ご意見募集  厚生労働省ホームページ
(照会先)
厚生労働省健康局水道課
厚生科学審議会生活環境水道部会
水質管理専門委員会事務局
担当:松田、齋藤
電話:03-5253-1111(内4032,4034)

「水質基準の見直し等について(案)」に対する意見及びその回答について

平成15年4月28日
厚生科学審議会
水道部会
水質管理専門委員会
事務局

 厚生労働省では、平成14年7月24日に水質基準の見直し等について厚生科学審議会に諮問しました。これを受けて、厚生科学審議会では、生活環境水道部会及び同水質管理専門委員会を設置して審議を進めてきたところですが、去る3月、水質管理専門委員会報告案が取りまとめられました。同報告案については、以下のとおり各界から広く意見募集の手続きを行い、その結果を踏まえ、最終的に報告としてとりまとめられました。これを踏まえ、4月28日に生活環境水道部会において審議を行い、答申としてとりまとめられました。

1.ご意見募集要項

(1)意見募集対象:
「水質基準の見直し等について(案)」に対するご意見の募集について
(2)意見募集期間:
平成15年3月14日(金)〜平成15年4月13日(日)
(3)告示方法:
厚生労働省ホームページ、記者発表、都道府県行政担当者郵送
(4)提出方法:
郵送・電子・ファクシミリのいずれか

2.受付意見件数

 受付意見件数 団体・個人から105件(述べ意見数402)

3.受付意見の概要及びそれに対する考え方・対応

 提出されたご意見の中には、水道法に関する質問、過去の行政通知に関する質問、補助制度の要望など本報告案の内容と直接関連しないものが多く含まれていることから、ここでは、報告案の内容に関する意見・要望・質問などに限り、その主要なものを要約してご紹介するとともに、それに対する水質管理専門委員会としての考え方をお示しすることとしました。
 なお、「化学物質名としてはIUPAC名を用いるべき」など用字法に関して何点かご指摘がありましたが、これらについては担当委員と事務局で再度見直しを行うことで回答に代えさせていただくこととしました。ただし、化学物質名については、これまで従来の慣用名で議論してきた経過があり、議論の混乱を避けるため、報告では慣用名で整理させていただくこととしました。

【I.基本的考え方】

 水道水源の保全対策についても言及すべきである。

(答)
 今回の主たる検討内容が水道水質基準の見直しであることから水質基準の設定に重点がおかれていますが、水道水源の保全対策の重要性は当然のことであり、本報告案においても、必要に応じ、水道水源対策及び水源の監視について言及しています。

 水道財政の圧迫により逐次改正には対応できない。また、自己検査体制の崩壊が懸念される。

(答)
 水道に限らず地方公共団体の財政事情が悪化している状況は承知していますが、安全な水の供給は水道の生命線であり、最新の科学的知見に照らして適宜基準改定を行っていくべきものと考えます。
 また、水質検査については、「VI.水質検査における精度と信頼性保証」にもあるとおり、高いレベルが求められており、自己検査を行うべきか、委託するべきか、各水道事業者等の状況に応じて十分検討いただく必要があると考えます。

 水質検査計画の実効性を高める観点から、その策定に関する事項は法律事項として、その内容については政令ないし省令で定めるべきである。

(答)
 どのような法令形式になるかは別として、本報告案で言及している水質検査計画に関しては法令上の措置がとられるものと理解しています。


【II.病原微生物に係る水質基準】

 「大腸菌群」は、糞便性汚染の可能性の指標だけでなく、消毒効果の確認という側面もあり、指標として残すべきである。また、「大腸菌群」を「大腸菌」に変更するならば、「一般細菌」も「従属栄養細菌」に変更すべきである。

(答)
 報告案で述べられているとおり、水道の品質保証という観点から糞便性汚染の検知には高い精度が必要であり、水質基準としては大腸菌を採用することが適切としたものです。また、一般細菌についても従属栄養細菌に変更する方向で考えており、データが集積され次第変更したいと考えています。
 なお、工程管理のために必要な場合には、これまでと同様に大腸菌群を併せて検査することが望ましいと考えます。


【III.化学物質に係る水質基準】

 「人の健康の保護のための項目」と「生活上の支障を生ずる項目」とでは性格が異なっていることから、その性格に応じた位置付けを区別すべきである。

(答)
 水質基準については、制度上、人の健康の保護及び生活利便上の観点から基準設定を行うが、その扱いについては同列に扱うべきものと解されることから、本報告案でもそのように扱っております。
 なお、ご指摘のような点については、「XI.今後の課題」の章において今後の検討課題であるとしています。

