01/05/18 第1回医療安全対策検討会議 第1回 医療安全対策検討会議                      日時 平成13年5月18日(金)                         16:00〜                      場所 厚生労働省省義室 ○大谷課長  定刻になりましたので、ただいまから「医療安全対策検討会議」を開催させていただ きたいと思います。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中をご出席いただきまし て誠にありがとうございます。私は厚生労働省医政局総務課長の大谷でございますが、 座長選出までの間、議事進行役を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願い 申し上げます。  議事に入ります前に、私のほうから委員の皆様方をご紹介させていただきたいと思い ます。  日本薬剤師会常務理事の井上章治委員。  日本歯科医師会専務理事の梅田昭夫委員。  杏林大学保健学部教授の川村治子委員。  読売新聞社論説委員の岸洋人委員。  東海大学医学部付属病院副院長の堺秀人委員。  東京女子医科大学名誉教授の桜井靖久委員。  ささえあい医療人権センターCOMLの辻本好子委員。  日本病院会副会長の藤澤正清委員。  武蔵野赤十字病院副院長の三宅祥三委員。  北里大学薬学部教授の望月眞弓委員。  日本医学学会会長の森亘委員。  国立国際医療センター総長の矢崎義雄委員。  東京薬科大学客員教授の山崎幹夫委員。  国立医療・病院管理研究所医療政策研究部部長の長谷川敏彦委員。  本日は東京大学大学院工学系研究科教授の飯塚悦功委員、東京大学法学部教授の岩村 正彦委員、日本看護協会専務理事の岡谷恵子委員、日本ヒューマンファクター研究所所 長の黒田勲委員、弁護士の児玉安司委員からは、ご欠席の連絡をいただいております。 それから、日本医師会副会長の小泉明委員からは、遅れてご出席されると連絡をいただ いております。また、日本病院薬剤師会会長の全田浩委員は、もうじきお見えになると 思います。以上が先生方のご紹介でございます。  続きまして、事務局を紹介させていただきます。医政局長の伊藤でございます。  伊藤医政局長。  中村医政・保険担当審議官。  青木医政局総務課医療安全推進室長。  宮島医薬局長。  鶴田医薬局担当審議官。  黒川医薬局安全対策課長。  伏見医薬局安全対策課安全使用推進室長。  また、メインテーブルには着席いたしませんが、医政局から指導課長、看護課長、歯 科保健課長、医事課長、並びに関係幹部が出席しております。  それでは、本検討会議の設置に当たりまして、事務局を代表いたしまして医政局長及 び医薬局長から、ご挨拶を申し上げます。 ○医政局長  一言ご挨拶を申し上げます。医療安全対策検討会議を発足させていただくに当たりま して、委員の皆様方におかれましては大変ご多忙の中、本検討会議の委員をお引き受け いただきましたことにつきまして、まず心から御礼申し上げたいと思います。  最近相次いでいる医療事故によりまして、国民の医療に対する信頼は大きく揺らいで おり、そのため医療における更なる安全性の向上と信頼性の回復が喫緊の課題になって いるという認識をしております。こういう状況の中で、私どもはこれまでも各医療機関 や関係団体とご協力し、また、それぞれの団体におきましても、さまざまな医療事故を 防止するための活動が進められてきていると理解をしております。  また、厚生労働省といたしましても、医療側の取組を支援するために、事故防止マニ ュアルの作成でございますとか、調査研究の推進等に取り組んできております。しかし ながら、まだ国民の幅広い信頼の回復を得たと言えず、その取組を更に強化する必要が あると考えておりまして、本年度、この4月から医政局総務課の中に「医療安全推進 室」を新設いたしまして、この医療安全対策推進のために、この体制の確保を図るとと もに、本年(2001年)を厚生労働大臣のご提唱によりまして、「医療安全推進年」と位 置付け、患者の安全を守るための医療関係者にある共同行動(ペェーシャント・セーフ ティ・アクション)を推進していくということになったところでございます。具体的に は、この秋の「患者安全確保週間」を中心に医療関係者の意識向上と、注意喚起のため の事業を実施するなど、広範な活動を展開する予定でございます。  この検討会議の委員には、幅広い観点からご検討いただくということから、医療関係 者はもちろん、法律や産業分野の専門家など、幅広い分野のご専門の方にもご参加をい ただきました。また、患者の視点を反映させるために、相談活動に携わる市民運動グ ループの方にもご参加をいただきました。  本検討会議は、医療安全対策を推進する方策につきまして、幅広くご議論をいただき たいと考えておりまして、我が国の医療安全対策を推進するに当たりまして、総合的か つ体系的な対策のご検討を賜りたいと考えております。委員の皆様方の高いご見識に基 づく幅広い観点からのご意見を賜りたく存じます。簡単でございますが、私の挨拶とさ せていただきます。よろしくお願い申し上げます。 ○医薬局長  委員の先生方におかれましては、ご多用のところ委員をお引き受けいただきまして、 重ねてお礼を申し上げたいと思います。  ただいま医政局長から話がございましたように、医療に対する国民の信頼の回復、あ るいは安全性の向上につきましては、省を挙げて医療事故の防止に取り組んでいるとこ ろでございます。  この中で、特に医薬品や医療用具の安全対策を所管しております医薬局といたしまし ては、医薬品や医療用具など医療の現場で使用される製品について、医療事故を起こし にくい形に改める、ということが医療事故防止、医療安全を支える有効な防止策の1つ であるという観点から、これら製品の容器や仕様といった構造や標示の改良など、いわ ゆる物からの安全対策を行っているところでございます。今後、さらに医療以外の各分 野での事故防止成果についても必要なものをどしどし取り入れて、従来の枠を広げた取 組を行ってまいりたい、というふうに考えております。  今後とも医薬品や医療用具の安全な仕様が図れますよう、これらのアプローチを更に 進めてまいりたいと考えておりますので、委員の先生方には、専門的なご見地からのご 指導、ご協力をよろしくお願い申し上げたいと思います。簡単ではございますが一言ご 挨拶をさせていただきました。どうもありがとうございました。 ○大谷課長  ただいま、日本病院薬剤師会会長の全田浩委員がお見えになりました。ご紹介申し上 げます。  それでは、本検討会議の設置要綱につきまして、事務局より説明をさせていただきま す。 ○青木室長  それでは、本日の資料の1でございます。これは本検討会議の設置に当たり事務局で 作成をさせていただきました「設置要綱」でございます。  まず目的でございますが、ここにありますように、医療安全に関する対策の企画、立 案及び関連事項に関する審議を行うということでございます。検討の事項としまして は、医療安全の基本的な在り方、そして医療機関の人的又は組織的要因、いわゆる ヒューマンエラーに係る事項、そして医薬品、医療用具等の物の要因に係る事項、その 他の事項となってございます。  そして、先ほどから出ておりますように、医療事故の対策につきましては、人の要 因、または物の要因の両方が絡まってございます。これは緊密に一体となって対策を検 討していかなければならないことですので、この会議も医政局長、医薬局長、両方の私 的懇談会と位置付けてございます。  また組織につきまして、これは検討会議の委員でございますが、別紙のとおりでござ います。また必要に応じて専門委員を置くことができますが、これについては、現在の ところは置いてございません。また座長については委員の互選ということでございま す。  また検討会議の組織ですが、これについては本検討会議の下にヒューマンエラー部 会、医薬品、医療用具等対策部会を、それぞれ設置しまして、先ほどの2(2)、また 2(3)の審議事項を行うということです。本検討会議と各部会の関係は、できるだけ 独立性を持って機動的に運営をしていきたい、というふうに事務局としては考えてござ います。  また5でございますが、検討会議の運営ですが、必要に応じて有識者等の参考人を招 致する。また、この本審議会につきましては、原則として公開としていきたいというふ うに考えてございます。  あと庶務につきましては、関係の行政において行うということでございます。その 他、関連の必要な事項につきましては、これから決めていただく座長によって定めると いうことですので、よろしくお願い申し上げます。以上でございます。 ○大谷課長  ただいま設置要綱について申し上げましたが、そういうことで進めさせていただきた いと思います。  次に座長のご選出についてでございますが、先ほどの設置要綱の説明にもありました とおり、委員の互選とさせていただきたく存じますが、いかがでしょうか。堺委員、お 願いいたします。 ○堺委員  医療の安全に係わる事象というのは、診療の現場で起こることが圧倒的に多うござい ます。そういたしますと、臨床に携わります者にとっては、これは自分たち自身の問題 でございます。どうしても自分たちの専門性に捉われるところが、なきにしもあらず、 というところもございます。そのようなところから医療、医学全般を見渡すお立場にい らっしゃいまして、かつ、ご専門が病理学という臨床全般をご覧いただけるお立場にあ ります、森亘先生に全体のお取りまとめをいただければと思いまして、ご提案申し上げ ます。 ○大谷課長  ただいま堺委員から、森委員に座長をお願いしたい旨の提案がございましたけれど も、いかがでございましょうか。 (異議なし) ○大谷課長  ありがとうございました。それでは、皆様のご賛同を得ましたので、森委員に座長を お願いしたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○森座長  一言だけご挨拶を申し上げます。ただいまご推挙いただきましたが、果たして、私が そういう立場に適切かどうか自信のほどもございません。