01/03/23 第1回毒性・残留農薬部会合同部会議事録 平成13年度第1回毒性部会・残留農薬部会合同部会議事録 ・日時及び開催場所  平成13年3月23日(金) 9:35〜10:35  厚生労働省 国際ビル共用会議室 ・出席委員(五十音順)  井上 達 江崎 孝三郎 岡田 齋夫 加藤 保博  香山 不二雄 刈屋 明 黒川 雄二 鈴木 勝士  高仲 正 津金 昌一郎 豊田 正武 長尾 美奈子  中澤 裕之 成田 弘子 廣瀬 雅雄 三森 国敏  山添 康 ・欠席委員  林 眞 福島 昭治 ・行政機関側出席者  尾嵜 新平 (医薬局食品保健部長)  石井 甲一 (医薬局食品保健部基準課長)  坂本 純  (医薬局食品保健部基準課 課長補佐)  江原 輝喜 (医薬局食品保健部基準課 課長補佐)  井上 陽一郎(医薬局食品保健部基準課 専門官) ・備考  本会議は公開で開催された。 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会 毒性部会・残留農薬部会合同部会議事次第 日 時 平成13年3月23日(金) 9:35〜10:35  場 所 厚生労働省 国際ビル共用会議室 1. 開会及び配付資料の確認 2. 食品保健部長挨拶 3. 審  議   (1)残留農薬基準の設定について   (2)その他 4.閉  会 ○石井基準課長  おはようございます。それでは、定刻を過ぎましたので、ただいまから薬事・食品衛 生審議会食品衛生分科会毒性部会と残留農薬部会の合同部会を開催させていただきます。  本日は、御多忙のところ御参集いただき厚く御礼申し上げます。  本日は、毒性部会の委員12名中10名、残留農薬部会の委員10名中10名御出席というこ とで過半数に達しておりますので、本日の合同部会が成立いたしておりますことをまず 御報告申し上げます。  新しく食品衛生分科会となりましてから初めての合同部会ということになります。最 初に、食品保健部長からごあいさつの予定でございましたけれども、ちょっと遅れてお りますので、また後ほど、御挨拶をさせていただきます。  それでは、開催させていただきますが、座長を残留農薬部会長である高仲先生にお願 いをしたいと思います。今後の御審議よろしくお願い申し上げたいと思います。 ○高仲座長  おはようございます。高仲でございます。今日の司会を仰せつかりましたので、よろ しくお願いいたします。  では、まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。 ○事務局  それでは、配付資料の御確認をさせていただきます。  本日配付させていただいております資料につきましては、「薬事・食品衛生審議会食 品衛生分科会毒性部会・残留農薬部会合同部会資料一覧」というものがございます。そ こにあります資料ナンバーに沿って御確認させていただきます。  資料No.1といたしまして、本日の議事次第がございます。  資料No.2といたしまして、「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性部会、残留農 薬部会委員名簿」がございます。  資料No.3といたしまして、「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会残留農薬部会残留 農薬調査会及び残留農薬暴露評価調査会報告」というものがございます。大部の資料で ございます。  資料No.4といたしまして、「残留農薬基準設定における暴露評価について」という1 枚両面コピーのものがございます。  資料No.5といたしまして、「残留農薬基準設定における暴露評価の精密化に関する意 見具申」。本審議会の前身の食品衛生調査会から意見具申したものでございます。  以上、資料の欠落はございませんでしょうか。もし、欠落がございましたら、事務局 の方に申し出ていただきたいと思います。 ○高仲座長  どうもありがとうございました。いかがでしょうか。  それでは、審議に入ります。  本日は、12農薬について残留基準の新規設定、更に、既に残留基準が告示されており ます9農薬につきまして、その残留基準の改正を審議いただきたいと思います。両方と も既に調査会で御検討いただいておりますので、本日はその結果に基づきまして、これ から合同で審議を進めていきたいと思います。  それでは、まず、その概要につきまして、事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局  では、事務局の方から、今回の審議していただく農薬の概要について説明申し上げた いと思います。 ○高仲座長  座ってください。 ○事務局  失礼いたします。  これまでの審議経過でございますけれども、これは資料No.3の2枚目以降に記載させ ていただいております。