パブリック・コメント  厚生労働省ホームページ

遊泳用プールの衛生基準に関する指針の一部改正に関する
御意見の募集結果について

平成13年7月24日
厚生労働省健康局生活衛生課

 遊泳用プールの衛生基準に対する指針の一部改正については、以下のとおり御意見を募集いたしました。

(1)期間:平成13年6月12日から7月11日までの1ヶ月間
(2)告知方法:厚生労働省ホームページ、記者発表等
(3)意見募集方法:電子メール、郵便、FAXのいずれか
(4)受付意見件数:15件(意見提出者数)

 このたび寄せられた御意見につきましては、とりまとめの都合上、適宜集約させていただきました。今回御意見をお寄せいただきました方々の御協力に厚く御礼申し上げます。


*遊泳用プールの衛生基準に関する指針の一部改正に関するパブリックコメントへの回答

1.全体に関すること
御意見の概要 考え方
・現行の遊泳用プールの衛生基準である「遊泳用プールの衛生基準」の名称を「遊泳用プールの衛生基準に関する指針」に変更すると、法的拘束力が緩和する印象を与え、プール水質をさらに悪化させかねないので現行の名称に据え置くべき。 ・ 修文しました。なお、元来この基準には法的拘束力はありません。
・ プール先進国であるドイツの水質基準並に厳格な基準を設定すべき。 ・ プールの水質基準は、プール水の原水等の状況を踏まえてリスク管理の上で必要な基準を設定しています。今回の改正により、プールの快適性及び安全性が一層向上するものと考えております。

2.水質基準に関すること
御意見の概要 考え方
・ 現行の水素イオン濃度(pH)の基準値は幅が広すぎる。pHが高くなると塩素の殺菌力が低下するため、それを補うために必然的に塩素の注入量が増え、遊泳者が皮膚炎や目の痛みを訴える状態が改善されない。従って、上限は少なくともpH8以下に抑制すべき。
・ 遊離残留塩素の上限値を「1.0mg/L以下が望ましい」ではなく、「1.0mg/L以下」と設定すべき。
・ プール水は水道水に比較して汚染負荷が高いことから、遊離残留塩素濃度は「1.0mg/L以上、1.5mg/L以下が望ましい」と設定すべき。
・ 基準のpH内で0.4mg/L以上の遊離残留塩素濃度が維持されれば、十分な消毒効果があり、pHにより塩素の注入量が増えることにはなりません。また、遊離残留塩素の上限値については、過剰な塩素投入を抑制するため設定されているものですが、1.0mg/Lを超えても直ちに健康被害を及ぼすものではありません。
・ 安易に化学薬品(凝集剤)に頼ってプール水の透明度を確保することがないよう指導要綱を示すべき。 ・ 凝集剤を必要に応じて適切に使用することは、効率的かつ有効なろ過を行う上で必要です。透明度の確保に当たっては、補水、換水、ろ過を適切に組み合わせた方法により管理が行われることが妥当です。
・ トリハロメタンのうち、特にクロロホルムの基準値を水道水質基準と同じ「0.06mg/L以下」に設定すべき。
・ プール水は意図的に飲むものではないため、トリハロメタンの基準設定の意義が認められない。
・ 総トリハロメタンの暫定目標値を改正案として提示しているが、個々の4物質についての基準値は設定しないのか。また、目標値を超えた場合、どのような改善措置をとればよいか。
・ トリハロメタンの基準は、現在の知見、誤飲による摂取等を考慮して、総トリハロメタンについて暫定目標値として設定しました。現段階でプールの水質管理にクロロホルムを指標とすることは考えていません。ただし、今後の知見の進展等により、見直し等の検討を行うことはあり得ます。
・ 目標値を超えた場合は、補水、換水等を行う他、塩素の濃度が過剰とならないよう適切な管理を行う必要があります。
・ 二酸化塩素による消毒を実施しているプールは少ないので、基準値は不要ではないか。 ・ 二酸化塩素による消毒も考えられるため、基準値を設定したものです。
・ 結合残留塩素濃度の基準値を「0.3mg/L以下と設定すべき。また、その改善策として、1日の新規補給水量をプール水の5%とするよう維持管理基準に設定すべき。
・ 結合残留塩素の分解速度が最も早くなるpH値(約7.5)に着目したpH設定をすべき。
・ 過マンガン酸カリウム消費量等の他の指標で管理が可能で、現段階では、結合残留塩素の基準値を設定する必要性は少ないと判断しています。ただし、今後の知見の進展等により、見直し等の検討を行うことはあり得ます。
・ プールの原水として温泉水や井戸水を使用する場合は、それらに鉄やマンガンなど現行の水質基準に規定されていない物質も多く含まれることがあることから、前処理の規定を設けるべき。 ・ プールの管理者等において温泉水や井戸水の使用により壁面等の着色が心配される場合には、その判断により対応が行われるべき事柄です。

