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総合診療科

毎週 月・木曜日 11:00~12:00(予約制)

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TEL:0550-87-1711

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  • 当療養所の入所者に引き続いての診療になりますのでご了承願います。

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診療申込書 (46.0KB)
この申込書は、当院をはじめて受診される方専用です。

診療申込書【記入例】 (53KB)

ハンセン病に関する診療科

基本科

1.当科における業務内容
国立駿河療養所基本科は、当療養所入所者、在宅回復者および外来受診者を対象として、ハンセン病(新規および再発)の診断と治療(WHO多剤併用療法)、らい反応(境界反応、らい性結節性紅斑(ENL))の診断と治療、四肢の後遺症の予防・悪化予防の実施支援(末梢神経炎の診断と治療、足穿孔症の予防と管理、履き物・装具療法)、その他の合併症の診断と治療、ハンセン病に関する医療相談等の医療サービスを提供することを業務としています。国内における新規のハンセン病の診断と治療は、健康保険により一般病院の外来(主に皮膚科)通院で行われています。このためハンセン病を診断・治療している医師に対する情報提供、技術支援や、地方自治体の要請により在宅回復者に対する健康相談(健康チェック、専門医療機関への紹介等)にも応じています。
2.当科における診療の実際
ハンセン病およびハンセン病関連疾患に対して、診断、治療および経過のフォローアップを行っています。ハンセン病(新規および再発)の診断には、「①知覚麻痺を伴った皮疹、②末梢神経の肥厚、③皮膚塗抹試験によりらい菌Microbacterium Lepraeを証明」の少なくともいずれか一つが必要です。このため、当科における診察は、まず①全身の皮膚に知覚低下を伴っている斑紋があるかないか?を調べます。次に②頭部・顔面、両上下肢に末梢神経肥厚があるかないか?を触診にて調べます。さらに③メスで数カ所の皮膚を5mm位の長さに浅く切込み、真皮の組織を少量掻き出してプレパラート上に塗りつけ抗酸菌染色(チール・ニールセン染色)を行ってらい菌Microbacterium Lepraeの有無や菌の性状を調べます(菌検査)。確定診断には皮膚生検(Skin biopsy)を行い、特殊染色を含む病理組織検査の結果で最終的に診断します。初診時には、ハンセン病による末梢神経麻痺による手足や目の障害の有無や程度を調べます。その後、定期的にフォローアップを行い、神経損傷の回復の程度や障害が進んでいないかどうか調べます。経過中に起こってくるらい反応(境界反応、らい性結節性紅斑(ENL))やそれに伴う末梢神経炎を早期に診断して、確実に治療を行い障害の予防を行います。すでに重度の身体障害のお持ちの方には、障害の程度に応じた補装具や理学療法の処方を行い障害の悪化を予防すると共に、日常の生活の質の向上支援を行います。慢性の神経因性疼痛(神経痛)がある場合は、痛みを取る治療(内服、ブロック等)を行います。慢性の足穿孔症がある場合は、知覚のない足に対する日常のケア方法の指導、履き物や補装具療法を行います。足穿孔症から骨髄炎を起こしている場合は、抗生剤の投与、有窓ギプス療法や腐骨切除術を行います。まれに慢性の足穿孔症から扁平上皮癌を発生した場合には、必要とされる根本的な治療を行います。
3.当科における特殊検査
当科においては、通常の血液検査や尿検査の他に、ハンセン病の診断および治療経過の指標として以下の検査を必要に応じて実施します。皮膚塗抹試験(菌指数BI, 形態指数MI)、皮膚生検(特殊染色を含む)、血清PGL抗体価、PCRによる抗菌剤耐性菌検査(外注)
4.当科における化学療法