しかし、いまここでお断わり することも返って時間の損失かと存じますので、司会進行といった程度のことでやらせ ていただきたいと存じます。私もこの問題が大変重大なことであるという点だけは、よ く承知いたしているつもりでございます。では皆様方、よろしくお願いいたします。  それでは早速はじめたいと思います。今日お手元に配られている資料を、事務局のほ うからご説明ください。 ○青木室長  資料1は、先ほどご説明いたしました今回検討会議の設置要綱でございます。資料2 は、これは4つに分かれてございますが、これからご説明いたしますのは厚生労働省の これまでの取組に関連したものでして、資料2−1が全体、2−2がこれまでの取組、 予算に関連したものが2−3、PSAに関係したものが2−4となっております。そし て資料3が概念の整理、資料4が検討事項、資料5が今後のスケジュールとなっており ます。  そして参考資料は1から5に分かれております。最後の参考資料5は、このオレンジ の本でございまして、非常に大部ですので別添となってございます。 ○森座長  どうもありがとうございました。それでは、実質的な審議に入りたいと思います。先 ほど資料1についてご説明いただきましたが、これは、このようにお決めになったとい うことで、私どもは承っておけばいい程度のことではあろうと思います。強いて言えば 1点だけ、検討会議の運営等という箇所で「原則として公開とする」。これはもちろん 当然のことでありますが、公開という言葉の内容にはいろいろな段階がございまして、 通常は委員会で詳しく決めることになっているかと思います。傍聴する方をお呼びし て、公開するやり方。他方、ただ単に議事録、あるいは議事録の要旨だけを公開するの も一応は「公開」に含めると言われていると思います。今日はご覧のように、既に傍聴 の方をお招きして、という実態になっておりこれがおそらく厚生労働省としては通例の ことと存じます。一応委員の方々のご了承を得ておいたほうがいいと思いますが、これ でよろしゅうございますね。 (異議なし) ○森座長  はい、どうもありがとうございました。それでは資料1に入ります。こういう「設置 要綱」は、おそらく文言そのものよりも運用のほうが場合によっては大切であろうと思 います。運用についてのご注意など、いかがですか。  では、この会議が進行していく途中でも、何か、この運用について委員の方々からご 注文があれば、どうぞ事務局のほうにお申し付けいただきたいと存じます。資料1につ いては、これで終わることにいたします。  次は資料2です。これは今まで、当然のことながら旧厚生省の時代が主たるものであ ろうと思いますが、医療安全対策に関して取り組んでこられた、その中の重要なものが ここに記されていると思います。これもご説明ください。 ○青木室長  それでは私のほうから、お手元の資料2に沿い、これまでの厚生労働省におけます医 療安全対策について、ご説明をしてまいりたいと思います。  資料2−1は「医療事故をめぐる経緯」です。もともと医療事故は従来からあったわ けですが、特に平成11年1月に起きました横浜市立大学において患者を取り違えて、入 院目的と異なる手術が行われたということがございました。それ以降、特定機能病院な どにおける医療事故の相次ぐ発生を踏まえ、昨年の9月には、当時の森総理から当時の 津島大臣に対しまして、医療安全の取組強化の指示がございまして、関係団体ととも に、連絡会議等を開催したということでございます。  そして2は「厚生労働省の医療事故に対する考え方」です。これはまさに今後ご議論 をいただくテーマではございますが、これまで厚生労働省がどういうふうに考えてやっ ておったかということです。事故の要因としましては大きく2つ、人に由来する、いわ ゆるヒューマンエラーのものと、物に由来するものに分けられる。また人に由来するも のは、個々の医療従事者に関するものと、組織的な取組に関するものに分けられるとい うことです。  次に、防止対策については、要因に対応しますように医療従事者に対しては、例えば 研修等が非常に大事であろう。また個々の職員が誤りを犯しても事故に発展しないよう な組織的な取組もまた大事であろう。物に関しては、製造業者等における医薬品の表示 の改良、また用具の仕様の変更等が必要であろうということで、それに沿った対策をと ってきたわけです。  3は「取組状況」です。こうした医療安全対策の推進をするために、ここにあります ア〜オにわたるような項目を、それぞれ実施をしてきたわけです。これについては、お 手元の資料2−2をご覧いただければと思います。1番は「医療事故防止関連マニュア ルの作成及び周知徹底」に関した事項で、(1)としては、「患者誤認事故防止方策に 関する検討会議の報告書」です。これは横浜市立大学病院で起きました患者誤認事故に 関したものですが、併せて、当時まだあまり一般的でなかった病院におけるリスクマ ネージメント全体についての在り方などを記載したものです。本報告書については厚生 省のホームページに掲載し、また関係機関等にも送付しています。参考資料1に概要を 添付しておりますので、後ほどご覧いただければと思います。  (2)は「国立病院等における安全管理体制の徹底」です。具体的には、人工呼吸器 の取扱いに関するマニュアルの見直しを行い、平成12年3月に外部の専門家を交えたリ スクマネージメントマニュアルの作成委員会を設置して、平成12年9月に、それを完成 し通知をしたということです。  2番は、「特定機能病院の安全管理体制の強化」です。横浜市立大学病院は特定機能 病院という、いわゆる高度な医療を提供する施設として当時の厚生省の承認を受けた医 療機関でした。その後も、こうした大病院での事故が相次いで発生したことから、高度 な医療を提供する特定機能病院にあっては、一般病院に比してより高度な安全管理体制 の確保というのが大事なので、ここに書いてありますような、例えば指針の整備であり ますとか、事故等の院内報告制度の整備、委員会の開催、職員研修の開催等の事項を承 認要件等に位置付けたところです。  また、その後も各病院について取組の徹底をするよう指導し、次ページ(3)でござ いますが平成12年7月以降に重大な事故が発生した5病院につきましては、院長よりヒ アリング等も行っています。  3番は「医療安全管理体制確保に関する調査研究」です。やはり医療安全対策をする に当たりましては、科学的な知見に基づいて行うことが大事だろうと思います。そうし た意味で、この調査研究は非常に重要だと考えており、平成11年度より3年計画で研究 を実施しています。その中心になっておりますのは、本検討会議の委員であります川村 治子先生でございまして、1年目は看護のインシデント事例を1万1,000例程集めて調査 分析等を行って頂いています。これについては参考資料2にまとめてありますので、後 ほどご覧いただければと思います。初年度には、1万1,000例のうち最も過去に多かった 点滴注射に関する事例の分析をしていただいており、エラーを犯しやすいポイント等に ついてまとめていただいています。この結果については、厚生省のホームページ等で広 く各医療機関に提示をし、情報提供を行っています。  4番は「医療関係者等への周知徹底」です。医療安全の取組の推進に当たりまして は、行政また医療の関係者が相互に情報を共有して意識を高めていくということが重要 であろうと考えております。そうした観点から、(1)ですが、医療関係者にお集まり いただき、「医療安全対策連絡会議」を開催しています。これまでに3度実施をしてお り、1回目が平成12年3月、そして9月、3回目が今年の3月に開催しています。本年 3月に実施した第3回目においては、厚生労働大臣より、医療事故防止のための幅広い 関係者の参画のもとで体系的かつ広範な取組を推進するという観点で、「患者安全を守 るための医療関係者の共同行動(PSA)」に関する取組の提案をし、ご同意をいただ いております。また、特定機能病院の院長による会議も開催しております。  次ページ(3)でございますが、先ほどからご説明しております様々な報告書または 研究の成果といったものについて事例集としてまとめまして、全国の病院等に送付を し、ご利用をいただいています。5番については、医薬品・医療用具に関連するもので すので、医薬局の担当からご説明をさせていただきます。 ○伏見室長  引き続きまして、5番の「医薬品・医療用具等関連医療事故防止システムの確立」に 関してご説明します。冒頭の医薬局長からの挨拶にもありましたように、医薬品・医療 用具の構造でありますとか、表示をより事故が起こりにくいような形に改めることが安 全対策上の1つの柱であるというふうに考えており、昨年その観点からいろいろ何点か 取組を行っております。  参考資料3をご覧になれば少し具体的なイメージを持っていただけるかと思います。 ここに「医薬品・医療事故に関連する医療事故防止対策について」とありますが、これ は医療関係者に情報提供した冊子からの抜粋です。医薬品で申しますと、例えばバイア ル瓶に入っていて、どうしても注射剤と間違いやすいような剤形、容器というものがあ りますが、そういったところですと、例えば1ページ目にありますように「禁注射」と いう大きな表示を、目立つように赤白で書いていただくというようなルールを設けた り、2ページ目でいいますと、錠剤やカプセル剤の剤型の外用剤は飲んでしまわれる方 もいらっしゃるということもありますので、PTPシートなどに「飲まないこと」とい う表示をきちっと書いていただく、というようなことのルール化等々を進めてまいって おります。  3ページ目以降は医療用具に関するもので、例えば輸液ラインと経腸栄養のラインが 誤接続されてしまって、重篤な結果に至るというようなことも考えられますので、そう いったことを防止するために、経腸栄養のラインは輸液ラインのものよりも、できるだ け太くして誤接続されないような構造にする、そういった形の基準化をこれまで進めて まいっております。さらには、輸液ラインが外れやすいということですので、ロックを 設けるとか、そういったような取組も行っています。  参考資料4は、直近の成果でございまして「生命維持装置である人工呼吸器に関する 医療事故防止対策」です。考え方をまとめて関係の学会の先生方にも提供をさせていた だいております。