3.施設基準に関すること
御意見の概要 考え方
・ ろ過器の性能として「ターン数」を規定するのではなく、「ろ過速度」を規定することが望ましいのではないか。
・ プールの水質はろ過精度が重要なポイントであるため、これを規定する項目を盛り込むべきである。
・ 今回の改正により「ターン数」から「ろ過器出口の濁度(基準値:0.5度以下。0.1度以下が望ましい。)」に変更し、ろ過水の水質の面からろ過性能を確認できるようにしています。
10 ・ ろ過器出口の濁度を「0.1度以下が望ましい。」としているが、このような低濁度の水を測定器で測定するのではなく、プール水の「透明度」を肉眼で確かめることによりろ過器の性能を確認できる方法の確立を望む。 ・ ろ過機の性能を確認する目的で低濁度の水を測定する場合には、測定器による方法が適当です。
11 ・ プールの底の循環水取入口での吸い込み事故を防止するため、この方式による循環ろ過システムを廃止し、オーバーフロー水を循環ろ過するシステムを確立すべき。 ・ プールの底から循環水を取り入れる方式において、吸い込み事故防止のための措置を行うことにより、安全に利用することができます。

4.維持管理基準に関すること
御意見の概要 考え方
12 ・ 水質検査の際の採水地点は、現行では「矩形のプールの対角線上の水面下20cm及び循環水の取入口付近の4箇所」となっているが、循環水のプール本体への吐出口を複数設け、各吐出口から循環水取入口に達するまでの時間が同一となるよう吐出流速を調整するなどの措置を講ずれば、プール全体の水質が均一になると考えられることから、水質検査の際の採水地点を循環水の取入口の上部1箇所にしても支障はないのではないか。 ・ 採水地点の規定は、プールの平均的な水質を代表すると考えられる地点として設定したものです。
13 ・ 俗称である「ジャグジー」の表現を用いるのは不適当であるので、「気泡浴槽」などの語とすべきではないか。 ・ 修文しました。
14 ・ ジャグジーやホットバス等の付帯設備におけるレジオネラ属菌の検査は、年2回以上とすべき。 ・ レジオネラ属菌による感染は、設備の清掃等を適切に行うことで予防が可能で、常時、菌の検出の危険性を監視し続けなければならないものではないので、検査を年1回以上とすることとしています。
15 ・ 水質検査の検査方法を明示して欲しい。
・ 水道における遊離残留塩素濃度の測定法からは、オルトトリジン法が平成14年度から廃止される予定となっている。遊泳用プールにおいてはどのような取扱いになるのか。
・ 水質検査の方法については、標準的な検査方法を基準に示しました。
・ オルトトリジン法については、水道水と同様に平成14年度から廃止することとします。
16 ・ 現状のシャワー洗浄では、体表面の洗浄はできても腰部の糞便等は十分洗浄できないことから、腰洗い槽の項目は削除しないでほしい。 ・ 腰洗い漕については、高い塩素濃度により肌への刺激等を訴える利用者もおり、プール水の浄化設備が向上し、適切なシャワー洗浄により対応できることから、削除するものです。



