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夏休みにおける海外での感染症予防について

海外へ渡航されるみなさまへ

夏休みには海外へ渡航される方が多くなります。海外滞在中に感染症にかかることなく、安全で快適に旅行し、帰国することができるように、海外で注意すべき感染症及びその予防対策をお知らせします。

オリンピック・パラリンピック観戦でブラジルへ渡航される方へ

ジカウイルス感染症にご注意

中南米を中心に、ジカウイルス感染症の患者が多数報告されています。海外の流行地において、蚊に刺されてから数日後に、軽度の発熱、発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠感、頭痛等の症状が見られた場合は、医療機関を受診してください。
 特に、妊娠中にジカウイルスに感染すると胎児にもジカウイルスが感染する場合があることが明らかになっています。その結果、小頭症という病気にかかる場合があります。そのため、以下の点に注意してください。

  • 妊婦及び妊娠の可能性がある方は、可能な限り流行地域への渡航を控えてください。やむを得ず渡航する場合は、主治医と相談の上で、厳密な防蚊対策を講じることが必要です。
  • 海外の流行地域へ出かける際は、できるだけ肌を露出せず、こまめに虫除け剤を使用するなど、蚊に刺されないよう注意してください。また、流行地域に滞在中は症状がなくとも、性行為の際にコンドームを使用するか性行為を控えることを推奨します。
  • 流行地域からの帰国者は、症状がなくとも虫除け剤の使用など蚊に刺されないための対策を少なくとも2週間程度特に注意を払って行うことを推奨します。
  • 流行地域からの帰国者(男女)は、症状がなくとも、最低8週間、パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中、性行為の際にコンドームを使用するか性行為を控えることを推奨します。
ブラジル国旗

 ジカウイルス感染症の流行に関しては、外務省より以下の感染症危険情報が発出されていますので、あわせてご参照ください。

黄熱にご注意

  ブラジルに渡航する場合、渡航地域によっては、熱帯アフリカと中南米地域の風土病「黄熱」の予防接種をお勧めしています。
※「黄熱」は、蚊を媒介して感染する黄熱ウイルス感染症です。発症すると、発熱、寒気、頭痛、吐き気などの症状を伴い、場合によっては重症化し死に至ることもあります。世界保健機関(WHO)は、流行地域に行く場合には、あらかじめ予防接種を受けてから渡航することを推奨しています。
※※ブラジルの一部に黄熱の予防接種が推奨される地域があります。また、一部の国では、ブラジルからの入国者に対し、黄熱の予防接種証明書(イエローカード)が求める場合があります。なお、1回の接種で10年間有効とされている黄熱の予防接種について、2016年7月11日から、生涯有効となり、有効期限の切れた予防接種証明書(イエローカード)を持っていても自動的に更新されます。
詳しくは、FORTH/厚生労働省検疫所ホームページ『オリンピック・パラリンピックでブラジルへ渡航される方へ』及び『黄熱予防接種証明書の生涯有効とアフリカでの黄熱の監視強化』をご覧ください。

 また、在リオデジャネイロ総領事館の特設ホームページにおいて、現地の感染症・医療情報を掲載しています。安全の手引き・リーフレットとあわせ、ご活用ください。

海外での感染症予防のポイント

  • 海外で感染症にかからないようにするために、感染症に対する正しい知識と予防に関する方法を身に付けましょう。【一覧】海外で注意しなければいけない感染症 [146KB]
  • 渡航先や渡航先での行動によって異なりますが、最も感染の可能性が高いのは食べ物や水を介した消化器系の感染症です。
  • 日本で発生していない、動物や蚊・マダニなどが媒介する病気が海外では流行していることがあり、注意が必要です。
  • 世界保健機関(WHO)が排除又は根絶を目指している麻しん(はしか)、風しん(三日はしか)及びポリオは、日本での患者は減少傾向又は発生していないものの、海外では感染することがあり注意が必要です。これらの感染症についてもこのページで紹介します。