かいつまんで申し上げますと、平成12年の10月より、本審議会 の前身でございます食品衛生調査会に設置されました、食品中に残留する農薬の基準設 定に関する分科会にて、残留農薬の安全性評価を、それから、食品中に残留する農薬の 暴露評価に関する分科会にて、残留農薬の摂取量の評価を審議いたしました。  その後、審議会の名称が変わりましたが、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会残留 農薬部会に置かれました調査会にて、これらの審議は継続して平成13年2月より行われ ました。これらの調査会は、残留農薬調査会、残留農薬暴露評価調査会というような名 前となっております。以上をもちましてこれまでの審議経過の説明ということでさせて いただきたいと思います。  今回、部会報告を行う農薬の数でございますが、2枚ほど後にございます目次に従っ て申し上げますと、新規に基準を設定する農薬につきましては、1のアセキノシルから1 2のプロシミドンまで12農薬、これが新規に残留農薬基準を設定する農薬として、今日報 告させていただくものでございます。  それから、今般基準を見直す農薬につきましては、全て平成5年3月までに残留農薬 基準が設定されており、先ほど資料No.5で紹介いたしました残留農薬の暴露評価の精密 化に関する意見具申に従って、定期的に見直すよう求められていたもので、調査会では 新たに9農薬について、残留農薬基準を見直す作業が完了いたしましたので、本日報告 をさせていただきたいと考えております。  新規に残留農薬基準を設定する農薬につきましては、全て厚生大臣から本審議会の前 身でございます食品衛生調査会に諮問されているものでございます。 目次にあります10番のフィプロニルという農薬については、平成9年に諮問され審議さ れております。また、トリアゾホスとビオレスメトリンの2つの農薬につきましては、 平成10年に諮問された農薬です。これらの農薬につきましては今回、審議に十分な資料 がそろい、合同部会に御報告ができるということで本日御報告させていただくものでご ざいます。その他の9農薬については、平成12年9月26日に諮問いたしております。  一方、基準を見直した農薬でございますけれども、これにつきましては、平成11年に 基準値の見直しが諮問された農薬が2農薬、平成12年9月に基準値見直しが諮問された 農薬が7農薬、都合9農薬につきまして本日報告させていただこうと考えております。  これらの農薬の登録保留基準、国際基準との関係でございますけれども、新規に基準 を設定する農薬につきましては、プロシミドンという農薬については、国際基準と登録 保留基準が両方とも存在いたします。  それから、アセキノシル、インダノファン、シメトリン、スピノサド、ハロスルフロ ンメチル、ピラフルフェンエチル、ピリメタニル、フィプロニル、フェンヘキサミドの 9農薬につきましては、国際基準はないものの環境大臣が設定する登録保留基準が存在 するものでございます。  それから、ビオレスメトリンとトリアゾホスにつきましては、日本国内の登録はござ いませんが、国際基準が存在するものでございます。以上を持ちまして報告させていた だきます。  以上、本日御審議をお願いする農薬について概略を述べさせていただきました。 ○高仲座長  どうもありがとうございました。  それでは、ただいまのお話にございました農薬につきまして、逐次審議を進めていき たいと思います。繰り返しますが、新たに基準を設定する12農薬と、それから、基準の 見直し9農薬につきまして、その資料がお手元の青いファイルにとじられております。 これの座長をなさいました井上先生及び豊田先生からおのおのの分科会、今は調査会と 申しておりますが、そこでの審議結果について御説明をいただきたいと思います。  では、まず、初めに、残留農薬の安全性評価を行った残留農薬調査会長の井上先生か ら、その審議経過の結果をお話しいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○井上委員  前分科会、現在の調査会でありますけれども、調査会のメンバーの方々の御協力を得 まして、基準の見直しを行う9農薬、それから、基準の設定に関する12農薬の検討をい たしたわけですけれども、その中で毒性学的に重要と思われる薬剤について幾つか取り 上げて御説明をいたそうと思います。 今、お話のあったブルーのファイル(資料No.3)をめくっていただくわけでございます が、この報告書の79ページを開けていただきますと、ピラフルフェンエチルがございま す。この剤につきましては、マウスを用いた発がん性試験で肝の細胞腺腫が認められる ということがわかっております。その機序並びに根拠等を検討いたしますと、これは、 いわゆるエピジェネティック・カルシノジェネシス(epigenetic carcinogenesis)・トゥ モリジェネシス( tumorigenesis)によるもの、非遺伝毒性メカニズムという表現をして おりますけれども、遺伝子の発現を変える、すなわち直接この剤によって傷がつくので はないという発現のメカニズムがわかっております。  