 水質管理目標設定項目について、水道事業者等に(水質検査など)一定の義務づけをする必要がある。

(答)
 水質管理目標設定項目は、水質基準としての設定を要しない(水道事業者等に水質検査等を義務付ける必要がない)と判断された項目です。従って、これらについて何らかの義務付けを行う必要はないと考えます。
 ただし、これらの項目についても、必要な項目は水質検査を行い、知見を集積していくことが望ましいと考えます。本報告案では、優先度の高い項目として、農薬、過マンガン酸カリウム消費量、ニッケル、亜硝酸性窒素、ジクロロアセトニトリル、抱水クロラールなどを掲げています。

 要検討項目は試験方法が確立されてから提示すべきである。

(答)
 要検討項目は、毒性が明らかでない、水道水中での検出実態が明らかでないなど、水質基準又は水質管理目標設定項目に分類することのできなかった項目です。言い換えれば、今後さらに検討を進めていくべき項目であり、水道事業者等に提示して注意喚起を行う段階にない項目ですが、情報公開の観点から、こういった物質についても検討したということでお示ししたものです。

 要検討項目のうち、塩化ビニルについては水質管理目標設定項目とすべきである。

(答)
 塩化ビニルについては、水道水中での検出実態が未だ明確でないことから、水質基準や水質管理目標設定項目に分類できないため、測定データ等知見の充実に努める必要があるものとして、要検討項目に位置付けたものです。

 住民同意を条件とするならば、省略不可項目についても水道事業者の裁量に委ねてもよいのではないか。

(答)
 本報告案で省略不可項目としているのは、病原微生物による汚染を疑わせる項目及び消毒剤・消毒副生成物に関する項目であり、これらの項目については、すべての水道事業者等において検査していただく必要があると考えています。

 省略項目の選定は非常に難しいものであること、「検出しない」ことにより安心感や安全性が担保されることから、省略については全国一律とすべきではないか。

(答)
 省略項目の選定に当たっては、それぞれの水道事業者等において原水や浄水処理の状況に関して十分に検討する必要があります。そして、このような検討を行うことが水質管理の質の向上に寄与すると考えられることから、本報告案で示した柔軟性については維持すべきものと考えます。

 シアンについては、従来どおり省略不可項目からはずすべきではないか。

(答)
 詳細は公開されている議事録をご覧いただきたいと思いますが、本報告案の「シアン」が表すものは遊離のシアン(CN-)とその消毒副生成物である塩化シアン(ClCN)です。従って、「シアン」については消毒副生成物といった側面を有することから省略不可項目としたものです。

 1,4-ジオキサンは上水試験法にも登載されておらず、いきなり水質基準となるのは段階を踏んでいないのではないか。
 監視項目となっていないクロロ酢酸がいきなり基準となるのはおかしいのではないか。

(答)
 水質基準の設定手続きに関して誤解されているようですが、上水試験法への登載されていることや監視項目に設定されていることが水質基準とするための条件ではありません。その有害性や検出状況により、必要があると認められれば、水質基準として設定するのは当然のことです。
 なお、これらの物質を水質基準とすべきとしたことについては、本報告及びその根拠資料(公表済み)にあるとおりです。

 臭素酸については、高度処理施設を有する水道事業者等以外ではその測定に必要な機器を導入していないと考えられることから水質管理目標設定項目とすべきである。臭素酸の測定には特定(1社)の会社の機器を必要とすることから水質基準からは削除すべきである。

(答)
 臭素酸については、人の健康を確保するとの観点から水質基準とすべきとしたものであり、機器の普及が進んでいないとの理由から水質管理目標設定項目とすることは適当ではないと考えます。なお、臭素酸の測定が可能な機器はご指摘の1社に限定されないことを確認しています。

 臭素酸については、水道用薬品である次亜塩素酸ナトリウムに起因することがあるとの知見があるので、施設基準の早急な見直しが必要である。

(答)
 ご指摘の点については、本委員会でも把握しており、行政において適切に処理されるものと理解しています。

 (オゾン活性炭処理を行っているが)臭素酸の制御方法が確立されるまでは水質基準とすることを猶予してほしい。

(答)
 WHO飲料水水質ガイドライン(3訂版)の議論においても、また、本委員会における議論においても、基準値0.01mg/lは達成可能と考えられており、猶予の必要はないと考えています。

