないということで、特に地域の資源が宙に浮いてしまったような形になって、有 機的な統合というのは当初目的としたものであったわけですが、どうもそうならなかっ た可能性があるのではないかと考えております。  97年の臓器移植法の成立というのは、どちらかというと献腎のアクティビティむしろ マイナス要因ではないかと考えられると思います。それはどういうことかといいます と、臓器移植法では臓器提供病院という4つの類型を定めているわけです。腎臓に関し ていいますとその4類型以外の病院でのアクティビティというのがばかにならなかっ た。それが臓器移植法の施行に伴いまして、自分たちは関係ない、むしろ臓器提供病院 にお任せすればいいのではないかということが、おそらく意識として広がってきた。  あとは心停止下における眼球と腎臓の提供と、それ以外の提供というのは適用される 法律が違って、臓器提供の要件が違うのです。前者に関しては旧角腎法が適用される。 後者に関しては臓器移植法、要件は臓器移植法のほうがずっと厳しいわけです。それが 混同されると、心停止下での腎臓とか角膜の提供についても、臓器移植法と同じ要件が いるのではないかという混同が生じた場合には、当然、献腎のアクティビティは低下す るということが考えられると思います。  ページをめくってください。次は4類型の病院です。これは約全国の380 の病院があ りまして、推計に基づきますと全部の脳死症例の3分の2くらいがここで発生するとい うことが推計されております。逆にいうと3分の1の方は違う病院で脳死になるという ことで、臓器移植法での提供はそういう方に関しては不可能であるということが問題の 一つとして指摘されます。  次のページは旧角腎法と臓器移植法の臓器提供要件の比較です。旧角腎法では本人の 意思表示があって家族が反対しない。あるいは本人の意思が不明であって家族が書面に よって承諾したもの、代諾でも可能である。臓器移植法に比べますとかなりゆるい要件 です。 臓器移植法では書面による意思表示プラス家族の反対がないこと、となっております。 しかもその意思表示は書面でないといけない。世界的に考えても非常に厳しい要件にな っております、また書面の有効性という問題から15歳以上に限られている。しかも精神 障害者などは一応除外しているということになっております。  ドナーカードの性格というのは日本では必須アイテムになっておりまして、外国では 啓発普及の一つのツールに過ぎないということから考えると、法的な位置づけがまった く違うという特徴があります。  ページをめくってください。これは適応法を比較したものです。心停止下での腎臓と 眼球の提供に関しては旧角腎法、それ以外はすべて臓器移植法が適応されます。ただ問 題は心停止下の腎臓・眼球にも臓器移植法が適応されるのではないかという意識の元で かつ4類型以外は提供できないのではないかという認識が広がりつつあり、それが腎 臓・眼球の提供アクティビティの低下につながったという問題が指摘されます。  それに対して、ありうる解決策として幾つかあげてみたのが7ページ目の表です。手 法としては幾つかあります。病院の開発をやる。これは非常に即効性があるだろう。一 般人対象の普及啓発をやる。これは時間がかかるし大きなリソースがいると思われま す。あるいは情報の整備です。移植医療の現況とかファクトブックとかを作る。それは インフラとしてはいいわけですが、それそのものでは直接的な効果は期待できない。レ シピエント選択基準の改訂を行う。  ネットワーク設立に伴いまして腎臓に関してはブロック単位で決めている。そうしま すと県で見た場合にはかなり輸出入の差が広まりつつある。それがいままでアクティビ ティの高かった県に関していうと、逆にマイナス要因になっている可能性は高いわけで す。それの改訂を行う。すると地域の活性化が起こるであろう。  組織移植のほかとの整合性を図る、これそのものは献腎移植を必ずしも広めるわけで はないのですが、幾つかの矛盾の解決あるいは一定の資源の効率的な利用につながる可 能性はあるかもしれない。  あとはドナー要件です。法律を改正してドナー要件を緩和する。これはいつ改正して いただけるかわからない。  そういうことで即効性を重視するのであれば、しかも限られた資源で効率よくという ことを考えるのであれば、病院を対象にしたドナーアクションプログラムをやるしかな いだろう。そうしますと、一定の目標を考えないといけない。これは捕らぬ狸という感 じもするわけですか、移植医療そのものを考えるのであれば、例えば年間に 5例か10例 行われる臓器移植法に基づく、例えば心臓移植とか肝臓移植を前提にした限りではシス テム維持ができないのです。例えばネットワークの固定費用というのはかなりの金額が あるわけで、それを考えますと年間で1,000 件からあるいは2,000 件の腎臓というもの がまずコアにあって、条件を満たしたものに関しては、例えば脳死下での提供で心臓提 供、あるいは肝臓等の移植がおこなわれるというのが基本的な筋です。少なくともごく 少数の脳死下での臓器提供では組織は不可能なわけです。  するとこれは1,000 例とか2,000 例の合理的な根拠ということではいろいろなディス カッションの余地はあると思うのですが、一定程度の目標を定めて、それを達成するに はどうしたらいいのかということで物事を考えざるを得ない。  厚生科学で考えたのは、まずモデルを作りましょうということで標準モデルとここで はいっております。そのモデルを考えました。モデルの特徴としましては、そこにあり ますようにマーケティング手法を利用する。あとは地域資源の活用です。具体的にいい ますとブロックセンターコーディネーターと県コーディネーターの業務の優先順位を明 確に分ける。臓器提供の現場から離れていただいた移植医に、もう一回戻っていただい てドナーアクションプログラムに直接関与していただく。しかもそれは、一定の結果評 価をしましょうというのがモデルの特徴です。  長期的な目標は何か、これをやればちゃんと献腎数が増えるという一つの勝ちのパ ターンを作るというのが目的です。したがってある地域が、自分たちが一生懸命やりた い、本当に献腎移植を増やして県民の健康を守るということをやりたいということにな ったら、どうぞこのツールを使ってくださいという形で提示できるツールを開発した い、というのが長期的な目標です。  そうしますと、ここから先は個別の話に入ってきますが、マーケティングとしまして 都道府県ごとの状況を明らかにしましょう。ここではステージングとして0から3まで を設定しました。  0というのは全く献腎が行われていない。3というのは一定のシステムがあって、そ れぞれの県によってシステムの特徴があると思うのですが、一定のシステムの下に一定 の実績がある。1は家族からの散発的な申し出。2は個別の医者とか病院の努力で一定 の成果がある。ただシステム化までは至ってないという形でステージングをわける。  それぞれステージングを分けまして、我々厚生科学研究ですので資源も限られてい る、人員等も限られているということで、短期間、しかも1年間で成果を出さないとい けないということがありまして、一番見込みの高いところということでステージの2を 主に、県ごとに日本全国を分析しまして、協力いただける県を捜してはじめました。  一昨年は3つの県、昨年は6つの県を対象にやってございます。それぞれの県で順番 にどういう形で活動するのかというステップを設定しました。ステップの段階としては 県の中で実際にトップのご意向であるとか、年間の死亡患者数、あるいは脳死発生件数 等から、全部の病院を対象にしてもあまり効率はよくないということで、1つの県で 5 つか10の病院を対象にする。その 5つか10の病院を対象に、積極的にアクションをかけ るわけです。それはトップの方にお集まりいただいて説明会を実施する、その次には院 内でのキーパーソンということで情報の窓口です。キーパーソンあるいは院内コーディ ネーターとかいろいろな呼び名で呼ばせていただいておりますが、そういう方を決めて いただいて、そういう方と徐々に接触の頻度を増やしていただいて、院内での瀕死状態 の方、お亡くなりになりそうな方が出た場合には、連絡をいただいて、意思確認がなさ れるかどうか、いざお亡くなりになった場合には、臓器提供の話を聞くご意向がありま すかということを聞いていただく。これを意思確認と呼んでおりますが、これを積極的 に主治医を通してやっていただくような働きかけをします。  主治医のほうにも種々の不安があると思います。当然、移植に直接かかわっておられ るわけではないので、本当にこういう人というのは移植の適応なのかどうか、オプショ ン提示をした後で、本当に遺族が関心を示して、実は医学的に提供できないという話に なると、主治医としても立場がございませんので、そういうことを含めていろいろなレ ベルの相談に、コーディネーターあるいは移植医がのるということを途中でやってござ います。  地域資源の活用ということに関しては、ここにありますように県のコーディネーター と移植医の二人三脚、それに可能な場合には、行政のバックアップ、特に都道府県のバ ックアップというのが非常に重要です。  標準モデルの中ではコーディネーターの役割を、13ページにあるように設定しまし た。一義的な業務はブロックセンターコーディネーターは、実際に提供事例が発生した ときの連絡とか調整業務である。これはあっせん業務と呼んでおります。  それに対して県のコーディネーターは何をやるのかというと、日常的に主たる業務は 病院の開発である。院内コーディネーターとの連絡体制を密して、その連絡体制を構築 して維持するのが一義的な業務である。ただし臓器提供が出た場合には、これはブロッ クセンターコーディネーターの支援を行うというふうに設定しました。  院内コーディネーターはどういう方かといいますと、院内における移植がらみの情報 のまとめ役です。だから院長・副院長・婦長どういう方がおやりになっても結構です。 その中で脳死症例が集まりやすい、そういう情報が集まりやすいという方で移植に対し て理解をもっていただいている方を院内コーディネーターとして、これは機能的な呼び 名としてやっていただく。  何をおやりいただくのかというと、院内の死亡とか臨死患者を把握して、主治医に対 してそういうオプション提示がなされたかどうかを聞いていただく、なされていないと したらどうしてなされていないのか、できればその理由も明らかにしていただく。その 間の経緯等を県のコーディネーターに連絡していただいて、県のコーディネーターと協 力、共同の下に、オプション提示のチャンスを増やしていただくというのが、院内コー ディネーターの役割です。  その状況をシェーマでお示ししたのが14ページです。15ページに移植医の活用という のかあります。これはネットワークのときの反省です。確かに都道府県コーディネー ターは熱心におやりいただいている方は大勢いらっしゃるのですが、なかなか日本の病 院の壁には入りにくい。往々にして大学の同窓であるとか学閥という非難もあるのです が、逆にいうと同じ大学であれば医者同士は話が通りやすいというのも逆にあるわけで す。  