かねてから長時間労働が経営課題でした。しかし、従業員の健康上の問題が気になりつつも、プロジェクトの進行を考えるとやむを得ない、となかなか有効な手が打てずにいました。
2008年、産業医から1ヶ月の時間外労働が100時間を超える場合に健康障害を起こす危険性について厳しく指摘されたことが、従業員の健康を大切に考える経営者層を動かし、「時間外労働を削減すること」が目標になりました。
しかし、現場の意識はなかなか変わらず、状況は改善されませんでした。2013年、B取締役が管理部門の責任者(担当取締役)となり、取り組む姿勢を強く打ち出したことが転機となりました。
長時間労働を抑制するために、対象者の管理責任者は「長時間労働実施状況・改善報告書」によって管理を強化。同時に、特に勤務時間の長い従業員(前月の時間外勤務が100時間超)に対しては、時間外管理勤務シート(図1)を用い、週次での勤怠管理を実施。これらのツールを用い、人事部、部門長、担当取締役、執行会議が管理を徹底する仕組み(図2)を考案しました。
①前月状況確認
人事部が前月の全従業員分の時間外労働を集計した「時間外報告」を各部門長に通知。部門長は一定の基準を超えた従業員の個別状況をとりまとめ、人事部あてに報告します。
②基準を超えた従業員への対応
対象者それぞれについて、部門長は直接的原因及び根本的原因、誰がいつまでにどのように解決するかを記入した「長時間労働実施状況・改善報告書」を人事部に提出します。
A.特別休暇(5日間)付与
B.予定報告(月次):部門長は、当月実施予定の勤務報告書(「時間外勤務管理シート」)を人事部・担当取締役に提出
C.予定報告(週次):部門長は、対象者の時間外勤務の結果を人事部に報告。人事部は当該従業員の当月分の時間外勤務の予定(「時間外予定報告書」)と週次実績(「時間外実績報告書」)を比較し、B(予定報告)との間に乖離が見られる場合、改善計画の進行状況を担当取締役に中間報告し、必要に応じ取締役面談(③)を実施します。
③取締役面談(改善状況レビュー)
改善報告通りの実績とならなかったケースや、予定と実績の乖離が大きい場合は、必要に応じて担当取締役が当該部門長もしくは管理責任者に、事前提出の報告書に基づき、改善施策の進捗状況の確認を行います。
①オンライン勤怠システムによる注意喚起
長時間労働傾向の従業員に対して、毎日注意喚起します。
②長時間労働の状況を週単位で把握
1週間ごとにモニタリングすることで、「目標時間を超えてから気付く」ということが起こらないようにしました。
プロジェクト・マネージャやプロジェクトリーダー、責任感の強い人など、特定の従業員に仕事が集中してしまうことが長時間労働を引き起こす最大の原因でした。これを解消するために、次の対策を取りました。
①業務量の多い従業員の仕事を分析し、一部を他の従業員に分ける
②従業員の能力・スキルを向上させる
③個人単位ではなく、組織としてパフォーマンスを高める工夫をする
④部門長の意識を改革する
2013年からの本腰を入れた取組が功を奏し、時間外労働は確実に減少し、基準を超える従業員は大幅減となりました。
経営トップの「本気」が、部門長、プロジェクト・マネージャ、従業員に浸透し、長時間労働抑制の取組が職場の風土になりました。