渡航の前に・・・

  • 検疫所のホームページや外務省の海外安全ホームページで、渡航先の感染症の発生状況に関する最新の情報や注意事項を確認しましょう。
  • 海外渡航をする前に、これまで受けた予防接種について確認しましょう。国内の感染症を海外に持ち出さない、又は海外の感染症を国内に持ち込まないために、国内で予防接種が推奨される疾患であって予防対策が不十分なものがあれば、予防接種を検討しましょう。
  • 予防接種が受けられる感染症については、余裕をもって医師にワクチン接種の相談をしておくなど、適切な感染予防を心がけましょう。
  • 2014年7月1日から、外務省では、海外滞在期間が3か月未満の渡航者を対象に海外旅行登録 「たびレジ」を開始しています。海外旅行にお出かけになる方は、専用サイトから登録しますと、渡航情報などの提供や緊急事態発生時の連絡メールを受け取ることができます。是非ご登録をお願いします。また、3か月以上の滞在の場合は、必ず在留届を提出してください。

渡航中及び帰国後に体調が悪くなったら

  • 空港や港に設置されている検疫所では、渡航者の方を対象に健康相談を行っています。帰国時に発熱や下痢、具合が悪いなど体調に不安がある場合には、お気軽に検疫官までご相談ください。
  • 感染症には、潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)が数日から1週間以上と長いものもあり、帰国後しばらくしてから具合が悪くなることがあります。その際は、早急に医療機関を受診し、渡航先、滞在期間、現地での飲食状況、渡航先での職歴や活動内容、動物との接触の有無、ワクチン接種歴などについて必ず伝えてください。
  • その他不安な点は、最寄りの保健所にお問い合わせください。

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1.蚊やマダニなどが媒介する感染症

渡航先や渡航先での行動によって、感染する可能性のある感染症は大きく異なりますが、蚊を媒介した感染症が世界的に多く報告されています。特に熱帯・亜熱帯地域ではマラリア、デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症などに注意が必要です。
蚊に刺されたり、マダニに咬まれたりすることなどによる感染症を防止するためにも、野外活動の際には、長袖・長ズボンを着用する、素足でのサンダル履き等は避ける、虫除け剤を使用するなど注意をしましょう。

(1) マラリア

発生地域アジア、中南米、アフリカなど熱帯・亜熱帯地域に広く分布。なお、近年、マラリア制圧に成功していた、韓国(北部が中心)でも、国内感染例が確認されている。
感染経路マラリア原虫を保有した蚊(ハマダラカ)に吸血された際に感染する。ハマダラカは、夕方から夜間に出没する傾向がある。都市部での感染リスクは、アフリカやインド大陸を除き減っている。
主な症状マラリア原虫の種類により異なるが、7日以上の潜伏期ののち、寒け、発熱、息苦しさ、結膜充血、嘔吐、頭痛、筋肉痛など。迅速かつ適切に対処しなければ重症化し、死亡する危険がある。
感染予防長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。虫除け剤や蚊帳等の使用により蚊に刺されないように注意する。特に、夜間の屋外での飲食や外出時に注意する。2週間以上流行地に滞在し、野外作業等に従事する場合は、抗マラリア薬(国内で承認されている予防薬は「メファキン「ヒサミツ」錠275R」と「マラロン配合錠R」がある)の予防内服を行うことが望ましいとされている。

毎年世界中で約2億人の患者が発生し、約43万人以上の死亡者がいると報告されています。海外で感染して帰国された方(輸入症例)が、2015年は41例、2016年は6月19日現在22例報告されています。

(2) デング熱、デング出血熱

発生地域アジア、中南米、アフリカなど熱帯・亜熱帯地域に広く分布。
感染経路ウイルスを保有した蚊に吸血された際に感染する。媒介蚊は日中、都市部の建物内外に生息するヤブカ類である。
主な症状2〜14日(多くは3〜7日)の潜伏期ののち、突然の発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹など。デング熱患者の一部は重症化してデング出血熱やデングショック症候群を発症することがある。
感染予防長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。虫除け剤の使用等によって、屋外だけではなく屋内でも蚊に刺されないように注意する。室内の蚊の駆除を心がける。

 世界中で毎年約5,000万〜1億人の患者が発生していると考えられています。
 2015年10月現在、昨年同時期に比べて中国、マレーシア、フィリピン、カンボジアなどで患者報告が増加しており、注意が必要です。また最近ではイエメン、インド、パナマ等で流行が報告され、台湾やハワイにおいても患者報告が増加し注意が呼びかけられています。日本では、2014年は輸入症例が179例、国内感染症例が162例、2015年は輸入症例が292例、2016年は6月19日現在輸入症例が151例報告されています。 