ハンセン病(新規及び再発)の治療は、WHO/MDT(多剤併用療法)を通常6カ月か1年間行います。(医師の判断で2年まで延長は可)使用する薬は、第一選択薬としてリファンピシン(RFP)、ダプソン(DDS)、クロファジミン(CLF)、オフロキサシン(OFLX)の4種類(保険適用)があります。耐性が疑われる場合にはPCRによる耐性菌検査(国立感染症研究所に依頼)を行います。この他に、レボフロキサシン(LVFX)、スパフロキサシン(SPFX)、クラリスロマイシン(CAM)、ミノサイクリン(MINO)等(保険適応外)があり、第二次選択薬として組み合わせて使用します。らい反応(境界反応、らい性結節性紅斑(ENL))やそれに伴う末梢神経炎の治療には、非ステロイド消炎鎮痛剤かプレドニゾロンのような経口副腎皮質ステロイド剤を使用します。特にらい性結節性紅斑(ENL)に対してはクロファジミン、サリドマイド(*1)を使用するときもあります。慢性の神経因性疼痛に対しては、メチコバラミン、非ステロイド消炎鎮痛剤、ガバペンチン(*2)、カルバマゼピン、メキシチレン等を使用します。また、足穿孔症の細菌感染急性期には、抗生剤を使用します。
  • (*1) 第三者を含む所内倫理委員会において、適応と管理について慎重に検討した結果承認されています。
  • (*2) 第三者を含む所内倫理委員会において、効能外使用について慎重に検討した結果承認されています。
5.ハンセン病について
ハンセン病は、抗酸菌に属するらい菌Microbacterium Lepraeの持続的感染によって主に皮膚や末梢神経に慢性肉芽腫性病変を起こすことを特徴とする感染症です。1940年代に近代的化学療法が開発され、体内のらい菌の増殖を阻止あるいは殺菌出来るようになるまでは、不治の病として大変恐れられた疾患でした。しかし、特にリファンピシンを主軸とした多剤併用療法が開発された1980年代以降、ハンセン病は、比較的簡単に治癒可能な疾患となりました。本疾患は、宿主の免疫応答の変化により経過中に生じるらい反応(境界反応、らい性結節性紅斑(ENL))に対して適切な対策が取られなければ、約3割の患者さんに目や手足に恒久的な後遺障害(視力低下、失明、四肢および顔面の運動・知覚麻痺等)を生じます。世界中で過去に治療の機会を得られなかったり、不十分に治療されたりした多くの患者さんが、この後遺障害のために、身体的ばかりでなく、不当な差別偏見や社会経済的に苦しんでいるのは事実です。多剤併用療法による感染源対策を戦略としたハンセン病制圧対策は、1991年以降世界保健機構(WHO)のイニシアティブの元に世界的な努力が行われ、劇的に進みました。ハンセン病罹患患者数は1980年代初頭に1200万人と言われましたが、2007年には年間新規登録患者数は、254,525と報告されています。しかし、幾つかの流行国では、今後10年程度は年間数千人規模の新患登録が予想されます。開発途上国におけるハンセン病対策の維持のためには、サービス(知識の普及、診断・治療・障害予防)を一般保健医療サービスの中に統合することが持続的な活動維持のために必要不可欠です(WHO)。早期発見と適切な治療、障害予防と社会的リハビリテーションは、ハンセン病のイメージを変化させ、自己報告による新患登録を促進させるとともに、社会的差別偏見の低減、ひいては回復者の人権の回復につながります。さらに国内のハンセン病回復者に時折見られる遅発性神経炎、慢性神経因性疼痛や男性骨粗鬆症に関してはよく分かっていないことが多く、再発、耐性菌の出現と共に今後の課題です。日本においては、ハンセン病の日本人からの新患発生はほぼ終息しました。しかし、世界的には新患の発生は続いているため、国内在住の外国人からの発生が年間数例報告されています。現在ハンセン病療養所には、2,300名あまりの障害を持った回復者が生活されており、また在宅の回復者数は1,400名あまりと言われています。今後、ハンセン病新規発生、および回復者の数は減少して行くと考えられますが、療養所、一般医療施設とも、新規および障害を持った回復者がそれぞれの生活の場にあって安心して受診できる医療の提供を最後まで維持していくことが重要と考えられます。