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「乳及び乳製品の成分規格に関する省令(昭和26年厚生省令第52号)及び食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の一部改正(畜産食品に係る動物用医薬品の残留基準設定)」に対して寄せられたご意見等について

平成13年9月14日
厚生労働省医薬局
食品保健部基準課

 乳及び乳製品の成分規格に関する省令(昭和26年厚生省令第52号)及び食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の一部改正(畜産食品に係る動物用医薬品の残留基準設定)については、平成13年5月1日から5月31日まで、ホームページ等を通じてご意見を募集したところ、のべ17件のご意見、ご要望をいただき、ありがとうございました。
 お寄せいただいたご意見等とそれらに対する事務局の考え方について次のとおりとりまとめました。
 お寄せいただきましたご意見等につきましては、とりまとめの便宜上、案件ごとに適宜集約させていただいております。
 今回、ご意見をお寄せいただきました方々のご協力に厚く御礼申し上げます。


「乳及び乳製品の成分規格に関する省令(昭和26年厚生省令第52号)及び食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の一部改正(畜産食品に係る動物用医薬品の残留基準設定)」に対して寄せられたご意見等について

○ 基準値について

意見1
・ 肝臓の基準値が高くて大丈夫なのか。
・ 内臓類がゆるい設定というのはどうか。

 肝臓の残留基準値が高いのは、肝臓は、腸管から吸収された薬物が門脈を介して最初に通過する臓器であり、機能上、薬物をトラップしやすい構造になっているため、薬物は体の他の部位よりも高濃度に蓄積されるためです。トラップされた薬物はそこで肝細胞の酵素により代謝を受けます。腎臓についても排泄をつかさどる臓器のため、他の部位に比べて残留しやすくなっています。
 また、肝臓や腎臓などは夾雑物が多いため、残留動物用医薬品の実用的な分析法における検出限界が高くなっているため、基準値が高くなっています。
 しかし、これらを考慮し最大残留基準値(MRL:Maximum Residue Limits)が設定されており、日本人の畜水産食品の摂取量から理論最大摂取量を算出しても、人が生涯にわたり摂取しても問題のない量(1日摂取許容量(ADI:Acceptable Daily Intake))を超えることはありません。

意見2
・ 乳については乳幼児も飲用する事からこの数値がそのまま安全基準値と考えられるのか。

 残留基準値の設定に当たっては、動物や細胞などを用いた様々な試験データを用いて、1日摂取許容量を決定し、これを基に、食品中の残留基準値の設定を行います。
 1日摂取許容量(ADI)の決定に当たっては、試験の結果、全く影響のない用量である無影響量(NOEL)又は有害な影響のない無毒性量(NOAEL)に、安全性係数(通常、1/100又は1/200)を乗じて決定しており、十分な安全性を見込み、残留基準値の設定を行っています。
 また、日本人の小児(1〜6才)における食品の平均摂取量から理論最大摂取量を算出しても、ADIを超えることはありません。

意見3
・ 殺虫剤は、生物をころす力を持つ薬品なので、残留はなくすべきである。

 安全性評価のための動物や細胞などを用いた様々な試験には、動物を用いた急性毒性試験、慢性毒性試験、催奇形性試験、発がん性の試験や、細胞などを用いた全変異原性試験、微生物に対する影響(薬剤耐性、菌交代症等)の試験等、様々な試験データを用いて、無影響量又は無毒性量を決定しており、更に安全係数を乗じて残留基準値の設定を行っており、基準値内の残留であれば健康に影響を与えるおそれはありません。

意見4
・ 段階的措置としては、国際的な基準値との整合性という観点からということであれば、日本は率先して国際的な基準値の半分の値での設定すべきである。

 これまで述べてきたように、残留基準値は種々の試験結果に基づき1日摂取許容量を決定し、これに基づき食品中の残留基準値の設定を行っており、科学的根拠に基づき設定されています。また、日本人の食習慣を十分考慮し算定された平均摂取量から理論最大摂取量を算出しても1日摂取許容量を超えるものではなく、基準値を国際基準の半分に設定しなくても安全性が確保されると考えます。
 逆に、半分の値に設定するためには、それに対する説得できる科学的データが必要となり、かつ、国際的な合意を得る必要があります。