健発第774号
平成13年7月24日
都道府県知事
政令市市長
特別区区長
殿
厚生労働省健康局長

遊泳用プールの衛生基準について


 遊泳用プールにおける衛生水準の確保については、「遊泳用プールの衛生基準」(平成4年4月28日付け衛企第45号厚生省生活衛生局長通知)に基づき指導いただいてきたところであるが、今般、「遊泳用プールの衛生基準」を別添のとおり改訂したので、御了知の上、衛生管理等の指導の指針として活用するとともに、関係者に周知されたい。これに伴い、同通知は廃止する。
 なお、関係者への周知、プール管理者等の対応等に一定の期間が必要と判断される場合には、条例の改正、関係者への指導等に当たって猶予期間(遅くとも平成14年5月31日までに(第3の2の(6)のイの基準及び第4の4の(6)中の循環ろ過装置の出口の濁度の検査に係る部分の取扱いについては、平成15年5月31日までに。既設の遊泳用プールに係る第3の2の(6)のアの基準については、装置の取替えのために必要と考えられる期間の経過後速やかに。)、改正等を行うことが望ましい。)を設ける等の配慮をされたい。
 おって、この通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項に規定する技術的な助言に当たるものである。
 今般の改訂の概要は下記のとおりである。


1 水質基準について

(1) 濁度の基準値を「3度以下」から「2度以下」に改めたこと。

(2) 大腸菌群数の基準値を「100mL中の最確数が5を超えないこと」から「不検出」に改めたこと。

(3) 一般細菌の基準値を「200CFU/mL以下」と定めたこと。

(4) 総トリハロメタンの基準値を暫定目標値として「おおむね0.2mg/L以下が望ましい」と定めたこと。

(5)遊離残留塩素濃度の測定法のうち、オルト・トリジン法を削除したこと。

2 施設基準について

(1) 排水設備について、排水口等における遊泳者等の吸い込みを防止するための措置を具体的に示したこと。

(2) 浄化設備について、循環ろ過装置の出口に濁度の検査のための採水栓又は測定装置を設けることとしたこと。また、その場合の基準値を「0.5度以下(0.1度以下が望ましい)」と定めたこと。

3 維持管理基準について

(1) 遊離残留塩素濃度の測定を「毎日2回以上」から「少なくとも毎日午前中1回以上及び午後2回以上(このうち1回は、遊泳者数のピーク時に測定することが望ましい)」に改めたこと。

(2) 気泡浴槽、採暖槽等の設備の中の水について、レジオネラ属菌の測定を行うこととしたこと。また、その場合の基準値を「不検出」と定めたこと。


別添

遊泳用プールの衛生基準

第1 目的

 本基準は、多数人が利用する遊泳用プールにおける衛生水準を確保する観点から、都道府県、政令市及び特別区において、プールの管理者等に対する指導の指針とするため、水質基準、施設基準及び維持管理基準を定めるものである。
 これらの基準のうち、水質基準は、すべての遊泳用プールを対象とする。また、施設基準及び維持管理基準は、プール本体の水の容量の合計がおおむね100m3以上の遊泳用プールを対象とする。ただし、プール本体の水の容量の合計が100m3に満たないものであっても、これらの基準に合致することが望ましいものであり、幼少児が多数利用するものについては配慮が必要である。
 なお、学校における水泳プールは、学校保健法(昭和33年法律第56号)に基づき衛生管理が実施されていることから、本基準の適用対象とはならない。


第2 水質基準

1 水質基準

(1) 水素イオン濃度は、pH値5.8以上8.6以下であること。

(2) 濁度は、2度以下であること。

(3) 過マンガン酸カリウム消費量は、12mg/L以下であること。

(4) 遊離残留塩素濃度は、0.4mg/L以上であること。また、1.0mg/L以下であることが望ましいこと。

(5) 塩素消毒に代えて二酸化塩素により消毒を行う場合には、二酸化塩素濃度は0.1mg/L以上0.4mg/L以下であること。また、亜塩素酸濃度は1.2mg/L以下であること。