したがって、病院に都道府県コーディネーターが入るときの橋渡しとして、移植医が 役に立つであろう。あとは移植に関して医者同士のレベルでこの人は本当に適応なのか とか、あるいは全身管理をどうしたらいいのか、といういろいろなレベルの質問がある はずです。 これについて県のコーディネーターと共同してよろず相談に応じるということで、コン サルテーション機能を移植医の機能として設定しました。  臓器提供の任意性の担保というのは重要な問題ですので、臓器提供の意思確認の最終 段階では、移植医は引っ込んでいただくということになっております。  評価方法については、いくつの病院に対して何をやったのかということ、その結果が どうであったのかというふうに分けて考えてございます。  中間的な結果指標としましては、幾つの病院にアプローチをかけて、どのステップま でいったか、献腎情報がいくつ出できたとか、あるいはポテンシャルドナーのうち、オ プション提示がされて意思確認されたのが何例であった、最終的な結果としては腎臓の 提供数、あるいはそれ以外、時間的には腎臓提供にまで至らなくても、他の組織である とか眼球とかを提供していただくということがありますので、それについて評価しよう ということになっております。それを検証するということです。  今までの経験、あとで秋山先生に詳しくお話をいただくと思いますが、立ち上がるま で数カ月かかる、ただその後で、まず情報数が増えてきて、腎臓以外の比較的時間的に 制限が緩いものから増えてくる、最後あたりになって腎臓が徐々に増えてくるというの が示唆されております。  長期的には一定の成功のためのツールの開発ということで、これが他の例えばレシピ エントの選択基準をかえるということで、都道府県ごとに一定の本当にやられるかどう かというところで、都道府県ごとの地域性を重視した選択基準等が導入されれば、当 然、都道府県としての判断に迫られるわけで、そうしたときに一定のツールを提示する という位置づけにございます。  それとともに都道府県コーディネーターを標準モデルで設定したような業務が可能な のかどうか、という調査もあわせて行っております。  それは19ページ以下です。結論から申します。都道府県コーディネーターというのは いろいろな場所においでになる。県の腎臓バンクにお見えになるときもあれば、移植施 設あるいは逆にいうと提供施設のような病院においでになるときもある。本来は都道府 県全体を活動範囲にしなければいけないのですが、なかなか病院などにおいでの方は施 設長の意向の下に動きがとれない場合もある。しかも二重三重の指揮権限の中で、必ず しも明瞭な指揮権限の下、業務に優先順位を設定することがなかなか困難な状況にあ る。  あとは24時間対応であるとか、これまでに経験された事例というのが、実はあまり多 くないということで、教育あるいは指揮権限のルート、あるいはもっといいますと、ど ういう形で配置する、本当に標準モデルがいいのかというのはこれから検証も必要かと 思いますが、標準モデルにすぐに耐えうるような形でのコーディネーターの配置には現 状ではなってない。これについては問題として指摘されるかと思います。  このような事柄につきましては、腎バンクの全国レベルでの連絡協議会で同様の問題 が定義されまして、連絡協議会レベルとしては作業グループを作って、幾つかの関連団 体、例えば厚生労働省の研究班であるとか、ネットワークであるとか、それと共同して 検討を行うということで今年の2月に合意を頂戴しております。以上です。 ○大島班長  ありがとうございました。ご討論はまた後で一括して行うということにします。次に 都道府県コーディネーターの活動とその現状について、秋山さんからお願いします。 ○秋山班員  よろしくお願いします。私のほうはお手元の資料3の内容でございます。新潟県も、 長谷川先生からお話があったように病院開発の研究班として参加しておりますので、資 料が重複しているところがございます。よろしくお願いします。  私は2年前に着任しましたが、先ほどの各都道府県をステージンクで、その時はス テージ1に該当する県であります。ステージ1といいましても、たまたま家族の申し出 に対応したという献腎があるから1でありまして、システム的には、0からの出発とい うのが新潟県の現況です。その意味でお聞きになっていただければと思います。  私どもは幾つかの目的をもってこの活動をしました。今ほど骨子でも説明がございま したように、まずは病院に入り込むことをどうしようかということであります。先ほど 柔らかくお話がございましたが、実はコーディネーターは非常に医療者から見ると身分 が不明確、不確立という部分で、なかなか病院の垣根が高くて病院に入れないという実 態がございます。つまり私たちがいろいろとお話をさせていただく方々というのは、救 急医であったり、またその病院のキーになる先生方が多いわけですが、なかなか多忙な あまり、ろくに分からない人間には時間はとれない、時間をとっていただけても廊下で の立ち話の範囲から出ないというのが現況であります。これを解決するには、今の骨子 である移植医と共同して行うということです。  少し以前の話になりますが、まだ97年くらいで角腎法があった頃は、啓発として移植 医がご自分たちの同窓会とか医師会の仲間との連携の中で、地域のシステムを作ってき てうまいこといっていたわけです。それが身分のわからないコーディネーターにやれと いわれたら、その辺でまず病院に入り込むことすら難しいというのが実態であります。 それで移植医と活動しました。  私どもの活動の結果としては、最初は立ち話の域を出ないと申し上げましたが、今で は変な言い方ですが、お茶も出る関係になってきました。  まず入り込むのは移植医と一緒であるということが有効です。それと新潟県では、院 内コーディネーターを協力病院に配置していただくような努力をさせていただきまし た。その意味は、どういうことかというと、院内コーディネーターがいらっしゃるとい うことは、院外機関との窓口が明確になるということです。ぼくらもそうですし病院側 もそうです。ある程度、臓器提供についてのいろいろなことがあった場合に、誰に話を したらいいのか双方がわからないわけです。  私どもは普及啓発の部分ではいろいろとお願いをすることもあるし、またあっせんの 部分になりますと、双方の折り合いのいいところを折衝するわけです。その時にもこの 問題は何々先生、この問題は何々先生というとこは非常にわかりにくいわけです。その 意味で有効なわけです。  もう一つの結論的なことをいいますと、それに付随して行政がかなりバックアップし ていただいたということであります。具体的なことは次にお話をしますが、どういうこ とかというと、私たちの2年間の動きが相当に効果的であるという行政の認識がありま して、本年度から院内コーディネーターを県の単独事業として予算化して、また県知事 の委嘱状交付を検討していただいております。立場としては名誉職ということで県政モ ニターのような方と同じような立場で配置していただけるというようなことになった、 というのが新潟県の活動の結果でございます。  具体的にどういうことをやっていたのかというと、お手元の3ページです。下のほう の表でございます。まずはどういう病院をターゲットにしたらいいのかということを、 私ども新潟県の移植医とコーディネーターと行政で話し合いました。  結果、脳死下の4類型に含まれている病院、それと4類型に含まれている病院という のはある程度引っ込んだ地域にはございません。しかし、引っ込んだ地域は二次救急指 定なのに三次救急をやらざるを得ないという救急病院がございます。こういうところを いくつか見まして、12病院に全体説明会をするため、病院長あるいは救急部長等の病院 の幹部の方にお集まりになっていただくように働きかけました。たまたま新潟の場合に は、医学部については1大学しかございませんので、またその大学の関係教授・学長を はじめとする方々にお集まりになっていただいて、「こういうことが重要なので、ぜひ 個別に勉強会を各病院でやらせてもらえないか」という説明会を開かせていただきまし た。  その結果、「うちの病院で説明会をしてもいい」といってくれた病院が11施設ござい ました。その11施設に、移植医と私と3人がチームを組んで、1年間あるいは2年間、 講演形式で協力体制をお願いに行ったわけです。何をお願いしたのかというと、一つは 院内コーディネーターを院内措置の範囲でございますが、設置していただきたいという と。それと関係主治医の方々にオプション提示をしていただけないかということ。また そのことについて個票とかデータを頂戴できないか、という3つの観点からお願いにあ がりました。  その結果、1年目は5病院のご了解をいただいて、週に1回あるいは月に1回、その 病院の都合に合わせて、私が必ずお伺いをするという体制ができました。  2年目については3施設追加になりまして、現在は8施設でそういう動きをしている というのが現状であります。  次を開いてください。どういうふうに回っているのかというのは上の見にくいところ です。週1回やっているのですが、ある病院は院内コーディネーターを救急医がおやり になっているところがございまして、そこは多忙なのですが、救急部の中でお亡くなり になった方は何人で、その中で、カルテ上ですが、献腎、心停止下の腎提供条件充促し ている方が、つまり何人くらいポテンシャルな方がおいでになったのかということを集 めております。  ある病院ではカンファレンス形式で院内コーディネーターを4人ほど配置してくれて いる病院がございまして、カルテを1枚ずつ開いて、その場で「この患者はこういう データであるからどうであった」、というふうにその場で個票を作成して頂戴してくる パターンがありまして、そういうことを重ねております。  そして下の12年度の実績ですが、個票としては160 集まりました。その中で33人の 方が献腎について医学的適応があったということです。そのうち、主治医の方が臓器提 供の関係をオプション提示してくれたというのが9例ございます。実は今までの新潟県 は一切こういうことがなかったわけですから、9倍に増えた、変な算数ですが、そうい うことであります。  でも0からのスタートの県にとってこれは大変に有意義な話です。データとしてはこ うですが、24時間、院内コーディネーターから今はこういう方がいて、こういう状況だ がオプションの対象になるかなというようなご相談が随時入ってくるようになってきて おります。情報があがらないことには先に進みませんから、その意味ではかなりの効果 があったのではないかと考えております。あとは基礎的な資料でございます。  手元にはないのですが、2年間活動していろいろ思ったことを少しお話をさせていた だいたてよろしいでしょうか。 ○大島班長  できるだけ手短にお願いします。 ○秋山班員  移植医と動くことは相当に良かったです。ぼくらコーディネーターは知名度が低い日 本の社会で、臓器移植コーディネーターでございますとやっても、なかなか入れないと いうことが、これほど辛いことか。