○ 検査について

意見5
・ このレベルの検査データを得る方法としてどのような検査法を考えているのか。
・ 現在使用している検査機材を使用できるのか。

 具体的には、蛍光検出器付き又は紫外線分光光度計付き高速液体クロマトグラフを使用し、従来、動物用医薬品の測定に使用している機材、方法を使用できます。

○ 安全性について

意見6
・ 基準値の設定をするのならば、摂取することによって体内に、蓄積されていく抗生物質、合成抗菌剤等についての安全性を説明すべきである。

 残留動物用医薬品の安全性は、動物を用いた各種の毒性試験の結果から判断されますが、継続的な薬物の摂取につきましては、3ヶ月以上(通常12ヶ月以上)薬物を繰り返し投与する慢性毒性試験の結果から、組織への蓄積等に関する知見も含めて安全性を確認しています。

意見7
・ 残留マーカーを何にするかは残留基準値と不可分なことなので、各薬剤の残留基準値に残留マーカーを明示するべきである。また、残留マーカーと総残留濃度の関係など、残留マーカーの適否についての説明が必要である。

 今回、残留基準値を設定する動物用医薬品はすべて親化合物を指標(マーカー)としています。残留マーカーと総残留濃度の関係は次のとおりです。

○ ゲンタマイシン、ネオマイシン・・・2品目ともほとんど代謝されません。
○ シロマジン・・・排泄物中の75%(卵中58〜70%)が親化合物であり、主要な代謝物はメラミンです。食品中のメラミン残留に関しては毒性上、問題は認められていません。
○ スペクチノマイシン・・・肝臓において約75%が加水分解物であるデヒドロスペクチノマイシンに代謝され、総残留量は以下のとおりです。

組織 摂取量
(g/日)
基準値
(μg/g)
理論最大摂取量
(μg/日)
親化合物
(摂取量×基準値)
総残留物
(スペクチノマイシン相当量)
筋肉 77.5 0.5 38.8 387.5*1 38.8 620.0*2
脂肪 2.0 155.0 155.0
肝臓 2.0 155.0 620.0
腎臓 5.0 387.5 387.5
鶏卵 40.5 2.0 81.0 81.0 81.0 81.0
135.0 0.2 27.0 27.0 27.0 27.0

合  計

495.5 728.0
ADI比(%) 24.8% 36.4%
*1:全ての食肉を基準値が最も高い腎臓(基準値:5.0ppm)で摂取したと仮定した場合の理論最大摂取量(77.5g×5.0μg=387.5μg/日)
*2:肝臓での未変化体の重量は総残留物重量の25%なので、「摂取量×基準値」を0.25で割って、総残留物量を算出。肝臓での総残留量が最も多いので、全ての食肉を肝臓で摂取したものと仮定し、ADI比を算出。

意見8
・ 抗生物質は、耐性菌などの心配があるので、残留はなくすべきである。
・ 耐性菌産生を考慮した基準値の考え方と使用基準について
 ゲンタマイシンにおける幾何平均MIC50値(6ppm)と腎臓の残留基準値(5.0ppm)、スペクチノマイシンにおける形式上MIC値(16ppm)と腎臓の残留基準値(5.0ppm)、ネオマイシンにおけるMIC50値(64ppm)と腎臓の残留基準値(10.0ppm)などは数値が接近しているが、肉類から摂取した抗生物質が細菌に直接作用する場合を仮定するならば、この数値の接近は消費者にとって安心できるものではない。MICの値を無作用濃度として採用する根拠と残留基準値の考え方を、明示するべきである。
 また、今回のゲンタマイシンとスペクチノマイシンのように、ADIの設定にin vitroのMICの値を採用した計算法を用いる例は多いが、これらの値は厳密には無作用濃度とはいえないと考える。安全係数を1としていることと考え合わせると、NOEL(またNOAEL)と同様にMIC値などを無作用濃度として採用する根拠、考え方を明示した上でADIを設定すべきである。