 原水の性状から凝集不良等が発生する場合には、アルミニウムを提案の基準値以下で運転することは困難であるので、水質管理目標設定項目としてほしい。

(答)
 アルミニウムについては、10年以上の間快適水質項目とされてきていること、凝集剤にはアルミニウム系以外の代替物も存在すること、また、今回の基準値は、着色防止の観点及び適切な維持管理により達成可能な濃度という観点から当初0.1mg/lが提案されたところを、実態を踏まえ基準を現在の快適水質項目としての値0.2mg/lに修正したところであり、本報告案のとおり、水質基準項目とすべきであると考えます。

 銅の基準値についてはWHOなみに2mg/lにしてもよいのではないか。

(答)
 銅については、生活利便上の観点から1mg/lが設定されているものです。ちなみに、WHOのガイドラインでも生活利便上の観点(acceptability)からは1mg/lが設定されています。

 ジェオスミンと2-メチルイソボルネオールの基準への対応は、大幅な施設の改善が必要であり、水質管理目標設定項目とすべきである。

(答)
 これらの物質については、現に異臭味被害が発生しており、仮に施設の改善が必要であるとしても、水質基準とすることが適当であると考えます。

 ジェオスミンと2-メチルイソボルネオールは臭いの観点(生活利便上の要請)から設定されているものであり、水質管理目標設定項目とすべきである。

(答)
 既にお示ししたとおり、水質基準は、人の健康の保護及び生活利便上の要請の両面から設定されることが求められており、「臭いの観点」ということから、水質管理目標設定項目とすることは理由がないと考えます。

 ジェオスミンと2-メチルイソボルネオールについては、基準達成のためには施設整備が必要であり、十分な経過措置と財政的支援措置が必要である。

(答)
 これらの物質を処理するための施設整備については、既に厚生労働省の施設整備補助の対象となっています。経過措置については、本報告案において、規制の円滑な実施の観点から必要な経過措置などを設けるよう提言しています。

 (新たに追加された項目に関して)現行の基準、快適水質項目、監視項目に規定されておらず、本市においては通年にわたるデータの蓄積がない。唐突に基準にするのは性急に過ぎる。

(答)
 水質基準の設定手続きに関して誤解されているようですが、監視項目などに設定されていることが水質基準とするための条件ではありません。その検出状況などにより、必要があると認められれば、水質基準として設定するのは当然のことです。
 なお、これらの物質を水質基準とすべきとしたことについては、本報告案及びその根拠資料(公表済み)にあるとおりです。

 非イオン界面活性剤は、排水規制の対象ではなく、原水にも基準値の数倍の濃度で含まれ、常時濃度監視や活性炭処理をしなければ基準に対応できないため、的確な対応がとれるまで水質基準とすることは猶予してほしい。

(答)
 水質基準については、既にお示ししているとおり、人の健康の保護及び生活利便上の要請の両面から設定されるものです。非イオン界面活性剤については、生活利便上の要請の観点からその検出状況などを踏まえ水質基準とすべきとしたものです。
 なお、水質基準とすべきとしたことについては本報告案及びその根拠資料(公表済み)のとおりです。

 非イオン界面活性剤については、ロスマイルス法により0.1mg/lで泡立ちが認められたことから、基準値としては0.1mg/lとすることが適当である。

(答)
 当方が参考とした信頼できる文献においては、基準値案での発泡が認められたとの報告があり、原案どおりとしたいと考えます。

 (非イオン界面活性剤については)示された試験方法の定量下限値から基準値を0.02mg/lとすることは無理がある。基準値を考え直すか、検査方法を改善すべきである。

(答)
 検査方法を見直した結果、定量下限として0.005mg/lが得られることが確認されたので、基準値案として0.02mg/lで問題ないと考えます。

 約100年と長い間用いられてきた過マンガン酸カリウム消費量をTOCに切り替える必要はないのではないか。

(答)
 本報告案でも詳述しているとおり、有機物指標としてはTOCの優位性は明らかであり、この機会にTOCに変更すべきものと考えます。

 TOCを水質基準項目とすることには基本的に賛成ですが、過マンガン酸カリウム消費量は長年使用されてきた指標であり、移行に際しては円滑な移行措置がとられることを希望する。

(答)
 ご賛同ありがとうございます。ただ、TOC計は、既に広範に普及していると考えられることから、円滑に移行できるものと考えています。

 現在水質基準項目とされている農薬については、基準項目として維持すべきである。また、総農薬方式は化学構造による分類や濃度の足し合わせ方式を導入すべきである。

(答)
 今回水質基準として維持する必要はないとした農薬については、近年、ほとんど検出事例は報告されておらず、本報告案でお示した水質基準への分類基準に該当しないことから、そのように判断したものです。ただし、農薬に関しては国民の関心が高いことから、現時点の知見を踏まえ、毒性の程度も勘案して重み付けをした総農薬方式を採用し、これを水質管理目標設定項目とすることとしました。
 なお、ご指摘の農薬も含め、上述の分類基準に当てはまることが明らかになったものについては、当然のことながら水質基準とすることにしています。このためにも逐次改正方式が有効に機能していくことが必要と考えています。