(6) 大腸菌群は、検出されないこと。

(7) 一般細菌は、200CFU/mL以下であること。

(8) 総トリハロメタンは、暫定目標値としておおむね0.2mg/L以下が望ましいこと。

2 水質基準に係る検査方法

(1) 水素イオン濃度、濁度、過マンガン酸カリウム消費量、一般細菌及び総トリハロメタンの測定は、水質基準に関する省令(平成4年厚生省令第69号)に定める検査方法若しくは上水試験方法(日本水道協会編)又はこれらと同等以上の精度を有する検査方法によること。

(2) 遊離残留塩素濃度、二酸化塩素濃度及び亜塩素酸濃度の測定は、DPD法又はこれと同等以上の精度を有する検査方法によること。

(3) 大腸菌群の測定は、水質基準に関する省令に定める検査方法によること。

3 その他

(1) オゾン処理又は紫外線処理を塩素消毒に併用する場合にも、1の(1)から(4)まで及び(6)から(8)までに定める基準を適用するものであること。

(2) 海水又は温泉水を原水として使用するプールであって、常時清浄な用水が流入し清浄度を保つことができる場合には、1の(4)及び(5)に定める基準は適用しなくても差し支えないこと。
 また、原水である海水又は温泉水の性状によっては、1の(1)から(5)まで、(7)及び(8)に定める基準の一部を適用しなくても差し支えないこと。


第3 施設基準

1 総則

 プール設備及び付帯設備は、遊泳者等が安全快適かつ衛生的に利用でき、プールの利用形態や利用者数に見合ったものであること。とりわけ、特定の時期に利用者が集中するプールについては、そのピーク時に見合った設備を備えること。
 また、これらの設備は、運用、点検整備、清掃等が安全かつ容易にできるように設置されていること。
 さらに、貴重な水資源を効率的に利用でき、省エネルギーにも配慮した設備であることが望ましいこと。
 なお、会員制プールなど利用者を限定する性格のプール以外のプールについては、できる限り幅広い国民の利用に応じられる構造設備を備えること。

2 プール設備

(1) プール本体について

不浸透性材料を用い、給排水及び清掃が容易にでき、かつ、周囲から汚水が流入しない構造設備とすること。
 また、プール本体の規模に応じて、適当数の水深表示を行うこと。

(2) プールサイド及び通路

 プールサイドは、プール本体の大きさ、利用者数等を考慮して、十分な広さを有すること。不浸透性材料を用い、かつ、水際の部分は滑り止めの構造とすること。
 通路は、不浸透性材料を用い、かつ、滑り止めの構造とすること。

(3) 給水設備

 給水管が飲料水の配管と同系統の場合は、プール水の逆流防止のため、吐水口空間を設ける等の措置を講ずること。また、常に新規補給水量及び時間当たり循環水量を把握できるよう、専用の量水器等を設けること。

(4) 排水設備

 排水口及び循環水の取入れ口には、堅固な格子鉄蓋や金網を設けてネジ、ボルト等で固定させる(蓋の重量のみによる固定は不可)とともに、遊泳者等の吸い込みを防止するための金具等を設置すること。また、蓋等を固定する場合には、触診、打診等により、蓋等の欠損・変形、ボルト等の固定部品の欠落・変形等がないかを確認し、必要に応じて交換する等の措置を講ずること。
 なお、排水設備は排水路を含め、周辺の生活環境に十分配慮した構造とすること。

(5) 消毒設備

ア プール水の消毒は、原則として塩素又は塩素剤等の消毒剤の連続注入によるものとし、かつ、プール水中の遊離残留塩素濃度(二酸化塩素を消毒に用いる場合は二酸化塩素濃度。以下同じ。)が均一になるように、注入口数及び注入位置を調整するとともに、有効な消毒効果が得られるような設備を設けること。なお、液体塩素等の消毒剤を安全に保管でき、かつ、これによる危害の発生を防止できる構造設備とすること。
イ 二酸化塩素を消毒に用いる場合は、プールの敷地内に設置された装置から発生する二酸化塩素を連続注入する方式のものを使用すること。
ウ オゾン発生装置については、オゾン注入位置がろ過器又は活性炭吸着装置の前にある方式のものを使用すること。