薬物代謝酵素の活性試験を行いますと、EROD、PROD、AMND、全部挙げる必要はないと 思いますけれども、フェノバールという物質がございますが、ある意味で典型的な細胞 の増殖等を不活化して、エピジェネティック・カルシノジェネシスを引き起こす物質の 代表的なものでありますが、そういったものではないということ。  それから、肝の組織のPCNA、これは細胞の増殖を免疫染色でもって検知するものであ りますが、こういった方法を取りまして検索されております。  これを調べますと本剤の反復投与によって過酸化脂質が増加すること、β−酸化が進 行して、8−ハイドロキシデオキシグアノシン(8-OH-dG)というDNAとのアダクツ(a dducts)形成が見られまして、ポルフィリンが増加するということがわかっております。 こういった細胞毒性によって細胞が死滅しますので、また、それに対応して再生が起こ るといったことが繰り返されることが、このエピジェネティック・カルシノジェネシス のメカニズムであります。そういった結果によるものであるので、この8−ハイドロキ シデオキシグアノシンのアダクツ形成に伴うこういった機構については、閾値が存在す ることもわかっておりますし、遺伝毒性のある発がん性の物質とは区別して、ここでは その閾値の値を基準に見ていけばよろしいだろうという考え方で整理いたしました。  それから、ピリメタニルという物質が92ページにございますけれども、これの93ペー ジ辺りが安全性のデータになっております。構造が左に出ておりますけれども、これは ラットの反復投与、発がん性の両方をにらんだ併用試験で、甲状腺のろ胞腺腫の発生頻 度の増加が観察されております。その機序及び根拠を検討いたしましたところ、非遺伝 毒性メカニズム、先ほど申しましたようなエピジェネティック・カルシノジェネシスに よるものであるということが理解されました。すなわち、甲状腺機能検査をいたします と、最高用量である5,000ppm投与の群でのみ観察されるという結果であり、直接の甲状 腺に対する障害性でなく、例えば肝臓の代謝の更新によるものであるというようなこと がわかりました。  次に、甲状腺の2週間の反復投与試験が行われております。これを5,000ppm投与した 結果並びにその回復後を見ております。回復試験を見ますと、こうした甲状腺の機能の 変化は可逆的であるということが確かめられました。甲状腺機能試験の結果については、 肝のミクロソーム、UDP−GT酵素活性の増加が観察されました。  このフィードバックに伴ってTSHという、甲状腺の機能を刺激するホルモンが亢進 するということで、先ほど申しましたように、こうした肝機能亢進によってこの甲状腺 機能の亢進が起こるということもわかりました。  なお、これについては、変異原性の試験の結果すべて陰性であるということもわかり ましたので、遺伝子に直接傷をつけて増殖性を持ってくるというような類の物質のよう な、閾値が存在しないという危惧はないということが経験的にわかっておりますので、 これについてもよろしかろうというような考え方で理解いたしました。  3番目は、103ページになりますが、フィプロニルという物質であります。このものの 主な所見は、先ほどもありましたが、ラットで慢性毒性と発がん性の双方を同時に見る 併合試験を行っておりまして、この試験で、やはり甲状腺のろ胞腺腫並びにろ胞の腺腫 と違って悪性のもの、ろ胞のがん、その両方が観察されるという結果が資料として出さ れました。  その機序を資料に沿って検討いたしました。その結果につきましても、先ほどと同じ ではありませんけれども、エピジェネティックなメカニズムによるものである。つまり、 遺伝子に直接傷をつけて増殖性を惹起して、このような腫瘍をつくるタイプのものでは ないということがわかりました。すなわち、甲状腺刺激ホルモン、先ほどもTSHが増 加しておりましたけれども、この反復投与試験の結果を見ますと、T3という甲状腺ホ ルモンの前駆体がありますが、このT3、T4が下がる。それに対応するような形でT SH、甲状腺刺激ホルモンが上がるというようなフィードバックメカニズムが観察され ております。  他方、変異原性は認められておりません。  このものにつきましては、光分解物である脱スルフェニル体につきましても毒性の評 価を検討いたしました。それぞれの無毒性量は0.02mg/kg/day及び0.025mg/kg/dayであり まして、本剤の方が毒性は高いが、両物質の残留量を合算してこの農薬については評価 することで、安全性を担保することといたしました。  フィプロニルはそういうことでありますが、次に、134ページ、後ろの方になりますが 開けていただきますと、プロシミドンという物質があります。これについては、ちょっ と変わった試験結果でありますけれども、ラットのやはり慢性毒性、発がん性の併合試 験を行いましたところ、精巣の間細胞腫が認められました。  