01/03/28 第1回保健医療情報システム検討会議事録 第1回 保健医療情報システム検討会議事録 平成13年3月28日(水)16:00〜18:00 合同庁舎5号館9階 省 議 室 【司会】  定刻になりましたので、ただいまから保健医療情報システム検討会を開催いたしま す。  私は医政局研究開発振興課医療技術情報推進室補佐の武末でございます。本検討会の 座長を決めさせていただく間、暫時進行役を務めさせていただきます。  なお、報道陣の取材がございますので、しばらくこのままでお待ちください。撮影さ れる方は今の間によろしくお願いいたします。  それでは最初に、伊藤医政局長よりご挨拶を申し上げます。 【伊藤局長】  医政局長の伊藤でございます。一言ご挨拶をさせていただきます。  委員の先生方におかれましてはお忙しい中を本検討会にご出席いただきましてありが とうございます。  さて、我が国の医療制度は抜本的な改革が求められておりまして、大きな転換期にさ しかかっていると理解しております。こうした状況の中で、保健医療サービスだけでな く社会保障制度全体についてサービスの質の向上のため、また、限られた資源を有効に 活用できる合理的・効率的なサービスの提供体制を築いていくことが大きな課題になっ ております。この課題を達成する手段といたしまして医療分野の情報システムの活用が 極めて有益な手段だと考えておりまして、私どもも昭和48年度から医療情報システムの 研究開発等に着手いたしまして、特に近年におきましては遠隔医療、診療録等の電子媒 体による保存などいくつかのことに対応してきたわけでございます。  さらに国際的にも、現在、保健医療情報および保健医療情報交換技術の標準化が進め られるとともに、個人情報保護および情報セキュリティの確保が極めて重要視されてお ります。  現在、政府全体ではIT化の促進のためにかなり多額の予算が投入されております が、保健医療情報システムひとつをとってみましても、医療の提供体制、医療保険のサ イド、さらに高齢者医療なり介護保険、それぞれ必ずしも連携が十分ではなかったと認 識しております。今後、情報化を進めていく場合に、医療の提供体制や支払方式、その 他EBMを進めていくなど様々な目的に沿って総合的なグランドデザインを作っていく ことが求められているのではないかと思います。  そのような観点から、今回、保健医療情報システム検討会を発足させまして、概ね5 年後を見据えたグランドデザインを策定していただきたいということが本検討会の設置 の趣旨でございまして、委員の先生方におかれましては新しい世紀にふさわしい将来の 情報システムの構築の方向を私どもにお示しいただければと考えております。この検討 会の議論を受けまして行政的な対応を進めていきたいと考えておりますので、何とぞよ ろしくお願い申し上げまして、簡単でございますがご挨拶にさせていただきます。 【司会】  それでは、本検討会の委員の方々を五十音順にご紹介申し上げます。  静岡県立大学国際関係学部教授、石川准委員。  日本医療情報学会会長、井上通敏委員。  東京工業大学工学部教授、大山永昭委員。  医療情報システム開発センター理事長、開原成允委員。  日本医師会常任理事、西島英利委員。  東京大学法学部教授・樋口範雄委員。  保健医療福祉情報システム工業会・藤本利雄委員。  日本画像医療システム工業会・細羽実委員。  引き続き、事務局の紹介をいたします。  先ほどご挨拶申し上げました医政局長の伊藤。  医政局総務課長・大谷。  医政局研究開発振興課医療技術情報推進室長・谷口。  それでは、この検討会の座長をお決めいただきたいと存じますが、どなたかご意見を いただければと思います。 【井上委員】  平成6年7月に中間報告が出ておりますが、その時の座長を務めていただきました開 原先生をご推薦申し上げたいと思います。 【司会】  ただいま井上委員から開原委員を座長にというお話がございましたが、いかがでござ いましょうか。                 (拍手)  それでは、開原委員に座長をお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。 【開原座長】  開原でございます。ただいま座長に選んでいただきましてありがとうございました。 一言ご挨拶を申し上げたいと思います。  私はこの分野に30年ほどおりますが、特に最近の時代は動きが速く、また医療の中で 占める情報技術の役割は非常に大きくなってきております。それだけに、そのかじとり が大事な時代ではないかと思っておりまして、こうした時期に厚生労働省がこういう検 討会をお持ちになることは時宜を得たことではないかと思っております。私も微力なが らお役に立たせていただきたいと思いますが、委員の先生方のご協力なしにはできない ことでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、議事次第に従いまして議事を進めさせていただきたいと思います。  まず最初に、資料の確認からお願いいたします。 【推進室長】  お手元に分厚い資料を準備させていただいております。本日すべてご説明するわけで はございませんが、資料として資料1から5までと、参考資料として参考1から参考12 までございます。資料につきましては以上でございます。 【開原座長】  今日は第1回でございますので、フリーディスカッションをしていただいて、その中 から今後の議事の進め方を皆さんで合意していただくことが今日の目的ではないかと思 いますので、そういうことを頭に置きながら、まずは資料の説明をしていただいて、い ろいろお考えおきいただければと思います。  それでは、資料の説明をよろしくお願いいたします。 【推進室長】  資料2をごらんいただきたいと存じます。平成6年7月に出ました「保健医療情報シ ステム検討会中間報告」というものですが、この委員会の前身と申しますか、平成6年 に行われた委員会の報告書でございます。  医療分野のIT化の方向性として、資料2の検討会中間報告という形で、21世紀初頭 のあるべき姿が示されたわけです。今年はまさに2001年でございまして、今日を見通し た報告としての位置づけが当時なされたものと理解しております。  この報告書の基本的考え方は現在でも十分通用するものであると私どもは理解してお りますが、技術の進歩はすさまじく、社会状況の変化に対応する必要性から、現時点に おいて見直しをしていただきまして、今後の戦略的グランドデザインと具体的達成目標 まで示すことが必要ではなかろうかと考えているところでございます。  折しも政府におきましては、昨年来、IT戦略会議等において日本全体のIT化の方 向を示すべく検討がなされまして、昨年11月の「IT基本戦略」、今年1月の「Eジャ パン戦略」を経まして、今月末には「Eジャパン重点計画」というものが決定される運 びになっております。その中におきましても電子カルテを初めとする医療分野のIT化 に関する戦略的なグランドデサインを2001年度の早い時期に示すことが求められており ます。そのような背景のもとに、今回、各委員に、平成6年に出されました前回中間報 告を踏まえましてグランドデザインのご検討をお願いする次第でございます。  その際、局長の話にもございましたように、あまり先を想定した計画というのは途中 修正を余儀なくされることが予想されますので、グランドデザインにおきましても今後 5年程度をめどとして達成目標を示すことが実際的であろうと考えております。