ここで言っておりますのは、人工呼吸器のアラーム、警報を解除して 使われるケースもありますので、その結果として呼吸回路が外れた場合に気が付かない というようなこともありますので、例えばアラームの構造を一時的に、かつ、一定の期 間、たとえ解除しても自動的に復帰するような形に改める。あるいは電源部分が外れや すいというような所もありましたので、それをできるだけ外れにくいような構造に改め るといった構造上の基準を設けまして、これを近く施行する予定でおります。  その他、いろんな表示関連の取組がここにありますけれども、そういうような形で医 薬品、あるいは医療用具に関しましての事故防止対策ということを進めてまいっており ます。 ○青木室長  ここまではこれまでの取組が中心でしたが、資料2−3以降は平成13年度以降、これ から取り組んでいこうというものでございます。  まず組織について、医政局総務課及び医薬局安全対策課に、それぞれ関連の室を設置 いたしました。両室は相互に連絡をとりながらやっていくということが重要でございま す。今日の会議の共同開催も、そうした趣旨の一環でございます。  2番は「平成13年度予算」です。これは総額で4億6,000万となっています。  まず(1)は「医療の安全確保のための日常診療における事例の収集、分析及び改善 策の策定」で、アは「医療の安全確保のための日常診療における事例の収集体制の整 備」です。具体的には、ここにありますように特定機能病院や国立病院・療養所、こう いった医療機関を中心としてインシデント事例、いわゆる「ヒヤリ・ハット事例」です が、こうした事例の収集をするということです。非常に数が多いので、コーディングを して集計したものを集めるというような方法を検討しております。  イは「収集された情報の分析及び改善方策の策定」です。このために厚生労働省の中 に医療安全対策検討会議を設け、その中に、ヒューマンエラー部会、医薬品・医療用具 等対策部会といった、それぞれの部会で個別具体的な事項について主に検討していくこ とを考えております。  これに関連してこの資料の3ページ目をご覧ください。これは先ほどご説明をした、 情報の収集から対策の立案に至るフローチャートをまとめたものです。まず、特定機能 病院、国立病院といったような機関からインシデント報告を上げていただいて、医薬品 副作用被害救済・研究振興調査機構において情報を収集する。また必要に応じて本日の 検討会議や、今後、作られます部会のほうにご報告をしてご意見をいただく。それに基 づきまして、各医療機関に情報の提供をする。または必要に応じた研修会やワークショ ップの開催をする。また医療機関が事故防止対策をするためのシステムの開発や導入の 支援等を行うこととしています。  一方、物の関連としては、情報に基づいて製品の改良を業界団体等にお願いをする。 そして、改良された製品等が医療機関に提供されるということになります。  元のページにお戻りいただきまして、(2)でございますが、先ほど申し述べました 医療従事者の取組を支援するという観点でワークショップの開催。次のページ、「医療 の安全確保のための調査研究の推進」です。これまでは1,000万足らずの研究費でした が、平成13年度より2億1,000万という非常に大きな額で研究を推進するということに なっています。  3番は、政策金融の利用に関してで、例えばメーカー等が医薬品の製造工程を変える ということについて低金利の融資を行う。または医療機関が電子カルテ等を導入すると いうことについても、貸付金利の引下げを行うといったことを考えているということで す。  続きまして資料2−4です。これは医療安全推進のための医療従事者による共同行 動、いわゆるPSAに関連した資料として、さる3月26日に行われた「医療安全対策連 絡会議」に提出されたものです。これまで医療関係者等、非常にさまざまな努力も行わ れてきたわけですが、なお国民の不安を払拭するということには至っていないというこ とから、さらなる取組を進めるということを目的としてございます。  この1年を「患者安全推進年」として、各団体が行う事業、例えば夏に行うホスピタ ルショーでありますとか、看護サミットといったような場で医療安全を集中的に取り上 げていただく。また厚生労働省の取組としましては、この秋に「患者安全確保週間」と いったものを設定をし、そこでさまざまなイベントを実施していくということも考えて ございます。  4ですが、先ほどご説明をいたしました今秋の「患者安全確保週間」のご説明です。 内容としては、患者の安全を守るための10カ条制定といったようなものでありますと か、研修会の開催、シンポジウムの開催といったことなどを考えているということでご ざいます。  3ページ目以降は、各医療関係団体が、それぞれ医療安全に関して取組をされている ものをまとめたものです。 ○森座長  どうもありがとうございました。以上が今までの取組、それから直近の将来計画につ いてのご説明でありましたが、何か、これに関してご質問はございませんか。皆様方の 中には、こういう取組に係わってこられた、あるいは協力したとおっしゃる方もおられ るかと思いますが、ご追加でもあれば、どうぞご遠慮なくお願いいたします。  私から1つ、先ほどの設置要綱にも関連しますが、こういった措置が世の中に広く知 られているかいないかは別として、あるいは十分であったか、なかったかは別として、 とにかくここで拝見する限り、当局としては今までに一応のことはやってこられたわけ ですね。その上になお、こういう委員会を新たに作って、屋上屋を重ねるではないか、 といった質問がもし世の中からきたら、それにはどういうふうにお答えになるのでしょ うね。 ○大谷課長  医療関係の各団体、それから、かつての厚生省、いまの厚生労働省としても、これま でもいろいろ取り組んでまいったわけでありますが、依然として新聞等の報道にもあり ますように事故が続発し、また、それについて国民の不安というか、不信が投げかけら れております。これまでの活動は必ずしも完全に不安を払拭するに至っていないという ことでありますので、もう一度、個々の部分的な取組も含めて全体の、グランドデザイ ンという言葉を後ほど使わせていただこうと思っておりますが、少なくも出来ている部 分もあれば抜けている部分もあるということで、もう一遍、全体を総覧して、それが国 民に見えるような形で取り組んでいきたい、というふうに考えております。この検討会 議も、そういった一環で、改めて立ち上げをさせていただいたというふうに考えており ます。 ○森座長  どうもありがとうございました。 ○全田委員  いまの森座長のご質問に関連しまして、最も医療現場の薬に対する責任のある病院薬 剤師会としましては、こういうアクションというのが非常に重要だと考えております。  具体的なお話をさせていただきますと、例えば、先ほど川村先生からの研究報告にあ りますように、多くの薬に関係する事故というのは看護婦さんレベルで調査していただ いた過程で起こっています。勝手なことを申し上げさせていただくと、今まで我々病院 薬剤師は、薬剤部、薬局の中で、要するに自分のエリアで薬の調剤なり何かが間違いが なければそれで良しとしてきたわけです。ところが、このところのいろんな事故という のは、すでに医療機関全体、場合によっては後でちょっと申し上げますが、院外処方箋 が出てまいりますと、今度は医療機関から出した処方箋に従って、本当に病院と受けて いただいて薬局との連携が密でないと、そこでミスが起こる。  何を申し上げたいかというと、本当に、こと薬に関しましては全体としてお考えいた だかないと、とても我々としてはカバーできない。当然、私としては、これ結論なので すが、薬あるところに常に薬剤師ありという意識を絶対に持ちなさいと言ってやってい るのです。ですからいまは、例えば病院薬剤師は、処方箋が来たらその薬を出せば、後 は実際に使われるところで、ナース・ステーションで使われればいいというけど、そこ で例えば広尾事件における消毒薬とヘバリンのクロスミスだとか、いろんなことが起こ ってくるので、やはりこれは組織といいますか、全体として、医療関係者全ての問題で ある。先ほどありましたように、場合によっては、薬を実際飲んでいただく患者さん自 身も含まれる。そういう意味で医療情報の在り方検討委員会を組織してくださいまし て、そこでも申し上げましたが、そういう形でやっていただかなければ、とてもできな い。よく本にも出ていますが、人は間違いを犯すものでございますから。  我々としては物である医薬品そのものの、似たものの名前を変えていただくとか、外 見を変えていただくということももちろんですが、要するに正しく使われるためには、 処方が書かれて実際に患者さんに使われるまで、すべてのプロセスにおいて関係者が目 を光らせていただかなければ、とてもカバーできない。カバーというかミスは少なくで きない。  そういう意味で、私は大変僭越でございますけれども、こういう組織を作っていただ いたことを大変嬉しく考えております。以上でございます。 ○森座長  はい、どうもありがとうございました。  ついでにもう1つ質問させていただきましょうか。これは当局といいますか、お役所 としては当然の立場かと思いますが、いまのご説明を伺うと、大体こういう対策をとっ たとか、こういう努力をしたという内容だと思うのです。しかし、そもそもの根底とし てこういった、いわゆる事故的な事柄がどのぐらい起こっているのか、といったような 調査も同時にやっておられますか。それとも、それは非常に難しくて事実上できないこ となのでしょうか。 ○青木室長  後ほどご説明いたしますが、そうした医療事故、または医療事故に関連をした情報を どうやって集めるかというのも、今後の非常に大きなテーマでございます。これまで行 ってきた活動といたしましては、例えば各都道府県が新聞報道等で把握したものについ ては、厚生労働省のほうに報告をいただくということになってございます。  また、事故ではありませんが事故に関連した情報として、いわゆるヒヤリ・ハット事 例というものについては、川村先生を中心にお集めいただいて、それを分析をしている という実績はございます。  