この機序、それから、その根拠となる考え方を整理いたしますと、これについても、 やはり遺伝子障害性の発がんメカニズムではないと。直接傷をつけるものではなくて、 エピジェネティック・カルシノジェネシスであるというふうな理解がなされました。す なわち、前立腺の細胞質のアンドロジェン受容体に対する親和性を見る試験を行いまし た。それから、本薬のホルモン作用に対するラット・マウス間の種差などについても検 討を行いました。このプロシミドンというのは、抗アンドロジェン作用があることがわ かっておりまして、視床下部または脳下垂体におけるテストステロンに対する負のフ ィードバック系を遮断するというようなことが起こりますので、黄体形成ホルモンの分 泌が促進されまして、血清中のテストステロン濃度が増加するというメカニズムになっ ております。精巣間細胞は、この黄体形成ホルモンの刺激に対して反応性を長期に受け る形になりますので、このことによって腫瘍に増殖していくというメカニズムでありま す。  したがって、このようなホルモンメカニズム、フィードバックメカニズムによるもの であり、この剤の遺伝子障害による毒性というふうな考え方をすることはできませんの で、このものの安全性については、こうしたメカニズムの理解を通じてこれでよろしか ろうというような考え方で整理を行ったわけであります。  それで、あと、グルホシネートについては先ほども御説明がありましたように、本薬 と本薬の代謝物があるわけですけれども、この代謝物はNAG、N−アセチルグルホシ ネートと申しまして、その無毒性量がそれぞれ2.1mg/kg/day、それから、4mg/kg/dayと いうことでありまして、本薬の毒性の方が高いということですが、安全性を担保するた めに本剤と代謝物の残留を合算して安全性を担保しようという考え方で整理されたわけ であります。  主なものはそんなところですけれども、事務局よろしいですか。そういうことでござ います。 ○高仲座長  どうもありがとうございました。  このただいま新しく基準を設定する12農薬及び基準見直しの9農薬、都合の21農薬に つきまして、その中から、特に調査会で若干の問題点が指摘されました農薬につきまし て、その試験結果から得られた安全性に対する考え方について井上先生から御説明をい ただきました。どうもありがとうございました。  それでは、次に、残留農薬の摂取量評価を行った残留農薬暴露評価調査会の長でござ います豊田先生より、残留基準値の設定方針及び暴露評価について御説明をお願いいた します。 ○豊田委員  暴露評価の方につきましても、委員会の方でここにおられます加藤先生、刈屋先生も 含めまして検討を行いまして、資料No.3の個別の農薬の後ろの方に基準値案という表が 載っておりますけれども、そこら辺のところを決めてきたわけでございます。  この基準値を決めることにつきまして、前回御説明した際に大分議論になりましたが、 この基準値設定における暴露評価の方法ということにつきまして、大分時間も経ってお りますので、もう一度簡単に御説明させていただきたいと思います。資料No.4でござい ます。この前から引き続きまして、新しい方式で行っているということをもう一度確認 させていただきたいと考えております。  資料No.4の「残留農薬基準設定における暴露評価について」ということで、まず最初 に「基準値案の検討」ということで、まず何を参考にして基準値案をつくるのかという ことでございます。これにつきましては、国際基準のCodexの基準値がある場合、それを 参考にする。それから、環境省の登録保留基準がある場合には、それを参考にする。そ れから、各国別にヨーロッパとかアメリカ、オーストラリア等で各国の基準がある場合 には、それをまた参考にするということでございます。  それから、この評価の方法につきましては、資料No.5が配布されておりますけれども、 先ほど御説明がありましたような「残留農薬基準設定における暴露評価の精密化に関す る意見具申」、これに基づいて暴露評価を行う。要するに、この新しい暴露評価の方法 で行うということでございます。  その中身はどうするかといいますと、資料No.4のところに引き続き書いてございます が、新しい暴露評価の方法としては、第一段階、第二段階で行うということでございま す。まず、最初に、第一段階といたしましては、国民の摂取量を比較するということで 国民平均、幼小児、妊産婦、高齢者について、理論的な最大一日摂取量方式を用いまし て試算される暴露量、TMDI評価と申しますけれども、それをそれぞれ対応する許容 される摂取量、先ほど御紹介がありましたADIと比較するということでございます。 このいずれの場合においても、TMDI評価の方がADIの80%を上回らない場合には、 その前提となる試算に基づきました基準値案を採用するということでございます。  