(6) 浄化設備

 循環ろ過方式等の浄化設備を設けるとともに、利用者のピーク時においても浄化の目的が達せられるように、随時、浄化能力を確認すること。
 なお、取水口等はできるだけプール水の水質が均一になるような位置に設けること。

ア 循環ろ過装置の処理水量は、計画遊泳者数、用途等に応じて決定し、1時間につきプール本体の水の容量に循環水量を加えた全容量の6分の1以上を処理する能力を有すること。また、夜間、浄化設備を停止するプールにあっては、1時間につき4分の1以上を処理する能力を有すること。
イ 循環ろ過装置の処理水質は、その出口における濁度が、0.5度以下であること(0.1度以下が望ましいこと。)。また、循環ろ過装置の出口に検査のための採水栓又は測定装置を設けること。
(7) オーバーフロー水再利用設備

 オーバーフロー水を再利用する場合は、オーバーフロー水に排水、床洗浄水等の汚水が混入しない構造とすること。
 唾液やたんを処理するためのオーバーフロー溝を設けている場合であって、オーバーフロー水を再利用するときは、当該オーバーフロー水の循環系統内に十分な能力を有する専用の浄化設備を設けること。

(8) プールサイド等の区画区分

 複数のプールが設置されているなどにより、多様な年齢層による利用や多様な利用形態が見込まれる場合は、事故防止のため、プールサイド等を利用形態等に応じて区画区分できる構造であること。

(9) 適用除外

 海水又は温泉水を原水として利用するプールであって、常時清浄な用水が流入し清浄度を保つことができる構造である場合は、(5)及び(6)に掲げる基準の一部を適用しなくても差し支えないこと。

3 付帯設備

(1) 更衣室

 男女を区別し、双方及び外部から見透かせない構造とするほか、利用者の衣類等を安全かつ衛生的に保管できる設備を設けること。

(2) シャワー設備

 更衣室及び便所からプール本体に至る途中に設置し、通過式洗浄設備とする等によりプールの利用者が遊泳前に洗浄でき、かつ、容易に排水ができる構造設備とすること。
 また、洗浄に使用したシャワー水は、原則として、プール水として再利用する構造としないこと。

(3) 便所

 男女別に利用者数に応じた十分な数を設置すること。床には不浸透性材料を用い、かつ、水洗式の構造設備とすること。
 また、衛生的管理が容易に行える構造設備とし、専用の手洗いを設けること。

(4) うがい設備並びに洗面設備、洗眼設備及び上がり用シャワー

 プールサイドに、うがいができ、遊泳者が唾液やたんを吐くための設備を設けること。また、洗面・洗眼できる設備及び遊泳者が衛生的に使用できる上がりシャワーを設けること。
 これらは、衛生的な管理ができ、かつ、衛生的に使用できる設備とするとともに、遊泳者及び遊泳終了者の利用に便利な位置に必要数を設置すること。また、飲用に適する水が供給されるものであること。

(5) くずかご

適当な場所に十分な数を備えること。

(6) 照明設備

 屋内プール又は夜間使用する屋外プールにあっては、水面及びプールサイドの照度が100ルクス以上になるような照明設備を設けること。ただし、水中照明を設けたり、出入口や水深等の表示が見えるようにする等プール内及びプールサイドの安全措置が十分に講じられている場合は、水面又はプールサイドの照度が100ルクス未満となっても差し支えないこと。

(7) 換気設備

 屋内プールにあっては、炭酸ガスの含有率を0.1%以下に維持できる能力を有する換気のための設備を設けること。
 また、効果的な換気ができるよう、吸気の取入口及び排気口の位置についても適切な配慮をすること。

