会長あいさつ

ご 挨 拶

 
 このたび、第91回日本ハンセン病学会総会・学術大会を2018(平成30)年6月14日(木)~15日(金)、国立療養所東北新生園内、さくらホールにおいて開催する運びとなりました。
 ここ東北新生園は昭和14年に病床数400床で開設され、昭和29年には770床となり、昭和32年には最多の628名を数えていた入所者数は平成29年12月時点で68名、平均年齢は87.2歳となっております。現在は入所者の中にはハンセン病の菌陽性者はおらず、社会的な要因や後遺症の対応のために入所している状況です。療養所の職員のほとんどはハンセン病診察に関わったことがなく、外国におけるハンセン病の研修に行く機会を利用して学んでおります。
 今回、シンポジウム2題を計画しております。
 シンポジウム1では「諸外国のハンセン病対策と医療か
ら学ぶべき事 −国際医療協力と国内医療に求められる知見とは−」というテーマを取り上げました。世界のハンセン病医療の歴史、残された課題、今後の国際医療協力、薬剤耐性の問題などについて経験豊富な先生方に討論していただきます。また、国内の療養所における入所者の本病の再発・再燃についてどのようにこれらのことを生かせるか、そのポイント、注意点などについて専門家に論じていただければと思っております。
 シンポジウム2として、「日本ハンセン病学会の現状と課題−新理事会からの提案」を予定しています。新しい理事会により討議を重ねてきた諸問題の中から新患調査、ハンセン病診療ネットワーク、啓発活動文章の医学的検証とひな形の作成などにつき取り上げます。それぞれワーキンググループを立ち上げるべく議論を重ねてきたテーマですが、当日は会場の会員の方々のご意見も出していただき、一定のコンセンサスを得たいと考えております。
 特別講演、教育講演については現在療養所で問題になっている誤嚥性肺炎、転倒による骨折、その予防のためのリハビリテーションについて予定しています。
 特別講演は「高齢者の感染症を診る ~そのコツとピットフォール~」のタイトルで国立国際医療研究センター病院の具 芳明先生にお願いしました。療養所では誤嚥性肺炎が多く、その予防、対策などについて提言していただければと思っております。また結核も昔の病気ではなく、多くの施設で発症が見られています。結核についてもお話していただければとお願いしました。
 入所者の転倒・骨折についてはどこの療養所でも多く経験し、何とかしなければという思いは多くの職員が持っていると思います。そこで「転倒でよく見られる骨折-診断・治療の要点と盲点」をテーマに、国家公務員共済組合連合会東北公済病院 副院長 整形外科統括部長の羽鳥 正仁先生に治療・予防のポイントについての講演をお願いしました。臨床医として数々の経験と足の外科の専門医でもある羽鳥先生から有益なお話が聞くことが出来ると思います。
 肺炎や転倒による骨折などならないように、日頃、どのように入所者に運動をしてもらえればよいかという視点で、東北大学大学院医学系研究科 障害科学専攻 機能医科学講座の上月 正博教授に教育講演をお願いしました。「幸せと元気を呼ぶ『らくらく運動療法』:その実際と効果」という講演の中から、療養所の職員も多く勉強になり、参考になることがあるでしょう。上月教授は心臓・肺・腎臓などのリハビリテーションの専門家で、著書も多くあり、特に高齢者の健康管理には必読と思われます。
 東北新生園は宮城県の北部に位置し、県庁所在地の仙台の北方60キロの所にあり、近くには白鳥の飛来で有名な伊豆沼などの景勝地が臨めます。周囲は宮城県有数の米どころであり、豊富な清水もあり、牛タン、ホヤ、笹かまぼこなどの山海の珍味を日本酒でいただくと、口の中に豊穣としか言いようのない味わいをもたらしてくれます。このような宮城県、東北新生園に多数の会員の皆様がご参会いただければ・・とお待ち申し上げて降ります。

第91回日本ハンセン病学会総会・学術大会
会長:横田 隆

ページ上部へ戻る