また、 できるだけ早く実効ある施策に結びつけますために事務局といたしましては来年度予算 要求のスケジュールもにらみながら検討をお願いしたいと考えておりますので、いくぶ んタイトなスケジュールでご迷惑をおかけすることがあろうかと存じますが、よろしく お願いしたいと思います。  座長も言われましたように今日はフリートーキングということですが、議論の前提と なる前回の報告書と、それを受けて旧厚生省で取り組んだこと、および保健医療情報シ ステムの現状の問題点について、資料2、3、4の順番にご説明させていただきます。  まず資料2の中間報告でございます。この報告書は1.目的から始まりまして、7. おわりにという部分までの構成になっておりますが、順にご説明させていただきます。  1.目的では、21世紀初頭における保健医療情報システムについて基本構想を示し て、必要な方策を検討するこということをうたっております。  2つ目の柱、現状に関する認識のところでは、これまでシステム開発が進められてお りますが、課題として、個別の企業や個人の努力によって構築されてきた結果、相互の 連携ができる形になっていないこと、また主たる目的が提供者側の効率化ということに 向けられており、保健医療サービスの質の向上のための情報支援への活用という面でや や不十分であること、医療技術評価、疫学研究のための大規模データベースの構築がほ とんどなされていないこと、研究者の層が薄く独創的な情報関連技術が少ないことなど が指摘されております。  3つ目の柱、保健医療情報システムの必要性のところでは、なぜ必要かという4つの ポイントが示されております。  まず1つ目は、情報を正確かつ迅速に処理して伝達することにより、保健医療サービ スの効率的提供に役立つという側面があること。  2つ目は、最新の医学知識や医療情報を迅速に提供することによって保健医療サービ スの質を高めることができるとともに、信頼できるデータによる客観的評価を通して保 健医療サービスの質が担保できるということが指摘されております。  3つ目は、どこにおいても正確な情報が迅速に伝えられる結果、保健医療資源の地域 偏在が緩和されるなど、住民にとって公平で公正な保健医療サービスを受けることが保 障されるということが指摘されております。  最後に、技術革新のために必要な情報の提供により、保健医療分野の研究開発を支援 できることということも指摘されております。  4つ目の柱、保健医療情報システムを取り巻く技術の動向というところでは、ネット ワーク化、オープン化、ダウンサイジング化、マルチメディア化等、情報処理技術の急 速な進展により情報処理関連産業の構造変化が起こっていることなどが指摘されており ます。  5番目の柱、近未来の保健医療情報システムの項目においては、21世紀初頭の保健医 療情報システムのビジョンとして、医療機関相互の患者紹介、専門医への相談等につい てネットワーク上の情報交換がなされるなど、保健医療福祉に関するすべての組織や個 人の情報ネットワークでの連携が図られるほか、保健医療関連のデータベース、これは 個人の健康情報とかサービス支援情報、研究用情報などが含まれますが、こういった データベースの構築と活用が図られることがこの時点で予想されております。  6番目の柱、21世紀初頭に求められる保健医療情報システムを構築するための提言と いうパートでは、技術、制度、人材といった環境整備が大切であり、そのために国が基 本方針を示すなど、医・産・官・学の役割分担を明確にして、それぞれが力を最大限発 揮できる体制を作るべきであるという基本的考え方のもとで、国、保健医療関係者、研 究者、産業界、財団法人医療情報システム開発センターの役割がそれぞれアクション・ プログラムとして述べられているところであります。  国のアクションプランにつきましてはのちほど詳しく述べさせていただきますが、情 報活用に関する基本方針の提示、常設検討機関の設置、システム開発支援と基盤研究の 実施、標準化の推進、プライバシー保護対策、データベース構築と活用方策などが示さ れております。  保健医療関係者が行うべきアクションプランといたしまして、情報システムの特性を よく理解し、これを最大限に活用して質の高いサービスの提供に努力すべきこと、ま た、自ら積極的にシステム構築を図るべきことなどが指摘されております。  研究者につきましては、新規技術の開発に努めるとともに、保健医療への応用に積極 的に関わるべきこと、人材の養成と確保に努めるべきことが提言されております。  産業界に対しましては、研究開発の推進、良質で操作性に優れた製品の製造、利用者 に対する説明などに努め、安全かつ有効な情報活用に努めるべきこと、人材の養成に寄 与すべきことなどが提言されております。  最後に財団法人医療情報システム開発センターにつきましては、標準化の推進、先端 情報システムの開発、知識普及、コンサルティングの充実、人材養成、国民への情報提 供、プライバシー保護と品質の確保などが求められているところであります。  以上が資料2、前回の中間報告についての簡単なご説明でございます。  この中間報告をいただきました後の「旧厚生省における情報化推進への取り組み」に ついて資料3にまとめてございます。厚生省だけでなく政府の検討会も含まれておりま すが、まず検討会の流れとして、平成6年の「保健医療情報システム検討会中間報告」 に先立つこと2か月、平成6年5月に「情報化推進連絡本部」というものが厚生省内に 立ち上がりました。この中で情報化を総合的に推進する体制ができたということでござ います。  平成7年7月に厚生大臣の諮問機関として「保健医療福祉サービスの情報化に関する 懇話会」から報告書が出されました。これは参考資料1につけてございます。  平成7年8月には政府の「高度情報通信社会推進本部」の基本方針に基づきまして、 先の懇談会の報告も踏まえまして「保健医療福祉分野における情報化実施指針」という ものを作成しております。これにつきましては参考資料2につけてございます。この実 施指針は、厚生省が郵政、通産、文部、自治の4省のご協力をいただいてとりまとめた ものでございます。いま申しました懇談会報告書、実施指針ともに医療や介護サービス の支援のために情報ネットワークの整備やデータベースの構築が有用であること等が述 べられておりますが、基本的に先の委員会の中間報告をベースとしておりますため、そ の域を大幅に出ているというものではございません。  平成8年には政府の「規制緩和3か年計画」において電子カルテを認める方向で検討 すべきことが打ち出されました。これは参考資料3につけてございます。続く「高度情 報社会推進本部」のほうで具体的な技術指針が出されました。これは参考資料4につけ てございま。  さらに平成8年11月には「国民医療総合政策会議中間報告」の中で、ICカード、電 子カルテ、遠隔医療等の普及推進について提言がなされたところでございます。これは 参考資料5につけてございます。  平成10年6月には「カルテ等の診療情報の活用に関する検討会報告書」の中で電子カ ルテを推進すべしという提言をいただきました。これは参考資料6でございます。  さらに11年3月には「規制緩和推進3か年計画」、これは参考資料7でございます。 改定計画のほうも参考8につけてございますが、あわせまして様々な情報化の提言をい ただいております。  以上の流れを受けまして、旧厚生省として対応したものとして、平成9年に遠隔診療 を一律禁止するものではないという旨の通知を出しました。