その下に書いてございますように、新規の12農薬のうちの10農薬が、第一段階の要す るにTMDI評価の結果がADIの80%を上回らないものでございます。アセキノシル 等10農薬でございます。それから、見直しの方の9農薬のうちでは、イソプロカルブ等 を含めまして7農薬がTMDI評価で80%を上回らないということでございます。  それから、次に、第二段階といたしまして、日本型の推定一日摂取量方式を用いて試 算された暴露量、EDI試算値を、それぞれ対応する許容されるADIと比較した場合 に、ADIに対する比が80%を上回らない場合、この試算の前提となった基準値案を採 用するということでございまして、この場合に、新規の12農薬のうちトリアゾホスとフ ィプロニルは、この手法で行ったものでございます。それから、見直しの方では、9農 薬のうちの2農薬、シロマジンとフルバリネートについて第二段階でEDI試算したも のでございます。  このEDI試算はどういうふうに行っているのかということが、その下の方に書いて ございます。この試算に用いるデータの範囲といたしまして、どのようなものを使うか ということですが、そのカラムのところに書いてございますように、まず、登録保留基 準設定の際になされた国内の作物残留試験の結果がございます。それから、裏側にまい りまして、Codexの基準値を基準設定の際に参考といたしました場合は、JMPRの方で評価 されております作物残留試験データ等がございます、それから、外国基準の場合では、 当該国において行われました作物残留試験データがございまして、これら三者を勘案い たしましてこの試算を行ったということでございます。  次に、そのデータの取扱いをどうするかということが書いてございますけれども、E DI試算に用いる作物残留試験の条件といたしましては、原則として、GAP(Good ag ricultural practice)に従って定められた範囲で最も農薬を多量に用いて、更に、最終 使用から収穫期までの期間を最短とした場合の作物残留試験を用いるという、両者を含 めた最大使用条件下での作物残留試験のデータを用いるということでございます。  それから、2番目に、いろいろデータがあった場合に、その代表値はどうして求める のかということでございますけれども、原則として各作物残留試験から得られる残留値 の平均値を用いる。それから、JMPRにおいてはSTMRと言われる、いわゆる管理試験の残 留中央値が評価されている場合には、その値を用いる。それから、また、残留の分布が いろいろなケースがありますので、適切であると考える場合には、平均値以外の代表値、 中央値を用いることも個々のケースごとにはあり得るということでございます。  それから、次に、必要な試験数といたしましては、当面の間、2試験以上とするとい うことにしております。  それから、食品摂取量の取扱いでございますけれども、現在では、とりあえず平成7 年から9年の3年間の国民栄養調査の結果から求めました食品摂取量を用いて暴露評価 を行うということにしております。ちょうど今年は3年目に当たりますので、平成7年 から9年間の値を用いるということでございます。これは、単年度ですとデータ数が少 ない場合がございますので、3年分を平均して用いるということでございます。  このような手法で、基準値の方を決めたわけでございますけれども、そのほかといた しましては、先ほどちょっと議論になった点は、グルホシネートのところでございます が、資料No.3の149ページでございます。ここに先ほど井上先生の方から御紹介がござ いましたように、代謝物としてNAGというものができるということでございまして、1 49ページの植物代謝の最後のところに書いてございますように、いわゆる遺伝子組換え 農産物といった場合には、特に、大豆の場合を見ていただくとわかりますけれども、2 行目のところに主要残留物としては親化合物よりもNAGというものが主に残留すると いうことで、この基準値案のところでもJMPRの評価に従いまして、NAGも含めて基準 値を設けるということでございます。そうしますと、このグルホシネートの場合には、 親化合物、それから、ここに書いてございますMPPAも既に入って測定しているわけでご ざいますが、それと更に、NAGを含めて基準値を設けるということでございます。そ の安全性については、井上先生の方からお話がございましたように、確保されていると いうことでございます。  あと、実際の基準値個別の場合にどうなっているかということは、全部説明すること はできませんので、とりあえず何か代表的なものについて事務局の方から何か御紹介が あればと思います。 ○高仲座長  どうもありがとうございました。  それでは事務局から何か説明をしていただけるものはございますか。 ○事務局  事務局の方から残留農薬基準値について説明させていただきたいと思います。  まず、資料No.3の4ページをごらんいただきますとADIが記載されております。