2011年、合併に際し「IT企業は人が資産であり、これからのIT業界は顧客により高い価値を提供できなければならない」という企業理念を再確認しました。
従業員が長時間労働で疲れていて、休みも取りにくい、という状況ではその価値は生まれてこなく「従業員が自分を高めることにより、企業を高める好循環を達成したい」という経営トップの強い思いがあり、従業員が働きやすく、やりがいを感じられる会社を目指すことになりました。
そのために、「長時間労働を抑制し働き方を変革、子育て支援を推進しダイバーシティを進める」という方針を打ち立てました。
まず「残業半減運動」(2012年7〜9月実施)に着手しました。「1〜2割の残業削減は精神論でもできるが、これを一時的なものとしない」と企業として本気で取り組む考えを明確にし、残業半減を目標に掲げました。この運動で採用された各種施策は、現在も継続され、各部門で実施しています。
各部門で実施されている残業半減運動
施策 | 詳細 | 実施部署 (32部門中) | |
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1 | 業務の見直し、負荷分散 | 多忙なプロジェクトへの人員投入(他部署からの移動・応援、協力会社からの増員など)。組織統合による業務の集約/合理化。業務のアウトソースなど | 22 |
2 | リフレッシュデー (ノー残業デー)の推進 | 毎週水曜日+追加実施(例:週2、週3、毎日、月末に追加)。 定時退社促進のために、部長による声かけ、オフィス巡回など。 | 20 |
3 | 日次(朝礼・終礼)/ 週次での確認 | 業務の明確化。(優先順位/無駄の見極め) ・プロジェクト単位の朝礼・終礼で当日の業務を確認 ・朝メール・夜メールで一日の業務確認 ・週次で残業状況を確認し、部内会議で対策検討など | 19 |
4 | フレックスタイム制 裁量労働制の活用 | 繁閑に合わせた時間外労働の削減 ・シフト勤務者のフレックスタイム制適用など | 18 |
5 | 会議の効率化 | 時間帯・開催時間などの効率化 ・会議時間帯のルール設定(17時以降の会議禁止) ・上限時間の設定(最長90分まで、定刻5分前終了)など | 17 |
6 | 直行・直帰の励行 | 顧客訪問・定例化などを朝一/夕方に設定し、移動時間を削減。(主に営業部署、一部の開発部署で実施) | 10 |
残業半減運動における特徴的な施策10
施策 | 詳細 | |
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1 | 1Best運動 | 電話1分以内、議事録1枚以内、会議1時間以内など。 |
2 | スーパー早帰り日 | 長時間労働の者に対して、週1日以上の定時前終業を実施。 |
3 | 1/8会議 | 社内会議の、時間・人数・資料をそれぞれ2分の1にし、会議を効率化(1/2×1/2×1/2=1/8)。 |
4 | 資料作成1/3削減 | 事前に部課長より資料制作者に対して、資料の案件及び最終イメージを具体的に指示し、資料作成時間を短縮。 |
5 | 行き先掲示板 | 一日の業務内容と帰宅時間をホワイトボードに記載し、業務内容を明確化、無駄を削減する。 |
6 | スマートフォン活用 | 業務用携帯電話をスマートフォンに切り替え、外出先からのメールの実施、待機時間の有効活用、直行・直帰による勤務時間の短縮などに活用。 |
7 | 働き方改善委員会 | 各課より、1名ずつ推進担当者を選出し、定期的な残業チェックと業務効率化施策を推進。 |
8 | 顧客の見極め・絞り込み | 営業戦略を見直し、保有顧客(見込み顧客・既存顧客)から訪問先を絞り込み、効率的な営業活動を実施。 |
9 | 朝・夕会議 | 朝礼・終礼を実施し、残業の事前申請とその必要性の精査を行う。 |
10 | 部長の声がけ | 定時になったら、部長が各部員に対して声がけをし、退社を励行。 |
「スマートワーク・チャレンジ 20」と銘打って、「20」をキーワードに、時間外労働削減と年次有給休暇取得促進を両輪とした次の目標を定めました。