これは参考資料9につけて ございます。  平成11年には「診療録等電子媒体による保存について」という電子カルテを認めるこ ととした通知を出しております。これは参考資料10につけてございます。  診療報酬関係では、平成10年に遠隔医療による再診を電話再診料として認められるこ と、また、レントゲンなどの電子保存の場合にも診療報酬算定できることなどの措置を とっております。これは参考資料11でございます。  また、電子保存の際にもデジタル映像化処理加算という診療報酬の点数が算定できる ことや、遠隔病理診断についても点数化が認められるということが平成12年に行われま した。これは参考資料12につてけてございます。  以上が資料3のご説明でございます。  続きまして、資料4「保健医療情報システムの現状と問題点」という表をごらんいた だきたいと思います。先ほどの資料2の中間報告の中で国のアクション・プログラムと して12項目のご提言をいただいておりますが、その12項目について資料4に基づいてご 説明させていただきたいと思います。  まず1番目は、基本方針を提示しなさいというご提言をいただきました。これにつき ましては前回の中間報告と、それをベースにした実施指針において方向性を示し、それ らに基づいてこれまで施策を進めてきたところですが、政府のIT戦略に対応した今後 の保健医療分野の基本方針を策定する必要があると考えておりまして、本検討会におい て5年先を見通したグランドデザインをご検討いただき、ご提言いただければと考えて おります。  2番目はシステム開発に対する支援及び基盤研究の実施ですが、これまで厚生科学研 究費によって大学の研究者の方々に研究をお願いしてきました。そのほかにも病院情報 システムを厚生省所管の国際医療センターで開発したり、財団法人医療情報システム開 発センターの委託費の中で開発を進めているところでございます。今後は他省庁との連 携を踏まえたり、必要に応じて民間機関、企業等との共同開発も視野に入れて進めるこ とも必要ではないかと考えているところでございます。  3番目のシステムの標準化の推進につきましては、財団法人に委託して用語コードの 標準化を進めておりますが、今後さらに、また手がつけられていない分野の用語コード の標準化を進めますとともに、電子カルテの普及をにらみまして、各医療機関のデータ のやりとりのための交換規約の策定を急ぐ必要があると考えております。特に電子カル テと診療報酬請求のためのレセプト電算処理システムの連動につきまして早急に取り組 む必要があると考えております。 4番目のプライバシー保護の施策につきましては、技術的な面から保健医療分野の認 証システムの構築について研究者の方々のご指導を得ながら検討を進めておりますが、 個人情報保護と裏表の関係にあります情報の利活用について、これを一律に制限します と医療の進歩を阻害するおそれもありまして、このへんにつきましては個人情報保護基 本法を念頭に置いて制度面での検討を進めることとしております。  5番目はデータベースとネットワークの活用ですが、平成6年に指摘されながら、大 規模な保健医療データベースがまだ構築されていない状況にございます。昨年もエビデ ンス・ベースド・メディスン、いわゆる根拠に基づく医療という概念に基づいた文献 データベースを構築することについて関係団体との調整が不調に終わったという経緯が ございます  一方、日本医師会においては診療ガイドラインのデータベースを独自で構築しようと しておられ、ネーットワークに乗せるコンテンツとしての情報のデータベースを、今 後、関係者の間でどう構築していくかという検討を別の検討会で議論することになって おります。  なお、厚生省所管の国立病院を中心とするクローズドなネットワークがございまし て、HOSPネット、循環器センターを中心とする循ネット、がんセンターを中心とす るがんネットというのがございますが、こういったネットワークにつきましても、今 後、コンテンツの質と量を充実して、オープンネットとしてどう展開していくかという ことも課題であろうかと考えております。  6番目は経済的基盤の確立ということですが、診療報酬において遠隔診療や画像記録 の電子保存などで徐々にではありますが支援策を講じてまいったところであります。今 後さらに研究費などで費用対効果の検証を進めまして、情報化を促進する医療機関への サポートを考えてまいりたいと思っております。初期投資につきましては、例えば12年 度補正で電子カルテやオーダリングシステムを導入する医療機関に補助を行うなどして 支援をしているところでございます。なお、将来の情報化のネックの一つが割高な通信 コストということもございまして、厚生労働省の所管ではございませんが、他省庁への 検討依頼も要請してしていきたいと考えております。  7番目の技術評価の実施という項目につきましては、これも厚生科学研究費によりま して情報システムの評価について検討を進めているところですが、方法論の確立という ところまでは至ってないのが現状でございます。情報システムのモデル的な事業、例え ば経済産業省で行われております地域医療情報ネットワーク事業などがありますが、そ ういったものを各地で展開されている現状を踏まえまして、そのフィールドを使わせて いただいて現実的な評価方法モデルを確立して有用なシステム開発につなげていきたい と考えております。  8番目は医療情報活用のためのシステムおよび人材養成の確保ですが、ネットワーク に乗せる情報として今後構築されるであろうエビデンス・ベースド・メディスンのため のデータベースを構築して、そこからの情報提供が考えられますので、そうした情報の 整備のためにリサーチライブラリアンの養成を始めています。これは文献検索と整理の プロといってもよろしいかと存じますが、そういった方々が必要になるわけでありま す。  この表には書いてありませんが、病院で診療録管理を行っている方々がいらっしゃい ます。診療録管理士と呼ばれている方々ですが、院内の診療情報の処理・保管等の業務 を行っております。国家資格ではありませんが、直接的にはこういった方々を養成し、 各病院での情報管理業務を担っていただくような環境ができればいいのではないかとい うことも考えております。この面につきましては診療報酬でも一部手当てされておりま すが、今後、そのへんをどのように拡大していくのかという議論が必要かと思います。  9番目は行政への情報の活用という面ですが、医療機関相互のネットワークが十分に 構築されておりません現状では、医療情報が行政レベルではまだ十分に活用されている とは言いがたいと思います。将来的に病院報告などが各医療機関からオンラインで収集 できるような環境整備が必要かと考えておりまして、その時のために各種用語コードの 標準化を一層進めておく必要があろうかと思います。  10番目は保健医療システムの実体把握ですが、各団体への定期調査が実施されており ませんで、随時調査という形にとどまっております。工業生産統計などもIT分野を想 定した調査スタイルには必ずしもなっていないようでして、そもそも電子カルテの普及 状況を調べようとしても電子カルテの定義が定まっていないという現状を考えますと、 なかなか調査しがたいという状況があります。この点についても今後検討を進めるべき であると考えております。  11番目は国の情報担当部門の体制強化ということです。