ただ、今後それ以上に、もう少し体系的に何かやるかどうかということは、今後、ま さにこの検討会議で御議論をいただくテーマだと考えています。 ○森座長  はい、ありがとうございました。そんなことで、さらにご質問があれば伺いますし、 なければ先に進みますが、よろしいですか。 ○辻本委員  市民グループCOMLの辻本でございます。こうした場に私のような立場の者が参加して いることで、時代の大きな変化を痛感させていただいております。ただ医療が医療者側 から与えられる、施されるという時代は終わりまして、患者が主体的に医療参加する時 代です。この取組にも受け身だけではなく参加していきたいと思います。私どもは10 年来、活動を通して、患者側にそういう呼びかけをしてまいりました。  なかなか患者の意識というのは変わりにくいのですけれど、1つお尋ねしたいのは、 今回、市民の患者の立場ということで私がここに座わらせていただいているのですが、 厚生労働省のこの取組の中で、患者に対してどういうふうな思いを持っていらっしゃる のか、そこをお尋ねしたいと思います。 ○大谷課長  それは後ほどご説明しようと思っていた部分です。ちょっと先走りますが、今回の検 討事項の中に資料4というのがあります。そこの所をご覧いただきますと「検討すべき 事項」として8つほど代表事例を書いてございます。実はこの場でご検討をいただこう と思っていたのですが、事務方といたしまして7番の所で「患者の視点から見た医療安 全について」という項目を設けまして、まさに医療を提供する側、受ける側、それぞれ の立場からの安全問題というものも是非ご検討いただきたいということで、私どもとし ては準備しておりましたので、是非、この場で、その扱いもご検討いただきたいと思い ます。 ○森座長  何か、話題が自然に過去のことから将来のことに移りつつあるように感じますので、 いかがでしょうか、この辺りで一応、次の項目に移らさせていただくといたしましょ う。資料3、4、5です。概念の整理でありますとか、これから検討すべき事柄などを 事務局からご提案いただいております。この辺りについては是非、皆様方から活発なご 議論をいただきたいと考えます。  事務局から比較的簡潔に説明していただくことができれば、その後のご議論のために 多分30分ぐらい、あるいは、もし10分、15分ほど超過してもよろしい、という委員の 方々からのお許しが得られれば、30分から40分ぐらいの時間は十分に取れるかと思いま す。その際、できれば皆様方、少なくともお一人一言は、ご発言いただければ有難いと 思っております。  それでは資料の3、4、5、すなわち概念の整理とか、あるいは、これから検討する 事項とかについて、まず事務局からご説明いただけますか。 ○青木室長  それでは、お手元の資料の3でございます。ここに「医療安全に関係する概念の整理 (案)」というものをお示ししてございます。これは今回の検討会議は、必ずしも医療 関係者の方のみならず、航空機事故の専門家の方、また産業工学のご専門の方、また患 者側の活動をされている方、さまざまの方が関係しておられるところですので、まずは 言葉の概念の整理です。これはあくまで本検討会議において、こういう使い方をしたら どうか、という事務局からの提案です。  まず(1)は「医療事故」という言葉ですが、これは非常に幅広い言葉でございます。 (1)は平成11年の厚生省研究班の報告書による定義で、「医療に関わる場所で医療の全過 程において発生する人身事故一切を含み、医療従事者が被害者である場合、いわゆる針 刺し事故のようなものや、廊下で転倒したといったようなものまで含む。医療行為とは 関係しないものまで含む」という非常に幅広い立場をとっております。  もう一つはIOMの報告書で、米国の『TO ERR IS HUMAN』という非常に画期的な報告 書がありますが、その中に示されているものです。「患者が本来持っていた疾病や基礎 的条件によるものでなく、医学的関与によって生じた傷害」というものです。対象はあ くまでも患者である。また、医学的な関与・介入の過程で生じた傷害という考え方をと っています。  そして、いずれの場合でも医療従事者の過失によって発生する事故と、過失によらな い、いわゆる不可抗力によるものの2つがあります。予防対策の対象になるのは、過失 によって発生する事故ということでございます。  (2)は「エラーの種類」です。これは非常にたくさんあるわけですが、ここでは、あく まで対策立案に役立つ区分ということで2つに分けてあります。これもIOMの報告書によ るものですが、1番目は、いわゆる「計画のエラー」。これは医療に当たり「目的を達 成するためにたてられた計画」、いわゆる診断とか治療方針といったものです。これが そもそも間違っていた場合のエラーです。2番目は「実行のエラー」です。これは計画 自体は正しかったのだけれども意図されたとおり実行されなかったがためのエラーで、 実行過程プロセスの段階でのエラーということです。  そして次ページ、「アクシデントとインシデント」という言葉についてです。ここで は、あくまで医療安全対策に役立つものということで区分しています。アクシデントと いうのは、いわゆる医療事故です。インシデントは、ここにありますように、我が国に おいては、いわゆるヒヤリ・ハット事例、ニアミス事例ということで、エラーはあった けれども途中で発見される等の過程を経て、健康傷害に至らなかった場合をインシデン トと呼んでいる例が多くなっています。  なお、英語本来の意味に遡りますと、傷害を及ぼした事例と及ぼさなかった事例を併 せてインシデントとなりますが、我が国の報告制度においては「アクシデントリポー ト」、また「インシデントリポート」ということで、両者を区分して扱うことが多いと いうことで上記のような定義をしています。  (4)は「医療安全対策」という言葉です。これは本会議の名称にも利用しております が、この定義としては過失による医療事故の発生を可能な限り抑制することを目的とし て、さまざまな予防措置を徹底することで、すべての患者に安全な医療を確保するこ と、というふうに定義をしたらどうかと考えています。類似の用語としては、「患者安 全対策」という用語が最近は使われています。参考までにIOMの報告書によりますと、 安全というのは事故による傷害のない状況と定義をされています。  また、予防の対象となる、いわゆる過失により発生する医療事故の原因となるエ ラー、これは先ほど申しましたように、「実行のエラー」と「計画のエラー」に区分さ れるわけですが、本検討会議が目的としている主に組織的な予防活動の対象になるの は、実行のエラーを予防することが中心となります。  4ページは、「医療安全に関係する用語の関連図」ということで、先ほど申し述べま したものを図示したものです。この表は、本検討会議の委員でございます児玉委員、あ と大阪大学の中島先生の著書を一部利用させていただいて作ったものです。  次は、資料4の「医療安全対策検討会議における当面の検討事項(案)」です。これ は今後、これから1年にわたり、この検討会議で検討していただくということを想定し たものです。  まず、この一年間の検討の目的は、医療安全の体制を確保するにあたっての問題点を 明確化し、その解決方策の選択肢を提示していただく。そして、その実施に当たっての 問題点等を明らかにしていただくということで、今後の我が国の医療安全対策のグラン ドデザイン、総合的・包括的なアウトラインを策定をしていただく、ということを目的 としています。  検討すべき事項としては、事務局として8つの事項を考えております。まずは、医療 安全に関する概念の整備。2として、組織とした効果的な医療安全対策の在り方。3と して、医療安全対策を推進するために有用な情報を収集・分析する方策について。4と して、医療安全対策を推進するための効果的な医療従事者の教育・研修について。5と して、医薬品・医療用具に関連した医療安全対策の推進について。6として、医療安全 に関する啓発や普及活動の推進方策について。7として、患者の視点から見た医療安全 について。8として、医療安全の推進に関連する法律的な測面についてという事項で す。これはあくまで(案)ですので、後ほどご意見をいただければと存じます。  資料5は、「医療安全対策検討会議のスケジュール」です。1、2カ月に1回程度の 開催を考えております。内容としては、本検討会議の委員を中心とした専門家の方から 順番にご意見等をいただければと考えております。そして、年明けぐらいから医療安全 対策に関する問題点の整理を行い、来春を目途にグランドデザインの取りまとめを行っ ていただく、ということを考えています。以上でございます。 ○森座長  どうもありがとうございました。以上が資料3、4、5を中心としたご説明です。繰 り返しになりますが、概念とか、言葉の使い方に始まって、この委員会として今後検討 すべき事項、さらには、若干時間的な点も含めて、今後の予定ということであります。  この概念の整理というのは、一晩議論しても全員の一致した意見は得られないもので もあろうかと思いますが、それにしても皆様方、ご自由に発言していただければ有難い と思います。  「将来この委員会で検討すべき事項」には、かなり具体的なことが並べられておりま すので、これについても、どのようなことでも、事の大小にかかわらず、ご自由にご発 言いただければ有難いと考えます。幸いにしてまだ30分以上の時間が残されております ので、もしできれば、少なくともお一人一言はおっしゃっていただければと思います。 ○桜井委員  私は1年間、医薬品・医療用具に関連した医療安全の検討会をやらさせていただいた 経験がございます。この話は後ほどさせていただくとして、少し概念的なことですが、 資料2−1に「厚生労働省の医療事故に対する考え方」という部分で、(1)「医療事 故の要因」という所があります。ここで人と物と、言ってみれば、クリアカットにお分 けになっているのですが、例えば、『TO ERR IS HUMAN』などを見ましても書いてありま すが、「最も大事なことは、医療機関の意識文化である」と。要するに、医療事故の内 容に安全性を重視したことがいちばん大事なのだよ、という意識文化がいちばん大事だ という記載があるのです。