・時間外労働を月平均20時間以下
・時間外労働を対前年20%減
・1日の時間外労働を20分削減
・年次有給休暇20日を100%取得
時間外労働の目標を月平均20時間以下とし、年次有給休暇の取得も推進するため、インセンティブ制度を導入しました。
例えば、月平均の時間外労働を25時間から20時間に減らした結果、削減できた人件費を原資として、部門ごとに、目標の達成状況を3つのレベルに分けて賞与に反映させる、というものです。
【達成状況の3つのレベル】
ゴールド:年次有給休暇の完全取得 + 残業20%削減
シルバー:年次有給休暇の90%以上取得 + 残業20%削減
ブロンズ:年次有給休暇の90%以上取得 + 残業10%削減
このインセンティブ制度により、従業員の意識は大きく変わり、部門内には年次有給休暇を取得しやすい雰囲気が生まれました。
毎月2回、時間外労働の実施状況をアップデートし、役員会で報告(経営層に対し「見える化」)しています。取組が進んでいない部署に対しては、経営トップが指導することもあります。また、時間外労働を減らすために、経営者たちが現場を見て、議論することも繰り返しました。
「スマートワーク・チャレンジ 20」の目標には年次有給休暇20日を100%取得することも掲げています。その目標達成に向けた、独創的な取組を実施しています。
【e-Workコミュニティ】
全従業員が参画する「e-Workコミュニティ」(働きやすい職場作り委員会)が、社会見学、家族イベント、ボランティア活動などを企画します。ワイナリーツアー、家族での農業体験など多様なイベントがあり、従業員は年次有給休暇を使って参加します。今までに15回開催、延べ約4,000名(家族も含む)が参加しました。
【休暇の「見える化」】
①アイデアカレンダーで自分に「見える化」
社内で支給するカレンダーにも年次有給休暇の計画取得促進のための工夫がされています。カレンダーには1〜20までの番号が振られた「有給シール」と「e-Workシール」がついていて、年度初め、または3ヶ月ごとに自分のカレンダーにこのシールを貼ります
②互いに「見える化」
まず役員が年間20日の休みを決め、次に部長、課長、従業員と全員が年次有給休暇取得予定を立てます。社内ではグループウェア※で全員の休暇の予定を見ることができ、関係者の予定を考慮して、計画的に仕事を行うことを習慣としています。
※グループウェア:組織内のコンピュータネットワークを活用した情報共有のためのシステムソフトウェア
【バックアップ休暇】
「病気になった場合に備えて、年次有給休暇を残しておきたい」と考える従業員が多いので「バックアップ休暇(有給)」制度を導入しました。この制度では、年次有給休暇を使い切った従業員が病気になった場合には追加で3日の通級休暇が付与されます。これにより、従業員は安心して年次有給休暇を完全取得することができるようになりました。
時間外労働の削減や年次有給休暇の取得率向上に向けたアイデアコンテストを社内で実施しました。「絶対帰社日の設置」「休暇の半日取得」「休暇の時間単位取得」「20分会議チャレンジ」「スタンディングミーティング」「残業の見える化」など、従業員ならではの着眼点による案が寄せられ、既に実践されて効果を上げているものもあります。また、従業員の意識を高めることにも一役買っています。
2013年は126件の応募があり、優秀賞2件、準優秀賞12件など表彰しました。
B社では従業員の3分の1が客先に常駐しており、常駐先の顧客の理解を得ることが必要不可欠です。顧客には社長名の書状を送ったり、上司が訪問し、時間外労働の削減や年次有給休暇の取得について理解を求めています。
この結果、顧客の理解も次第に高まり、B社と共に働き方の改善に取り組む顧客も増えてきています。
「スマートワーク・チャレンジ 20」は全従業員が認識しており、さまざまな取組を通し、社内の意識が大きく変化してきています。
月平均時間外労働は2008年度は約35時間でしたが、2013年度(見込み)は約22時間と約37%削減され、年次有給休暇取得日数は2008年度は約14日でしたが、2013年度(見込み)では約19日と、効果がはっきりと見えています。