 ゲンタマイシンを含むアミノ配糖体薬は、腎排泄型薬であり、腎尿細管上皮のリン脂質と結合し長時間残留します。しかし、腎尿路系は本来無菌の臓器、組織であり、耐性菌の発現が最も少ない所と考えられます。また、MIC50値と腎臓の残留基準値とが接近しているとのご指摘ですが、このMIC50値は試験管内試験でのデータであり、生体内における値ではなく、両者の数値が接近していることのみから安全ではないと結論できるものではありません。
 ヒト腸管内の常在細菌叢の変動が直ちにヒトの健康に対する影響を推し図れるものではありませんが、常在細菌叢の安定的な構成は感染防御機構としての重要な役割を果たすものであることから、これに対する影響を十分に評価できる試験結果が必要です。
 その評価に際しては、常在細菌叢の構成並びに存在部位を十分踏まえた上で、細菌数及び感受性への変動等の複数のパラメータを用いることにより細菌叢及び細菌叢の代表的な菌種に対する影響が考慮されていなければなりません。試験系については、現在のところ、ヒト被験者を用いた試験やヒトの常在細菌叢を移植した実験動物の試験の他、当該物質に対して感受性の高いヒトの常在細菌叢中のいくつかの代表的菌種について実施されたMICの測定試験があります。
 さて、このMIC値を無作用濃度として採用している根拠ですが、従前、JECFA(Joint Expert Committee for Food Additives)では、試験管内での種々の細菌数100万個中50%が抑制される濃度の幾何平均値として形式上のMIC50値をまず初期値とし、この値に細菌の感受性の違いによる不確定係数、他の細菌との混合培養、嫌気性培養条件の違い、pHの違いや被験物質の腸管の部位による活性化の違いなどを考慮して種々の係数を乗除して「ヒト腸内細菌叢に対する微生物学的無影響量」を算定していました。その後、1996年に開催されたJECFAにおいて、それまでにJECFAが評価した抗生物質や抗菌剤の「ヒト腸内細菌叢に対する微生物学的無影響量」を見直したところ、「もっとも感受性の高いヒト腸内細菌種におけるもっとも低いMIC50値」が従前のJECFA算定式のこの「ヒト腸内細菌叢に対する微生物学的無影響量」に近似することから、この算定式における「ヒト腸内細菌叢に対する微生物学的無影響量」を「もっとも感受性の高いヒト腸内細菌種におけるもっとも低いMIC50値」に変更した経緯があり、ヒトの健康に対する安全性は十分に考慮されています。以上が、現在MICの値を無作用量として採用している根拠ですが、in vitroの試験モデルについては、将来十分に発展する可能性があり、今後、食物を介しての吸収量を含め、さらに検討を要すべき課題であると考えます。

意見9
・ ADIを算出する計算式において、「1日の糞便量」としての値が、ゲンタマイシンでは220gであるのに対して、スペクチノマイシンとネオマイシンは150g(ただしネオマイシンでは、最終的にはMIC50がADIの根拠となっていないが)と、異なっており、明らかにするべきである。

 第38回JECFA(1991年)での微生物学的リスク算定式では、1日の糞便量は150gとして計算しておりましたが、第47回JECFA(1996年)からはこの算定式を修正して、1日の糞便量は220gと変更された経緯があり、検討された時期の違いによるものです。
 ゲンタマイシンを「1日の糞便量=150g」として計算すると、ADIは15μg/kg体重/日となり、ADI比は55.3%となります。

意見10
理論最大摂取量の算出方法について
・ ゲンタマイシン、スペクチノマイシン、ネオマイシン共通事項
 食肉については、「全ての食肉を、残留基準値の高い腎臓で摂取した場合を仮定」して算出されており、これは安全を見越した考え方であるが、JECFAのように食肉ごとに分類した場合の摂取量も見積もっておくべきである。