私は、そのとおりだと思います。  9年ぐらい前になりますか、医療のリスクマネージメントの本を書いた時に、医療関 係の方に分担のご執筆をお願いしたのですが、その時点では、まだ、それをお願いしま すと、「医療にはリスクは存在しないのだ」というご返答で、要するに、リスクを頭か ら否定されていたのです。  いま、いろいろな医療事故が起こった場合に、例えばテレビの会見とか新聞などで、 責任者の方が「起こり得べかざることが起こってしまった。まことに申し訳けない」と いう陳謝されるわけですが、実は、そのリスクというのは必ずあるものなのです。安全 性というのは、この定義とちょっと違いますが、ISO(国際標準化機構)というのがあ りまして、そこで、医療用具の安全、リスクマネージメントの標準が今年2月の末に、 JIS(日本工業規格)として日本でも制定されました。  その辺の安全性の定義というのは、要するに、受け入れられない、アンアクセプタブ ルなリスクがないこと、すなわちフリーダムなことです。要するに、リスクはあるのて すが、それがアクセプトできる程度まで、という意味合いなのです。したがってリスク というのは必ず内在するのだというスタンスで、それを防止するという安全の意識文化 と言いますか、それが、やはり根本にないと、非常に本質的なところが抜けてしまうの ではないか、という気がいたします。  もう一つ、人と物とがクリアカットに分けられているのですが、実は、マネージメン トとかシステムとかいったことが非常に大事で、これは、いくら物が安全にでき、人が 注意しても、マネージメント、運営体制に欠陥があれば、あとで出てくる「計画の段階 のエラー」に相当するかと思いますが、エラーは必ず起こってしまうのです。したがっ て、「医療事故の要因」のところに、やはり、そういう意識文化の問題とか、マネージ メントシステムの問題とか、そういうものを言葉として明確に表現していただいたほう が、本質的な予防なり安全ができるのではないかということを、ちょっと思いましたの で、発言させていただきました。 ○森座長  ありがとうございました。日本医師会副会長の小泉先生がお見えになったので、ここ でご紹介いたします。  いまの桜井先生のご質問は、おっしゃるとおりだと思います。医学関係以外の委員の 方々には、あまりお馴染みがないかもしれませんが、先ほどからの説明で、“IOM”とい う言葉が何回も出てきましたが、私が理解しております限りでは、これはアメリカ科学 アカデミーの中の医学院とでも言うのでしょうか、“インスティテュート・オブ・メデ ィスン”の略称で、“IOM”と呼ばれております。かなり権威をもっている団体、組織だ と考えております。昨年の総会では医療の安全について、いま桜井委員のおっしゃった ことが、非常に力説されました。ちょっと語弊はありますが、取りようによれば、医師 の開き直りではないかと思われるぐらい強く説かれていました。  桜井先生が「後ほどに」とおっしゃった事柄は、いま続けてお話になりますか、それ とも後ほどにいたしますか。 ○桜井委員  少し具体的な話になりますが、1年間、「医薬品と医療用具に関連した安全対策」と いうことで検討会をしまして、先ほど伏見室長からご説明のあった項目を検討して、ま た、実行に移したわけです。非常にスピードアップして、効果のあるようなことができ たのではないかと思っています。そこで感じましたことをいくつか申し上げさせていた だきます。  実は、私は専門は医療工学で、病院の中では医療機械とかが主な関心事になっていま す。そこで申し上げたいのは、やはり医療機械絡みの事故と言いますか、エラーも当然 あるわけです。それは一つは、先ほど全田委員からもお話があったような、薬と違っ て、医療機械は保守管理と言いますか、手入れが必要なのです。やはり、そういう点検 とか保守管理をきちんとしませんと、いくら機械がよくできていても、必然的にそうい うことが起こってしまうということで、やはり、その保守管理の重要性は非常に重要だ と思います。  これは薬剤と違って、実は、クリニカルエンジニア(臨床工学技士)という職種があ りますが、それが、そういった院内の機械の保守管理に当たる役目だと思います。しか し、残念ながらこのクリニカルエンジニアの病院内における階級と言いますか、拡充と 言いますか、これは、私の見るところでは、まだ非常に不満足な状態で、ほとんど看護 婦さんが呼吸器のメンテナンスに携るとか、あるいは機械のメンテナンスに当たるとい う場面も相当多いのではないかと思うのです。やはり、こういう機械の専門家の配備が 非常に大事だと思います。  もう一つは、正しい使用ということで、最近いろいろな機械が新しくどんどん出てき ますので、そういうことに対する教育とか訓練とかのシステムの拡充が非常に大事だと 思います。  もう一つは、むしろ業者さんのほうの責任かと思いますが、取扱い説明書がありまし て、これを読んでくださいという形で出されるわけですが、例えば、非常に大部な物を ポンと出されても、これをお医者さんも看護婦さんもすべて読んで理解することは、実 際問題としては、非常に難しいのではないかと思います。そこで、取扱い説明書などが 非常に理解しやすく、たやすくアプローチできるような、在宅の場合は、患者さんもそ れを読むという場合もありますので、そういうアプローチも必要なのではないかという ことを感じました。 ○矢崎委員  私は医療機関の責任者として、この医療安全対策に日夜どうしたらいいかということ を考えています。先ほど辻本委員から出た「患者さんの視点から」ということも踏まえ て、ちょっと申し上げたいと思います。  当然のことかもしれませんが、整理しますと、医療安全対策は予防対策と、万が一事 故が起こってしまった時に被害を最小限にとどめる対策の2つを縦糸としますと、横糸 としては、ソフト面からのアプローチとハード面からのアプローチがあるかと思いま す。ソフト面は、医療関係者スタッフのいろいろな意識の改革とか、いま桜井委員がお っしゃったような薬剤あるいは医療機器のメンテナンスのことまであると思いますが、 やはり、できるだけソフト面をハード面でカバーできるようなことを考えられれば、い いかなと思っています。  一つはヒューマンエラーをなるべくチェックするという意味で、私どもは、厚生労働 省のご支援の下で、バーコードシステムで医療実施記録をとっていますので、これがま だ5月からで、本格始動が9月ぐらいになりますと、いろいろな取り違えの問題が非常 に少なく可能性が出てきます。もう一つ、ハード面からは、「患者さんの視点」という 先ほどの話で、やはり被害者は患者さんであるということは当然皆さん思っているので すが、例えば薬とか医療器具の問題について、なぜか患者さんと医療関係者の関連にな っています。実際には、例えば薬効が全く異なるのに、類似した名前が付けられると か、人工呼吸器でも、もう少し改良すれば、いろいろな事故が少なくなるのではない か、というところがあるのです。考えてみますと、例えば自動車の安全対策というの は、ドライバーとか同乗者とか、要するに被害者が、自動車メーカーと直接関連して、 安全対策をきっちりした車がよく売れるというような市場の仕組みがそこにはあると思 うのです。ところが、医療に関しては、実際に起こる患者さんと、そういう薬を作った り医療器具を開発する所の間に医療関係者が入っていますので、実際にそういう安全対 策に投資することによって、売れゆきがすごくよくなるとかにはならない。薬の副作用 とか薬効はもちろんですが、例えば注射筒の色を変えるとか、接合ができないようにす るとかいうことによって、もしかすると、もう少しそういうところに市場経済が入って いって、そういうものであれば、非常にシェアが多くなるとか、何かインセンティブが あると、安全対策がもう少し進むのではないかと思います。  ですから、私が申し上げたいのは、当然ソフト面から十分対応策をとっていくべきで すが、何とかハード面から、もう少し安全対策にインセンティブが入るようなスキムが あればいいかなと考えています。 ○梅田委員  私は、歯科医師会という立場でお伺いしているわけですが、従来と違いまして、非常 に高齢化が進んでいます。したがって、高齢者に対して歯科医療をどういうふうに取り 組んでいくかと。資料2−4の別紙3ページに「関係団体のこれまでの取組状況」とい うのがあって、僅か2行しか出していませんが、これは私の不行届きで、関係課に提出 しなかったためです。やはり高齢者に対する、いわゆる安全性を考えていかなければな らないので、私どもは委員会を設置していますし、また、全国の講習会には必ず、この 安全性について講演しています。高齢者の方は非常に診療が難しいので、特に他科、い わゆる内科、精神科の先生との連携を十分とってやってほしいと言っています。  幸いにして、いま、あまりその死亡事故は報告されておりませんが、しかし、これを うかつにしていますと、死亡事故が起こった場合には、大変なことになるのではないか と思います。そういう意味において、自分が診療を受ける立場に立って診療してくれ、 ということを会員の方々にお願いしているということです。弁護士会とか税理士会のよ うに、全員が歯科医師会の組織に入っているわけではありませんので、アウトサイダー に対する教育を、いま、どういうふうにしようかと考えています。  先ほど桜井委員が言われましたように、ISOの中でも、私どもは特に器械、材料といっ た物も106というISOがありますので、その中でも十分な検討をしておりますが、まだ、 1つのまとまった報告書は出ておりません。ここのところで、やはり、きちんと計画を していただければ、大変ありがたいと思っています。以上です。 ○堺委員  それぞれの立場からの発言をという座長のご指示でございますので、私がいま携って います立場から2つ申し上げたいと思います。一つは、「情報収集の効用と問題点」で す。もう一つは、「病院経営に関する視点の重要性」です。  まず、「情報収集の効用と問題点」ですが、私どもの病院は以前から、いわゆるイン シデントリポートをかなりたくさん収集しておりました。一昨年、2,800件、年が明けて 昨年には大変お恥しい医療事故を私どもの病院も起こしましたが、それも契機になりま したでしょうか、5,400枚収集いたしました。