(3) ジカウイルス感染症

発生地域アフリカ、東南アジアや南アジア、カリブ海嶼国、中南米、太平洋島嶼国で流行している。
感染経路ウイルスを保有したヤブカ類に吸血された際に感染する。
主な症状潜伏期間は2〜12日(多くは2〜7日)である。症状はデング熱やチクングニア熱と似た症状を示すが、一般的にデング熱やチクングニア熱と比べると軽い症状で、感染しても症状がないか、症状が軽いため気付かないことが多い。患者の多くで発疹が認められ、発熱(多くは38.5度以下)を呈するのは発症者のうちの6割前後で、多くの場合軽症で治癒する。
感染予防長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。虫除け剤の使用等によって、屋外だけではなく屋内でも蚊に刺されないように注意する。室内の蚊の駆除を心がける。

 ジカウイルス感染症は、ジカウイルス病と先天性ジカウイルス感染症をいいます。
 ジカウイルス病は、ジカウイルスが感染することにより起こる感染症で、その症状は発熱、関節痛、発疹などデング熱に類似しますが、一般的に重症化や死亡することはないといわれています。妊婦がジカウイルスに感染した場合、母体から胎児にジカウイルスが感染(垂直感染)することがあり、小頭症などの先天性障害を起こすことがあります。これを先天性ジカウイルス感染症といいます。
 ジカウイルス感染症は、アジアとアフリカの熱帯・亜熱帯地域で流行していましたが、近年、中南米でも流行しています。媒介蚊はヤブカ類です。日本では2013年以降、10例の輸入症例が報告されています(2016年6月24日現在)。感染予防には、長袖・長ズボンの着用、虫除け剤を使用するなどして、蚊に刺されないようにすることが大切です。
 妊娠中にジカウイルスに感染すると胎児に小頭症を来すことがあることから、妊婦及び妊娠の可能性がある方は、可能な限り流行地域への渡航を控えてください。また、性行為により男性から女性パートナーへ感染した事例が報告されています。性行為による感染等のリスクを考慮し流行地域に滞在中は性行為の際に、コンドームを使用するか性行為を控えることを推奨します。また流行地域から帰国した男女は、症状の有無にかかわらず、最低8週間、パートナーが妊娠している場合は妊娠期間中、性行為の際に、コンドームを使用するか性行為を控えることを推奨します。※世界保健機関(WHO)は、2016年3月8日、妊婦は流行地域への渡航をすべきでないと勧告しています。

(4) チクングニア熱

発生地域アフリカ、東南アジア(フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア、シンガポール、カンボジアなど)、インド、パキスタン、インド洋島嶼(しょ)国(スリランカやモルディブなど)、マダガスカル。その他、2007年にイタリア、2010年にフランス、2013年にはカリブ海諸国で流行。2014年には米国フロリダ州で地域流行が発生し、中南米にも流行は拡大した。
感染経路ウイルスを保有したヤブカ類に吸血された際に感染する。
主な症状2〜12日(通常4〜8日)の潜伏期ののち、突然の発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹など。関節痛は急性症状消失後も数か月続くことが多い。
感染予防長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。虫除け剤の使用等によって、屋外だけではなく屋内でも蚊に刺されないように注意する。室内の蚊の駆除を心がける。

 アフリカ、東南アジア、南アジアの国々で流行しており、2006年にはインドで約140万人の患者が報告されています。2015年10月にカリブ海諸国で流行が報告され現在も流行が続いています。
 日本では、輸入症例が2015年は17例、2016年は6月19日現在3例報告されています

(5) 黄熱

発生地域熱帯アフリカ、中南米地域
感染経路ウイルスを保有した蚊に吸血された際に感染する。主な媒介蚊は屋内で活動するネッタイシマカである。
主な症状3 〜6日の潜伏期ののち、主として発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、背部痛、悪心・嘔吐などを発症。黄熱患者の一部は重症化して、ショックや多臓器不全に至る場合がある。
感染予防長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。虫除け剤の使用等によって、屋外だけではなく屋内でも蚊に刺されないように注意する。室内の蚊の駆除を心がける。