ま た、10ページ、11ページに基準値案がございます。これにつきまして、各農産物につい て基準値案の上限まで、本農薬が残留していると仮定した場合につきましては、先ほど 豊田先生に説明いただきました資料No.4の第一段階に当たる試算で、かなり高く残留し ているものと見積もった場合になりますが、それでもADIの16.1%以下の摂取である ということで問題がないということで説明させていただいておるというようなことでご ざいます。  これにつきまして、1農薬ずつ確認させていただきますと、インダノファンにつきま しては、資料No.3の15ページにありますように、ADIに対する比率は17.9%以下であ ると。基準値案につきましては、27ページ以下に記載がございますが、これは米だけに しか適用がないわけでございます。  シメトリンにつきましては、資料31ページにADIに対する比率は2.9%で、これにつ いては、基準値案は37ページ以下にありますように、米についてだけ基準があるという ことで、ほかのものには適用がないということでございます。  以下、スピノサドにつきましては、43ページにありますとおり、ADI比につきまし ては79.2%であるということです。それにつきまして、基準値案の表は51ページにござ いますけれども、これを参照していただきますと、このとおりに基準値案を作りました 場合でも安全レベルの範囲に収まっておるということでございます。  トリアゾホスにつきましては、資料No.3の55ページにありますとおり、ADI比は71. 9%以下。これにつきまして58ページ以下を参照していただきますと、安全レベルの範囲 に収まっているということでございます。  ハロスルフロンメチルにつきましては、63ページにありますとおり、ADIに対する 比率は1.2%とかなり低いレベルで収まっております。これについては、71ページ、72 ページの基準値表にありますとおり基準値案をつけた場合には、ADIに対する比率は 1.2%以下でなっているということでございます。  ビオレスメトリンにつきましては、77ページ、78ページにある基準値案に基づき計算 いたしますとADIに対する比率は48.5%以下であるということでございます。  続きまして、ピラフルフェンエチルにつきましては、82ページにございますとおりA DIに対する比率は1.1%以下。基準値は90ページ以下のとおりであるということでござ います。これにつきましても、安全は担保されておると。  ピリメタニルにつきましては、95ページに評価、それから、101ページ、102ページに 基準値案が載せてございますけれども、基準値案の上限まで農薬は残留して、それを摂 取したとしてもADIに対する比率は14.3%以下であるというふうな評価をいただいて おり、安全レベルの範囲内であると。  フィプロニルにつきましても、豊田先生におっしゃっていただきました第二段階の評 価を適用いたしました。これにつきましては、107ページに評価が書いてございまして、 119ページ、120ページに基準値案が書いてございますけれども、これにつきましてもA DIの77.5%以下ということで、安全レベルの範囲内で収まっていると。  フェンヘキサミドにつきましては、124ページにございますとおり、評価はADIに対 する比率は8.3%以下。基準値につきましては、132ページ、133ページにございますとお り、設定いたしましても8.3%と非常に低いレベルで収まっておるということでございま す。  プロシミドンにつきましては、137ページから138ページにかけまして全体的な評価が 書いてございますが、別添2の143ページ、144ページのとおりの基準値案とした場合の、 ADIに対する比率は75%以下であるということで、これも安全レベルの範囲内に収ま っておるということでございます。  以上、12農薬につきまして新規の基準を設定ということでございます。  そのあと、基準を見直したものにつきまして145ページ以下にございます。イソプロカ ルブにつきましては、145ページの「基準値案」というところに、別添の基準値案のとお りであるということで書いてあります。基準値案につきましては、146ページ、147ペー ジにございますけれども、この基準を設定いたしますと、ADIに対する比率は78.4% 以下に収まっておるということで、これについても安全レベルの範囲内であるというこ とでございます。  グルホシネートは、先ほど豊田先生に御説明をいただきましたけれども、ADIに対 する比率は77%以下。基準値につきましては、代謝物を含めて評価しましても安全性は 担保されていると。164ページ、165ページにあります基準値で問題がないというような 評価を得られております。  シロマジンにつきましては、動物用医薬品の関係もございますけれども、そこでの評 価も併せて申し上げますと、これにつきましては、169ページに総合的な評価が書いてご ざいます。