 厚生労働省が理論最大摂取量の根拠としている国民栄養調査成績では、食肉の平均摂取量のみで部位ごとの集計がされていないため、全ての食肉を残留基準値の最も高い部位で摂取したことを仮定したより厳しい方法により算出しています。
 仮に、国民栄養調査による日本人の平均の摂食量を、JECFAにおける試算と同様の比率を用いて理論最大摂取量を計算した場合、下表のとおり理論最大摂取量はADIを超えていません。
 今後、より現状に見合った理論最大摂取量を確認するため、食肉部位ごとの平均摂取量に基づく理論最大摂取量の算出につきましても検討をさせていただきます。

動物用医薬品 理論的最大摂取量
(μg/日)
ADI比
(%)
ゲンタマイシン 785.0 78.5
102.2 10.2
85.7 26.8
シロマジン 50.0 5.6
117.8 1.3
9.2 3.2
スペクチノマイシン 1200.0 60.0
216.5 10.8
166.3 26.0
ネオマイシン 1525.0 50.8
200.1 6.7
178.6 18.6
上段:JECFAにおいて使用している摂取量をもとに算出
中段:JECFAにおいて使用している摂取量の比率をもとに日本人の平均摂取量から算出
下段:JECFAにおいて使用している摂取量の比率をもとに小児の平均摂取量から算出

(注:国民栄養調査では、肉の種類別の摂食量は集計されていないので、筋肉、脂肪、肝臓、腎臓については、JECFAの食肉の比率(筋肉:脂肪:肝臓:腎臓=300:50:100:50)を用いています。この計算を行うと、大人(( )は子供)の場合、食肉の摂食量77.5(51.6)gは、筋肉 46.5(31.0)g、脂肪 7.8(5.2)g、肝臓 15.5(10.3)g、腎臓7.8(5.2)gとなります。)

意見11
理論最大摂取量の算出方法について
・ シロマジン
 シロマジンに対しては、農薬としての残留基準値も設定されている。理論最大摂取量の試算において、食肉、卵および乳からの摂取量は試算されているが、農薬に由来する摂取量の試算の分は加算されておらず、農薬に由来する摂取量も含めた試算値およびADI比を把握しておくべきである。

 今回の残留動物用医薬品の基準値を検討した薬事・食品衛生審議会乳肉水産食品・毒性合同部会(平成13年3月23日)に先立って、同審議会毒性・残留農薬合同部会において農薬としてのシロマジンの検討が行われています。これらの資料によると、ヒトが摂取する量は次のとおりです。

  日本人平均 小児(1〜6才)
摂取量
(μg/日)
ADI比
(%)
摂取量
(μg/日)
ADI比
(%)
畜水産食品 13.3 1.5 10.2 3.5
野菜等 450.0 50.0 219.2 76.1
合計 463.3 51.5 229.4 79.6

意見12
理論最大摂取量の算出方法について
・ スペクチノマイシン
 部会の報告書の薬物代謝の項に「動物での情報がない」と記載されている。スペクチノマイシンを経口投与した場合の吸収率は低いが、筋肉注射や皮下注射でも投与される薬剤であるので、投与対象動物における代謝の情報がなければ、畜肉等に残留する物質の安全性評価ができないことになる。さらに、残留マーカーを親化合物とする根拠もないことになり、残留基準の意味自体がゆらいでしまうと思われる。ただし、JECFAのTechnical Report Series 888 のスペクチノマイシンの項には、投与対象動物における残留試験結果がいくつか報告されており、残留するのは親化合物のみではない。たとえばウシの肝臓についてはHPLC法で測定した親化合物 (残留マーカー)残留濃度と抗菌活性に基づいて測定した総残留濃度の比は1:3.6と紹介されている。したがって、JECFAは肝臓からの摂取量の見積もりに当たって、残留マーカー濃度から総残留濃度への換算係数として4.0を採用している。つまり親化合物を残留マーカーとする肝臓での残留基準値2.0ppmは総残留濃度で表すと8.0ppmということになり、腎臓の残留基準値(5.0ppm)よりも高いことになる。代謝されやすい薬物の場合の摂取量を見積もるには、JECFAの試算方法が理にかなっており、このような補正が必要であると考える。(前回基準設定されたチルミコシン、レバミゾールおよびエプリノメクチンについても同様の指摘をしている。)
 スペクチノマイシンの理論最大摂取量をJECFA方式の補正を加えて試算すると(この場合はすべての食肉を肝臓で摂取した場合と仮定して)成人で0.728mg、小児で0.507mgとなり、ADI比はそれぞれ36.4%、79.2%となる。