 第二次世界大戦終戦以後、日本においては、輸入症例を含め、発生報告はありません。しかし、アフリカでは,特に2015年12月以降、アンゴラ及びコンゴ民主共和国を中心に流行しています。アメリカ合衆国とヨーロッパにおいては、これまでも輸入症例が1970年〜2013年の間で10例報告されています。また、最近中国でも、黄熱患者の輸入症例が報告されています。ワクチンを接種せず黄熱流行地域に渡航し、黄熱ウイルスに感染して帰国後発症しました。このアンゴラ及びコンゴ民主共和国を中心とした流行に関して、世界保健機関( WHO )の IHR 緊急委員会において、黄熱に係る対応に関する WHO ステートメントが発表され、アンゴラ及びコンゴ民主共和国の出入国者に黄熱の予防接種を受けるよう促しています。また、黄熱の流行状況の変化に伴い、黄熱対策が強化されており、その周辺国においても、入国の際に、黄熱の予防接種証明書(イエローカード)の提示を求められる場合があります。渡航予定者は、在外公館からの最新の情報を確認してください。
 ブラジル・リオデジャネイロにおいて2016年8月5日から21日にオリンピックが、9月7日から18日にはパラリンピックが開催されますが、ブラジルは黄熱流行地であり、黄熱の予防接種が推奨される地域が一部にあります。また、一部の国では、ブラジルからの入国者に対し、イエローカードが求められる場合があります。各国の黄熱の予防接種の必要性については、最新の情報を確認するようにしてください。

(6) ウエストナイル熱・ウエストナイル脳炎

発生地域アフリカ、ヨーロッパ南部、中央アジア、西アジア、近年では北米地域、中南米、ロシアにも拡大している。
感染経路ウイルスを保有した蚊(主にイエカ類)に吸血された際に感染する。媒介する蚊は多種類に及ぶ。
主な症状2〜14日(通常1〜6日)の潜伏期ののち、発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、背部痛、発疹など。感染者の一部は脳炎を発症する。
感染予防長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。虫除け剤の使用等によって、屋外のみならず屋内でも蚊に刺されないように注意する。特に、日没後の屋外で蚊に刺されないようにする。室内の蚊の駆除を心がける。

 ウエストナイルウイルスが原因の熱性疾患です。このウイルスは、鳥と蚊の間で維持されており、ウエストナイルウイルスを保有する蚊に吸血された際に感染します。北米地域だけで例年数千人の患者が報告されています。北米地域での流行は、例年蚊の活動が活発になる7月頃から始まります。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると米国では2015年は患者数2060名(うち死亡者119名)が報告されています。

(7) クリミア・コンゴ出血熱

発生地域中国西部、東南アジア、中央アジア、中東、東ヨーロッパ、アフリカ。
感染経路ウイルスを保有したマダニに咬まれたり、感染動物(特にヒツジなどの家畜)と接触したりして感染する。
主な症状2〜9日の潜伏期ののち、発熱、関節痛、発疹、紫斑(出血)、意識障害など。
感染予防長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。また、家畜などにむやみに触れない。

 クリミア・コンゴ出血熱ウイルスによる出血熱を特徴とする感染症です。このウイルスは、哺乳動物とマダニの間で維持されていますが、ヒトはウイルスを有するマダニに咬まれたり、ヒツジなどの家畜を解体する作業中に血液に触れたりした場合に感染します。患者体液との直接的接触でも感染することがあります。死亡率の高い感染症で、特に、中央アジアや中東では毎年患者が発生しています。最近ではインドやパキスタンでも患者が報告されています。

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2.動物からうつる感染症

現在、日本での発生はなく海外で発生している、人に重篤な症状を起こす感染症について紹介します。野生動物や家畜はどのような病原体を持っているか分からないことが多く、重篤な感染症の病原体を持っている可能性もあります。海外では、むやみに動物に触れることはやめましょう。

(1) 鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)

発生地域H5N1は、東南アジアを中心に、中東・ヨーロッパ・アフリカの一部地域など。H7N9は、中国。
感染経路感染した家きんやその臓器、体液、糞などとの濃厚な接触。
主な症状1〜10日(多くは2〜5日)の潜伏期間ののち、発熱、呼吸器症状、下痢、多臓器不全など。
感染予防家きんとの接触を避け、むやみに触らない。生きたニワトリやアヒルなどが売られている市場や養鶏場に近寄らない。手洗い等の実施(特に発生国では徹底する)。

  鳥インフルエンザ(H5N1)は、人が感染した場合には、重篤な症状となることが多く、世界保健機関(WHO)によると、2003年11月から2016年6月13日までに世界16か国で851人(死亡者450人)の発症者が報告されています。今年はこれまでにエジプトで患者が4名確認されています。
 また、鳥インフルエンザ(H7N9)は、2013年3月末から、中国で発生しています。2016年6月13日までの患者数は781人(うち死亡者は少なくとも313人)です。H5N1、H7N9いずれについても、多くの患者が直接的又は間接的に家きん等との接触があったことが報告されていますが、適切に加熱調理された食品を食べて感染することはありません。