当時、私どもの推進室は訓令 室でありまして、ご提言をいただいたあとで省令室になり、体制の強化を図らせていた だいたと思っておりますが、このへんにつきましては内部の話ですので、この検討会で 大々的な議論をしていただく必要はないのかなという感じはいたしております。  12番目は公益法人の育成についてですが、これは委託費によりまして財団法人医療情 報システム開発センターが各種事業を展開しておられます。成果品の普及活用について は必ずしも十分とは言えない面もありますが、サポート体制にも考慮すべき点があろう かと考えております。今後は成果品をオープンソースとして普及を図ることや、他の民 間団体、企業とのコンソーシアム形態といったものも視野に入れながら、昨今の公益法 人のあり方の議論も踏まえつつ検討すべき事項かと考えております。  以上が資料4についてのご説明でございます。  最後に資料5のご説明をさせていただきます。保健医療情報システム検討会の今後の スケジュールについてでございます。  本日は第1回目ですので、先の中間報告を踏まえまして、保健医療情報システムの現 状についてフリートーキングをお願いしてはどうかと考えております。  今後は5月初めごろに2回目として、方向性の検討をお願いしたいと思います。課 題、問題点の洗い出し、保健医療情報システムの担う役割等について議論を進めていた だきまして、6月ごろに第3回目ということで、現在の課題、制度上の問題点について 解決方策の検討をお願いできればと考えております。同時に5年後を想定したグランド デザインの骨格についてもご検討いただければと考えております。  第4回目でグランドデザインの骨格を実質的に固めていただければというのが事務局 の願いでございます。予算概算要求の時期ですので、そのへんの時期をにらみながら検 討を進めていただければという気持ちでございます。  骨格が定まりましたら各論について議論を続けていただきます。このペーパーには6 回目までしか書いてございませんが、回数にはこだわらず、今年度中に何回か開いてい ただきまして、グランドデザインのとりまとめをお願い申し上げたいと考えておりま す。  資料のご説明は以上でございます。 【開原座長】  ありがとうございました。  最初に説明したいただいたので全貌がおわかりになったと思いますが、今日は第1回 ですので、今までご説明のあった資料に基づいて、今後この委員会をどのように運営し ていくかということについて自由にご意見をいただければと思っております。  最初にご説明があった資料2の報告書については、この委員会の中では大山先生と私 が関係させていただいたんですが、5年以上たったんですかね。果たしてそれが21世紀 のことをうまく書けたかなと思って私自身は恥ずかしい気持ちもちょっとあるんです が、それを踏まえながら、それを改訂していくという考え方でもいいかと思います。要 点は比較的よく書いてあるかなと思うんですが、大山先生、ご感想はいかがですか。 【大山委員】  ずいぶん時間がたったなという気がします。先ほど読み返してみまして、基本的な方 向としては合ってると思うんですが、時代の変化についてないなという感じはいくつか ございますね。  この中間報告の次に懇談会の報告書が1年か2年の差で出てると思うんですが、一 方、高度情報通信社会推進本部がIT戦略本部に変わって、ずっと流れを見てますと、 時代の大きな変化の一つは、日本の状況がよくなくなっていて、電子商取引を初めとし て情報化が日本経済の復興をかける手段として位置づけられてきている。その点、保健 医療分野ではどうかということを考えると、例えば医療費の増大という問題に対して、 国全体の経済の状況がよくなくなるということは、どこかで破綻を起こすということ で、そういう大きな変化が出ている。  何を申し上げたいかというと、保健医療機関における経営効率化という言葉がいいか どうかわかりませんが、サービスの質を十分保ちながら、いかに安い費用で提供するか という明確な目標が書かれてなかった。費用についてはあまり明確に言ってないという のが、今はずいぶん違ってるなという気がいたします。インターネットや携帯電話を初 めとして社会全体の情報化の環境が当時と今とは全く違うので、現在の状況、あるいは 今後の社会全体が情報化という観点で動いている方向性を見据えて、今回、適切な提言 をする必要があるのかなと思っています。5年前はここまでくるとは予想してなかった 点は私も反省すべきことだと感じています。 【開原座長】  ありがとうございました。大山先生は先に席を立たれるかもしれませんので先にご意 見を伺ったわけですが、ご自由にご発言いただければと思います。これからこの問題を どのようにやっていくかというのはまさに皆様方のご意見次第ですので、よろしくお願 いいたします。  こうしてまとめてみると、国のほうもずいぶん努力をされてきたということが大変よ くわかるわけですが、努力されても世の中を動かすというのはなかなか難しいものだな ということも一方で感じるところでございます。  井上先生からご意見をいただけるということを事前に伺っておりましたが、もしよろ しければどうぞ。 【井上委員】  平成6年に出された中間報告ではキーワードはほとんど網羅されておるし、現在でも 通じる内容ではないかなと私も感じております。強いて申し上げれば、IT化というの は光の部分と影の部分があるわけですが、光の部分はどういうところで、それに伴う影 の部分はどういうことか、それに対してどういう対策がいるかということをもう少し整 理して国民に示すべきでないかなと感じております。そのことについてはのちほど時間 がありましたら、あるいは次回以降にでもお話をさせていただきたいと思っておりま す。  資料2の一番最後のページに図にまとめていただいておりますが、サービスの質の向 上、効率的な提供、公平公正な提供、保健医療技術の向上、この4つの目的は正しいと 思います。効率とはコストベネフィットだとすると、ベネフィットのほうはサービスの 質の向上とか、そのほかの3つのことで書かれておりますので、効率的な提供というの は思い切って医療のコストダウンという言葉でもいいんじゃないかと感じます。  公平公正な提供というのはもっともなことですが、中間報告での説明を拝見します と、5ページの上にありますように、「正確な情報を適切に保健医療関係者に提示する ことにより、公平かつ公正な保健医療サービスの提供への意思決定を支援する」という ことです。保健医療関係者というのは医療を提供する側だけの話なのか。むしろ医療を 受ける側へも医療情報を提供することが重要ではないかと思うわけであります。それは 公正公平という言葉で表現すべきなのか、それとも医療の選択の自由を保障するとい う、アクセスに多少関係したことにするのかといったことがあるのではないかと思いま す。  平等の定義もいろいろと難しいかと思います。現在、グローバリゼーションというこ とが言われておりますから、日本の医療も他の国との関係で考えていく必要があると思 うんですが、国内における平等ということを追求すれば、一方では国際格差の問題につ いてどういうふうに論理的に整合するかという問題も出てくるのではないかと思いまし て、医療の選択というか、このへんの公平公正についての考え方はもう一度検討してみ てもいいのではないかと思います。  次の国の役割のところですが、本来、国がやるべきことは、制度とか法の改正とか予 算ということになってくるんでしょう。