 ニッケルや農薬補助成分などの物質についても水質基準等に位置付けるべきである。

(答)
 上述のとおり、水質基準への分類基準に該当することが明らかになれば水質基準とすることにしています。逐次改正方式が有効に機能することが望まれます。

 水質管理目標設定項目とされている101の農薬に関して、水道事業者においてはその使用実態の把握が難しいことから、
-対象農薬の把握方法や分析方法等の提示をお願いする。
-測定項目を指定すべきである。

(答)
 農薬の使用実態は地域によって異なることから、各水道事業者において把握し、検査農薬を選定する必要があります。各地域で使用される農薬については、農協などで配付している防除暦などで確実に把握することが可能であり、既にこのような方法により農薬の調査を進めている水道事業者もあります。
 分析手法については、なるべく早い時期にお示しできるよう再確認の作業を進めているところです。

 水質管理目標設定項目として塩素酸0.6mg/lを設定することは二酸化塩素処理の導入の機会を著しく制限するものである。
 塩素酸については、現時点で評価値を設定するには研究データが不十分であり、水質管理目標設定項目から削除すべきである。

(答)
 本専門委員会における検討では、塩素酸に関する評価値の設定は問題ないと考えています(資料公表手続き中)。また、WHOにおいても塩素酸についてガイドラインとして0.7mg/lを設定することにしています。
 このようなことから、この項目を水質管理目標設定項目とすることは適切なものと考えています。

 水質管理目標設定項目における残留塩素濃度1mg/lを下げるべきである。

(答)
 よりレベルの高い水道水の要件としては技術的な観点も踏まえ残留塩素濃度は1mg/L程度以下にすることが適当であると考えられますが、より低い目標を設定して一層のレベルの向上に努めることが重要と考えます。


【IV.水質検査方法】

 吸光光度法の連続流れ分析法(シアン、フェノール類、陰イオン界面活性剤)を水質検査方法としての存続させるべきである。

(答)
 水質検査方法については、本報告案にお示したとおり確度の高い方法を採用する必要があります。一般論として、吸光光度法は選択性の問題から必ずしも確度の高い方法とは言えず、測定技術の進展に応じ、より確度の高い方法へ移行していくべきであると考えています。
 ご指摘のシアンについては選択性の問題が大きいこと、フェノール類については選択性の問題に加え、定量下限、クロロホルムという有害物質を使用せざるを得ないこと、陰イオン界面活性剤については、選択性の問題に加え、クロロホルムという有害物質を使用せざるを得ないことから、吸光光度法は、水道水の検査法として適当でないと考えます。
 ただし、ご指摘の方法については、これまで広く使用されてきており、本報告案に示した方法に必要な機器整備には多少の時間を要すると考えられることから、別途お示しする流路型吸光光度法について、期間を限り暫定的に認めることにします。

 鉄、ふっ素や硝酸性窒素・亜硝酸性窒素について吸光光度法を復活すべきである。これらの方法は複雑な機器を必要とせず、緊急時にも対応可能であるという利点がある。

(答)
 吸光光度法については、上述の問題点があるほか、鉄については、定量下限値が基準値の1/10に満たないこと、当該方法以外に適当な検査法があること、ふっ素については、検査法が煩雑であり当該方法以外に適当な検査法があること、硝酸性窒素・亜硝酸性窒素については、カドミウムの廃液処理が発生すること等から、今回、水質基準の水質検査のための検査法としては削除したものです。
 なお、今回お示ししている検査法は水質基準の適合確認のための検査法であり、緊急時や工程管理のための検査について規定しているものではありません。

 非イオン界面活性剤のみ吸光光度法を採用しているのはなぜか。

(答)
 上述のとおり、吸光光度法については、可能な限り採用しない方針ですが、非イオン界面活性剤については、残念ながら現時点ではこれに代わる適当な検査法がないことからやむを得ず採用したものです。

 ガスクロマトグラフ法(GC-ECD)についても検査法に採用すべきである。

(答)
 平成4年当時はこれに代わる適当な検査法がなかったこともあって採用しましたが、現時点ではより確度よく測定できるGC-MSが普及しており、水道水の検査法としてはこれに移行すべきであると考えます。

 ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン等にはフレーム式原子吸光法での分析も可能とするべきである。

(答)
 ICPあるいはICP-MSがあればこれらの項目の測定も可能であることから、水質検査法には採用していませんでしたが、確度及び精度の観点から問題ない項目もあり、それらの項目については、フレーム原子吸光光度法が可能となるようにしたいと考えます。

 検水量を大腸菌群50mlから大腸菌では100mlに変更した理由はなにか。

(答)
 水質基準を大腸菌群から大腸菌に変更するに当たっては、国際的に検査結果の比較や情報の共有が容易となるように、WHOや米国を初めとする工業先進諸国で用いられている検水量に合わせることが適当と考え、100mlを採用することとしました。

 特定酵素基質培地の成分にその特性が不明なもの(ソラニウム)があるが、安全性等の面で問題ないのか。

(答)
 大腸菌群の特定酵素基質培地法でこれまで一般的に使用されてきた方法は、このソラニウムを含みますが、当時は唯一の検査方法であり、また、米国や諸外国で公定法として採用されている方法です。
 本報告案では大腸菌の測定方法としては複数の方法を掲げており、選択の幅が設けられ、必ずしもこの方法を用いなくても良い状況になっています。
 現時点でその物質の特性は不明な部分もありますが、諸外国での採用、これまでの使用の実績もふまえ、継続性の観点から、今回公定法から削除しないこととしますが、その使用・廃棄に当たっては、製品の留意事項に注意することが必要です。

 クロムの分析方法は全クロム分析になっており、六価クロムの分析法と修正すべきではないか。

(答)
 水道水中では塩素消毒により概ね六価クロムとして存在すると考えられるほか、仮に三価のものが存在するにしても、水質検査に当たっては、安全側に立って従来から全クロムを測定しています。

 1,4-ジオキサンについては、ヘッドスペース-ガスクロマトグラフ質量分析法やパージ・トラップ-ガスクロマトグラフ質量分析法についても採用すべきではないか。

(答)
 ご指摘の点については、可能性はあると考えますが、採用するためにはデータの蓄積が必要と考えます。今後データの蓄積された段階で水質検査法として検討することが適当と考えます。
 なお、本報告案では、水質検査技術の革新等に柔軟に対応できるようにするため、公定検査法以外であっても同等以上の方法と認められる検査方法については、これを積極的に公定検査法と認める柔軟なシステムを工夫するよう提言しているところであり、このようなシステムが機能した段階で検討対象とすることも考えられます。

 (有害物質である)ジクロロメタンを試薬に使用しない検査法とすべきである。

(答)
 ジクロロメタンについては極力使用しない方向で検討しています。1,4-ジオキサンについては、更なる検討の結果、使用しないことが可能であるとの結論を得ましたので、その使用を取りやめました。一方、フェノール類については必要な感度が得られないため、やむを得ず採用しています。

 臭素酸イオンを分析できる機器は単一のメーカーのものしかないが、分析方法に選択肢を与えるべきである。(同旨前掲)

(答)
 ご指摘のようなことはないことを確認しています。

 現状では臭素酸イオンの分析法は確立していると言えず、経過措置を設けるべき。(同旨前掲)

(答)
 ご指摘のようなことはないことを確認しています。

 アルミニウムの分析では、懸濁物とともにアルミニウムが除去されてしまうので、メンブレンフィルタでろ過処理はすべきではない。

(答)
 アルミニウムで問題となる白濁を制限する上では懸濁性のアルミニウムは問題とならないため、本報告案では関係ない懸濁分をろ過処理し検査することとしましたが、浄水では、ろ過処理の有無は測定値に影響を与えないことが確認されたため、ろ過処理の過程を削除することとします。

 鉄の分析方法に注釈付きでも良いのでICP−MSを加えるべきである。

(答)
 現在普及しているICP−MSでは妨害物質の存在から鉄の分析は困難であり、今後の動向、データの蓄積を踏まえ改めて水質検査法として検討することが適当と考えます。

 陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤については、両者一括の測定方法・基準とするべきである。

(答)
 陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤は、それぞれ発泡の観点から基準値案を設定しています。両者は発泡の限界が異なるため、別々の基準・検査方法を設定したものです。

 HPLCはLASのみの測定であり、陰イオン界面活性剤の全体を把握できない。陰イオン界面活性剤の総量を把握できる現行比色法を採用すべきである。

(答)
 水質検査にあたっては確度の確保を図ることを基本方針としており、市販の洗剤成分の調査結果を踏まえて、陰イオン界面活性剤のうち主要な成分を選定したものです。

