平成14年7月11日
厚生科学審議会疾病対策部会
臓器移植委員会
当厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会は、昨年9月より7回にわたり、臓器提供先に係る本人の生前意思の取扱いの問題(以下「提供先指定の問題」という。)について審議を重ねてきた。
提供先指定の問題は、提供者本人の意思の尊重と移植術を受ける機会の公平性という、現行の臓器移植制度の根本的な原則に関するものであり、慎重に議論を行うことが必要であるが、一方で個々に発生する現実の事例に適切に対応するためには、当面する法運用に当たって一定のルールを定めておくことが求められるものである。
よって、提供先指定の問題に関するこれまでの当委員会における議論について、下記のとおり整理することとする。
・ | 自分の臓器について、身近にある親族に臓器を提供したい意思は当然であり、それは優先してほしい。 |
・ | 「他人は嫌だが、血族の中で自分の臓器が生き長らえるのならばいい」という感情はあり、それを認めてもよいのではないか。 |
・ | 提供先の指定を例外的に認めることにより、一般国民の臓器移植に対する理解が深まるのではないか。 |
・ | 我が国の臓器移植法は諸外国における臓器移植に関する法律に比べて、本人意思を重視するものとなっている。また、臓器移植法においては、明示の規定により、提供先の指定がいかなる場合も認められないとはされていない。 |
○ 提供先の指定を認めるべきではないという立場からの意見
・ | 本人や家族の心情だけではなく、移植を待つ患者のことも考えるべきであり、それが公平ということではないか。 |
・ | 親族等の一定の範囲で提供先の指定を認めた場合、臓器移植という社会的システムの前に、患者は血族を説得して提供者となってもらうことから始めるべきであるという風潮が出てくるおそれがあるのではないか。 さらに、移植待機患者の親族等に対して、自らの臓器を提供しなければならないのではないかとの精神的な重圧を与えるなど社会的に望ましくない風潮を助長するおそれがあるのではないか。 |
・ | 臓器移植法においては、基本的理念の一つとして、「移植術を受ける機会の公平性」が掲げられているなど公平な移植医療が行われることを重視しており、こうした臓器移植法を支える考え方に照らせば、親族等に提供者がいる場合に移植を待つレシピエントの列を超えて移植を受けられるということはたとえ例外的にも認められるものではない。 |