総論賛成各論消極的という先生方が多い中で、ある いはあまりそういう意識をお持ちでない方であっても、テーブルにつかせていただくこ とが重要なので、そういう道が開けたということが、この事業を進める中で一番のポイ ントであったと思います。またディスカッションで気持ちをお話します。 ○大島班長  ありがとうございました。本当はディスカッションのところでお話をいただきたいと 思っているのですが、田中先生が途中で中座されますので、今の段階で意見を伺うのは 大変かと思いますが、田中先生は随分と現場でご苦労をされていますし、現場の実態を よく分かってみえますので、ご意見をいただきたいと思います。 ○田中班員  ありがとうございます。ちょっと学会がございまして8時半の新幹線に乗らないとい けないものですから、途中で中座させていただきます。長谷川先生ならびに秋山先生の お二方のコーディネーターに関する新しいアプローチというのは、私にとっても斬新に 聞こえました。それがなぜ東京都でできないのかという疑問はあります。  長谷川先生がおっしゃっていたアプローチの中で、移植医に一緒にいっていただくと いう考え方、あるいは移植医側からのアピールというのは、私も予てから考えていたこ とです。法律ができてから移植側と提供側は接触してはいけないのではないか、という 変な雰囲気ができておりました。同じ医師ですし、いろいろなディスカッションができ る場も作ることかできたと思うのですが、現状では移植学会の中に救急医はほとんどい ません。あるいは脳神経外科の先生もほとんどこられてない。お互いにある程度の土壌 の中で、他を見に行かないでやっているというのが現状ではなかったかと思います。  それが移植医の先生方から、これは提供側にもぜひアプローチをいただきたいと思っ ておりますし、それは非常にいいと思います。  ただ、長谷川先生の資料を見させていただくと、最終的に提供の最終確認には入って はいけないということですか、提供者が出現したら移植医側はそちらには入ることはで きないだろうと思います。おそらくその意味だろうと思っております。  コーディネーターの方がこのように回られるというのは、私のかねてからの持論であ ったので、ぜひこういう形でのアプローチをしていただきたいと思いますが、逆に質問 があるのは、どのようにして行政をこのようにうまく引っ張りだしたのかという手法で す。これは非常に大事ではないかと思います。  私たちも実は救急医側の中から、この個票に該当するレジストリーシステムというも のを、いまは厚生労働省のほうの特別研究でやらせていただいております。去年260 例 ほどのエントリーが12施設からあったのです。施設名からいいますとかなり今まで脳死 下の臓器提供を出している病院もありますし、救急医学会の中でも有力な施設が集まっ ていただいたのですが、その中でもカードを保持して入院された方は4例しかいないの です。260例の中の4例ですから、実数とは合わないと思っております。  その中でも臓器提供が15例ほどありまして、提供したい方は確実に提供病院の中では 提供したいという意思を発揮しておられるように思います。問題は、母数を増やしてい かないといけない。カードを保持した人が、入院していただかなければ、いくら提供側 も準備を整えていても、なかなか次のアクションにはならないと思っております。  もう一つ、コーディネーターの方がこのように活動されることで、提供側のほうが随 分楽になってくると思いますので、その意味では大事なアクションではないかと思いま す。以上です。 ○大島班長  ありがとうございました。続きまして秋田県の土方コーディネーターにお願いしま す。 ○土方班員  土方でございます。よろしくお願いします。資料4をご覧ください。当県におきまし て普及啓発活動の現状と課題を掲載しました。当県におきましてはコーディネーター設 置当初、平成7年から9年頃に関しましては、救急の医療施設の院長先生、ご紹介いた だいた脳外科の先生方を中心としまして、個別の医師訪問を年間に約150 件ほど実施し ております。平成10年から11年度につきましては、病院啓発の対象を個々の医師の先生 方から病院という組織に向けまして、こちらに(1)〜(6)の項目を書きましたが、このよ うな活動を実施しました。  例えば個別の病院説明会それからシミュレーション等では、臓器提供に関しての理解 の促進それから誤解の払拭に努めましたし、臓器提供施設懇話会も開催しまして、施設 間の情報交換の場も設けたりしまして、特に主治医の先生方によるご家族やご本人の意 思確認の重要性を訴えまして協力依頼に努めました。  その結果は右になります。主治医の意思確認の件数です。平成7年から9年の間には 3件しかありませんでしたが、意思確認の件数が8件まで増えました。  (6)になりますが、コーディネーターの活動通信というものを年に数回1回で3千部ほ ど発行しまして、まだ脳死下と心停止後の臓器提供の差異の誤解などもみられますの で、そちらを明確にご紹介したりしています。あとは提供施設の医師やナースなどのさ まざまな立場の方々のご意見をいただいたり、一般の方々の移植医療への取組とか、ご 家族の申し出も増えているという現状なども、病院のスタッフの方々にお知らせしたい と思いまして、病院内での活動通信の回覧とか閲覧を依頼しまして、実施していただい ております。  平成12年の昨年度には平成10年から11年度の活動の継続と、コーディネーターと病院 と、あとは病院内での連携強化を図るために、各施設ごとに臓器提供に関する院内連絡 担当者というものを設置していただきまして、担当者会議も行いました。  その会議の場で、脳死下の提供施設とその他の施設におきまして、臓器提供への理解 度と、問題認識に差があることがわかりまして、より詳細に個々の医療施設に応じた啓 発活動を展開するために、今年度の4月から5月にかけまして、献腎に関するアンケー ト調査を実施しました。  その調査の結果が次のページの上の表になります。こちらを見ていただくとわかりま すように、脳死下の臓器提供施設におきましては、主治医の先生によって脳死と診断さ れた患者さんの数を教えてくたさいとお聞きしましたところ、0と答えられたところが 3施設もありました。  これは実は脳死の患者さんはいらっしゃるのですが、治療方針の決定のために行われ る一般の脳死判定による診断の取扱ですとか、あとはご家族への病状説明時の脳死とい う言葉の使用に対する慎重な姿勢が強まっているということから、当病院では脳死と一 般の脳死判定による診断を、脳死と取り扱わないと言われたところが、この0の3施設 ということで0の回答をいただきました。  またその他の施設におきましては、脳死の診断の運用に大きな変化はみられませんで したが、脳死下と心停止後提供の差異に関しての誤解や混同をされている先生方が、ま だたくさんいらっしゃいました。それからご家族とのトラブルを回避したいということ などから、ご家族の意思確認にも至っていないという現状がわかりました。  そのような結果を参考にしまして、今年度、移植医の先生とともに病院の個別説明会 を実施しております。個々の医療機関において協力が可能な、臓器提供に関するご家族 ご本人の意思確認の方法についてご検討をいただきたいということでお願いをしており ます。例えば、従来とおり主治医の先生による意思確認の方法、あとは入院時の穴埋め 項目に入れていただけないかとか、リーフレットやパンフレットの導入、ご家族の待合 室等に家族向けの心停止前の臓器提供申し出の呼びかけポスターなどを掲示していただ けないかということですとか、さまざまな意思確認の方法について、ぜひご検討いただ きたいということでお願いをしております。  また先ほどから献腎推進標準モデルの導入をされました新潟、静岡、岡山でも使用し ておりました患者個票も、今年度から参考にさせていただいて、週に1回、情報提供を いただいているという現状です。  脳死症例ごとに意思確認実施の有無と、実施に至らない理由をタイムリーに、または 事後にご報告をいただいております。先生方の意思確認への意識づけを目的とした活動 を展開しはじめたところです。  このように当県におきましては表を見ていただくとわかる通りに、ご家族の申し出は 増えてきております。そのうちの意思表示カード所持につきましても、平成11年までは 1件でしたが、12年度中に3件ございまして、そのうちの1件が脳死の提供に至ってお りますが、その他については眼球の提供でとどまっているという現状もあります。その ような現状も他の提供施設の先生方に知っていただくとともに、主治医の先生方からの 意思確認を今後も継続していただきたいという依頼を続けているところです。  このように当県の問題点としましては、意思確認の実施の件数が減っているというと ころがすごく大きな問題になっております。治療方針の決定のために行われる一般の脳 死判定による運用への不安の払拭が必要だと感じております。  そのために、県のコーディネーターはどういう活動をしていけばいいのか、ネット ワークのコーディネーターからどのような協力をいただけばいいのか、ということを今 検討しているところです。 ○大島班長  ありがとうございました。次に静岡県です。静岡県は院内コーディネーターをシステ ムとして日本で一番最初に導入した県であります。その立場から大田原コーディネー ターよろしくお願いします。 ○大田原参考人  浜松医大で院内コーディネーターをやっている大田原です。  静岡県では10年くらい前になりますが、かつて提供のあった病院の院長先生などを集 めて、それも腎バンクの名前では集まってもらえないだろうということで、当初から県 の担当課から呼びかけをしていただいて、院長・副院長クラスにお話をして、とにかく 腎の提供に協力していただけないかということからはじまったわけです。  その時に、来ていただいた先生方は、「我々にいってもらっても困るから現場の人間 が来たほうがいい」ということでしたが、結局は、2回3回と続けているうちに、実際 の病院の関心をもった臨床工学技士とかケースワーカーなどに出てきていただけるよう になりました。その中で腎移植の勉強会ということをやっていたわけです。1995年に腎 移植ネットワークが発足されたのですが、ただ東海北陸ブロックセンターは名古屋です ので静岡に来るにはあまりにも遠い、そういうことで特に献腎の場合には血圧が30mmMg 以下のように低下して連絡してくることはしばしばですから、そういうことでネット ワークにコーディネーターが行っても何の役にも立たないということです。近くで役に 立つ人がいたほうが余程いいのではないかということで、各病院に1人のコーディネー ターがいたら非常に助かるという話になり、そこからまた教育がはじまったわけです。 ただ、しっかりした組織にしないといけないということで、腎バンクから、当初は年間2 0万円くらいでしたか経費を出していただいて、それで県が招集をかけるという形で協議 会として発足しました。費用は病院のほうに派遣費を出していただいて、当初は19施設1 8人で始めたわけです。  