 ELISA法は実績が少ない試験法であり、一定の検査結果が得られないので現時点で水質検査法として問題はないか。

(答)
 今回の水質検査法の検討に当たっては、できるだけ選択の幅を広げることとしており、ELISA法についても本報告案において検査法に採用したところですが、更にその妥当性について検討を行った結果、ご指摘のとおり、精度や感度の観点から公定検査法とすることは適当ではないと判断されましたので、今回の水質検査法からは削除することとします。

 ジェオスミン及び2-メチルイソボルネオール分析方法には、サロゲート法やマイクロ固相抽出GC-MSを追加するべき。

(答)
 ご指摘の点については、可能性はあると考えますが、採用するためにはデータの蓄積が必要と考えます。今後データが蓄積された段階で水質検査法として検討することが適当と考えます。
 なお、本報告案では、水質検査技術の革新等に柔軟に対応できるようにするため、公定検査法以外であっても同等以上の方法と認められる検査方法については、これを積極的に公定検査法と認める柔軟なシステムを工夫するよう提言しているところであり、このようなシステムが機能した段階で検討対象とすることも考えられます。

 非イオン界面活性剤の定量下限から考えて、この項目は水質管理目標設定項目とするべきである。(同旨前掲)

(答)
 原則としている定量下限として水質基準値の1/10は得られませんが、定量下限を下げるべく検査方法について更に検討を進めた結果、定量下限として基準値の1/4以下とすることができましたので、この方法を採用することとします。今後、定量下限値を更に下げるべく検討が進められることが求められます。

 フェノール類には、臭気が強く廃液が水道水源に混入するおそれもあるクレゾール類が測定されるようにすべきではないか。

(答)
 フェノール類の製造・出荷量の調査の結果、今回お示しした方法で対象としているもので十分と考えています。


【V.クリプトスポリジウム等の耐塩素性病原微生物対策】

 塩素耐性微生物対策としてのろ過施設等の設置は、水道法に基づく措置という位置付けとはせず、対策指針等に基づくものとして位置付けてほしい。また仮に水道法に基づく措置とする場合は、十分な経過措置を設けてほしい。

(答)
 耐塩素性微生物対策としてのろ過施設等については、水道法第5条及び同条に基づく「水道施設の技術的基準を定める省令」(平成12年施行)において、これら微生物による汚染のおそれがある場合には設置すべきことが義務付けられています。今回の提言は、既に平成12年に設置が義務付けられている施設を適切に運転し、ろ過操作を行うべきこととしたものです。
 ただし、汚染のおそれの考え方の拡大により今後新たな施設整備が必要となることが予想されることから、例えば施設整備に要する期間を準備期間とするなど円滑な規制の実施に配慮すべきと考えます。

 クリプトスポリジウム暫定対策指針は、対策が具体的に示されているものであり、廃止はしないでほしい。また仮に廃止される場合でも、新たにクリプトスポリジウム対策の解説書等による的確なおそれの判断基準等の説明をお願いしたい。

(答)
 今回の提言は暫定対策指針の根幹部分であり、これが法令上規定された後は、同指針はその役割を終え、廃止されるべきものと考えます。ただ、本指針に基づく対策の実施等を通じて得られた知見については、耐塩素性病原微生物対策の解説書としてとりまとめられ、関係者に提供されることが望まれ、本報告案においてもこれについて提言しています。

 今回クリプトスポリジウムの基準が設定されなかったのは問題ではないか。

(答)
 本報告案にもあるとおり、クリプトスポリジウムの検出方法等に種々の課題が残っており、水質基準とすることは適当ではないと考えます。なお、水道法においては、水質基準を規定する第4条において病原微生物は含まれないこととしており、包括的に見れば、クリプトスポリジウムもこの規定に含まれていると考えられます
 また、病原微生物については、水質検査に時間を要することから、検査結果を待っていては間に合わないことがあります。このため、本報告案では、汚染のおそれのある場合には、ろ過措置の義務付けを提案しています。逆に言えば、微生物対策については、検査を行うまでもなく、適切な除去操作や消毒操作を行うことが、水の安全を確保する方法であると考えます。