そのような比較的多数の情報収集を行いま した結果、まず、「効用」ですが、やはり職員の意識に、自分たちが教育を受けるだけ でなくて、自分たちが参加するということが非常に大事だなと思いました。  と申しますのは、このような多数のレポートが出てまいりますが、今年は年が明けて から、むしろ減少傾向です。これは決してだれたとかいうことではなくて、中身を見て おりますと、これは危ないねと思うようなものが減って、これは、やはり参加による職 員の意識の向上、あるいは先ほど桜井先生が意識文化とおっしゃいましたが、そのよう なところにつながるかなと感じています。  一方、「問題点」ですが、私どもは、このような比較的多数の事例を収集しますの に、院内で繰り返し、一切人事考課には反映させないと申しまして、やっと芽が浸透し たかなと思います。1つの組織の中でさえ、このような個人の免責とでも申しましょう か、そういうものを納得させるには、時間がかかります。先ほど、「もっと広い範囲か らの事例収集もご検討」というお話を伺いましたが、個人でなくて、異なる組織からの 事例収集になりますと、この辺の、そういうことを提出することについてのご当局ある いは社会全体からの免責をどうするか、ということもご検討いただければと思います。  次の「病院経営に関する視点の重要性」ですが、やはり個々の事例、例えば器具の接 続が不十分だから、それを取り替えるというようなことは、やればできますが、しかし 全部のことを包括的に行うとなりますと、病院経営に相当な影響が生じます。また、そ の経営にどういう影響が生じて、それを工夫した結果どうなったというチェックがない と、やはり長い期間に病院あるいは組織として十分な取組が継続することは難しいだろ うと思っておりまして、いろいろな取組が経営面にどうフィールドバックしたかという ことと、経営というのは決してお金の出入りだけでなくて、もっと大事なのは、私は、 人の心だと思っております。職員、もちろん患者さんやご家族もありますが、関連して いる人の心にどういう影響があったかということを観測しながら進まなければいけない なと思っておりますので、この辺をどうするかということもご検討いただければと思っ ています。 ○森座長  いま、いくつかの点をお挙げいただきましたが、いずれも本当に重要なことです。私 は、東海大学のシステムについて、ほとんどと言っていいほど、存じませんが、レポー トしてくれる人は、例えば医師とか看護婦とか検査技士とかと分けると、どういうとこ ろからいちばんたくさんレポートが出ますか。 ○堺委員  これは、私どもの病院のいい点でもあり、また、お恥しい点でもありますが、圧倒的 に多いのは看護職員です。医師は、お恥しいことですが、相対的に少ないです。比較的 面白いなと思ったのは、私は、看護職員、技術職員、医師と思っておりましたところ、 全く別の職種からも出てきました。大変具体的な事例で恐縮ですが、例えば、リネンの クリーニングを担当しております事務職員と申しますか、そういうところからも、例え ば手術着のポケットから試験管が出てくるとか、注射針が出てくるとかいう報告が結構 出てきました。やはり、当り前のことですが、病院の中のすべての職員が全部関与して いるのだな、と改めて思いました。 ○森座長  多くの病院で、共通の現象かもしれません。 ○井上委員  日本薬剤師会の井上です。先ほど東京女子医科大学の桜井委員が言われた「意識文 化」が非常に重要で、例えば同じ職員、同じハードで施設を作ってやっても、中にいる 人たちの意識レベル、意識文化で結果が違ってくると思うのです。今回、COMLの辻本さ んに入っていただいて、医療機関側からではなくて、それぞれの医療機関ごとにもって いる組職分化を客観的に判断していただけるというのは、非常にいいことかなと考えて います。  いま東海大学の堺委員が言われましたが、1つの組織内でも、同じ人間、同じハード でも、時期によって起こる率が変わってくるというのは、やはり意識レベルが非常に重 要で、クリアカットに物とソフトの部分だけではなくて、一つの組織体が一定の結果を 生んでくる状態、グレーゾーンな部分もあると思いますので、「組織としての効果的な 医療安全対策の在り方」の2番目の項目では、特に組織体が作り出す結果(アウトカム) を、考えていかなければいけないのかなと思っています。  もう一点は、私どもも院外処方箋の発行増加に伴って、医療機関と関係する状態が増 えてきています。歯科医院からの院外処方箋もまいりますし、病院からの院外処方箋も まいります。病院も高度な大学病院から私的中小病院まで含めて、医療レベルのさまざ まな院外処方箋が出てまいります。開業医の先生方からも、当然、処方箋がまいるわけ で、やはり組織ごとにその内容を固めるのも非常に大事なのですが、さらに、組織ごと の機能連携、すなわち、1人の患者さんを中心にして、いろいろな組織間の輪ができて くるわけですが、組織間で患者情報を正確に交換していくことが、医療事故を防止する 一つの大きな手段になっていくと思いますので、検討項目の「組織としての効果的な」 という部分に加え、「組織間の効果的な協力」という項目も、是非入れていただければ と考えています。 ○長谷川委員  桜井委員と、いまの井上委員に対する反省意見を通して、2つコメントしたいと思い ます。  先ほど、資料2−1の2の(1)で、医療事故の原因として、当時の厚生省の認識 は、人と物と分けて考えているとおっしゃいました。しかも、その中には意識の欠如と か、組織的な取組の欠除は書かれてはいるのですが、実は、「人と物」と分けられない 側面があって、それが一種のシステムと言いますか、院内の機構、院内の体制として運 営されているということになると思います。先ほどから何度もお話がありますIOMの報 告書でも、そのシステム自身がうまくいってないから起こるのだと。もともと人は間違 うから、まず起こらないシステムを作る、その時に起こっても、傷害が起こらないよう にするシステムを作るべきだ、というご指摘があると思いますので、原因としては、ウ として、「院内の体制やシステムの問題点」と別途に考えたほうがいいかな、という感 じがしました。それは、多分そういうふうに考えたからでしょう。今回の検討項目の中 には、「院内体制の強化をどうするか」という項目が検討されていることについて大賛 成です。  しかし、医療安全対策は各施設で取り組むべきで、当然それがいちばん重要なこと で、現場で取り組むのがいちばんだと思うのですが、実は、現場だけではできない側面 があるのかなと思います。例えば、薬の形がよく似ているとなりますと、製薬業界自身 で薬剤を変えていただかなければならない。そう考えてまいりますと、いろいろな部署 が、いろいろな団体がいろいろな所でそれぞれ努力をしていただかなければならない。 極論を言いますと、日本国全体のさまざまな関係者が安全文化を持つ。そして各医療施 設での安全施策を支援するという雰囲気を作っていく必要があるのではないか。端的に は、薬なら薬、いわゆる産業界がするべき仕事は結構たくさんあると思いますし、先ほ ど来問題になっている診療所や病院、薬局それぞれがやるべき仕事はあると思います し、看護婦さんや医師を教育する教育界、医学教育、看護教育の中でもさまざまな重要 なことがあります。職能団体、医師会、歯科医師会、看護協会等で取り組むべき仕事も たんさんあります。法曹界、弁護士さんや裁判所で取り組むべき問題も多いと考えま す。保険者、医療の保険者もありますでしょうし、医療リスクの保険者もありましょ う。  ついで、他方、いわゆる患者さん、あるいは国民ご自身が安全の問題に対して寄与す る部分は大きい。例えば、医者と一緒になって、きちっと薬を飲むとかです。実は、提 供側だけでなくて、患者さん側にも安全性の役割が大きくあるのではないか。最後に、 政府の役割です。法律をきちっと作る、危ないものを規制する、安全のための研究をし ていく、情報を収集したり提供していくという役割があると思います。  したがって、ネガポジの関係ですが、資料2−1の「医療事故の要因」には、施設に おける対策以外に、国全体として取り組むべき対策が欠けているという考え、あるいは 施設で取り組むべきことを支援するさまざまな関係者がそれぞれ安全に寄与していく、 という考え方が必要ではないかということです。以上です。 ○森座長  まだ発言しておられない方にお願いいたします。例えば岸さんなどは、マスコミュニ ケーションのお立場から、いろいろおっしゃりたいことがあるのではないでしょうか。 ○岸委員  一言だけ申し上げます。先ほど堺先生のほうから「免責」という言葉が発せられまし たが、私は、先般の潜水艦の事故等々を見ておりますと、事故原因を究明することが、 再発防止には一番だと思います。事故が起きた直後に、日本の場合は、どうしても刑事 責任追及が優先されますが、アメリカの場合、事故調が非常に機敏に対応して、刑事責 任を追及する以前に、事故原因はこのようなものだと、マスコミサービスが徹底してい るものですから、非常に理解しやすいようなシステムができています。  今回、国土交通省でも、鉄道事故調査検討会が新たに作られました。やはり、世の 中、直ちに罪と罰を求めるのではなくて、再発防止のためには、まず事故原因をきちっ と究明しようという空気がどんどん広がっているという感じは、私どもはもっていま す。  医療事故の場合ですが、非常に難しいのは、作為的な行為による被害なのか、あるい は過失、いわゆる事故であるのか、という認定が迫られるものですから、どうしても警 察当局が先に入ってきます。あるいは民事での賠償責任を追及するために、証拠保全を 急ぐということで、どうしても患者さんと医療機関とが対立の構図を示すということが あって、なかなか事故原因の究明が迅速かつ正確に行い難い雰囲気がありますので、こ れを何とかしたいな、と私はかねがね思っております。  その場合に、まさか医療事故調という組織を作るのは、私が先ほど言ったように、い ろいろな面で難しいのですが、折角、安全推進室なるものもできたことですし、何らか の形で、この事故原因を第三者評価的にできるような、人と金を使う必要はないと思い ますが、何か、そこで工夫ができるような気がして、今回、参加させていただきまし た。