その頃には多臓器移植の話がどんどん持ち上がってきていましたので、病院のほうも 危機を感じて、これは移植の勉強をしておかなければならないということで、各病院か ら結構派遣していただいております。年々増加していまして、現在では47名が参加して いるわけです。  病院によってモチベーションが違うわけですが、少なくとも移植の勉強をして、移植 がわかるというコーディネーターはかなり育ってきたと思います。  その中で例えば献腎時に交通が渋滞等でとてもではないが県あるいはブロックのコー ディネーターや移植医が間に合わないというときに、承諾書をとって説明までして提供 されたところもあるし、私などは近くの病院であれば、飛んでいくこともできます。そ ういう形でお互いの病院の院内コーディネーターが協力しあいながら、勉強しながらや ってきたのが院内コーディネーターのシステムです。ただどうしてもそれ以上ブレイク することができなかったのです。提供医との兼ね合いが非常に難しく、どうしてもケー スワーカーというのは、医療職ではありませんので遠くにいます。反対に救急現場にい る看護婦さんなどにしてみれば、そこでずっと見ていて臓器提供の話をするということ は、救急医と同じで非常に抵抗があるということがありまして、それをどういうふうに 払拭するのかということで悩んでいました。そこで11年度の北川研究班という厚生科学 研究に参加させていただきました。  その中で、どのようにドナー情報を集めようかということで、各病院の院内コーディ ネーターと相談しながら、各病院でそのシステムを作り上げていこうではないかという ことにしました。今までの知識を下に、2ページにありますようなチャートで協力病院 の提供医と院内情報の担当者を非常に密にして、ところによっては週に1回救急の現場 に伺って様子をみるとか、先生とお話をするという形をとって、情報提供していただき ました。その中で、病院の勉強会は院内コーディネーターが企画して、県のコーディ ネーターや移植医が一緒にいって話をするという計画を実施してきました。それでも 元々全体的にはこういうことをやっているということは認識していただいていたので、 個々の病院にアプローチしようということで、最初の11年度では10施設を回って5施設 の病院がこのプログラムに参加してくれるという話になりました。  その手順としては、県の職員も動員して県の職員とコーディネーターと移植医の3点 セットです。それで各病院を回りました。一番最初は病院のトップの先生、それは目を つぶっていても多くは協力していただけます。ただし現場の先生はそうはいきません。 その中でどのように話をするかということで、いろいろな意見がでました。  確かに現場の先生になると実際にそれをやっていかないといけないわけですから、そ れは問題が出てくるはずです。そこで現場の先生方には提供の情報がどう流れるのかと か、どのような情報が必要なのか、そういうことをきちんとお話をして、その中での5 施設です。これは全部移植病院でした。移植医がそこにいるから参加ができたというの が事実です。その5施設ではじめたのですが、情報としては5施設だけでは非常に心も とないということで、昨年度はそれを17施設回って、そのうちの10施設をプラスしてい ただいて15施設でやっております。  ただ、院内コーディネーターそのものの設置の形としては、病院の院長からの推薦、 県知事の委嘱状の発行という形をとっています。ただこれだけ長くやっておりますと、 順々に人も入れ代わっていきます。その中で非常にモチベーションの高い人も残ってく るのです。部署も入れ替わるし、いろいろなところで軋轢もあったりしますが、だんだ んとセレクトされて、非常にモチベーションの高い人が残っていきます。  今はネットワークでもでもコーディネーターを募集するとかなりの人が募集に参加し てくるでしょう。そのくらい一般の人のコーディネーターへの関心度は高いのです。ど の辺までコーディネーターとしての認識があるかはしりませんが非常にやりたい人が多 い。病院であれば、必ずそういう人は一人や二人はいるのです。そういう人を探しあて て、移植医とか我々、当然大学病院から関連病院に医局の医者なども行っていますか ら、彼らの協力の下にバックアップをしながら事務の人と話し合いながら院長にこの人 を出してくださいという働きかけもします。するとかなり熱の入ったコーディネーター が育ってくるということです。ですから県のコーディネーターとかブロックのコーディ ネーターとか院内コーディネーターとか全然差別はありません。同じ勉強をしていま す。むしろネットワークでやる研修会などよりはるかにいいことをやっていると思って います。  コーディネーターはそういう形で育てているのです。でもコーディネーターの差はあ ります。この間のTTTという雑誌に載った婦長さんなどは、患者さんあるいはご家族 をケアするのが我々の仕事だから、オプション提示は、その患者が最後にどう思ってい たのかというのは聞くべきだというふうにして、提供医とはまるっきり別なところでド ナー家族をフォローするという意味で、オプション提示をやってくれる婦長さんもいま す。  反対にケースワーカーなどで相談は受けるのだが、そういうことはできないというこ とで提供医がオプション提示をしているところもあります。  それは誰がやってもいいことですが、最終的に説明はネットワークコーディネー ター、県のコーディネーターなりが連絡をとってやることになります。そういう形で進 めています。そこに資料があると思いますが、最終的に評価されるのは腎の提供数でし ょう。ただどうしても急激に増えるということはないのですね。がんばってやっている のですけどね。院内コーディネーターが発足してからというのは、少しは増えてきたの ですが、班研究を導入してから、秋山さんも言われたように、かなりこれはインパクト の強いものであったようです。当然個表を集めますので、それだけのポテンシャルド ナー情報は持ち出してこないといけないわけです。ですから、かなりプレッシャーもか かるわけです。  その中で例えばプレッシャーをかけるだけでは仕方ないので、ではそれに対する評価 をしましょうということで、提供病院のコーディネーターが全部集まって月に1回個票 の中のデータを全て洗い出して、これはなぜ提供オプションができなかったのか、これ はカードがあるのになぜできなかったのかという評価をしています。  その結果を提供医に話をしてくれということで、例えば一番面白いのは、非常に短い 経過で亡くなる場合があります。それがある病院では入院から死亡までの4時間が非常 に短くて、オプションの提示をするような問題ではなかったというところもあれば、反 対に二日もあるのにそれは非常に短い時間だからできなかったというところもありま す。そういうことをすり合わせながら、ここの病院は二日で提示していますという話を もっていきますと、だんだんとオプション提示をしていただける病院が増えていきま す。  昨年度のデータです。オプション提示が98のポテンシャルドナーの内、全部はアクテ ィブではなく、カルテから拾ったものもありますが、オプション提示されたのが23件で す。23%です。そこまでできるようになりました。今は15施設のうちのオプション提示 が全くされてない病院は2病院しかありません。ただそのオプション提示の数には差が あります。少なくともそういう状況で進んでいます。  新潟のように県のバックアップは、金銭面では難しくなっていますが、事務的なこと や委嘱状発行では協力していただいています。国、県からの助成金が少なくなってくる 中で、県のコーディネーターの動きが制限されてきています。一般的にはおそらく厚生 労働省のほうは助成金という形で、ある施設に対して助成金を行って、そこの施設が コーディネーターを管理するということが前提であろうと思うのですが、実際にはその 助成金でコーディネーターが動いているということを知ってほしいです。  このようにおそらく今年度からは腎バンクの所属するコーディネーターには活動費は 一切ないのです。辛うじて大島班の研究班のほうで活動費を捻出しているという状況で す。 ですからおそらく東海北陸ブロックなどでも、ほかのブロックは知りませんが、中で動 いている県のコーディネーターは非常に惨めな形で動いています。ほとんど動けば動く ほど自分の持ち出しがあって、学会にも出られないというコーディネーターがいます。 そういう状況も知っていただきたい。  県のコーディネーターというのは非常に地についたことをやっているので、できれば そういうところを評価していただける制度がほしい、県のコーディネーターの評価をき ちんとした上で、かれらがどのようなことをすればいいのかということを考えていただ きたいと思います。以上です。 ○大島班長  ありがとうございました。最後は随分生々しい話まで出ました。次に角膜のほうから 既に最初に長谷川先生から話があったマーケティングの手法を取り入れて、随分前から やりはじめているにもかかわらず、先ほどの大澤室長の話では減りつつあるという非常 に矛盾した状況にある角膜について、篠崎先生からお願いします。 ○篠崎班員  きょうは資料の6ですが、今朝ほど作りましてお送りして文字がずれてしまい申し訳 ありません。大島先生からご紹介がありましたように、角膜移植は日本で初めて法律が 制定されました移植で、これまでの数も厚生労働省で用意していただいた資料を見まし ても、既に3万例以上の移植を行っているかなり安定した医療であるということがいえ ると思います。  ここ数年、特に臓器移植法以降、特に昨年、一昨年に関しましてはかなり全体的に減 少傾向にあります。一応、1998年の献眼数のピーク2千を越えたのですが、それ以降は また減少傾向にある、これは腎臓と同じような状況であると言われております。  では同じ状況なのかということで、一番の問題は私もアイバンクにいる人間として病 院にまいりまして一番感じますところは、提供の話をしますと脳死でないのに眼は提供 できないのではないかと当然言われまして、違いますという話をしまして、それは違法 だといわれたり、厚生労働省に電話していただいたりとか、いろいろな対応しながら病 院開発を進めさせていただいております。  ではこれは日本で大体年間で1千5百例くらいの移植件数を横ばいで維持しているの ですが、1ページ目の下の表を見てください。1例としてアメリカの例を出させていた だいたおります。アメリカはキリスト教でドネーションが多いという話ですが、実際に 調べますと1960年代後半まではずっと5千眼です。これは提供していただいた目の数で すので、お1人で両目を提供していただくと2眼という数え方をさせていただいており ます。  1960年代後半まではずっと5千眼を維持していたのですが、70年代の前半になりまし てシアトルにありますアイバンクのほうで、コーディネーターと呼ばれる方が立ち上が りました。資格もなにも当時はなかったのですが、自らをコーディネーターと呼んで活 動がはじまりました。病院にいきましてオプション提示の依頼をして提供をお願いした ところ、急激に地域で増えだして、それが全米に伝播していって、現在では献眼数にし ますと人口が倍のアメリカで年間で大体9万5千から9万6千眼の献眼です。