【VI.水質検査における精度と信頼性保証】

 水質検査については水道事業者が自ら測定すべきことを基本方針として明記すべきである。

(答)
 水質検査は水道法20条に規定されているようにその実施の義務は水道事業者にあります。その上で、検査施設を有していないなどの理由から、委託という選択肢が示されています。
 本報告案についてもその前提に立って記載されたものであり、それぞれの水道事業者等のおかれた状況に適した検査体制を選択していくことが重要です。
 なお、報告案で付言したとおり、水質基準が適合しているかどうかを判断するための検査と一連の水質管理の状況を確認するための検査を区別すべきであり、後者の検査について重要なのはμg/Lオーダーの検査の正確さではなく迅速性と継続性の観点であり、水道事業者自らによって行われるべき性格のものです。

 信頼性保証制度の導入にあたっては、特に中小規模の事業者で対応が困難であり、この点を勘案した制度の確立、一定の猶予期間の設定、財政的措置等の支援が必要である。

(答)
 水質検査は、飲料水の安全を確保するうえで極めて重要です。その求められるレベルも年々高度なものとなってきています。一方、精度管理調査の結果からは、必ずしも満足のいくレベルにある検査機関ばかりでないことがはっきりしています。このようなことから、信頼性保証制度の導入は不可欠であると考えます。
 ご指摘のとおり、特に中小の水道事業者では業務量増大・人員不足などにより直ちに対応することは困難であると考えます。このため、本報告案でも一定の猶予期間の設定を提言していますので、この間に、自己の検査機関の充実を図るべきか、委託検査とすべきか、十分に検討していただく必要があると考えます。
 共同検査機関の設置については、厚生労働省で補助制度を設けています。

 国の統一的な精度管理の実施にあたっては、民間の指定機関とともに地方公共団体の検査機関も加わり、同一の土俵で参加できる制度としてほしい。

(答)
 厚生労働省では平成12年度より、いわゆる20条機関を対象として精度管理調査を実施しています。昨年度からは厚生労働省の呼びかけに応じた150余の水道事業者等もこれに参加しています。今後は、調査範囲が更に広げられ、地方公共団体の検査機関の参加が多くなることが期待されます。

 単にISO9000の適用というのではなく、水道分野の特質を反映した適切な信頼性保証体制の導入を行うべき。

(答)
 本報告案にもあるとおり、現にISO9000やISO17025といったシステムが実質的な国際標準として機能している以上、水道水質検査の特質を踏まえつつも、これらと互換性のあるシステムを導入することが適当と考えます。

 水道事業者等が安心して委託できるよう、国の登録検査機関に関する評価の情報が得られるようにすべきである。

(答)
 新たな登録制度では、適正に水質検査を実施できる要件(登録基準)が明示され、これに適合している機関が登録されることになります。従って、登録を受けた機関であれば、適正に水質検査を実施できると考えられます。
 なお、登録情報以外の情報を国から提供することについては、制度上難しいと考えられます。


【VII.水質検査のためのサンプリング・評価】

 配水系統毎に1地点以上でなく、人口当たりの地点数を明確にすべきである。

(答)
 統計的に理論だって地点数を設定することは困難であり、基本的に配水池の水がそのまま給水栓まで配水されることから、配水ブロックごとの採水が最低限必須であるとしたものです。

 検査頻度を検討するうえで過去3年間のデータから判断する場合、年1回しか測定していないデータのみから頻度の省略について判断して良いか。

(答)
 検査頻度の省略の考え方は本報告案に示したとおりですが、原水等の変動による汚染のおそれがないことを確認する必要があるため、年1回のデータのみから判断することは困難と考えられます。

 鉛のサンプリング方法について、15分滞留水を採水する方法は採水作業担当者の負担が大きいので、流水を採水する方法としてほしい。鉛管を使用していない場合は適用すべきでない。

(答)
 水道水に含まれる鉛のうち多くは、主として鉛給水管等からの溶出によるものであり、また、鉛濃度は給水装置における水道水の滞留時間によって大きく変化します。このため、鉛に係る水質検査における試料採取方法については、現行のような流水を試料とする水質検査は必ずしも妥当とは言えず、データの信頼性、再現性、平均暴露濃度との関係及び採水作業上の問題点を考慮し、総合的に見て「15分滞留水」法がもっとも適切であると判断したものです。

 鉛の採水箇所数の基準を示してほしい。

(答)
 鉛の採水地点数についても、本報告案で示した考え方を踏まえて設定することが適当と考えます。なお、鉛管の布設状況は地域や家庭によって異なっており、選定に当たっては地域の実情に十分配慮することが必要です。