同時に、先ほど影の部分と申しましたが、情報 弱者とか、IT推進によって生じる弱者の対策、あるいは医療提供側にもいろいろ利害 関係が生じてきますから、そういったことの調整をどういうふうにやるかという問題が あるかと思います。  私は医療情報学会の会長としてこの委員に参加させていただいておりますが、現在、 国立病院の院長をしておりまして、医療現場を経験している立場から言いますと、いろ いろな面で情報化に伴って第三者的な機関が必要になってくるのではないか。例えば情 報が公開される時に、その情報の信憑性とか精度をどこがどのように担保するのかとい うことであります。医療情報というのは専門的な情報ですから、その信憑性とか精度に ついて一般国民に責任を負わせるというのはなかなか難しい問題だろうと思うわけで す。  医療を提供する側から言うと、IT化というのはディスクロージャーが進むというこ とですから、これまで見えなかった医療の中身がどんどん見えてくるということになる わけです。現在、医療過誤とか医療事故の情報公開を迫られてはおりますが、その処理 を迅速に行って、かつ被害者もおられるわけですから、被害者の救済を迅速に行えるよ うな、そういう機構も医療の情報化の一方で用意をしておく必要があるのではないか。 そんなことを考えております。  この図で見ますと、産業界の役割、メデイスの役割、研究者は主として学会の役割で しょうが、もう一つ第三者的なものを考えておく必要があるのではないかと感じており ます。  最後に、私は学会の代表として出席させていただいておりますので、学会の役割につ いてひとこと申し上げたいと思います。学会というのは研究ということですので新規の 情報技術の開発も大切ですが、学会の立場から国民への啓蒙をしたり、あるいは新しい 研究成果を現実の社会に実現したらどうかといったようなことについて提言をするとい う役割をもっともっと果たしていくべきではないか。学会の役割を我々はもう少し自覚 して、役割を果たす必要があるのではないかと考えております。とりあえず以上でござ います。 【開原座長】  ありがとうございました。  皆さんもご自由にご発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。  いま国のほうのアクションプランを総点検されて、どうであったかということをお示 しいただいたわけですが、この報告書は国だけではなくて医療機関も産業界も研究者も こうするべきであるということが書いてあるわけです。そんなことを含めて、この5年 間を振り返ってみていただいて、今後どう進むべきかということがこの中に盛り込めれ ば大変いいのではないかと思います。  医師会この5年間にいろいろご努力されて、最近はいろんなプロジェクトをお持ちの ようですが、西島先生、何かご発言はございますでしょうか。 【西島委員】  井上委員に反論するわけではございませんが、効率的な医療イコール・コストダウン という考え方というのはいかがなものかと思うわけです。それはどうしてかと言います と、医療というのはまさしく労働集約型産業でありまして、一つの枠にはめられないわ けで、そのために様々なトラブルが起きてきているとも言えると思うんですね。そもそ も効率的とはなんなのかということを議論しなくてはいけないわけですが、コストダウ ンが最も難しいのが医療だと考えてるんですね。  最近、医療費の流れの中で高齢化ということが言われているわけですが、高齢化する と当然病気をもってこられるわけですから、医療にかかる可能性が非常に高くなってく る。高齢者がどんどん増えていくとなるとコストが高くなってくるということですの で、それに対して効率的とはどういうことなのかということを一つ議論しなくてはいけ ないと思います。ほかの産業ではコストダウンのためにするのが効率化なんですね。医 療というのはそのあたりに少し難しい面があるだろうと思っております。  IT化というのは情報開示だと言われてるんですが、これも医療の中では難しい部分 です。いま遺伝子解析について盛んに言われておりますが、遺伝子解析について情報開 示というのは非常に慎重にならなければいけないと言われてるわけですから、必ずしも IT化イコール医療の中での情報開示がスムーズには進まないということも今後の重要 な検討課題かと思っております。  私は情報の担当になりまして非常に感じることは、この報告書の中にもあるんです が、いろんな形での標準化がほとんど進んでいないということがわかってきました。一 つは電子カルテの問題がありますが、電子カルテの標準化が進んでおりません。それぞ れのメーカーが電子カルテを開発していますが、互換性に問題がある。レセコンシステ ムも互換性がないがゆえにコストダウンにつながらないという部分もあるわけです。も う一つは病名のこととか、様々なレセコンに関するコード等はなかなか標準化が進んで ない。なぜかというと、使い勝手のいいものを作っていかないと標準化は進まないんだ ろうと思いますので、そのあたりも一つの検討課題だろうと思っております。そういう ことも今後、議論の中でやっていただきたいなと思っております。  今はまさしく民活の時代と言われてるんですね。先ほどの国の役割と実際の現場の役 割をどうしていくのかということですが、民活という考え方の中で、おのずから国の役 割というのは絞られてくるんだろうと思うんですね。そういうことも今回の議論の中で 進めていただければと思います。 【開原座長】  ありがとうございました。  いま産業界の話が出ましたので、産業界のお話を伺いたいと思いますが、いかがでし ょうか。 【藤本委員】  保健医療福祉情報システム工業会の藤本でございます。私もこの世界に30年ぐらいお りまして、初めは医療機器の世界で、この数年間、情報のほうに入ってるんですが、中 間報告を読ませていただきまして、今でも通用することが書いてあるということは、裏 を返すと課題がずっと続いてきていて、過去の問題になってないということじゃないか と思うんです。産業界を見ますと、まさにそれを感じます。情報技術が進展したことに 伴ってできることが増えてきてますし、アプリケーションも電子カルテを初めとしてい ろいろ開発されてきてるんですが、古くて新しい問題がけっこう残ってるんですね。  一つは診療報酬の問題でして、マスターを作ったり、標準化も努力はされてるんです が、最後はどたばたで自社責任という世界が毎年か2年に1回繰り返されてまして、あ とから標準マスターとか基本マスターで自分のやったことをチェックするみたいな形な んですね。IT化を進めるには制度そのものがIT化を意識したものでなければいけな いと思うんですが、今の診療報酬改定のタイミングとやり方ですとIT化は後回しで、 まず自社責任でやってからということになってしまっております。  先ほど西島先生がおっしゃったように標準化がもっと進んで、業界もこれに依拠しよ うと思える標準のマスターがあれば、それでやると思うんです。例えば診療報酬ですと 制度が変わって、それがちゃんとマスターに反映されて、そのマスターをみんなが使っ てやっていくと品質も高まるし、いいと思うんですが、なかなかそういうタイミングに なってないんですね。今回の中でIT化を意識した諸制度の運用というか、それを議論 していただくと産業界は助かると思うんです。産業界も標準化は賛成で、自らもマス ターの開発とか標準規格の開発をやってるんですが、それとは別のところでどたばた劇 が起こってしまうところがなんとかならないか。  介護保険が導入されましたが、あれは当初からIT化を目指したものだったんです ね。