移植件数 にして大体4万5千件前後を維持しているという状況になっております。  それに至ったのは過去10年弱の話です。最近のデータでアメリカは多いとおっしゃる のですが、実は増えたのは過去10年間でそれまではいろいろな地域アメリカ全土にある 150 のアイバンクが、それなりの努力をしていった結果であるというふうにいえると思 います。  我が国の国内のアイバンクは減ったというのですが、ではどのように変化があるのか ということで、次の2ページ目のところにあります。日本中に51のアイバンクが現在あ りまして活動されておりますが、コーディネーターを全く配備していない事務しか行っ てないというアイバンクは、私が訪問したうちの幾つかで、これは主観的なものですの で統計的な処理はしておりませんが見ますと、確かに今までアクティブにやっておられ たところでも、特に大都市圏のところでもかなり減少傾向は厳しい状況にあるのかなと いう気はします。それらは臓器移植法に左右されてない部分も非常に多いのではないか という気はします。逆にいうと、財団法人日本眼球銀行協会でアイバンクコーディネー ターのセミナーとかワークショップをいま開いておりまして、それにちゃんと出てき て、自らちゃんと病院を回って歩くような活動を徐々にはじめているようなアイバンク を何件か存じておりまして、そこの統計を何件か引出しみました。大田原先生からあり ましたように、行動を起こしてから実際に跳ね返るまでというのはかなりタイムラグが ありますので、私どもの経験からしましても、大体5年くらいかかって実数に跳ね返っ てくるというのは通常のパターンです。これは欧米のアイバンクでもコーディネーター を入れて、コーディネーターとして病院活動をはじめても、実数に跳ね返るというのは 早くて3年、普通で5年くらいで数に統計学的な優位さがみられるという状況がありま すので、タイムラグがあると思っております。  コーディネーターがあるとここに書いてありますが、これも勉強会に参加しているよ うな方がいるようなバンク幾つか抜き出してみますと、ある程度横ばい的な変化がある のかなというイメージをもっておりまして、少なくとも何かの形でアクションしていれ ば急激な減少は防げるのではないかというような、これはあくまでも私の主観も随分入 っていると思いますが、実際にこういう方がいらっしゃれば、できるのかなと考えてお ります。 最後のデータです。これは手前味噌になって申し訳ないのですが、私どもの ところでは一応コーディネーターは3名プラス私自身が動いております。過去5年間の 統計を見ますと、我々は病院開発といいましても、本当に手さぐり状態で近隣の病院を 回りまして、いろいろと医療従事者の方にお願いをしつつ、そういうオプション提示の できるような機会ができないか、あるいはそういう勉強会などを近隣の病院で開かせて いただきました結果、このような形で推移をしているという状況でございます。  ですからもう少しコーディネーターがいればいいのかというと、そうではなく、最初 にお話がありましたように、それの活動の内容あるいは病院訪問で私も大島班の事務局 を仰せつかってドナーアクションをしましたが、数の問題と同時に質の問題、どういう 病院開発をするか。病院訪問を病院開発と思われている節も多々ありますので、病院訪 問ではなく、どういった院内コーディネーター的なものを探すのか、それを探せる能 力、それがなければ病院開発になってないわけです。ただ、こんにちはといって帰って こられると、向こうにとっては非常に迷惑なだけで、何の足しにもなりません。  数に跳ね返らなければコーディネーターの意味はなさないと思います。今まではコー ディネーターたるものは、公平性、中立性を保つ、ドナーファミリーの方のグリフケア ができるということが目標というようなことがあったわけですが、現在ではもう4年た っていますので、そういうのはできるのはあたり前の話で、議論をその点に置くようで は、ドナー増加には転向できないわけですから、グリフケアができて、中立な立場をご 家族のために担保できるのはあたり前で、それができない人はコーディネーターとは呼 ばないというレベルからスタートして、どうやって個々の病院からポテンシャルな情報 が来るようになるのかということを、もうちょっと期待するべき時期にきているのかな と思います。  ちなみに私個人のところのデータとしますと、現在ポテンシャル情報がきまして、承 諾率がおはずかしながらまだ80%を越えております。これは海外を比較しますと、大体 どこの国でも世の東西を問わずに、アイバンクの場合には、大体11〜12%というのが大 体の世界的なランダムなコーディネーター、ランダムなオプション提示をしてくれれば です。というのは80何%というのは、はっきり申し上げてご家族が意思をかなり固めて いる情報しか、我々がこれだけ活動してがんばっているつもりでも病院からは出てこな いということです。  国民の3割が提供したいとおっしゃってくださっているので、その3割の方の意思を どうやって生かせるのかというのは、もう少し我々がもっとがんばって、個々の患者さ んが悲しみの中でも、ああそうだった故人がそう思っていたのだ、あるいは以前話をし たのだ、ということを思い出させるようなコーディネーションというか、病院開発をし っかりして、医療情報はそこまで伝わるような、国民の権利を生かすという意味でもし てあげなければいけないし、数が上がらなければ意味はないのですが、逆にいうと本当 に提供したい方提供したくない方の意思がしっかり生かされるような質の高いコーディ ネーション、病院開発ができるようなコーディネーターをどう育成するのかというのが 課題かなという気がします。以上です。 ○大島班長  ありがとうございました。日本ではなかなか言いにくいコーディネーターの存在価値 は何かという、非常にタブー視されているようなところまで踏み込んだお話をしていた だきました。後でその辺についても議論をしていきたいと思います。最後に日本臓器移 植ネットワークから菊地コーディネーターにお願いします。 ○菊地班員  臓器移植ネットワークの菊地でございます。私は資料7の2ページ目に平成7年度か ら平成12年の献腎数、各臓器の提供数を添付してございます。これは年で計算しており ますので、冒頭にありました厚生労働省のデータとは若干違います。こちらでデータを とってきましたので、こちらでよろしくお願いします。  次は3ページです。ここは意思表示カード、シールによる情報です。これは法施行か ら2001年度 4月現在までの意思表示カードの情報をまとめてみました。これは意思表 示、脳死下の臓器提供が 217、心停止下の臓器提供か28です。これはN数 345です。記 載不備が35件、不明が65件ございました。  217 件のうち4類型と呼ばれている脳死体からの臓器提供が行われる施設からの情報 が 108件、4類型以外からは 109件でした。4類型からしか脳死体からの臓器提供をい ただくことはできませんので、4類型の 108件の内、連絡時期の心停止前が57件、心停 止後が51件です。心停止後ですと脳死体からの臓器提供はいただけませんので、心停止 前の情報の中から成立した件数が13とありますが、承諾をいただいた件数は14件で、臓 器提供をいただいた件数は13件です。  シールによる情報の概略はこの通りです。この 345枚のシールから心停止後の腎臓提 供に至った件数を次の4ページの円グラフに記載しております。これは色別で少しわか りにくいのですが、31と書かれたところがカードを持って心停止後の腎提供をされた方 の件数です。 154というのは何らかの組織のご提供です。角膜、心臓弁、皮膚等の組織 のご提供をいただいた件数を記載してございます。146 は提供に至らなかったという件 数です。  13件が臓器の脳死体からの臓器の提供をいただいて、 1というのは脳死体からの臓器 の提供の承諾をいただきましたが臓器の提供に至らなかったという件数です。  次の5ページです。これはあるブロックにおきまして救急医に、それから献腎の他の 施設の医師にアンケートをとった集計です。これは抜粋をしましたので参考にしていた だきたいと思います。内容です。非常に誤った回答が多いです。その一例を申し上げま す。  献腎ができることができる年齢は15歳以上でないとできない、と答えた施設が41施設 です。献腎には意思表示カードが必要であると答えた施設が34施設です。4類型、脳死 体からの臓器提供が行われる施設のみが献腎可能と答えられた施設が26施設です。  このように非常に誤回答が多かったというのが現状です。それはどういう理由からか というところです。それについては臓器移植法の付則事項が正しく理解されていないと いうところです。  それら土方班員がおっしゃっておりましたが、脳死診断法の不明瞭さということも上 げておられます。それは臓器移植法で定められた脳死判定の方法、無呼吸テスト以外の 脳死判定の方法、これは俗にいう臨床的脳死判定と呼ばれているものです。それから施 設が固有に行う脳死判定の方法、これが非常に不明瞭であるという声も多くあがってま す。  臓器分配ルールによる都道府県の格差がみられる。これはルールに従って分配をおこ ないますとアンバランスが生じるということです。  次に意思表示カードの所有の有無による影響というのもございます。これは意思表示 カードの確認は非常にやりやすくなったという声がよく聞かれますが、意思表示カード の有無を確認していただいた後の、お持ちでない方へのその後の選択肢の提示が行われ ていないというのが現状かと思います。  それからこのアンケート調査でもっとも多かったのが、意思確認、献腎時の精神的負 担、時間的負担が非常に多いというところでした。  最終年、2000年度の献腎数、私のほうのデータでは75件としておりますが、この中で 意思表示カードを所持していた方が15名おられました。それからご家族の自発的な申し 出については75件中36件です。ですから半数がご家族の申し出ということになります。  4類型の施設からの献腎が75件中52件です。52件となっておりますが、今現在4類 型の施設につきましては 408施設あります。52件で23施設からの提供ということで、同 じ施設からの腎臓の提供が非常に多いということです。  腎臓の移植が可能な施設からの提供、それは大学病院で移植もできるし、献腎も行え るというところですが、それは75件中31件でした。腎臓移植が実施できる施設におきま しては175 施設がネットワークに登録されております。そのうち31件と申しましたが、 実際には18施設です。ですからこれも献腎を非常にたくさん行っている施設は限られた 施設であるということになります。  そういう意味から申し上げますと、皆さん院内コーディネーターの件はおっしゃって おられましたのでその辺は割愛させていただきまして、医療従事者への普及啓発という ところを考えますに、まず移植実施施設内の救急であるとか脳神経外科の先生方とのコ ンタクトを密にしていただくというのが、私自身は一番であると考えます。  もちろんそれにはコーディネーターも一緒になって病院の開発に務めていけばいいわ けです。  