(8) 消毒剤等保管管理設備

 プールの維持管理に用いる消毒剤や測定機器等必要な資材を適切に保管管理するための設備を設けること。

(9) 監視所等

 遊泳者の事故防止及び安全確保のため、プールの水域全体が見渡せる監視所又は監視設備を設けること。また、緊急時に直ちに対処できるよう、適当な数の救命具、救急薬品等を備えること。

(10)採暖室及び採暖槽

 採暖室及び採暖槽を設ける場合は、衛生的な管理ができ、かつ、衛生的に使用できる構造設備とすること。

(11)遊技等設備

 遊技等のための設備を設ける場合は、危険防止上、適切な構造設備のものとすること。

(12)観覧席

 観覧席を設ける場合は、その出入口をプール利用者のためのものと区別し、かつ、プールサイドとは、さく等で区画すること。

(13)掲示設備

 利用者の注意事項、利用時間、プールの見取り図等を掲示する設備を、入口その他遊泳者の見やすい場所に設けること。


第4 維持管理基準

1 総則

 遊泳者等が安全快適かつ衛生的に利用できるよう、プール水を第2の1の水質基準で定める状態に常に維持するとともに、プール設備及び付帯設備を常に清潔に、かつ、使用に適する状態に維持すること。また、維持管理を適切に行うことにより貴重な水資源を効率的に利用するとともに、省エネルギーについても配慮すること。
 プール水の水質の維持等プールの維持管理上必要な事項について利用者に理解と協力を求めること。
 利用者数はプール設備に見合ったものとし、施設内の安全や衛生が損なわれるおそれのある場合には、利用者数の制限等必要な措置をとること。

2 管理責任者及び衛生管理者

 プールにおける安全で衛生的な維持管理及び運営を確保するため、管理責任者を置くこと。
 また、プールにおける安全で衛生的な維持管理の実務を行わせるため、衛生管理者を置くこと。衛生管理者は、プールにおける安全及び衛生についての知識及び技能を有する者を充てること。
 なお、プールの規模等の実情に応じ、管理責任者と衛生管理者とを同一の者が兼ねることとしても差し支えないこと。

3 プール水の管理

(1) プール水は、常に消毒を行うこと。また、遊離残留塩素濃度がプール内で均一になるよう管理すること。

(2) 浮遊物等汚染物質を除去することにより、プール水を第2の1の水質基準に定める水質に保つこと。
 また、新規補給水量及び時間当たり循環水量を常に把握すること。

(3) プール水の温度は、原則として22℃以上とすること。また、プール水の温度が均一になるよう配慮すること。

(4) プール水の水質検査は、遊離残留塩素濃度については、少なくとも毎日午前中1回以上及び午後2回以上の測定(このうち1回は、遊泳者数のピーク時に測定することが望ましいこと。)を、水素イオン濃度、濁度、過マンガン酸カリウム消費量、大腸菌群及び一般細菌については、毎月1回以上の測定を、総トリハロメタンについては、毎年1回以上の測定(通年営業又は夏期営業のプールにあっては6月から9月までの時期、それ以外の時期に営業するプールにあっては水温が高めの時期とすること。)を行うこととし、これらの測定は定期的に行うこと。
 利用者が多数である場合等汚染負荷量が大きい場合には、水質検査の回数を適宜増やすこと。

