資料2 |
社会保険庁の業務運営効率化・事務合理化について(案) |
1.今後の動向と課題
(的確な適用と保険料収納の確保)
(1) 厳しい経済情勢下において産業構造や雇用形態の変化が進みつつあり、社会保険の適用(対象事業所や被保険者の把握など)や保険料の徴収に関し、処理件数とともに適用漏れや未納・滞納等処理困難なケースが増加してきている。
「的確な適用」と「保険料収納の確保」は保険制度運営の基本であり、効率的で重点的な業務処理体制を整備する必要がある。
(医療保険者機能の強化)
(2) 政府管掌健康保険の保険者として「保険者機能の強化」が要請されている。被保険者の資格確認事務を合理化しつつ、他方でレセプトの内容点検の充実を図るなど、給付の適正化を効率的に進めていく必要がある。
(年金相談の効率的実施と裁定事務の迅速化)
(3) 人口の高齢化・年金受給権者の増加に伴い、年金裁定のほか年金からの所得税の源泉徴収や介護保険料の徴収も含め、処理件数が年々増加している。また、これと並行して、年金の相談件数が急増してきている。
今後、年金個人情報を提供していく体制を整備するとともに、効率的な年金裁定や相談処理を進め、サービスの質の向上を図っていく必要がある。
2.業務運営の効率化・事務の合理化
こうした課題に業務を重点化し対処していくため、
(1) 現行の各種業務の運営方法を効率性の観点からあらためて見直すとともに、情報処理技術の活用、定型的業務のアウトソーシングや一括共同処理などにより徹底した事務の効率化・合理化を図る。
(2) 事務の効率化・合理化を図ることにより、職員を対人サービスの業務(保険料徴収や年金相談など、被保険者・受給者や事業主に説明を行いその理解を得ながら、進めなければならない業務)にできるだけシフトさせ、上記課題に取り組む。
詳細は、次のとおりである。
◎ 今後の課題と効率化・合理化の方策
I 的確な適用と保険料収納の確保 |
経済・雇用の変動に伴い、適用事務(対象事業所・被保険者の把握・標準報酬の決定等)や保険料徴収事務に関し、処理すべき件数や処理困難な事例が増加してきており、これに対応できる効率的な業務運営体制を整備する。 |
●申請届出の簡素・合理化
○ITの活用による効率化
労働保険と合わせてインターネットによる申請・届出を可能とし、事業主の便宜を高めるとともに、届出内容をそのままの形で社会保険オンラインシステムに記録することにより、社会保険事務所での入力事務を省く。(平成15年度実施予定)
(なお、電子申請に先行し、本年6月より、磁気媒体による届出を可能としたところであり、同様の効率化効果を生んでいる。)
○複数事業所の一括適用
●的確な適用
○事業所調査の重点化
○雇用保険担当部局との間で事業所情報を交換することにより、社会保険の未適用事業所及び事業所偽装倒産の把握を容易にするとともに、その解消を推進する。(平成15年度実施予定)
○標準報酬月額等の情報を被保険者本人に通知
●内部事務処理の効率化
○入力業務の外注化(アウトソーシング)
○事務の集約化
●収納確保の推進
○「社会保険・労働保険徴収事務センター(仮称)」の設置
「社会保険・労働保険徴収事務センター(仮称)」を全国の社会保険事務所(312か所)に設置し、両保険の保険料徴収事務を一元的に処理する。(平成15年度実施予定)(別途)
また、納付督励の早期着手など、収納対策を強化する。
○国民年金保険料については、平成14年度から収納事務が市町村から国に移管されたことを契機として、事務執行体制の効率化を図り、収納率向上に努力しているところである。その一環として保険料納付窓口を郵便局、農協を含め全金融機関に拡充したところであるが、新たにコンビニエンスストアにおいても保険料を納付できるようにする。(平成16年度本格実施予定)
○インターネット等を利用した保険料の納付を可能とし、納付形態を多様化することにより、事業主や被保険者の負担軽減と利便性の向上を図るとともに、収納率の向上を図る。(平成16年度実施予定)
II 医療給付の適正化 |
政府管掌健康保険について、保険者機能の強化を図る観点から、被保険者の資格管理事務を合理化した上で、レセプト点検の一層の充実等を図る。 |
●受診時の被保険者資格確認による事務の効率化
●内容点検の推進
(参考)
レセプト点検の効果(平成12年度)
社会保険庁での点検の結果、減額された医療費 | 1,073億円 | ||
うち資格点検によるもの | 822億円 | ||
うち外傷点検によるもの | 125億円 | ||
うち内容点検によるもの | 126億円 | ||
うち縦覧点検によるもの | 46億円 | ||
単月点検によるもの | 80億円 |
●医療費通知の充実
医療費に係る情報の提供を推進するため、医療費通知の拡充を図る(対象月を現行の2か月分から1年分に拡大)。(平成15年度実施予定)
●健康増進事業の推進
生活習慣病のリスクが高い被保険者等に対し、健診結果等の活用により、生活習慣の改善のための指導等、健康増進のための効率的な事業実施方法を検討する。
III 年金相談の効率的実施及び裁定事務の迅速化 |
年金相談件数の急増をはじめとした年金関係業務の増大に対応するため、個人情報の提供体制を整備するとともに、年金裁定・相談処理の効率化、質の向上を図る。
○年金裁定処理件数 156万件(平成元年)→199万件(平成12年)60歳到達者数は、平成20年には現在から45万人増の約225万人と予想 |
●個人情報の提供による年金相談と裁定事務の効率化
社会保険事務所における年金相談に際し、具体的な年金見込額に関し情報提供を行う対象者の範囲を58歳以上から50歳以上に引き下げる。(平成15年度から段階的に実施予定)
年金受給が近づいた58歳到達者に対し、被保険者記録を直接通知する。(平成15年度実施予定)
個人認証に基づき、インターネットを活用した裁定手続きを可能とする。(平成15年度実施予定)
これらの施策により、被保険者サービスを充実するとともに、年金申請前に被保険者記録の整理確認が可能となり、裁定事務の省力化とスピードアップが図られる。また、今後の裁定件数増加に伴う事務の集中を平準化する。
●年金相談事務の多様化
電話相談について社会保険事務所単位から都道府県といった広域単位に相談体制を集約することにより効率化を図る。(平成15年度から順次実施予定)
本人確認手段を講じることにより、個人記録に基づく具体的な年金相談に電話で対応できるようにする。(平成15年度から順次実施予定)
個人認証に基づき、インターネットを通じた照会を可能とし、被保険者記録、年金見込額等の情報を提供できるようにする。(平成16年度実施予定)
これらの施策により、相談を受ける形態を多様化し、相談機会を広げることによりサービスの充実を図るとともに、対面相談の負担軽減を図る。
●年金裁定時の事務の簡素化
年金の受給を間近に控えた者に対し、あらかじめ基本事項を印字した年金裁定請求用紙を本人宛に送付する(ターンアラウンド方式)ことにより、年金請求者の利便性の向上と裁定時の事務の簡素化を図る。(平成17年度以降実施予定)
また、年金裁定事務の効率化を図る観点から、年金裁定を管轄する社会保険事務所のあり方について見直す。
住民基本台帳ネットワークシステムを活用することにより、届書の添付書類のうち住民票等を不要とする。(平成15年度実施予定)