そんなこともちょっと考えてみたいなと思っています。 ○森座長  川村委員の、これまでのいろいろなご発表を私は伺っておりますが、一言どうぞ。 ○川村委員  先ほど長谷川委員がおっしゃいましたように、まず、医療の提供の単位として、患者 さんも最終の単位だと私は思います。患者さんに直面する1人のスタッフ、そしてチー ムや病院レベル、関連メーカー、卒前教育機関や関連団体も含めた医療提供の単位があ ると思います。それぞれのレベルで、いま一体、事故防止のために何にができるかとい うことです。重複したり、無駄があったりということにならずに、有機的に連携し合っ て、何をすべきかということを考えていかなければならないと思っています。  もう一つは、私も、最初のころは、ハードウエアにフェールセーフ的なシステムを作 ること、つまり、産業界の事故防止を応用をすることによって、いろいろな問題がかな り改善できるのではないかと思った時期がありましたが、やはり医療現場の特性が産業 現場とかなり違っています。個人の判断に委ねられる部分が大変大きいものですから、 やはり教育システム、つまり、卒前、卒後の一連の教育のあり方、ツールなどの開発も かなり重要と思います。例えば情報システムなどに、事故防止のシステムを組む時に、 そのシステムを組んだことがかえって人間の知識や判断力を失わせてしまうという危険 な側面をもっていますので、医療特性を踏まえた対策が必要と思います。 ○森座長  頼ってしまうわけですね。 ○川村委員  はい。バランスの良い対策が必要ではないかと思っています。 ○森座長  小泉さんは、ご専門は臨床ではないようですが、いまや日本医師会を背負っておられ る方ですから、何か、どうぞ。 ○小泉委員  ここ2、3年来、患者の安全対策ということで、日本医師会では何ができるかという ことが私どもにとって最も重要な検討課題でありまして、そのために出来ることをやっ てまいりました。  現在は、医療機関で患者の安全確保に携っている方々に、職種を問いませんが、安全 推進者のための講座を通信教育の形をとり、スクーリングを含めて実施しています。そ のほか、いろいろ試みをやっていますが、結局は、医師会だけのことを考えれば、会員 は医師であり、また多くの場合、医療機関の開設者であり、また管理者であるというこ とで、まず我が身を振り返って、何をしなけばならないかということからスタートし て、先ほどからいろいろご意見が出ていますような、より広い立場で患者の安全確保に はどういう条件が必要だろうかということで、会内に患者の安全確保対策室という組織 を設けて検討しています。 ○森座長  三宅さん、現場でいろいろとご活躍のご様子を伺っておりますが、できれば一言お願 いいたします。 ○三宅委員  自由に発言していいということですが、今日のお話を伺って、桜井委員、長谷川委員 もおっしゃいましたが、いちばん大事なことは、やはり、ハード的なことはたくさんあ りますが、病院の組織の中の管理の仕組みだろうと思います。ですから、そういうソフ ト面を、やはりきちんと整えていくということだと思います。その第1に、私が思って いることは、やはり自分の病院の中で、自分たちの医療行為をちゃんと監視していくと 言いますか、自浄作用が働くような組織づくりがいちばん大事なことではないかと思い ます。ただ、やはり人間というのは甘えがありますので、いくらそうは言っても、なか なか内部的にそういうものが作れるというのは、それなりの人を得るとか、いろいろな 構造的な問題とかが解決しないと、なかなかそういうものは作れないのが現状ではない かと思います。  そういうことを考えれば、ある程度、これは規制緩和でなくて、規制をするという方 向にあるかもしれませんが、外部的な監査機構と言いましょうか、そういうものが、や はり必要なのではないかと思います。外部的にある程度のパワーをかけるということ で、そういう組織を動かしていくという必要があるのではないか、という気がいたしま す。ですから、やはり医療が正しく行われているかどうかを、内部的にも外部的にもウ オッチしていくいう仕組みづくりが、グランドデザインとしては必要なのではないか、 というのが私の思いです。  先ほど、岸委員がおっしゃられた「第三者機関」というのは私は大賛成で、私は、是 非、そういう形を作っていただきたいと思います。と言いますのは、先ほどもどなたか おっしゃっていたと思いますが、いろいろな病院で私は話を聞くのですが、ドクターか ら報告がなかなか出てこないのです。ドクターから出てこない原因は何なのだろう、と いろいろ考えますと、やはり、ドクターから出やすいような条件を整えていかなければ いけない。それには、いちばんは免責だと思います。法的に保護してあげる。インシデ ントレポートというものを法的に保護してあげるということだと思います。  ただ、これは法的に保護することになると、私の友達で、参議院の法政局の局長をし ているのがいるのですが、いろいろ聞くと、これは非常に難しい問題だそうです。そう だとすると、私は、そういう第三者機関に報告されたものは保護するという形で、どこ かに安全弁のようなものを作って、そこであれば正直に報告しても罰せられないと言い ますか、言葉の表現はよくないですが、安心して報告ができるという何か機関を作れ ば、正確な情報が集められるのではないかと思います。正確な情報が集まれば、それだ け正確な分析ができますし、正確な改善策、より良い改善策を提案できるのではないか と思います。ですから、いわゆる航空機の事故調査会のような、何か公的な専門家集団 で、そういう情報を集めて分析するということが、私は大事なのではないかと思ってい ます。  ただ、その情報を集めるについても、先ほど堺先生がおっしやっておられましたが、 メリットとデメリットがあって、私がいま聞いている範囲では、アメリカでもいろいろ な統計的なデータは出すけれども、どうも、今一歩それが先に進まない。ただ、統計的 にデータを出しただけでは意味がなくて、やはり、いま向こうでルートコーズアナリシ スと言われていますが、一例一例の中の問題点はどこにあるのかということを、やは り、ちゃんと分析して、そこから学ぶべきものを学び出して、フィードバックするとい う機能をどこかで果たすべきだと思います。それを第三者機関が果たせば、私は、だい ぶ違うのではないかと思います。それをいろいろな医療機関に発信していけば、随分変 わっていくのではないか、ということを私は感じています。 ○森座長  その「第三者機関」というのは、何も個々の症例についての協議までやろう、という ものではないですね。 ○三宅委員  そういうものではありません。 ○森座長  ちょっと時間が超過しますが、お許し下さい。あと、できれば望月委員、山崎委員、 全田委員、そして辻本委員からも手短かにお言葉をいただいて、一応本日の議論を終え たいと思います。  望月委員、薬学教授としてのお立場から、どうぞ。 ○望月委員  まず、今回の医療安全対策における「医療事故の概念」について確認したいと思いま す。先だって、米国の薬剤師の方で、「メディケーション・エラー」を特に研究され て、それの方策を随分打ち出されてきた方のお話をお聞きしたのですが、その中では、 例えば投与禁忌の患者さんに誤まって薬物を投与して、それで重大な副作用が発現し た、あるいは腎障害のある患者さんに腎排泄型の薬物を通常の用量で投与してしまっ て、それによって非常に副作用が増強した等の、いわゆる医薬品そのもののもっている 副作用が処方上のチェックミスの原因により起こってきたものも、エラーの中に含めて いたのですが、今回の「医療事故の概念」の中にこのような例が含まれるかどうかとい うことです。  先ほどのお話の中で、「医療の現場にはリスクはない」とたいぶ以前には言われてい たということですが、私ども薬学の教員は、「クスリ」を逆さに読むと「リスク」と読 むのだということで、「薬は常に『リスク』と『ベネフィット』の両方の剣である」と いうことを、薬学生には指導してまいりました。どうしてもリスク対策で「物」と言っ た時に、外観上の問題、あるいは名称の問題だけが取り上げられるのですが、やはり薬 がもともともっているリスクであるところの副作用等々をどのように回避するのか、ど のように予防するのかという対策も含めて考えていただく必要があるかなと、思いま す。  もう一点は、もし、そうした場合に、いまの副作用を例にあげますと、その情報を収 集するシステムは行政のほうで非常によいシステムを作ってくださっています。いわゆ る企業が副作用を報告する制度、医療従事者が任意で有害事象を報告する「医薬品・医 療用具等安全性情報報告制度」ですが、果たして、これが十分機能しているかという問 題もあるかと思います。  例えば、「医療従事者の意識」の中にはレポートを出し渋る傾向がまだまだ存在しま すが、さらに副作用を収集して分析したあとの情報をどういう形で提供されているか。 添付文書を改訂する、あるいは、電子媒体で、いまは添付文書も見れますし、安全性の 情報も見れますが、まず、この情報の提供される時期が遅きに失していることも多いよ うです。  時期の問題、提供のされ方によって、情報は活用されもすれば、されないこともある でしょう。肝心な情報は遅く、逆にそれほど重要でない情報で溢れかえっているという のが実状ではないでしょうか。  先ほど、「取扱い説明書」の話を桜井委員がおっしゃられていましたが、添付文書一 つとっても、何が重要情報で、その情報をどこの場で活用しなければいけないのかとい うメリハリがだんだんなくなってきて、これは医療従事者の意識改革もありますし、も しかしたら、様式上の改善である程度解決できることかもしれないというのがありま す。  メリハリをつけた情報を本当に必要な場面で使っていただくことが重要なのですが、 先ほど井上委員がおっしやられていたのですが、アメリカのメディケーション・エラー の専門家の方もおっしやっていたのですが、メディケーションに関するエラーを防いで いくためには、医薬品の情報とプラス患者情報がなければいけない、とおっしゃられて いました。例えば、禁忌の患者さんに投与してはいけない薬物が投与されてしまうとこ ろのチェックは、患者情報を十分に活用できなければ、それはチェックが効かないわけ です。