(2) 狂犬病

発生地域世界のほとんどの地域。特にアジア、アフリカ。
感染要因動物(アジアでは特に犬)に咬まれること。アメリカ大陸ではコウモリに咬まれて狂犬病ウイルスに感染し、狂犬病を発症して死亡する事例が報告されている。なお、北米ではアライグマ、スカンク、キツネ等、東ヨーロッパでは、キツネ、タヌキ等、アフリカではジャッカル、マングース等、韓国ではタヌキ、中国と台湾ではイタチアナグマの野生動物で狂犬病が流行しており、注意が必要である。
主な症状通常、1〜3か月の潜伏期間ののち、発熱、咬まれた場所の知覚異常が現れる。恐水、恐風症状などの特徴的な症状の他に、神経症状(不安発作、嚥下困難(飲食物が飲み込みにくくなる)、けいれん)が見られる。有効な治療方法はなく、ほぼ100%死に至る。
感染予防犬等(猫、野生動物を含む。特に飼い主の分からない動物。)にむやみに近付かない(特に小さなお子さんを動物のそばで一人にさせない)。もし犬等に咬まれたり引っかかれたりした場合は、傷口を石けんと水でよく洗い、速やかに医療機関を受診し、適切な処置を受けた上で、狂犬病ワクチンの接種について医師に相談する。狂犬病発生地域(アジア、アフリカ等)に渡航し、動物と頻繁に接触する場合や地方(農村部等)で野外活動を行う場合は、渡航前に狂犬病ワクチンの接種を受けておく。

狂犬病は、狂犬病ウイルスによる感染症です。人は、狂犬病ウイルスに感染した動物(アジアでは主として犬)に咬まれることによって唾液に含まれるウイルスに感染し、長い潜伏期の後に発症します。発症してしまうと有効な治療法はなく、ほぼ100%死に至ります。狂犬病はごく限られた国と地域を除いて、世界中で発生しており、死者数は毎年6万人以上といわれています。ただし、感染動物に咬まれた直後に狂犬病ワクチンの連続接種を開始することで、多くの場合発症を防ぐことができます。狂犬病発生地域では、動物(野良犬や野生動物等)との接触機会が増えれば増えるほど感染のリスクが高まります。日本では、2006年にフィリピンで犬に咬まれて、狂犬病ワクチン接種を受けることなく帰国した2人が、狂犬病を発症して亡くなった事例が報告されています。
2008年11月以降、それまで狂犬病が発生していなかったバリ島(インドネシア)において、犬の間で狂犬病が発生し、住民が狂犬病を発症した犬に咬まれて、多数死亡しています。
2013年7月には、1961年を最後に狂犬病の発生が報告されていなかった台湾で、狂犬病にかかったイタチアナグマが見つかり、調査の結果、野生動物であるイタチアナグマで狂犬病の流行が明らかとなりました。イタチアナグマの狂犬病は現在も継続しています。
狂犬病は予防のできる感染症です。狂犬病発生地域で犬や野生動物に接する機会がある場合には、渡航前にワクチンを接種しておくことが望まれます。渡航先で、犬などの動物に咬まれたら、すぐに傷口を石けんと水でよく洗い、できるだけ早く現地の医療機関を受診し、傷口の消毒と狂犬病ワクチン接種の必要性について相談しましょう。万が一、狂犬病に感染した恐れのある場合は帰国時に検疫所にご相談ください。

(3) エボラ出血熱

発生地域アフリカ(中央部〜西部)。
感染経路自然宿主はオオコウモリとされている。感染したサルなどの動物の血液、分泌物、排泄物、唾液などとの接触でも感染する可能性がある。エボラ出血熱患者に接触して感染する場合が最も多い(院内感染など)。また流行地域の洞窟に入ることは感染リスクの1つである。
主な症状2〜21日の潜伏期ののち、発熱、頭痛、下痢、筋肉痛、吐血、下血など。インフルエンザ、チフス、赤痢等と似た症状を示す。
感染予防流行地への旅行を控える。野生動物や患者に直接触れない。洞窟に入らない。