178ページの基準値の表から計算された摂取量、それから、動物用医薬品とし ての摂取量の対ADI比を合算いたしましても76.1足す3.5ということになり、これも安 全レベルの範囲内に収まっておるという評価が得られております。  続きまして、ピラゾキシフェンにつきましては、180ページ、181ページの見開きにあ りますが、これにつきましてもADIの比率はこのような基準値をつけましても41.8% 以下ということで、安全レベルの範囲内に収まっている。  ピリフェノックスにつきましては、184ページ、185ページの基準値をつけましても、A DIに対する比率は8.7%以下というふうな評価を得ております。  フルバリネートにつきましては、先ほど豊田先生に言っていただきました第二段階の 試算を行っておるわけでございますけれども、摂取量のADIに対する比率は187、188 ページの基準値をつけた場合に72.9%以下と評価され、これについても安全レベルの範 囲内に収まっている。  プロパモカルブにつきましても、ADIに対する比率は27%以下ということで、190 ページ、191ページの基準値をつけました場合に安全レベルに収まっておるという評価を いただいております。  プロピコナゾールにつきましては、192ページにあります。これについても193ページ、 194ページの資料にあります基準値をつけましても、ADIに対する比率は43.4%以下に 収まっておりまして、これについても安全レベルは担保されているということでござい ます。  最後、これは見直しの9農薬目でございますが、ベンタゾンにつきましても196ペー ジ、197ページにあります基準値をつけましてもADIに対する比率は4.1%以下という ことで評価されておりまして、各農薬についてADI比80%以下の範囲内に収まってお り安全性が担保されておるというようなことで、本部会に上げさせていただいておると いうようなことでございます。  以上、ちょっと長引きましたけれども、事務局からの安全性についてのコメントをさ せていただきました。 ○高仲座長  どうもありがとうございました。  今回、審議しております21農薬につきましては、既に我が国で農薬取締法に基づく登 録保留基準、または、JMPRによる評価による国際的な基準が既に定められておるもので ございます。いずれにしても、登録保留基準あるいは国際的な基準について全くその対 象になっていないというような農薬は、今回は含まれておりませんでした。そういう点 では、既にこれらの農薬はすべて一度は評価の対象として審議され、評価されているも のでございました。  今までの御説明につきまして、何か御質問あるいは御意見がございましたら、どうぞ。 ○豊田委員  すみませんちょっと追加を事務局の方にお願いしたいんですけれども、フルバリネー ト、187ページの右の一番下のきゅうりの数値が欠けているので、正しい数値を言ってい ただけますか。 ○事務局  すみません。これはすべてエクセルでつくっておりまして、エクセルの表からはみ出 したものの表記が欠けてしまいました。これにつきましては、ソフトをきちんと設定し た上で印刷して報告書といたしたいと思いますので、その辺はきちんと修正した上で報 告とさせていただきます。済みませんでした。 ○高仲座長  どうもありがとうございました。  そのほかに何か御追加、その他ございましょうか。  今回の農薬評価の中で、各調査会が的を絞ったものの一つに、動物での催腫瘍性があ ったように思います。それにつきましては、催腫瘍性の問題では、それが遺伝子に傷を 与えることによって起こるという場合には、閾値を設定することはできないということ が言われております。それに対しまして、それが遺伝子に傷を与えることによって、現 在は変異原性試験を中心に見ておりますが、それ以外の状態で起きてくる腫瘍につきま しては、その腫瘍が発生しない用量、すなわち閾値を設定できるということが世界的な コンセンサスになっております。それに従いまして、この評価の調査会、井上先生から 御説明をいただいたわけでございますが、更にそのほかのことにつきまして、何か御質 問あるいは御指摘がございましたら、どうぞお願いいたします。  それでは、御意見がいただけないようですので、今回のこの分科会報告書をもちまし て合同部会の報告ということにさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございま すでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○高仲座長  どうもありがとうございます。  それでは、現在の報告書をそのまま合同部会の報告書といたしまして、今後の手続に つきましての説明を事務局からお願いいたします。 ○事務局  今、高仲先生からお話がありましたように、基本的にお認めいただいたというような ことで、必要な部分につきましては、先ほど豊田先生からもございましたように、字句 修正等をさせていただいた上で報告とさせていただきたいと思います。  