理想的に言えば、我々メーカーがシステムを作る前に介護報酬のマスターがリリー スされていて、それに基づいて作ればよかったんですが、あれも同時並行開発なんです ね。システム開発とマスターが同時並行開発で、結局は自社責任で先にやっておくしか ないという状況が残念ながら昨年は介護ですら生まれてしまいまして、そこをなんとか したい。  資料4にレセ電算と書いてありますが、これもパイロットスタディから今年で10周年 を迎えるんですかね。これの進まない原因をこの場で述べることは出来ませんが、これ も分析すべきことであって、せっかくいいことをやったのに、なぜこんなに普及しない のか。これもIT化を意識した制度になってなかったことが一つの原因だろうと思うの で、ぜひここをなんとかしなくてはいけない。下手したらアメリカのHIPAAに抜か れちゃいますよね。ここをなんとかしたいと思ってますが、基本はそこだと思うんで す。  診療報酬の体系の標準化もありますし、コンピュータ処理に向くようにする話もあり ますし、報酬請求にはあらわれない診療行為とかいろんなもののコードの標準化とか、 その間の変換とか、いろんなことが課題になっております。補正予算とかいろんなもの で誘い水をつけて、いっときはバッと開発するのかもしれませんけど、継続的に開発が 進むようにするには基盤の標準化に金をかけたほうが業界にとってもいいんじゃないか なと個人的には思ってるんですけどね。業界の反対もあるかもしれませんが。以上で す。 【開原座長】  ありがとうございました。  いま介護保険の話が出ましたが、前の報告書の時には介護がこういうふうになるとは 夢にも思わなかったもんですから、そんなことは一言も触れてないわけです。藤本さん がおっしゃるように、介護の情報化というのも場合によると医療保険よりも先をいくか もしれないような感じなんですが、そのこともこの報告書で多少は触れてもよろしいん ですかね。事務局としてはいかがでしょうか。 【推進室長】  とりあえずは保健医療における情報システムというのが私どもに課せられたテーマで すので、そこから少し外れはするんですが、局長が申しましたように連携というのが大 変大事でございますので、それに触れていただくことは構わないと思います。 【開原座長】  産業界からもう一方いらっしゃるので、細羽委員どうぞ。 【細羽委員】  日本画像医療システム工業会の細羽でございます。私どもは画像 情報システムに取り組んでおります。また画像診断機器の工業会でもあります。様々な メーカーの機器が病院に入っている中で、機器をつなぐ情報ネットワークを作るには、 まず標準化が要求されます。そこで必然的に以前から標準化に取り組んでまいりまし た。アメリカでDICOMという規格が出てきまして、それを積極的に取り入れる方向で進 んでおります。  情報化の目的の一つに電子的に保存をすることがあります。画像医療システムの場合 はフィルムに出力して、フィルムによる診断が行われます。このフィルムが大量に発生 するようなことがないような環境を作ることをめざして、電子保存に取り組んでまいり ました。平成11年4月に電子保存の新基準が出ましたが、その前の基準が平成6年に出 ておりまして、それに基づく共通規格で電子保存装置を作ってきました。そこから数年 たっており、さらに平成11年には新しい基準が出て、自由に電子保存ができるようにな ったわけですが、実際に市場において十分普及していないという現状があります。これ は一つには病院の運用で自由にできますよ、自己責任やれますよ、ということで電子保 存への対応がずいぶん拡張されたにもかかわらず医療機関においては自己責任で運用で きる自信がなかなか湧いてこないことが原因ではないかと思われます。文化の問題かも 知れません。一方産業界の側もそれに見合う技術的なしっかりしたものがまだ出せてな いということもあります。  このあたりの標準化に今後も取り組んでいきたいと思いますが、実際に標準化をして いくということになりますとどうしても手間と時間がかかります。規格を作って、公表 して、実証してみて、動くかどうかパフォーマンスの評価もやって、やっと出来上がっ たところで、国際的なハーモナイゼーションもやらなくてはいけなくなり、さらに時間 がかかります。そうこうしているうちに4、5年たってしまうんですね。こうった状況 を実際に経験しております。ドッグイヤーといわれているIT時代にそんなスピードで やっていては追いつかないと感じております。そこで、ぜひ標準化の事業を予算化して いただいて、速いスピードで進められるような形にもっていく必要があると思います。 むろん産業界としましては、予算化の有無に関わらず、標準化は進めてまいります。 【開原座長】  ありがとうございました。  それでは石川委員にお願いしたいんですが、私も前の報告書を読んでみまして、患者 さん側の視点が足りなかったなという感じがしております。石川委員は患者さんを代表 しておられるわけではないんですが、医療界とちょっと離れた立場からこういう問題に ついてお考えのところをお聞かせいただけるとありがたいということで委員をお願いし たのではないかと思っております。ご自由にで結構ですが、ご発言いただければと思い ます。 【石川委員】  ちょっと忙しくしていた時にこのお話をいただきまして、あまり考えもせずに引き受 けてしまいまして、重い役割を引き受けてしまったのだなと後悔しております。医療 サービスの受け手の立場からしますと、技術的に高い医療を安全に速やかに公平に受け られるというのは望んでることですが、そのためにはデータベースが必要です。膨大で 詳細なデータベースが標準化されて構築されて、医療関係者が速やかにアクセスでき る、あるいは本人も場合によってはその一部にアクセスできるということは基本的に望 ましいことだと考えております。  そのためにはプライバシーの問題とか、情報がリークされることに伴って起きてくる 不利益といった問題に対して、どういうふうにきちんとセキュリティ保護をしていくの かということについて万全にも万全な対策をやっていかないと社会的な支持が得られな いのではないかと思います。特に遺伝子解析といったことに関しては人々は非常に恐怖 心をもってると思いますので、そのあたりの点については私も関心をもっております。  こういう委員会での議論の内容も、なんらかの形でアクセシブルにする必要があると 思います。オーディエンスがいて、パブリックな場所で議論をし、それに対して社会的 な様々な立場からの声が入ってくるような形での議論ができればいいのではないかと考 えております。 【開原座長】  ありがとうございました。今の公開という話については、昔ですとこういう委員会が ある時は必ずこの委員会は公開しましょうかどうしましょうかということを委員の方々 にお諮りしてということだったと思いますが、これからの時代はそういうことをお諮り する必要もなく、それは当然のことだということなのではないかと思います。 【石川委員】  インターネット中継をやってもいいのではないかと思います。昔であればパリのカフ ェにはパリにいる人しか行けませんでした。同じ公共性でも地理的な制約があったと思 うんですが、インターネット時代には地理的制約のない電子公共圏みたいなものを考え てもいいのではないかと思います。 【開原座長】  今日も皆様に特にお諮りすることなく最初からこの委員会は公開ということで、たく さん傍聴の方に来ていただいて大変ありがたいと思っておりますが、それだけでなく て、ここの議論の結果は厚生労働省のホームページかなんかで公開されるのではないか と思うんですが、そのへんのところは何かお考えが事務局としておありなんですか。 