 ○安全性について意見7回答文を参照してください。今後、より現状に見合った理論最大摂取量を確認するため、食肉部位ごとの平均摂取量や総代謝物に基づく理論最大摂取量の算出につきまして検討をさせていただきます。

 スペクチノマイシンの食肉部位毎の推定摂取量及び総代謝物に基づく理論最大摂取量

上段:JECFA、中段:日本人平均、下段:日本人小児
組織 摂取量
g/day
基準値
μg/g
親化合物として
(摂取量×基準値)
総残留物量
(スペクチノマイシン相当量)
ADI比(%)
親化合物として
ADI比(%)
総残留物量
筋肉 300.0 0.5
(牛、豚、
その他)
150.0 150.0 7.5 7.5
46.5 23.3 23.3 1.2 1.2
31.0 15.5 15.5 2.4 2.4
脂肪 50.0 2.0
(牛、豚、
その他)
100.0 100.0 5.0 5.0
7.75 15.5 15.5 0.8 0.8
5.16 10.3 10.3 1.6 1.6
肝臓 100.0 2.0
(牛、豚、
その他)
200.0 800.0 10.0 40.0
15.50 31.0 124.0 1.6 6.2
10.32 20.6 82.6 3.2 12.9
腎臓 50.0 5.0
(牛、豚、
その他)
250.0 250.0 12.5 12.5
7.75 38.8 38.8 1.9 1.9
5.16 25.8 25.8 4.0 4.0
100.0 2.0 200.0 200.0 10.0 10.0
40.5 81.0 81.0 4.1 4.1
29.2 58.4 58.4 9.1 9.1
1500.0 0.2 300.0 300.0 15.0 15.0
135.0 27.0 27.0 1.4 1.4
178.4 35.7 35.7 5.6 5.6
JECFA計 1200.0 1800.0 60.0 90.0
日本人成人計 216.5 309.5 10.8 15.5
日本人小児計 166.3 228.2 26.0 35.7


○その他

意見13
・ 根拠となる論文又はデータの具体的な引用部分と研究グループは。

 各薬剤は、FAO/WHOによる専門家委員会JECFA(Joint Expert Committee for Food Additives)において、安全性評価を行っており、ここでの評価資料等を基に、必要に応じてその他の文献を参考に安全性を評価しています。具体的な引用部分と研究グループについては、平成13年3月23日薬事・食品衛生分科会乳肉水産食品・毒性合同部会資料(厚生労働省公開文書)を参考にしてください。

意見14
・ 罰則のない基準値ではなく規制値(法律)を作るべきである。

 今回、残留基準値が設定される食品は、食品衛生法第7条に基づき、規格が定められるもので、この規格に適合しない食品の流通・販売・輸入等については同法により禁止され、違反した場合は罰則が適用されます。

意見15
・ これまで、抗生物質は食品には、含有してはならず、また合成抗菌剤は乳、食肉、魚介類等に含んではならないとしてきたのであれば、何故、人の健康に影響がないレベルとして、食品中の残留基準を設定することが可能となったのか。この基準値は、50年後、100年後の国民の健康を保証できると確証できるのか。

 従来、抗生物質等の食品への含有を認めないこととした理由は、薬剤耐性菌の出現やその増殖を助長することによる人への健康に対する影響が懸念されたためです。近年、実験動物を用いた毒性実験結果から人が生涯にわたって摂取しても有害作用が発現しない一日あたりの摂取量(ADI)の設定が可能となりました。
 具体的にADIの設定については、吸収・分布・代謝・排泄に関する試験、単回及び反復投与試験、生殖毒性試験、変異原性試験、発ガン性試験、更に抗生物質・抗菌剤などには微生物抑制試験等のデータに基づき、科学的な安全性について確認されており、これらの方法は国際的にも整合性のとれた方法により行われています。