患者さんの医療に関する情報が医療従事者と患者さんの間、あるいは医療従事者 間でどのように伝達され、活用されるかというインフラのところも、これから考えてお かなければいないかな、と思います。 ○山崎委員  私の立場を申し上げますと、私は大学の研究所、薬学系の学部の教師を勤めてきて、 それ以外の立場はありません。今日は、ささやかな私の経験のことからお話したいと思 います。  もう8年以上になるかと思いますが、当時、薬務局で、「21世紀の医薬品のあり方に 関する懇談会」がありました。私もそこで大変勉強させていただいたのですが、特にそ の中で医薬品の安全につながる適正使用をきちっとしていこう、ということがかなり真 剣に討議されました。その検討の結果を踏まえて、医薬品情報に関するデータベースを 厚生労働省のインターネット上で提供していこうということで、医薬品機構から、い ま、その医薬品の情報が提供されております。これに関しても、私は作業を進める席に おりましたが、大変期待しました。やはり、医療の安全を守るということで情報が非常 に大切だという観点は必須だと思っています。  データベースができて公開されて、もう2年になるのですが、実はこのデータベース は、医療従事者と、これは医療従事者向けの公開でしたのが、患者さんもアクセスがで きるようになっているわけです。ところが、私が見る限り、実績からいうと、本当にこ れが医療の現場で安全のために利用されているかというところで、まだもの足りないと ころがあるように思います。たとえは悪いのですが、貯水地ができて、そこに情報とい う水が満々と湛えられる。流れもできた。ところが、その先が、例えば農地の干害に使 われるとか、生活用水になるとか、産業に使われるとか、いろいろな用途があります が、ここのところの使い方がはっきりしないのです。  つまり、折角水は溜めたけれども、使い道のところで出口がはっきりしないという印 象が、私には大変強いのです。医療の安全ということで考えると、行政と医療従事者の 間では、いろいろなハードとソフトの充実が行われてきて、私は、その成果が、この医 薬品情報のデータベースによる公開というところにまできたようにも思うのですが、こ の行政と医療従事者の間だけの渦巻きでは、この水は、やはり医療の現場には浸透して いかない。  それで、「なぜか」ということですが、やはり医療従事者と患者さんが別の所に存在 して、それぞれの所でものを考えていらっしゃる以上は、私は、やはり、これは伝わっ ていかないだろうと思っています。今日は読売新聞の岸さんがいらっしゃており、『医 療ルネッサンス』という記事を私は大変愛読しておりますが、あそこに出てくる大変大 きな部分に、「患者さんの不安」があるのです。この不安というのは何かと言うと、例 えば日本で言うと、現在の医療技術レベルは非常に高いのですが、その恩恵にどういう ふうに自分があずかっているかというところが釈然としない。それから、そこにどうい うふうに自分がアプローチできるのかということに関しても、情報が不備であるための 不安があって、それが不満になって、医療全体への不信につながってきます。  ですから、結論としては、私のささやかな経験で、医薬品情報がインターネットで公 開され、提供された。この行き先が、やはり医療従事者だけを目標にしたものではなく て、その先に患者さんがいらっしゃるという視点を持つ。すべてそういう形になった時 に、医療従事者には緊張感が出てきて、やはり、いつも自分の視野の中に患者さんとい う存在がいらっしゃって、そこを目標にして、いろいろな行為をやっていくというこ と。まずそれを前提としてないと、医療の安全は言葉が悪くて申し訳ないのですが、医 学・薬学関係者の間でのお題目に終わってしまう恐れがあると、最後ですと言いたいこ とが言えるということもありまして、乱暴な言い方をして申し訳ありませんが、経験か らの実感としては、そういうことを感じています。 ○森座長  非常に大切なことをおっしやっていただいたと思います。 ○全田委員  私が申し上げたいことは岸委員、三宅委員におっしゃっていただいたのですが、要す るに、事故が実際に起きて、特に人身事故が起きますと、警察が入って全く情報が入ら ないのです。そうしますと、我々のような医療現場で働いている、特に我々の組織です と、6,000ぐらいの医療機関があって、3万人から4万人ぐらいの人が実際に薬に携って いますが、なぜ、そういうことが起きたかという情報が全く入らないために、次の医療 事故をいかに減らすかという方策が立てられないのです。確かに、ある機関では、医療 事故対策調査委員会を作ってくださいますが、結果が出るのには1年かかります。その 間に次から次と同じような事故が起きる。  アメリカに長い間いらっしゃった先生がいつも言っていますが、先ほど、ある委員か らご説明がありましたが、事故が起きた時、警察がすぐ入って箝口令をひくなどという ことはないのです。ところが、具体的なことを申し上げますと、高岡市民病院のサクシ ンとサクシゾンとに関する不幸な事故がなぜ起こるかということをすぐ調査しようとし たら、一切答えてくれません。具体的なことを言ってしまいますが、院長の命令で、 「一切しゃべっちゃあいけません」と。それでは、何も役に立たないのです。ああいう 深刻な事故が起きてもです。  ですから、先ほど先生もおっしゃられていましたが、難しい法律の問題があります が、そういうところのご検討を是非、第三者委員会を設けるなり、より敏速に対応し て、少なくとも匿名で、病院内でも何でもいいです。もちろんオープンにする必要はあ りませんが、こういうことが原因で、こういうことが起こったということを迅速に、少 なくとも医療機関に流していただきたい。それが、極力タイムラグのない事故の減少に 結び付くのではないかと思います。あえて申し上げますと、厚生労働省という国を挙げ て、特に医政局で医療安全対策を組まれるということですので、是非、そこまで踏み込 んでいただいて、患者さんに安心できる医療を提供したいと思っております。長くなり ましたが、よろしくお願いいたします。 ○辻本委員  皆さんにお話をしていただいたことの繰り返しになるかもしれませんが、患者の立場 として、やはり、この取組の結果として、患者の意識改革の啓発につながることと、医 療現場におけるチーム医療の再編成の構築を願っています。  電話相談等非常に数が増えていて、患者さんが不信感を高めています。不思議なもの で、ありがたいと思って見ている時はよく見えたものが、疑いのまなざしで見ると、す べて怪しげに見えるという状況が、いま患者の気持を捉えています。月に400件ぐらいの 電話相談に耳を傾けて思うのは、全く医療に希望が見い出せない状況。これは、患者に とっても本当にマイナスの状況になってしまっていることを危惧しています。それだけ に、多くの方のご発言の中でも言っていただいたように、決して与えられる、守られる ということではなくて、患者自身の責務ということが明らかになって、変だなと思った ら、遠慮なく質問していく、自から疑問を晴らすという主体性を是非、患者が身に付け るような契機になっていってほしいということです。  もう一つは、ここには看護婦さんも薬剤師さんも、つまりドクター以外の医療職の方 がご一緒しているわけですが、患者には、残念ながら、薬剤師さんの役割が見えており ません。看護婦さんも、お医者さんの補助的な業務をしている人としか、未だ患者には 理解されていません。  チーム医療の中に、もちろん患者も入っていかなければいけない状況になっていると 思いますが、私は改めて、それぞれの専門職が患者に分かりやすい形で職務を知らしめ ていただき、共同作業のできる新たな希望を見い出せるような人間関係の創造というこ とで、この取組が本当に患者のためにあってよかったといったものになってほしいと思 っています。ありがとうございました。 ○医薬局長  医薬局のほうですが、いま何人かのご先生方から、医薬品のいろいろな関連の安全対 策のご意見がありましたが、「検討事項」にも1つ項目が立っていますので、何回目に なるか分かりませんが、一度、医薬品のいろいろな安全対策をまとめてご報告させてい ただきたいと思っています。 ○森座長  いろいろと貴重なご意見を頂戴いたしまして、ありがとうございました。できれば、 私の個人的な気持としては、もう一巡ぐらいさせていただければいいと思うのですが、 残念ながら時間がはるかに超過しております。今日頂戴したいろいろのご意見を、事務 局で「」概念の整理」とか、「今後の検討項目」とかの事項について多少集計するなり 追加するなりしていただきましょうか。その結果を次回にお示しいただければありがた いと思います。  もう一つお願いしておきたいのは、皆様方がここでご検討していただく際に、何等か の資料が大事であろうと思います。委員の方々の中で、こういう資料がいい、あるいは 自分はこういう資料を持っているというご意見がありましたら、事務局のほうにちょっ とお教え下さい。できるだけ有効に、そういったものを使わせていただくことができる と思います。  「設置要綱」の中に「部会」という言葉が出てきましたが、この部会については、事 務局と私で相談させていただいて、実際に滞りなく進むように、まず計画を立てたいと 思います。当然、内容その他は皆様にご報告申し上げます。まだ全く白紙です。  次回以降のことで、事務局から何か連絡はありますか。 ○青木室長  次回の検討会議の日程については、今後、皆様方のご都合を調整させていただくとい うことで考えています。また、検討の内容ですが、本日提出しました資料について、本 日の議論を踏まえて、また改訂したものを提出させていただく。また、実質的な議論の 始まりですので、「組織における医療安全対策の取組」ということで、先進的な病院に ついての取組などもご紹介いただきたいと考えていますが、詳細については、今後座長 とご相談のうえ固めていきたいと考えています。よろしくお願いいたします。 ○森座長  これで今日の会議を終えさせていただきます。今後とも、よろしくお願い申し上げま す。どうもありがとうございました。 (照会先) 医政局総務課医療安全推進室企画指導係       電話 03-5253-1111(内線2579)