【推進室長】  基本的に公開でございますので、隠すものは何もないんですが、インターネットでリ アルタイムでというところはまだ対応ができておりませんで、今後の宿題にさせていた だきたいと思います。 【開原座長】  議事録もなんらかの形でインターネットの上に出るんだろうと思いますので、石川委 員のおっしゃったように一般からのご意見が出てくることもあるのかもしれないと思っ ております。  最後になりましたが、樋口先生にお願いしたいと思います。これまでの私の経験です と、法学部の先生は最後に全部をまとめてくださるという役割を担ってくださるんです ね。今日はまとめる必要はないんですが、これまでの議論をお聞きになって何かご発言 いただければと思います。 【樋口委員】  法学部の先生にもいろいろいるということを了解していただきたいと思いますが、私 は今日のお話を伺って、非常に大きな話なんだなということで、どれだけの役割を果た せるか疑問のところがあります。何年か前に遠隔医療について法的な視点から見るとど ういうことなのかということについて、あまり法律学者はやっておりませんので、意見 を求められたことがあります。私は大学ではアメリカの法律を教えてるもんですから、 わからないながらもやってるんですが、HIPAAというアメリカの医療情報に関する セキュリティとか標準化とかプライバシー保護に関するルールが初めてできて、しかし 政権交代もあったので、それがそのまま発効するのかどうか、わけがわからない状況に なってるようです。  一方、日本でも個人情報に関する法律が上程されて、この国会では通らないと新聞に は書いてありますが、どうなるか私はよくわかりません。医療情報に関して日米の研究 者で、これは法律学者が多いんですが、医師の資格をもった人も入っていて、そういう 研究グループを立ち上げて、4月から始まるりますので、こういう機会を与えていただ いたことは私個人にとっても非常にありがたい。アメリカでもこういう問題についての グランドデザインというのは国レベルではできておりませんので、競争でいいものを作 っていこうという話になればいいと思うんです。  そこで感想2点なんですが、中間報告を読んで、一番初めは、なぜ情報化なのかとい う話がある。一番最後にまとめてあるように、質の確保とか向上という話があり、効率 性を高めるんだという話があり、公平公正さを確保し、さらに医療技術の進歩を図ると いうので、これは非常にバラ色なんですね。バラ色であることはいいんですが、この4 つの目標を同時に同じ方向で実現することができるのかというと、素人考えでは、そう 簡単なものではなくて、こっちをとるとこっちがへこむみたいな話があるんだろうと思 うんですね。それをどうやって調整するのかというところが今後とも重要な問題になる んだろうと思います。  もう一つは、情報化とは何かというのが私のような素人には本当はよくわかってなく て、日本社会全体が暗いのかどうかよくわかりませんが、私の周りがちょっと暗いもの ですから、明るい話がほしいと思うんですね。情報化を推進するということは一方では まさにグランドデサインを語るということで、夢を語ってほしい。患者でなくても国民 にとって医療の情報化が推進されるとこんなふうにいい社会になるんです、あなたにと ってもこういうことが実現できるんですよということを具体例を含めて語る。その上 で、井上委員がおっしゃったように光と影があって、さっきの4つの目標を同時に追求 することは難しいのと同じように、情報化にあたってはリスクがあるし障害もあるとい うことを示す。  それはどういうものなんだろうか。すべてを予測することはできないと思うんです が、すでに現状においてこういう障害があって、日本の社会ではこういう夢がなかなか 実現できないんですよということが産業界の方であれ行政に携わる方であれ十分わかっ てるところもあるわけです。書きにくい部分も含めて客観的に書いて、それはどういう ものであるのかということをわかりやすく明らかにできるようなグランドデザインにな ればいいのかなと感じております。 【開原座長】  ありがとうございました。  ひとわたりご意見を伺いましたが、中村審議官がいらっしゃいました。 【審議官】  医政局を担当しております審議官の中村でございます。アメリカとの協議がございま して外務省に行っておりまして、遅れて失礼いたしました。どうぞよろしくお願いいた します。 【開原座長】  あとはご自由にご発言いただきたいと思います。 【大山委員】  呼び出しがかかってしまったので、先にもう一つだけ言わせていただいて失礼させて いただきます。申し訳ございません。  今回の報告書を書くにあたって、IT戦略本部、その前の高度情報通信社会推進本部 の時もそうなんですが、官民の役割分担と、提供者側の医療界のほうの役割分担をはっ きりと示す必要があるのではないか。情報化というのは基本的には、推進する基本戦略 の中にも書いてあるとおり、民間のイニシアティブを発揮していただいて、情報化は民 間主導で行い、国は環境整備を行う。  情報化の将来像として、保健医療分野においても情報化された世界が、先ほどのお話 のようにバラ色という言い方が非常に効果的で、社会全体の状況から見てもそれが方向 性として合ってるとなれば、その時にはそういう世界を作り上げるための…。情報シス テムそのものが生命体と同じように環境に適応して発展していきますから、それが環境 を変えていく。寒ければ温かくしなければいけない、水をやるとか日に当てるとか様々 な環境整備になりますけど、こういう環境に合わせるような話がある。これは国の役割 といわれていて、具体的には規制緩和とか制度の見直し、法律の改定、必要な法律の新 たな策定、この4つが通常いわれてる。このへんのところを今回はっきり議論してみる 必要があるのかなという気がいたします。  もう一つ重要な視点として、情報化が今の医療の質を担保したとして、コストアップ だと思うのか、あるいはコストダウンだと思うのか、これは非常に大きなことだと思う んですね。コストアップだと思うのなら最初から費用が余計必要なんだということを明 確に言うべきだと思うんですね。それがいつもうやむやになっていて、情報化によって 質を向上するんだから当然それはコストアップですよという人もいるし、情報化は民間 がやってるようにコストダウンのためにやるんですよという人もいるし、常に意識が統 一されていない。全部がコストアップ、コストダウンということにはならなくて、この 部分についてはアップで、こっちはダウンというふうにきれいに整理してやるべきだろ う。それは国がやるべきことなのか、あるいは国が環境を望ましいと思う方向へもって いくためには何をすべきかというのは次の提言になるんじゃないかという気がします。  病院におけるサプライマネジメントとか経営のビジネスマネジメントの観点からペー パレスというのがどんどん進んでいて、一方、政府でも電子政府というのを作ろうとし てる。この流れから見ると医療機関の情報化というのは一つの流れであることは疑いの 余地はないと思うんです。ペーパレス、フィルムレスという言葉が従来から言われてま すが、ペーパーやフィルムを使うかということと情報化というのは二者択一でどっちか を選ぶのではなくて、オプションとして常に両方を選べるような環境にしておく。