(5) (4)の水質検査の結果が、第2の1の基準に適合していない場合には、以下の措置を講ずること。

ア 水素イオン濃度、濁度、過マンガン酸カリウム消費量、一般細菌又は総トリハロメタンが基準値に適合しない場合は、補水、換水、循環ろ過の改善その他の方法により速やかに改善を図ること。
 一般細菌及び総トリハロメタンについては、特に塩素剤の濃度の管理にも十分留意すること。
イ 遊離残留塩素濃度が0.4mg/Lを下回った場合は、遊泳を一時中止し、塩素剤を追加するなどにより遊離残留塩素濃度を0.4mg/L以上としてから遊泳を再開すること。
ウ 大腸菌群が検出された場合は、速やかに遊離残留塩素濃度を測定し、濃度が0.4mg/Lを下回った場合にはイの措置を講ずること。また、0.4mg/L以上であった場合には、大腸菌群の由来等を検討し、ろ過の改善等必要な措置を講ずること。
エ 二酸化塩素を消毒に用いる場合のイ及びウの適用については、「塩素剤」を「二酸化塩素」と、「0.4mg/L」を「0.1mg/L」と読み替えるものとする。
 この場合において二酸化塩素濃度が0.4mg/Lを超えたとき又は亜塩素酸濃度が1.2mg/Lを超えたときは、二酸化塩素の注入量の調整や補水等によって速やかに改善を図ること。

(6) 水質検査の試料採水地点は、矩形のプールではプール内の対角線上におけるほぼ等間隔の位置3箇所以上の水面下20cm及び循環ろ過装置の取入口付近を原則とすること。その他の形状のプールでは、これに準じ、プールの形状に応じた適切な地点とすること。

4 プール設備及び付帯設備の維持管理

(1) プール水の浄化を、一度にプール水の全量を排水しその後水を張ることにより行ういわゆる入替え式プールにおいては、少なくとも5日に1回、プール水の全量を入れ替えること。なお、利用の状況等によっては、これより短い期間ごとに入れ替えるよう努めること。また、全換水時には、汚染物を換水後のプールに移行させないよう必ず清掃するとともに、日頃から藻の発生防止に努めること。

(2) 1年のうちの一定の期間に使用するプールにおいては、使用開始前及び使用終了後、十分な清掃、設備の点検及び整備を行うこと。また、年間を通じて使用するプールにあっては、随時、清掃及び設備の点検整備を行うとともに、必要に応じ水抜き清掃を行うこと。

(3) プールサイド、更衣室(ロッカーを含む。)、便所その他の利用者が使用する設備は、毎日1回以上清掃するとともに随時点検を行うこと。

(4) プールの排水口及び循環水の取入れ口の格子鉄蓋や金網が正常な位置にあり、欠損・変形がないこと、それらを固定しているネジ、ボルト等の欠落・変形等がないこと等を確認すること。

(5) プールに使用する消毒剤を適切に管理すること。また、使用する薬剤が消防法(昭和23年法律第186号)及び労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)に規定する危険物に該当する場合は、これらの法律を遵守すること。
 なお、プール水の消毒に液体塩素を用いる場合は、塩素ガスの漏出等による危害を防止するため、高圧ガス取締法(昭和26年法律第204号)、労働安全衛生法等の関係法規を遵守し、適切に管理すること。

(6) 浄化設備は原則として1日中運転し、ろ材の洗浄又は交換を随時行うこと。浄化設備が運転時間内で浄化の目的を達成できる能力を有しており、夜間やむを得ず運転を停止する場合等にあっては、水質検査等を適宜行うことにより、水質の状況変化を詳細に把握すること。
 循環ろ過装置の出口の濁度の検査を行うことにより、浄化設備が正常に稼動していることを確認すること。
 消毒設備は、少なくともプールの使用時間中は運転すること。

(7) プール水の循環系統は随時清掃し、常に清浄を保つこと。また、新規補給水量を常に把握し、新規補給水と循環水の割合に注意すること。オーバーフロー水を再利用する場合には、十分な浄化及び消毒を行うこと。

(8) シャワー水に用いる洗浄水については、利用者の快適かつ効果的な洗浄に供するため、温水を使用する等、洗浄水の温度を適温とする措置を講ずること。

(9) プール水、シャワー水等の排水に当たっては、環境保全に十分配慮すること。

(10)屋内プールについては、上屋内の空気中の炭素ガスの含有率が0.15%を超えないこと。また、2月以内ごとに1回、定期的に測定を行うこと。
 空気中の炭酸ガスの含有率の測定方法は、施設内の適切な場所を選び、床上75cm以上、120cm以下の位置において検知管方式による炭酸ガス検定器又はこれと同等以上の性能を有する測定器を用いて行うこと。なお、施設の構造及び規模に応じて測定点を増やすこと。また、基準に適合しているか否かの判定は、測定日における使用開始時から中間時、中間時から使用終了時の適切な2時点において測定し、その平均値をもって行うこと。