なお、資料No.3の表紙につきましては、宛名が本調査会の部会長あてになっておりま すけれども、これを薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会長あてというようなことにい たしまして、調査会の会長のところを井上先生と豊田先生のお名前が入っているところ でございますけれども、ここに毒性部会長の黒川先生、それから、残留農薬部会長の高 仲先生のお名前を入れさせていただきます。  表題は「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性部会・残留農薬部会合同部会報告 について」ということに改めさせていただきます。  最後、文章につきましては「標記調査会において審議を行った結果を」を「標記部会 において審議を行った結果を」というふうに修正させていただきたいと思います。  なお、本日の部会の結果を受けまして、国際的なお約束でございますWTO通報、そ れから、国内的に国民の皆様から御意見を伺うパブリック・コメントを求めることとい たしまして、その期間が明けた後、食品衛生分科会を開催する予定でございます。分科 会でお認め頂いた後に、具体的に告示になるというような予定で作業を進めさせていた だきたいと考えております。 ○高仲座長  どうもありがとうございました。  それでは、今日の審議事項でございます残留農薬基準の設定についてという項目を終 わらせていただきます。  次に、今後の残留農薬の基準設定につきまして、事務局からの御説明をお願いします。 ○石井基準課長  基準課長でございます。  これまで残留農薬基準につきましては、内部的な目標でございましたが、2000年を目 途に200農薬について基準を策定するということを目標としてまいりました。現在、直近 で214農薬につきまして基準を策定しております。2000年ということでありますと199と いうことになりまして、その後、15品目が追加されましたので、214農薬に基準を策定し ているというのが現状でございます。今、告示待ちになっておりますのが3農薬ござい ます。更に、本日、新規農薬ということで12につきまして御了解をいただいたというこ とでありまして、この手続をこれから進めますと、今、告示できる予定というものにつき ましては、229農薬について基準が策定される見通しがついたということでございます。 これからも、できるだけ迅速に、多くの農薬につきまして基準設定を図るべく努力して いきたいと思いますので、これからも御協力をよろしくお願いしたいと思います。 ○高仲座長  どうもありがとうございました。  今の御提案につきまして、何か御意見がございましたらお願いいたします。ごろ合わ せではないんですが、2000年までに200という掛け声を大分前に聞いたように記憶してお りますが、現実には既に229農薬につきましてその審議が終わっていると、基準の策定が 終わりつつあるということでございまして、相当なスピードで進んでいるように思いま すが、何か御意見ございましたらどうぞ。  それでは、今までのこのペースを2000年以降についても、更に守って残留農薬の基準 設定を進めていっていただきたいというふうに思います。  それでは、これで本日の審議を終わらせていただきますが、終わりに際しまして、石 井課長からあいさつをお願いいたします。 ○石井基準課長  食品保健部長が参りましたので、部長の方からごあいさつをさせていただきます。 ○尾崎食品保健部長  食品保健部長の尾崎でございます。大変遅くなりまして申し訳ございません。  今、高仲先生からお話がございましたように、合同部会の報告書をおまとめいただき まして誠にありがとうございます。また、本当に年度末のお忙しい時期にこういった合 同部会を開催をお願いいたしまして、御出席をいただきまして御礼を申し上げる次第で ございます。  先ほど、基準課長が申し上げましたように、これまでも計画的なと申しますか、新し い残留農薬基準あるいは既に設定されております基準の見直しというものを逐次やって きておるわけでございますが、これからも先ほどの説明のように、計画的に新しい設定 あるいは見直しを着々と進めていきたいと考えておるところでございます。どうか委員 の皆様方には御理解を賜りまして、御審議、御協力をお願い申し上げる次第でございま す。  本当に今日はどうもありがとうございました。 ○高仲座長  どうもありがとうございました。  ほかに事務局から何か連絡事項、その他はございますか。 ○石井基準課長  特にございません。 ○高仲座長  それでは、本日はお忙しいところをどうもありがとうございました。これをもちまし て、今日の合同部会を終わらせていただきます。 照会先  :医薬局食品保健部基準課 荒木       電話(代表)03−5253−1111         (内線)2484