次に医療従事者への普及啓発という意味では、4類型の臓器提供の可能な施設、これ はターゲットという意味になるかもしれませんが、ここは現在脳死体からの臓器提供と いうことで、非常にコーディネーターとしてはコンタクトを取りやすくなっているはず です。 この時期にこの施設にいけないということは非常に不可解なことでして、こちらの施設 には以前に比べてかなり行きやすい状況になっているのは事実だと思います。  その他の献腎可能な施設についてももちろん普及啓発は必要です。腎臓提供の意思確 認については意思表示カードを、いま意思表示カードがこれだけの状況で出てきている わけですから活用するということも大事なことだと考えております。  ネットワークが行っている普及啓発です。まず説明会これは今年度は献腎についての 説明会、それから各ブロックにおいて脳死体からの臓器提供についての説明会等を実施 してございます。  脳死体からの臓器提供についてはシミュレーションを行っている施設が増えつつあり ます。このシミュレーションを行っていただくことは非常に効果的な普及啓発になりま す。 それだけに終わらず、もちろんそのシミュレーションの中で、コンタクトパーソンを見 つけるというのはコーディネーターにとって必要不可欠なことです。  もちろん大学の合同講義とか医療従事者への普及啓発もございますが、何が一番効果 的かといわれますと、献腎についてはいま思案しているところでございます。といいま すのは飛躍的に伸びた県というのは見当たりませんし、減少傾向にあるということもあ ります。 何か一つ、従来の考え方とは違うコーディネーターの認識を変えないと、飛躍的に献腎 数が伸びるということは考えらないように私自身は思いますので、こちらでご検討の中 に参加させていただければと考えます、以上です。 ○大島班長  ありがとうございました。これで予定された方からの報告を全部いただきました。あ と残された時間をフリーにご議論いただきたいと思います。特にストーリーも何も決め ておりませんので思いついたところから、どなたかに口火を切っていただいて、話を自 由にしていただければと思います。問題点はいっぱい出てきたと思います。 ○貫井班員  遅れてまいりましたので最初の話は聞いてないのですが、この場では多分提供施設側 の一人といいますか、いま田中先生が退席なさったので一人しかいないと思うのです が、その立場からいいます。  コーディネーターの方々の非常に熱心な活動というものを先ほどお聞きしました。減 少の原因は、話を聞いていてもよくわかりません。一つは、脳死臓器移植法の誤解とい うのが先ほど菊地さんから出ましたが、それが現状とすると、その誤解を解くために、 これから啓蒙活動に力を入れてやっていかないといけないと思います。これは移植推進 財団などを中心にやっていけばいいと思います。  患者さんの意思の確認をする働きかけ、今も如実に出ておりましたが、これは非常に 難しいです。僕自身は脳外科の医者ですが、現場でしてください、と頼まれるのに対し て非常に抵抗があります。一番いいのは、もちろん法的な脳死下の臓器移植も同じです が、患者さんあるいはその家族から意思を申し出ていただくのが一番理想的です。です がドナーカードの普及のわりには、なかなかそういう例が増えないわけですが、ここを どう工夫するのかというのが問題です。これは非常に手前勝手な言い方かもしれないの ですが、臨床医は患者さんを助けるのに精一杯で、その後に臓器を提供していただけま せんかという話を自分からするのは、精神的にも肉体的にもなかなか難しい。ただそれ に関しては意識の改革を少しずつしていかないといけないと思います。  患者さんやその家族からカードの提出などをしていただく、それを何らかの形で広め ていただくというのが一番いいと思います。同時に医師側の教育もする。  それから院内コーディネーターの話をされておりますが、これは県によって対応は違 うと思います。例えば県が指導して、非常に高圧的に院内コーディネーターを置いてく ださい、お金は一切出しません、会議をいたします、旅費も出しません、という形で救 急病院へ来るわけです。その辺も多少は気を使ってやっていかないと、反発をしてやら ないというところも出てくるのです。  県のコーディネーターの身分も不安定ですし、実際に昔の腎バンクにおられるコーデ ィネーターとアイバンクにおられるコーディネーターが統一されておりません。実際に ぼくらにもあったのですが、患者さんが臓器を提供したいとすると、腎バンクのコーデ ィネーターは腎臓と他の組織のことしかいわない。アイバンクは別というのでまた連絡 しないといけない。その辺りも日本全体として何か考えていただいたほうがいいのでは ないでしょうか。もうそうなっているのかどうか僕はよく知らないのですけど、二重手 間で、しかも大変に忙しいというか、あたふたしているときに、そういうことをしない といけないというのは負担になると思います。話を聞いていての感想はそういうところ ですが、どうしたらいいのかというのはなかなか難しいです。 ○大島班長  ありがとうございました。提供現場では意思確認のストレス、もう少し踏み込んで言 えば、提供側に対するメリットがまったくない。むしろマイナス面ばかりが強いという 状況の中で、移植医療を進めなければならないという立場にあって、法律で理念の第2 条に「臓器提供したいという意思は尊重されなければならない」ということがきちんと うたってありますが、法律の精神との狭間での大きなジレンマがあるかと思います。  土方コーディネーターからもお話があったように、提供現場にアンケートを取ると実 際には脳死症例があるにも関わらず、脳死症例がないという答えが出てくるというの は、今の日本の提供現場での実態をかなり如実に表している象徴的なことではないかと いう感じがします。  脳死についても、3つも脳死が出てきて、それに対して非常に厳密な手続きがいっぱ い出てくる。下手に脳死という言葉を使うと、どういうふうにつつかれるか分からない というためらいのようなものが提供現場にある。逆にそういう状況が、臓器提供に協力 できないという言い訳にもつながってくるという状況があるのではないか、という感じ がしないでもないでが。いかがでしょうか。 ○大田原参考 人 先ほど貫井先生がいわれたようなことは、全くその通りであると思います。一番気 をつけないといけないところは、救急医の先生は大変なことをやっている上に、全体の 雰囲気として、何となく現場の先生がオプション提示をしてくださいというところがあ まりにも強すぎるのではないかと思うのです。  僕はできるだけ院内コーディネーターを置いているというのは、できるだけ先生の負 担を軽くしてあげたいという思いが一つあります。ですから、ある病院では情報が婦長 さんから院内コーディネーターに出て、院内コーディネーターが現場に行って、提供医 の先生とお話をして、あとはそちらに任すという形でバトンタッチしてオプション提示 が院内コーディネーターからなされるというシステムを私は理想としています。  今のところはできている病院というのは2〜3しかないです。そういうところを確立 していけば、かなり救急の先生の負担も少なくなるであろうし、例えば提供ができると いう状態になって移植医がとんでいった場合でも、かなり力を発揮してくれるのではな いかと思います。  実際にここ1か月前くらいに1例非常に長い経過をもつ提供者がいたのですが、そこ の院内コーディネーターがほとんど3日に1回、1週間に1回なり、きちんとデータを 送ってくれで、ほとんど県のコーディネーターか行かなくてもある程度の状況がつかめ るようなところ、実際に移植医がそこに駆けつけても、すべてオペ室の準備からいろい ろな準備が整っているというところがあります。  ある意味ではただその人に対する負担は非常に高いものがあって、一般の業務をこな しながら、その中でコーディネーターの業務をするということが負担になっていること は確かです。  ただ今の状況の中でやっていくには、そういうところから始めないと、なかなか救急 医の先生の負担も軽減されないし、病院全体が移植を進めているのだという意識を強く していただくには、そういうシステムのほうがいいのではないかと考えております。 ○大島班長  ありがとうございました。かなり核心的なところに話が来たと思います。院内コーデ ィネーターがキーパーソンであるということはわかるが、実際の問題の意思確認を、ど ういう形で、だれによって、行われるかというのがポイントである。篠崎先生のお話の 中で、80%の承諾率というのはすごいと思って話を聞いていたら、実はその80%という のはすでにフィックスされている状態だからだめだ、という話を伺ってなるほどと私は 聞きました。  長谷川先生あるいは篠崎先生、院内コーディネーターの役割というのは、いまこうい うものがあるというように提示されたばかりですが、話を聞いていると随分グレードが あるような気がするのです。意思確認をするというところが最終目標だとすると、ド ナー情報だけをとにかく出してくれればいいというレベルの話と、実際に踏み込んで意 思を確認する、その意思の確認のレベルも随分グレードがあるような感じがするので す。その辺のところについてもう少し詳しくお話くださいますか。 ○長谷川参考人  参考人ですから指名がありましたのでお話します。いろいろな視点があると思いま す。臓器提供という非常にストレスフルな状況下で意思決定をしていく。まず考えない といけないのは患者さんです。患者さん、あるいはご家族がお亡くなりになる方ですか ら、患者さんの状況について正確な情報をできるだけ早い段階で、これは医療者からも らう権利があるわけです。しかもそれは状況に応じてその状態についての情報です。 その時に何が可能か、という情報もこれは貰わないといけないのです。ですから出発点 をどこに置くかです。  現在は、臓器提供に関して申し上げますと、十分な情報がないままにお亡くなりにな って、そのまま焼かれてしまうという状況が正常な状況なのか、あるいはこれはおかし い、患者さんの権利、あるいは患者さんのご家族の権利としてリアルタイムの情報、何 が可能かということを含めていただくような権利を前提として考えるかどうかです。こ こでかなり大きなスタートが違う話になってくると思います。  現在そういう情報は、出さない、与えていない、なおかつそれで亡くなってそれでよ しとするなら、議論というのはそういうところで、情報を与えるというのは非常に大き な負担ですね。ではその大きな負担を誰がするのか、それはやりたがらないというのは 話としてわかるわけです。これをスタートにするのか。  あるいは情報はストレスフルなコミュニケーションであっても、これは提供をせざる を得ないと考えるかによって違う。  少なくとも後者の立場により一歩でも近く考えるとすると、これはシステムとして、 個人に対して過度な負担は与えてはいけないのです。これは過度な業務を与えるという のは職場環境としてよくないです。いくらプロフェッショナルといってもよくないで す。するとそれは個人に与えるものではなく、システムとして支援しないといけないの です。