問い合せ先 事務局:厚生労働省医薬局食品保健部基準課 担当者:滝本、鶴身 TEL03-5253-1111 内線2444,2488 FAX03-3501-4868
薬食審第120号
平成13年 5 月18日
食品衛生分科会
分科会長 寺 田 雅 昭
薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会
I.はじめに
食品衛生調査会乳肉水産食品部会では、平成10年に、急増する腸炎ビブリオによる食中毒防止対策を検討するため、水産食品衛生対策分科会を設置し腸炎ビブリオによる食中毒の現状を調査し検討を行い、平成12年5月にその対策について報告書を取りまとめ、食品衛生調査会より厚生大臣に対し意見具申した。
この報告書に基づき、平成12年夏に厚生省及び都道府県等は夏期食品一斉取締り及び食品汚染実態調査を実施し、水産食品における腸炎ビブリオの汚染実態などの結果を取りまとめた。また、同年10月、厚生大臣から食品衛生調査会に対し、腸炎ビブリオ食中毒防止対策のための水産食品に係る規格及び基準の設定について諮問が行われた。
食品衛生調査会乳肉水産食品部会では、平成12年5月に取りまとめた腸炎ビブリオ食中毒防止対策の報告書、同年夏に厚生省ほかが実施した汚染実態調査の結果、水産業界からの意見聴取の結果をもとに、腸炎ビブリオ食中毒防止対策のための水産食品に対する規格基準案を取りまとめた。
腸炎ビブリオ食中毒防止対策のための水産食品に係る規格及び基準の設定の検討にあたっては、次に掲げる事項を基本方針とした。
1 過去において腸炎ビブリオによる大規模な食中毒の原因となったことのある広域に流通する水産加工品であって、切り身またむき身の魚介類及び煮かに(ゆでかに)などそのまま食用に供する魚介類加工品について、規格基準を整備する。
2 生食用魚介類加工品の規格基準の設定にあたっては、1)初発菌数の制限、2)加工後の相互汚染防止、3)消費までの流通等の過程での増殖防止の観点を中心とする。また、実態を踏まえ実効可能なものとし、必要な場合は猶予期間を設けることも検討する。
3 既存の食品衛生法に基づく措置、関係団体及び行政機関等が実施している指導などと組み合わせ、生産から消費までを通じた総合的な腸炎ビブリオ食中毒防止対策を推進する。
4 既存の水産食品に係る規格基準との整合を図る。
5 対象となる加工食品に個別に対応した基準を設ける。ただし、共通する事項を取りまとめる。
6 今後も、腸炎ビブリオによる食中毒防止対策に関する最新の知見に基づき、定期的に規格基準の見直しを行う。また、水産食品の衛生学的な指標についても、実態等を踏まえ検討を行う。
II.腸炎ビブリオ対策として次の水産食品に対し、次の観点から、新たな規格基準を設定することが適当である。
1 食品一般の調理基準
未加工の魚介類を生食用に調理する場合、飲用適の水で十分に洗浄し、製品を汚染するおそれのあるものを除去しなければならないこと。
2 切り身、むき身の生食用鮮魚介類加工品
成分規格
加工基準
保存基準
表示基準
3 煮かに(ゆでかに)
成分規格
加工基準
保存基準
表示基準
III.腸炎ビブリオ対策として次の水産食品に対し、それぞれ次に掲げる観点から、規格基準を追加することが適当である。
1 ゆでだこ
成分規格
加工基準
2 生食用かき
成分規格
加工基準
3 冷凍食品(生食用冷凍鮮魚介類)
成分規格
加工基準
IV.水産食品の衛生対策を確保する観点から、関係者に対し、次の事項につき指導を進めるべきである。
1 切り身、むき身の生食用鮮魚介類加工品
2 漁獲後の魚介類
3 活魚
4 未加工の魚介類及び殻付きの貝類
5 寿司(調理され容器包装に入れ、一定の期限を設け販売されるもの。)
6 寿司及び刺身等の魚介類調理品
また、消費者に対しても、切り身、むき身の生食用鮮魚介類加工品や寿司及び刺身等の魚介類調理品について、冷蔵保存下を出てから、出来る限り速やか(最大2時間以内)な消費に心掛けるよう啓発するべきである。
V.終わりに
以上の規格基準の整備及び指導の実施により、総合的に腸炎ビブリオ食中毒防止対策を推進するとともに、今後も引き続き、腸炎ビブリオによる食中毒の発生状況及びその原因について調査研究を推進するべきであると考える。
(以上)
1. 切り身、むき身の生食用魚介類加工品、生食用かき、冷凍食品(生食用冷凍鮮魚介類)
(成分規格として、腸炎ビブリオ最確数を求める場合。)
検体25gにPBS(3%食塩)225mlを入れ、ストマッキング処理し、検体の10倍希釈液を作成し試料とする。次に検体の10倍希釈液1mlをPBS(3%食塩)9mlの入った試験管に入れ、検体の100倍希釈液を作成する。
検体の10倍希釈液及び100倍希釈液をアルカリペプトン水10mlの入った3本の試験管にそれぞれ1mlずつ接種し、また、検体の100倍希釈液をアルカリペプトン水10mlの入った3本の試験管に0.1mlずつ接種する。
37℃、1夜培養後、各試験管の上層の1白金耳をTCBS寒天培地に塗抹し、37℃、1夜培養する。培地上の腸炎ビブリオと推定される集落を同定し、各段階に希釈した試験管の陽性本数を最確数表にあてはめて、1gあたりの最確数を求める。
2. 煮かに(ゆでかに)、ゆでだこ
(成分規格として、腸炎ビブリオ陰性を求める場合。)
検体25gにアルカリペプトン水(225ml)を入れ、ホモジナイズ処理した試料を、 37℃、1夜培養後、上層の1〜2白金耳をTCBS寒天培地に塗抹し、37℃、1夜培養する。培地上の腸炎ビブリオと推定される集落を同定する。