【VIII.水質検査計画】

 水源監視のあり方、特に農薬監視のあり方を水質検査計画に載せるべき。

(答)
 本報告案でも原水の監視や必要に応じて水質管理目標設定項目の監視についても位置付けることが望ましいとしています。

 水質検査計画の公表後の検証はどの機関が行うのか。

(答)
 水質検査計画は水道事業者等が自らの責任において策定すべきものです。本報告案では、その内容の適正化及び透明性を確保するため、事前の公表を提言しています。言い換えれば、公表により需要者への説明責任を果たすことにより計画の妥当性を確保しようとしています。
 なお、国及び都道府県知事は、認可した水道事業者等に対して立入指導を行う権限があり、これら指導に際しては、水質検査計画の内容についても、確認・助言・指導を行うことが重要であると考えます。

 水質検査計画の策定義務を法律に定め、その内容を省令で規定すること。(同旨前掲)

(答)
 どのような法令形式になるかは別として、本報告案で言及している水質検査計画に関しては法令上の措置がとられるものと理解しています。


【IX.簡易専用水道の管理及び34条機関のあり方】

 登録制度の導入により、値下げ競争や検査機関の改廃等が発生し、検査率の低下や検査の空白区域の発生、検査精度の低下のおそれがある。このため、簡易専用水道の管理に関して問題がある場合、検査機関から衛生行政への報告、設置者からの衛生行政への届出等により、検査率向上、公正な検査の実施を確保する必要がある。

(答)
 法制度上「検査機関から衛生行政担当部局への報告」を求めることは困難と考えます。ただし、ご指摘の点については重要な点であり、検査機関に対して「設置者の同意を得た上で、報告をする」よう協力を求めることは考えられるかもしれません。
 いずれにしろ、簡易専用水道を担当する都道府県の衛生部局による役割が重要となってくると考えます。

 登録制導入後の値下げ競争等による登録機関の検査精度低下が懸念されるので、検査手数料、区域設定の維持や衛生行政との事前協議等の設定が必要でないか。

(答)
 規制改革や公益法人改革の観点、また、法制度上、ご指摘の点は不可能と考えます。

 簡易専用水道の清掃等管理の業務を行うものと管理を行うものを同一化することにより、実効性を向上させるべきではないか。逆に、適正な検査の実施のため両者を分けて考えるべきではないか。

(答)
 必要とされるのは適正な登録機関は簡易専用水道の管理の検査の確保であり、登録基準として少なくとも適切な信頼性保証の仕組みを保有していることが求められています。


【XI.今後の課題】

 クリプトスポリジウム対策として、各浄水場における配水等を一定期間保存するとあるが、意義が感じられない。

(答)
 給水区域での集団下痢症などが発生した場合、危機管理の対応としては初動体制が重要であり、その要件の一つが迅速な原因究明です。このため、本報告案では原因究明の有効な措置として、飲食店における食材の保存のような、配水の一部又は沈渣を一定期間保存する方法の検討を提案したものです。


【その他】

 取水口で原水の汚染度をチェックし、基準を超える場合は取水制限や浄水処理の強化で、汚染物質の水道水への移行を防止すべきである。

(答)
 水質基準に適合した水を供給するためには、原水の取水から浄水操作、さらには配水まで一貫した水質管理が要求されます。ご指摘の点については、このような管理の一環として水道事業者においてとられるべきものと考えます。

 水道事業者は積極的な情報公開を進める必要があり、国としても積極的に対処すべきである。

(答)
 水道事業者から市民へのより一層の情報公開を推進するため、水道法第24条の2で情報公開を水道事業者の責務として位置付けております。また、危機管理上重要な点として、健康上の理由から被害を受けやすい、あるいは、被害が深刻となるおそれのある集団にも公衆衛生の観点から十分配慮した情報提供が重要と考えられます。
 なお、国においてもインターネットにおいて水道課ホームページを設けるなど積極的な情報公開が推進されています。
 (https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/index.html)

 水質基準の設定などに当たっては、規制される水道事業者の意見も聞くべきである。また、水道事業者が委員となっていないのはなぜか。

(答)
 生活環境水道部会での意見にもありましたので、機会を捉えて水道事業者等の意見を聞く場を設けてきたところです。
 なお、水質基準については、科学的な知見に基づき公平に設定されるべきであるとの観点から学識経験者のみを委員としたものです。

 なお、これらのほかに、
 項目がこれまでの46項目から50項目に増えることは望ましいことで一歩前進と思う。
 対策をしないで重大な水質事故を起こした場合には認可の取消しを含むような責務の明確化を図ってほしい
などのご意見もいただいております。

 厚生科学審議会水道部会水質管理専門委員会における検討の経緯及び水質基準等の設定の詳細についてお知りになりたい方は、厚生労働省健康局水道課ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/index.html)をご参照下さい。

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