意見16
・ パブリックコメントはインターネットのみに限らず、あらゆる手段で国民に対して大いにアピールして頂きたい。

 現在、パブリックコメントは厚生労働省ホームページに掲載していますが、必要に応じて報道発表を行うなど、広く国民の方々に周知したいと考えています。

意見17
 ゲンタマイシンやネオマイシンのようなアミノグリコシド系抗生物質(AGs)を連用すると、細菌がAGs修飾酵素を産生し、AGs修飾酵素産生遺伝子が菌種間で伝播されることで耐性菌の出現を招き、さらにAGs間での交叉耐性も発生することが知られている。また、スペクチノマイシンに対しても他の抗生物質との交叉耐性が発生することがよく知られている。従って、ゲンタマイシン、ネオマイシン、スペクチノマイシンそのものがヒトの感染症治療に使用されるケースは少ないとしても、現在ヒトの感染症治療に使用されている多くのAGsをはじめとしたその他の抗生物質との交叉耐性の発生には十分注意する必要がある。
 また、これらの薬剤のような耐性菌出現の懸念がある抗生物質については、残留基準の設定ととともに、それと一体になった厳密な使用基準への言及が不可欠であると考える。薬剤が使用される生産(畜産)現場での管理から実際に食品として消費者の手元に届くまで、全体の流れを踏まえた規制体系を、農水省と連携して確立されるよう要請する。

 意見8の回答にもあるようにヒトの腸内細菌叢への影響については、もっとも感受性の高いヒト腸内細菌種における感受性菌を中心とする低いMIC50値を微生物学的無影響量として採用しており、通常、抗菌薬の有効性を問題とする場合、MIC90の値を参考としています。MIC90値より更に低い値(MIC値)を採用しているため、ヒトの健康に対する安全性は十分に考慮されています。
 とは言え、抗生物質や抗菌剤における薬剤耐性菌の出現や菌交代症などの問題については、非常に重要な問題であると考えております。また、抗生物質や抗菌剤以外の動物用医薬品についても、使用等に関して規制が必要なものもあり、今後とも、動物用医薬品の製造、販売、使用等の規制を行っている農林水産省と十分な情報交換を行い進めてまいりたいと考えています。
 なお、動物用医薬品が残留した食品の監視については、国産畜水産食品は、各都道府県において、輸入畜水産食品は、各検疫所において検査を実施しており、基準を超えた動物用医薬品等が検出された場合には、回収・廃棄・積戻し(輸入品)等の措置がとられ、農林水産部局等と連携し、残留原因の解明、生産者への指導などが行われ再発防止の措置をとっています。
 過去10年間の調査結果は以下のとおりです。これらの検査結果については、とりまとめ次第、インターネット等で公表しています。

畜水産食品残留モニタリング検査結果について

国産畜水産食品モニタリング検査件数、検出数などの推移
  H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11
検体数 2,256 8,486 9,855 10,311 10,996 10,413 7,207 8,988 9,170 11,215
違反数 36 30 32 7 63 40 8 8 6 8
違反率 1.6% 0.35% 0.32% 0.07% 0.57% 0.38% 0.11% 0.09% 0.07% 0.07%
検査項目数 10,946 24,477 45,044 56,209 63,853 71,592 55,139 63,780 53,733 46,009

輸入畜水産食品モニタリング検査件数、検出数などの推移
  H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11
検体数 339 812 2,168 2,347 1,990 2,151 2,522 2,409 2,353 2,450
違反数 0 3 1 3 5 1 0 0 5 0
違反率 0% 0.37% 0.05% 0.13% 0.25% 0.05% 0% 0% 0.21% 0%
検査項目数 2,710 4,240 5,723 7,021 5,767 6,569 4,094 5,987 5,058 4,284


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