 サハラ砂漠以南のアフリカ熱帯雨林地域で流行しています。すべての患者で認められる訳ではありませんが、発熱などの症状に加えて出血症状を特徴とする重篤な感染症です。エボラ出血熱は、現在までアフリカ中央部のコンゴ民主共和国、スーダン、ウガンダ、ガボンやアフリカ西部のギニア、リベリア、シエラレオネ、マリ、ナイジェリア、コートジボワールで発生しています。2014年3月以降、ギニア、リベリア、シエラレオネ、マリ、ナイジェリアで極めて大きなエボラ出血熱の流行が発生しましたが、2015年末までに全ての国で流行終息が宣言されました。現地時間3月29日付で、WHOで緊急委員会が開催され、西アフリカにおけるエボラ出血熱に関する「PHEIC(国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態)」について議論された結果、2014年8月から宣言されていたPHEICが解除されました。

(4) 中東呼吸器症候群(MERS:マーズ)

発生地域中東のサウジアラビアを中心に、アラブ首長国連邦、ヨルダン、カタール、オマーン、クウェート等で発生が報告されている。また、中東以外の地域(フランス、ドイツ、イタリア、英国、オランダ、スペイン、オーストリア、チュニジア、マレーシア、米国、韓国、中国、タイ、フィリピン)でも中東に渡航して感染した人やその感染者に接触したことにより感染した人が報告されている。
感染経路中東のヒトコブラクダがMERSコロナウイルスを保有している。特に子どものヒトコブラクダは高濃度のウイルスを保有している。そのため、ラクダとの接触や未殺菌乳の喫食が感染リスクである。またヒトからヒトへの感染は医療機関や家族において、濃厚接触によって起こる。咳による飛沫により感染すると考えられる。
主な症状発熱、咳などの急性呼吸器症状、下痢等の消化器症状。
感染予防一般的な衛生対策を心がける。(手洗い等の実施。未殺菌の乳や生肉など加熱不十分な食品を避ける。咳やくしゃみなどの症状を示している人やヒトコブラクダなど、動物との接触をできる限り避ける。)特に糖尿病や心臓病等の慢性的な病気の患者や、高齢者は、中東で病院に行くことやラクダに乗ることをできる限り避けるべきである。

2012年9月から2016年6月22日までに、世界保健機関(WHO)に報告されたMERSコロナウイルスに感染したと確定された患者は1,768人で、このうち630人が死亡しています。 中東諸国においてラクダとの接触や未殺菌乳を喫食した場合などMERS に感染するリスクのある行動をとった方は、帰国時に、到着した空港等の検疫ブースで検疫官に申し出てください。中東地域に渡航する際は、ラクダとの接触を避けるようお願いします。帰国後2週間以内に上記の症状が見られた場合には、一般の医療機関には受診せず、直ちに最寄りの保健所に連絡するようお願いします。

(5) マールブルグ病

発生地域サハラ以南のアフリカ。
感染経路自然宿主はオオコウモリである。洞窟内でコウモリの排泄物などに含まれるウイルスを吸い込むことにより感染することがある。感染したサルなどの動物の血液、分泌物、排泄物、唾液などとの接触でも感染する可能性がある。流行地域ではマールブルグ病患者に接触して感染する場合が最も多い(院内感染など)。
主な症状2〜21日の潜伏期ののち、初期には発熱、頭痛、悪寒、下痢、筋肉痛など。その後、体表に斑状発疹、嘔吐、腹痛、下痢、出血傾向。
感染予防流行地への旅行を控える。野生動物や患者に直接触れない。洞窟に入らない。

 マールブルグ病はエボラ出血熱と同様に、発熱などの症状に加えて出血症状を特徴とする重篤な感染症です。アフリカのケニア、ジンバブエ、コンゴ民主共和国、アンゴラ、ウガンダで発生しています。2008年には、オランダと米国からの旅行者が、ウガンダの洞窟に入って、それぞれ帰国後にマールブルグ病を発症・死亡した例が報告されています。2014年にもウガンダで1例患者の報告がありました。

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3.諸外国での感染に注意すべき感染症

 世界では世界保健機関(WHO)を中心に、麻しん、風しん及びポリオについて、具体的な排除・根絶の目標を設定し、感染者の減少のための対策に取り組んでいます。
 日本国内の麻しん及び風しんの流行状況は、2015年においては、それぞれ35例、162例の報告があります。2016年は6月19日現在でそれぞれ12例、73例の報告があります。
 ポリオは、30年近くにわたり、日本国内で野生株によるポリオ症例は発生していませんが、アフリカや中東では流行が報告されています。
 また、昨年から今年にかけて西アフリカでラッサ熱と呼ばれる危険性が高いウイルス性出血熱患者がとても多く発生しています。ネズミの尿などの排泄物にウイルスが含まれており、感染源となります。ドイツなどで輸入感染事例が報告されています。
 これらの疾患については、流行地からの輸入症例に留意する必要があります。