どっ ちかを推進するというのではなくて、環境としては最適なほうを使えるようにしておく のが本来の姿ではないかと思っています。  Eジャパン戦略の中でも電子政府は2003年において紙情報と電子情報を同等に扱える ような姿を作れということが書いてありますが、あれはそのへんのことを意識して文章 として入れたものです。これは厚生労働省だけの問題ではないとは思いますが、紙とフ ィルムの利便性と同時に、それにかかる費用、特に管理の費用のことを考えて、民間の 病院あるいは医療機関が自ら判断をしていけるようなかっこうにもっていく。最適化で きるような環境にもっていくのが一番いいのではないか。ただ、環境整備としては、4 月1日からの電子証明にしても、今の原本制の議論にしても、すべてペーパレス、フィ ルムレスに進むための手段として作られているということだと思います。したがって、 これを明確に示す必要がそろそろあるのではないかという気がします。  最後に、インターネットを使った情報システムの広域における、あるいは国際間も含 めたグローバルな世界での情報化という観点から見れば、個人の認証あるいは本人確認 という流れもありますが、特に電子商取引とは違うところとしては、資格認証というの があります。医師、看護婦、薬剤師など法的な資格として必要なものがありますが、こ ういったものは基盤整備として必要なものだと思います。  先ほどの資料の中に認証局の話がプライバシー保護という観点で書かれてるんです が、それだけではなくて、いま申し上げたペーパレス、フィルムレスを含めるすべての 情報化のための基盤であって、情報化が望むものは質の向上と同時に安全性という観点 が出てくる、それからコントロール権の話が出てくる、これはプライバシーの観点もあ りますが、こういった様々なものがある。このへんのところが前の中間報告にはなかっ たので、これから少し入れたらよいのではないかという気がしまして、私の意見として 申し上げます。 【開原座長】  参考になる点をいくつかお聞かせいただいたので、そのへんは後で議論の中心になろ うかと思います。  ひとわたりご意見を伺ったところで、補足的にご意見をいただければと思いますが、 どなたかございますでしょうか。  よろしいでしょうか。追加的なご発言がなければ、この検討会の今後の進め方につい てお諮りさせていただきたいと思います。先ほど谷口室長からお話がございましたよう に、できれば7月ぐらいまでに骨子だけはまとめたいということでしたので、そうなる と残るところは3回ぐらいというのが先ほど資料5で示されたところですが、そうしま すと問題を煮詰めながらやっていかなければならないことになるわけです。  具体的なイメージを先に描いておいたほうが議論がしやすいのではないかという気が するんですが、基本的には平成6年7月の中間報告がありますので、これの改訂版を作 るという感じかなというのが私の具体的なイメージです。改訂版を作るといってもこれ にとらわれる必要はなくて、中身は全面的に書き換えてしまってもいいとは思います が、せっかく基礎がありますので、どこが足りなかったのか、どこが今の時代は変わっ たのかという視点で考えていくというのも一つの方法かと思っております。そういう意 味で、形式的な骨格としては、厚さが何十センチもあるような報告書ではなくて、イ メージとしてはこんなものが内容を新たにして出てくればいいのかなという感じがして おります。  皆さんのイメージもそんなところでしょうか。だいたいイメージが一致しているとい うことであれば、谷口室長からお示しいただいたことを頭に置きながら、何が課題であ ったか、何が問題点として残っているのか、そういうことを考えていくと整理がしやす いかなという感じがいたします。今日いろいろご意見がありましたような、国は何をや るのか、民間は何をやるのか、医療機関は何をやるのか、産業界は何をやるのかという 役割分担をよく考えながら議論を進めていくことが必要かという感じがいたします。  今後の進め方とか今後の作業のイメージについて何かご意見はございますか。 【藤本委員】  グランドデザインというキーワードがありますが、前回の中間報告もグランドデザイ ンということを意識されてたんですか。役割分担がグランドなんですか。 【開原座長】  21世紀というのが最後のほうに出てくるんですが、そこで将来の姿を思い描いてるん ですね。グランドデザインというほど大げさではなかったんでしょうけど、将来の姿を 多少はイメージしてると思うんですね。グランドデザインにはいろんな意味があるかと 思いますが、先ほど樋口先生がおっしゃったような実現性のある夢を描いてみるという 意味でのグランドデザインもあろうかと思います。そうではなくて、もう少し地に足の ついたような、いま何をやらなくてはいけないのかという意味でのデザインと、その両 面があろうかと思います。グランドデザインというのはそんな解釈でよろしいんです か。 【推進室長】  グランドデザインというのはわかったようでわからないようなイメージを皆さんお持 ちになると思いますが、私どもの感覚では、平成6年の中間報告の近未来の医療情報シ ステムというものが当時のグランドデザインであったと理解しております。そのものに つきまして、今の時点で5年後を見据えたらどうなるかということをご検討いただけれ ばいいのではないかというのが事務局の今の時点でのイメージでございます。先生方が そうじゃないということであれば修正させていただきたいと存じますが、それにご賛同 いただけるのであれば、そういうものとして議論を進めていただければ事務局としては ありがたいということでございます。 【開原座長】  そういうことだそうですが、今後の作業の進め方についてご発言があればお願いした いと思います。 【井上委員】  先ほどこの会議はオープンだという話がありましたが、報告書も国民にオープンにす るわけですね。国民は医療については関心があるしITにも関心があって、5年後はど ういうふうになるのかということについてはそれぞれの思いがあると思うんですが、そ ういうことも意識して、国民にわかりやすい形の報告にするのか。それとも根拠とか データを重んじて、数字をもう少し入れて、こういうことをやるためにはこのくらいの お金が必要だという形にしていくのか。そういうことはどういうふうに考えていったら いいんでしょうか。 【推進室長】  内容が内容でございますので、かなり専門的なご意見の中でわかりにくい部分も出て くることはやむを得ないとは思いますが、基本的には国民の皆様方にお示しするものだ という理解をいたしておりまして、できるかできないかは別としても、5年後にこれだ けの努力目標を何%ぐらいにしようとか、そういう目に見えるものとしてできるのであ れば、そこまで書いていただけないだろうかと思っております。結論としては、わかり やすいものにしないといけないのではないかと考えております。 【開原座長】  ほかに特にご意見がなければ、次回は4月26日の木曜日、午後4時から6時、今日と 同じ時間帯ということでお願いできればと思います。  それでは、以上をもちまして第1回の保健医療情報システム検討会を終了させていた だきます。どうもありがとうございました。 +---------------------------------+ | 照会先:医政局研究開発振興課 | |        医療技術情報推進室| | 担当 :武末、植田 | | 内線 :2589 | +---------------------------------+