ただ一義的には、情報提供の責任は、担当医にあるはずです。ただシステムは病 院として支援は可能です。  その時に、例えばオプションの提示として、例えば臓器提供の話をしていいものがど うか、医学的に禁かもしれない、あるいは全身管理に問題があるかもしれない。そうい う時に、話をして逆にそれがトラブルの原因になるという不安もあるわけです。そうい うものについては移植医がコンサルテーションをする。これはシステムとしては保障し ないといけないです。あるいは実際に話をする、様態の話は主治医はするべきですが、 臓器提供に関しては、もし何かあれば、可能性としてはある。ただ関心があるかどう か、その口火までは主治医あるいは担当医の役割であると思います。  その時に同席されるのか、あるいはもし関心があれば伝えていただければ連絡をとり ます、というところで終わるのか。これは病院の組織の体制によって若干変わってくる と思います。ただ基本的にはある段階以上のことは、主治医あるいは担当医には課さな い、できるだけ、むしろ機械的に確認をする。しかも確認された後は業務を引き継ぐと いう形のサポート体制をいかに構築するかです。  ですからコーディネーターがどこまでやったからコアファンクションをやっていると か、やっていないとかという議論は多分当たらないです。システムとしてどういう形で 組み込んでいくかというのが、一つの考え方の切り口だと思います。 ○大島班長  ありがとうございました。 ○篠崎班員  逆にソフト面からです。私の拙い経験をいいます。院内コーディネーター、キーパー ソンとして置く場合に、ただ病院に行きまして誰かお願いします。あるいは誰か先生を 連れていって、院長先生の口利きというパターンでいきますと、大概まず紹介されるの が院長先生もしくは部長の先生です。それがある程度話が進んでいくにしたがって、今 度は例えばテクニシャンあるいはナースになるということになってきまして、ある程度 情報がルーチンに出だしたときというのは、誰かわからないのです、脳外科の先生が キーパーソンで一番情報が多かったりという形になってきます。  相手が誰かによって、結構一つの医療施設の中で、この人と決めて、ずっとこの人と いうやり方はとっておりません。ある程度数が増えて、病院側にも安心感をもっていた だければ、それは3年5年先になりますが、だんだん現場に近い人、あるいはアクセス しやすい方、主治医の先生、病院に負担の少ない情報のやり方という形になってくると 思います。  さっき貫井先生がおっしゃっていたように、救急の先生が臓器提供をいたしますかど うですかと聞くこと自体、それをお願いすること自体がナンセンスと認識しておりま す。そういう先生方が、臓器提供の意思があるかないかというお話をしたいのかしたく ないのか、なければ結構ですが、あればコーディネーターを呼びますというだけの、本 当にその意味でのオプション提示で、臓器提供をするかしないかというオプション提示 ではないという誤解をまず解いていく作業に、多分先ほどドナーアクションをやってい るようなステージ2クラスでは時間がかかるのかなという気はします。  大島先生がおっしゃる院内コーディネーターのグレードというのは、その辺の理解度 というところに直結してくるのかなという気はします。現状でいいますと、本当に病院 の中で病院の職員の方がボランタリーにやってくれている場合と、逆に、たとえば大田 原さんはご自分は院内コーディネーターとおっしゃっていると思うのですが、ブロック コーディネーター以上の活動を他の病院に行ってやっているわけですから、そういう意 味での現状でのばらつきというものを多分あると思います。いろいろなグレードで一つ の名前が付けられているのが現状かなという気はします。  一つ問題であると思うのは、現場での問題です。これは我々は目をやっておりますか ら、目だけは心停止後で24時間くらいは大丈夫ということもありますので、目だけの ケースが非常に多いのですが、ときたま心停止下の腎提供、ときたま脳死下での提供、 いわゆるコーディネーターが合同でいく場合ということを経験しておりますが、その場 合には教育フォーマットが一定でないということが非常にいけないところかなと思いま す。臓器を切り口としたところでは、やはり共通の教育フォーマットを我々はもってい るべきで、その時に誰がご家族と話をするのか、組織によってコーディネーターが6人 並んで次々にノックして入るということは絶対に避けなければいけないでしょうし、逆 に我々の目などの場合ですと、単独の行動が多いですから、その場合には単独で行動で きるということで切りわけが必要であって、単独のところはいいとしても、共通的なと ころは、もう少し共通フォーマット、それが資格制度なのか、あるいは教育システムな のかはまだわかりませんが、これは全国的に全組織的に考えるべきです。  少なくとも家族を亡くしたご家族に対しても、その医療機関にも、いかにご負担を減 らすのかということは、もう少し真剣に議論すべきときです。くしくも目のほうも澤先 生を委員長としてアイバンクのコーディネーターの教育に入っているところです。目の ほうは数が増えますから、特殊な技術的なところも入ってきますが、承諾作業というと ころでは共通部分があったほうが、いざというときのご家族の負担は少なくていいのか なという気はして意見を拝聴していた次第です。 ○大島班長  貫井先生のお話の中に腎バンク、アイバンク、また組織もくるでしょうし、それがバ ラバラでこられたのではたまらないという話がありました。澤先生、今の話を聞かれ て、目は目、腎臓は腎臓というところから少しブレイクスルーして、どこかで全体を考 えていくべきだという話がありましたが、いかがでしょうか。 ○澤参考人  私は臓器の場合の非血流組織と血流組織と分けて考えざるを得ないと考えておりま す。それは心停止での提供の場合、現在私どものところで摘出に行った場合、心停止後 は一番早くても平均5時間です。実際上、心臓が停止してから提供について話ができる ものと、心臓停止前から話に入らないとならない腎臓などの組織は違うと思います。で すからその点は、共通する部分もありますが、ある程度は分けて考えるということがあ ると思います。  ただ法律は一つの法律の中でやるべきですが、運用という面で分けて対応するのが良 いと考える。角膜移植では、付則の第4条が非常に有効に働いていると思いますが、そ のように思います。 ○大島班長  貫井先生のお話では、医学的な問題というよりはご家族にお話をするときということ でしたが。 ○貫井班員  医学的に血流と非血流ということは臨床では提供側は考えていないわけです。 もう一つ、どうして減少しているのかという分析はどうなっているのでしょうか。今は コーディネーションの話とかは細部にわたってやっておられますが、こういう会議がた くさんないわけですから。 ○大島班長  長谷川先生その部分ももう一回説明していただけますか。 ○長谷川参考人 資料2の3ページ目をご覧ください。8・9年をピークに献腎移植は長期低迷に入って おります。その間に95年のネットワークの設立と臓器移植法の制定施行という二つのイ ベントがあったわけです。私どもの問題意識としましては、ネットワーク設立以前は、 ローカルのそれぞれのローカルネットというか、ローカルの移植ネットがあった。そこ でのドナーアクションプログラムというか、病院を訪れて臓器提供をお願いする。その アクションの主体というのは移植医だったのです。  それを全国一定のルールの下に移植医は現場から退いてもらって、コーディネーター にやっていただこうということになったのです。その移行が必ずしも十分ではない。 コーディネーターの方のみではなかなか病院に食い込むことはできない。また人為的に も十分ではないというのが、一番大きい。  もう一つはネットワークと共に、全国一律のレシピエント選択基準を入れているわけ です。これはどういうことかといいますとブロック単位なんです。東海・北陸とか関 東・甲信越というブロック単位での提供いただいた腎臓の配分です。すると都道府県で たくさんある県がお出しになっても、みなよその県にいってしまう。ひどい県になると 半分くらいしか残っていない。そうなると意欲としてはどんどん低下していくというこ とです。  あとはネットワークの中央と言わせていただきますと、それとともに腎バンクとか都 道府県のコーディネーター、地方の役割の業務分担が不明瞭になった。  この3点がネットワークの一つの問題として指摘されると思います。  97年になりますともっとややこしくなります。臓器移植法というのができまして、す ると4類型以外、しかも書面による意思表示プラス家族の承諾という非常に厳格な要件 になっているわけです。心停止後の眼球と腎臓以外は旧角膜及び腎臓の移植に関する法 律ということで、家族が代諾してもいいという形で条件がずっと緩いのですが、4類型 以外の病院からすると、臓器提供は4類型の病院にお任せするという当事者意識が薄れ てしまった。 あるいはネットワークのほうでもお出しになったと思いますが、適応される法律が十分 に認識されていない。  すると臓器移植法の提供要件に収束してきますと、遙に厳しい要件が適応されますの で、4類型以外の病院からの献腎がどんどん減っているということで、この二つのステ ップで、それぞれ別の要件が重なっておりますが、これによって長期低迷に入ったとい うふうに考えております。 ○金井班員  私自身は大学のアイバンクなので腎臓移植などは細かいことはよくわからないのです が、今までアイバンク自体の流れを見ておりますと、一つ感じたことは、病理解剖自体 が大学病院でさえどんどん少なくなっております。それが一般の人達の考え方が、医療 に対していろいろなことが少しずつ変わってきているのではないかという感じがしま す。  あと一つ、コーディネーターの方にお聞きしたいことがあります。例えば病院を開発 されているときに、その病院が入院される患者さんに対してドナーカードを持っている かどうかということをお聞きになっているかどうかです。むしろ持っていれば、そうい うことを聞いてあれば、割合に病院の中の院内コーディネーターの方などがコンタクト をしやすいのではないかと思います。  実は順天堂でもいろいろとトライしてみたいのですが、それにはなかなか抵抗がある のです。なかなかうんとはいってくれません。だから我々は今はドクターにお願いをし ても、大学病院ですと教育病院ですからどんどんと中が変わってしまうということで、 なかなかドクターに協力してもらうのは難しいのです。特に病理解剖が少なくなったと いうのは、これも一つ、病理解剖を得ようとするとアイバンクはだめだというのです。 アイバンクが先にお願いをすると病理解剖がとれなくなってしまうということをよくい われます。そういういろいろな問題があります。  ドクターの教育も大事だと思いますが、患者さんが持っているかどうか、入院された ときにドナーカードをもっているかどうかということを聞くチャンスを持てればと思っ ておりました。コーディネーターの方は開発しながらとの辺の情報がありますか。 ○大田原参考人  静岡県ではいまは4病院くらいがカードの確認と同時に全部入院時に見るというとこ ろも出てきております。やはり病院によってはそれに抵抗がある。もう一つは看護婦さ んのアナムネです。そこのところで確認しようというところがあります。大分押し進め ているところでも、30%くらいの記入しかないという状態です。  ただもう一つはカードというのは先ほども言われたように、他の国ではほとんどが啓 発の材料ですね。静岡県では登録制にしておりますが、登録制にしていてそういう状態 の患者さんがみえたら取りあえず連絡をください。その中で登録をされている方を調べ て、もしあればその情報を返すということをしております。実際に登録しておられる方 はかなり少ないので、なかなかその中からは出てきません。  今までにあった中では旧腎バンクのカードを持たれている方が、医者のほうからオプ ションをされて初めて気づいたという状況があります。だから家族のほうから申し出と いうのは、かなり意識の高い方でないと、そういう状態になったときに申し出るという のはかなり難しいものであると思います。  ですから先生のいわれるようにカードを全部調べて、カルテに書くというのは非常に いいことですが、ものすごい時間と手間がかかる。当然、登録もそうですが、できれば 先ほど長谷川先生がいわれたように、提供医であろうとパラメディカルの人間であろう といいのですが、こういうこともありますということだけで情報は伝わると思うので す。それであっカードがあった、ということも出てくると思いますので、その辺が重要 なところではないかと思います。  ある病院では、それをいってからカードを調べるというところもあります。カードを 調べるというところでは、提供病院ではかなり神経質になっているような気はします。 ○大島班長  ありがとうございました。日本の場合にはステップが二つあります。ドナーカード を、どの時点で、どのように提示してもらうのか、という問題が一つです。角膜・腎臓 に関して、これは遺族の承諾でよいわけですから、家族への直接的な接触をどの段階で どうするのかという二段構えの話になります。これもどういうステップで誰がどういう 役割をもって、しかもシステムとしてどうバックアップしていくのかということが非常 に重要な議論になるのではないかと思います。何かご意見ございますか。 ○貫井班員  ぼくは今意思表示カードをもっているのですが、この形式も医者の誤解を招くひとつ ですね。脳死下と心臓が同じ意思表示カードに書いてあります。前は眼球が入っている 入ってない、というのがありましたが、今でも1が脳死の判定を受けてする。 2に並列して心臓死になったら提供する、と同じカードの中に書いてあります。これは 誤解を招く一つの要因ではないかと思います。工夫しないといけないのではないかと思 います。 同じ意思表示カードで並列に書いてありますので、これがないとだめとか、脳死を判定 しないとだめというのが誤解として医者たちの間でもあるのです。その辺をどうやって 解くかということも考えていかないと、コーディネーションだけではどうにもならない 部分がたくさんあるのではないでしょうか。 ○秋山班員  その件です。私も病院開発をしているときに、ドネーションとかカッコいいことをい っているわけではなく、まさに先生のご指摘のようなことを説明しているのです。その 一つが、医療機関の方々は意思表示カードをドナーカードと呼んでいることから間違い が始まっているのだということを必ずいうのです。  そこには1と2の誤解についてはこれはぼくらは靴をすり減らして歩いて、誤解を解 くしかないのです。しかし3番がある。臓器を提供したくないということがあるからこ そ意思表示カードである。これは病院開発では重要にしております。  どうしてかというと、それがなければぼくらも啓発しやすいのです。ドナーカードと いうほうがカッコいいし、言い方も簡単でわかりやすいです。ここをご理解いただきた いということをいっております。  それと先ほど言おうとしたのですが、院内コーディネーターについてです。貫井先生 が先ほど高圧的な言い方で置いてくれないかという話があったということでしたが、院 内コーディネーターのベテランの静岡はどのようにしているかは別にして、院内コーデ ィネーター設置1年生の新潟は、病院の中に必ず移植について興味をもっている職員は いるのです。病院長さんにお願いをして、そういう方を引き上げていただく。そして、 それなら県が助けましょうという形をとっているのです。山梨がどうかわかりません が、そういうことであります。 ○大島班長  もう時間が来たのですが、もう一つだけきょうご議論をいただきたい思います。  菊地さんが指摘されたことで非常に重要だと思ったのは、移植医がいる病院から臓器 提供・腎臓提供が非常に多い。これは明らかです。愛知県で保健衛生大学が非常に注目 されておりますが、保健衛生大学だけではなく移植医が存在している総合病院で救急体 制があるような病院から、少なくとも5施設から50腎以上が今までに提供されておりま す。1病院から50腎以上提供されているようなところというのは、おそらく保健衛生が2 00 以上とかという形で突出しているので、あまり注目されないのですが、それは移植医 がいる病院です。  これはなぜ移植医がいる病院だとそうなるのかということを、一度まともに考えてみ たらどうかと思います。  もちろんオプション提示は移植医がやるわけではなく、救急医や外科医がやるわけで す。移植医がいる病院ではなぜできるのかです。 ○菊地班員  私も大島委員長の意見に大賛成です。まず自分の病院とのコンタクトを非常によくし ないと、他施設とのコンタクトをとるのは非常に難しいと思います。ですから先生がい われましたように、それがいま現時点において複数提供があるのは、先生のところの名 古屋と東京だけです。他のところは多くても2件という程度で、175 施設ありながら18 施設からしか提供がないというのはおかしいと私自身もそう思います。  ですからやはり移植を実施できる施設で献腎臓器提供を増やすということが、私自身 は第一に考えることではないかと思います。 ○大島班長  それはなぜそれができるのでしょうか。 ○菊地班員 移植医がおられて救急の先生方とのコンタクトが非常によく、先生方の信頼関係がうま くいっているからだと思います。 ○秋山班員  その件で私が感じていることは、大切なことは実は啓発の部分での根幹だと思うので すが、移植医療の尊さとか素晴らしさをよく知っていて、また腎でいえば腎不全の患者 さんの苦しみをよく知っているのは移植医であると思うのです。透析をしている移植医 とかですね。そういう医学的な移植医療のよさとか、尊さとかを伝えるには、移植医が 救急の先生に伝えて、なるほど、救急の先生も「そんなに今は成績がいいのか」とね、 コーディネーター以上の医学的な情報も踏まえてそのようにお伝えすることが重要なこ とであると思っております。その意味で移植医がいるところから始めるということもい いことだと思っております。 ○澤参考人  いま秋山コーディネーターがおっしゃるとおり、また菊地コーディネーターがおっし ゃる通りであると思います。移植をするとこんなに患者さんにとっていいのだというこ とがわかることが、摘出にいく医者というものを育てるのです。最近は摘出にいくのを 医師が嫌がります。眼球の場合にはご自宅に摘出にいくことが多いのです。夜間などに も行かねばならないということで、教室内で行きたくないと時々議論が出ます。私は冗 談半分ですが、ではあなたは外の病院に出なさいと言ったところ、教室のスタッフから そういうことをやっているとだんだんに入局者が減りますよといわれるくらいです。摘 出医がある程度のモチベーションをもっていかないとできません。  私は東大角膜移植部にいたときには年間で90例の摘出に関係しておりました。日大に 移りましてからでも、現時点で今年は30例摘出しております。年間で大体60〜70例の摘 出をしております。すると毎週一回は摘出にいくわけです。するとこれをこなしていく のはすごい労力です。現在、摘出医に対する配慮があまりにもないのではないかという ことです。それを摘出する病院が、結局は、移植というものがいいことだと思う、ある 程度の献身的なことで運営がされているのが現状ではないかと思います。  それで現在資料の6のところで篠崎先生が作ってくださったものですが、1999年に180 0眼の提供があったということになっておりますか、これ以外に800 眼が輸入されており ます。その800 眼はそれに入っておりません。この800 眼は私は輸入が必要だと思って おりますが、でも一部は摘出にいかないで眼球だけを輸入する、もう摘出に行くのは嫌 だが、輸入できるからそれで移植をするという方向、これが角膜の場合には多少とも提 供眼数の減少につながっているということがいえると思います。昨年度下半期で580 眼 輸入をされております。こういう現状があるということだけ申し上げます。 ○大島班長 ありがとうございました。貫井先生、結局、提供側を動かす非常に大きな要因として考 えられるのは移植医療のよさと、移植医療に情熱を傾けている熱意とが、まるで何の得 にもならない、言い方はよくないのですが、ストレスばかりが多い提供側を動かす最大 のモチベーションになるのではないか、そのためにはそれを伝えるもっとも大きな役割 をもっているのは移植医そのものであろう、というような議論かと思いますがいかがで しょうか。 ○貫井班員  そう思います。特にきょうの話とちょっとずれますが、法的な脳死判定の後の臓器移 植というのは大変なんです。あれと同じような問題があり、もうちょっと軽いのです が、提供側は移植医との間に人間的な信頼関係ができるとそれなりにわかりますので、 一生懸命やるのではないかと思います。  ですからきょうの最初のころ問題に出た、移植医とコーディネーターがチームを組ん で熱心に活動することは良いと思います。ただ、カルテを見せろとかまとめて出してく れというのは、なかなかすぐにはいきませんが地道にやっていただくことはいいことだ と思います。  あとは基本的に一番は教育です。啓発というよりも教育です。誤解があって、あれは 結構深刻な問題であると思います。臓器移植法が出た後に、どうも脳死判定しないと腎 臓も角膜も提供できないとか、意思表示カードを持ってないと出せないとかいう誤解を 取り除くために、まずちゃんと教育しておかないと、どんなにいっても駄目ではないか と思うのです。それをいかにするのかはコーディネーターたちが個々にするのではな く、厚生労働省とか、大きな組織でちゃんとやっていただく方式を考えないといけない のではないでしょうか。 ○大島班長  ありがとうございました。時間もオーバーしました。議論としてはしり切れとんぼの ような感じですが、大体幾つかの問題点が出てきました。次回は具体的なところについ ての議論を深めて解決策の方向に向かっていきたいと思います。遅くまでありがとうご ざいました。                                  −終了− 問い合わせ先:健康局臓器移植対策室 担 当:日下 電 話:内線2364