(1) 麻しん(はしか)

発生地域麻しんは特に感染力が強く、世界中で発生の報告がみられる。2014年には全世界で約27万人の報告があり、日本が所属する西太平洋地域では、2015年に約4万5千人の報告があり、2016年5月時点において、モンゴル、中国、マレーシアで麻しんの罹患率が高い(100万人当たり10人以上の感染者数)。その他、アフリカ、南アジアなどの予防接種率の低い国では依然として患者数が多い。なお、2015年3月には、世界保健機関(WHO)西太平洋事務局から、日本は国内で持続的な流行がみられていない麻しんの排除状態にあることが認定されており、輸入感染を予防する等により、排除状態を維持することが重要である。
感染経路空気感染、飛沫感染、接触感染。
主な症状10〜12日の潜伏期間ののち、発熱、咳、鼻水、目の充血・目やになどが2〜3日続いた後、39℃以上の高熱と全身に発疹が出る。発熱は4〜7日続き、発疹は顔や首から出現し、徐々に胴体及び手足に広がって、5〜6日続いた後に消える。また、肺炎、中耳炎、脳炎が起こる場合もある。
感染予防国内の排除状態を維持するために、そして海外から麻しんを持ち込まないために、事前の予防対策が重要。感染予防には、予防接種が有効であり、海外では、麻しんだけでなく、風しんも同時に流行しているので、ワクチン接種を受けていない場合には、麻しん風しん混合ワクチンの接種が勧められる。(定期予防接種は1歳から2歳未満に1回目の予防接種を受け、小学校入学前1年間の間に2回目の予防接種を受ける。)

2014年には世界中で年間約11万4900人の麻しんによる死亡者がいると推計され、その多くは5歳以下であると報告されています(WHOファクトシート2016年3月)。

(2) 風しん(三日はしか)

発生地域風しんの排除宣言がされているアメリカ大陸の国等では輸入感染事例に限られるものの、世界中で風しんの発生報告がみられる。世界には風しんの定期予防接種がまだ導入されていない国や十分な風しんの調査体制が整備されていない国も多い。日本が所属する西太平洋地域では、2015年には8,767例の感染報告があり、その多くの報告は中国から(8,245例)であり、次いでベトナム(255例)、フィリピン(154例)であった(2016年4月時点)。その他、アフリカ、東南アジアなどの予防接種率の低い国では依然として風しんの患者数が多い。
感染経路飛沫感染、接触感染。
主な症状感染から14〜21日の潜伏期間の後、発熱、発疹、リンパ節腫脹(耳介後部、後頸部)が出現するが、発熱は風しん患者の約半数にみられる程度であり、不顕性感染が15〜30%程度存在する。基本的には予後良好な疾患であるが、まれに血小板減少性紫斑病や急性脳炎などをきたすことがある。また、感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が感染したことにより、風しんウイルスが胎児に感染し、先天異常を含む様々な症状を呈する先天性風しん症候群が生じることがある。
感染予防予防接種が有効。海外では、風しんだけでなく、麻しんも同時に流行しているので、ワクチン接種を受けていない場合には麻しん風しん混合ワクチンの接種が勧められる。(定期予防接種は1歳から2歳未満に1回目の予防接種を受け、小学校入学前1年間の間に2回目の予防接種を受ける。)

 世界保健機関(WHO)によると年間約10万人の先天性風しん症候群が発症していると推計されています(WHO Rubella Fact sheet 2016年3月)。

(3) ポリオ

発生地域継続して流行がみられる国は、パキスタン及びアフガニスタンの2か国であり、2015年には74例が報告された(2016年4月6日現在)。2015年には、上記の2か国のほかに、ナイジェリア、ギニア、マダガスカル、ウクライナ、ラオス及びミャンマーの6か国で32例のワクチン由来ポリオウイルスによる感染症例が発生した。世界保健機関(WHO)は、2014年5月5日、ポリオの発生状況が「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC:Public Health Emergency of International Concern)」に該当すると発表しており、2016年3月1日には、引き続きPHEICに該当するとしている。
感染経路経口感染(感染者の糞便中に排泄されたウイルスが、口から体内に入る)。
主な症状感染した人の多くは症状が出ずに経過するが、典型的な麻痺型ポリオを発症する事例では、発熱等かぜのような症状が1〜10日続いて、手足に非対称性の弛緩性麻痺(だらんとした麻痺)が起こる。
感染予防予防接種が発症予防に有効。十分に加熱がされていない物の飲食は避ける。手洗いを十分に実施する。ポリオが発生している上記の国に渡航する場合は、追加の予防接種を検討する。