(11)消毒剤及び遊離残留塩素濃度の測定に用いる試薬及び測定機器等は、適切に管理し、その機能の維持等についても十分注意すること。

(12)プールの使用時間終了後は、直ちにプール設備及び付帯設備を点検し、衣類の残留その他の異常の有無を確認するとともに、人や動物がみだりに立ち入らないような措置を講ずること。

(13)気泡浴槽、採暖槽等の設備その他のエアロゾルを発生させやすい設備又は、水温が比較的高めの設備がある場合は、その設備の中の水について、レジオネラ属菌の検査を年1回以上行い、レジオネラ属菌が検出されないことを確認すること。
 レジオネラ属菌の検査方法は、冷却遠心濃縮法又はろ過濃縮法のいずれかによること。

5 利用の管理

(1) 監視員は監視所から又は監視設備により、プールの水域をもれなく監視すること。なお、救護員(監視員を充ててもよい。)をプール内、プールサイド又は周辺の適当な位置に相当数配置すること。救護員は、応急救護の訓練を受けた者を充てること。この場合、スイミングクラブの指導者等でプール内又はプールサイドにいる者は救護員とみなして差し支えないこと。
 また、プールサイド等の安全確保にも配慮すること。

(2) 遊泳を通じて人から人に感染させるおそれのある感染症にかかっている者、泥酔者及び他の利用者に迷惑を及ぼすおそれがあることが明らかである者には、遊泳をさせないこと。
 また、単独でプールの利用が困難な者には付添者を求めること。

(3) 水質の維持管理等の参考とするため、利用者数を常に把握すること。

(4) 遊泳前にシャワー等による身体の洗浄を十分に行わせること。また、排便等によりプールサイドを離れた場合も同様とすること。

(5) 唾液やたんを遊泳中に処理するためのオーバーフロー溝を設けている場合を除き、オーバーフロー水にだ液やたんを吐かせないこと。

(6) 他の利用者に危害を及ぼし、又はプールを汚染するおそれのあるものをプールに持ち込ませないこと。なお、飲食物等をプールサイドへ持ち込む場合には、プールを汚染しないようにさせること。

(7) 遊泳者等の衣類及び携帯物が安全かつ衛生的に保管できるよう留意すること。

(8) 利用者の注意事項、利用時間、プールの見取り図等を入口その他遊泳者の見やすい場所に掲示すること。

(9) 複数のプールが設置されているなどにより、多様な年齢層による利用や多様な利用形態が見込まれる場合は、事故防止のため、プールサイド等を、利用形態等に応じて区画区分して利用させること。

6 その他

(1) プール日誌を作成し、使用時間、気温又は室温、水温、新規補給水量、水質検査結果、設備の点検及び整備の状況、利用者数、事故の状況等を記録すること。

(2) プールに起因する疾病等が発生した場合は、直ちに管轄の保健所に通報し、その指示に従うこと。また、事故発生時には直ちに関係機関に通報するとともに速やかに保健所に報告すること。

(3) 水着その他直接肌に接するもので遊泳者に貸与するものは、あらかじめ消毒し、清潔にしておくこと。また、不特定多数の者が使用するものについても、必要な衛生的管理を行うこと。

(4) 万一の事故に備えて従業者の訓練を行うとともに、緊急時の連絡、搬送方法等を定めたマニュアルを作成しておくこと。また、連携する医療機関を定めておくこと。


健衛発第83号
平成13年7月24日
政令市 衛生主管部(局)長
特別区
殿
厚生労働省健康局生活衛生課長

遊泳用プールの衛生基準について


 平成4年4月28日付け衛企第46号厚生省生活衛生局企画課長通知は、廃止する。




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