2016年3月1日には、野生型ポリオウイルス伝播の国際的拡大に関する世界保健機関(WHO)の声明が改訂されています。パキスタン政府は、WHOの勧告を踏まえ、同国に4週間以上の長期滞在する外国人を含めた全ての人にポリオワクチン接種を義務化し、WHOが推奨する国際 予防接種証明書の交付を行っています。同国に4週間以上滞在している方または滞在予定の方は、パキスタン出入国の4週間前までにポリオ生ワクチン(OPV)または不活性ワクチン(IPV)の接種を受けるよう注意してください。
アフガニスタン政府は、世界保健機関(WHO)の勧告を踏まえ、「アフガニスタンに入国するポリオ非撲滅国からの外国人に対しては、アフガニスタン国外にある同国大使館若しく は総領事館において査証取得前にポリオワクチン接種証明書の提示を求め、また、ポリオ撲滅国からの外国人に対しては、査証取得前にポリオワクチン接種証明 書の提示を求めていないものの、ワクチン未接種者に対してはアフガニスタン出国にあたりアフガニスタン国内の医療機関でポリオワクチン接種を受けなければならない」としています。ポリオワクチンの接種を受けずにアフガニスタンに渡航した場合、出国制限を受けるおそれがあります。ポリオの流行地域に長期間滞在した後にその地域を出る際には、最近ポリオの予防接種を実施したことの証明書を提示しなければならないことがあるため注意してください。特に、パキスタン及びアフガニスタンでは、適切な接種証明書を所有しない居住者の海外渡航制限が強く推奨されていますので、十分注意してください。
上記の世界保健機関(WHO)からの声明は、ポリオが流行している地域から他の地域へポリオを持ち出さないことを目的としており、日本から他国へ出国する際に予防接種を求めるものではありません。しかし、旅行等でポリオ流行地域へ渡航後、出国時に上記のように予防接種証明書の提示を求められることがあります。必要に応じて下記の検疫所ホームページでも情報提供を行っておりますが、ポリオ流行地域へ渡航される際には、十分な確認をお願いします。

4.そのほか注意すべき感染症

 水や食べ物から感染する消化器系の感染症はA型肝炎、E型肝炎、コレラ、赤痢、腸チフスなど数多く存在しますが、開発途上国など公衆衛生の整備が不十分な地域では感染するリスクがより高いので、以下のことに注意しましょう。その他、生鮮魚介類や生肉等を介した寄生虫疾患も注意が必要です。

手洗いをこまめにしましょう食事の前には必ず石けんと水で手を洗いましょう。きれいな水が使えない場合は手洗い後にアルコール成分を含む衛生用品の利用が効果的です。
生水を飲まないようにしましょう未開封の市販の飲料水が最も安全です。水道水は、しっかりと沸騰させてから飲みましょう。水を沸騰させることができない場合には、飲料水消毒用薬剤を使用してください。
氷を避けるようにしましょう屋台や不衛生な飲食店で提供される氷は、病原体に汚染されていることがあるので注意しましょう。自分で氷を作る場合は、未開封の市販の飲料水を使用しましょう。
完全に火の通った食べ物を食べましょう生鮮魚介類や生肉などは食べずに、十分に加熱された物を食べましょう。
加熱料理された料理であっても何時間も室温で保管されていると、病原体が増えてしまいます。屋台や不衛生な飲食店では、作り置きされている料理が出されることがあるので注意しましょう。
サラダや生の野菜は避けましょう野菜類は生水を用いて処理されている場合など、病原体に汚染されていることがあります。野菜やフルーツなどは、自分で皮をむいたものを食べましょう。

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海外の感染症に関する情報

出発前に渡航先の感染症の流行状況等に関する情報を入手しておくことが大切です。厚生労働省検疫所及び外務省では、ホームページで各国の感染症や安全に関する情報を提供しています。また、空港や港の検疫所においても、リーフレット等を用意し情報提供を行っていますので、積極的にご活用ください。


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